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https://dspace.jaist.ac.jp/

Title 研究者へのアンケート調査からみる我が国の大学の研究活

動における企業との関わり方の現状

Author(s) 松本, 久仁子

Citation 年次学術大会講演要旨集, 36: 405-408

Issue Date 2021-10-30 Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/17844

Rights

本著作物は研究・イノベーション学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with

permission of the Japan Society for Research Policy and Innovation Management.

Description 一般講演要旨

(2)

2B20

研究者へのアンケート調査からみる我が国の大学の研究活動における 企業との関わり方の現状

○松本久仁子(NISTEP)

1.はじめに

第6期科学技術・イノベーション基本計画では、価値共創型の新たな産業を創出する基盤となるイノ ベーション・エコシステムの形成に向けて、産学官連携による新たな価値共創の推進が具体的な取組み として記されており[1]、産学官連携は我が国の科学技術政策において重要な視点の1つである。

これまで我が国では、産学官連携の推進を目指す数多くの施策が進められてきており、直近ではSDGs に基づく拠点ビジョンの達成に向けた産学官共創拠点の形成を目指す共創の場形成支援プログラム[2]、

「組織」対「組織」での大型共同研究の集中的マネジメント体制構築を目指すオープンイノベーション 機構の整備[3]などの施策が展開されている。国立大学等では、2004 年の法人化以降、各大学が自らの 個性・特色を反映しつつ柔軟な産学官連携・知的財産の取扱のルールを定め、共同研究、受託研究、技 術移転、教員の兼業などに取組んでいる。

このような産学連携等の取組状況については、文部科学省にて毎年実施されている調査「大学等にお ける産学連携等実施状況について」[4]にて、大学機関ごとの民間企業からの研究資金等受入額、件数等 のデータが公表されている。さらに、研究者の研究活動プロセスにおける産学連携の状況の把握を進め ていくことで、我が国の産学連携政策の推進に向けた新たな知見の提供の可能性が期待される。

本研究では、我が国の大学の研究活動において企業がどのように関わっているのか、その実態を把握 するため、我が国の大学教員を対象に実施したアンケート調査(研究室パネル調査)の回答結果を用い て、国内企業との共同研究状況、研究プロジェクトに参画する民間企業所属の研究メンバーの状況、国 内企業からの研究開発費の獲得状況について試行的分析を試みた。なお、本発表は速報であり、暫定的 な集計値を掲載している。

2.分析手法・データ 2.1.分析データ

本分析では、研究室パネル調査の回答結果を用いる。当調査の詳細については、[5]を参照のこと。

分析対象とする回答結果は、ランダムサンプリング(以下、RS)された自然科学系の大学に所属する 教員の実施するプロジェクトのうち2016~2020年に終了したプロジェクト(1,454件)1である。なお、

本分析では、分析対象の回答データをもとに母集団推計した値を用いている。

2.2.分析事項

本分析では、研究プロジェクトに関する質問のうち、共同研究先、プロジェクト・メンバー、研究開 発費に関するものを用いて、国内企業との共同研究の状況、民間企業所属メンバーの状況、国内企業か らの研究開発費の獲得状況の分析を試みる。

国内企業との共同研究の状況については、共同研究の有無、関係性、役割の3つの視点から国内企業 以外との共同研究と比較分析を行なうことで、その特徴を明らかにしていく。民間企業所属メンバーの 状況については、メンバーの有無、立場、役割の3つの視点から民間企業非所属メンバーの状況と比較 分析を行なうことで、その特徴を明らかにしていく。国内企業からの研究開発費の獲得状況については、

主要な財源に国内企業からの研究開発費が含まれる割合をみていく。

1 分析対象となるプロジェクトの回答者の分野、職位はほぼ同程度であり、特定の属性への偏りはない。

なお、回答者の分野別内訳は、理学306、工学323、農学297、保健(医学)224、保健(歯薬学等)304である。職位 別内訳は、教授436、准教授・講師495、助教524である。

2B20

(3)

3.分析結果

3.1.研究プロジェクトにおける国内企業との共同研究の状況 我が国の研究者が実施する研究プロジェ

クトにおいて、国内企業との共同研究の状 況を把握するため、国内企業との共同研究 の有無、関係性、役割についてみていく2。 共同研究先のあるプロジェクトは全体の

64.7%であり、そのうち、国内企業を含む

ものは全体の14.0%である(図表1参照)。

国内企業と共同研究を行っている場合、

その相手先と知り合うきっかけとして、こ れまで面識がなく先方から連絡があった割 合が最も高くなっている(全体の 28.9%)。

国内企業以外の共同研究先との関係性と比 較して、国内企業の方が割合の高くなる関

係性は「これまで面識がなく先方から連絡」のみである。これらから、企業から積極的に関係性の構築 を図っていることが伺える(図表2参照)。

共同研究先に国内企業を含むプロジェクトのうち、国内企業の担う役割は、国内企業以外の状況と比 較すると、研究実施の割合が低い一方、資金調達、リソース提供の役割を担うプロジェクトの割合が高 くなっている。これらのことから、共同研究先となる国内企業は、資金調達、リソース提供の面で強く 研究プロジェクトに関わる傾向にあることが伺える。(図表3参照)。

図表2. 研究プロジェクトにおける共同研究先との関係性 (a) 国内企業 (b) 国内企業以外

22.4%

22.2%

10.3%

28.9%

5.8%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

面識有:研究室・研究グループ内 面識有:研究室・研究グループ外 面識無:こちらから連絡 面識無:先方から連絡 第三者紹介

該当プロジェクト数割合

43.7%

48.9%

16.4%

8.3%

14.0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

面識有:研究室・研究グループ内 面識有:研究室・研究グループ外 面識無:こちらから連絡 面識無:先方から連絡 第三者紹介

該当プロジェクト数割合

(※1)該当質問のRS有効回答(1,454)のうち、(a)は共同研究先に国内企業が含まれるプロジェクト(169)のみ集計対象とし、(b)は共同研究先に国内企業以外が含ま れるプロジェクト(875)のみ集計対象とし、母集団推計した結果。

(※2)共同研究先(最大3つ)のうち、該当する共同研究先を含むプロジェクトの割合を計算した結果。

(※3)「面識有:研究室・研究グループ内」には、過去に所属していた研究室・研究グループの上司や同僚、過去に自ら指導したことがある研究者が含まれる。

図表3. 研究プロジェクトにおける共同研究先との役割 (a) 国内企業 (b) 国内企業以外

81.3%

40.5%

46.8%

24.0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

研究実施 資金調達 リソース提供 その他

該当プロジェクト数割合

91.1%

20.2%

39.7%

24.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

研究実施 資金調達 リソース提供 その他

該当プロジェクト数割合

(※1)該当質問のRS有効回答(1,454)のうち、(a)は共同研究先に国内企業が含まれるプロジェクト(169)のみ集計対象とし、(b)は共同研究先に国内企業以外が含ま れるプロジェクト(875)のみ集計対象とし、母集団推計した結果。

(※2)共同研究先(最大3つ)のうち、該当する共同研究先を含むプロジェクトの割合を計算した結果。

(※3)研究実施には、研究構想、方法論開発、ソフトウェア設計・開発、実験・調査の実施、データ分析、論文執筆の役割が含まれる。その他にはプロジ ェクト管理、データ管理、その他の役割が含まれる。

2 当該研究プロジェクト実施に際して、直接的なやり取りを行った、回答者の所属する研究室・研究グループ外の共同研 究先3つまでの回答データを用いている。

図表1. 研究プロジェクトにおける国内企業との共同研究有無

国内企業 有, 14.0%

国内企業無, 50.6%

共同研究先 無, 34.3%

未回答, 1.1%

(※)該当質問のRS有効回答(1,454)を用いて集計。母集団推計した結果。

(4)

3.2.研究プロジェクトにおける民間企業所属メンバーの状況 我が国の研究者が実施する研究プロジェ

クトのメンバーとして、民間企業がどのよう に関わっているのか、その実態を把握するた め、民間企業所属メンバーの有無、メンバー の立場、役割についてみていく3

民間企業所属者が主要なメンバーとして 含まれるプロジェクトは全体の 4.1%である

(図表4参照)。

研究プロジェクトのメンバーの立場につ いて、民間企業所属者が主要なメンバーとし て含まれるプロジェクトのうち、民間企業所 属メンバーが教員の立場にあるプロジェク トは、(回答者との関係性が上位、同位、下

位に関わらず、)全体の3%程度、学生の立場にあるプロジェクトは全体の56.6%である。民間企業非所 属のメンバーの状況と比較すると、民間企業所属のメンバーは学生、その他の立場でプロジェクトに関 わることが多いことが伺える(図表5参照)。

研究プロジェクトのメンバーの役割について、民間企業非所属のメンバーの状況と比較すると、民間 企業所属のメンバーは研究実施以外の役割を担うプロジェクトの割合が低く、民間企業所属のメンバー は主に研究実施者として研究プロジェクトに関わっていることが伺える。(図表6参照)。

図表5. 研究プロジェクトにおけるメンバーの立場 (a) 民間企業所属メンバー (b) 民間企業非所属メンバー

3.6%

3.7%

4.5%

56.6%

40.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

教員(上位)

教員(同位)

教員(下位)

学生 その他

該当プロジェクト数割合

27.2%

28.4%

27.7%

57.2%

22.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

教員(上位)

教員(同位)

教員(下位)

学生 その他

該当プロジェクト数割合

(※1)該当質問のRS有効回答(1,454)のうち、(a)は研究メンバーに民間企業所属メンバーがいるプロジェクト(60)のみ集計対象とし、(b)は研究メ ンバーに民間企業非所属メンバーがいるプロジェクト(1,166)のみ集計対象とし、母集団推計した結果。

(※2)プロジェクト・メンバー(最大5名)のうち、該当するメンバーを含むプロジェクトの割合を計算した結果。

(※3)教員は、教授、准教授・講師、助教が含まれる。学生は、博士学生、修士学生、学部学生が含まれる。その他は、医局員、ポスドク、客員、研究 補助者が含まれる。

図表6. 研究プロジェクトにおけるメンバーの役割 (a) 民間企業所属メンバー (b) 民間企業非所属メンバー

96.4%

13.6%

12.0%

25.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

研究実施 資金調達 リソース提供 その他

該当プロジェクト数割合

96.9%

26.2%

16.5%

43.7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

研究実施 資金調達 リソース提供 その他

該当プロジェクト数割合

(※1)該当質問のRS有効回答(1,454)のうち、(a)については研究メンバーに民間企業所属メンバーがいるプロジェクト(60)のみ集計対象とし、(b) は研究メンバーに民間企業非所属メンバーがいるプロジェクト(1,166)のみ集計対象とし、母集団推計した結果。

(※2)プロジェクト・メンバー(最大5名)のうち、該当するメンバーを含むプロジェクトの割合を計算した結果。

(※3)研究実施には、研究構想、方法論開発、ソフトウェア設計・開発、実験・調査の実施、データ分析、論文執筆の役割が含まれる。その他にはプロ ジェクト管理、データ管理、その他の役割が含まれる。

3 回答者の所属する研究室・研究グループ全体において研究プロジェクトの実施で主な役割を担った、学部生以降のメン バー最大5名までの回答データを用いている。

図表4. 研究プロジェクトにおける民間企業所属メンバーの有無

民間企業所属メンバー 有, 4.1%

民間企業所属メンバー 無, 78.4%

メンバー無, 16.8%

未回答, 0.7%

(※)該当質問のRS有効回答(1,454)を用いて集計。母集団推計した結果。

(5)

3.3.研究プロジェクトにおける国内企業からの研究開発費の獲得状況 我が国の研究者が実施する

研究プロジェクトにおいて、

国内企業からどの程度、資金 提供を受けているのか、その 実態を把握するため、国内企 業からの研究開発費を獲得状 況についてみる4。主要な財源 に国内企業からの研究開発費 を含むプロジェクトは全体の 9.4%であり、我が国の研究プ ロジェクトにおいて国内企業 からの研究開発費を一定数獲 得していることが伺える。

4.おわりに

本分析では、我が国の産学連携政策の推進に資する知見の提供に向けて、我が国の大学の研究活動に おける企業との関わりの実態を把握するため、自然科学系の大学教員を対象としたアンケート調査のデ ータを用い、我が国の研究者が実施する研究プロジェクトにおける国内企業との共同研究の状況、民間 企業所属メンバーの状況、国内企業からの研究開発費の獲得状況について試行的分析を試みた。

その結果、研究プロジェクトにおける企業とのつながりに関し、いくつかの特徴が見えてきた。まず、

共同研究について、国内企業と共同研究しているプロジェクトは全体の14.0%であり、国内企業以外と 比較して、「これまで面識がなく先方からの連絡」が共同研究の重要なきっかけとなり、企業から積極 的に関係性の構築を図っていることが示唆された。また、国内企業以外と比較し、共同研究先となる国 内企業は、資金調達、リソース提供の面で強く研究プロジェクトに関わる傾向が見られた。次に、プロ ジェクト・メンバーについて、民間企業所属メンバーを含むプロジェクトは全体の 4.1%であった。民 間企業非所属メンバーの状況を比較すると、民間企業所属メンバーは学生、その他の立場でプロジェク トに関わる傾向が強く、研究実施以外の役割を担うプロジェクトの割合が低いことから、主に研究実施 者として研究プロジェクトに関わっていることが示唆される。最後に、国内企業からの研究開発費の獲 得状況について、主要な財源に国内企業からの研究開発費を含むプロジェクトは全体の9.4%であった。

以上の結果から、我が国の研究者が実施する研究プロジェクトにおいて、共同研究相手かプロジェク ト・メンバーか、企業の関わり方により役割が異なることが伺える。また、産学連携の共同研究におい て、企業から積極的に関係性の構築を図っていることが示唆された一方で、第三者紹介による関係性構 築の割合が少なく、今後、産学連携の仲介機能強化の必要性があることが示唆される。

本分析は、アンケート調査の回答を集計した記述統計による分析結果である。今後、本分析で示され た傾向が統計的に支持される結果であるか、さらに統計的分析を進めていく必要がある。また、分野や 教員の職位等の回答者の属性によって特徴的な傾向が見られるのか、深掘分析を進めていくことで、さ らに、我が国の産学連携政策の推進に向けた有益な知見の提供が期待される。

参考文献

[1] 内閣府. (2021). 第6期科学技術・イノベーション基本計画.

[2] 共創の場形成支援プログラム. 国立研究開発法人科学技術振興機構. https://www.jst.go.jp/pf/platform/index.html(2021年9月アクセス)

[3] オープンイノベーション機構の整備. 文部科学省.

https://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/openinnovation/index.htm(2021年9月アクセス)

[4] 文部科学省. (2021). 概要版 大学等における産学連携等実施状況について(令和元年度実績). [5] 伊神正貫, 松本久仁子, 山下泉 (2021). 研究室・研究グループ単位での大学の研究活動の把握(研究

室パネル調査):調査実施の背景と概要, 研究・イノベーション学会, 第36回年次学術大会

4 当分析では、当該研究プロジェクト実施に際して、これまでに利用した主要な財源のうち、研究開発費額による最大上 3つまでの回答データを用いている。

図表7. 研究プロジェクトにおける国内企業からの研究開発費の獲得状況

国内企業財源 有, 9.4%

国内企業財源 無, 84.3%

財源無, 4.8%

未回答, 1.6%

(※)該当質問のRS有効回答(1,454)を用いて集計。母集団推計した結果。

参照

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