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社会的スキルとソーシャル・サポート知覚が

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社会的スキルとソーシャル・サポート知覚が     小学生の学級適応感に及ぼす影響

齋藤恵美(新潟青陵大学大学院)・神村栄一(新潟大学人文社会・教育科学系)

キーワード:学級適応感、社会的スキル、ソーシャル・サポート知覚

Effects of Social Skills and Perceived Social Support on Class Adjustment

      in Elementary School Children

Megumi SAITO(Graduate school of Niigata seiryo university)

Eiichi KAMIMURA(Faculty of Education, Niigata university)

Key words:class adjustment, social skMs, perceived social support

       (1992)は小学生の学校ストレッサー尺度の開発を試

 1.問題と目的

       み、「教師や友人との人間関係」「授業中の発表場面」

 文部科学省の学校基本調査(2007)によると、小    「学業成績」が両研究に共通の学校ストレッサー要因 学生の長期欠席児童は61,000人ほどおり、そのうち不    として示された。このように学校ストレッサーは 登校児童数は前年度より1,000人ほど増加して約   様々な要因が存在するが、ある特定のストレッサー 23,800人となっている。児童数が減少していることを   にさらされた場合でも、個人によってストレス反応 踏まえると、この現状は学校教育において、児童の   が生じるかどうかは異なってくる。このようなスト 学校不適応に対する具体的な援助や予防策の必要性    レス反応生起の個人差には、ストレス過程における が高まっていると言える。      緩衝要因が存在することが推測され、その検討が必  児童の学校不適応に関する研究では、学校場面に   要である。また、児童生徒の学校不適応を援助する おける心理的ストレス、すなわち「学校ストレス」   には、全ての学校ストレッサーを除去しようとする の観点から検討したものが数多く見受けられる(嶋   よりも、ストレス過程に影響を与える個人要因に働 田・岡安・坂野、1992;岡安・嶋田・坂野、1993)。   きかける方が現実的で、かつ有効であろう(岡安ら、

学校で心理的スト1/スを感じているということが不   1993)。

適応の状態や児童自身の不適応感につながると捉え    児童の学校ストレス過程に影響を与える個人要因 るとすれば、ストレス反応の軽減を図ることが、児   の一つとして挙げられるのが、ソーシャル・サポー 童の学校不適応に対する援助となると考えられる。    ト(social support)である。ソーシャル・サポートと  学校不適応感とは、「日常の学校生活において経験    は、「その人を取り巻く重要な他者から得られるさま

される出来事や周囲の人間の自分への関わり方に対   ざまな形の援助」である(久田、1987)。これまでの する児童自身の主観的な心理的状態であり、特に児   先行研究では、ストレス反応とより強く関連するの 童のネガティブな感情や認知のことを指す」と定義   は、他者から実際に受けたサポートではなく、他者 されている(戸ヶ崎・秋山・嶋田・坂野、1997)。戸   から援助を受ける可能性に対する期待あるいは援助 ヶ崎ら(1997)は、学校ストレッサーとの相関から、   に対する主観的評価、すなわち知覚されたサポート 不適応を生じさせている具体的事象は、友達との関   であることが見出されている(Shaefer, Coyne&

係、教師との関係、学業場面という3つの因子があ   Lazarus,1981;Turner,1981;Cohen&Wills,1985;

ることを見出した。さらに、長根(1991)や嶋田ら   Cohen&Hoberman,1983)。児童を対象にした研究で

(2)

66 社会的スキルとソーシャル・サポート知覚が小学生の学級適応感に及ぼす影響

も、知覚されたサポートがストレス反応を緩和する   る主観的な適応感を指標とすることとした。測定す ことが示されている(岡安ら、1993;嶋田、1993;   る指標によって、社会的スキルやソーシャル・サボ 秋山・嶋田・坂野、1996)。これらのことから、他者   一トが影響を及ぼす程度が異なる可能性も考えられ、

からソーシャル・サポートを得ることができるとい   学級適応感の側面から検討することは意義あること う主観的な期待感がストレス反応を低減し、さらに   であろう。

は学校不適応に陥ることを予防するのではないかと    以上のことを踏まえ、児童の学級適応を維持・促 考えられる。      進する援助に関する基礎的な知見を得るために、社  次に、児童の学校ストレス過程に影響を与える二   会的スキルとソーシャル・サポート知覚が児童の学 つ目の個人要因として、社会的スキル(social skills)   級適応感に及ぼす影響について検討することを本研 が挙げられる。前述した戸ヶ崎ら(1997)や長根   究の目的とした。

(1991)、嶋田ら(1992)において見出された学校ス トレッサーの中に、共通して対人関係に関する要因

      ∬.方法 があることや、嶋田・坂野・上里(1995)によって

友人関係に関するストレッサーは衝撃度が大きいと    1.調査対象と手続き

明らかにされたことからも、学校適応のためには良    A県内公立小学校に在籍する4年生850名(男子402名、

好な対人関係を築き維持するスキルが必要となると    女子448名)、及び5年生851名(男子441名、女子410 考えられる。丹羽・山際(1991)は、基本的な社会   名)を対象とした。2004年11月に、クラスごとの一 的スキルが実行されないために、学校で不適応状態    斉方式により、無記名方式で質問紙調査を実施した。

に陥っていると思われる児童が少なくないことを指   質問紙の内容は、以下の調査材料(1)から(4)

摘した。また、戸ヶ崎・坂野(1997)は、小学校高   の順序で構成した。なお、これらの被調査者全員の 学年の児童を対象に、家庭と学校における社会的ス    回答を分析対象として用いた。

キルが学校適応にどのように影響しているかを検討    2.調査材料 した。その結果、友達との関係性に配慮する「関係    (1)社会的スキル:

向上行動」と、友達と積極的にかかわろうとする    嶋田・岡安・戸ヶ崎・坂野・上里(1993)によっ

「関係参加行動」が、クラス内における仲間からの社    て作成された、小学生用社会的スキル尺度を用いた。

会的受容に影響することが明らかにされた。さらに、   この尺度は「向社会的スキル」「引っ込み思案行動」

嶋田・戸ヶ崎・岡安・坂野(1996)は、社会的スキ    「攻撃行動」の3因子で構成されているが、本研究で ルには児童が経験する学校でのストレッサーがスト   は15項目の中から因子負荷量の高い13項目を抽出し

レス反応に及ぼす悪影響を緩和する効果があること   て使用した。4件法(よくあてはまる〜ぜんぜんあ を報告している。このように児童が社会的スキルを   てはまらない)で評定を求め、社会的スキルが高い 身につけ対人関係を改善することで、周囲の人々か   と思われる方から4〜1点を与えた。

らソーシャル・サポートを受けることができるよう   (2)学級適応感:

になり、そのことが児童の学校適応の向上をもたら    谷島(1996)によって作成された、児童の所属学 すのではないかと考えられる。      級への主観的適応感を測定する項目を、小学生用に  ところで、これまでの研究においては、児童の学   平易な言葉使いに修正して用いた。この尺度は、「私 校適応を測定するために、ストレス反応や孤独感、   はこのクラスが自分にとって、いごこちがいいと思 不登校感情といった様々な指標が用いられてきた   います」などの合計4項目から構成されており、4

(嶋田ら、1992;金山・後藤・佐藤、2000;江村・岡   件法(よくあてはまる〜ぜんぜんあてはまらない)

安、2003;三浦、2006)が、それらを概観するとネ   で評定するよう求め、適応感が高いと思われる方か ガティブな感情の側面から検討されることが多かっ   ら4〜1点を与えた。

た。しかし、大対・大竹・松見(2007)は、学校で   (3)教師から得られると知覚するソーシャル・サボ の居心地のよさや学校を好きだと思う肯定感という   一ト(以下、「教師サポート知覚」と略記する):

ポジティブな感情の効果について検討する重要性を    嶋田・岡安・坂野(1993)によるソーシャル・サ 指摘している。そこで本研究では、児童の学校に対    ポート尺度短縮版の5項目を用いた。これは、児童が する肯定的な感情に着目し、児童の所属学級に対す   ストレス場面にさらされた場合に、他者からどの程

(3)

度の援助が期待できるかを調べるものである。信頼   Table 1各尺度における学年別・性別の平均値 性・妥当性ともに高い尺度であり、1因子構造であ      4年生      5年生 ることが確認されている。教示を「学校の先生につ       全体男子 女子全体男子 女子       学級適応感   13.4613.4613.4612.8012.7412.86

いて」とし、3件法(たくさんいると思う〜ぜんぜ      (2.54)(2.4g)(25g)(2.58)(2.61)(2.54)

んいないと思う)で評定を求め、教師からのソーシ   関係向上スキル 15.24145315.5814.7814.2415.35

ヤル・サポートを高く知覚している方から3〜1点      (2 69)(2°81)(2 41)(2°49)(2 58)(2°26)

  、       集団参加スキル  135413.8113.3013.7513,gg 13.4g を与えた。      (2.43)(2.33)(2.4g)(2.36)(2.34)(2.36)

(4)親から得られると知覚するソーシャル・サポー   攻撃行動抑制スキル13.8113.4714.1213.2113.0613.37 ト(以下、「親サポート知覚」と略記する):       (1・97)(2・ll)(1・79)(2・04)(2・06)(2・00)

嶋田ら(1993)によるソーシャル・サポート尺度 教師サポート知覚騰1』錨路脳脱服

短縮版の5項目を用いた。教示を「おうちの人(お   親サポート知覚  12.5712.3412.7812.071L8412,31

父さんやお母さん)について」とし、3件法(よく         (2・36)(2・35)(2・35)(2・58)(2・57)(2・58)

      ( )内は標準偏差してくれる〜まったくしてくれない)で回答を求め、

親からのソーシャル・サポートを高く知覚している

方から3〜1点を与えた。      上スキル(t(1699)=3.70,pく.01)、攻撃行動抑制スキル       (t(1699)=6.17,p<.01)、教師サポート知覚(t(1699)ニ       6.03,pく.Ol)、親サポート知覚(t(1699)=4.17,pく.Ol)に

 皿.結果

      おいて有意差が見られ、集団参加スキルでは有意傾

1.社会的スキル尺度の因子構造:      向が見られた(t(1699)=1.79,pく.10)。つまり、学級適

 社会的スキル尺度の因子構造を明らかにするため   応感、関係向上スキル、攻撃行動抑制スキル、教師 に、主因子法バリマックス回転による因子分析を行    サポート知覚、親サポート知覚は、5年生に比べて った結果、3因子が抽出された。第1因子は5項目   4年生の方が有意に高いことが示され、集団参加ス であり、「友達に親切にする」、「困っている友達を助   キルは5年生の方が高い傾向が示された。

ける」に代表されるように、友達との関係を向上さ    次に、性差を検討するため学年ごとにt検定を行っ せる行動であることから、「関係向上スキル」と解釈   た結果、4年生では、関係向上スキル(t(848)=7.47,

した。第II[因子は4項目であり、「友達と離れて、−   pく.Ol)、集団参加スキル(t(848)=3.07, p<.Ol)、攻撃行 人だけで遊ぶ」、「友達の遊びをじっと見ている」が   動抑制スキル(t(848)=4.82,∫p〈.Ol)、教師サポート知 含まれている。嶋田ら(1993)の「引っ込み思案行   覚(t(848)=2.23,pく.05)、親サポート知覚(t(848)=2.75,

動」と同様の因子と考えられるが、本研究では社会    Pt.01)に有意差が認められた。つまり、関係向上ス 的スキルが高いと思われる方に高得点を与えたため、   キル、攻撃行動抑制スキル、教師サポート知覚、親 集団への積極的な参加に関する因子とし、「集団参加    サポート知覚は、男子に比べて女子の方が有意に高 スキル」と解釈した。第皿因子は4項目であり、「友    く、集団参加スキルは女子に比べ男子の方が有意に 達に乱暴な話し方をする」、「何でも友達のせいにす   高いことが示された。5年生では、関係向上スキル

る」が含まれている。嶋田ら(1993)の「攻撃行動」   (t(849)ニ6.61,p<.Ol)、集団参加スキル(t(849)=3.13,

の因子と同様のものと考えられるが、本研究では社   pく.01)、攻撃行動抑制スキル(t(849)=2.19,p<.05)、親 会的スキルが高いと思われる方に高得点を与えたた   サポート知覚(t(849)=2.68,Pt.Ol)に有意差が認めら

め、これを「攻撃行動抑制スキル」と解釈した。     れた。つまり、関係向上スキルと攻撃行動抑制スキ 2.各尺度の信頼性:       ル、親サポート知覚は女子の方が、集団参加スキル

 社会的スキル尺度のα係数は、.66〜.85、学級適応    は男子の方が有意に高いことが示された。

感尺度は.85、教師サポート知覚尺度は.81、親サポー    以上のことから、学級適応感、社会的スキル及び ト知覚尺度は.79であった。従って、各尺度には信頼   サポート知覚には、学年や性別によって有意差があ 性があると言える。       ることが認められたため、以下の分析は学年別・男

3.各尺度の学年差と性差:      女別に行うこととした。

 まず、学年差を検討するためにt検定を行った結果    4.各尺度と学級適応感との関連:

(Table 1)、学級適応感(t(1699)=5.31,pく.01)、関係向     社会的スキル及びサポート知覚が学級適応感に及

(4)

68 社会的スキルとソーシャル・サポート知覚が小学生の学級適応感に及ぼす影響

ぼす影響について検討するために、関係向上スキル、   適応感に及ぼす影響が異なることが示された。

集団参加スキル、攻撃行動抑制スキル、教師サポー    まず、学級適応感については、5年生に比べて4 ト知覚、親サポート知覚の各得点を偏差値に変換し   年生の方が有意に高く、性差は認められないことが た上で説明変数とし、学級適応感を基準変数とした   明らかになった。これは、石川・山下・佐藤(2007)

重回帰分析を行った(Table 2)。       において、友達との関係及び学業に対する学校不適       応感が4年生よりも5年生の方が高く、性差は認め Table 2学級適応感への重回帰分析結果        られなかったという結果と_致している。

      4年生     5年生

説明変数  男子 女子 男子 女子     次に・社会的スキル尺度は・「関係向上スキル」

関係向上スキル  .23**  .23** .28**  .10・   「集団参加スキル」「攻撃行動抑制スキル」の3因子 集団参加スキル  ・24**  ・23**  ・17**  ・25**   から構成されることが明らかになった。これは嶋田

鎧騨犠:1㍉:19..:ll,, gg.. ら(1993)や戸ヶ崎・坂野(1997)、寺嶋・晴宮

親サポート知覚  .03   .08   .11・  .08    田・岡田・田中(2003)と同様の因子が見出された

R(R2)   ・56(・32)**・59(・35)**・59(・35)**・48(・23)**   ことが言える。次に、社会的スキルの性差を下位尺

       N=1701 Pぐ05* Pぐ01    度ごとに検討したところ、関係向上スキル及び攻撃       行動抑制スキルは、女子の方が男子よりも高かった。

 その結果、4年生では男子・女子いずれも重相関   戸ヶ崎・坂野(1997)や石川・坂野(2006)におい 係数が有意な値を示し、関係向上スキル、集団参加    て、女子の方が男子よりも「関係向上行動」「関係維 スキル及び教師サポート知覚について、学級適応感   持行動(本研究における攻撃行動抑制スキルを指す)」

に対する有意な正の標準偏回帰係数が得られた   を獲得しているという結果と一致するものである。

(pぐOl)。つまり、関係向上スキルや集団参加スキル   ー方、集団参加スキルは女子に比べ男子の方が高い が高い児童や、教師からのサポートが得られるとよ   ことが示された。これは、石川・坂野(2006)の

り強く期待する児童は、学級適応感を高く評価して    「引っ込み思案行動」は男子に比べ女子の方が高いこ いることが示された。5年生男子においても重相関   とと一致する結果である。つまり、小学校高学年の 係数が有意な値を示し、関係向上スキル、集団参加   児童においては、男子に比べて女子の方が、他者と スキル、教師サポート知覚及び親サポート知覚につ   の関係を配慮し良好に保とうとするスキルや、関係 いて、学級適応感に対する有意な正の標準偏回帰係   を壊すような攻撃的行動を抑えるスキルを有してい 数が得られた(p<.01、親サポート知覚のみpく.05)。   る一方で、集団の中に積極的に入ってゆくスキルを

また、5年生女子において重相関係数が有意な値を   有しておらず、引っ込み思案であることが示唆され 示し、関係向上スキル、集団参加スキル及び教師サ   た。

ポート知覚について、学級適応感に対する有意な正     また、社会的スキルの学年差を下位尺度ごとに検 の標準偏回帰係数が得られた(pぐOl、関係向上スキ   討したところ、関係向上スキル及び攻撃行動抑制ス ルのみpく.05)。つまり、5年生は男女ともに、関係向   キルは、4年生の方が5年生よりも高いことが示さ 上スキルや集団参加スキルを有している児童や、教  れた。戸ヶ崎・坂野(1997)では、「関係向上行動」

師からのサポートが多く得られると感じている児童   は学年を追うに連れて増大することが示されており、

は学級適応感を高く評価していることが示された。   本研究と一致しない結果が得られている。しかし、

あわせて、5年生男子は、親からのサポートを多く   石川ら(2007)では逆に、学年を追うに連れて社会 得ていると感じる児童は、学級に適応していると感    的スキル得点が低下するという結果が得られている。

じることが示された。      一般に、社会的スキルが低下すると周囲の人とのネ       ガティブな相互作用が増え、嫌悪的な出来事を経験

N.考察       することも多くなると考えられている(山1野・1999)・

      したがって、学級適応感の得点が学年の局い方が低  本研究の目的は、社会的スキルとソーシャル・サ    いという本研究の結果も踏まえ、児童期という生涯 ポート知覚が、児童の学級適応感に及ぼす影響につ    発達上の早い時期に、友達との関係に配慮し、攻撃 いて検討することであった。その結果、社会的スキ   的行動を抑制する社会的スキルを身に付けさせるこ ルの種類やサポート源、受け手の属性によって学級   とが必要ではないかと考えられる。

(5)

 さらに、サポート知覚の性差を検討した結果、4   ような、教師からのサポートが得られるという期待 年生では男子よりも女子の方が教師サポートを高く   を高めるという認知的変容を促す介入を行うことで、

知覚し、親サポートは男子よりも女子の方が高く知    児童の主観的適応感が高まると考えられる(嶋田、

覚していることが明らかになった。戸ヶ崎・嶋田・   1996)。嶋田(1997)では、学校の先生への児童のサ 岡安・坂野・浅井(1993)や嶋田ら(1993)におい   ポート期待を高める介入を行うことによって、児童 てサポート知覚には性差があることが示されている。   の表出するストレス反応が軽減することが明らかに 本研究の結果からは、小学校高学年の女子は、教師    なっている。

や親からのサポートが得られるとより強く期待する    ところで、石川ら(2007)によると、社会的スキ 特徴があることが示唆された。また、サポート知覚   ルの獲得は、知覚されたソーシャル・サポートの上 の学年差については、教師サポート及び親サポート   昇を媒介して、学校不適応感の低減に寄与している いずれも、4年生に比べ5年生の方が低いことが明   ことが示されている。言い換えれば、社会的スキル らかになった。石川ら(2007)において、全体的に   の獲得がサポート知覚を高め、その結果として学校 学年が高いほどソーシャル・サポートの得点は低い   不適応感を低減させるのである。このことと本研究 傾向が見られたことは一致しており、水野・石隈   で得られた結果をあわせると、学級適応感の改善の

(2004)も一般に学年が進行するにつれて、ソーシャ   ための対応・予防策としては、児童の関係向上スキ ル・サポート得点は低下すると指摘している。      ルと集団参加スキルをターゲットとするSSTを行い、

 最後に、社会的スキルとサポート知覚が学級適応   友人からのソーシャル・サポート知覚を高めること、

感に及ぼす影響を検討した結果、関係向上スキルと   さらには教師からのソーシャル・サポート知覚を高 集団参加スキル及び教師サポート知覚が高いほど、   める認知的変容の介入とあわせて、教師と関わる社 学級適応感が高いということが明らかになった。社   会的スキルを向上させるSSTの導入が必要であると言 会的スキルについては、戸ヶ崎・坂野(1997)と同   える。

様の結果が示されており、集団での社会的スキル訓    以上のように、本研究では、ターゲットスキルを 練(SST)を行う場合には、関係向上スキルと集団参   明確にしたSSTによって、児童の対人関係を良好にす 加スキルの獲得をターゲットとすることが、学級適   る社会的スキルの獲得を促す行動的アプローチと、

応の改善に有用であることが示唆される。言い換え   ソーシャル・サポート知覚を高める認知的アプロー れば、友達に親切にしたり、困っている友達を助け   チの重要性が示唆された。今後は、知覚されたソー 励ましたり、集団の中に入ったりするといった、友  シャル・サポートの与え手について、親・教師のみ 達との関係に配慮しながら積極的に関わろうとする   でなく友達の側面からも学級適応感との関連を検討 スキルの獲得を促すことが必要であろう。あわせて、  する必要があるだろう。なぜならば、社会的スキル それらのスキルの獲得状況に性差があることも踏ま   の質問項目は友達との関わり方を見るものだからで え、女子には集団に積極的に入るスキルを、男子に    ある。さらには、関係向上スキル及び集団参加スキ は友達との関係に配慮し良好にしようとするスキル   ルの獲得を促し、教師からのソーシャル・サポート を身に付ける働きかけを重点的に行うことが有効で   知覚を高めるための具体的な介入方法の考案などが あると考えられる。SSTが児童の学校適応に及ぼす効   望まれる。

果については様々な研究で支持されており(嶋田ら、

1996;江村・岡安、2003)、身に付けるべき必要なス

キルを特定することで、さらなる有効性が期待され   謝辞

る。       本研究を行うにあたり多大なご協力を頂きました、

 また、教師サポート知覚が学級適応感に影響を及    新潟大学教育人間科学部学校教育課程教育心理学専 ぼしているという結果から、小学校高学年の児童に   修4年(当時)の小倉正愛さんには、心より感謝申 とって教師は重要な存在であることが言えるだろう。   し上げます。

石川ら(2007)においても、担任教師からのサポー ト知覚が不適応感に及ぼす影響は非常に強いことが

示されている。したがって、「つらいことがあっても、   引用文献

あの先生からきっと助けてもらえるだろう」という   秋山香澄・嶋田洋徳・坂野雄二(1996):小学生のソーシ

(6)

70 社会的スキルとソーシャル・サポート知覚が小学生の学級適応感に及ぼす影響

 ヤルサポートの有効性の検討、『日本教育心理学会総会     グ過程一知覚されたソーシャルサポートとストレス反  大会論文集』38、268.      応の関連一、『ヒューマンサイエンスリサーチ』2、27−44.

Cohen, S.,&Hoberman,H.(1983):Positive・events・and・social   嶋田洋徳(1996):知覚されたソーシャルサポート利用可  supports as buffer of life change stress.『Joumal of Applied    能性の発達的変化に関する基礎的研究、『広島大学総合

 Social Psychology』13,99−125.      科学部紀要IV理系編』22、115−128.

Cohen, S.,&Wills, T. A(1985):Stress, social support, and   嶋田洋徳(1997):児童のストレス反応の軽減に及ぼすソ

 the buffe血g hypothesis.『Psychological Bulletin』98,310−    一シャルサポートの効果一先生へのサポート期待の介  357.       入一、『日本教育心理学会総会発表論文集』39、231.

江村理奈・岡安孝弘(2003):中学校における集団社会的    嶋田洋徳(1999):小中学生の心理的ストレスと学校不適  スキル教育の実践的研究、『教育心理学研究』51(3)、    応に関する研究、風間書房.

 339−350.      嶋田洋徳・岡安孝弘・坂野雄二(1992):児童の心理的ス 久田満(1987):ソーシャル・サポート研究の動向と今後     トレスと学習意欲との関連、『健康心理学研究』5、

 の課題、『看護研究』20、170−179.       7−19.

石川信一・坂野雄二(2006):自己評定による児童の社会    嶋田洋徳・岡安孝弘・坂野雄二(1993):小学生用ソーシ  的スキルと不安症状の関連、『カウンセリング研究』39    ヤルサポート尺度短縮版作成の試み、『ストレス科学研   (3)、202−211.       究』8、1−12.

石川信一・山下朋子・佐藤正二(2007):児童生徒の社会    嶋田洋徳・岡安孝弘・戸ヶ崎泰子・坂野雄二・上里一郎  的スキルに関する縦断的研究、『カウンセリング研究』    (1993):児童における社会的スキルのストレス緩衝効  40(1)、38−50.       果、『日本行動療法学会第19回大会発表論文集』、96−97.

金山元春・後藤吉道・佐藤正二(2㎜):児童の孤独感低    嶋田洋徳・坂野雄二・上里一郎(1995):学校ストレスモ  減に及ぼす学級単位の集団社会的スキル訓練の効果、    デル構築の試み、『ヒューマンサイエンスリサーチ』4、

 『行動療法研究』26、83−95.      53−68.

三浦正江(2006):中学校におけるストレスチェックリス    嶋田洋徳・戸ヶ崎泰子・岡安孝弘・坂野雄二(1996):児  トの活用と効果の検討一不登校の予防といった視点か     童の社会的スキル獲得による心理的ストレスの軽減効  ら一、『教育心理学研究』54(1)、124−134.         果、『行動療法研究』22(2)、9−20.

水野治久・石隈利紀(2004):わが国の子どもに対するソ    寺嶋繁典・日高なぎさ・宮田智基・岡田弘司・田中英高  一シャルサポート研究の動向と課題一学校心理学の具     (2003):小児のストレス・マネジメントにおける基礎  体的展開のために一、『カウンセリング研究』37(3)、    研究(第2報)一ソーシャル・スキルのストレス軽減  280−290.      効果一、『心身医学』43(3)、186−192.

文部科学省(2007):学校基本調査       戸ヶ崎泰子・秋山香澄・嶋田洋徳・坂野雄二(1997):小 長根光男(1991):学校生活における児童の心理的ストレ     学生用学校不適応感尺度開発の試み、『ヒューマンサイ  スの分析一小学4、5、6年生を対象にして一、『教育     エンスリサーチ』6、207−220.

 心理学研究』39、182−185.      戸ヶ崎泰子・坂野雄二(1997):母親の養育態度が小学生 丹羽洋子・山際勇一郎(1991):児童・生徒における学校     の社会的スキルと学校適応に及ぼす影響一積極的拒否  ストレスの査定、『筑波大学心理学研究』13、209−218.     型の養育態度の観点から一、『教育心理学研究』45(2)、

岡安孝弘・嶋田洋徳・坂野雄二(1993):中学生における     173−182.

 ソーシャル・サポートの学校ストレス軽減効果、『教育    戸ヶ崎泰子・嶋田洋徳・岡安孝弘・坂野雄二・浅井邦二  心理学研究』41(3)、302−312.      (1993):小学生のソーシャルサポートとストレス反応 大対香奈子・大竹恵子・松見淳子(2007):学校適応アセ     との関係、『日本教育心理学会総会大会論文集』35、419.

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参照

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