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騒音の身体発育に及ぼす影響 亜

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(1)

 、」

Q1

騒音の身体発育に及ぼす影響 亜

特に繁殖との関係について

猪  狩     涼

目   次 1 問  題 五 資  料

皿 観察内容

IV藍騒音と繁殖との関係

lv−1 繁殖の開始

IV−2 出 産 数 工y−3 産児の体格 W−4 受胎週期 IV−5 異常出産 IV−5−a)死産 W−5−b)変 種 V 結  論

1 問  題      /

ここに掲げた主題の方向については,ここ数年来,動物を対象として実験的に研究を継 続してきたのであるが,それら一連の実験のなかから得た資料によって,特に繁殖に関係 するいくつかの興味ある結果を抽象できる見透しをもったので,これを騒音問題の一環と

して整頓し吟味しておきたいと考えたことが副題の意味内容である。

たしかに都市は生活環境として成熟促進作用をもち,人口増加については繁殖抑制作用 をもっている。この2つの作用から生ずる現象に対する従来の説明では,光波刺戟を原因 としてきたようであるが,むしろ音波刺戟も考慮されるべきであることは以前から主張し てきたところであって,この仕事からそれらの説明の根拠となる諸点を提示するこどにな るのではないかとも考えてみたわけで,騒音問題の一領域としてかなり重要なものとなる であろう。

またもし仮りに生物が自然にふえることを繁殖とし,人為的にふやすことを増殖とする

ならば,繁殖について実験的に観察した結果は,そのまま増殖についても考えられる応用

(2)

22      茨城大学教育学部紀要 第八号

価値があることになるから産業技術として騒音を利用する範囲も問題となるのではなかろ

うか。

したがって騒音問題は単に消極的にil加Lすることより転じて積極的に駆使する方面がひ らかれてくることになりかねないことも課題の発展的方向である。

豆 資  料

本稿にもちいられる資料は,つぎのような実験的手続によって得られたものである。

現に発育過程にあるしろねずみに,特定期間だけ騒音刺戟を与え, しかも対象の発育が 完成する以前に刺戟を取払ってみて, その後発育の完成するまでの経過について計量的に

第1表    騒  音  実  験  一一  覧

険1実験 第2実劇第3実験

実験の目的

騒音の身体特に身長・体 d発育に及ぼす影響をみ

第1実験を追証するため フ比較実験

第1・2実験と断続型刺

≠ニの影響の度合を比較 キる

実験期剛 1955・1・−195乱2 il956.5−1956・7い956・7−1956・1・ 1

種  類 Alb㎞・  l Alb㎞・  i Albi−・ i

対象

 1員

実験群 2匹i   3 1   5 { 1

統制群 2 1   3 1   5 1

種  類 B_,  _   IB−・  i

刺戟 大きさ 1・・P㎞  {7・Ph  l1・・Ph

型 連 続 型 連 続 型1断 続 型

繁醐察期剛日令第171日まで 1日令第19・日まで 1日令第2・7日まで 備 考陣象・胤はどの実験でも実騨と統指り群とは同腹である

観察して瀦の賑ならびに体醗剤・与える影観知ろうとしてまず剃の実験を行

ったo

っぎに,第1実験の結果を追証するために条件分析的な第2第3の実験を追加した。

このようなそれぞれの実験では身体的計測と併行して繁殖についてもまた観察されてい たのであって,それらの記録がそのまま本稿の資料となったわけである。

第_表は上に記述した3箇の実験の要領を簡単に表示したものであるが・

a)どの実験でも実験群と統制群とは同腹の対象である。

b)どの場合でも離乳は満4週,すなわち日令28日で・普通より約1週間だけおくらせ

た。

c)日令28日で親ねずみから分離した飼育が開始される。

(3)

猪 狩:騒音の身体発育に及ぼす影響盈       23

d)日令43で実験群に毎夜間10時間一20時〜6時一の刺戟が与えられる。この場合実験 群は統制群より,いくらか優勢な一群をあてるようにした。

e)日令100で刺戟を取払って解放する。

f)日令120までは成長を計量する。

9)日令121以後はもっぱら繁殖についてだけ観察し記録する。

などの要領で統制されながら進められている。

しろねずみの繁殖の仕方は日令60ぐらいで受胎し,20日間在胎するから日令80日余り見 当で第1産がみられ,その後自然状態での繁殖は40日位を週期として分娩がくり返される ようであるが,大体春の彼岸から秋の彼岸頃までの繁殖が旺盛で冬期はとくに繁殖しにく いものである。

またしろねずみの寿命は約1000日で,日令120〜130で発育は完成するが,その間繁殖可 能なのは日令60〜400ぐらいなようである。

皿 観察内 容

繁殖一般の問題領域とはどのようなことを内容とするものであろうか,ということにつ いての専門的なことは承知していない。

けれども,少くともある条件を設定して,その条件が与える影響をみようとする繁殖に

ついては,繁殖の良否ということが出産に現われる量的な方面と質的方面と,なおこれに       岬

付随するいくつかの間題から検討されなければならないであろうし,しかもまたそれは実 験対象の当代に限って問題とされるのか,あるいは次々の世代にまでわたって考えなけれ ばならないのか,などのことが思い当る問題領域である。

とにあれ今回の観察事項はっぎのような5項目がそのすべてである。すなわち・

a)繁殖の開始

実験群と統制群とでどちらが早く受胎または出産するか。すなわち両群の間に繁殖の 開始に遅速の差があるかないか,あるとすればどのぐらいあるものかということ。

b)出 産 数

両群のあいだの出産数に多寡の差が生じないか。

c)産児の体格

生れ出る子ねずみの体格に両群のあいだで優劣の相異が出はしないか。      \

d)受胎週期

両群の間に受胎週期の大小の差が認められないものであろうか。

e)異常分娩

(4)

      、 Q4      茨城大学教育学部紀要第八号

出産時または産児について認められる異常が両群のあいだで著しい相異はないだろう

か。

などのことについて克明に観察して繁殖の問題を考えようとしたのである。

W 騒音と繁殖との関係

本節以下に取扱う資料は,すべて実験群と統制群との比較において理解されるので,か さねて実験群と統制群との説明を試みることにしよう。

3箇の実験は刺戟の大きさと型では違っているが,それぞれの実験に用いた対象はどの 場合でも実験群と統制群とは同腹である。つまりきょうだいねずみが数的にも質的にも折 半されて,両方は同じ条件で飼育され管理されているが,た窄恒に,特定期間だけ騒音刺 戟をうけながら生活したものが実験群であるというわけである。

IV−1 繁殖の開始

繁殖開始の遅速は生殖器官の発育の遅速によるとしなければならない。そして一応繁殖 の開始が早ければ早いだけ繁殖がよいとしなければならない。それで第2表では生れてか

第2表    実験群と統制群との初産日令比較 ら何日めで初産がみられ

実験の種類 群別陣体睡日到計1平均 たかを3つの実験の実験 実験群 1号 i   91   1194    97.0

群と統制群とで比較し表 toOPh連続型 2号 103 i

(第1実験)

統制群 1 108 205 102.5

2 97 おのおのの実験の両群

1 81 にはそれぞれ同数の♀の

実験群 2 88 248 82.7

70Ph連続型 3 79 おやねずみがいるが,各

1 89 実験の間ではおやねずみ

(第2実験)

p 統制群 2 98 274 91.3 の数が同じでないので,

31 87

1     83 それぞれの実験について

2 99  1 初産日令を平均値として

1実験群 3 981 462 92.4

みたわけである。

1

4 i 93

100Ph断続型

51 89 そうすると,第1実験

(第3実験) 1 100 では統制群の102.5日に

2 105

対して実験群の97・0で初

統制群 3 84 475 95.0

4 86 産をみたことになり,10

1 i5  100 2.5−97.0=5.5だけ実験

(5)

猪 狩:騒音の身体発育に及ぼす影響血       25

群の初産が早かったのである。

そのようにして以下の第2実験では91.3−82.7=8.6だけやはり実験群が早く,同様に して第3実験においても,依然として実験群が2.6日だけ早められていることが知られた わけである。従ってこ㌧では,騒音はしろねずみの繁殖の時期を早めるということになっ てよいわけである。そしてそのことを別に云いあらわせば,騒音はしろねずみの性成熟を 促進するということを断定させるのである。

騒音はしろねずみの伸長発育や肥大発育には抑制的に効果するものであることは,すで に報告したところであるが,こと性成熟についてはその影響効果は抑制的であるのではな

くかえって促進的に作用しているものであることが知られたことになる。

つぎには,この成熟促進はどの程度のものであるかということについて詮索し,およそ の基準を求めてみねばならなくなる。

5.5日+8.6日+2.6日      =5.6日    3

この算式は第2表の3つの実験の初産平均日令をさらに平均したもので,これによって約 6日性威熟が早められていることが知られるわけである。

いまかりにねずみの寿命を1000日とするとして,人生60年に比例させた6日は実に131.

4日すなわち4・38月に相当することになる。これは初産日令からみた性成熟促進現象なの であるが,別にこれを性的動作の現れかたの遅速から云っても相付合することが観察され ている。例えば第1実験の場合の性動作発現は実験群で56日,統制群で72日と記録されて

いる。

都市環境の初潮は農山村より約6ケ月早いことになっているが,その原因は騒音刺戟に よるとする見方はできないものであろうか。同時にまたこの成熟促進現象は産業技術とし て応用される範囲をもたないものであろうか。

IV−2 出 産数

しろねずみの毎回の出産数は6〜8匹というところが通常であろう。特別に蛋白質飼料 を多く給与しないと10匹以上はなかなか産まない。いま》でのところ最も多く生れたのに 18匹という濫があるけれども,手もとの記録では17匹が最高記録である。

いずれにしても繁殖の優劣は出産数からも論ぜられてよいわけであるから,3つの実験 について,実験群と統制群との出産数を比較することによって音と繁殖との関係を考察し てみよう。

この3つの実験における繁殖についての観察期間は,まちまちであって,第1実験では

171日まで,第2実験では190日まで,第3実験では207日まで官あるし,各実験での観察

(6)

26       茨城大学教育学部紀要 笙八号

期間中における出産回数もまたまちまちであるところから,こ・でもまた実験群と統制群 とを平均値によって比較してみること〜する。ねずみの繁殖は冬期では鈍くなる。たとえ 繁殖力の旺盛な若ねずみであっても,出産回数も毎回の出産数もともに少くなるものであ

第3表    実験群と統制群との出産数比較

実験の種類

群 別

  「  出  産  数個体1       計

@ 第1齢2産1第3麟4産;第5産1 平 均

合計1平均

 1 P   4 3 _ 1_ 一 ・ 7 3.50  il5  5.00

100Ph連続型 実験群 2 1 8

一一 一   8 8.00

(第1実験) 1{12  1 P1  一 23 11.50 32 8.00

P 統制群 2}7 2  一 9 4.50

1 3 7 4 6 2 22 4.40

実験群 2 10 12 12 14 48 12.40 108  i 8.31

70Ph連統型 3 8 11 7 12

一 38ig.50

(第2実験) 1 1 9 13 12 一「35ia75 i

統制群 2 5 12 11

_   28 9.33 94  9.40

3 3 14 14

一   31 10.33

1

1 1 17 15 10 11 54 10.80

 一

黶@一 一}

2 4 14 5 5 7 35 7.00

1

実験群 3 11 7 8 12 13  一 一 51 10.20

226  9.83  1

4 11 12 10

_一 33 11.00 1

5 8 i5 10 1218 53 10.60

(第3実験) 1 1311・ 13 12 15 63 12.60

2 13 10 14 8 10 55 11.00

統制群 3 12 7 14  一

一 一 33 1 11.00 258 12.29

4 12 14 15

一 一 41  13.70 1

5 13 14 14 13

  166  13.20 1

るから特に野生している自然繁殖の場合などでは繁殖は全く停止していることであろう。

また繁殖ということを一層厳格に取扱うとなると,当代限りでなく次の世代まで観察する ことが必要になるであろうが,こ》では大体第5産までについての結果によること》する。

なおしろねずみの繁殖力は生後18月ぐらいまでが限界であるとされている。

とにかく第3表によって実験群と統制群とでどちらが多く産んでいるかをみると,第1 実験では5.00:8.00で統制群が3.00匹多い。それが第2実験の場合では8・31:9・40で1・09 だけやはり統制群が多く産んでいる。第3実験でもまた同様に9・83:12・29と2・46匹だけ 依然として統制群に多い。

このことをもってみると,音刺戟で生活する実験群は恒に統制群よりも出産数が少いの

であるから, 騒音刺戟は繁殖を抑制すると判断することができるのではなかろうか。

(7)

猪 狩:騒音の身体発育に及ぼす影響皿       27

これら3つの実験のうち,第2実験の場合だけが比較差が小さく1.09であるがこれは刺 戟が70phという低弱なものであることによるもののようであって,上述の判断のために

もまた都合のよいことをあらわしている。

ついでにこれら3つの実験で,どの刺戟がしろねずみの身長や体重の発育により抑制的 に影響したかをみると,第1実験の100ph連続型が最も大きく, 第3実験の100ph断続型 がこれに次ぎ,第2実験の70ph連続型が最も影響が少なかったのであるが,この影響度 合の大小の順位は出産数の場合にもそのま㌧あてはまるようになっている。

さて,このような事実は,いったいどう解釈しなければならないのだろうか。おそらく は,音の刺戟が脳下垂体に作用することによって各般の内分泌が,過乗または減退などの 変調をきたすために起る現象なのであろう。

IV−3 産児の体格

繁殖の良否は出産の量とならんで体格などの質的方面からもまた検討する必要がある。

第4表は第3実験における実験群と統制群との毎回の出生時に計測した身長と体重の記録 を表示したものであって,第1産から第5産までの延数を個体数で除したところの平均値 である。この両群の平均値を比較することによって,生れ出る仔ねずみの身長や体重など

第 4 表    実験群と統制群との産児の体格比較 旨1  出  産  回  数

備    考

馴麟2麟瑠第4産隔産 計  平 均

@ 1 罐繊最大鰍小値 実緋身長馴一2凱5i17到21141・・114叉779氏2肪2酬

226

4,812.7 体重緻「166・613・8・21255・71225・22・τ・21162.915.15・

6.3 3.4

統制群陸劇2−15124到31−36118刎3・4翫m

258

3・8[2・6

i 11糎繍13・1・41263.4332・817・.2116乳91238.・14.8・・ 6・1291

の体格に騒音の影響があったかどうかをうか戯・知ろうとするわけである。

まず第4表にしたがって身長を比較してみよう。そうすると実験群の3。52cmに対して 統制群が3・48であることからその差0.04crnだけ実験群が大きく生れていることになる。

次にそれを体重でみると5・159:4.809であるからこ・でもやはり0.359だけ実験群が大 きく生れているのである。つまり騒音は胎児の発育になんらの支障をも与えなかったとい うことになるかのようで,そのことはむしろ予期に反した結果である。

同時に身長なり体重なりについて,両群の間の最大値一最も大きく生れた測定値一をみ ても,あるいは最小値一最も小さく生れた測定値一をみてもまた,ともに実験群の方が大

きいことからしても依然として騒音の影響は認められないことになる。

(8)

28      茨城大学教育学部紀要 第八号

しかしながらこれは外見上そうなっているのにすぎないもののようであるとしたいので

ある。

というのは実はこのことはW−2節に掲げた出産数と関係しているとしなければならな くなる。すなわち両群の出産数が統制群よりも実験群が少いという結果に着目すると,実 験群は受胎数が少いため,出生までの胎内環境に比較的ゆとりをもち,胎内での空間関係 からいっても,栄養関係からいっても,在胎発育の条件が統制群よりもめぐまれていたは ずであり,それらのことが騒音刺戟による障害となる条件よりも凌駕しておったものと考 えることができるわけである。

た穿注意を要することは,両群の間の同数出産の場合を比較すると実験群が優位を占め るケースが多いということであるが,この場合は母体そのもののもつ固有な条件もからん できているわけである。

】V−4  受  月台  週  期

しろねずみの受胎の繰返しについては,大体次のようなことがいわれる。

a)わかいねずみは速い

日令400日ぐらいで受胎能力はなくなるのであるが200日ぐらいまでの受胎の繰返しは 速く,それ以後は次第に遅くなる。

b)季節によって遅速がある。

春暖から秋冷の季節では速められるが,寒さがきびしくなると遅くなる。

c)飼糧によって遅速がある。

蛋白質など濃厚な飼糧を給与すると比較的に受胎が速められる。

d)6♀を常時同居させると遅くなる。

これは単に遅くなるばかりでなく遂には不舛現象をひきおこす。

といったような自然的あるいは人為的条件によって受胎は影響をうける。

ひるがえってしろねずみの受胎は騒音によってその週期に影響をうけないものであろう

か。

第5表の資料は第1表に掲げた3つの実験からとったものであって,♀3が雑居させて 飼育され,分娩の直後に産児を取払ってしまうやり方で繁殖を観察した結果である。従っ

て自然繁殖の場合よりは受胎週期がずっと短縮されていることになろう。表によってみる と,第1実験は第2実験や第3実験より,はるかに受胎間隔が長引いている。これは第2,

第3実験が繁殖しやすい春から秋にかけての実験であるのに対し・第1実験が繁殖しにく

い冬季に行われているためである。

(9)

猪 狩:騒音の身体発育に及ぼす影響 皿      29

第 5 表    実験群と統制群との分娩週期比較

1 分  娩  間  隔

1 群 別 個体 計

1実験の醐 1−2i2−3「3−414−5 平 均 合 計 平  均 1

実験群 1号 80  一 _180 80.0 80 80.O日

100Ph連続型 2号

一一 _1_ 一

(第1実験)

統制群 1 60

一 一 一 6・i6・.・

107 53.5

2 47

一 一 一 4714乙0

1 23 23 23 23 92123.0

実験群 2 27 26 30

一 83i27.7 235 2く.1

}70Ph連続型

一 巨 34 26

一 一 60130.0

(第2実験) [1 31 30127

一 88129.3

1 統制群 2 30 60 1 一

{ 90 1 45.0 236 33.7

i 3 31 27

一 一 58 29.0

1

1 22 22 27 27 98124.5

1 2 22 23 28 30   1103  25.8

実験群 3 22 23 31 29 105126.3 479 26.6 1 1100Ph断続型 4 38 31

一 一 69  34.5

1

1 5  亀} Q7 27 27 23 104126.O 1(撒験) 1 26 22

27 22 gr 24.3

i 2 27 27 23 24 101 25.3

1 統制群 3 29 26 1 一 一 55 27.5 416 26.0

i

4 26   1 R0  一 561 28.0

1 5 26 26 123 3211。72丘8

とにかく受胎週期には2・3の型があるようにうか軍われる。例えば第2実験の実験群 の第1号のように,きちんと23日で受胎をくり返す第1の型,第3実験における実験群の 第3号のように22,23,31,29といったふうな不規則型,第2実験における統制群の第2

号のような問隔の大きい型などが目につくわけである。そしてこの第3型のようなのは受 胎力が早めに消失する傾向でもあるようである。そしてこのような傾向は特に実験群に多 いというものではなく,かえって統制群に個体事例が多発するようである。

しかしながらこれらの傾向の確かな認定は♀6分離飼育によって確認されなければなら ないことなのであろう。

さて,問題の本質的方向にたち返って,これらの受胎週期に対する騒音刺戟の影響の有 無を検討してみると,第1実験の受胎週期の平均日数は実験群の80.0日に対する統制群の 53・5となっており,それが第3実験でも26・6に対する26.0であっていずれも実験群の週期 が大さい。つまり受胎の繰返しは抑制される傾向を示している。

これに反して第2実験の場合だけは,かえって統制群の受胎が遅れることを示している。

o

(10)

30       茨城大学教育学部紀要 第八号

その平均日数は26.1対33.7で実験群が7・6日早いことになる。

一体これら2つの事実はどう解釈されたらよいのだろうか。われわれの日常会話音の大 きさは60phonであることからすると第2実験の70phonは第1,第2実験に比較すると ずっと低弱な刺戟であるから影響として現われてこないことによるものであろう。

そしてこのことを一歩立入って考察するならば,動物の繁殖や生存のためには,ある程        、

xの音刺戟が必要であることを予想させるのである。そもそも,この3つの実験はさきに も述べたように発育過程にあるしろねずみの伸長および肥大発育に及ぼす影響を検証する ために行われたのであるが,例えば体重発育についてみるとこの第2実験だけが抑制効果 指数にマイナスになって現われたことであったことからも,音の,あるいはやかましさの 極めて稀薄な場合は,かえって生存条件をおびやかすことになることを予想させるのであ

って今後この方面にも実験を重ねていきたいと思っている。

W−5 異 常 出 産

繁殖に関連する問題として考えてみなければならないものの1つのことは異常出産であ る異常出産といったのは分娩時に認められるか,あるいは分娩を原因として引き起される ものと認められる異常状態をいったもので,これには母体側に現われるものと,産児側に 現われるものとの2つがあるわけで,母体側では死亡,産児側では死産・晴形・変種など があげられる。しかしどの実験でも母体側に事故または異常はなかったので,こ》ではも

っばら産児に現われた異常事例を取扱うことになる。

IV−5−a)死  産

死産とは,すでに死亡して分娩されるもので,死亡して生れるために,体色が紫色に変 っているので一見してそれとわかる。

死産の異常は第1,第3実験には認められたが第2実験には認められなかった。これは 前項……IV−4……とも関係することであって,第2実験だけがこ〜でも異った結果を示

すことはやはり70phonという刺戟が母体または胎児に対する影響力をもつ強さになって いないことを意味するものであろう。

第1実験では観察した出産回数も少いのであるが,実験群の第1産に1例死産があった 第3実験でもやはり実験群に,第1産で2例,第2産に2例,第3産に1例,計5例あら われている。そして統制群には全く現われていない。

そうすると,騒音刺戟は母体ないしは胎児に影響を与えて死産という出産異常を起させ

たとみてよいことになると思われる。また認められた死産は必ず一腹のまっさきに生れ出

る第1匹に現われていたことは奇異な現象であって.そのことによって死産の現因がつき

(11)

猪狩:騒音の身体発育に及ぼす影響皿       31

とめられることになりはしないかとも考えてみたことである。た9死産が第3産までに現 われて,第4産以後には現われてこないということにも特別に注意する必要がある。

どの実験でも実験群に与えられた刺戟は日令第100日で取去られている。従って在胎20 日を見込んでも日令120日以後の分娩は実質的には刺戟とは関係がなくなっているわけで あって,第4産からはちょうどこの120日以後に相当するために刺戟とは全く関係がなか ったわけである。

このような吟味は,騒音刺戟がしろねずみの出産に影響して死産の原因となるとする断 定をいっそう強固にすることになると思われる。

W−5−b)変  種

特定の種族の固有な様態に現われる変化を変種とすると,広義には生体の機能上の変化 まで含まれるように思われるが,狭義には主として体形の変化,すなわち崎形を意味する もののように解される。

さてこ㌧で問題とするのは第2実験の実験群の繁殖に現われた毛皮の黒変した事実を取 扱うのであるが,体形の変化でなく単なる毛皮の変化を変種としてよいかどうかというこ

とにはいさ〜か気がかりが残るところである。

実験対象であるAlbinoratはどぶねずみの変種とされていて純白紅眼である。また Albinoとは動植物の「白変」を意味することばであって,その毛皮の純白と紅眼は遺伝 的に固定した種族である。それが第2実験の実験群第3号の第5産に現われたものは1腹 13匹の全部が変色していた。すなわち,その内7匹は漆黒で,1匹が黒褐色,残りの5匹 が濃厚なねずみ色を呈していた。もちろん眼球も黒化していた。このような変種の発生は 音刺戟が直接原因となっているものかどうか,もちろん,にわかに断定することはできな いことなのであろう。まして第5産は刺戟から解放された後の受胎であることも考慮すれ ばなおさらである。

しかしながら,潜在性の遺伝因子が生体の環境適応のため顕在化するいわば退化現象と なったものとも一応考えてみなければならないのではなかろうか。ちなみに,漆黒なもの の一対からの次代繁殖には7匹全部が黒白斑混,黒眼のものと変っていたことである。

ねずみの種類は200種にも及ぶ多数なもので,そのうちには黒色種も褐色種も現存する ことを知ったのでその後の飼育を中絶してしまった。

V 結  論

前節までに記述した考察と吟味とをもととしてこの研究からは,しろねずみの繁殖に及

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32      茨城大学教育学部紀要第八号 ぼす騒音の影響として2つの方向の結論が抽象できるであろう。

第1の方向としては繁殖のためには都合のよい条件となる,いわば積極的に効果するも のであって,騒音刺戟によって繁殖の最も基本的な条件の一つである性成熟が促進され,

ために繁殖の開始が早められることである。

第2の方向ではこのような積極的効果とは対踪的な抑制的効果をもっていることであっ て,それがために繁殖のさまたげとなる幾つかの具象を結果させていることである。

出産数を減少させること,受胎週期が遅延することなどがその具象であって,これはお そらくは刺戟が脳下垂体に作用するために性殖関係の腺分泌の変調をきたすために起るも のなのであろう。

さらにもひとつの抑制的影響は分娩に際して出産異常を伴い死産を多発する傾向を示す ことである。そしてこのことは直接胎児に作用した結果であるか,はたまた母体に及ぼし た影響の結果なのかは皆目見当がついていない。

また騒音刺戟が強固な固定種族に退化現象を引きおこさせて体色の変化をもたらしたも のかどうかについても,にわかに結論できないものである。

いずれにしても上のような幾つかの結論は一面では飼育産業のために利用できる技術的

原理的なものを暗示するものがあり,他面では都市研究の問題としてのAcceleration一

成熟促進現象一を理解するためにも重要な役割を負うものであるように考えられる。

参照

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