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英国は世界で

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Academic year: 2021

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論 文 の 内 容 の 要 旨

英国は世界で 3 番目に核保有国となった。しかし,米ソに比較すると国力に劣るため,

独力で彼らに匹敵する核兵器を開発・配備し,これを運用し続けることが困難であった。

そこで保守党政権は,米国から核兵器の運搬手段の供給や運用上の支援を受けるが,核 使用の最終決定権については自らが保持するという,米国から運用上「自立」した核抑 止力を維持する政策を 1960 年代前半までに確立した。

この「自立」を維持する政策は,超党派性を有しており,野党時代にこれを批判して いた労働党も,政権に就くとこれを受け継いできたと指摘されている。しかし,ウィル ソン政権期の核政策を吟味すると,この見解に対して些か疑問が生じる。 64 年 10 月に 政権に就いたウィルソンは, 12 月に ANF 構想を提案した。同構想では,自国の核戦力 の統制権限を放棄した上で,これを NATO に恒久的に提供するとされていた。そうで あるならば,ウィルソンは本当に「自立」を受け継ごうとしていたのであろうか。

ANF 構想に関する先行研究を概観すると,統制権限を放棄するとのウィルソンの主張がレ トリックに過ぎず,抜け道を確保することによって実質的に「自立」の維持が意図されていたと の見解が主流であった。しかし,近年の研究では,ウィルソンが「自立」の放棄を真剣に模索し ていたとも指摘されている。このように,ウィルソンが ANF 構想において「自立」の維持を 意図していたのか否かについては,研究者によって未だ評価が分かれている。この理由 として,先行研究の多くは,ANF 構想の提案以降の過程に焦点が当てられており,そ の立案・決定過程に関しては十分に解明されていないことを指摘することができる。

本論は,ANF 構想における政府内の立案・決定過程について,立案担当者の覚書や 書簡,草案作業部会の会合記録といった公文書や,ウィルソンの側近の私文書など,従 来の研究では用いられていない資料を加味して精緻化することにより,同構想において ウィルソンが「自立」の維持を意図していたのか否かを明らかにする。その際に,主要 アクターが自国の外交・防衛政策において核抑止力が「自立」していることにどのよう な価値を認めていたのかという点に着目する。

本論の分析により得られた知見は以下の通りである。

第一に,ウィルソンは,野党時代に ANF 構想の起源となるコンセプトを発案してか

ら,同構想を最終的に断念するまでの終始にわたり,自国の核抑止力の「自立」を放棄

することを真剣に模索していたことが明らかになった。ウィルソンは,核兵器自体の抑

止効果を認めていたが,米国に依存する自国の核戦力に軍事的・政治的な価値があると

は認識していなかった。そこでウィルソンは,米政府が提案していた MLF の実現を単

に阻止するためではなく,「自立」の放棄を交渉カードとして,これを代替する核戦力

を構築することによって,NATO の核問題を自国に有利な形で収拾することを狙いと

して ANF 構想を提案したのであった。

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第二に,ANF 構想が,従来から理解されてきた以上に,ウィルソンと官僚組織,あ るいは,外務省と国防省との間で,白熱した論争や激しい駆け引きの末に,立案・決定 されていたという事実が判明した。また,この立案・決定過程には,専ら政府機関のみ が関与しており,労働党の機関やウィルソンの側近は関与していないことも明らかにな った。さらに,政府機関においても,国防省が素案を提示し,核戦力の提供方法の選択 においても大きな影響力を及ぼしていた。一方,外務省もウィルソンの過大な代償の要 求に自制を促し,最終的にこれを受け入れさせた。このように,ANF 構想の立案・決 定は,首相であったウィルソンが主導性を発揮したというよりも,政府機関による集団 的な妥協の産物であった。

ウィルソンは,ANF 構想の実現に向け,同盟諸国に積極的に働きかけた。しかし,彼 らからの支持を得ることができず,最終的にこれを断念することになった。これにより 英政府は,自国の核戦力をナッソー協定と同様の条件で NATO に配属させ続けること になる。ウィルソンは,結果として,保守党政権の「自立」を維持する核政策の「踏襲」

を余儀なくされた。しかし,ウィルソンが「踏襲」した核抑止力は,欧州において NATO

の統制下のみでの運用が許されたものに過ぎなかった。ウィルソン政権期以降の英政府

は,核使用の最終決定権を保持していたが,それはナッソー協定時に保守党政権が望ん

でいた「自立」とは乖離したものであった。

参照

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