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ピークロードプライシングの 渋帯緩和特性に関する分析

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(1)

ピークロー ドプライシングの 渋帯緩和特性に関する分析

柳沢吉保 飯田恭敬 内田敬

( 平成

8

9

30

日 受理)

PrPricing Policies of Peak Period Traffic Congestion Yoshiyasu YANAGISAWA Yasunori IIDA Takashi UCHIDA

Thispaperexaminestheproblemofpeak‑hourstrafhccongestionandtheanalysis ofaltemativescongestionreliefmethods.Itpresentsadynamictarvelbehaviorof commuters,andsystemperfom ancefunctionconsideringtheuncertaintyoftraveltime andcommuter'sutility.Themodelconsistsofadynamictravel月owmodelandamodel ofthedeparturetimeandroutechoiceasafunctionofeffectivetraveltimeandschedule delaypenalty.Themodeisusedtostudy仇eimpactsofthepricingpolicies.

1. じ め に

今 日の通勤時の慢性的な交通渋滞は,都市内の交通を妨げるだけでなく,経済的損失,大 気などの環境問題,エネルギー問題への影響が深刻 となっている. これに対 し,従来 のよ う な交通施設の整備を中心 とした対応策 は,都市空間の物理的な制約や財源的な問題 か ら,積 極的な実施が困難 となっている.そこで交通需要を管理す ることによって,既存の施設を有 効利用 し,交通渋滞 や交通公害 か ら都市 の生活環境 を保護 す る交 通需要 マネ ジ メン ト

(TDM :TransportationDemandManagement)

が今 日の交通問題の主要な対応策 と考 え られ るようになった

1ト 3). TDM

には,生起 している問題 の状況 に応 じてい くつかの対応策 があるが,近年では渋滞回避のための戦略的アプローチ として ロー ドプライシソクの導入 が 注目されている. この手法は,混雑に応 じた通行料金を ドライ, i‑に賦課することに よって 交通需要を直接的にコソ トロールできること,徴収 した料金を財源 として道路整備 な どに利 用できることなどが利点であ り,特に渋滞緩和を主 目的 として実際に実施 されている都市 が い くつかある4 ) ・ 5 ) .

ロー ドプライシソグを導入す るにあたっては,社会的公正化の問題,料金の徴収方法, 普 ■ た実施後の代替利用交通機関の整備など課題がい くつかある. しかしこうした課題 を解決 し

● 平成

7

年1

2

月第

18

回土木計画学研究講演会にて一部発表 平成

7

年度教育研究特別経費の補助を受けた

= 環境都市工学科 講師

=● 京都大学工学部 教授

● =● 東北大学工学部 助教授

(2)

て実際に導入 されても,渋滞緩和の目標効果が達成 されない例 も多 くあることから,計画 さ れた料金に関す る実施可能性を検討す る前に,料金の設定 と交通需要 との関係を詳細 に分析 す る必要性が指摘 されている1 ) .また ピーク需要 コソ ト。‑ル策 は渋滞緩和効果を主た る目 的 として実施す る方が効率的であることを指摘 した研究

6)

もあるが,渋滞緩和を主 目的 とし た場合, どのような実施方法が効果があるのか,またその適用限界な ど実際に導入す るにあ た っての指針が必要 となる. こうした点で従来の導入例は,料金設定 と渋滞緩和効果の関係 に関する理論的検討による裏付けが十分 になされた上で実施 されているとは言 えない.今後, 渋滞の激 しい都心部において ロー ドプライシングの導入を促進 し,交通渋滞 に十分 な効果を 上 げるためにも,以上の点を把握 してお く必要がある.

本研究では特に渋滞の激 しい通勤時において,賦課す る料金によって引き起 こされ る交通 現象が, どのような渋滞緩和効果を生 じさせ るのかを明 らかにし,効果的なロー ドプライシ

ソグ実施方法を理論 モデルを用いた数値実験によって検討す ることを目的 とする.

2.

本研究の枠組み と位置づけ

ロー ドプライシングには交通需要の分散に対 し大 きく分けて

2

とお りの効果がある.

1

つ はネ ットワーク中の混雑 している道路を利用す る ドライバーに適切な料金を賦課 し,当該道 路 の交通需要を他の経路や機関に分散 させ る効果である.

2

つめは混雑を起 こす道路で もピ ーク時 とオフピーク時では交通需要にかな りの差が生 じている可能性があることか ら,交通 需要の大 きさに対応 した通行料を賦課 し,交通需要を時間軸上で分散 させ る効果である.前 者 のアプローチに関 して従来の研究では経路選択を数理計画問題 として定式化 し,総走行時 間を最小化す るような交通流へ誘導す るための料金の設定方法が議論 されてきた

7)

. しかし 適正経路分担問題 として定式化を容易にす るため,交通 フローは静的に扱われ,決定 される 料金 も時間軸上で不変で平均的なものとなる.通勤時のように交通需要が大 きく変動 してい た り,ネ ットワーク容量以上の需要が発生 している場合は,経路分担だけを考慮 した前者の アブp‑チから得 られた指針だけでは渋滞緩和 の方策立案に不十分である.通勤時間帯での 交通需要の平準化 も目指すためには,後者のアプローチによってピーク時 とオフピーク時の 通勤行動特性 も考 え合わせた分析を行 う必要性がある.交通 フローの変化 に対応 した料金設 定を行 う場合,時間軸上で時々刻々 と変化す る交通量を再現 ・考慮 しなければならない難解 さがあ り, こうした点で従来 の研究では後者のアプローチに対す る理論的検討はかな らず L も十分行われてきた とは言えない.

従来の通勤交通 の不効用に対応 した ロー ドプライシングの理論的検討 は

,Hendrickson8)

Laih9)

の研究が代表的であるが,その基本的な考 え方では,発生時刻分布 は効用関数値

により確定的に再現 されるため, トリップは待ち時間の生 じているピーク時の一部の時間帯

のみ一様に発生す ることにな り,非現実的である.実際にはピーク時以外で発生す る トリッ

プも交通行動に大 きく影響す るが,その点 は考慮することがで きない.通勤行動をよ り現実

的に再現す るため

Ben‑Akiva10)

I l l

)

Hendrickson

が提案 した効用関数を用いた 1 ,ジ ットモ

デルによって

10D

複数経路 の出発時刻選択行動モデルを構築 した. さらに

Vythoulkas12)

は複数

OD

複数経路のネ ットワークに適用できるように交通流モデルを拡張 し,経路選択に

関する均衡条件を求めている.以上のモデルの交通 フローは

Ⅰ/

0モデルを適用 した もので,

(3)

リソク内 フロー再現のための時刻 きざみ と リンク内所要時間 との整合性

,FirstinFirstout

原則 の成立が明確ではない.動的均衡条件 の厳密解を求めた研究 もあるが,そこでは通勤行 動特性は考慮 されていないことと適用ネ ットワークが限 られている1 3 ) .交通政策の導入効果 の分析において工学上有益なデータを得 ること, また実際のネ ットワークへ応用す ることを 考 えると,限 られたネ ットワークだけに適用できる数理計画モデルで評価す るよ りも,通勤 現象 メカニズムが明確 に説明でき,一般ネ ットワークで通勤行動が再現できる操作性の高い モデルで評価す る必要があると考 えられる.

前項で述べた とお り通勤時の渋滞状態に対応 した ロー ドプライシソグ方策を検討す るにあ た り,①通勤時の交通行動を再現す る.( 参T ,‑ ドプライシング方策 を行動モデルの中に反映 させやすい,③方策導入後の通勤行動の変化を詳細 に説明することができる, ことに重点 を 置 き,方策の評価 モデルは飯田,柳沢,内田の提案す るモデル

1

4

)

・ 1 5 )を用いる.そ して通勤 効用にロー ドプライシングによる不効用項 を組み込み,導入後 の各出発時刻の発生 トリップ 数 と所要時間を詳細に把握す る.料金の設定については,従来 の分析では料金の大 きさが主 に議論 されていたが,交通需要を動的にとらえた場合,変動す る交通需要に対 して, ロー ド プライシソグの実施時刻やその時間帯長な ども深 く関わることが考 えられる. ロー ドプライ シング方策は大 きく分けて,( 1 ) 料金を賦課す る時間帯を決めて,その時間帯において一定 の 料金を賦課す る固定型 p‑ ドプライシングと( 2 ) 道路上の混雑状況に応 じ賦課す る料金を変更 する変動型 ロー ドプライシング,の

2

つが考 えられる.前者の方法( 1 ) は,変動型 ロー ドプラ イシングと比較 し料金徴収が行いやす く,最 も導入 されやすい方法である. この方法では, 料金を賦課す る時間帯の長 さ,混雑を起 こしている時間帯 とロードプライシングを導入す る 時間帯 との関係,賦課す る料金の大 きさが検討事項 となる.後者の混雑状況に応 じた変動型

ロー ドプライシングは, どのような交通状態を基準に料金の大 きさを設定 した らよいか,設 定 した料金が ドライバーの通勤不効用へ及ぼす影響, また一般有料道路などでオフピーク時 の料金 は低 く, ピーク時の料金は高 く賦課す ることによって道路管理者の料金収入 に及 ぼす 影響 について検討す る必要がある. この方法は, ドライバーが料金所 を通過す る時刻 によっ て,徴収す る料金が連続的に変更 され るので,固定型 ロー ドプライシングよりも高度 な料金 徴収技術を必要 とす る.ただ しここでは料金徴収 システムの実施可能性については考慮 しな い.以上の検討項 目について数値実験により,渋滞緩和効果の一般特性を明 らかにす る.

3.通勤交通行動の評価システム 3‑ 1

通勤行動のモデル化

時間損失に絞 って通勤行動を考 えると,通勤者は出発 してか ら始業時刻 までの実効旅行時 間 と所要時間の変動 によって生 じる遅刻確率の トレー ドオ フを考慮 していると考 えられ る1 5 ) .

また ロー ドプライシソグに関す る不効用は,各出発時刻の交通状態に応 じて設定す ることを 考

AC

(

r,

t

s)

とす ると,効用関数は( 1 ) 式のよ うに表す ことができる.

Ⅴ(r,tsItd)β(t

‑ts)十yF(tIr,ts)+C(r,ts)

( 1

) r,ts,td

. '経路,出発時刻,始業時刻

(td‑ts)

. '実効旅行時間

F( ・ ) :時刻 t

s

に出発 した ドライバーが始業時刻 t

s

に遅刻する確率

通勤 ドライバーの選択可能な出発時刻

ts‑(to

, ‑

,T

)と経路

r‑(

1, ‑

,R

) の選択行動 は( 1 ) 式

(4)

の通勤不効用をもとに

NL

モデルを用いて記述す る

15).

3‑2

通勤行動の再現 と評価方法

本研究の分析に用いる通勤行動再現 システムは, リンク上の交通状態を短 い時間間隔で動 的に再現する部分 と,その通勤行動が 日々の更新を繰 り返 し,ある状態に収束する部分 から なる. リソク上の交通状態の再現では,前項で得 られた各出発時刻の トリップ数を,ボ ック ス型 の動的交通流 モデル

16)17)

に入力す ることによ り,各選択肢 の所要時間 を算出す る.収 束状態の再現では経路配分の均衡問題 の近似解法 として用 いられている

IA

法の考 え方を適 用す る.第

1

段階 として,総 トリップ数Ⅹを

(2)

式に示す よ うに

N

等分に分割す る.分割 トリ

ップ数

Ⅹは( 3) 式によって,利用可能経路の各出発時刻に動的交通流モデルを用いて所要時 間を修正 しながら,計算回数 N まで除々にかけてい く.ただし,( 4) 式を満たす.

AX

‑ i

Ⅹ(r,ts,k)‑Ⅹ(r,ts,k

1)+』Ⅹ×P(r,ts,k)

Ⅹ(r,ts,k)

:計算回数

k

の各選択肢 の トリップ数

p(r,tS,k):(1)

式 の通勤効用にもとづ く各選択肢の選択確率

∑Ⅹ(r,ts,k)

』Ⅹ

rt

s

( 4 )

このままでは初期に配分 した トリップの不効用が大 きくなってしま う場合がある.そ こで 第

2

段階では少 しずつ各選択肢 の不効用を修正 しなが ら,各時刻の発生 トリップを変更 して い く.まず発生 トリップの微小変更割合を ∂(‑一定) とし

, 1

回の修正計算 における微小 変更量を ♂

Ⅹとする. これを各選択肢 の所要時間をもとに選択確率 を修正 しなが ら

,(5)

式によって前回の発生 トリップを修正す る

.u+1

回日の修正 ト1 )ップ数は,

Ⅹ(r,ts,al+1)‑(1‑8)Ⅹ(r,ts,aJ)+SXxP(r,ts,

a J )

‑Ⅹ(r,ts,α)+∂×tX・P(r,ts,〟)‑Ⅹ(r,ts,α)) (5)

そ して前回 と今 回の発生 トリップ数を比較 し,ある誤差 古内になるまで繰 り返す.

lX(r,ts,a)‑Ⅹ(r,ts,al

l l ) I

≦E (6)

以上の方法は,収束までの 日々の交通行動の変更過程を明確に反映 した ものではないが,方 策 の導入に伴 って変化す る通勤効用に応 じた通勤行動を記述できる. また交通状態の初期値 の与 え方は収束状態に影響 を与 えると考 えられ るが,第

1

段階は初期値の与 え方について

1

つの合理的な方法 を示 していると考 えられる. よって本方法は完全情報の仮定のもとで交通 状態の収束状態を簡単 なアルゴ リズムで求め られるので実用的な方法 と考 えられる.

方策の評価手順 は次のとお りである. ロー ドプライシングの料金の大 きさや実施時間帯長 な どを政策変数 とする. この政策変数を操作決定 し,そのときの通勤者の出発時刻分布を上 述 の通勤行動の再現アルゴ リズムよ り求める.そ して再現 された交通状態を総所要時間 と総 不効用によって,合理的な道路利用 と, ドライバーの効用の両面か ら評価 を行 う.

4.

例題の基本設定

本研究の例題のネ ッ トワークは

10Dl

経路 とす る.通勤交通の場合

, 1

点集中型 のネ ッ

トワークが多 く

, 10D

l経路の単純 なネ ットワークが集中 したもの と考 えられ る. したが

(5)

って本例題のような設定において得 られた結 果 には一般性があると考 えられる.

交通条件は以下のとお りに与 える.

出発時間帯

6:00

か ら

10:00

までの

4

時間 とし, この出発時間帯をさらに

5

分間隔に分 割す る. トリップは離散化 された時間間隔 ご

とに集計する.

義‑ 1 1 )ソクの特性と効用ノ ミラメータ リソクの特性 効用パラメータ

Ⅴ 。 C

β γ

40 80 0.05 ‑10.00

Ⅴ。:

自由走行時間 ( 分)

C:

容量 ( 台

/5

台) 動的交通流モデルの諸条件 ネ ットワーク. の

1

)

ソクの容量 と, 自由走行時間を表

‑ 1

に示す.( 1 ) 式の実効旅行時間損失に関す るパ ラメー タβ は,出発時刻の分布形 に大 きな影響を与 える.平成

2

年度長野都市圏

PT

調査 データ を用いた実証的な分析 よ り,一般道路では

β15)

0.05

前後であることが分 か っている.そ

こで効用パ ラメータは表

‑ 1

のよ うに仮想的に与 えた.

5.固定型 ロー ドプライシングの効果分析

本分析では,実施時間帯範囲内で一定の料金を道路利用者か ら徴収する場合を考 える.

方策実施時間帯を ( i, 冒)とす ると

,(1)

式の料金の項 は( 7) 式の ように表す ことができる.

C(ts) C, :t≦ts

≦f

= ≡:

0

;ts<t,ts>t

( 7)

5‑ 1

料金の大 きさが渋滞緩和効果に及ぼす影響

料金不効用 C,を,

0.5,10.2,‑4.0

と変化 させた ときの総所要時間を比較す る.本例題 の実施前の出発分布を調べた結果,道路容量を超 えた混雑時間帯は

7:50

か ら

8:15

までであ った.混雑期 に集中している ト1 )ップを分散することを考 え, T ]‑ ドプライシング実施時間 帯 は

7:50

か ら

8:15

まで とした.計算結果 を図

‑ 1

に示す.

C

。 が

0.5

4.0

の ときは大 き な効果が得 られていない.賦課す る料金が大

きす ぎると,実施時間帯以外の不効用の小 さ い時刻に トリップが大 きく集中し,混雑を引 き起 こす ことが予想 される.逆に賦課す る料 金が小 さす ぎると,混雑期 に集中 している ト

リップが分散する量が小 さく混雑 は改善 され ないことも分かる.

5‑ 2

実施時間帯 と混雑緩和効果 との関係 ここでは実施時間帯 とその長 さをい くつか 設定 して数値計算を行 う.実施時間帯の長 さ は道路容量 よ りも発生 トリップ数が多い混雑 時間帯に対 し,①混雑時間帯の長 さよ り短い

8:00‑8:10

,( 卦混雑時間帯の長 さと等 しい

7:50‑8:15

,③混雑時間帯 よ り長 い

6:45

‑8:50

3

つを設定す る.また時間帯 の設

捻所

時間(令)

0 1

2

3

0:

方策実施前

,1:

C

ニー

0.5 2:C,ニー2.0,3:Cニ ー4.0

図‑ 1 料金と所要時間の関係

(6)

m

時 間 (令 )

台 350 3(X) 250 発 2( 丑150

1(X) 50

0

0

1 2 3 4 5

6

:30 7:

α )

7:30 8:

8:30 9:

( X )

0:

方策実施前

,1:8:00‑8:

1 0 , 図‑ 3 実施時間帯と出発時刻分布との関係

2:7:50‑8:15,3:6:45‑8:50,

4:7:50‑8:30,5:7:30‑8:15

‑2

実施時間帯 と総所要時間との関係

定 は④遅めの時間帯

7:50‑8:30

に延長す る,⑤早めの時間帯

7:30‑8:15

に延長す る,の

2

つを設定す る.料金不効用

C

。は

‑2.0

を用いる.それぞれの総所要時間 と出発時刻分布を 図

‑2,3

に示す.

渋滞緩和効果は, p‑ ドプライシング実施時間帯を混雑時間帯 よ りも遅めの時刻 に延長 し た設定④場合が最 も効果が高かった. この理由を混雑時間帯に料金を賦課す る設定② と比較

し考察す る.通勤者は料金が賦課 されている時間帯を避けるよ うに行動す るが,設定( 参の場 合 は方策実施後渋滞が緩和 し,実施時間帯 よりもさらに遅い出発時間帯でも始業時刻 ぎ りぎ りに到着可能 となるので,図

‑3

に示す ように この時間帯 に トリップが集中 し,大 きな渋滞 が生 じやすいことが分かる. これは固定型 ロー ドプライシソグの実施 にともなって起 きやす い交通現象の大 きな特徴で,通勤者は実施時間帯を避 け,他の出発時刻 と比較 して相対的に 不効用が低い実施時間帯の直前直後の出発時刻に集中するためで, シンガポールで実際に起 きた現象である.そこで設定④ のように,方策実施で渋滞が緩和 された ことによって始業時 刻 ぎ りぎりに到着できるよ うになった時間帯にも料金を賦課す ると,遅めの時刻に生 じるピ

ーク トリップも分散す ることができる.

実施時間帯長による渋滞緩和効果は,混雑期間長 よりも短す ぎても長す ぎても十分 な混雑 緩和効果が得 られないことが示 されている.設定( むのように実施時間帯が短 く設定 されると, 混雑時間帯に集中 している トリップを十分に分散できない.また設定@ のように実施時間帯 が広す ぎると,実施時間帯以外の選択可能な出発時刻が極端 に早いか,あるいは遅 くなって しま うことから,方策 を実施 しても通勤者は出発時刻選択行動を変更 しない可能性がある.

6.変動型ロー ドプライシングの効果分析

本分析では混雑の度合いに応 じた料金を設定することを考 える.そして通勤時間帯 を通 し 混雑による待ち時間をなくし,すべての出発時刻で自由走行時間が実現す ることを目指す.

ロー ドプライニングの設定方法 として以下の

3

つの方式を提案 し,その妥当性を検討す る.

混雑待ち時間による方法 :待ち時間の大 きさを混雑の度合いとして料金を設定する直感的 な

(7)

方法である.具体的には方策実施前の各出発時刻の トリップの所要時間から自由走行時間を 引いた混雑待ち時間に,不効用換算係数を乗 じた料金不効用を用いる.( 1 ) 式の利用金の項 は

(8)

式 となる.

C(ts)

‑E ・ ( t , ( t , ) ‑ t F ) ( 8 )

t,(ts)

:方策実施前の出発時刻

ts

の所要時間 t F :自由走行時間

E:料金不効用換算係数

遅刻確立差による方法 :通勤不効用が小 さい出発時刻 に トリップが集中すると考 え られ るこ とか ら各時刻の不効用の大 きさに応 じて料金 を設定す る.そ こで方策実施前の各出発時刻の 通勤不効用か ら,通勤時間帯 を通 し自由走行が実現 した ときの通勤不効用

Ⅴ。(ts)

を引いた 値を用いる.実効旅行時間の損失 コス トの大 きさは交通状態に依存 しないので, 自由走行が 可能 なときの遅刻確率を

F。(t。Its)

とす ると,料金不効用は( 9) 式の ように遅刻確率差で表せ る.

C(ts)

(Ⅴ(ts)‑Ⅴ。(ts))

γ

・(F(t。Its)‑F。(tdlts)) (9)

システム最適方式 :通勤時間帯の各出発時刻 の発生 トリップ数を道路容量 S以下に押 さえる 方策を考 える. トリップ数が Sになる不効用を

書とす ると,発生 トリップが S以下 となる ためには各時刻の通勤不効用が

● 以上 となればよい. この状態 は,通勤不効用が

Ⅴ(ts)

の ときロジ ットモデルによる出発時刻選択確率 を p ( Ⅴ( t

s))

,総 ト1 )ップ数を

X

とす ると,

S‑ Ⅹ ・p( Ⅴり

Ⅴ(ts)≦Ⅴ書 ;(tsー。,・,T)

S≧

Ⅹ ・p

(Ⅴ(ts)) ;(ts

ー 。 , ‑

,T)

のよ うに表せ る.発生 した トリップがすべて道路容量 と等 しくなると実施時間帯 は短 く,

㈹ 仙 ㈹ 時

間損失に関す る総不効用 も小 さくなる.そこで各時刻の トリップが道路容量 と等 しくなるよ うな効率的な分散を目指 し,図

‑ 4

の概念図に示す ように料金を賦課す る.

Ⅴ(ts)‑V。(ts)+C(ts)

C(ts)

V'‑V。(ts):Ⅴ

'

≦Ⅴ。(ts)

0

:V'>V.(ts)

書は解析的に求めるのは困難なので

,Ⅴ

'を小刻みに変化 させなが ら,8 0 ) か ら

02)

式で示 さ れる交通状態が成立す るときの

C(ts)

を求め ることにす る.

以上

3

つの方式の渋滞緩和効果の比較を行 った計算結果を図

‑5

に示す.現状 の交通状態

をもとに料金を設定 した前者

2

つの方法は,十分な渋滞緩和効果が得 られなかった.混雑待

ち時間による方法の図

‑ 6

の発生時刻分布を見ると,方策実施前 よ りも早めの時刻で t = ' ‑ク

が発生 している.所要時間の大 きさに応 じて料金を設定 しているが,各発生時刻の所要時間

は前時刻 までに発生 した トリップの待ち行列長に依存す る.そのため現状のピーク トリップ

の発生時刻以降に最大料金が賦課 され,遅めの時刻での出発が制限 されてしま う可能性があ

る.遅刻確率差の場合 も,方策実施前 よりも早めの時刻で ピークが発生 している. 自由走行

時の遅刻確率分布 は方策実施前 と比較 し所要時間が小 さいため,遅い時刻で大 き くなる. し

かし方策実施前の遅刻確率分布はピーク発生時刻以降急激 に大 きくなる. よって料金不効用

(8)

‑4

システム最適方式の料金設定方法の 概念

ll(也) 8S! SS∞EBll

且(台)

0 1

2 3

o:

方策実施前

,1:

混雑待ち時間法

2

:遅刻確率差法,3: システム最適方式 図‑ 5 変動型の各方式の所要時間の比

料 金

不効

6:30 7:( 7:3

0 8 : ( 氾 8 : 3 0 9

:

C O

6:3) 7;CO 7:30 8:I 8:30 9:〔沿

出発時刻

出尭時刻

B1‑6 混雑

待ち時間法と遅刻確率法の出発 図

‑7

システム最適方式の出発時刻分布と 時刻分布 と料金不効用 各方式の料金不効用の比較

は実施前のピーク時刻以降に大 きく,遅めの出発時刻が制限されて しま う.以上,料金の設 定 は方策実施後の トリップの変化に対応 させ る必要があることが分かる.

システム最適方式による料金の設定を見 ると,図

‑ 7

より前者

2

つの方法 よりも実施時間帯 が広 く,早い時刻から実施 されている. この設定はピーク時の ト1 )ップ数をピーク時以外の 時間帯にも多 く分散 させ ることと,実施時間帯以外の時刻で時間損失不効用が極端 に小 さく,

トリップが大 きく集中 しないためである. また実効旅行時間は小 さいほど通勤不効用は小 さ くなるので, これに応 じて料金は遅 い時刻 ほど大 きく設定 している.本例題 では,発生 トリ ップを道路容量以下に抑 えることを目指 した極端な例 を示 したが,一般的に渋滞を緩和す る 場合,以上示 した料金の設定効果を考慮す る必要がある.

7.

お わ り に

本研究 は,料金政策 による出発時刻分布 の変化を動的に再現 した.そして交通状態を所要 時間 と不効用関数を用い,道路管理者 と利用者の

2

面か らみた導入効果 を評価 した.

数値実験によって,一般的なロー ドプライシソグの効果特性 をい くつか拙出した. これ ら

は単純なネ ッ トワークへは比較的容易に反映で きるが, ここで行 った分析方法 と効果特性 は,

(9)

一般的なネ ッ トワークにおいて有効 な ロー ドプライシングを立案す るために,考慮 しなけれ ばな らない項 目である.以下明 らかになった特性 を述べ る.

固定型 ロー ドプライシングの導入効果の一般特性 を述べ る.

( 1 ) 導入後の出発分布 の特徴 は,賦課時間帯の直前直後 の時刻が,他の時刻の不効 用 と比較 して相対的 に低 いため,賦課時間帯の直前 と直後 に トリップが大 き く集中す る可能性 があ る.

( 2) 導入後の出発分布の特徴 から,料金 は大 きす ぎても小 さす ぎて も, トリップは効果的に 分散 されない. また実施時間帯 が広す ぎると,通勤行動が実施以前 と選択行動が変わ らな いため,渋滞緩和効果が小 さい,始業時刻 ぎ りぎ りに到着で きる遅めの出発時間帯 に適正 な料金 を賦課す ると,通勤時間帯の最大 と最小 の不効用差が小 さ くな り,出発分布 は各時 刻 に分散す るので,混雑 も緩和 され ることが分 かった.

交通状態に応 じた変動型 ロー ドプライシングの導入効果の一般特性 を述べ る.

( 3) 方策実施前 の所要時間や不効 用に応 じて料金 を設定す ると, ピークの発生時刻以降 の遅 い出発時刻 に大 きな料金が賦課 されやす く, ピーク需要を効率的に分散す ることはで きな

い.

(4

) 通勤時間帯 を通 して自由走行 を実現す るためには,料金 は不効用が極端 に小 さい時刻 が 生 じないよ うに早 い時刻か ら料金を賦課 しなければならない.そ して実効旅行時間が小 さ いほど通勤不効用 は小 さ くなるので,遅 い時刻 ほど料金を大 きくす る必要がある.

参 考 文 献

1 ) 原田 昇 :アメリカの交通需要管理‑混雑緩和 と大気保全の効果,交通工学

No.2Vol.27 pp.59631992

2)

藤本 聡,塚田幸広 :郊外における交通渋滞 の管理 :郊外 のモ ビリテ ィ戦 略,交通工学

No.5Vol.27pp.53621992

3)

毛利雄一 :交通渋滞軽減のための道具箱,交通工学

No.6Vol.27pp.47541992

4 ) 矢野代二郎 ,鎌田誘治,駒田牧夫 :ノル ウェーの有料道路制 と料金自動収受システムについ て.交通工学

No

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4Vol.26pp.29351991

5)

田中直樹 :フラソスの高速道路における渋滞対策を目的とした変動料金制度とバ リ環状道路に おける所要時間の提供について,交通工学

No.6Vol.30pp.53631995

6)

宮城俊彦,浅井敦司,岡 昭二 :フレックスタイム制導入に伴 う道路交通環境変化のネットワ ークシ ミュレ‑ショソ分析,交通工学

No.1Vol.31pp.35431996

7 ) 飯田恭敬編 :交通工学,オーム社

,1992

8) C.Hendrickson,G.Kocur:ScheduleDelayandDepartureTimeDecisioninaDetem inistic Model,Transn.S°iVol.15,No

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9) Lain,CH:QueueingataBottleneckwithSingleandMuユtiStepTol

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10) M.Ben‑Akiva,A.D.PalmaandP.Kanaroglou:DynamicModelofPeakPeriodTra爪c wim ElasticA汀ivalRates,Trams.S°i.γol.20.No.2.pp.164181,1986.

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13)

赤松 隆 :動的配分理論 の現状 と役乱 土木 計画学研 究 ・講 演集

No.17pp.11381140, 1995

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14)

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,No.9pp.93100,1991

11

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16)

鷹尾和亨 :経路選択 シ ミュレ‑ショソによる動的交通量配分 ,土木学会第

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10

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飯田恭敬 ,内田 敬 ,藤井 聡 ,鷹尾和事 :渋滞の延伸を考慮 した動的交通流シ ミュレ‑シ ョ

ソ,土木計画学研究 ・講演集

,No.14(1)1991

年 1 1 月

参照

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