博士論文
航空レーザ測量データを活用した
効率的かつ高精度な落石発生源の机上調査手法の研究
2022 年 3 月 﨑田 晃基
岡山大学大学院
環境生命科学研究科
目次
第1章 序論 ... 1
1.1 はじめに... 1
1.2 道路防災点検における土砂災害への対策と課題 ... 7
1.3 本研究の目的 ... 15
1.4 本論文の概要 ... 16
参考文献... 18
第2章 道路斜面防災に関わる既往研究の整理 ... 20
2.1 道路における土砂災害の既往の検討 ... 20
2.1.1 落石の機構と特徴について ... 20
2.1.2 道路防災点検と災害対策 ... 26
2.2 斜面災害に対する地形判読 ... 29
2.3 土砂災害を対象としたセンシングデータの利活用 ... 33
2.3.1 斜面災害対策におけるセンシング技術の活用事例 ... 33
2.3.2 センシングデータとGIS ... 52
2.3.3道路防災における人工知能技術の利活用 ... 54
2.4 本章のまとめと本研究の位置づけ ... 57
参考文献... 58
第3章 研究手法 ... 65
3.1 航空レーザ測量 ... 65
3.2 地形解析... 68
3.3.1 傾斜量図 ... 70
3.2.2 ウェーブレット解析図 ... 70
3.2.3 地形解析と図化 ... 73
3.3使用するソフトウェア ... 76
参考文献... 78
第4章 見逃しのない調査に向けたウェーブレット解析図による机上調査の検証 ... 80
4.1 実験に関わる諸元 ... 80
4.1.1現場概要 ... 80
4.1.2 航空レーザ測量の概要 ... 84
4.2 航空レーザのデータと図化に関する整理 ... 85
4.2.1データ諸元 ... 85
4.2.2 標高に対するウェーブレット解析図の影響 ... 86
4.2.3 ウェーブレット解析とDEM形状との比較 ... 89
4.2.4 傾斜量図とウェーブレット解析図の図面特性の比較 ... 91
4.3 落石発生源の抽出に関する検証 ... 93
4.3.1 机上調査と現地調査結果の比較 ... 94
4.3.2抽出性能の評価 ... 97
4.4 考察 ... 98
4.4.1 判読上のウェーブレット解析図の特徴 ... 98
4.4.2 図化条件に関する考察 ... 101
4.5 本章のまとめ ... 102
参考文献... 103
第5章 調査に即した航空レーザ測量並びにウェーブレット解析条件の整理 ... 104
5.1 実験に関わる諸元 ... 104
5.2 航空レーザのデータと図化に関する整理 ... 105
5.2.1データ諸元 ... 105
5.2.2 ウェーブレット解析図の作成 ... 107
5.3 条件の違いによる落石発生源の抽出性能への影響の検証 ... 110
5.3.1 図面表現における解析パラメータの影響 ... 111
5.3.2 図化条件に伴う抽出性能の評価 ... 114
5.4 考察 ... 115
5.4.1計測条件に関する考察... 115
5.4.2 図化条件に関する考察 ... 116
5.5 本章のまとめ ... 118
参考文献... 119
第6章 人工知能技術を用いた机上調査手法の提案と有用性の検証 ... 120
6.1 サポートベクトルマシンによる落石発生源検出システムの提案 ... 120
6.2 実験概要... 123
6.2.1 実験現場データとデータ特徴について ... 123
6.2.2 機械学習におけるデータセットの構築と解析諸元 ... 125
6.3 提案手法による落石発生源の抽出結果と考察 ... 128
6.4 検出結果の可読性向上の試み ... 133
6.5 本章のまとめ ... 141
参考文献... 142
第7章 道路防災点検における航空レーザ測量の活用とさらなる検討について ... 143
7.1 ウェーブレット解析図の活用とその他の地形量図について ... 143
7.2 航空レーザ測量の計測について ... 145
7.3自動抽出手法の活用とさらなる向上に向けて ... 146
7.4斜面防災における3次元データのさらなる利活用 ... 147
参考文献... 151
第8章 結論 ... 153
8.1 研究成果のまとめ ... 153
8.2 今後の課題 ... 158
謝辞 ... 159
1
第1章 序論
1.1 はじめに
昨今,気候変動やゲリラ豪雨などの影響により斜面災害が数多く発生している.平成30 年7月豪雨,令和元年の東日本台風,そして令和2年7月豪雨の様に毎年記録的な豪雨が 観測されており,それに伴った土砂災害も各地で発生している.令和2年では,全体で1,319 件にものぼる土砂災害の発生件数が確認されており,これは,集計開始以降における平均 発生件数(1,105件)の約1.2倍である.また,令和2年7月豪雨による土砂災害の発生件数 は961件と年間の半数以上がこの豪雨によるものであり,また,土砂災害は九州から東北 地方まで広い範囲で確認され,土砂災害の発生が確認された都道府県数はこれまでで1番 多い豪雨となった(図1-1) [1-1].さらに,この令和2年7月豪雨では,発生件数において も過去3番目となる過去最大クラスの広域災害であったことが報告されており,豪雨に伴 う土砂災害の甚大化も深刻化しつつある.図1-2には2017年11月に愛媛県西条市の県道 で発生した落石の写真を示した.高さ・幅20mの落石が発生したことで5mの県道を塞ぎ,
全面通行止めとなった[1-2].図1-3には2020年7月に和歌山県の国道480号で発生した 落石を示した.図1-3に示す落石は走行中の乗用車に衝突する事故を招いている[1-3].
このように土砂災害の発生数やその規模が問題となっている一方で,その誘因となる気 象環境に変化があらわれていることも観測結果から明らかになっている.気象庁の観測結 果によると,日降水量200mm以上を観測した年間発生日数は年々増加の傾向を示してお り,1990~2019年の30年間と統計開始時の1901~1930年の30年を比較するとその値 は約1.7倍となっていることが示されている(図1-4) [1-4].このような気候変動には地球 温暖化が影響しており,大雨の頻度や強度の増加の背景には気温の上昇に伴う大気中の水 蒸気量の増加があると考えられている.人為期限による気候変化,影響,適応及び緩和方 策に関し,科学的,技術的,社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的とし て設立された国連機構変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate
Change: IPCC)は2013年に作成した第5次報告書で,「気候システムの温暖化については
疑う余地がない」と明示した[1-5].また,この資料を元に環境省が作成した概要によると,
日本を含む北半球中緯度の陸域平均では,降水量が1901年以降増加しており,1951年以 降の増加については高い確信度によるものであることが報告されている[1-6].このように 世界的に見ても気象環境の変化に疑う余地がない状況となりつつある.このような中で,
豪雨災害の激甚化については内閣府が発行する防災白書の令和2年版にも特集が組まれて おり,「気候変動×防災」の検討について,ハード,ソフトのあらゆる手段により新たな防 災・減災の体制を整備していくことが必要であるとしている[1-7].また,このような気候 変動に伴う稀な豪雨に対する土砂災害対策の課題を整理した資料[1-8]によると,対策工の 設計や施工方法の在り方を明らかにする必要があるとともに,ソフト対策の在り方の検討 として危険地区の見直しなどがあげられている.
2 図1-1 令和2年7月豪雨による災害発生状況[1-1]
図1-2 2017年11月愛媛県西条市の県道で発生した落石・岩盤崩壊の写真[1-2]
3
図1-3 2020年7月和歌山県国道480号で発生した落石の写真[1-3]
図1-4 日降水量200mm以上を観測した年間発生日数[1-4]
土砂災害がもたらす被害はそれ自体が災害を及ぼすのみならず,土砂災害により構造物 への被害を及ぼすことが問題となる.特に土砂災害が発生する斜面は道路に面しており,
道路付帯の構造物と土砂災害は密接に関係している.道路は拠点と拠点をつなぎ人や物の 流通を行うために重要なインフラである.そのため,このような交通インフラが遮断され た場合の損害は非常に大きく,日ごろから適切な管理を実施し被害が発生しないための防 災対策を適切に実施することが求められる.このような防災対策の機運が高まるきっかけ
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となったのが,昭和 43 年に発生した飛騨川バス転落事故である.この事故では,豪雨に より発生した土石流に停車中のバスが巻き込まれ,下方の飛騨川へと転落し104名もの尊 い命が失われることになった.この事故をきっかけに道路防災管理では,道路土砂災害は 道路用地内外問わず道路管理者が防災を実施することとし,これを受けて事前通行規制
[1-9]や道路防災点検などの制度が開始された.さらに,2018 年には道路法の一部が改正
され,道路区域外に起因する災害防止措置の拡充として土地所有者に防災対策を命じた道 路管理者が,その対策費用を所有者に補償する規定を新設した.これにより,沿道区域で あっても損害予防措置が命令されたものについては落石防護ネット等の損害予防措置の実 施が必要となり,必要に応じて損失補償を行うことで防止措置命令を実施しやすい環境を 整備した[1-10].このように斜面災害に対する対応は変化しつつあるものの,土砂災害に よる交通インフラの遮断や直接被害に合う事例などが毎年報告されている現状である.
本研究では土砂災害の内落石を対象とした検討を行う.落石は,はく離した岩塊が斜面 を落下する現象であり,小規模な岩盤崩壊現象としてとらえるが出来る.これらの斜面崩 壊・落石の発生はともに予測することが非常に困難であり,対策工を選定するためには入 念な調査を実施する必要がある.落石の被害は局所的なものであり,対策が必要な対象地 形が斜面上に複数存在するケースが多々見られる.このような場合に,すべての個所を同 様に対策すると膨大なコストとなり経済性に欠ける.より経済的に対策方法を検討するた めには現地の情報を知る必要がある.そのために,図1-5に示すように現地に赴き調査を 行う.このような調査により落石の元となる落石発生源の位置や安定度,また,周囲に対 策ができるような地形であるかどうかや落石が発生した際にどれくらいのエネルギーとな りうるかなどを正確に把握する.そして,得た情報に即して最も効果的でかつ経済的な設 計を行う必要がある.
図1-5 落石の元となる岩盤(落石発生源)の現地調査例
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環境問題や土砂災害への対策の在り方が議論されている一方で,土木・建設業界全体と しては,労働人口の減少が課題の1つとして挙げられている.国土交通省の資料によると,
建設業就業者は平成9年に685万人であったが,平成29年には498万人にまで減少し,
技術者も41万人から31万人に減少しているとの報告がある[1-11].これは少子高齢化の 影響によるものが大きく,建設業就業者のうち55歳以上が全体の約 34%なのに対して,
29歳以下は約11%となっている.すなわち,少子高齢化の進行に伴い,建設業就業者や技 術者の減少は年々深刻化し,働き手の不足や次世代への技術継承が大きな課題となること が想定されている.これらのデータはあくまで建設業一般にかかわるものではあるが,防 災事業においても同様のことは課題となっており,課題の解決に向けた取り組みが必要と なる.このような課題に対して,国土交通省では,i-Construction による建設業の生産性 向上の取り組みが始まっている.i-Constructionとは建設現場でのICT(Information and Communication Technology)技術の活用により,生産性向上を図り,魅力ある建設現場を 目指す取り組みである[1-12].図1-6は,i-Construction における3次元データの活用に ついて例を挙げて示したものである.建設プロセスの測量・設計・施工・維持管理の個々 の項目でICT化をするのみならず,これらで得られた3次元データを次のステップに受け 渡し,建設生産プロセス全体を3次元データでつなぐことで生産性の向上を図ることを示 している.このような取り組みが建設現場で進められている一方で,防災事業においては ICT 技術の利活用は遅れており,経験則や技術者の技量に依存した一連の流れから脱却せ ずにいる.先にも述べた通り,技術者の減少は年々深刻化しており,次世代への技術継承 が課題となっている.このような課題の解決を図るためには,道路防災点検をはじめとす る防災事業においてもICT技術の利活用,そして防災分野でのi-Construction化を検討し,
点検から対策工施工まで一気通貫でデータの利活用ができるような画期的な仕組みづくり が必要である.これに伴う昨今の事情として,「Society5.0」というキーワードがあげられ る.Society5.0とは,狩猟時代をSoceity1.0として考えた場合に5世代目の深化・発展を 示す次世代の未来社会であり,このSociety5.0で掲げられる社会は「サイバー空間(仮想 空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社 会的課題の解決を両立する,人間中心の社会(Society)」と提唱されている[1-13].この
Society5.0では,現在のSociety4.0が抱えている知識・情報の共有や連携が不十分である
点や,あふれる情報から必要な情報を見つけ出すことに時間を費やしていることなどの課 題に対して,IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり,これらの課題や困難 を克服する社会である.この仕組みで重要となるのが,センシング技術の活用によるサイ バー空間とフィジカル空間の融合とビッグデータの人工知能による解析技術であると考え られている.今までの情報社会では,人間が情報を解析することで価値が生まれてきたが,
Society 5.0 で は , 膨 大 な ビ ッ グ デ ー タ を 人 間 の 能 力 を 超 え た 人 工 知 能(Artificial Intelligence : AI)が解析し,その結果がロボットなどを通して人間にフィードバックされる ことで,これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになる.
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このようなSociety5.0において,国土交通省ではi-Constructionを深化させ,2025年まで に生産性2割の向上を目指すとしている[1-12].さらに,2020年には国土交通省において インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が決定された.インフラ分 野のDXは「行動」,「知識・経験」,「モノ」の3つの柱で構成され,建設業界が抱える課 題を解決し,そして新たに強みを創出することを目的としている.i-constructionでは3次 元データの活用による生産性の向上が目的であったが,インフラ分野の DX ではこの
i-construcitonの取り組みが基盤となり,デジタル技術を浸透させることで社会資本や公共
サービスを変革させるとともに,業務そのものや,組織,プロセス,建設業や国土交通省 の文化・風土や働き方を変革し,インフラへの国民理解を促進するとともに,安全・安心 で豊かな生活を実現することが目的となる[1-14].また,このような仕組みをかなえてい くために,3 次元データの閲覧・共有のためのDX データセンターの構築や,都市計画・
まちづくり分野への3D都市モデルの導入を促すProject PLATEAUの開発も進められてい
る[1-15].このように社会情勢は刻一刻と変化しており,建設分野における様々な検討に
ついても社会のニーズに適したモデルの立案を行うことが求められている.これは防災分 野においても同じく言えることである.特に,斜面災害は様々な要因の組み合わせで発生 する事象であり,複雑系の現象の1種である.熟練の技術者はこのような複雑系の現象を これまでの経験や勘を頼りに判断する.このような技術をいかにして若手技術者や未経験 者に伝えていくかは重要な検討課題である.その中で,i-Constructionや建設業界における
DX(建設 DX)の取り組みも踏まえ,防災事業においてもセンシング技術の活用や人工知能
による解析を取り入れ,画期的な道路防災点検システムを構築していくことが求められる.
図1-6 i-Constructionによる建設プロセスの概要図[1-12]
7 1.2 道路防災点検における土砂災害への対策と課題
道路防災の在り方が変わるきっかけとなったのは前項で述べた昭和 43 年飛騨川バス転 落事故であった.しかし,その後も度重なる土砂災害の発生があった.そのためこれを改 善すべく点検により災害の発生要因を発見し,その要因を除去することや,また災害に対 する対策工の施工を行うことを基本として始まったのが道路防災点検である.昭和 45 年 に出された一般国道56号の土砂崩壊事故の判決や,昭和46年に発生した静岡県の一般国 道150号大崩海岸における落石事故がきっかけとなり,全国の直轄国道・都道府県道・主 要な地方道とあらゆる道路を対象とした道路防災点検が始まった[1-16].そして,道路防 災点検は過去50年間で約5年に1度のスパンで実施され,その中で得た技術的知見や,
道路の利用状況の変化も踏まえて改善が行われている.しかし,道路防災点検が行われて きたこの 50 年の中でも土砂災害による被害はたびたび報告されており,そのたびに道路 施設の一斉点検を行い危険個所の再抽出等が行われている現状である.それでもなお土砂 災害による被害がゼロとなることはなく,点検方法や仕組みに課題があることが指摘され ている.ここでは現行の道路防災点検の一連の流れについて示し,その中から現在の点検 における課題点について述べる.
道路防災点検は道路保全技術センターが取りまとめた道路防災総点検要領[1-17]を参考 に述べる.道路防災点検の目的となるのは先にも述べた災害発生要因の発見することであ る.そのために,図 1-7,8に示すフローに従い点検を実施する.道路防災点検の概要は図 1-7に示す通り4段階のフローに従い安定度調査を行う.図1-7に示す点検フローについ てさらに詳細な選定手順を記載したものが図1-8となる.まず,管理対象道路は第1絞り 込みを実施し点検対象区間を選定する.点検対象区間は,道路管理対象道路から災害発生 履歴等を踏まえた箇所の危険度や,防災管理上の必要性等に基づいて選定される.なお,
第一絞り込みでは後に地形の形成過程や災害特性を判読しさらに絞り込みを行っていくた めに,ある程度の延長を持った区間とすることとし,数km程度とすることが考えられる.
続いて第2絞り込みにより安定度調査を行う個所を選定する.この第2絞り込みでは,「机 上調査による地域特性の把握及び災害要因の判読」と,机上調査結果を現地で確認する「現 地確認」からなる.第2絞り込みの机上調査では,地域特性の把握及び災害要因の判読を 行い安定度調査候補箇所の選定を行う.そして,現地確認では選定された安定度調査候補 箇所について机上調査で判読した災害要因が現地においてもみられるかを確認する.この ようにして選定された安定度調査候補個所では点検の最後に専門技術者による現地調査を 行う.そして,専門家判断に基づき安定度調査票を作成し,個々の調査個所を総合評価と して以下の3つの項目に分類を行う.
・要対策:対策が必要と判断される箇所
・カルテ対応箇所:防災カルテを作成し対応する ・対策不要:特に新たな対応を必要としない
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分類された項目の結果はそれぞれの分類結果に応じてその後の対応に違いがある.まず,
災害の緊急性が高いものは要対策として分類され,対策工の設計を講じる必要がある.対 策工の設計は,落石発生時に道路にどの程度の被害が起きうるのかを算定し,最も合理的 な手法を決定する必要がある.次に,カルテ対応箇所として分類された箇所では,調査結 果を元に防災カルテを作成し,翌年以降定期的に点検を実施して管理に努めることになる.
ここで,防災カルテとは,道路管理者等が日常管理等において災害に至る要因を早急に発 見し,その後の専門技術者による詳細点検等の対応を適切に進められるよう,道路管理者 等の業務を支援するための資料である.より具体的には,防災カルテの作成が必要な点検 個所に関して,着目すべき変状の位置や変状の内容,また最も適した点検時期.項目等を 記載したものである[1-18].ここで,実際の防災カルテを図1-9に示す. 防災カルテに記 載される内容は現地調査の結果を整理して作成される.図1-9に示す防災カルテ中段の点 検地点位置図は現地の状態をスケッチで表したものであり,斜面上のどの位置に点検個所 があるかを示している.また,それぞれの着目点に対する専門技術者のコメントがスケッ チの下部に記載されている.カルテ対応箇所での各年の定期点検ではこれらの情報を元に 点検ルートの選定を行い,そして,点検個所の進展や変状を確実に把握する.そして,変 状が表れた場合には,点検個所の総合評価をカルテ対応から要対策へ移行し,対策を講じ る.最後に,対策不要個所については,専門家判断において危険性や変状の発展性が低い と判断された箇所であり,以降の管理や点検を行う必要がない.このように現状の道路防 災点検では3種の総合評価を行っており,評価結果毎に対策が異なる.そのため,的確な 判断を行い,管理に努めることが必要である.
図1-7 道路防災点検における点検フロー[1-17]
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図1-9 防災カルテの例
図1-8 道路防災点検における安定度調査個所の選定フロー[1-17]
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ここまで現行の道路防災点検について述べてきたが,道路防災点検やカルテ対応箇所の 点検で重要になるのが点検用資料である.具体的には,航空写真や災害記録,地形図,そ して上述した防災カルテなどがこれに該当する.道路防災点検のフローで確認した選定箇 所の絞り込みは目視による机上調査で実施される.そのため,手元にある資料を正確に読 み解き,現地調査を実施すべき箇所を選定する必要がある.さらに,安定度調査やカルテ 対応の現地調査時には選定箇所の正確な位置情報が資料上でわかることが重要であり,ま た,現地に持ち込むことが出来る媒体である必要がある.ここで,現状の点検で用いられ ている点検用資料の一例を示す.まず,航空写真の例を図 1-10 に示す.航空写真は飛行 機に搭載したカメラを使って地上を撮影した写真である.航空写真を使った判読では,ラ ップした2枚の航空写真を用いて行う空中写真判読がある.これにより,写真を立体的に 見ることができ,地形の尾根谷などが判別できるようになるため机上調査資料として活用 される.しかし写真の特性上,植生が繁茂した地形では,樹木により地表面を直接観察す ることは出来ない.そのため,比較的規模の大きな地形(数十m単位)は判読できるものが あるが,落石発生源の様に規模の小さな地形の判読は困難である.次に,図1-9に示した 防災カルテについて述べる.防災カルテは,過去の点検記録を元に資料を作成しているた め,資料内の情報は斜面の状況を的確に表現しているといえる.また,現地調査時の写真 も併せて添付している場合が多く,スケッチやコメントがどのような地形を示しているの かがイメージしやすい.そのため机上調査・現地調査ともに用いられるケースが多い.し かし,このスケッチはあくまで専門の技術者が書き起こしたものであり,絵のスケールは 描画した技術者の感覚による.そのため,点検個所の位置精度に不十分さがみられ,現地 調査時に斜面上で点検個所を探すことになりかねない.また,防災カルテ上に記載されて いる情報はあくまで安定度調査時に要対策・カルテ対応として認定された箇所である.す なわち,点検が行われていないような箇所の情報は防災カルテ上に記載されないため,点 検個所の見落としの懸念も考えられる.最後に,判読資料として主に用いられているのが,
国土地理院が発行する地形図(図 1-11)である.地形図の特徴として,斜面や地形が等高線 で書かれており,スケールが防災カルテに比べて忠実であることがあげられる.そのため,
高度,距離,方位,傾斜,面積などの把握が容易であり,机上調査・現地調査双方におい て有用である.しかし,地形図の精度は等高線の間隔や縮尺に依存し,等高線間は地形を 表現することが難しいため確実な情報が得られない.ここで3種の資料について示したが,
これらの資料には共通して課題となるのが高い専門性が要求されることである.判読の作 業が正確にできるようには長い時間の訓練が必要となり,どれだけ正確に判読ができるか は技術者の経験や勘に依存する.そのため,判読作業を行う技術者が異なると結果に違い が表れる恐れがある.また,判読作業は広域の斜面を対象に行うため,非常に労力のかか る作業となる.さらに,少子高齢化の問題による技術者不足の問題を考えると,判読技術 の継承が課題になることも考えられる. そのため,調査用資料の正確さも重要であるが,
机上調査そのものの仕組みにおいてより効率的な手法を確立する必要がある.
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図1-10 航空写真の例
図1-11 地形図の例
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土木研究所は昨今の土砂災害の状況を踏まえて,防災点検の有用性と災害の低減につい て整理した資料を公開した[1-19].本資料では直轄国道で発生した土砂災害のうち,平成9 年~16年(466箇所)と平成20年~22年(73箇所)に対して,防災点検の安定度調査結果と の対比を円グラフで示した(図1-12).このグラフを見ると,実に半数もの土砂災害が点検 対象外の区域から発生していることがわかる.先に述べた通り,道路防災点検では,段階 的に点検個所を絞り込み,安定度調査で選定箇所を3種の総合評価結果に分類する.ここ で点検対象外となっているものは,そもそも安定度調査が行われていないということであ り,点検個所選定時に斜面災害になりうる変状や特徴的な微地形の見逃しが発生している ことを示唆している.さらに,図 1-12 のグラフでは,対策不要個所からの災害発生事例 があったことも示している.この結果から直轄国道における過去の土砂災害は実に6割が 想定外であったということになる.道路防災点検の仕組みは災害や状況に応じて変化し評 価方法や選定方法を改善することで対応しているが,そもそも点検個所の絞り込みの時点 で正しく絞り込みが行われていない以上,点検の仕組みや評価方法の改善を行っても上記 の課題に対して十分な改善は得られない.安定度調査を行う選定箇所では,防災カルテや 地形図などを用いて判読を行うために,災害箇所を同定するのは非常に高度なスキルが要 求される.また,判読する地形が数m程度と小さい場合にはどれだけスキルがあったとし ても,図面の表現性能の問題により抽出漏れが発生する.そのため,机上調査の精度が点 検結果に与える影響は大きい.なお,資料[1-19]には,点検対象外で発生している災害に
ついては40~50%が管理用地外から発生していることも示されている(図1-13).そのため,
実際に道路防災点検では,広域の斜面データを駆使し,より安全率の高い方法で管理を行 っていくことが必要となる.また,同資料では,安定度調査の結果についても記載がされ ており,自然斜面崩壊や落石,岩盤崩壊などの自然斜面で発生する災害が調査時の評価点 が低くなる傾向であり,これらの点検精度が低いことが指摘されている(図1-14).そして,
対策不要個所の災害の見逃しについては原因を分析しており,その要因の中で最も大きい
40%の事例ではデータ不足か評価方法の限界による「災害発生が想定外」となった(図1-15).
図1-12 直轄国道における土砂災害発生個所の安定度調査結果[1-19]
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図1-13 点検対象外で発生している災害状況[1-19]
図1-14 平成20~23年度直轄国道災害事例箇所の防災点検による安定度調査評点(安定度
調査結果が行われていたもの) [1-19]
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図1-15 対策不要個所災害の見逃し原因分析例[1-19]
こういった中,3 次元測量を主体とするセンシング技術の活用が目覚ましい.航空レー ザ測量や地上で計測を行う地上型レーザスキャナ,そして車載型の計測システム(Mobil Mapping System)など様々なフォーマットでの計測手段が存在しており,これらを斜面の 点検や災害の把握に活用する事例や研究は世界各国で見受けられる [1-20,21,22].3 次元 データを落石の抽出に用いた事例では[1-23],地上据え置き型の 3 次元レーザスキャナを 用いた計測データをクラスター分類により分類し岩盤の中から崩落の危険性の高い落石群 を抽出することに成功したことが報告されている.しかし,斜面を対象とした場合には,
計測は広域で高精度であることが望まれる.また,日本の斜面の多くは樹木が繁茂し,地 表面が樹木に覆われていることが特徴である.このような場合には航空レーザ測量技術を 活用することが有用となる.航空レーザデータの活用事例[1-24,25]では,計測データの傾 斜角度に応じて斜面地形を分類し,対象となる急傾斜地や崖錐地と平坦面との区別を行う ことで,落石発生源を抽出することに成功した事例も存在する.このような成果では計測 した点群に対して統計的な処理を加えることでデータから特徴量を抜き出し,地形特徴と の関係から落石発生源箇所を抽出する.このように航空レーザ測量データを用いて斜面災 害へ活用するためには,膨大な情報の中から必要な情報を抽出する解析技術を確立する必 要がある.また,解析技術が確立したとしてもセンシング精度の再現性が担保されていな いと同等の結果は得られない.そのため,計測から解析までの一連の流れにおける活用方 法の検討を行うことが望まれる.また,道路防災点検では,各種図面を元にした机上調査 が実施されている.このような仕組みにおいては,測量データを図化して判読用資料とし て用いること,そして,図面としての特徴を整理することも重要な検討項目となる.さら に,図面の判読には高度な専門スキルが求められることも課題の一つである.判読技術を 統一化し,見逃しのない机上調査手法に向けたシステム構築の検討が必要である.
15 1.3 本研究の目的
本研究では,効率的かつ高精度な道路防災点検の確立にむけ,航空レーザ測量データを 活用した落石発生源の机上調査手法の検証を行う.現状の道路防災点検では見落とし箇所 からの災害の発生事例が多数確認されていることから,見逃しのないより効果的な道路防 災点検システムの構築が求められる.さらに,昨今の情勢を鑑みると,地球環境の変化や 温暖化の影響に伴い雨の降り方が変わり,斜面防災に対しての緊急性は高まりつつある.
その一方で,技術者不足や財政難などのソフト面の課題も浮き彫りとなりつつある.その ため,このような社会情勢も踏まえ,道路防災点検においてより効率的でかつ高精度な調 査を実施するための検討が必要である.本研究では,落石を対象とした机上調査において 航空レーザ測量の活用を検討し,点検の効率化と高精度化を図るための検証を行う.具体 的には以下に示す3つを本研究の検証内容とする.そして,これらについて検証を行った 後,その結果を元に道路防災点検における航空レーザ測量の活用とさらなる検討課題につ いて整理する.
① 航空レーザ測量データを活用した落石発生源の机上調査の検証:航空レーザ測量を道 路防災点検に活用するには,航空レーザ測量データの取り扱い方が重要となる.航空レー ザ測量のデータは非常に膨大なものであり,その中から机上調査に必要となる情報をうま く抜き出し,活用するための図面を作成することが必要である.そのため,これを可能に するウェーブレット解析とその図化について整理し,落石発生源の机上調査用資料として 手法の有用性や特徴について整理を行う.
② 調査に即した航空レーザ測量や解析条件の整理:航空レーザ測量の技術は斜面防災に おいても有用性を示している事例が数多くある.しかし,具体的にどのような条件で計測 を行い,そして,どのように解析を進めるとどのような結果や効果が得られるのかを一連 の流れで整理している事例は少ない.そのため,センシング技術の活用方法のみならず,
活用に向けた条件の整理についても検討を行う.
③ 人工知能技術を用いた落石発生源の自動抽出システムの提案:図面判読は専門性の高 さもさることながら労力のかかる作業でもある.そういった中,地形判読を自動で高精度 に行うシステムを構築することで,作業の効率化と見落としの削減に期待できる.そこで,
人工知能技術を活用した落石発生源の抽出手法の提案を行い,判読手法としての検証を行 う.
16 1.4 本論文の概要
本論文は図1-16に示す通り,第一章~第六章までの6つの章で構成している.
第一章:研究の背景及び目的を示した.
第二章:道路斜面防災に関わる既往検討の整理を行う.具体的には,着目する災害である 落石に関しての調査時の着目点や,道路防災点検の歴史と災害対策の課題について,そし て,本研究で対象とする机上調査における判読技術について述べる.さらに,章の後半で は,斜面災害におけるセンシングデータの活用として,3 つの活用手段に沿って既往研究 を整理する.また,センシングデータとの親和性の高いGISの活用や本研究でも活用を検 討している人工知能技術に関する最近の活用事例についても一部述べる.そして第二章の 最後には,これらの既往研究の整理した結果や第一章に述べた背景などの元に本研究の意 位置づけや新規性について述べる.
第三章:本手法で用いる航空レーザ測量とそのデータの解析方法について述べる.
第四章:机上調査において見落としのない点検手法を確立するため,落石発生源の机上調 査における航空レーザ測量の活用について検討を行う.この内容では,研究の目的として 示した3つの検討課題のうち,①の内容を対象としている.具体的には,航空レーザ測量 データから解析によりウェーブレット解析図を作成し,この図面の特徴や落石発生源調査 における有用性について検証を行う.なお,これらの検証では,測量データを用いた机上 調査と,机上調査結果を元に実施した現地調査の結果の比較から評価を行う.
第五章:落石発生源の机上調査において航空レーザ測量を活用する上での,計測条件や解 析条件について整理を行う.ここでは,計測から解析までの一連の流れにおいて,諸条件 が調査成果に及ぼす影響について検証する.航空レーザ測量の計測条件の違いや計測デー タの解析方法の違いが調査結果や斜面上の微地形の抽出数にどのような影響を及ぼすのか を評価することで航空レーザ測量データの活用方法について提言を示す.本章は研究の目 的として示した3つの検討課題のうち,②の内容を対象としている.
第六章:人工知能技術を用いた落石発生源の検出手法を提案し,机上調査手法としての有 用性について検証を行う.ここでは,第四章の検討結果に基づいて,より質の高いデータ を活用し効果の高い机上調査システムを構築することを目指す.また,人工知能による調 査結果を図面として表し,点検を行う技術者にとって可読性の高い情報となりうるか検討 を行う.ここでは,研究目的と示した3つの検討課題のうち,③についての検討を行う.
第七章:第四~六章の成果を元に道路防災点検において航空レーザ測量を活用するための 緒言や,より効果的に測量データを活用するために検討課題について述べる
第八章:本研究で示した内容を整理し結論を示す.
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図1-16 本論文の構成
18 参考文献
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第2章 道路斜面防災に関わる既往研究の整理
2.1 道路における土砂災害の既往の検討
道路防災における検討を進めるためには,まず現状を理解する必要がある.さらに言え ば土砂災害そのものについても理解し,それらに即した点検手法の確立が必要である.こ こでは,まず落石の機構や概要整理する.そして,現在報告されている道路防災点検の課 題やあり方・方向性についての報告を整理する.
2.1.1 落石の機構と特徴について
斜面で発生する土砂災害には形態や発生期間に沿って様々な呼称があるが,これらは総 括してマス・ムーブメントと呼ばれる.マス・ムーブメントは,地表での重力の作用によ る物質の移動を表す言葉で,落石・崩壊・地すべり・土石流等の総称となる.そして,そ のそれらの分類に関しては,分野の違いや研究者によって多岐にわたる[2-1,2].この例と して図 2-1 のような分類があげられる[2-3]. 崩壊や土石流は移動速度が大きいことが特 徴としてあげられるが,移動体に含まれる水分の量に違いが表れる.崩壊の発生では,豪 雨や地震を誘因として地盤が緩み,このことから抵抗力が低下して発生するが,崩壊によ り移動する土塊の含水比は低い場合が多い[2-3].これに対して土石流では,集中豪雨を誘 因として斜面の崩壊物が渓流の水と混ざり,渓流沿いを一気に流れていくことから含水比 は高い状態となる.このように含水比や形態の多様性に違いの表れる土石流と崩壊である が,斜面崩壊で発生した崩落物が谷底を流れる水と混ざり流下することで,崩壊を起因と した土石流となる場合もある[2-4,5,6].これらの移動速度の速い崩壊や土石流に対して,
地すべりは移動速度が比較的遅いことが特徴である.さらに,地すべりの発生は緩斜面で も発生し,地下水位の上昇が誘因となる[2-7].これにより移動する速度は,年間で数セン チメートル~数十メートルとなる.さらに,地すべりが発生する斜面ではその兆候として
図2-1 マス・ムーブメントの様式8種の基本的分類[2-3]
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亀裂や樹木が傾くなどの前兆現象が認められることが多い.千木良[2-8]は地すべりや崩壊 を明確に区別し,発生場所の予測技術の現状と今後の展開について整理した.
本研究では図2-1に示す形態のうち落石を対象とした.落石は岩盤崩壊の一種として考 えることができ,その規模は岩盤崩壊に比べて小さいことが特徴である.また,斜面崩壊 の場合は大量の土砂や岩石が斜面から崩落するのに対して,落石は文字通り岩塊の落下現 象である.先に述べた通り,落石の落下現象そのものは重力の作用によるものであるが,
その発生機構は,①抜け落ち(転石)型,②はく離(浮石)型,③その他の大きく3つに分類す ることが出来る.また,マス・ムーブメントの1種であるため,落石も地すべりや斜面災 害と同じく素因・誘因と深い関係がある.なお,ここでは,日本道路協会が発行している 落石対策便覧[2-9]や全地連発行の点検要領[2-10]を元に落石の発生源に関する情報を整理 する.
①抜け落ち(転石)型落石
段丘,火山砕屑物の基質に礫を含むルーズな土砂である場合(図 2-2(a))と,基盤の風化 や風化生成物の移動により岩盤上に表土や崖錐等の土砂が存在する場合(図 2-2(b,c,d))が ある.これらのタイプの落石は土砂中の礫のみが運動を開始する場合と土砂の崩壊に伴っ て落石が発生する場合とがある.
図2-2 抜け落ち (転石) 型落石の発生形態[2-10]
②はく離(浮石)型落石
主として岩盤斜面(落石発生源)で発生する.発生規模は小さいが発生機構は岩盤崩壊と 同一である場合が多い.流れ盤斜面(図2-3(a))においては板状の浮石が形成されやすいが,
節理,層理,片理,硬軟層の境界等の不連続面の方向が単一でなく複数の場合も多い,流 れ盤と受け盤の複合斜面では単純な板状の浮石だけでなく,くさび型の浮石も形成される.
不連続面がほぼ水平の場合(図 2-3(b))は,不連続面の間の層の浸食の度合いの際によりオ ーバーハングが形成されて,それが落石となることが多い.不連続面が高角度に入ってい る場合(図2-3(c))はオーバーハングやトップリングによる落石が発生する.また,新第三紀
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以降の軟岩よりなる不連続面の発達していない斜面(図2-3(d))で表面が風化して肌落ちし,
それが落石となる場合もある.
図2-3 はく離 (浮石) 型落石の発生形態[2-10]
③その他
風化花崗岩地帯で風化・浸食に強い岩塊や風化し残った部分が,また凝灰角礫岩地質でも 浸食されなかった礫が不安定な状態で残存する場合がある.このようなケースは特殊なも のであるが,落石の発生原因の1つである.
さらに,落石は素因と誘因の両方が深く関係しており,これらを理解することも対策の上 では重要である.
①落石の素因
落石の素因は斜面の地形と地質である.落石を生じやすい地質条件は,抜け落ち(転石) 型落石では崖錐,段丘礫層,火山性堆積物,風化花崗岩類等で,マトリックス(岩塊,礫等 の周りを充てんする土砂等の相対的に軟弱な物質)の風化・浸食に対する抵抗力が弱い場合 である.特に岩塊,玉石,礫の下部に接するマトリックスでこの傾向がみられる場合は顕 著である.はく離(浮石)型落石では,不連続面が発達し,かつ不連続面が密着しておらず,
不連続面に囲まれた岩塊,岩片が浮いた状態になっている場合である.また地形的には勾 配が急な斜面,特にオーバーハング状になっている場合に落石が発生しやすい.池田らが 鉄道沿線の落石多発地帯の資料より整理した内容[2-10]によると,古生層での落石の発生 が最も多く,次に花崗岩類が多いと示した
落石の運動を支配するのは,斜面の勾配,形状と地表面の状態である.また落石によ る被災の程度は,落石の質量速度および到達距離に関係するが,このうち到達距離は斜面 の末端状態が最も支配的な要因である.すなわち,道路面までの間に,落石が停止しうる 平坦面,緩傾斜面,凹地,土堤,落石防護擁壁等が存在する場合は落石災害は発生しない.
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②落石の誘因
落石の誘因は複雑であり,いくつかの因子が重なって起こるため,落石災害については原 因を明確にできないことが多い.誘因としては,降雨,積雪,凍結融解,風,地震あるい は人為的誘因等があげられる.北海道内の土砂災害発生要因について分析した論文[2-11]
では,降雨を誘因とした発生事例が最も多いとの報告があり,全体の7割が時間当たり雨
量100mm未満の穏やかな雨の振り方で発生していることも明らかとなっている.また,
転石型の落石は全体の約8割が総雨量50mm未満の少ない雨量で発生しているのに対して,
浮石型落石は総雨量 50mm 未満の項で発生した事例が全体の約 6 割にとどまり,総雨量 50mm以上のまとまった雨でも一定の割合で確認されることが報告されている.このよう に発生形態の違いが総雨量の大きさの違いに影響することもある.
では,実際に調査を実施する際にはどのような箇所を着目すべきか.落石に関係する地 形について整理したもの図2-4に示す.点検要領では,落石・崩壊に関して次の8つの地 形が崩壊性要因を有する地形として挙げられている[2-12].
①崖錐地形
山腹斜面下部の傾斜が急に緩くなっている自然斜面.崖錐斜面は急斜面上の風化層が重 力の作用により落下して堆積し形成された斜面で,角礫でルーズな堆積物からなることが 多い.
②崩壊跡地
崩壊跡地,土石流跡地,スプーン等がみられる自然斜面やその下部を指す.なお,集水 型斜面からの活発な土砂の流出ないしその痕跡が認められているものは崩壊跡地に含むも のとする.
③明瞭な遷急線
自然斜面情報から見て勾配が”緩”から”急”に変わる点を結んだ線が遷急線である.一般 に,遷急線が明瞭なほど浸食崩壊が著しい.遷急線は一本とは限らないので,最も迷路量奈 遷急線に着目する,
④大地の裾部・段丘崖
丘陵地の縁辺部(台地の裾部),または河川や海岸にほぼ並行する階段状の地形(段丘)の縁 辺部(段丘崖)を示す.これらの自然斜面の上部は平坦であることが多い.平坦面には,保 水性の良い地層(段丘層)が分布していることが多く,こうした地層から斜面へ地下水が供 給されている場合には,斜面はより不安定となることがある.
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⑤著しい脚部浸食
河川が屈曲して自然斜面の脚部を著しく浸食している部分(攻撃斜面)では一般に露岩あ るいは裸地となっている.また,波浪による浸食で自然斜面の脚部を著しく浸食している 部分(海食崖)でも同様である.
⑥オーバーハング
表土や岩盤が三次元的に凹凸に富み,部分的にオーバーハング(傾斜が90°以上となる) している場合である.
⑦集水型斜面
斜面が盆状に広がり,その下流域が狭い場合を指す.小規模な集水型斜面や小渓流から も土砂が流出することがあるのでできるだけ確認する.なお,集水型斜面から活発な土砂 の流出ないしその痕跡が認められるものは崩壊跡地に含める.
⑧凸型自然斜面
尾根地形の先端部分等は平坦的に等高線が凸型を呈する.
ここまで落石の発生機構や素因・誘因,そして,落石の発生要因となりうる地形特徴につ いて既存の資料を元に整理した.しかし,一言に落石といっても,素因・誘因の関係や発 生機構など,その組み合わせにより発生条件は膨大な数となる.道路防災点検ではこれら の知識をベースに落石の安定度を判定し,それぞれの斜面に沿った対策の在り方を検討す ることになる.また,点検では,机上調査,現地調査,安定度調査の流れで対策の有無を 決定し,災害対策を実施する.その中で,正確に調査を行い対策の計画を決定するために は,それを可能にする情報の精度と量が求められる.そして,それらの情報を精査し,正 しい成果に結びつけるための知識も必要となる.
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図2-4 落石に関係する地形的特徴の例([2-12] 図5.1.2~5.1.8を一部修正して作成)
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2.1.2 道路防災点検と災害対策
日本の土砂災害への対策は,1 章で述べた通り道路防災点検で実施される.しかし,昨 今の環境の変化やこれまでの道路防災点検の仕組みにおける課題などが浮き彫りになって おり,道路斜面防災の在り方を改めて検討すべき時期に来ていると考える.ここでは,道 路斜面防災における既往検討や課題について整理する.
伊藤が報告した「防災点検と道路防災対策の方向」[2-13]は1997年に発行されており,
平成8年度道路防災総点検の内容や特徴の解説と,その当時における道路防災対策の方向 について紹介したものである.この当時は道路防災点検における絞り込みが1段階しか行 われておらず,点検個所の抽出(スクリーニング)作業について安定度調査を実施する流れ であった.そして,その後導入された防災カルテの意義や道路防災管理システムの構築に 関しても言及されている.その後,時代の変遷に伴って道路防災点検の仕組みは多少の変 更が行われているものの,ここで述べている点検の在り方は今もなお実施されているもの とおおむね同じである.特に報告の結論にも記載されている通り,道路防災点検は目視を 用いた方法で実施されている.目視点検は道路防災点検においては最も単純であり,かつ 最も信頼性の高い手法である.そして,この目視点検を根幹とした道路防災点検の仕組み は変わることなく現在まで引き継がれている.そのため,今後の道路防災点検の在り方を 考える上では,根幹の考え方は変えることなく点検精度や効率を向上するための取り組み や検討が重要な検討課題である.
次に,下野[2-14]は,昨今の災害事例から道路斜面防災の在り方について整理を行って いる.この報告では,まず,道路斜面災害の誘因の多くは豪雨であり,40年間の降雨傾向 として年降水量は大きく変化していないのにも関わらず,時間降水量50mm以上の年間発 生回数の増加が顕著となっていることを示唆している(図2-5).そして,これに伴い,土砂 災害の年間発生回数も増加しており,今後この傾向が続く見通しであると結論づけた.ま た,今後の道路斜面防災にはまず現状把握としての地形把握のためのアーカイブデータを 構築することが重要となると言及した.これは災害の概要把握や地形素因分析に大きく貢 献する.効率的な地形把握のためには,縮尺1/5,000程度の全国地形図の整備が望まれる.
特に汎用性のある航空機レーザ測量データのアーカイブは災害発生後の分析等に非常に役 立つものであると記した.
さらに,浅井らの報告[2-15]では,平成20~22年度の直轄国道斜面災害の73事例を元 に災害の特徴と防災上の留意点を示した.この報告によると,年平均の災害発生件数は大 まかには減少しているが,完全になくなることはなく,今後も十分な対策をとることが求 められる.特に,連続雨量が 100mmを下回る少雨で,かつ降雨時間も 1~2 時間と短時 間であっても土砂災害が発生するケースが多数確認されており,この場合には事前の雨量 規制による事前通行規制を行うのが難しい事例となる(図 2-3 左図).このような災害に対 しては個々の災害の形態や原因を詳細に分析することが重要となるとした.また,規制区 間外での災害の発生が増加していることも示唆している(図 2-3 右図).特に上方斜面の変
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動地形が認識されず点検対象項目と実際に発生した災害が異なっていた事例がみられるこ とも確認されている.このような事例に対しては,航空レーザ測量の活用に有効性がある ことも示され,空中写真では植生のため見えない場合での活用が期待される.
また大西[2-16]らの検討では,岩盤崩壊と落石を対象として調査から対策までの多数の 参考文献を整理し,不連続性を有する岩盤の特性を考慮した新しい解析手法や予知・予測 の難しい崩落に対する考え方を示した.報告内容は非常に画期的なものであり,調査・計 測の課題については,効率的かつ効果的なリスクマネジメント技術の重要性とGISを利用 した情報処理技術などの結び付けた高度な防災情報システムの開発に期待と記されている.
中でも,リモートセンシング技術の利活用や,熟練者知識を取りこんだ人工知能システム ソフトの開発についても言及されており,現在の日本で進んでいるsociety5.0の考え方に 非常に即した提案となっている.
また,岩崎らの報告[2-17]では日本の道路防災点検技術をブータン王国で適応した事例 を紹介している.ブータンにおける斜面対策は「災害発生後の対応」という考え方が支配 的であった.そのため,日本の道路防災点検技術の導入は道路管理の在り方を変える重要 な一歩となっている.このように日本の道路防災点検技術は海外から見てもシステムとし ての有用性は非常に高いことがうかがえる.ただし,本報告にもある通り,点検個所のス クリーニング作業では,いかに質の高い資料を用意できるかが重要であり,これは我々日 本の防災システムにおいてもまだ不十分な要素である.
その他にも,個別の事象について検討された報告も存在する.例えば,石田[2-18]や久 賀[2-19]らは道路防災カルテの評価方法の妥当性や評価方法の改善方法について報告して いる.同様の検討は他にも複数実施されている[2-20,21,22].また,原田[2-23]によって人 工知能(Artificial Intelligence : AI)を利用した危険度評価手法の提案がなされており,定量 的に安定度調査を行うための仕組みも検討されている.
ここまで様々な報告を通して道路防災点検に関しての内容を整理したが,これらの報告に 共通して述べられていることはおおむね以下の3点である.
図2-5 左図:平成20~22年度の直轄国道斜面災害発生時の連続雨量と最大時間雨量の関 係,右図:直轄国道斜面災害の事前通行規制区間内外の発生割合 ([2-14]図-6,8より引用)
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①環境に即した道路防災点検の在り方の検討
道路斜面防災は国のインフラ施設である道路と関係があり,その意義は計り知れない.
仮に土砂災害により道路が寸断された場合には甚大な損害となりうる.その為,事前に予 防措置を検討し土砂災害が発生したとしても被害を最小限に食い止める「減災」の考え方 が重要となる.その一方で,昨今の気象状況の変化も道路防災点検の在り方を考える上で 検討すべき要素である.毎年のように記録的な豪雨災害が報告されており,土砂災害も多 数発生している.また,豪雨時のみではなく少雨でも土砂災害の発生事例は確認されてい る.そのため,日々の管理の重要性が高まりつつある.日々の点検で確実に斜面の状況を 把握し,見落としのない斜面調査の実施が必要となる.
②土砂災害をいかにして事前に把握し対策を行うか
斜面災害は,素因・誘因の関係から様々な不確定性を含む事象である.そのため,地す べりや崩壊などの様な一般的な分類方法があるが,それらが「いつ」「どこで」「どのよう に」発生するかを予測するのは非常に難しい課題である.現状の点検では災害に対する安 定度を専門家の判断,すなわち目視点検で実施している.また,安定度調査だけではなく,
そのほかの机上調査・現地調査でも専門家の判断は非常に多く要求される.目視点検など の専門家ベースの判断では,判断根拠が専門家の経験や勘に依存しており,結果に定量性 が欠けている.その一方で,これに変わる技術はまだ開発されておらず,現状,様々な取 り組みや研究により改善を検討している.なお,安定度調査における目視点検は経験や勘 に依存するものの信頼性の面から言えば非常に高い.しかし,昨今の度重なる降雨状況で は,国土全域の斜面をすべて等しく専門家が判断し,これを毎年のように実施するには大 変労力がかかる作業である.そのため,防災点検の根幹は変えることなく,一つ一つの作 業を効率化し,昨今の技術者不足に対応できるような,より効率的な点検の仕組みへと改 善が必要となる.
③センシング技術の利活用
道路防災では斜面の情報をどれだけ正確に収集できるかが重要となる.これはいわゆる アーカイブデータの存在意義を示したものである.広域な斜面から土砂災害に関わる微地 形をピンポイントに抽出し,点検を実施することが必要になる.そのためにはセンシング 技術をどのように活用すべきかを明確にし,そして活用を含んだ道路防災点検の形を検討 することが必要になる.なお,斜面災害におけるセンシング技術の利活用については,2.3 節に既往研究を整理する.
29 2.2 斜面災害に対する地形判読
道路防災点検における机上調査には,地形判読の技術が必要となる.地形判読は,地形 図や空中写真などを用いて地形を読み解き,災害に起因するような地形上の素因を見つけ 出すことである.空中写真判読では,写真に写っている斜面の色や形状を元に定性的に地 形や地質などの情報を取得する技術である.写真判読に用いる画像は飛行機や人工衛星か ら撮影されたものである.さらに,60%以上重複した2枚の隣り合う写真を用いた立体視 を行うことで,山地の高低や尾根谷などの微地形など3次元的な情報を見ることが出来る ようになる.ここで,立体視が可能な空中写真を図2-6に示す.図2-6は書籍「写真と図 で見る地形学」[2-24]より引用したものである.図 2-6 に示す地形は,岡山県川上郡成羽 町西部を例として挙げた中国地方の吉備高原である.書籍[2-24]の文言を引用すると,「高 梁川支流の成羽川は比高300m以上の深いV字谷を形成している。一方山頂部は起伏の少 ない丘陵状を呈する.そこではなだらかな谷壁斜面を持った短い谷が樹枝状に密に発達す る.」といった地形が確認することが出来る.次に,地形図についても見てみる.地形図は 標高や地形の起伏,河川や海岸線,道路や建物,土地利用などの状態を精細に表現した地 図である.国土地理院発行の縮尺2万5000分の1の地形図や5万分の1の地形図は,そ の代表的なものである.そこでは各種の対象物が,縮尺の関係から取捨選択,総描(形や 分布の特徴を保持しながら統合や形状の単純化などを行うこと),転位(位置を最小限ずら して描くこと)などが行われてはいるものの,かなり詳細に表されている.地形図の判読 方法を整理した書籍「建設技術者のための地形図読図入門」[2-25]では,判読は地形図に 描かれている事柄の理解ばかりでなく直接的には描かれていない事象を推論し,任意の土 地の過去,現在,将来の状態を地形図から予察的に読み取る試行作業と記している.ここ で,地形図の読図例として図2-7 に遷急線や遷緩線を含む傾斜角変換線の地形 21個を示 す地形図を示した.そして,これら21 個の地形の模式図を図 2-8 に示している.これら 図2-7と図2-8を比較して,個々の地形図から実際の地形をイメージする必要がある.こ の作業は非常に高い専門性が求められる.しかし,これら21箇所の地形は,起伏形態(平 面形,断面形,傾斜,谷密度)や規模(長さ,比高,面積,体積),方向(斜面の傾斜方向や山 麓線,河川,海岸線などの伸長方向)といった地形の形態的特徴が実在の個々の地形種ごと にかなり異なっており,正しく区別する必要がある.このように空中写真や地形図を読む 読図技術は非常に専門性が高く,習熟に時間がかかることが言える.しかし,斜面防災の 観点では地形からわかることは非常に多く,災害に関係する素因を見つけることが出来る.
そのため,このような専門性の高い実務をより一般化することが出来れば斜面防災や道路 防災い点検の効率も格段と向上することが見込まれる.さらに,昨今では技術者不足の問 題を抱えており,このような専門的な作業ができる技術者が年々減少していっている.こ のような問題に対しても,地形判読の技術をより一般化していくことが重要な検討課題で あると考える.
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図2-6 吉備高原中央部の空中写真(写真左側が北)[2-24]
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図2-7地形図での傾斜変換線の諸類型[2-25]
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図2-8 日本に多い傾斜変換線の諸類型(各数字は図2-7の地形図と対応)[2-25]