修 士 論 文
教 育学 部生が実地研 究 に お い て 学生 開発 型授 業を実践す る こと の 効果
‑ ポ ー トフ ォ リ オ分析を中心 とした学生 の変化に 注 目 し て ‑
三重 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 学 校 教 育 専 攻 学 校 教育専 修
2 0 5 M O O 2 伊 藤由 恵
平 成2 0 年 2 月1 3 日 提 出
別 紙 様 式第3
論 文 目 録
三重 大 学 大 学院教育学 研 究 科
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( 実技等の課 題を含む)
添 付 資 料
別紙様式 第4
論 文 要
三重大学大 学院教育学研究科
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専 修イ 夕 顔 経
い【問 題と 目的】
本 研 究の対象となった実 地 研 究の内 容は、 大学生 を 対象とし、 三重 県の ある幼稚 園 ・ 小 学校 ・ 中 学 校で 3 泊4 日の教師 見習い をし研修の中で、 受 講 生がグル ー プで 立案し た授業
を実 施 する という ものである。 体 験 的 な 実 習 ・ 学 生 開 発 型 授 業を採 用し たこ のよう な 実 習 で学生に どのよう な変化が みら れるのだろうか。
1 . 実 地 研 究 中の時 期に よ る学 生の変 化 をポ ー トフ ォリ オを 用いて検 討 する。 そ の際に は、
学生のコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン行為‑ の志 向性と達成感という 側 面に焦 点 を 当て て検討 する。 2 . 実 地 研 究の特徴を踏ま えて本 実 践に おける学 生の教 育効 果 を検討し、 今後の実 地 研 究
の在り方 を 提 言 すること である。
【方 法】
実地研 究 を 受 講 し た大 学 生が活 動 中 (ガ イダンス期 ・ 授 業案完 成 期 ・ 実 践 期) に記 入し た ポ ー トフ ォ リ オの数 値 項目 と、 自 由 記 述 項目 よ り、 学生の変 化を量 的に質 的に分 析 し た。
【結果 と考 察】
ガイダン ス期 や 授 業案完 成 期よ りも 実 践 期に おいて、 学 生の 「 コミ ュ ニケ ー シ ョ ン行 為
の中での動 機づ け」 が高い こと が 示さ れ、 学 生 同士 の関わ り合い以上 に学 生と 子 どもの関 わり合いが、 人との 関 わり合いや 活 動 ‑ の動 機づけ を高め てい たこと が考え られた。 さ ら に実 践 期に動 機づけが高く なっ た学生の記 述からは、 ガイダン ス 期に お いて人と関わ るこ と に消 極 的になっ ている様子や学生 同士のやり と り が少 ない こと が推 測 さ れた. ガイダン
ス期から 学 生チ ュ ー タ ー に援 助 し ても ら うことや、 グル ー プの活 動が円 滑に進む よう なエ クササ イ ズなどを導入 することも 望ま しいだろう。 ま た ガ イダンス期よ りも 授業 案完成期
実 践 期に お いて、 学 生の 「達成感」 が高い こと が 示さ れ, 授業案完成期で は約3 ケ月か けて練っ てきた授 業案が形になっ たこと、 実 践 期で は そ の授 業案を 現 地の教 師 等と最 終案
に し実 際に授 業を実 施 する という 大 き な課題が あっ た。 授 業案完 成 期と実 践 期の間に有 意 差が 見 ら れ なか っ た こと から、 学生に と って その どち らの課 題 も貴重 な体験であったこと が推 察さ れる。 また達成感が実 践期に 上昇し た学生の記 述からは、 授業 案作成過 程 や 授業 案 を 実 施 する過 程で、 失 敗 経 験 や 成 功 経 験を数多く することで活 動 ‑ の達 成 感が高ま るこ と が 示唆 さ れた。
第 一 章 問 題と目 的
1 . 体 簾 的 な 実 習の現 状
今 日、 多 くの国立の教 員 養 成 大 学 ・ 学 部に おい て、 教育実 習の カ リ キ ュ ラム が改 革 され、
さま ざまな 形 態の教育実 習が実 施 され てい る。 中でも 教育実 習の事 前 指導と して大 学1 年 次よ り教育現 場 ‑ 出 向 き 体 験 的 な 実 習を行 うと い う 取り組み がなさ れ る ようになっ て き た. 例えば、 北 海 道 教 育 大 学では、 授 業 観 察を中心 と し た実 習と、 1 年 次の夏 期 休 暇を利 用して学生の 出 身 学 校 や 教育関 連 施 設に出 向いて取 材をすること に よ って、 教育問 題 を 調
べ るなどの 自主実 習を行 っ てい る ( 杵 淵ほ か、 2 0 0 1) 。 新 潟 大 学で は、 フ レ ン ドシッ プ実 習と し て l、 2 年 次 を 対 象に、 地域の自 然 ・ 社 会 ・ 文 化に触 れ、 子 どもと ともにこれ ら を 体 験 的に学ぶことや、 入門 教育実 習と して 1 年 次 を 対 象に学 校に お ける教育活 動 ‑ の参 加
・ 観察を 行 っ ている。 ま た、 福 岡 教育大 学でも、 大 学1 年 次 を 対象と し た体験 実 習が平 成1 0 年 度か ら実 施 され ている。 こ の体 験 実 習は、 近 隣の幼 稚 園、 小学 校、 中 学 校で実 施される 行 事 ・ 課 外 活 動に参 加し、 先 生 等の補 助 を 行い、 子 どもに ふ れあ う 交 流 体 験 を目的に行わ れて い るもので ある ( 兄 井、 2 0 0 4)。 ま た、 教育学 部で のボ ラ ンテ ィア活 動と して 、 近 隣 校に放 課 後 訪 れて、 学 習 支 援 活 動を行 って い る学 校もある。 例 えば 島根 大 学 教 育 学 部では、 子 どもと ふれ あ う 生 きた体 験 学 修 を 重 視 し て県 内 外の教育関 連 機 関の協 力のもと学 校 教育 外での教育 ・ 指 導 体 験を中心 とする 「学 校 教 育 体 験」 の総 計 l,0 0 0 時 間の体 験 学 修プ ロ グ ラム が 必修 化 さ れて い る。 こ のように体 験 的 な 実 習は大ま か に分 類 する と、 授 業 観 察 や 現 場の教 師 ‑ のイ ンタビュ ー など間 接 的に学 校 現 場に関 わるもの、 学 校 行 事 ・ 課 外 活 動 ‑ の 参 加、 学 習 支援など 一 部の活 動に関わ るもの、 教育実 習 同 様に現 場に 入 っ て、 学 生 自ら が 活 動 案を作 成し実 践 するもの と に分け ること ができる。 さ ら に教 員 養 成 課 程に お け る体 験 的 実習の教 育効 果と し て は、 教 職につ いて の具 体 的 なイ メ ー ジを 持つ こと が でき、 実 習 後
の教育実 践 ‑ の 関心 ・ 意 欲が高ま ること が, 参 加 し た学 生に対 する ア ンケ ー ト調 査に よ り 明ら か にな っている ( 兄 井、 2 0 0 1) ように、 こ の よう な 体 験 的 な 実 習は学 生に対し て教育 効 果が大 きい こと が考 え ら れる。
三重 大 学 教育学 部に おい ても、 こ の よう な 実 習 形 式の授 業が カ リ キュ ラム に組み 込 ま れ てい る。 2 0 0 6 年 度に おける体験 的 な 実 習は 「教 育実 地 研 究 ・ 人 間 発 達 実 地 研 究」 と し て 1 2
‑ 1 ‑
の授 業が開 講 されて いる。 これらの授 業は いず れ も 学生 が教育実 習 ‑ 行 く 前に現 場 経 験を させ ることや 現 場で の実 践 力を身につ ける 目的で開 設 され た授 業である。 本 研 究はこ の 1 2 の授 業の中から 著 者が関わ っ た 1 つ の授 業 ( 以下、 実地研 究) を その対 象とする。 本 研 究
の大 き な目的は、 実 地 研 究の特 徴を踏ま えて本 実 践に お ける学 生の教育効 果 を 検 討し、 今 後の実地研 究の在り方 を提 言 すること である。
2 . 学 生 開 発 型 授 業 を 取 り入れ た 実 地研究
本 研 究の対 象となる実地研 究では参 加 する学生 が現地 で実 際に教 師と して授 業 を 実 施 し、 ま た自 分たちの行 う 授 業の授 業案も 学生自 らが作る という、 学 生 開 発 型 授 業 を採 用 し て いる。 つ ま り、 教育実 習の前に 小学 校 や 中 学 校に授 業 担 当 者と し て授 業 を 実 施 するの で
ある. こ の実地研 究に は P B L という 概 念が取り入 れ ら れ ている。 P B L (Pr oble m B a s ed
Le a ning) と は、 学 生 自ら が能 動 的に学 習 する仕 組み をもつ 教 育 法であ る。 身 近に感じ ら れ る具 体 的 な 事 象か ら問 題 ( 課 題) を発 見 し、 そ の問 題を解決 する た め に学生 が自ら学 習 (s elf‑dir e cted le a mi ng) し、 問 題を解決 する(三重 大 学 高 等 教育創 造 開 発セ ン タ ー). とある。
ま た p B L は、 学 生の主 体 性と具 体 的 現 実 的 課 題に重 点 をお い てお り、 学生の よ り高 次 な 学び が期 待できる、 と し ている。 こ の P B L の利 点と し て は、 ①能 動 的 な 学 習 法であり、
成人教育に適して い る。 ② 身 近 な 問題 なの で、 学生 は興 味を持ちや す い。 ③ 得ら れ る知 識 は、 問題解決レ ベ ル の深い知 識である。 ④学 習 し た知 識は永 く 留ま る。 ⑤小 グル ー プ学 習 なので、 1) コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン能 力が高ま り、 2) 人 間 性 を 磨 く こと ができ、 3)チ ー ム で達 成 する練 習になる。 こと があ げ ら れて い る。 こ の よう な p B L ‑ 至 る授 業 形 態を、 三重 大 学で は1 0 の形 態に分 類してい る (F igu r e I) が、 今回 の実地研 究は、 チ ュ ー ト リア ル制 度 を採 用 して い ることや、 実 際に現地 で実 践 を行 うとい う 特 徴か ら、 チ ュ ー ト リ アル型p B L と実 践 体 験 型 p B L の要 素を含んでい る と言え る だ ろう。
以上の要 素 を含ん だ実 地 研 究は、 教育実 習の事 前 実 習と して の 体 験 的 な 学 習とい うよ り、
教育実 習に よ り近い形 態の実 習だ と言 える かもし れない。 これ まで の研 究では、 教育実 習 を経験 すること は学生に とっ て、 実 習そのものが よい学 習になった、 自 分が 一 回り成 長 し た とい っ た経 験を してよ か っ た というポ ジ ティブな 実 感 や、 実 習不安が低下する( 大野木、
宮川, 1 9 9 6) ということだ けで はなく、 学 生の認 知にも 変 化が見られること が明ら か にな
っている。 例 え ば 職 業 志 向に関 する研 究で は、 実 習に参 加 し た学 生に対 するア ン ケ ー ト調 査よ り、 「 どうし ても 教 師になり たい 」 と回 答 する学 生が実 習 後に増 加 して い ること が報
告 されて い る ( 伊 藤、 1 9 9 8) o ま た教 育 実 習の前 後で教 師 効 力 感 の 変 化を縦 断 的に検 討し た研 究では、 実 習 後に学 生の教 師 効 力 感が高ま る とい う 結 果が得 られてい る ( 春 原、 2 0 0 6
他). 他にも 学 生の 「子 ど も観」 が 実 習の時 期に よっ て変 化 する ことが 明 らか にさ れてき た ( 吉田 ・ 佐 藤、 1 9 9 1)o こ のように多 くの研 究で、 教育実 習が教 職に関わ る多様 な 側 面
で学 生の 肯 定 的 な 認 知 変 化を促 す こと が 示唆 さ れて い る。 し か し実地研 究は、 学 校 教育教 員 養 成 課 程に所 属し ている学 生だけで はな く、 教 員 養成課 程 以 外の いわ ゆる ゼロ 免 課 程の 学生 に対し ても 開 講 さ れて い ること を考 える と, 教 育 実 習 後、 学 生が勉 強で得た技 能 や 知 識 をどの ように捉 えてい るの かを 検 討し た研 究 ( 内野 ・ 青 木、 2 0 0 5) の ように、 所 属に関 係 なく どの学 生にも 見ら れ る効 果につ いて検 討 すること が望ま しい だ ろう. あるい は実 地 研 究が教 育 実 習の事 前 指 導とい う 役 割 だ けでなく、 専 門 性 を 学 問 的 基 礎に し た研 究】受業の 開 発と実 施に よっ て教育的成果 や 学 生の自己成 長に つ いて考 察 する機 会 を 得ることも 目 的 と し て い ること を考 えても、 教 職に関 わる側 面と は別の視 点で検 討 する 必要がある と考 え ら れ るo そ こで本 研 究で は、 実 地 研 究の 特 徴である学 生 開 発 型 授 業のテ ー マ 「コ ミュ ニケ
ー シ ョ ン」 を中心 に学生の変 化 を 検 討 する. ま た実地研 究を経 験して学 生 自 身が何 を 獲 得 し, 何 を 課 題と し て感じ た か を知る た め に、 達 成 感という 側 面 も 合わ せ て検 討 する。
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3 . 子 ど もの コ ミ ュ ニケ ー シ ョ ン能 力 を刺 激 す る授 業 づ く りと実 践
近 年、 子 どもの対人関 係 能 力 や 社 会 関 係 能 力の低下 に つ い て多くの指 摘がなさ れ (e,g.,
吉田、 1 9 9 7) 、 こうい った問 題 意 識か ら学 校 現 場でも 様々 なソ ー シ ャ ルス キル トレ ー ニ ン グ (e.g .,藤 枝 ・ 相川, 2 0 0 1) や グル ー プ エ ンカウン タ ー (e・g・,河村 ・ 国分, 1 9 9 9) が実 施 さ れる ようになっ た。 こ のよう な認 識のもと今回の実 地 研 究では、 P B L の P (Pr oble l Ⅵ)
の 一 つ と して、 「子 どもの コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンに関わ る授 業を実 施 する」 こと が学生 に期 待 され た。 つ ま り、 学生 は 心 理学の理論をベ ー ス に し た コミ ュ ニケ ー シ ョ ンに関わ る授 業 案を 作 成 し、 実 施 すること が求め られた。
子 どもの コ ミュ ニ ケ ー ショ ン能 力を高め る た めの プ ロ グラムを実 施 することで、 子 ども
の社 会 的ス キルに 一 定の効 果があること が 示唆 されて い る が (e.g., 江 村 ・ 岡 安、 2 0 0 3、 康 岡ら、 2 0 0 5) 、 い ずれの プロ グラムも 数ヶ月 か ら半 年とい う 長い期 間で数 回に わけて プロ グラム を くり 返 し実 施 するものであっ た。 実 地 研 究で は、 3 泊4 日の中2 時 間 (4 5 分× 2) という 短 期 間で授 業 案を実 施 する こと に加え、 授 業案も必ずしも 専 門 的 な 知 識を持 ち 合わ せ て いる学 生に よっ て作 成 さ れたもの ではないた め に、 子 どもの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 に 一 定の効 果をあ げる というこ と は難 しいと考え られる が、 他 者との関わ り方に つ い て考 え た り、 よ り よく 他 者と関わ り たいという 動 機 を 刺 激 する 可能 性は十 分にある だ ろう。
子 どもの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン能 力 を 高め る実 践が積 極 的に行わ れ その 子 どもに対 する効 果が検 討 され てい る 一 方 (贋岡ら、 2 0 0 6) 、 活 動の実 践 者に対 する変 化 や 効 果に つ い て検 討 し た研 究は多く ない。 し か し実地研 究が教育実 習の事 前 指導と して の役 割を担っ て お り、
学生 の貴 重 な 学びの場であることを 考え る と、 こ の実 践で学 生に どの よう な 効 果 や 変 化が あった のか とい うことを 明ら か にすること は重 要 な 課 題 だとい え る。
実地研 究に参 加し た学生 は、 心 理学 や 音 楽 的 知 見をもと に 子 どもの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力を刺 激 する よう な授 業案を 作 成し たo 具 体 的に は、 学 生が担 当 する学 校 や 学 年 段 階に 合わ せ た 子 どものコ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン能 力 を 想 定 し、 それ を 刺 激 すること が できる、 ある いは育 成する よう な 活 動を考 えた。 そ のよう な 活 動の中で、 子 どもの コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力に つ い て考え るだ けではな く, 自 分 自 身の コ ミュ ニケ ー ショ ンに つ い て考え る機 会 も 多 くあ った こと が推 察さ れ る。 授 業 案を作 成 する過 程では、 参 加 し た学生 が 小 グル ー プ に なり 互 いに意 見 を 出し合いなが ら よ り よい授 業案になる ように活 動 をし た。 実 際に ミ ー テ ィ ン グを行 うこ との他に、 電子掲示板 を 用い て積 極 的に意 見 交 流をすること が求め ら れ、