日本には、ざっと 2000 の法律があると いわれている。その中には、公害対策基 本法、環境基本法、水質汚濁防止法、廃 棄物処理法、自然公園法、省エネ法といっ た公害対策・環境政策に関連する法律、
いわゆる「環境法」が数多く存在している。
では、学問としての「環境法学」の状 況はというと、多くの法学部において環 境法・環境政策に関する講座が開講され、
新司法試験科目の一つに環境法があるこ とからも分かるように、法律学の分野に おいて‘ある種の’領域を形成していると の認識が一般的になっていると思われる。
だが、憲法学や民法学といった他の法 律学との境界が明確な形での‘独立独歩 の’領域を形成しているとまでは言い切れ ず、かつ、その領域内においても学問と しての体系化がまだ完全にはなされては
いない。
前者についてみれば、環境権に関する 議論は「憲法学」と、環境汚染行為の民 事差止めや損害賠償は「民法学」の不法 行為論と、また環境法の多くは行政法と しての性質を有するものであるから「行 政法学」と、それぞれ重なりを有しており、
さらに生物多様性条約やラムサール条約 といった国際間条約となると「国際法学」
の知見が不可欠なものとなる。このよう に既存の法律学との関わり合いが非常に 強く、切っても切れない関係にあるとい う点が、環境法学と他の法律学との間で の境界画定を難しいものとさせていると 思われる(だが、この境界画定の難しさは、
環境法学のいわば「個性」のようなもの であって、所与のものとして受け入れざ るを得ないだろう)1。
【書評 1】
新実 育文・松村 弓彦・大塚 直 編
『環境法大系』
(商事法務、2012 年)
伊 藤 智 基
1 日本の環境関連の個別法律の多くは、大きく分類すれば行政法に位置づけられるところ、行政法 に該当する個別法律の数は環境関連の法律以外も合わせると 1000 を超えており、かつ行政法学 においては総論と訴訟法についての考察がほとんどであって、個別法律(各論)の考察について はそれほど行われていない。ゆえに行政法に分類しうる環境関連の個別法律についての環境法学 による考察は、行政法学における各論の考察としても位置付けられるため、行政法学にとっても 有益な知見を提供するものと思われる。
後者についてみれば、法律学たるもの であれば、法全体に共通する考え方や制 度を取り出して論ずる「総論」部分と、
個別法の仕組みと運用実態を論じる「各 論」部分から構成されるのが一般的であ るところ、北村喜宣博士の指摘によれば、
これまでの日本における環境法研究は、
どちらかといえば「各論」部分に傾斜し ており、「めまぐるしく制定・改正される 実体環境法を追いかけることに、研究者 は手一杯であったという面があることは 否めない。」2と評されている。すなわち、
とりわけ「総論」部分については、未だ 構築過程のただ中にあるものといえよう3。 以上のような要素を含みつつも、全体と してみれば、これまでの日本における「環 境法学」構築に向けての足取りは着実な ものであったように思われる4。そしてそ の多年の努力の集大成ともいえるのが、本 書である(なお、本書は、環境法研究の 先駆者であり、現在も中核的な研究者と して活躍されている森嶌昭夫先生の喜寿 記念論文集として上梓されたものである)。
本書は、4 編で構成され、各編はいく つかの章に分かれており(合計 13 章)、
さらに各章ごとに関連する論文が配置さ れている(合計 44 論文)。第 1 編「総論」、
第 2 編「各論」、第 3 編「国際環境法・条約」、
第 4 編「外国環境法」と展開していくこ とにより、全体として環境法に関する諸 領域をすべてカバーしうる構成となって いる。
全体像を把握しやすくするために、編、
章、論文数を図示すると以下のようになる。
第 1 編 総論
第 1 章 序論 3 論文 第 2 章 環境法にお けるリスク管理 3 論文 第 3 章 環境法の基 本理念と原則 3 論文 第 4 章 手法論 6 論文 第 5 章 地方分権と 環境法 1 論文
第 2 編 各論
第 6 章 基本法・横
断法 2 論文
第 7 章 気候 変 動、
汚染の危険・リスク 管理関連法 4 論文 第 8 章 物質循環関
連法 1 論文
第 9 章 被害救済法 1 論文 第 10 章 原 子 力・
エネルギー関連法 2 論文 第 11 章 自然保護・
自然資源・都市環境 5 論文 第 3 編
国際環境法
・条約
第 12 章 国際 環 境 法・条約 9 論文 第 4 編
外国環境法 第 13 章 外国環境
法 4 論文
2 北村喜宣『環境法』2 頁(弘文堂、2011 年)。
3 諸外国においても、環境法学は構築過程にあり、総論と各論を備えた形での体系化は未だ達成さ れていないように思われる。なお、ハンス=ヨアヒム・コッホ編・岡田正則監訳『ドイツ環境法』
(成文堂、2012 年)からは、ドイツにおける環境法学の構造をうかがい知ることができる。
4 これまでの日本における主要な環境法テキストについては、本書 14 頁(浅野直人執筆部分)に 一覧的に列挙されている。
執筆者は、実務家数名の他は、大学・
大学院やロースクールで教鞭をとる教授・
准教授で構成されており、行政法・民法・
国際法・刑法をバックグラウンドとしな がら環境法分野でも顕著な業績を挙げて いる研究者であったり、あるいは長年に わたって環境法を主たる研究対象として きた第一人者であったりと、環境法研究 の最先端を担う面々が集っている。
以下では、各編の内容を概観していく こととしたい。
【第 1 編 総論】
第 1 章「序論」は 3 つの論文により 構成される。1.「公害法・環境法の歴史 と展望」(浅野直人)は、公害防止や自 然保護のための公害法の時代から、持 続可能性・低炭素・循環型・生物多様 性・環境リスク管理などが重視される環 境法の時代へという形で、日本における 法制度の変遷を論じる。2.「環境の定義 と価値基準」(畠山武道)は、欧米諸国 と日本における「環境」概念の展開と変 遷、1980 年代後半からの「環境」概念の 拡大について論じた上で、環境価値の具 体化に向けての方向性と課題を論考する。
3.「環境権と環境配慮義務」(礒野弥生)は、
環境基本法に環境権規定を明示すること を求める立場から、日本における環境権 の議論の展開、現時点で環境権のあるべ き内容とその反映である環境保護義務に ついて、検討している。
第 2 章「環境法におけるリスク管理」は、
3 つの論文により構成される。4.「環境リ スク・損害と法的責任」(新美育文)は、
アメリカのスーパーファンド法と EU の ELD を題材として環境責任をめぐる議論 を概観し、「法的責任」という視点からそ の意義と問題点を検討するとともに、経 済的手法の一つとして機能するかという 点からも検討を行う。5.「環境リスクと その管理―ナノ物質のリスク?」(山田洋)
は、ナノ物質に起因する環境リスクを例 にとりながら、科学的知見に乏しい環境 リスクに対する法的な対応の在り方を検 討する。6.「我が国の環境行政における リスクマネジメントおよびリスクコミュ ニケーションの取り組み」(織朱實)は、
後者の促進なくして前者は実現できない との認識の下、市民参加の視点も交えて、
PRTR データや土壌汚染に関するこれま での日本での取組みを整理・分析し、そ の促進のためのポイントについて論じて いる。
第 3 章「環境法の基本理念と原則」は、
3 つの論文により構成される。7.「『持続 可能な発展』概念の法的意義―国際河川 における衡平利用規則との関係の検討を 手掛かりに」(堀口健夫)は、国際河川 法において持続可能な発展(SD)概念が 衡平利用の定式化やその解釈運用、その 存立自体にいかに関わるのかという点か ら検討を行い、SD 概念の具体的意義に ついて実体法的側面と手続法・組織的側 面から考察を加える。8.「予防原則」(松 村弓彦)は、予防原則の基礎論、ドイツ
の予防原則論を概観した上で、日本の環 境法上の予防原則について考察を行う。
9.「環境法における費用負担―原因者負 担原則を中心に」(大塚直)は、原因者 負担原則の根拠、原因者概念の拡大、原 因者負担の強化、原因者負担原則と他の 負担方式との関係、原因者負担原則適用 に際しての問題について、日本における 法制度や学説の展開を整理した上で検討 し、課題と展望を述べる。
第 4 章「手法論」は、6 本の論文によ り構成される。10.「規制的手法とその限 界」(桑原勇進)は、環境保全という目的 の達成のための実効性、公正性、利益バ ランスといった観点から、環境問題への 対処手法としての規制的手法の優位性や 限界を考察する。11.「環境法執行の実態 とその課題―フロン回収破壊法に見る回 収破壊の実効性の確保」(笠井俊彦)は、
筆者が制定に関わったフロン回収破壊法 を例に、回収の実効性を高める仕組みや 回収破壊の費用負担といった点から考察 を行う。12.「経済的手法とその限界」(片 山直子)は、とりわけ環境税について、
その税負担の転嫁に関わる諸論点を、消 費税をめぐる判例の動向や、英国の気 候変動税立法当時の議論を検証しながら、
検討する。13.「合意形成手法とその限 界」(島村健)は、公害防止協定につい て最近の裁判例の動向とともにその日本 での展開を整理し、また環境協定につい て欧州諸国の制度との比較を行うことに より日本の制度(経団連の環境自主行動
計画)の特色と問題点を浮き彫りにする。
14.「環境刑法の役割とその限界」(佐久 間修)は、日本における環境刑法に関す る旧来の議論が保護法益論を中心になさ れてきたと指摘し、それを克服する必要 性を指摘した上で、環境法体系における 刑法の意義を考察する。15.「責任担保制 度とその限界―環境責任の履行を確保す るための保険化の課題:EU 環境責任指 令を中心として」(村上友理)は、環境 責任(環境損害に対する法的責任)を担 保する財政的保証手段として一般的に事 業者に利用されている保険について、そ の商品化の前提条件と限界について、EU 環境責任指令との比較法的検討を行いつ つ検討する。
第 5 章「地方分権と環境法」は、1 つ の論文により構成される。16.「地方分権 推進と環境法」(北村喜宣)は、2011 年 8 月制定のいわゆる第 2 次一括法による環 境法改正を整理し、地方分権推進の観点 からその意義を考察し、加えて分権時代 の環境法を考える際の諸論点を検討する。
【第 2 編 各論】
第 6 章「基本法・横断法」は、2 つの 論文により構成される。17.「環境基本法 の意義と課題」(西尾哲茂・石野耕也)は、
1993 年制定の環境基本法の立案に携わっ た立場から、同法が打ち出した理念・原 則及びその具体的に規定する政策・施策 等がその後の環境政策・施策に対して及 ぼした効果、及ぼし得なかった効果を整
理するとともに、制定後 20 年を経て明 らかになりつつある諸課題を指摘する。
18.「環境影響評価法の課題と展望」(柳 憲一郎)は、2011 年に成立した環境影響 評価の改正法について、改正論議、改正 の方向性や改正点を明らかにし、諸外国 における戦略的環境アセスメント制度と の比較検討を踏まえて今後の課題を明ら かにする。
第 7 章「気候変動、汚染の危険・リス ク管理関連法」は、4 つの論文により構 成される。
19.「気候変動防止関連法の課題と展望」
(下村英嗣)は、地球温暖化対策推進法 のほか、エネルギー需要対策・新エネル ギー促進・フロン回収などに関する関連 法制について、日本の現行法制度の概要 と評価課題、今後の展望を述べたもので ある。20.「化学物質管理関連法の課題と 展望」(大坂恵里)は、日本の化審法と化 管法について、概要を整理した後、化学 物質管理関連法の課題と展望を論じる。
21.「大気汚染防止法・水質汚濁防止法の 課題と展望」(淡路剛久)は、大防法と水 濁法について、制定から今日に至るまで の改正動向や手法の多様化を整理した上 で、予防原則の導入や放射能汚染問題へ の対応が今後の議論の対象となると指摘 する。22.「自動車排出ガスによる環境リ スク管理の課題と展望」(石野耕也・西尾 哲茂)は、日本における自動車排出ガス 問題の変化と対策の進展を、4 つの時期 に分けて整理考察する。
第 8 章「物質循環関連法」は、1 つの 論文により構成される。23.「循環型社 会形成推進基本法の理念とその具体化―
〈施策の優先順位〉をめぐる課題」(赤渕 芳宏)は、循環基本法が定める理念のひ とつである「施策の優先順位」について、
それが実施法たる各種のリサイクル関連 法律においてどのように具体化されてい るかを検討し、さらには基本法という法 形式が持つ法的意義についても考察を加 える。
第 9 章「被害救済法」は、1 つの論文 により構成される。24.「被害救済法」(渡 邉知行)は、日本における公害・生活妨 害事案における損害賠償請求と差止請求 に係る判例・学説の動向と到達点、それ らを踏まえた行政救済制度や行政訴訟の あるべき方向性について論じる。
第 10 章「原子力・エネルギー関連法」は、
2 つの論文により構成される。25.「原子 力利用と環境リスク」(高橋滋)は、環境 基本法及び関連法令と原子力安全規制法 政との関係性・位置付けを整理した上で、
原子力利用に起因するリスクを化学物質 利用の健康・生態系へのリスクと比較し、
福島第一原発事故にも言及しつつ今後の 課題を検討する。26.「エネルギーの使用 の合理化に関する法律(省エネ法)」(松 下和夫)は、同法の制定の背景と改正の 動向を整理した上で、同法の規定につい て逐条的に解説を加える。
第 11 章「自然保護・自然資源・都市 環境」は、5 つの論文により構成される。
27.「生物多様性管理関連法の課題と展望」
(交告尚史)は、1970 年代以降の日本に おける法制の変遷や生物多様性基本法の 制定、豊かな自然空間と都市それぞれに おける多様性保全のあり方と実例に加え て、自然保護区、野生動植物の保護、外 来生物対策に関する法制度や、森・川・
海に関する法制度の問題点についても言 及する。28.「自然環境保全関連法の課題 と展望」(加藤峰夫)は、日本におけるこ れまでの法制度の展開と現状を概観した 上で、「生物多様性の保全」という概念 とその影響を検討し、さらには保護地域 制度の典型であり中心である自然公園制 度を例として、その問題点・課題・発展 の方向性を考察する。29.「海浜・河川・
湿地保全法制度と課題」(荏原明則)は、
海浜・河川・湿地に関してはこれまでそ の利用や防災面に関して法制度整備がな されてきたものの、保全に関しては体系 的な法的整備が必ずしも充分ではなかっ たとの認識の下、現在の問題点を中心に その法的問題と立法的課題を順次考察す る。30.「森林保全関連法の課題と展望」(小 林紀之)は、森林・林業基本法と森林法 についてその概要と制定改正の歴史を整 理した上で、2011 年 4 月の森林法改正に ついてその主要点を分析することにより 日本の森林保全をめぐる課題と展望を明 らかにする。31.「都市環境関連法の課題 と展望―計画法論の視点から」(亘理格)
は、良好な居住環境や集約的都市構造の 実現といった「環境モティーフ」につい
て現行都市計画法における位置付けを明 らかにし、次に日本の都市法制における 政策法の体系と実効的規制法の体系との 関係を分析した上で、戦略的広域計画を 中心とした新たな法制度設計の必要性に 言及する。
【第 3 編 国際環境法・条約】
第 12 章「国際環境法・条約」は、9 つ の論文により構成される。32.「国際環境 法の遵守手続とその課題―ロンドン海洋 投棄議定書の遵守手続を手がかりに」(一 之瀬高博)は、同議定書のもとに設けら れた遵守手続を概観した後、日本にも直 接関係する地球規模の環境条約の遵守手 続との対比も含め、遵守手続の基本構造 の課題を検討する。33.「地球温暖化問題 の国際条約の展開」(高橋ゆかり)は、気 候変動枠組条約と京都議定書について制 度概要と展開を整理してその意義と課題 を明らかにした上で、現在形成途上にあ る温暖化の国際制度の展望と課題を考察 する。34.「化学物質管理に係る国際条約 等の展開と国内法」(増沢陽子)は、化 学物質問題が国際的な協調行動の対象と なる理由を整理し、それらを背景に形成 されてきた化学物質管理の国際システム の主要な構成要素についてその法的性質 に留意しながら概説した上で、いくつか の国際制度についてその日本の国内法に 対する影響について検討する。35.「近年 におけるロンドン条約の進化と変容」(加 藤久和)は、海洋投棄の規制に関するロ
ンドン条約および議定書の変遷過程につ いて、締約国会議等における主な議論の 流れから明らかにするとともに、目的の 再確認と規制対象範囲の拡大、条文の解 釈・運用の厳格化と適正化、他の地球環 境条約との整合性、国連海洋法条約との 関係という側面から検討を加えている。
36.「バーゼル条約とバーゼル法」(鶴田 順)は、有害廃棄物の越境移動に関する 同条約と、それを国内法的に実施するた めの同法について、同条約が設定した規 制対象物をふまえた同法の規制対象の設 定のあり方とその問題点を検討するとと もに、違反事例に対しての現行法の対応 の可能性と課題を明らかにした上で同法 の輸出規制の実効性を高めるための改善 策を提示する。37.「生物多様性に関する 国際条約の展開―必要とされる措置の体 系化」(磯崎博司)は、生物多様性条約 の下で、既存のさまざまな条約や制度に 規定された生物多様性の保全のための措 置が相互調整され体系化されてきたとし て、その展開を概観する。38.「海洋環境 に関する国際条約の展開」(井上秀典)は、
船舶起因汚染および海洋投棄による汚染 ならびに海上安全などに焦点を絞って、
国連海洋法条約および国際海事機関の国 際条約・議決・ガイドラインなどを中心 に、法的地位及び役割について検討する。
39.「『貿易と環境』問題の課題と展望」(高 島忠義)は、排出権取引制度に関する米 国の主要な法案に国境調整措置として盛 り込まれた温暖化関連の貿易制限措置の
WTO 適合性を検証することにより、「貿 易と環境」を巡る喫緊の課題を明晰化す るとともに、その近い将来に向けた展望 を示す。40.「海外立地と環境リスク管理
―アジアへの海外投資を中心に」(作本直 行)は、アジアでの環境法整備とその課題、
国際的な環境配慮の動向、具体的な環境 紛争の事例、国際的な取組状況の検討に より、アジア諸国を中心に海外で事業展 開を行う場合の環境リスクとその法対策 を論じている。
【第 4 編 外国環境法】
第 13 章「外国環境法」は、41.「アメリ カ環境法の動向―1990 年代後半から 2000 年代を中心に」(及川敬貴)、42.「EU 環 境法の動向」(奥真美)、43.「中国の環境 汚染侵害責任法制に関する一考察」(奥 田進一)、44.「モンゴルの環境法の動向」
(蓑輪靖博)という、4 つの論文により構 成される。
以上のとおり、本書に所収されている 論文は 44にも上り、優に1000 頁を超える、
まさに「大系」の名にふさわしい一冊で ある。研究論文的か解説書的か、日本の 法制度と議論を中心として考察するか外 国法との比較法的検討を中心に行うか、
対象を広く浅く論じるか狭く深く論じる かといった諸点で、各執筆者の筆致に差 はあるものの、とりわけ第 1 編「総論」、
第 2 編「各論」部分においては、必要な 全ての論点が網羅されているといえよう。
また、第 1 編「総論」の第 2 章において
「環境法におけるリスク管理」が設けられ ているのも、これまでの環境法テキスト に見られなかった構成となっている5。さ らに多くの論文において、付記という形 で、2011 年 3 月に発生した福島第一原発 事故が触れられている点も特徴的であり、
環境法制において放射能対策の視点が重 要となっていることをうかがわせる。
本書は、環境法研究におけるマイルス トーンとして位置付けるに十分に値する。
環境法研究者にとって必携の書であると 断言できよう。
5 環境リスクに対する法的対応については、環境法学の最も先進的な論点の一つであり、今後の研 究の進展によっては、第 3 章「環境法の基本理念と原則」の中に位置付けられるという可能性を 有しているように思われる。