仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギjの皮膚保護作用探索(第一報)
地域特産野菜「ウコギ」の皮膚保護作用探索(第一報)
E f f e c t s o f
Eleutherococcus sieboldianusex
仕a c t s on UVB‑induced a p o p t o s i s i n HaCaT c e l l s
仁科淳良
1)・加藤守匡
1)・寺島康正
1).森田幸雄
2)・木村博一
3)A t s u y o s h i N i s h i n a , Morimasa Kato , Yasumasa T e r a s h i m a , Yukio M o r i t a and H i r o k a z u Kimura
1)米沢女子短期大学健康栄養学科、 2)東京家政大、 3)国立感染症研究所
1
.はじめにウコギ(ヒメウコギ :EfeutherococclIS siebofdianω)は、ウコギ科の植物で、中国原産の落 葉低木である。とれまで機能性素材として用いられてきたエゾウコギ (EfeutherococclIs senticoslIs f.
i u e r m i s )
とは区別される。ウコギは昔、全国各地で栽培されており、特に戦国 時代は、とげのあるウコギの垣根が敵の侵入を防ぐという重要な用途を担っていた。現在、ウコギは地域特産の野菜で、米沢周辺では家庭用食材である。調理法としては、天ぷら、お ひたし、きり合え、ウコギご飯などがある。第九代米沢藩主上杉鷹山が垣根や旬の食材とし て奨励したことから、米沢では古くから暮らしの中にあり、郷土料理としても伝統が受け継 がれてきた。地産地消の範囲を超えて、全国的にウコギを販売しようとする動きがみられる が、未だに生産量は年間1.2t(山形県農業振興課資料)に留まっている。
これまで、ウコギに含まれている成分が人聞に有用であるとして様々な研究が行われてき た。ウコギにはビタミン
A
、C
、カルシウム、食物繊維のほか、近年ではサボニン類、クロ ロゲン酸やルチンなどのポリフェノール類が見いだされている。山田らは、ウコギ葉に食後 の血糖値上昇を抑制する働きがあることを報告し、ラットを用いた実験結果からウコギには マルターゼ阻害作用があると述べた。また、マルターゼ阻害作用はポリフェノール類、特に サポニン類とクロロゲン酸に由来すると推定した。さらに、山田らの研究結果を利用し、新 規の抗糖尿病食品としてウコギ茶の開発も行われているヘ一方、ウコギ葉乾燥粉末から煮 出した抽出液を用いた実験では、大腸菌、ブドウ球菌、バチルス菌、サルモネラ菌に対して 抗菌性があることが報告されているへ既往の文献を PubMedで検索した結果、エゾウコギ の機能性に関して多数の報告が存在するのに対しヒメウコギに関する報告は見いだせなかっ た。ウコギの用途を拡大するためには機能性研究の面で新たな検討が必要であると考えた。現在、世界的に見て皮膚がん患者が増加傾向にある。特に被害が拡大しているオーストラ リアでの年間死亡者数は
1000
人以上となっている。日本では毎年3000
人以上が皮膚がんを 発症している。皮膚がん増加の一因はオゾンホール拡大による紫外線の増加にあるといわれ ている日ーヘこのオゾンホールは1970
年代から出現し年々拡大傾向にあり、オゾンが1%
減 少すると、地上に達する紫外線が 2%増加し、結果、皮膚がん患者が4 %増加するといわれ ている。つο
ηr
u
5 ; ; i : ;
i 5
山形県立米沢女子短期大学紀要第
4 7
号Record area (26.6 million km')
1985 1990 1995 2000 2005 Year
図 1 オゾンホールの拡大 (NASAのホームページより転載)
紫外線は、
UVA ( 3 1 5 ‑ 4 0 0 n m ) , UVB ( 2 8 0
・315nm) , UVC (280nm
以下)の3種類に分けら れる。波長が短いものほど人体に有害であるが、最も波長の短いUVC
は地表には届かない。UVB
は地表まで届き皮膚がんを引き起こす。UVB
による皮膚がんの発生に関しては、h i n o k i t i o l
がUVBによる皮膚がんのリスクを減らすべルテオリンがUVB皮膚がんを抑制す る刷、マクロファージ遊走化抑制因子( M I F )
がUVB皮膚がんの治療効果を示すベUVB
照射 がラットのがんを誘発する(0)、UVBと癌の発症リスクの低減に関する研究( W i l l i a mB . G r a n t eamed a P h . D . i n p h y s i c s f r o m t h e U n i v e r s i t y o f C a l i f o r n i a , B
巴r k e l e yi n 1 9 7
1.)、紫外線とメラノー マ(皮膚ガン)との関係(AMERICANJOURNAL OF EPIDEMIOLOGY)
、紫外線の増加が人 の健康に及ぼす影響に関する研究(YAMAMOTOK i i c h i ; D e p a r t m e n t o f V i r o l o g y 1 N a t i o n a l I n s t i t u t e o f H e a l t h . )
などの研究がなされている。UVB
による皮膚細胞死抑制作用を検討する方法としてや、実験動物を用いる方法と培養 細胞を使用する方法が知られている。皮膚に関する実験には、培養細胞としてHaCaT.細胞 が用いられる{山九日aCaT.細胞は人から不死化した細胞を採取したものである。上皮細胞の がん化の解析や、紫外線や化学物質などのストレスによる細胞死や修復の実験に用いられる。今回、我々はHaCaT.細胞を用いて、山形県の特産物、特にウコギ中の皮膚保護成分につ いて検討することとした。具体的検討項目は①ウコギからエキス成分を抽出②エキス成分の 活性測定③活性成分の生成④皮膚保護メカニズムの推定とした。
2 .
実験方法2 . 1
実験材料山形県置賜総合支庁産業経済部所轄の産地研究室場(南陽市宮内)から発育が同等なウコギ を購入した。
一
2 4 ‑
仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギJの皮膚保護作用探索(第一報)
2 . 2
試薬3 ‑ (
付4 , 5 ‑
寸‑ d i m
巴t
白η h
ザポ升y r l t
出h
悩1叫i a
昭z o l ‑
ふy 刊 ) 同2
ふd i ゆ p h
謁e
巴n
ザ肘y
列1 ‑ 2 H
北t
甘r a
招z o ω l i u mb r o m i d e ( ω M
訂TT
甘)はシグマ杜の製品をそ のまま用いた。ヘキサン、クロロホルム、そしてメタノールは半井科学の製品(特級)をそ のまま使用した。その他の試薬は和光純薬の製品を、購入した状態で使用した。2 . 3 HaCaT
細胞HaCaT
細胞は、国立感染症研究所の木村博一博士のご好意により寄与されたものを用いた。ダルベッコ改良イーグル培地
(DMEM)
に牛胎児血清( F B S )
を10%
添加し、3 7
"C、CO z 5%
の環境で培養した。
2 . 4
細胞の播種法HaCaT
細胞がコンフルエントになるまで培養したカルチャーフラスコの培地を捨て、PBS5 m Q
で洗浄後、再びPBS 5 m Q
、 トリプシン1
mQを加えチルティングにより混合した。3 7
"Cで1 0
分間インキュベートし、FCS
を1 m Q
入れてピペッティングで均一化して、遠心管に移し4
"C
1000rpm
で5
分間遠心分離した。上清を捨て、沈殿した細胞を分散し、培地(10%FCS
を 添加したDMEM)
に入れてピペッテイングした。9 6
穴プレートに100μQ
ずつ分注し、皮j脅 保護作用の測定に用いた。残り細胞混濁液をカルチャーフラスコに入れ、COz
インキュベーターで培養した。
2 . 5 HaCaT
細胞の生存測定法 生存率測定法にはMTT
法[ 3
・( 4 , 5 ‑ d i m e t h y l t h i a z o l
・2
・y )
・2 , 5
・d i p h e n y l ‑ 2 H ‑ t e t r a z o l i u mb r o m i d e
を用いた、細胞の生死判定法]を用いた。すなわち、
9 6
穴プレートにあらかじめHaCaT
細胞を十分発育させ、MTT( 5 m g / 1
mQ)を培地の5%
量添加し、2
時間後に分光光度計( 6 5 0 n m )
で生存率を測定した。2 . 6
細胞毒性測定9 6
穴ウェルにコンフルエントになるまでHaCaT
細胞を生育させた。培地に100μg/mQ
または500μg/mQ
の被験物を添加し、 一晩3
7"C
でインキュベートした。その後MTT
法で細胞の生存 率を測定した。2 . 7
皮膚保護作用測定9 6
穴ウェルにコンフルエントになるまでHaCaT
細胞を生育させた。培地に100μg/mQ
また は500μg/mQ
の被験物を添加し、一晩3 7
"Cでインキュベートした。その後、リン酸緩衝生理 食塩水( P B S ) 100μQ
で2
回洗浄し、FBS
を1%
添加したDMEM
(アッセイ用培地)に交換した。
UVB
を400mJ/cm
照射し、0
,1 2
,2 4
,3 6
時間後にMTT
法で生存率を測定した。2 . 8
エキスの調製ウコギを真空乾燥して乾燥ウコギとした。ミキサーで乾燥ウコギを粉砕し、抽出原料とした。
抽出原料に
5
倍量のヘキサンを入れ、一晩静置した後櫨過し、ロータリーエパポレーターで 乾燥して、ヘキサン抽出物を得た。次に抽出残誼にヘキサンと同量のクロロホルムを入れ、ヘキサン抽出物と同じ操作によりクロロホルム抽出物を得た。同様の方法でメタノール抽出 物を得た。
‑ 2 5 ‑
山形県立米沢女子短期大学紀要第
4 7
号2 . 9
粗分画(オープンカラム精製)充填剤としてシリカゲル(ワコーゲル
C ‑ 2 0 0 )
を用いたオープンカラムトグラフィー(内径52mm)
で皮膚保護作用を示したクロロホルム抽出物をS
つのフラクションに粗分画した。移動相はヘキサン:酢酸エチル
=100:0
、9 0 : 1 0
、8 0 : 2 0
、7 0 : 3 0
、6 0 : 4 0
(いずれも容積比) を用いた。2 . 10
活性フラクションの薄層クロマ卜グラフィーによる分析オープンカラム分画物のうち活性が認められたクロロホルム
70%
画分(C70%
画分)を薄層 クロマトグラフィーによって分析した。薄層プレートはシリカゲ、ルF254(メルク社)を、展開溶媒はヘキサン:イソプレピルアル コール
=100:0
、9 0 : 1 0
、80:20
、7 0 : 3 0
、6 0 : 4 0
、5 0 : 5 0
(いずれも容積比)を用いた。展開 後に風乾し、リン酸硫酸銅液(硫酸銅3g
を15%
リン酸水溶液100mQに溶かした)を用いて105
0C
で30
分間加熱することにより発色させた。2 . 1 1
活性フラクションの分取高速液体クロマトグラフィーによる分画C70%
酉分の再精製は次の方法で行った。カラムはD e v e l o s 1 i 6 0 ‑ 1 0
(内径200mmX
長さ250mm:
野村化学製)、移動相はヘキサン:イソプロピルアルコール
=97:3
(容積比)流速5mQ/min
、 検出には紫外可視検出器(254nm)
を用いた。2. 1 2
蛍光顕微鏡によるアポトーシスの判定HaCaT
細胞の培地にHoechst33342
を5
凹/mQ添加し30
分後に蛍光顕微鏡( M T ‑ 2
:オリンパス 製、励起波長350nm
蛍光波長461nm)
で核の状態を比較した。2 . 1 3
細胞の形態観察倒立顕微鏡
IX70
(オリンパス製)を用い、X100
で細胞の形態観察を行った。撮像にはデジ タルカメラ( Q V ‑ 8 0 0 0 :
カシオ製)を用いた。2 . 1 4
ウエスタンブロット j去
DMEM
培地にFCS10%
を添加した溶液にHaCaT
細胞を2X10.
個/mQ濃度で混濁し、コラーゲ ンコートした6
穴マイクロプレートに播種し37
0C
、空気95%
、二酸化炭素5%
のもとで2
日間前培養した。培地を除去してPBS
で洗浄後、被験サンプルの所定量を活性試験用培地に 分散または溶解し、37
0C
、30
分間HaCaT
細胞を被験サンプルで刺激した。次に氷上でマイクロプレートを 3mQの
2mMTBS( O . 3 3 M NaCQ a n d 6.25M Na3V04
含有)で洗 い、R i p a
バッファー(150mMNaCQ
、2mMEDTA
、1%Nonidet P ‑ 4 0 ( w / v )
、1 % s o d i u m d e o x y c h o l a t e ( w / v )
、O.l%SDS(w/v)
、50
m MNaF
、0.1%a p r o t i n i n ( w / v )
、0.1%l e u p e p t i n ( w / v )
、1 m M Na 3V 0 4
,a n d l
m MPMSF p H 8 . 0 )
で細胞を溶かした。溶解した細胞をセルスクレーパ ーで集めて、1 .
5mQのマイクロチューブ、に移し、4
0C 15000g
で30
分間遠心分離した。上清 を別のマイクロチューブに移すとともにタンパク含量をBCA
タンパク質定量キット(ピアス 社)で測定した。20μg
のタンパク質を含む上清をSDS
サンフルバッファー(インビトロジ ェン社)と混合し、80t
で5
分間反応した。タンパク質をSDS
ーポリアクリルアミド電気泳 動で分離し、PVDF
メンプランにエレクトロブロットにより転写した。PVDF
メンブランは(ハ イポンドP;GE
ヘルスケア社)を用いた。イムノブロット分析は一次抗体としてリン酸化p44/42ERK
モノクローナル抗体(セルシグナルテクノロジ一社)、二次抗体としてアルカ‑ 2 6 ‑
仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギJの皮膚保護作用探索(第一報)
ノロジ一社)、二次抗体としてアルカリホスファターゼの抗ウサギIgG
(サンタクルズ社)を用いた。発色は A P バッファー (O.lM T r i s
四HClN a C l l 0 .58% , M g C l l 2 0.1% p H 9 . 5 ) 1 0 m Q
に7 .5% n i t r o b l u e t e t r a z o l i u m (NBT)
を45μS
と5 % 5 ‑ b r o m o ‑ 4 ‑ c h l o r o ‑ 3 ‑ i n d c U I γ 1 p h o s p h a t e ‑ p ‑ t o u i d i n e ( B C I P )
を35μQ混合した溶液中で行った。3 .
結果と考察3 . 1
担分画物の収量と細胞毒性粗分画の結果、乾燥ウコギ 100g からヘキサン抽出物が2.3g 、クロロホルム抽出物が1. 5g 、
メタノール抽出物が1 2 . 3 g
得られた(図2 )
。各抽出物の細胞毒性を図3
に示した。無添加と比較して、ヘキサン抽出物、クロロホルム抽出物を添加すると細胞数が減少したが、統計 的な有意差は認められなかった。
ヘキサン 5 0 0 m Q
クロロホルム抽出物 1 . 5g
図
2
粗分画法と各抽出物の収量ヴFη
︐
山形県立米沢女子短期大学紀要 第47号
10
910
810
710
610
510
41 0
31 0
210
110
0 (由 国¥ 恩) 頼盟 寝h町
六社
nb
長口︑昨
nh F
入 わ け ザ ど
MT
円
h u
JMM
蔀郎 町︑
﹀口
︒時 肥同 四
ロ有総出航
各抽出物の細胞毒性
3 . 2
粗分画物の皮膚保護作用粗分画物の皮膚保護作用を図
4
に示した。画分物無添加区に比べ、クロロホルム抽出物を1 0 0 μg / m Q
添加することにより有意な皮膚保護作用が認められた。ヘキサン抽出物、メタノ ール抽出物には皮膚保護作用が皆無であった。以上の結果からウコギのクロロホルム抽出物 から活性成分の精製を行うこととした。図
3
ι
一一l 一 一 + 無 添 力 日
?と六 ,
uv
照射なし 幽営団ヘキサン抽出物**一一一吋宇田クロロホルム抽出物 メタノール抽出物
1 . 2
0 . 9
0.8c
'
"
<D
8 0 . 7
0 . 6 1 . 1
1
0 . 5
30
一一一L一一一一一一一一一一一一
1 0 2 0
照射後経過時間(時間)0 . 4
0
各抽出物の皮膚保護効果
一28‑
図
4
仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜 fウコギ」の皮膚保護作用探索(第一報)
3 . 3 オープンカラムクロマトグラフィーによるクロロホルム抽出物の分画
活性が認められたクロロホルム抽出物をオーフンカラムクロマトグラフィーで分画し、 6
種類の分画物、すなわちヘキサン 100% 画分、ヘキサン90% 画分、ヘキサン80% 画分、ヘキサ ン70% 画分、ヘキサン 60% 画分を得た。クロロホルム抽出物を 3g 用いたときの各画分の収 量を表 1 に示した。それぞれの画分の細胞毒性を図 5 に、皮膚保護活性を図 6 に示した。無 添加と比較してヘキサン100% 画分または70% 画分を添加することにより、有意な皮膚保護 作用が認められた。
1 0 . 9 0 . 8 0 . 7
~
0 . 6 占 0 . 5
o 0 . 4 0 . 3 0 . 2 ‑ 0 . 。 1
表
1オープンカラム精製時の収量 ヘキサン含量(%) 収量 /3
g100 0 . 3 2 90 0 . 4 2 80 1 . 95 70 0 . 1 1 60 0 . 2
図 5 分画物の細胞毒性
骨 〆 ρ
4
や~ .~や~ ,~や~ ,~や3
、
4φs舎~ ,0-φ~~ ~φ~~ ~φs余コφ 4 5 P
3ぷ│。ぷ│。ぷ │ 0 4 1 0 ぷ│。ぷ│。ぷ│。ぷ│。ポドぷ│。
ヘν
2 9 ‑
1 . 4 1 . 2 1
〆 '、
、
0 . 8
時 舵制
0 . 6
0 . 4 0 . 2
。 。
山形県立米沢女子短期大学紀要第47号
10 20
3040 UVB
照射後経過時開(時)図
6
分画物の皮膚保護効果一争回
100%
1 0 0
J1g / n u l 90%
1 0 0 μ g / m Q
E金由
80%
1 0 0 μ g / m Q
吋 炉
70%
1 0 0 μ g/
mQ 吋 ト60%
1 0 0 μ g / m Q 90%
5 0 0 μ g / m Q
3 . 4
薄層クロマトグラフィーによる分析薄層クロマトグラフィーによるヘキサン
100%
画分または70%
画分の分析結果を図7
に示した。ヘキサンとイソプロピルアルコールの混合液で展開することにより良好な分離が認められた。
よって、精製にはカラムとしてシリカゲル、移動相としてヘキサンとイソプロピルアルコー ルの混合液を用いることとした。また、移動相の極性が低いほど、高極性の爽雑物が少なく、
精製が容易であるので、ヘキサン
100%
問分を精製することとした。移動相中の
ヘキサン含量
( v % ) 100 90 80 70 60 50
島.
100%
画分70%
画分図
7
薄層クロマトグラフィーによる粗分画物の分析‑30
ー仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギJの皮膚保護作用探索(第一報)
3 . 5
分取液体クロマトグラフィーによる精製予備的に分析用液体クロマトグラフィーでヘキサン
100%
画分を分析した結果を図8
に示し た。移動相組成に関しては3 . 4
の薄層クロマトグラフィーの結果を参考にした。結果、移 動相としてヘキサン:イソプロピルアルコール=97: 3
(容積比)を用いるごとにより精 製に適した分離が得られると判断した。移動相としてヘキサン:イソプロピルアルコール=97 :
3 (容積比)を用いてヘキサン100%
画分をフラクションN. o 1
~ 8に分画した(図的。各フラクションの皮膚保護作用を図
10
に示した。図10
よりフラクション1
の皮膚保護作用が 最も強いことが分かつた。図9
よりフラクション1
は多種の物質の混合物と推定された。活 性成分を単離するためにはフラクション1
の再精製が必要である。97 90
80 分析用カラムによる予備検討
70 60 50
移動相中の
ヘキサン含量
( v % )
図
8
( i )
由回国︒円四回UHHU℃
HO OU
肖
40 50 20
3010
保持時間(分)
分取高速液体クロマトグラフィーによる分画
4 BB 4
η ο
図
9
1 . 2
1
0 . 8
時 株
0 . 6
制0 . 4
0 . 2
。
山形県立米沢女子短期大学紀要第47号
o 10 20 30 40 UVB 照射後経過時間(時)
出←箇フラクション 1 フラクション 2 血傘叩フラクション3 吋伊フラクション4 叫トフラクション 5 フラクション6 フラクション 7 フラクション8
無添加図
10分取高速液体クロマトグラフィーによって得られた各フラクションの皮膚保護作用
3. 6 UVB
照射による HaCaT 細胞死滅様式の推定
既往の研究では UVB 照射により HaCaT 細胞がアポトーシスを起こすことが報告されている。
細胞死の様式の推定を目的として、 UVB 照射による HaCaT 細胞の形態変化を観察した。結果 を図 11 に示した。 UVB 未照射の透過像 ( A ) と UVB 照射 24 時間後の透過像の比較により、
UVB 照射による細胞の剥離、小胞化が観察された。核のヘキスト染色像から UVB 照射 24 時 間で核が断片化して楼小化することがわかった ( C 、 D) 。既往の研究結果で UVB 照射により、
HaCaT 細胞がアポトーシスを起こすことが報告されており、我々の実験系で UVB 照射により アポトーシスの特徴である細胞の小胞化、核の断片化が認められたことから、我々が用いた 実験系では UVB 照射により HaCaT 細胞がアポトーシスを起こすものと判断した。
一32‑
仁科・加藤・寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギJの皮膚保護作用探索(第一報)
図11 UVB照射後の細胞および核の形態変化 A: UVB未照射透過像、 B : UVB照射
24
時間後透過像、C : UVB未照射蛍光像、。:UVB照射
24
時間後蛍光像、3 . 7
ウコギ成分が皮膚保護作用を示すメカニズムの推定既往の研究におけるアポトーシスの冗進、抑制に関する細胞内情報経路を図 12~14 にまと めた (画像データは、セルシグナルテクノロジ一社から提供された)。
q U
9d
仁科・加藤・ 寺島・森田・木村:地域特産野菜「ウコギjの皮膚保護作用探索(第一報)
SAPKlJNK 519nalln9 Ca舵ade8 F .. 仁υv
加a釘W羽atofyC)匂"'.旬開
C't.(J~~~
、 ,O " "
y‑‑ OrO'tlllh
L
ー . . . .
THUH..:,j~<<I---+ T,
al1削1求。n一一一....~~~,~~陣剖SUf\~v~i A問 主 賛 同 "図14 JNKカスケード
アポトーシス抑制が起こる場合に、図 12~14 に示した経路が活性化、または阻害されて
いる可能性がある。
ウコギ中の成分が HaCaT 細胞上の受容体を刺激し、 MAPK/ERK 経路、 P K B / A k t 経路、
別
K カスケードにいずれかまたは複数を活性化し、最終的にアポトーシスが抑制されると仮 定すると、各経路のチェックポイントである。 ERKl/2 、 A k t 、 JNK 、 p38‑MAPK のいずれ かまたは複数が活性化されるはずである。
次のステップとして、ウコギ抽出物による刺激と、各キナーゼ活性化の関係を測定した。
H a C a T 細胞の培地中にフラクショ
ン1
または陽性対照である上皮活性化因子( E G F ) を添加し、
3 0 分後の各キナーゼのリン酸化を測定した。 p38‑MAPK は EGF またはウコギ抽出物を添加 しでもリン酸化されなかった。刑 K は EGF 添加区でリン酸化が促進されたが、フラクション 1 は無作用であった。一方、フラクション 1 を添加する乙とにより ERKl/2 と A k t のリン酸 化が有意に克進された。フラクショ
ン1 の作用の強さは陽'性対照の EGF に及ばなかった。
FD
つd
4.5 4
$l 3.5
~
3~ a 2 . 5
. 8
25
15 凸0.5 0
ぶ 十 u o
嘩
J ,l今 V品行a 介'
山形県立米沢女子短期大学紀要 第47号
4 2
1.8 了ll台 大
犬
占π
3.5
$l 3
225J 同 I ( 1/2
<l)
回 2
0
315
<l)
Q I 0.5
。
ぷ 令 子 ぷ 唾
J Pl今 VAηa
ノ
I'
呂1.6
i p‑JNK 1/2 , 3 5
1.4
E '
1.28
0 1'1il 0.8 806
0.4 0.2
ぷ̲ J 0 J ^ " ~&.
Aη4
今
r図1 5 7ラクション 1または EGFI こより活性化されるキナーゼ
以上の結果から、フラクション 1 の中の成分により PKB/Akt 経路または古典的 MAPK 経路 のいずれかまたは両方を活性化され、 UVB 照射による HaCaT 細胞のアポトーシスを抑制して いる可能性が示唆された。
4. まとめ
フロンガスによるオゾンホールの拡大により地上に到達する UVB が増加するとともに皮 膚がん患者が増える傾向にある。我々は人皮膚ケラチノサイト (HaCaT 細胞)を使用して、
山形県特産の農産物の皮膚保護作用を探索した結果、ウコギ抽出物が比較的強力な皮膚保護 作用を示すことを見いだした。次にウコギクロロホルム抽出物をオープンカラムクロマトグ ラフィーと分取高速液体クロマトグラフィーを用いて精製し、活性の高いフラクションを得 た。今後、ウコギ中の皮膚保護成分の単離と伺定及び、実験動物を用いたウコギの皮膚保護 作用の測定を行うことにより、ウコギの新たな機能成分として実用化したいと考えている。
また、ウコギを経口的に摂取したときの効果を検証することにより、美容食品としての実用 化が可能となる。
ウコギの知名度は比較的高いと考えているが、生産量の増加が今後の課題となっている。
今後ウコギの新たな機能性を明らかにすることによりウコギの生産量増加の一助となれば幸 いである。
5.
謝辞卒業研究を通して本研究を遂行した穀野知美氏、佐藤真美氏に感謝いたします。
‑36‑
仁科・加藤・寺島・森田・木村地域特産野菜「ウコギ
Jの皮膚保護作用探索(第一報)参考文献
1.本三保子,田村朝子, and 山田則子,ヒメウコギ葉茶のラットおよびヒトにおける食後血糖 上昇抑制作用.日本栄養・食糧学会誌 61( 2 0 0 8 ) 111‑117.
2.田村朝子,田淵三保子, and山田則子,ウコギの抗菌性およびカット野菜に対する効果.日 本家政学会誌 56( 2 0 0 5 ) 451‑456.
3. M . P . C o r r e a , P . D u b u i s s o n , a n d
A.P l a n a ‑ F a t t o r i , An o v e r v i e w o f t h e u l t r a v i o l e t i n d e x and t h e s k i n
cancer casesi n B r a z i . l Photochem P h o t o b i o l 78 ( 2 0 0 3 ) 49
・5 4 .
4 .
J.F.A b a r c a , and C . C . C a s i c c i a , S k i n c a n c e r and u l t r a v i o l e t ‑ B r a d i a t i o n und
巴rt h e An t a r c t i c o z o n e h o l e : southem C h i l e , 1 9 8 7
・2 0 0 0 .P h o t o d e r m a t o l Photoimmunol Photomed 1 8 ( 2 0 0 2 ) 294
・3 0 2 . 5 .
J.S i n c l a i r , The e f f e c t s o f t h e h o l e i n t h
巴o z o n el a y e r on
health. Nurs St a n d 1 4 ( 1 9 9 9 ) 4 2 ‑ 3 . 6 . R . Marks , S k i n c a n c e r and t h e o z o n e h o l e . When i s n o t enough l i k e l y t o be t o o much? Med J A u s t
163 ( 1 9 9 5 ) 578
幽9 .
7. S . C h i l a m p a l l i , X . Zhang , H . Fahmy , R . S . K a u s h i k , D . Zeman , M. B . H i l d r
巴t h , a n d C . D w i v e d i ,
Chemopreventiv巴巴ffectsof h o n o k i o l on UVB
幽i n d u c e ds k i n c a n c e r developmen An t . t i c a n c e r Res 30 ( 2 0 1 0 ) 777
・8 3 .
8. S . B
刊n ,K . W. Lee , S
.K . J u n g , E
.J.Lee , M. K . Hwang , S . H . Lim , A
.M. Bode , H .
J.Lee ,
andZ
.Dong , L u t e o l i n i
nhibits pr o t e i n k i n a s e C(
巴p s i l o n )a n d c ‑ S r c a c t i v i t i e s and UVB‑induced s
kinc a n c e r . Canc
巴rRes 70 ( 2 0 1 0 ) 2 4 1 5 ‑ 2 3 .
9
.
J.M a r t i n , F .
J.Duncan , T . K e i s e r , S . S h i n , D . F . K u s e w i t t , T . O b e r y s z y n ,
A.R . S a t o s k a r , and
A.M.
V a n B u s k i r k , Macrophage m i g r a t i o n i n h i b i t o r y f a c t o r ( M I F ) p l a y s a c r i t i c a l r o l e i n p a t h o g e n e s i s o f u l t r a v i o l e t
幽B(UVB)
岨i n d u c e dnonmelanoma s k i n c a n c e r (N MSC). FASEB J 23 ( 2 0 0 9 ) 7 2 0 ‑ 3 0 . 1 0 . G . T . van d e r H o r s t , L . M e i r a , T . G . G o r g e l s ,
J.d
巴Wit , S . V e l a s c o
・Miguel ,
J.A.R i c h a r d s o n , Y .
Kamp , M . P . V r e e s w i j k , B . S m i t , D . Bootsma ,
J.H . H o e i j m a k e r s , a n d
巳. C .F r i e d b e r g ,
UVBr a d i a t i o n ‑ i n d u c e d c a n c e r p r e d i s p o s i t i o n i n Cockayne
syndromeg r o u p A ( C s a ) m u t a n t m i c e . DNA R e p a i r (Am s t ) 1 ( 2 0 0 2 ) 1 4 3
・5 7 .
1 1 . M. S e o , and Y . S . J u h n n , Gq p r o t e i n m e d i a t e s UVB‑induced c
yclooxygenase・2ex p r e s s i o n by s t i m u l a t i n g HB
・EGF s e c r e t i o n from HaCaT human k e r a t i n o c y t e s . Biochem Biophys Res Commun 393 ( 2 0 1 0 ) 1 9 0
・5 .
1 2 .
J.Kang , W. Chen ,
J. Xia,Y . L i , B . Yang , B . Chen , W. Sun ,
X.Song , W. Xiang , X . Wang ,
F.Wang , Z . B i , and Y . Wan , E x t r a c e l l u l a r m a t r i x s e c r e t e d by s e n e s c e n t f i b r o b l a s t s i n d u c e d by UVB p r o m o t e s c
巴1 1 p r o l i f e r a t i o n i n HaCaT c e l l s t h r o u g h P
I3K/AKT
and ERKs i g n a l i n g p a t h w a y s . I n t J Mol Med 21 ( 2 0 0 8 ) 777
・8 4 .
ワt
q o
山形県立米沢女子短期大学紀要第47号
要旨