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博士学位論文審査報告書 大学名

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2021年 1月 13日

博士学位論文審査報告書

大学名 早稲田大学

研究科名 スポーツ科学研究科 申請者氏名 井上 尊寛

学位の種類 博士(スポーツ科学)

論文題目 スポーツ観戦行動における関与に関する研究

Research on the involvement that affect spectator behaviors 論文審査員 主査 早稲田大学教授 松岡宏高 Ph.D. (オハイオ州立大学)

副査 早稲田大学教授 原田宗彦 Ph.D. (ペンシルバニア州立大学) 副査 早稲田大学教授 作野誠一 博士(学術)(金沢大学)

副査 法政大学准教授 吉田政幸 Ph.D. (フロリダ州立大学)

研究の概要は以下のとおりである。

本博士論文は、消費者行動の解明において汎用性が高く、多様な研究課題への適応が可 能であると考えられてきた「関与(involvement)」という概念に着目し、スポーツ観戦者 の消費行動の解明を試みたスポーツマーケティングに関する研究成果をまとめたものであ る。さらに、スポーツ消費行動を解明するうえで認知の段階から行動に至るまでの意思決 定のプロセスの中で、関与とともに重要な概念として位置付けられる知識(knowledge)に ついても変数として加え、検討がなされている。

3つの一連の研究に取り組んだ本論文の総合的な研究目的は、スポーツ消費者であるス ポーツファンが認識するプロダクトに対する価値を特定し、スポーツファンの消費におけ る意思決定プロセスの中で関与および知識がその後の行動に与える影響について検討する ことであった。さらに、スポーツ関与をスポーツ観戦の文脈に拡張し、スタジアムやアリ ーナでの直接的な観戦者に特有の要因の特定や構成要素の関連性などについても整理しな がら、スポーツマーケティング研究領域における関与を用いた研究として新たな視座をも たらすことに取り組んでいる。また、実務的にもスポーツ競技団体やプロスポーツチーム のファンデベロップメントにおける施策の策定に資する情報の提供が試みられた。

この総合的な研究目的を果たすために設計された3つの研究の目的はそれぞれ以下の通 りであった。

研究Ⅰ(本文第2章):①フィギュアスケート観戦におけるプロダクトとしての競 技的要素を抽出し、競技的要素への関与を測定するための尺度の構成概念妥当性を 検証すること、②その競技的要素への関与が先行要因と結果要因との間に示す関係 性を分析することで基準関連妥当性を検証すること、そして、③応援している選手 の性別の違いによる競技的要素への関与を検討すること。

研究Ⅱ(本文第3章):①スタジアム観戦者のスポーツ観戦関与に着目し、測定尺 度の妥当性と要因間の次元性および階層性を支持する証左を示すこと、②スポーツ 観戦関与と結果要因の関係性を明らかにすること。

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研究Ⅲ(本文第4章):①スポーツ観戦者の知識(消費者知識)と精通性の関係に 着目し、モデルとしての妥当性や信頼性を検証すること。②消費者知識と精通性お よびスポーツ観戦関与の関連性を検証し、一連のモデルとしての妥当性に関する証 左を得ること。

これらのスポーツ観戦者の心理や行動の理解に関連する問題解決に資する情報の収集お よび分析は、学術的にも新規性があり、研究として高い価値を有すると考えられる。それ ぞれの研究において、実際のスポーツの試合会場(フィギュアスケート、プロサッカー、

プロ野球)にて観戦者からデータが収集された。それぞれの量的データについては、適切 かつ高度な統計解析が用いられ、各概念の測定尺度の確認およびその尺度を用いた変数間 の因果関係について検証された。

総じて、本研究では、以下の事柄についての新たな知見や示唆が得られた。まず、コン トロールが不能であるという前提があるスポーツの中核的プロダクトが、ルールなどの競 技において指標となる軸によって区分することが可能であることが示唆された。このこと は、コアプロダクトを構成する要素を特定し、スポーツ観戦者が価値を抱く要素に対して 直接的にアプローチが可能となることを示している。すなわち、提供されるコアプロダク トの質あるいは結果についての介入は不可能であるが、価値形成の源泉となる要素に対す る情報や学習の機会を提供することが、ファンとの良好な関係構築に寄与することが示唆 された。次に、消費者の知識とコアプロダクトにおける技術的な要素が強く作用し、関与 も高める可能性が高いことが示唆された。さらに、価値階層の低い快楽的な要因から自己 表出的な抽象化水準の高い階層へと関与が高まる過程において、スポーツ消費者の競技に 対する学習、様々なメディアを活用し集積した情報の処理および解釈、さらには他者との 情報共有のために必要な知識の量や情報収集の努力の結果である精通性が、そのスポーツ 消費者の関与を高めることが示された。

本研究は、当申請者が約7年に亘って紹介教員の指導のもとで行った研究成果である。

研究内容はスポーツ科学領域における高度な専門的知識に基づいており、独創性と学術的 意義を十分に有することが認められる。よって、本論文は、博士(スポーツ科学)の学位 を授与するに十分値するものと認める。

なお、本学位申請論文の一部(第2章、第3章、第4章)が掲載された学術論文は以下 のとおりである。

・ 井上尊寛,松岡宏高,竹内洋輔,荒井弘和(2016)フィギュアスケート観戦のプロダク ト構造 :競技的要素に着目し. スポーツマネジメント研究,8(1),3-15.(第2章)

・ 井上尊寛,松岡宏高,吉田政幸,蔵桝利恵子(2018)スタジアムにおけるスポーツ観戦 関与. スポーツマネジメント研究、10(1),41-58.(第3章)

・ 井上尊寛,松岡宏高(2020)スポーツ観戦関与と消費者知識について‐精通性に着目し て‐. スポーツ科学研究,17,62-78.(第4章)

以 上

参照

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