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巻 頭

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Academic year: 2021

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1 . 巻 頭

Eヨ

変わった体験

情報処理センター長 山 田 英 一

情報処理センターの職務とは直接関係ありませんが、近頃外国に出張することが多くなりまし た。そこでこの機会に、出来るだけ多くの計算機センターと図書館を見学し、情報処理センター 運営上の参考にしたいという力んだ義務感から、これらの施設の訪問を開始しましたが、最近で は訪問がとても楽しくなって来ました。といいますのは、マイクロエレクトロニクス革命による 情報化社会の到来ということで、計算機センターは大学の管理・運営・教育・研究というすべて の分野にわたる全大学人の共有の財産として、今後ますます重要性を増して行きますし、図書館 もその進展に対応して行かねばならなくなって来ました。それゆえ、これらの施設を社会環境の 変化にあわせて充実させて行くことが、大学の将来の発麗のために不可決です。しかしどのよう に充実させていくかは各大学とも模索中であり、我々も苦慮している所ですから、各施設の責任 者とこの点について話し合えることは大いに参考になることが多し、からなのです。ただこの点に ついての認識や将来への対応は、正直にいってその大学の社会的評価とほぼ一致しているようで すから、訪問後いつも恐しく感ずると共に大いに自戒している所です。当情報処理センターも全 学の英智を結集し、大学の将来の発展のために充実していかなければならないと思っています。

堅苦しい情報処理センター論は別稿にゆずり、ここでは計算機センター訪問中に出会った少し変 わった体験を述べることにしましょう。

数年前イタリアの大学を、短期間のうちに 6 校訪問したことがあります。最初に訪れたコロッ セオのすぐそばにあるローマ大学工学部には、ミニコンシステム 2 組を持つ端末室があり、これ らが本部キャンパスの計算機に接続されていました。そこで有限要素法に関する論文を持つ電気 工学科の M 教授に案内を頼み、'見学に行きました。計算機センターは、ムッソリーニが作らせた という美しいキャンパスの南端のモダンな物理教室の地階にありましたが、どこにもセンターの 入口らしいものが見あたりません。 M 教授は先に立って建物を半周し、地下に通じる幅 1m 位の 狭い階段を降りて行きました。標識もない非常口に似たこの階段は、すぐに鉄製の頑丈なドアで さえぎられていました。裏口から近道を通っているのかと思っていますよ、ふりかえってここが 計算機センターの正式の入り口だと説明し、ドアを大きくノックしました。すると鎖をつけたま まのドアが薄目に開き、制服を着た警官がこわい顔をっき出しました。すかさず M 教授が、 「 大 切な客人を案内して来たから通してくれ」、とイタリア人独特の身振りをしながら熱心に頼んだ のですが、 「正式の許可書がないとだめだ」、といって、どうしても入れてもらえませんでした。

「大学の重要なデータパンクだから、正式の許可を得るのには時聞がかかって、とてもすぐとい

うわけにはし、かない」、と M 教授はすまなそうにわびるので、残念ながらあきらめざるをえませ

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んでした。警官が 24 時間 3 交代で大学の計算機センターに常駐しているのはここだけではなく、

訪問したイタリアの大学では全部そうでしたが、訪問校がふえるにつれ、だんだんとその理由が はっきりして来ました。

つぎに訪れたミラノ工科大学の計算機センターは、前年まで電子工学科の地下室にあったそう ですが、学園紛争がおこる度に放水攻撃を受けるので、ミラノ市内にある他の大学 4 校と共同で 計算機センターを設立し、郊外に移転したばかりとのことでした。 I ここから車で 30 分位の所 なので案内してあげよう J 、という S 教授と一緒に出かけることになりました。出発前にあちこ ちに S 教授が電話したのは、言うまでもありません。美しい郊外を快適にドライブし、小さな村 にはいった頃から、同じ光景が何度も繰り返しているように思われて来ました。出発してかれこ れ 1 時間程たっていましたが、どうも同じ所をぐるぐる廻っている様子なのです。 S 教授に尋ね ますと、 「確かにこの村にあるはずなのだが・・・」、というばかりです。それからしばらくし て、とうとうあきらめたのでしょうか、車を降りて村の鍛冶屋に聞きに行きましたが、丁度車を 止めた所がめざす計算機センターなのでした。高い塀で固まれたこの建物は、落成したばかりだ というのにすすけてみえ、もう数十年もそこ I~建っている刑務所の様でした。小さなくぐり戸を 開けてもらって中にはいると、すぐに警官詰所があり、モニターテレビで外部を監視していまし た。勿論私共がうろうろしているのも知っていました。内部は、外部とは対照的にデザインの国 らしく色彩豊かに設計され、少々うらやましい位でしたし、コンビュータもユニパックの超大型 機が設置されていました。帰りに案内した S 教授の、 「ここまでは学生達も大勢で来れないし、

来ても分かる訳がないよ」、と言った言葉がとても印象的でした。 Student Power  に余程困っていたのでしょう。

最後に訪れたトリノ工科大学では、もっと衝撃を受けました。 トリノ市はフィアットの城下町 であると共にイタリア工業の中心地でもありますから、事件の多い所です。トリノ工科大学の計 算機センターは、大きな本館のほぼ中央の地下室にあり、長い廊下のあちこちにあるドアの錠を、

つぎつぎに開けて行かないと到達出来ませんが、ここでも警官が 3 交代で常駐していました。し かし、今迄見て来た計算機センターとは違って、異様な雰囲気が漂っていました。案内してくれ た電気工学科の V 教授によりますと、ここは過去に爆破された実績を持っている上に、訪問した 一週間前にも爆弾が発見されたばかりだったそうです。計算機を使うにも命がけですから、イン テリジェント端末による分散処理のアイデアは、案外イタリアから生まれたのではなかろうかと 思いたくなった程でした。

我国の大学の計算機センターは、科学技術計算を主目的する施設から出発しましたから、図書 館のように開放的なものが多いのですが、計算機の能力がどんどん向上し、大学のデータパンク 的機能を果たすようになりますと、逆にここを破壊するだけで大学の機能が完全にマヒしてしま うことになるわけです。情報処理センターの総合化に向かつて一歩一歩実績を積み上げている我 々にとって、考えておかなければならないことを、また一つ教えられたように思いました。

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参照

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