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本校の現場実習における諸問題

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Academic year: 2021

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本校の現場実習における諸問題

樋 口 隆 史

璽.はじめに

 社会への出口である高等部にとって生徒ひとりひとりの進路とは切っても切れない関係にある。進路 を抜きにしては高等部の生活は考えられないのである。昭和55年4月に高等部に赴任して以来,8年が 過ぎようとしている。この8年の高等部生活の中で,3年担任を5年経験し,そのうち,昭和59年度か

ら3年間は,進路指導主事として直接生徒ひとりひとりの進路を担当してきた。

 さて,この進路指導の中でも大きな位置を占めるものに現場実習がある。高等部の生徒の進路を切り 開くためには現場実習なくしては考えられないほどである。この8年間をみると,生徒がかなり多様化

してきているのが現状である。また諸般の社会情勢から高等部の3年生の進路先が,一般企業から福祉 関係へと変わってきているのも事実である。

 そこで,ここでは,本校で現場実習を実施するにあたってのいくつかの間題と現場実習を通して就労 に結びついた事例を考察しながら,現場実習の在り方を探ってみたい。

黛,現場実習について

 現場実習は高等部で行い,中学部では実施していない。現実の社会とのつながりの自覚をもたせる作 業学習の仕上げの過程として,また,他の教科や領域,あるいは教科領域を合わせたものの総合された 学習として現場実習が考えられる。現場実習は,直接事業所で働くことを体験することであり,社会人 とかかわりをもつ学習である。現場実習で得た体験は,その後の学校生活に生かされ,生徒達は成長し ていく。

 現場実習は,それぞれの学期に2週間ずつ行っている。2・3年の生徒全員を対象とするが,2年生 は2学期のみである。 (この方法が昭和56年度から定着している)

 2年生の現場実習は,次のようなねらいのもとで行っている。

 ① 会社,福祉作業所,施設といった場で,大人と一緒に仕事することを通して,生産のしくみや社   会の成り立ちを知り,働くことの意味を理解できるようにする。

 ② 生徒ひとりひとりの特性や能力が,新しい環境の中で活用できるかどうか,自分自身の力を知る   機会とする。

 ③ 生徒ひとりひとりの将来への見通しについて,本人,保護者,教師が考える機会とし,今後の進   路に生かす。

 そして,3年生の現場実習は,卒業後の進路先を決定するという意味合いを強くもっている。だから ねらいとして次のようなことを考えて実施している。

 ①2年次の現場実習を踏まえ,生徒ひとりひとりの能力や特性がより有効に発揮できるようになつ

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たかどうか,自分自身の力を見きわめる機会とする。、

 ② 生徒ひとりひとりが自己の適性を発見する場とし,進路について見通しを得られる機会とする。

 こうしたねらいに沿って,ア.生徒の職業適性,体力,性格からみた仕事内容の適・不適,イ.職場 内の雰囲気への適応や人間関係での問題点,ウ.長時間労働に対する意欲や体力の有無,エ.就労態度 オ.技術的な向上の度合いや仕事への自信,カ。職場生活での規律を守る態度等を指導の観点としなが

ら実習をさせている。

3.現場実習を実施する上での問題点

〈1)実習先の開拓

  一番頭を痛めるのが実習先の開拓である。

 喜んで実習を引き受けてくれる所はほとんど  ないのが現状である。養護学校と聞いただけ  で,大変だからとか食品関係だから(衛生的  に困る)とか,とにかくいろいろな理由をっ  けて断られるケースが多い。

  実習先の開拓にあたっては,実習先の仕事  が安全なものであることや衛生的であること,

 通勤に無理がないこと等をチェックしながら  進めるが,選んでいくほど事業所がなく,大

表1 実習先(事業所)の数

現場実習をした事業所の数 57か所

開拓の方法 。求人情報広告や直接訪問をして

。職業安定所の紹介で

。教師や保護者の紹介,保護者が 経営している

。他附属の進路担当者の紹介で

44か所

3 ,,

9 ri

l n 現場実習により卒業後就職した事業所 25か所

      (覆懸膿灘騰離?物

半は断られてしまう。表1に過去7年間の実習先の数をのせた。実習先開拓の中心は,やはり新聞 折り込み広告(求人情報)や電話帳から選び出して電話で依頼することや求人の看板を見つけたらそ

の場で会社訪問をすること等,・進路指導主事や主として高等部教官の腕にかかっていると言っても過 言ではない。

(2)事業所との手続き

  運よく面接にこぎつけた事業所には,実習依頼状と  生徒の個人調査票を持参している。と同時に,実習を  予定している生徒も引率していくことにしている。事  業所では,社長(あるいは工場長)と直接担当する係  の方と会うので実際に生徒を会わせた方が手っ取り早  いからである。 (事前面接と称している)

  そして,生徒共々工場内を案内してもらい,ついで  に更衣室やトイレ,タイムカード等を確認し,職場内  の雰囲気をもつかみとっておくのである。

  打ち合わせた結果については,表2のようにまとめ  保護者会時に配布しているが,なかなか保護者に徹底  しないこともあるので,新たな対策を考慮する必要が  ある。 (土曜日の勤務,作業の服装,保護者の会社へ  の挨拶,休日の変更,昼食等について)

 表2 現場実習打ち合わせ結果表

4/24 9:30〜面接(生徒)

現場実習打合結果 記入者  樋 口

      所在地1リネンサプライ(株)

常陸太田市

事業所名 竃 話 ()0101

撹当者名 専務 1氏 実  習

カ徒名

H子

期  問 昭和61年5月12日(月)〜5月24日(土)

就業時間

i実習時間)

8時15分〜5時00分       ※土曜半環(8時15分〜5時00分)

通勤方法

自宅(K十文字)一〇駅一噸内宿

@       バス  S文興のところ       ノ       .坂をおりていく      

@      工場ゼ

@       (バイパス)

畳  食 廼塾 依頼(喰 円)

服  装 i曾臨)

作業月侵  (de, o)     (玉≡璽璽〉  (      )     ジャージ

X 子 〉三角巾  手袋(ゴム,軍手)

C(長靴,運動靴,その他        )

@※巡回の時にスリッパ持参

@※綱服で通勤し,工場で着がえる。

その他 タイムカード(㊨,無)

ヲ実習依頼状と飼人調査表は郵送する。 4/24

茨城大学教育学部附属養護学校

(3)

(3)巡回指導について

  毎日巡回指導をした方がよいのか,一日おき位にするのがよいのか,意見が分かれるところである。

  新規の事業所や少々心配な面がある生徒が実習している事業所には,当然毎日出向くことになる。会  社に誠意を示すことを考えれば,毎日巡回指導をすることを考慮して計画を立てる必要がある。

  それでは,一日の中でどの時間に(午前の前半・後半,午後の前半・後半)巡回するのがよいかに  ついてもそれぞれの生徒の実態から計画立案する上で頭を悩ますところである。

   表3 現場実習巡回指導一覧表

実   響   先

5/!2(月)

亙3(火) !4(水) 15(木)

16(金) 17(土) 19(月) 20(火) 21(水) 22(木) 23(金) %(土)

丁製作所(美野里町)

四 四 四 樋i 樋} 樋 四i 須

廻i

樋i i樋

四i

A工芸(茨城町)

四 四 即 樋i

画 沸 四1 榔

i樋

1 園(水戸市酒門町) 四i 四i 四i

樋i 樋i

樋i

四i

四i 四i 樋i i樋 四i

1リネンサプライ(常陸太田) 樋 樋 1樋

四}

i樋 1四 ;樋

樋1

1竃機(東梅村)

i酉 四i

樋i ;樋 四i

樋i

W木工所(勝困市)

樋; 画

i樋

;四 四i i樋

樋i

T金隅(水戸市堀町)

四 樋i

i樋

高i

樋i

四i

須i

A紙器( 〃 舞榊町)

樋i i樋 須i i四

樋:

W 團( 〃 上国井町)

吉…

四:

樋i

高i 高i

樋i 樋i 樋1 樋i

四i 樋i 須i

授       業

委員会活動

@(樋ロ)

美術

@(高瀬)

フ育

@(樋口)

家庭

@(高瀬)

委員会活動

@(樋口)

美衛

@(高瀬)

フ育

@(樋口)

家庭

@(高瀬)

行       事 教窟会議

¥周年係会

E遷性検査

@(須藤)

・趨性検査

@併坂)

部会 研究臼

@(学部)

E適性検資

@(須藤)

串趨牲検査

@(樋口)

研究A3:15

、究B4:15 Z歌発表

@ 練習会

四附属会

@ 6:0σ

部会

ウ育実習オ

潟Gンテー

Vョン

S体3:15

研究日

@(学部)

職員研鰹日

4.現場実習を通して就労に結びついた事例

○父親の転勤により他県に就職しtcH男について  (1)H:男のプロフィール  IQ 59

  〈職業適性検査の結果から〉(注:職業適性検査 茨城心身障害者職業センター,友部町)

  ・発作抑制のためコントra・一ルされていることと知的な遅れがあるが,ある程度自立できており,

   適応の点でも大きな問題はないと思われる。

  e体力もあり,運動能力も悪くないことと作業面でも態度がよいことなどから作業内容の低い,巧    緻性をあまり必要としない作業であれば十分就労は可能と考える。

〈3年の時の個別重点目標と施策〉

べ1…問

  ・L葺数が多い。

3.Pり1・

  題     ゑi、

(旧人の,躯【.珂参側時の)

..

P灘些些か友だ鶴り{

.・q示がtiいと物ごとを推に処i哩する

 がラゑけ し  げ      セいセ      ぜセ むセげミニのための い が

欝器i・麟鐸撮.・難轟土熱灘蛋三鷹鴇註記熱嚇論議壌撫

     コやや じやみ   

       のがカがあるわりには がのぎこちな

      リド にボがゑなことには コこもってしヨ

    ・ 蹴…三三寒騨・1難1鮮・幅 }欝1欝螺

(2)父親の転勤が内定する

 H男は,3年の2回目の現場実習の結果,H電子(自動車部品の組立)から採用内定の連絡を受け

ていた。ところが,H製作所H工場の部長職にある父親が東京本社への転勤を命ぜられた。就職内定

していたH男をひとり残して引っ越しをすることは到底考えられないとなり,居住予定の千葉市近辺

       にH男の職を求めることになった。

(4)

(3)千葉大学令属養護学校に会社を見つけてもらうよう依頼する

 結局,自力での職場開拓は難しく,副校長を通して千葉大学附属養護学校に職場開拓の依頼をした。

そして千葉大学附帯に親子,副校長,進路指導主事,担任で出向き,面接をして実習に対する協力を 要請した。ほどなくしてN教官より本校に実習先が決定した旨の連絡が入った。市内のJ社であった。

(4)J社(羊肉の解体を中心とした仕事)で実習をする

 1月23日から3回目の実習に入った。H男の家族の引っ越しは3月のため, J社(千葉市)での実 習は,母親とH男で千葉市内の親戚宅に泊まり込んで行うことになった。J社への通勤は,バスと総 武線とまたバスを利用しなければならず,慣れない土地でH男にとっても母親にとっても大変だった。

 仕事の内容は,肉の袋詰め,袋の口をひもで結ぶ,袋を台車で運ぶ,箱を洗う,肉の入った箱を集 めるといったことで,直接包丁を使用する仕事は,実習ということからはずされた。千葉大附養の高 等部1年生も一一緒に実習するので,巡回指導についても千葉大附養の先生方に骨を折ってもらった。

 本校からは,最初と最後の2回,巡回指導(挨拶)にJ社に出向いた。実習の結果,会社から良好 な仕事ぶりなので引き続き働かせてもらえるという返事をもらった。

(5)H製作所S工場に就職が内定する。

 J社での良好な実習ぶりとは裏腹に,H男の両親が,包丁を扱う仕事が中心であることや会社その ものが従業員との個人契約になっている点等に難色を示した。J社でのH男の将来にかなり不安を抱 いたのである。結果としてJ社への就職内定は辞退せざるを得なかった。

 大変困っていた時に,H男の父親が,自分が勤務するH製作所の独身寮の用務員の募集(東京)を 知らせてきた。さっそく進路指導主事が職場訪問をした。そこでは3人の障害者が働いていたが知恵 遅れに該当する人はいなかった。仕事内容は,寮のまわりの草取りが中心で,冬になるとごみ収集や 廊下や便所の清掃になるということであった。係の方は,雇用促進法に適用されなくても採用しても よいことを話してくれた。しかし,仕事内容をみると,気を利かして働かなければならないことや日 給・月給制で欠勤すれば賃金が入らないこと,そして身分が常用の臨時雇用ということから,また両 親が辞退を申し出てきた。

 この話と入れ違いに,H男の父親が再度求人の話を持ち出してきた。今度もH男の両親が勤務する H製作所に関係のあるM工場S分工場で働けるかどうかということであった。とり合えず進路指導主 事が職場訪問に向かうことになった。 (表4)

      表4 H製作所M工場S分工場訪問の記録  H男の父親からある程度の話がつけられてい るせいか,とてもスムーズに話が進んだ。S分

工場の仕事についても表4の②の仕事ならなん とかなるのではないかという結論に達した。

 そしてS分工場の方から就職を希望する場合 の面接日と実習を何日か行わせて,様子を見た いという申し出があった。

 H男も両親も将来は千葉市内に家を建てて永 住する計画であったので,H製作所S分工場へ 就職を希望する話はどんどん具体化し,スムー ズに進んだ。

      H製作所S分.1二場訪問

       S.58.1.31

。本社  資二郎業務グループ(東京)

    部長代躍1氏に会い,見学の案内を依頼する。

。M£場  総務部長0氏に会い,見学の依頼をする。(T・葉県M市)

。S分L場  」二場長1氏(子葉県S市)

  テレビのブラウン管を製造(一H1万本の崖産)

・通勤  S駅一一→通勤バス

     1G分

・勤務体制 3交代 1の番8:00〜16:45

       2の翻:45:㍗:ll(通勤できないE,i一は仮躍隣し,7:00 掃宅)

       3の番23:15〜8:00

・仕事内容

 ④ 電予銃のハンダつけ(女f )

 ②ブラウン管の表嘔を磨く(3交代)

(5)

 そして現場実習を実施することになった。 (表5)

 年度当初の現場実習計画には4回目の実習 はなかったが,H:男の将来のことも含めた大 切な実習であることを高等部会,ならびに教 官会議で確認し,学校長の承認をいただいて

      1。ねらい 表5のような計画で実施することになった。

瑚と母親には・J肥州と同様にまた千1哩/fl

葉市内の親戚宅に泊まりこんで実習に協力し  4.場 所 でもらうことになった。

 わずか5日間の実習ではあったが,本人の  5.服 装 意欲がよくわかり,ほとんどミスをしないで

      6.勤務時間 仕事ができたことを高く評価された。初めて  7.昼 食       8.作業内容 の仕事であったので,流れ作業からはずれて       9.通勤方法 H男のペースで仕事をこなせたことが何より

      10.その他 であった。また,日に日に作業能率が上がる

ことも確認された。

 そして4月初めにH製作所S分工場より高 卒用求人票(H男用)の写しが水戸公共職業 安定所と本校に郵送されてきた。

表5 第4回現場実習計画

第4回現場実習実施計画

      茨城大学教育学部附属養護学校 実翌を通して,職場への適磨を図り,4月入社後の 職業生活にスムーズに入れるようにする。

2∫16f−1(A)〜IO目(金)

H男(高等部3年)

(株)H製作所M工場S分L場  (窓目)主任  K氏

 下葉県S市,Tel (      〉 作業ズボン

(貸与)帽f一,L着,作業靴

8fl寺〜16一等45夕}

弁当持参

テレビブラウン管の製造

白宅一一一T駅一一→S駅一一£場   バス   総武線   バス

・6日は11時ごろ癒接をし,午後は見学をしたり,実習に あたっての話し合いをする。

。巡國指導は中間では行わずに6Elと玉0日に巡詞をし,挨 拶をしてくる。

・N公共職業安定駈管内である。

5.まとめと今後の課題

 現場実習は単なる進路決定のための実習ではなく,次にあげるような意味があるのではないだろうか。

  ① 生徒が変わる一現場実習壮行会を境にして生徒達がはっきりと変わる。それは,生きた社会    で,従業員の方と一緒に働いたことが生徒達を変える大きなバネになったと考えられる。

  ② 生徒をとりまく周囲(親・教師・企業・職安等を含む行政)が変わる一両親や教師が生徒の    変容を発見し,見方を変え,ひいては就労観までも変えさせられている。と同時に,企業や行政    がこの現場実習を通して生徒達への認識を新たにし,姿勢を変えていくことがわかる。

 また,現場実習年間計画や進路指導年間計画に基づいて現場実習を行うわけであるが,進路指導の一 環として取り組むというより全校をあげて取り組むことに意義があるのではないだろうか。そのために は事前指導(通勤・退勤の指導,壮行会)や事後指導(報告会,礼状,反省)の在り方を再検討しなけ ればならない。そして,進路だよりによる保護者への啓発や進路カード,個人面談を通しての保護者と の連携を図らなければならないだろう6これは小学部の1年生から取り組むべきことである。

 と同時に,学校単独ではおのずと限界があり,行き詰まってしまうので,県内特殊学校進路指導連絡 協議会への出席や福祉事務所,心身障害者職業センター等との情報交換をもっと密に行う必要があるだ ろう。また,・本校の場合,隣同志かあるいは近くにある県立勝田養護学校,県立水戸飯富養護学校,県 立水戸養護学校の進路担当者で協議をし,お互いに助け合って進路指導を進めていくことがより望まし いであろう。そして,卒業後の落ち着き先を決めるだけでなく,それからの人生をいかに生きていくか,

ひとり立ちをめざさせる教育,これが高等部の使命であることを忘れないで日々実践していきたい。

参照

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(1)  研究課題に関して、 資料を収集し、 実験、 測定、 調査、 実践を行い、 分析する能力を身につけて いる.