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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:朴 希 眞

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標による垂直入射吸音率の評価に関する研究 審査委員: (主 査) 教授 岩 井 茂 雄

(副 査) 教授 下 邊 悟

独立行政法人製品評価技術基盤機構認定制度技術アドバイザー 押 野 康 夫

沿道環境の保全の中で、自動車騒音は沿道住民の生活や健康へ影響を及ぼすため、自動車の改良や交通 流の変更といった対策だけでなく、遮音壁や環境施設帯の設置といった沿道での自動車騒音の低減対策が 継続的に行われてきている。しかし、特に市街地におけるこの様な沿道対策は、沿道利用の制限、景観上 の制約、日照の問題、さらには用地の取得の困難性などが生じるため、多くの場合、騒音低減性能を持っ た低騒音舗装が用いられている。この低騒音舗装には、舗設材料の入手が容易であること、早期の供用開 始が見込めること、維持管理・補修が容易であることから、一般的にポーラスアスファルト混合物(Porous Asphalt Mixture:PAM。以下、PAMと記す)が舗装の表層に用いられている。この表層に用いられたPAM の吸音特性が、低騒音舗装の吸音効果に影響を及ぼすことになる。従って、沿道環境の保全のため、低騒 音舗装による自動車騒音の低減対策を行う上で、低騒音舗装を舗設する前にPAMの吸音特性が予測・評価 できれば、効率よく保全計画の立案と対策ができる。そのために従来からPAMの吸音特性の評価と予測方 法について提案がなされてきた。

PAMの吸音特性の評価は、一般的に垂直入射吸音率によって行われている。この垂直入射吸音率は、JIS に示された垂直入射吸音率測定試験によって垂直入射吸音率を直接求めるか、またはPAMの空隙内での摩 擦と共鳴を考慮した吸音インピーダンスモデル式によって垂直入射吸音率を予測して求めることになる。

前者は、PAMを構成する骨材の粒度をもとに供試体を作成しなければならず、また所定の周波数毎に垂直 入射吸音率を測定するため、吸音特性の評価に手間がかかる。後者の場合も、垂直入射吸音率を予測する ために必要な因子は、PAMの供試体を作成して必要な因子を求めるだけでなく、直接求められない因子に ついては経験的に知られた値を適宜用いるため、やはり前者と同様に吸音特性の評価で効率性に欠ける。

現時点では、PAMの供試体作成や垂直入射吸音率測定試験以外の試験方法を用いないで、PAMの垂直入射 吸音率を効率よく合理的に求める方法は無いと言える。

PAMを表層に用いた低騒音舗装の導入計画の段階では、PAMに関して得られる情報はその粒度しかない のが一般的である。そこで申請者は、PAMの垂直入射吸音率を使用予定の骨材の粒度特性のみで示せる予 測式を提示し、学位論文として、実務上効率性の良いPAMの垂直入射吸音率の評価方法を明らかにした。

これらについて、本論文の構成に沿ってその内容、意義を以下に示す。

「第1章 序論」では,研究の背景として、自動車交通騒音の低減を図るために適用されている低騒音 舗装の表層のPAMの垂直入射吸音率を求める必要性とその問題点を示し、さらにPAMの供試体作成や垂 直入射吸音率測定試験以外の試験方法を用いないで、PAMを構成する骨材の粒度特性のみでその垂直入射 吸音率を効率よく合理的に評価する目的と意義を示している。

「第2章 ポーラスアスファルト混合物の吸音特性に及ぼす因子の整理および評価方法」では、既存の PAMの垂直入射吸音率を推定する吸音インピーダンスモデルである微視的構造吸音インピーダンスモデル と現象論的吸音インピーダンスモデルを比較して、それらのモデルで用いられている因子には実験により 直接求めるものと経験や推定により間接的に求めるものがあることを示し、PAMの垂直入射吸音率を推定 する時に必要となる因子数が少ない、現象論的吸音インピーダンスモデルに適用される因子を本論文で用 いる理由を明らかにしている。これより、本論文ではPAMの流れ抵抗、形状係数および垂直入射吸音率を 当該関係因子として選定している。さらに測定周波数によって変化するPAMの垂直入射吸音率を効率よく 評価するために、本論文では垂直入射吸音率を周波数平均化した垂直入射平均吸音率を用いることを提案 している。これらの考察と提案は、PAMの吸音特性を効率よく評価する上で有用であると言える。

「第3章 ポーラスアスファルト混合物の粒度による空隙状態の検証」では、粒度を変えた鋼球、砕石

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およびPAMの供試体を作成して流れ抵抗および垂直入射平均吸音率を検討したところ、粒度の変化によっ て流れ抵抗と垂直入射平均吸音率が変化することを明らかにしている。これは、空隙率が異なる影響もあ るが、鋼球や砕石の配列、そしてPAMの骨材のかみ合わせによって生じるPAM内部の空隙状態の影響に よると考え、層流におけるHagen-Poiseuille流れの考え方を適用して、空隙内部における音波の移動のし易 さに空隙の大きさが関与し、また音波の移動時に生じる摩擦に空隙の狭隘部分(空隙の角の部分)が影響 するとして、本論文では空隙一つ当たりの大きさを面積で示し、また空隙一つ当たりの形状を凹凸の角の 数(角数)で示すことにより供試体中の空隙を表すことにしている。そこで各供試体を3等分に切断して、

各断面での空隙の大きさ(面積)と空隙形状(凹凸の角の数(角数))の分布をみたところ、分布の偏りを 示す歪度と流れ抵抗、形状係数および垂直入射平均吸音率との間に高い相関性が見られ、いずれの供試体 においても粒度が垂直入射平均吸音率に大きな影響を与えることを明らかにしている。このことから、PAM の吸音特性に空隙の状態(空隙の大きさ(面積)と形状(角数)の分布の偏り(歪度))が影響し、それに 骨材粒度が関与していることを実験的に明らかにした意義は大きい。

「第4章 既存の粒度指標によるポーラスアスファルト混合物の粒度の検討」では、PAMの粒度の特徴 は、最大粒径20mmまたは13mmの場合、粒径4.75mmで変曲点を有し、粒径4.75mm以下の細骨材分の含有量 によって空隙率が変化することを示している。この様な特徴を持つPAMの粒度に、地盤工学やコンクリー ト工学の分野で使われている既存の骨材の粒度指標である均等係数、曲率係数、粗粒率、分級係数により、

流れ抵抗および垂直入射平均吸音率の関係を見たところ、既存の粒度指標は粒度分布の形状や配合の状態 を示すものであるため、PAMの粒径範囲とその中に含まれる骨材量を示すことができないことを明らかに し、流れ抵抗と垂直入射平均吸音率との相関性は良くないことを示している。この考察により、PAMの吸 音特性と相関性の高い新たなPAMの粒度指標の必要性を示唆している。

「第5章 ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標の提案と混合物の空隙状態および吸音特性の検 討」では、最大粒径20mmまたは13mmの場合、PAMの粒度は、粒径4.75mmで変曲点を有していること から、累積残留率を用いたPAMの骨材粒度分布図を基にして、粒径0.075~4.75mm範囲とその間の細骨材 分の残留率の積と、4.75mm~最大粒径の範囲とその間の粗骨材分の積との比をPAMの新粒度指標(Particle Distribution IndexPDI。以下、PDIと記す)として提案し、PDIによる空隙の状態(空隙面積分布の歪度お よび角数分布の歪度)と垂直入射平均吸音率の関係を検討している。その結果、PDIPAMの空隙の面積 分布の歪度および角数分布の歪度との間に高い相関性があることを示している。さらに、PDIと流れ抵抗、

形状係数および垂直入射平均吸音率の関係を見たところ、いずれも高い相関性があることも明らかにして いる。このことから、本論文で提案しているPAMPDIは、骨材粒度の影響がPAMの吸音特性に影響を 及ぼすことを説明できる指標であることを示している。

「第6章 ポーラスアスファルト混合物の新粒度指標による垂直入射平均吸音率の評価」では、第5章 で示されたPAMの吸音特性にPDIが大きく関係するという結果に基づき、PAMの垂直入射平均吸音率を PDI2 次多項式で予測できることを示し、さらに他の研究者の報告データを利用してその予測式の有用 性を検証している。その検証結果から、本論文で示したPDI2次多項式は、PAMの実測垂直入射平均吸 音率を概ね±15%の範囲で評価できることを明らかにしている。

「第7章 結論」では,本論文で示した研究の成果について述べている。

①既存の吸音インピーダンスモデル式を整理し、現象論的吸音インピーダンスモデルに適用される因子 から、PAM の流れ抵抗、形状係数および垂直入射吸音率を当該関係因子として選定した。さらに、

測定周波数によって変化するPAMの垂直入射吸音率を効率よく評価するために、垂直入射吸音率を 周波数平均化した垂直入射平均吸音率を用いることを示した。

②既存の粒度指標は粒度分布の形状や配合の状態を示すものであるため、PAM の粒径範囲とその中に 含まれる骨材量を示すことができないことを明らかにし、流れ抵抗と垂直入射平均吸音率との相関性 は良くないことを示した。

③最大粒径20mm および13mmPAMの骨材粒度では、粒径4.75mmが細骨材分と粗骨材分の分岐点 となることを示して、4.75mm以下の細骨材分の粒径範囲と残留率および4.75mm以上の粗骨材分の 粒径範囲と残留率を考慮した新たな粒度指標(新粒度指標、 PDI)を提案した。

④PAM 内部の空隙一つ当たりの大きさを面積で示し、また空隙一つ当たりの形状を凹凸の角の数(角 数)で示して、それらの分布の歪度により空隙状態を表すことにした。そして、PDIPAMの空隙 の面積分布の歪度および角数分布の歪度との間に高い相関性があることを示した。さらに、PDIと流

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れ抵抗、形状係数および垂直入射平均吸音率の関係を見たところ、いずれも高い相関性のあることを 明らかにした。これらの結果から、PDIは骨材粒度の影響がPAMの吸音特性に影響を及ぼすことを 説明する指標として使用できることを示した。

⑤PAMの垂直入射平均吸音率は、PDIの 2 次多項式で予測できることを明らかにした。

以上のことから、PAMの粒度分布を基にすれば、事前に供試体を作ることもなく、効率的に PAMの垂 直入射吸音率の評価ができることが示され、低騒音舗装の導入を検討する際に使用でき、実務上有用なも のと評価できる。

このことは、本論文の提出者が自立して研究活動を行い、またはその他の高度な専門的業務に従事する に必要な能力及びその基礎となる豊かな学識を有していることを示すものである。

よって本論文は、博士(工学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上

平成26年2月13日

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