自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな 回復力
著者 山下 純一
雑誌名 産業経済研究
巻 52
号 4
ページ 455‑497
発行年 2012‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/11316/263
久 留 米 大 学 産 業 経 済 研 究 第52巻 第4号 (2012年3月) ー 1ー
論 文
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力
山 下 純
要 旨
自然資本の評価の問題をシステムの回復力の視点、から考察する.自然資本は 人聞の生存に必須な様々なエコシステムサーピスを提供するが,その供給の 持続可能性が近年大きな問題となっている.これまでの自然資本の管理の理 論的は枠組みは,基本的に経済効率性を中心としてきた.MSYのような均 衡概念によって管理目標を定め,その数量への最適な制御経路をフォローし ようとする手法である.しかし,このアプローチに基づく管理は,生態系の 中での自然資本の回復力を弱める危険性がある.本論文では,まず,伝統的 な資源管理手法の理論と実際を概観する.そして,単一の制御変数の効率的 な最適化に依拠する管理が.自然の自己組織化の視点に弱<.結果として,自 然資本とその供給するサービスの持続可能性を危うくしていることを,理論 的・経験的に考察する.
目 次
1.はじめに:自然資本評価の展開
2.持続可能性
2.1.資本概念の分類と指標
2.2.理論モデルにおける持続可能性 3.実際の資源管理政策
3.1.我が固の漁獲規制
3.2.アイスランドにおける漁獲管理
4.再生可能資源管理の動学 4.1.動学的な資源管理モデル
4.2.均衡への収束と安定性:モデルI 4.2.1.利潤に緩やかに反応するケース
4.2.2.利調への反応が急速なケース
‑2‑
4.2.3.内生的成長率のより小さなケース 4.3.管理政策の観点からのモデルの評価
5.エコロジカルな安定性と回復力 5.1.工学的な視点
5.2.生態学的な視点
5.2.1. r害虫J管理の長期的効果
5.2.2.珊瑚礁のレジームシフト 6.レジームシフトの簡単なモデル
6.1.放牧地のエコシステムの表現
6.2.結び資源管理政策への含意
1 .はじめに:自然資本評価の展開
古典派の時代から,土地に代表される自然資本は,経済活動の成長を外部から 制約する要因であった.それは収穫逓減という概念によくあらわれている.技術 や知識の進歩によってある程度緩和されるとはいえ,人口の増加も経済の発展も,
自然の制約によって規定されるある定常状態に向かうものとみなされた.
現代的な経済理論では,当初そうした自然資本のもたらす制約には大きな注意 が払われず,もっぱら市場を経由してなされる取引の資源配分の特性に関心がむ けられた.その結果は,厚生経済学の基本定理に集約されている.それによれば,
ある一定の条件の下で,経済的に効率的な資源配分は市場機構を通して実現され る.しかし,市場で取引きれず,したがって補償されない活動の影響によって,
我々の福祉が影響をうける事例も存在する.環境汚染に起因する公害はその典型 例である.これらの市場外部性が現実の問題として切実になるにつれて,環境と 人間の経済活動の聞の相互作用に対する関心の視野は拡大するようになった.
20世紀の後半から 21世紀にかけて,市場の外部にある自然資本のもつ経済的 な意味づけはさらに深化した.これは特に,あらゆる人間活動の基礎にあり,こ
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回御力(山下) ‑3ー
れまで当然と恩われてきたサーピスの持続可能性が疑われるようになったからで ある.つまり,様々な再生可能資源の供給,土壌の保持,作物の受粉や栄養素の リサイクル,汚染物質のフィルタリングや廃棄物の同化作用,洪水や気候変動の 調節,大気中のガス濃度の維持や水の循環といった様々なフローやプロセスが,
拡大する人間活動の影響を強く受けるようになった.その結果,将来の世代に渡つ てのその持続的な利用が必ずしも自明ではないことが意識されるようになった (Meadows, Randers, and Meadows[37 ,] Rands et al. [40] , Stokstad[44 ,] Walker et al. [47]).温暖化はその代表例である.
このような意識の深化は,自然資本とそのもらたすエコシステムサービスを評 価して,富の概念に繰り入れる試みを活発化させている (Brocket al. [6], Kumar[30 ,] Maler, Aniyar, and Jansson [33 ,] [34]). もちろん,それらは 程度の違いはあれ公共財としての性格をもつことがほとんどで,市場評価になじ まない.したがって,何らかの統一的な基準が確立されているわけではない.現 在,様々な評価の試みが進行中であり,今後も試行錯誤が続いていくであろう.
この論文もそうした研究の系列に連なるものである.特に自然資本評価の理論的 な側面に注意を向けた研究である.
上で言及したように,従来の伝統的な経済理論の評価手法では,自然は基本的 に経済システムを外から制約する与件とみなされている.つまり,ある単一の経 済社会的な目標を定めて,自然をその一部として含む種々の与件のもとで,目標 値を最適化する制御経路は何かが問題となる.その解から導かれる自然資本の管 理が,資源管理政策の理論的な基礎となる.
この論文は,こうした経済工学的なアプローチの限界を考察することに主眼が ある.このような見方では,自然と経済社会の相互作用の過程で生じる現代の世 界的な環境問題と自然資本の正当な評価は期待できないと考えるからである.自 然資本が人聞社会にとっての持続可能性と有益性を持ち続けるためには,自然資
(457 )
‑4‑
本の回復力を維持するような管理政策がもとめられる.これは主にエコロジスト の見方である.そのような観点からもとめられる自然資本の管理とはどのような
ものかを,主に論文の後半で考察する.
論文の構成は,以下の通りである.最初に~ 2で,自然資本の分類と持続可能 性の概念の理論的な基礎をふりかえる.その後~ 3で,日本やアイスランドなど の実際の漁業資源管理のなかに,その概念がどのように生かされているのかの実
例をみる. 次に~ 4では,簡単な動学的な資源収穫モデルを構築して,管理政策 の観点から動学モデルの経済効率性をふりかえり,従来の資源管理政策の基本的 な構造を明らかにする.そして最後の~ 5 と~
6
で,資源管理政策に生態学的な 視点を導入する.とくに,エコロジカルなシステムの複雑性と,レジームシフト とシステムの回復力(復元性)に注目する.これは自然システムを管理する際の 中心的な見方であると思われる.それらの見方が,自然資本の管理に何を意味す るのかを最後にみる.2 .
持続可能性2.1.資本概念の分類と指標
自然資源の管理は,経済開発の持続可能性との関連で近年とくに注目を集めて きた.経済発展が自然資源の管理に優先して環境破壊をもたらしてきたからであ る.そこで,持続的な開発をどのように定義し,それをいかに測定するか,とい う問題が重要となる.
持続可能性の概念については様々な定義がある.よく知られているのは,Brundt・
land委員会 (TheWorld Commission on Environment and Development) によるによる国連総会への報告書 (1987年)にある定義である.それによれば,
持続可能性(あるいは持続的開発)とは
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑5‑
development that meets the needs of today without inhibiting the ability of future generations to m即ttheir own needs
とされる1) この定義は,自然資源の利用と管理が社会経済の将来に関する人類 史的な視野のなかでなされるべきことを教えているが,定義があまりにも一般的 であるため,実際に持続可能な開発には何が求められるのかに関しては,意見の 相違がある.そもそも「開発
J
とは工業化のことなのか,生活水準の向上をもた らす経済発展あるいは社会経済的な変化一般をいうのか,あるいはそれは純粋に 経済的な概念として理解すべきか,政治的,制度的な側面をも含めて考えるべき かなど,論点は多岐にわたる.その見方の相違に応じて,なにを持続可能性の操 作上の対象とするかーたとえば,経済成長率のような具体的目標ーが異なってくる.
さらに,持続性における経済面に力点をおくのか,環境におけるエコロジカル な面の持続性を強調するのかでも,現実目標は異なる.たとえば,時刻tにおけ る代表的な経済主体の効用(経済厚生)水準を U(t)とおけば,この効用が時間 に関して減少しないこと,つまり dU(t)/dt注Oを持続可能性とみる立場もある.
一方,資源ストックの定量的な維持がどれほど可能か,という側面に注目して持 続可能性をとらえる見方もある.そのようなケースでは,資本ストックの分類が より詳細になる.たとえば,道路や工場あるいは機械のように通常の資本(man‑
made capital) Kmのほかに,知識や技術を体現したものとしての人的資本Kh. 社会組織とそのなかのネットワークおよび社会の行動規範のような社会資本Ks. および天然資源や炭素循環あるいは生物多様性などのサーピスを生み出す自然資 本広に区分することができる2)
上述の資本の分割は,じつは持続可能性の定義と密接に関連している .Kn.Kh' 1) Adelson et al. [1]. p.142・144参照.
2)広は環境問題の解決にとってきわめて重要な資本概念である(Walkeret al. [47]).
‑6ー
Kmを合計して,総資本ストックをK =K,,+Kh+Kmと定義するとしよう.Kが 定義できると仮定することは,そもそもそれらの社会的貢献が共通の評価尺度に 還元されるということを意味する.言い換えれば,Kの構成要素は互いに代替可 能であるということであり,共通の尺度となるのは何らかの価値評価である.理 論的にいえば,これはそれぞれの資本の貢献が限界単位で比較できるということ
を意味するから,新古典派経済学の限界原理に立脚する持続可能性の考え方であ る.この集計された資本のサイズK が将来にわたって維持されてゆくことを,
弱い意味での持続可能性とよぷ.基本的に,この立場をとる論者は経済学者に多
¥{'.
たとえば, Solow [43]は持続可能性がそもそも暖昧さを内包せざるをえない 概念であることを認めつつも,
r
それが鉱物であれ,ある魚種であれ,あるいは環 境上のアメニテイであれ,かけがえのない何ものかを利用するときには,等しい 価値をもっ代替物を提供することについて考えるべきである.ここで価値の概念 についての暖味さが生じる.引き替えに提供するものは,知識や技術でもあり得 る.物理的なモノである必要さえないj とのべている.つまり,等価物を定義す るときに,価値評価で問題は残るものの,異なる資本概念の聞での代替は基本的 に可能という立場である.一方,これに対して,市場経済の評価になじまない資本概念,たとえば丸をど のようにして算出するかという反論がある .K"の少なくとも一部の機能は代替 不能であるから,それは貨幣評価になじまず,限界的に切り取って比較すること
はできないと見る論者もすくなくない.このような立場,すなわち,自然資本の 社会のネットワークと行動規範がいかに一国あるいは欧州連合のような地域システム 全体の持続可能性に重要な意味をもつかは,近年のアイスランドやギリシャなどの債 務危機にその実例を見いだすことができる.たとえば,アイスランドで漁獲割り当て が証券化される経緯の文化的背景についてMichaelLewis [31]に示唆に富む記述が ある.しかし以下では,この資本概念Ksは無視し,考察しない.
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑7‑
致損は持続可能性の否定につながるという考え方は強い意味での持続可能性と よばれ,エコロジストに多い見方である.彼らが重視するのは非線型で不可逆的 な自然システムの特性である.つまり,環境システムの中のレジームシフトや閥 値の存在である.これは新古典派経済学の資源配分の効率性や定常状態への収束 を焦点とする動学分析と鋭く対立する世界観である.この論点に関しては,以下
の~ 5 および~ 6で考察する.
持続可能性の定量的な評価はいくつかの指標という形でなされてきた.前者 の立場で考えるとき,弱い意味での持続的発展の指標のひとつに,純貯蓄
(Genuine Savings)がある3) 純貯蓄はあらゆる形態の資本の価値低下を考慮 にいれて,純投資の形で資本の増減をみる.これを上の資本区分を用いてもっと もシンプルな形でのべれば, Kmへの純投資プラスKhへの投資(たとえば,教育 支出)から自然資本K"の価値低下を控除した値とみることができる.ここでK"
の価値低下にカウントされるものに,たとえば環境汚染があり,温室効果ガスに よる大気汚染を, COz排出量1トンあたりのコストで評価する川 .GSのような 指標は,自然資源の評価を組み込んでいるという点で,社会の持続可能性の評価 として
GDP
のような市場経由の財・サーピスの評価より広範な社会の富の姿を 明らかにする.一方で,それは市場性をもたないK"のような資本の評価価格が 適切であるかという問題をはらんでいる.つまり, GSの値がプラスになってい ても,評価価格が不適切ならば,持続可能性を意味しない.3)強い意味でのエコロジカルな持続可能性をとるとすれば,たとえばエコロジカル・
フットプリントという指標がある.
4)発展途上国における具体的なGSの計算例としては,たとえばHamiltonand Clemens [18]をみよ.
( 461 )
‑8ー
2.2.理論モデルにおける持続可能性
いま資本の代替可能性を認めるとすればそれらをいかに効率的に利用するか が問題となる.資源管理の手法も,最大の効率性を達成するように収穫を制御す るというアプローチとなる.とくにいかにしてMSY (maximal sustainable yields)を達成するかが,経済学的な資源管理政策の主題であった.このアプロー チをふり返ってみよう (Conrad[10]).
収穫の最適制御と MSYの考え方は,次のような簡単な T期間の有限離散モデ ルで説明することができる.離散時刻tにおける資源ストックサイズを X(t)と 記す. (再生可能)資源の成長関数を F(・)とすれば F(X(t))
+
X(t)がt期の 資源サイズである.この中から収穫される大きさ Y(t)を除けば,それが次の期 のストックサイズ X(t+1) となる.つまり 資源の増殖と収穫のサイクルは差 分方程式 X(t+1) =X(t) +F(X(t))ーY(t)であらわされる.この資源から得られる社会的便益を関数 U(X(t),Y(t))であらわす.このとき,
伝統的な限界原理に基づく資源管理は,以下の最適化問題の解 Y(t),t=O. 1. .... Tを,資源利用の指標とする管理政策である:
T
m砿
2 ρ
tU(X(t).Y(ο )
y(t):t=O....T t =0
subject to:X(t+1)
=
X(t)+F(X(t))ー Y(t).X(O)=
x. (1)(1)の X(O)= xは資源ストックの初期値である.
この問題から最適な Y(t),t = 0, 1,…,Tをもとめるためにラグランジュ関数L を次のように定める:
T
L=~
ρ州t吋{U以(X爪( ω t ο
仏〉λ
,Y(ω ο ω )
胡+
ρμA以山( ω t
川 ) [X刈( ω ω t ο
)+F(X爪( ω ο ω )一y ( ω t ο
ト )一
X灼( ω t
川+叫1) (2)自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑9ー
ここでえ(t)はラグランジュ乗数であり それぞれの期の資源ストックの除の価 格をあらわす.またρは現在価値をもとめるための割引率ρ三1/(1+δ).δ>0 である. LはX(t). Y(t). ).(t+1)によってその値が決まる.最適の必要条件 から,以下の3条件をえる:
。 u
̲,. ̲ ,au .
,̲ • ̲ ,, ̲ • ,̲一 一 一 一 一
=ρA(t+1)一 一 一 一 一
+ρA(t+1) (1 + F') = A(t). aY(t)・
aX(t)X(t+ 1) = X(t)
+
F(X(t))ーY(t).上式で
F '
はFの導関数である.この最初の式は収穫の限界便益は.資源の陰の 価格の現在価値ρ).(t+1)に等しくなるということを意味する.最適解が定常解になるケースを考えよう.つまりある一定の値の組 (X.,Y.,
A・)が存在して時間tに関わりなく (X(t),Y(t). A (t))) = (X・,Y,・λ・)と なる状態をかんがえる.上の3つの式から時間 tをのぞいて整理すれば,広三 θ
u /
δX,u
lI= au/
θYとかくとき,定常解 (X・,Y .
, ).・)はI , ~,., • ll%(X・.Yつ
F'(Xつ+‑
日
::::(
‑:.X
‑‑.
̲..Y
= ‑ ‑ . ̲ : )
=δ, F(Xつ= Y・
(3)をみたす.
( 3 )
の最初の式の右辺は,投資の機会費用を表す割引率6
である.左 辺は自然資本の限界成長率に資源ストック 1単位のもたらす社会的便益(1単位 を収穫するときの限界便益で相対評価した値)を加えた値である.つまり,自然 資本の内部収益率とみなすことができる. (3)はその両者が均衡することをもと めている.(3)をみたす (X
ぺ
Yつをかんがえよう.この組はバイオエコノミック均衡と よばれる.バイオエコノミック均衡から MSYの概念がみちびかれる.MSYのnu
例をみよう.たとえば,社会的厚生関数を u (x, y) =勾 と お し 資 源 の 再 生 産関数がロジスティック成長をしめすときには,F(x) = r.r: (1‑x/K) とおくこ とができる.ここでr>O,K
>
0は定数であり,とくにK>Oは環境の最大負 荷許容度 (carryingcapacity)をあらわす.Y 0.8
F'(x)+与=δ
y
﹄
MY
0.4
0.2
4 6 X x
。
2 8 10 図1 r =0.24, K= 10,δ=0.02のケースのバイオエコノミック均衡図1の点 E のあらわす平衡点 (X・,Yつがバイオエコノミック均衡である.
さらに,点Eが放物線y
=
F( x )
の頂点にくるケースの収穫量Y・を MSYと いう.上記の例では資源ストックの長期的な定常状態が存在すれば,それは一意 に定まる. したがって,資源利用はその値を Y(t)= Y・に維持することによっ て,ストックサイズX(t)= X・で持続可能であることになる.自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ー 11ー
3 .
実際の資源管理政策3 . 1 .
我が国の漁獲規制MSY
の概念は実際の漁業の資源管理政策にも生かされている.実際の例をま ず日本について,次にアイスランドについてみてみよう.まず我が国の例をみる.水産庁は, 1997年から,日本の排他的経済水域 (200 カイリ内)で,漁獲可能量制度 (TotalAllowable Catch)を導入した.TACの 対象となっているのは,サンマ,スケソウ,マアジ,マイワシ,サパ類,スルメイ
カ,ズワイガニである.TACは水産総合研究センターによって算出される生物 学的な漁獲許容量の推定値を基準として決定される.とはいえ,サンマ,スケソ ウを除いて,割り当てを超える漁獲に対する罰則はないこともあって,様々な業 界団体の間で利害の衝突がおこってきた5)
TACでは実際の漁獲管理の運用か灘しいことがすくなくない.たとえば,個別 に漁船あたりの漁獲割り当てがなされていない限り,我先に漁場に殺到し,でき るだけ早く大量に収穫しようとする6) 結果として,漁期のはじめには供給の増 加がおきやすく,市場価格を押し下げる要因となる.一方,割り当て上限がいっ たん達成されてしまえば,人も船も遊んだ状態になる.もしそのとき単価が高く なっていれば,漁業者が操業継続を希望するのは当然である.その要望に応えて TACの追加をおこなえば,業界団体聞の対立に発展しかねない.実際, 2007年 秋にこうした状態が生まれた.そのときに水産庁が決定したサンマ漁についての
5)罰則規定がないのは,竹島周辺およひ@東シナ海の日中,日韓の聞での共同利用水域 があるからである.また,種々の業界関連団体の対立については,本田 [49]参照.
6)漁獲管理としては,漁船ごとにTACを決定するという方法も考えられる.この方 法は経済合理性と矛盾しないかという問題がある.実際,この個別割り当て方式の導 入を検討していた水産庁の有識者懇談会は2008年12月,
r
管理コストが膨大になるj などの理由で導入は適切ではない,とする報告書をまとめた(本田[49],p.148).ま た,複数の魚種が対象になる漁の場合は,そのなかのいくつかの魚種を過剰にとることが有利になることもあり得る(米国西海岸の底魚トロール業の例).
‑12‑
TACの大幅な追加は,漁業者団体と流通・加工業者の聞の厳しい対立をうんだれ.
我が国で採用された TAC以外の資源管理手法として漁獲努力のインプット レベルをコントロールする漁獲努力可能量 (TotalAllowable Effort)の制御 政策がある.船の数や操業の日数,漁法などについて規制を設け,一方で,減船,
休漁,漁具改良などに関わる経費を国や地方自治体が補助する.実効性という面 では, TACよりも確実な手法である.
しかし,世界的にみれば,漁獲努力の直接的なコントロールやTACは,資源 の持続的な利用可能性と経済社会的な便益の同時的な実現という意味では,残念 ながら効果的に機能しないことが多々あった (Grafton[16]参照).漁獲割り当 てがうまく機能するためには,それが漁獲に対する漁業従事者のインセンテイプ を根本的に変化させるのでなければならないからである.たとえば,より速い船 に,優れた魚群探知システムを装備することが利益につながるのならば,設備投 資のインセンテイプが生じるのは当然であり,我先に大量に漁獲することが目標 となりやすい.その延長線上には,資源の枯渇がある.そうではなくて,漁業者 が資源の長期的な保護に主体的な関心をもつことが経済性と両立するように,ふ
さわしい仕方で割当制度の中にインセンテイプを組み込まなければならない.
そのような誘因の変化をもたらす手法として,譲渡可能個別割り当て (Indi‑ vidual Transferable Quatas)がある.ITQは環境汚染における外部性の内部 化の手段として用いられる譲渡可能汚染許可証と基本的に同ーの考え方に基づく.
ITQのもとでは,魚種ごとにTACが割り当てられ,その保有シェアの売買やリー スが可能である.1単位の ITQを売却する方が, 1単位分の漁獲よりも利益が出 ると見なす主体はその割り当ての売却やリースを行うであろう.逆に,さらに多 くの漁獲割り当てを得たい漁業者は シェアを入手しようとするであろう.漁業
7)本田[49]第5章参照.
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ー 13ー
管理者は, ITQの初期配分を決定して,漁獲をモニターするだけであり,割り当 てシェア l単位の価値は需給関係で決定される.ITQの導入によって,各国の漁 業で収益性が改善し,同時に水産資源の維持も可能となった.
3.2.アイスランドにおける漁獲管理
アイスランドのITQの例をみてみよう (Gissurarson[15]参照).アイスラ ンドの漁業省は,アイスランド近海における異なる魚種のTACを毎年決定して いる.これは科学的な資源保護の見地から海洋研究所 (TheMarine Research Institute)によってなされる MSYの推定値に基づいてなされる.
アイスランドでは1960年代半ばにニシン漁のブームがあった.これは乱獲に つながり, 1974年にニシン漁は一時禁止となる.漁の再開に際して,漁船一隻あ たりの個別の TACが導入されることとなった.制限に反対する生産者はすくな かった.これは漁業従事者自身が資源ストックの崩壊を懸念していたこと,また,
漁船の規模や漁獲成績がほぼ一様であり, TAC割り当てに際しての不満が小さ かったためであるといわれている.1979年にはニシンのTACが譲渡可能となり,
1986年にはシシャモ漁にも ITQが導入された.図2からわかるように,近年の シシャモのTACは著しく減少している.
一方,大陸棚近海の底魚(タラ,カレイなど)については事情が異なる.とく に商業的にもっとも重要であったタラ (Atlanticcod, Gadus morhua)漁につ いては漁業者間で利害の対立が生じた.上記のニシン漁とは異なり,漁船が一様 でなく,それ自身工場のようなトローラー船から中型・多目的漁船,さらには小 型の手漕ぎ船まで多種多様であったからである.さらにタラは 1975年頃にはす でにストックが減少していたため,個別TAC割り当てはデリケートな問題であっ た.当初(1977‑83年),当局は漁獲日数制限などで対応したが効果がなく,競 争激化による漁船の大型化がすすみ,漁獲のモニタリングすら難しくなった.
(467 )
‑14‑
アイスランド政府が,反対を押し切るかたちでニシン漁におけるような割り当 てを導入したのは 1984年のことである.TACの割当量は過去3年の実績に基づ くこととし,割り当てシェアを譲渡することも認められた.1990年には,すべて のアイスランドの漁業が,期間無期限の漁獲割当制度に従うこととなり,シェア の譲渡制限もほとんどなくなった8)
1.200α.lO
1,000α.lO・‑
sω.∞o
6ω,αlO
400.000
2,∞αlO ..,‑ー̲̲‑‑‑...・・・.・・ー .
4 F J d F S F 6 P 6 P 4 F S F 6 9 6 9 ぷ 9 6 F S F S F
ー‑‑‑Atlanttccod
H・H・'1四landlche川ns
‑capelln
図2:1997年から2011年までの期間のアイスランドEEZ内のTAC(単位はトン) 出典:アイスランド白eDirecωrate of Fisheriesのデータを抽出して作成
アイスランドにおいては, 1日あたりの操業トン数で測った漁獲努力が, ITQ 導入初年度に15%,翌年は6%減少した.また, 1977‑1990年の聞のニシン漁に ついて, ITQによって漁獲高は3倍になったものの,漁獲努力は2割減少したと
8)現在のアイスランドにおける漁獲剖り当てと個別シェアの譲渡に関する概略は The Directorate of Fisheriesで知ることができる.
http://en.skistofa.is/cntPage.php?pID=4参照.
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑15ー
いう研究がある(Grafton[16]).最近の他の実証研究も, ITQシステムは資源保 護の観点から有効であったと報じている (Costelloet al. [11], Heal and Schle‑ nker[19]) .たとえば, ITQを導入した場合,漁業崩壊が起きる割合はITQを利 用していない漁業の半分に抑えられた.ここで漁業崩壊とは,歴史的に一番の豊 漁の年の1割以下に,漁獲が落ち込むことをいう.
こうした例にもかかわらず, ITQの広範な導入は依然としてこれからの課題である.
その理由の一つは, ITQが市場原理を利用する資源管理であるという点にある.供 給量はTACによって決定されるが,割り当てシェアは取引可能であり,その価値は 市場原理で決定される.つまり, ITQは排他性や可分性,譲渡可能性という私有財 産の特徴を,オープンアクセス漁業に導入する仕組みであり,ほんらい共有資源であ るべき海に,漁獲権という私的所有権を導入するのは誤っているという見方がある.
また,選別廃棄 (high‑grading)の問題も指摘されている (Kristofersson and Rickertsen [29] ) .これはITQによって割り当てが固定されているため,価 値の低い魚種や見栄えのよくないもの,また小さなもの,痛んだ魚を廃棄する傾 向が助長されたとする主張である (Branchand Hilborn [5]) .
さらにより本質的な論争点として, ITQの供給サイドの信頼性の問題がある.
すでに述べたように,割当量の決定はMSYの推定値に依拠している.MSY推 定値に基づく TACの決定がそもそも資源管理手法として妥当であるのか,とい
う問題である.この点については理論的な側面から以下で考察する.
4 .
再生可能資源管理の動学4.1.動学的な資源管理モデル
再生可能資源の利用は社会にとって様々な便益をもたらす.その便益をできる だけ大きくしつつ,かっ資源の再生産が維持されるようにしなければならない.
(469 )
‑16ー
これがMSYの考え方の基本にある.TACやITQのような管理政策が,経済的 効率性と資源利用の持続可能性の両面にどのような影響を与えるのかを理論モデ ルを用いて評価しよう.この点を考察するには,資源ストックの時間的な変動を 考えなければならない.その上で,社会的な便益にどのような影響が及ぶのかを 評価することになる.簡単な Schaefer型の漁獲モデルで例をみてみよう.
離散的な時聞を考え,時刻tにおける資源ストックの大きさをX(t)とかく.
このストックは利用されることによって Y(t)だけ減少する.同時に,自然プロ セスのなかでの自己増殖過程があり,利用された資源は回復される.上と同じく,
この増殖は関数 F(・)によってあらわされるとしよう.すでに式(1)でみたよ うに,次の期のストックサイズ
X
(t+l)は,差分方程式X(t+l) = X(t)+F(X(t))‑Y(t)
( 4 )
にしたがって定まる.
Y(t)はその収穫に投入された生産要素に依存して定まるとするのが古典的で ある.一般の生産関数のアナロジーでは資本ストック(=資源ストック)X(t) と投入された労働力(=出漁時間などで測定される努力量)E (t)の関数として Y(t) = H(X(t). E(t))とあらわされる.関数Hをさらに特定して,
Y(t) = qX(t)E(t). q
>
0 (5)となるケースを考える.ここで定数qは,漁業の場合,努力量1単位あたりの漁 獲係数 (catchablitycoefficient)である.
次に再生産関数F(・)を定義する.ロジスティック型
附 )=やーを
) X .
K>
0 (6) はもっともよく用いられる再生産関数である .K>Oは環境のcarryingcapacity自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑17ー
を表す定数で,
r >
0は内生的成長率である.別の重要なタイプの成長関数は九
ω = r x (
乏‑1)(1‑去), 0<瓜<K.( 7 )
である引.Ko, K.は定数である.以下では主にロジスティック型の関数を取り 上げる.
(5)および (6)を(4)に代入して,収穫を考慮したロジスティック型のストッ ク量の変動過程
1. X(t)¥
X(t+1) = X(t)+r( ,‑1一一一一K / }X(t)‑qX(t)E(t) (8) をえる.
オープンアクセス漁業の場合には,生産者の行動基準は利潤最大化であった.
漁獲1単位の単位価格をρ(一定),投下された収穫努力 1単位のコストをc(一 定)とおくとき,時刻tの利潤 π(t)はπ(t)=pH(X (t),E(t)) ‑cE(t) =ρqX(t) E(t) ‑cE(t)とかける.さらに,生産者の収穫努力が利潤の増減にあわせて増減 すると仮定して,
E(t+l)‑E(t) =ηπ(t), η>0 (9)
とする.ここでηは努力水準の利潤に対する反応速度をあらわす定数である.
( 8 )
,( 9 )
でストック X(t)と努力 E (t)がマイナスにならないようにして,( 8 )
と (9)をまとめれば,
r
^1 .
,1 .
X(t) ¥ ...".... ¥ ~,/o', 1X(t+ 1) = maxl し0,,̲( .1 +r(
.
,‑1一一一一}K ノ ノ 」‑qE(t) }X(t) 1, X(O) = x, (10) E(t+1) = max[O, E(t)(l+η(ρqX(t)ーc))J.E(O) = e (11)9)この曲線はcriticaldepensation curveとよばれている.Clark[8] , p.17参照.
‑18‑
という動学システムをえる.
動学系 (10)・(11)は,その初期値 (X(O),E(O)) = (x, e) を与えると, 2次元 平面の第1象限に (X(t),E(t))の時間的な発展を表す軌道(正確には,点列)
を描く.その各点に対応して,資源利用に関わる各期ごとの社会的な効用を考え ることができる.以下ではコプ=ダグラス型の社会的効用関数u(X(t),E(t))
= ';X(t)E(t)を前提にする.この効用関数の限界代替率は逓減する.したがっ て,ある一定の社会的効用水準では,資源ストックが低レベルになればなるほど,
ストックの追加的な減少を代替するためにもとめられる努力水準は大きくなる.
これは漁業の現状と合致する.
これらの前提のもとで,各期ごとの社会的効用の総和を現在価値評価した値が,
初期値 (x,e)に対して一意にさだまる.これを V(x,e)とあらわせば,
V(x, e)
=Lρ
匂(X(t),E(ο) = L ρ
t.;XωE(仏d
> O .
(12)である.ここでT>Oは考慮している期間の長きであり, δ>0は現在価値への 割引率(定数)である.
ここでは2)の
V
(x, e)のもつ意味を確認しておこう. (10)ー(11) は,オー プンアクセス漁業に利潤追及の行動原理が持ち込まれたときのストックと操業水 準の変動をあらわすのであった.これが多期間にわたってくり返されたときに生 成される社会的便益の総和を,現在価値で表現した値がV ( x
,e )
である.した がって,V (x, e)は初期時点のストックと操業レベル (x,e)の社会的価値評 価であるといえる.この評価には最適化が含まれていない点に注意しよう. (11)に表現されてい るのは,利潤最大化ではなく,単にある一定のスピードηで利潤の増減に対応す
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ー 19ー
るという行動原理だけである.一方, (10)は,そのようにして人聞が自然を利 用する場合,資源ストックレベルはどのような変動過程をたどるかを記述してい る.
V (x, e) は,当然のこととして,価格ρやコストcのようなモデルのパラメー タの影響を受ける.以下では,そのなかで特にηに注目する.これは操業レベル の利潤への感応度であったから, ηの値が大きければ大きいほど,オープンアク セス資源の利用は,市場原理に支配されているとみることができる.このような ケースで予想されるのは,まず高い社会的便益の発生である.つまり V(x, e) は大きな値をとると予想される.一方,同時に,資源ストックは低レベルで推移 し,極端な場合には,枯掲X (t)→
o
(邸t→∞)もあり得ょう.さらに, ITQとの関連では, ITQが収穫努力
E( t )
の低下をもたらすという実 証研究がある (Grafton[16], p.9).換言すれば,上記のモデルのなかでITQの 資源管理政策としての効果をみる際, ITQの導入をηの値の低下で代替させることができる.ηが低下するとき,システムの動学と V
( x
,e )
にどんな影響があ るだろうか.こうした点に注目しながら,いくつかのシミュレーションをおこなつ.
4.2.均衡への収束と安定性:モデルI 4.2.1.利潤に緩やかに反応するケース
最初に,パラメータの値を
r = 2 . 8
,c
= 1,K=
1 ,p =200, q= 0 . 0 1
とし,割引 率をδ=0.03および計算の期間を T= 1500とする.このとき ρ:::::0.970874で ある.初期値を (x,e) = (1, 1)として,調整スピードηの違いに応じてV(1, 1) をいくつか計算する.最初に,利潤への反応スピードが遅いη =0.008913952ケースについて (X(t), E(t) )平面での (10)ー(11)の軌道をみると,たとえば図3をえる.同じηの値に
(473 )
A u
od
対して,ストック X (t)のみの変動を描いたのが図4である.そしてこのとき,
T = 1500でV(1,l)之 36.224となる.図3と4はともに,t→∞となるにつ れて,動学系 (10)・(11)の平衡点
( x
・,e . )
三 (0.5,140)への収束 (X(t ,)E (t))→ (x., eつが起きるケースである.
E (t) 1401
120←・
100
80
60
40
20
0.2
図3 (x (t), E (t))の軌道:η=0.008913952のケース
図5はη=1.001898807について (X(t), E (t))の軌道を描いている.ただこ の図では,平衡点 (x..e.)
= =
(0.5, 140)を原点にとっている.リミットサイクル があらわれるケースであり,社会的便益の現在価値は,T = 1500で計算して V(
1,1)之 252.362である.また図6はη=1.414368866のときの軌道を描いたも のである.このときには同じ期間で計算して V(1, 1) 236.337となる.
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑21‑
X (t)
図4:X (t)の変動:η=0.008913952のケース
E(t)
160
‑ .
0.40
• •
0•
.4•
5• •
X (t).
‑ . .
120
図5 (x (t). E (t))の軌道:η=1.001898807のケース
‑22ー
4.2.2.利潤への反応が急速なケース
次に,発生する利潤に迅速に適応して操業水準が拡大するケースをみよう.こ のときには,たとえば, η=1.62199とすれば,t = 8954でE(t) =0となる.も ちろん,その時刻以降の努力水準もゼロになるので,水揚げゼロで漁業活動は停 止状態となり,ストックは自然の再生産をくり返すだけになる (V(1,1) :::: 202.409) .このときのストックや努力水準の変化は,まとめて表1に示した.
X(t) E(t) ρ'u(t)三ρ'JX(t)E(t) t=O
l:::;;t:::;;8953 (+ ) (+ ) (+ )
tミ8954 (+ )
。 。
表1:η=1.62199のときの資源ストック.操業水準,および社会的効用
ηの値がさらに大きくなれば,より早い時点で収穫努力が拡大されるために,
収穫がストックの自然増殖を上回ってしまい,資源の枯渇が生じる.たとえば,
η=3.017とすれば,表2にまとめているように,tミ5についてX(t) =0とな る.
X(t) E(t) ρ'u(t)三ρ'JX(t)E(t) t = 0 l
l:::;;t:::;;4 (+ ) (+ ) (+ )
t=5
。
(+ )。
t~6
。 。 。
表2:η=3.017のときの資源ストック,操業水準,および社会的効用
一方, η=3.016のときには,tミ6でE(t) = 0であるが,資源については X (t)
>
0である.これは表3に示されている.つまり,このモデルとパラメー タの設定では,操業水準の利潤に対する感応度が3倍をわずかに超えたあたりで,資源ストックは早期に回復不能になる.このときには当然,操業もできない E (t) = 0ので,V (1,1) 23.816となる.社会的効用もきわめて低くなる.
自然資本の評価:レジームシフトとエコロジカルな回復力(山下) ‑23‑
X(t) E(t) ρtu(t)三ρtJX(t)E(t) t=O
l孟tS;5 (+ ) (+ ) (+ )
t~6 (+ )
。 。
表3:η=3.016のときの資源ストック.操業水準.および社会的効用
4.2.3.内生的成長率のより小さなケース
~ 4.2.1のモデルIでは反応スピード以外のパラメータが固定されていた.
今後の議論には直接の関連はないがここでは内生的成長率がもっと漁業の現実 に近いケースを一つだけみておく.それは r= 0.28とおいた例である.これは ベニザケや太平洋産のニシン,カレイなどの一部の底魚の内生的成長率の推定値
に近い値である 101 図 7 が,モデルの平衡点 (x ・ • e.)
=
(0.5. 14)を中心として 描いたそのときの動学経路である.なお,この図では,反応スピードはη = 1.001898807としている.これはモデルIの場合の図5に対応する反応率である.4.3.管理政策の観点からのモデルの評価
式(10)・(12)で定義された資源収穫モデルについて.~4.2.1 で設定したパラメー
タの値を代入したモデルIを思い出そう.この節では,モデルIがITQのよう な資源管理政策にとって何を示唆するかをかんがえる.モデルIでは,利潤への 調整速度ηに応じて,主に3つのケースをしらべた.以下では,これらをηの違 いに応じてモデルI(η)と記して区別する.
ηの大きさにかかわりなく,モデルIには3つの平衡点が存在する.つまり,
(xL er) = (0. 0). (x;' e;) = (1. 0)と (x..e.) = (0.5, 140)である. (xt, er) は自明な平衡点であり,(xL e;)は環境のcarryingcapacity K = 1に対応する
10) Clark, Munro, and Sumaila[9]の表1(p.86)参照.
(477 )