LPE結晶成長における溶液対流と電流偏析に関する 研究
著者 麻川 和裕
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 13
ページ 156‑157
発行年 1992‑03‑30
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1757
氏名。(本籍
)
麻川
和
裕 (山梨県
)
学 位 の種 類 工 学 博 士 学 位 記 番 号
工博甲第
56
号 学位授与の日付平 成 3年 3月 23日
学位j難ルの要件
学位規則第5条第1項該当
警 ゲЪ ど 蒜
電子科学研究科
電子材料科学専攻
学位論文題目
LPE結
晶成長における溶液対流 と電流偏析に関する研究論文審査委員 (委員長
)
教 授 萩 野 賞
教 授 助 川 徳 三 教 授 福 家 俊 郎 助教授 中 山 顕 教 授 熊 り‖ 征 司
論 文 内 容 の 要 旨
光通信のデバイス用基板材料 として大型且つ組成均一な単結晶が必要である。 しか し,結晶成長時 の溶液対流や成分組成比の変動のために均一組成結晶の作成はかなり困難である。本研究は基板材料 結晶として注目されるⅢ‐V族混晶のInGaSb三元混品の均一組成の大型結晶作成を目的 として,実
験的には液相成長法 (Liquid Phase Epitaxy:LPE)を用いて成長結晶への溶液対流の影響を結晶 形状,組成比分布について調べた。さらに原料溶液対流を数値解析 し,成長結晶層形状を算出して実 験結果 と比較 した。又,組成比変動を検討するために,電流パルスを利用 した液相成長法において, 成長面上での位置や基板 と原料溶液の配置による組成比変動量の相違を調べた。
最初に,溶液対流の成長結晶への影響を検討するために,結晶成長面が溶液に対 して垂直,水平配 置 となる成長用ボー トを新たに設計,製作 した。成長方向は垂直配置では横方向:水平配置では上下 両方向とした。基板単結晶としてGaSb結晶を使用 し,InGaSb結晶を成長させた。仕込んだ溶液原 料の組成比は,成長温度条件より
In̲Ga―
Sb三元相図か ら決定 した。そして,添加不純物 として Teを 微量添加 した。成長実験は通常液相成長に用いられる温度降下法を用いた。加えて結晶成長中に,そ の時の成長表面に不純物濃度の高い領域を形成するために,成長層 と原料溶液間に電流パルスを一定 時間間隔で導入 した。成長試料 は,成長方向に沿って切断,鏡面研摩後,成長層中に形成されている 不純物高濃度領域の形状変化を観察するために過マンガン酸カリ系エッチ液で処理 した。成長結晶の固液界面形状は垂直,水平いずれの基板配置においてもっ成長初期では溶液に対 して緩 やかな台形状で,成長 と共により明確な台形状 となった。成長層形状の変化を詳細に検討するために,
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成長層を分割 して成長厚の時間増加について測定 した。成長層厚の増加は,垂直基板配置では成長層 の上領域が下領域より大きく,水平基板配置では下方向成長層が上方向成長層より大きな増加傾向が 観察 された。各基板配置による傾向を比較すると,水平基板配置の下と上方向による成長層厚増加の 大小関係 と,垂直基板配置の成長層中央部内の上 と下領域での成長層厚増加 とはその傾向が‐致した。
これは結晶成長時の溶液に対する基板成長面の位置関係により程度が異なるものの溶液対流の影響が 成長結晶に反映 していることを示唆 していた。成長速度変化では,成長開始 1時 間は成長速度の変動 が大 きいが, 1時間以降はどの条件 も成長速度は緩やかな減少傾向が認められた。
続いて原料溶液中の対流現象 との関連を検討するために,溶液対流の数値計算を行 った。計算領域 は,成長実験に用いた垂直,水平各基板配置の成長用ボー トの原料溶液槽形状を基に閉区間領域 とし て設定 した。計算は境界条件として計算領域の境界部の温度を設定 し,領域内の流れベク トル分布を 求めた。成長界面近傍で得 られた流れベク トル分布か ら拡散領域に対応する境界領域を算出し,溶液 対流と結晶成長 とを関連づけた。これにより,溶液対流の影響を考慮 した成長速度および成長結晶形 状を計算 した。対流計算から求めた成長層厚や形状の領域割合は,実験での成長結晶の層厚,層形状 の領域割合の傾向と一致 した。このことから大型結晶を作成する際,成長する結晶形状や厚さなどの 基本的な検討がこの方法で可能なことが明 らかとなった。
また,成長結晶の組成均一化の手段 として電流偏析効果を検討 した。結晶成長中に導入 した電流パ ノンスによるTe不純物縞を基に,同時刻の成長結晶の基板に対する位置による電流偏析効果の分布 に ついて検討 した。
InxGa卜 xSb結 晶では,いずれの原料溶液 と成長基板の配置においても,In組成変調が測定された。
成長層内分布は,成長層中央部でIn組成変調量が大 きく,周辺部で小さかった。また水平配置では, 上方向成長層での変調量が下方向成長層より大 きい傾向が観察 された。 このようにⅢ一Vtt ln̲Ga¨
Sb系は導入 した電流パルスによりIn組成変調が可能であるが,均一組成結晶作成には,成長系の配 置,温度降下速度等様々な条件に加えて溶液対流の影響をより考慮する必要のあることがわかった。
Ⅳ‐Ⅵ族
Pbl―
xSnxTe結 晶では,電流パルスによる組成変調は今回の実験条件ではPb,Sb相互拡散 係数が大 きいことが測定か ら分かり,そのために,組成変調領域が拡散 して測定できなかった。以上 溶液対流が成長結晶に及ぼす影響を明 らかにし,かつ電流を用いて均一組成結晶を作成するための基 礎実験を行い,InGaSbと PbSnTeにおける電流による組成変調効果の相違を明 らかにした。‑157‑