富山短 期 大 学 紀 要 第37巻
リ カ
ア
ド
オ 国 際 経
済
理
論
に お
け
る
貿 易
の
利
益
Interest
of
Trade
in
David
Ricardo
’s
International
Economic
Theory
中
山
忠 行
NAKAYAMA
Tadayuki
1
.
はし がきリ カ ア ドオ の経
済
学は, 極めて 抽 象 的 な 外 観を まとっ てい た に もか か わ らず,
反 対に 極めて 具 体 的 な 時 代の 問題 と取
り組ん でい る。 すな わち.
実 践 的 な 問 題 意 識 を 備 えてい た。 リ カア ド オの 生 涯 は イ ギ リス産 業 筆命 とい う 嵐の50年
間 に あ っ た。 こ の こ とは,
イ ギリスが 大.
1
二場
制 度 を 中 心 とする近 代 産 業 国へ の完
全 な転 化お よび 産 業 資 本主義の 勝 利 を確
立する こ とによっ て,
旧 体 制を決定
的に克 服 し てい っ たことを 意 味 して い る。
そ し て,
フ ラ ン ス 大 革 命とナポ レオ ン戦争,
大 陸 封 鎖 等の 大事
件が連 続 的に 起っ た時
期であ っ た。
リ カア ド オの経 済 学はこ の ような.
世 界史
的な問 題の進 行を背 景 と し な が ら形 成さ れ てい っ たのであ る。一
リカ ア ドオ は多 くの原理 が商 品 を 生 産 する費 用 を 取 り扱 うとい うこ と を知っ てい た に もかかわ らず,
彼は労
働 費用 もしくは,
よ り正 確に は,
労 働 時 間に対
し て国 際 貿 易の 理論 を 結 合 させ た。
明ら か に, 価 値の 労 働 費 用の漸進 的な放棄
で もっ て,
国 際 貿 易の理 論は手 術 を 経 験 しなけ れ ば な ら な かっ た。 しか し リ カア ド オの 接 近は直 接に退 けられ な か っ た。 そ れよ りも,
その接 近は彼の後 継 者に よっ て拡 大さ れ かつ修
正さ れ たの で ある。 申 」リ カア ド オ は何 を もっ て貿 易の利 益と み なすので あ ろ うか。 リカア ドオは,
国 際 貿 易の利 益に関する問 題 を,
商 品の数 量 し た が っ て享楽
晶の 総 量増 加の 問 題,
消 費者
の享 楽 する効 用増加
の問
題と して取 扱っ て い る。
そ して,貿
易の 利 益 を ば 輸 入の面に求め よ うとする、、
すな わ ち,輸
人に よ る利 益 を 展 開 する。 「完 全 な自由貿 易制度
の も とで は,
各
国は 当然その 資 本 と労 働 を 自 国に とっ て もっ とも有
利と な る ような用 途に向 ける。 こ な か や ま た だ ゆ き 〔経 営 情 報 学 科 )の
個別的
利 益の追求
は, 全
体の 普 遍 的 利 益 とみ ごとに結 びつ い てい る。勤勉
を刺激
し,
工 夫 丿J
に報
い,
ま た自
然に よっ て賦 与 さ れた特 殊の 諸 能 力 を もっ と も 有 効に使
用する こ とに よっ て,
そ れ は労 働を もっ とも 有 効に かつ もっ とも経
済 的に配 分 する,
一一
一
方,
諸 生 産 物の全
般 的 数 量 を増 加 させ るこ とによっ て, そ れ は全 般の 利 益を普
及 させ,
そ して 利 益と交 通 とい う一
つ の 共 通の紐 帯 によっ て,
文 明 世界
をつ うじて 諸 国 民の普 遍 的 社 会 を 結 成 する。 ltt.
」「
占
典 派 経 済 学 者は基 本 的に成 長経 済学
の方向
を見定
めて い た し,
主 な 関 心 はい かに して 「諸 国 民の富 」が増 加 する か を説 明したのである。 産 出高
を増 加さ せ るこ とを説 明 するの に,
特 化 と分 業 が 特 別 な 注 意 を 与 えら れ てい た。労
働が手
工業 的 方 法に対立する もの と して細かい 職 分 によっ て特 化 さ れ た と きに,
い か に多 く
の ピン が 生産 する こ とが で きる か につ い て の ア ダム・
ス ミス の 描 写は広 く引用 さ れ,法
則 化さ れ たの で ある。 特化
と分業
の程度
は市
場の大 きさに依 存 して い た。 すな わ ち, 多 くの 市 場は か な りの 程 度 の 特 化 と分 業 を促 進 した だ ろう,, Ii.
」 そ して 「「諸 国民 の 富」
へ の外
国貿
易の 頁 献につ い て の質
問が起っ た。 そ れ は外 国 貿 易 が 市場 を拡 張 し特 化 と分 業か ら か な りの 利益 を与 えた という
こ と が はっ き りと現れて きた。 しか し な が ら,
どの よ う な 商 品が輸
人 さ れ輸
出 され るだろ うかを 示 すこ と と貿
易か ら どんな利 益を得る か を示 すこと が は っ き り と議 論の せい にするこ と が ま だ 必要であっ た。 発 展 的 な理 論は比 較 的 優 越の 法 則と呼
ば れ る。
/
”
1
」リカ ア ドオ は主 著 『経 済 学及 び 課税の原 理」 第
7 章
の冒 頭で次の ように述べ るこ とで 彼の 立場 を 明 確に してい る。 「外 国 貿 易の 拡 張は,
商 品の 数量し た が っ て享 楽 品の総 量 を増 大 させ る に はきわ めて有 力に貢 献 する であろうが, し か しけっ してた だちに一一
国の価値 額
を増
大 さ せ るもの で はない 。 すべ て の外国財貨
の価値
は, そ れ ら と ひ きか えに与 え ら れ る,
わ が国のh
地と労 働の生 産 物の 分 量に よっ て 測定
さ れ る か ら, わ れ わ れ は,
仮に, 新市場
の 発見に よっ て, わ が国の 財 貨の一
.
一
・
定 量 とひ き かえに外 国 財 貨の一
二倍 量 を取
得 する と し て も,
より大 な る価 値を得 ない であろ う。 も し も ある商 人が,1000
ポ ン ド の 額の イ ギリス 財貨
を購買
する ことに よっ て,
イ ギ リ ス市 場で1200
ポ ン ドで売
る こ とが で きる あ る分 量の外
国財貨
を取 得 しうる もの とす れば,
彼は,
彼の 資 本の この ような使 用 方 法に よっ て20
パー
セ ン トの利 潤を取 得 するであろ う。 しか し彼の利 得 も,
輸 入 商 品 の価 値 も, 共に, 取 得さ れた外 国
財貨
の分 量の多少
に よっ て増 減 すること はない であろ う。 た とえば,
彼 がブ ドウ酒25
樽 を 輸 入 し よ う と50樽
を輸
入 し ようと,
あ る時に は25
樽 が,
ま た 他の 時には50
樽 を 等 しく1200
ポ ン ドで売
れ る か ぎり,
そ れ は彼の利 益に はすこ しも影 響 しえ ない の である。 い ずれの 場合
に も.
彼の 利 潤は200
ポ ン ド,
す なわち 彼の 資 本に たい する20
パー
セ ン トに,
限定さ れ る で あ ろ う。 そ して いず
れ の場合
に も, 同一
の価 値が イ ギリス に輸 入 さ れる で あろ う。.
割「
一・
人 の立派な古
典 派 経 済 学 者が国 際 貿 易 理 論に 関 する貨 幣 賃 金 を 持 ち 込ん だ とい う ことが,
リ カア ド オの 国際貿
易の 著述 が 現 わ れ た後,
長 くは なかっ た。1830
年の 著 作で,
一
82一
富 山 短 期 大学紀 要第37巻 ナ ッ ソ ウ
・
シー
ニ オアは労働
生 産 性の 関 連 性 と貨 幣 賃 金にお ける相 違を説 明 する要素
と して・
定
の仕事
の不 愉 快 さを 強 調 した。 ジ ョ ン・
ス テ ユ アー
ト・
ミル は ま た輸
出貿 易
の 構 造に関 する貨 幣 賃金の 相 違の衝撃
の 認識 を 暴 露 し た。 シニ オア の論議
では,
ほ と ん ど100
年 後に タ ウ シッ グ に よ る か な りの苦 心にある ように,
輸 出 産 業の生産 性は多
くの 注 意が は ら わ れ た,す
な わ ちそ れ は経
済におい て貨 幣 賃 金の構 造の決定
に対
し てきび しい と考 えら れ た。
(私は輸
出 生 産 性の影 響 が 度 を越 した と思 う。).
雪リ カ ア ドオ が問 題 としてい るの は, 財 貨の数 量の増 加とい
う
こ と である。 そ し て,外
国 貿 易で あ れ 国 内 商 業で あれ, い っ さい の商業
が有 利 なの は,
生産物
の数
量の増加
であ っ て, 生 産 物の価値
の増加
で は ない の である。 比 較 生 産 費 説 は,
貿 易の成立を 説 明 する 理 論である。各
国が 比較
的労働
費 優 位 を もっ た 生 産に特 化 するのは,
絶 対 的に安 価な商 品の 生産に特 化す るこ とである か ら, 貿 易 は 財 貨の数 量 を増 加 する こ と に な る という
理 論で ある。 「占 典 派 経 済 学者達
は主と して成 長 経 済 学の方 へ方 向
を 見定
め た。
そ して彼 らの 主 な 関 心は どの ように し て 「諸 国 民の富 」が増 加 し た か を説 明して い た。増
加 し た 産 出 高の 説明 に おい て, 特 化 と分 業は特 別 な 注 意を払わ れ た。労
働が手工業
的 方 法に対 立 す る もの とし て機 能 を詳 し く述べ るこ と に よっ て特化
さ れ たと きに, い か に して多 く の ピ ンが生 産 さ れるか もし れない か につ い て の ア ダム・
ス ミス の描 写は広 く引 用 され そ し て概 括さ れ た。 特 化 と分 業の程度
は市場
の大 きさ に依 存 して い た。 す なわち,
より大 きな市 場は かな りの程 度の特 化と分 業を促
進 する か もし れない 。「諸 国 民の 富 」に対す る
外
国貿
易の 貢 献につ い て の 質 問が 生 じ た。 外 国 貿 易が 市場を 拡 張 し,
そ して特 化
と 分 業か らか な りの利 益 を ワ えた というこ と が はっ き りと現れ た の で あ る。
し か し な が ら,
そ れは はっ き りと議 論のせ い に す ること が 必要であっ た。 す な わち,
ど ん な商 品が輸
入 さ れ 輸 出 され る か という
こと と貿易
か らの 利 益 を 示 すこ とで あ る。
発展 し た理 論は比 較 的 優 越の法 則 と呼ばれる。刑
註
(
1
)SEYMOUR
E .
HARRIS
;International
andInterregional
Economics
.
McGraw
−HILL
BOOK
COMPANY
.
INC
.
New
York
Toronto
London KOGAKUSHA
COMPANY
,
LTD .
Tokyo
p,
20
(
2
)DAVID
RICARDO
;The
Principles
ofPolitical
Economy
andTaxation .
Everyman
「
sLibrary
,
London
New
York
デ ィ ヴ ィ ド
・
リカー
ド ウ全 集P
,
スラ ッ フ ァ 編M ・
H ・
ドッ ブ協 力第
1 巻経
済 学お よ び課
税
の 原理堀経
夫 訳156
頁。
雄 松 堂 書 店
(
3
)Richard
I.
Leight
〔)n;Economics
ofInternational
Trade .
P .
2
McGraw
−Hili
Book
Company
.
New
York
.
StLouis
.
San
Francisco
.
DUsseidorf
,
London
.
Mexico
.
Panama
.
Sydney
.
Toronto
K6gakusha
Ltd.
Tokyo
(
4
)Richard
I
.
Leighton
;Jbid
.
P .
2
Mcgraw −
Hill
Book
Company
.
New
York
Toronto
(
5
)DAVID
RICARDO
;Ibid
.
P
,
77
Everyman
’
s
Library
London
New
York
デ ィヴ ィ ド
・
リカー
ドウ全 集P .
ス ラ ッ フ ァ 編M ・
H ・
ドッ ブ協 力『
同書
」150 頁。
雄松
堂書店
(
6
)SEYMOUR
E
.
HARRIS
;Ibid
.
P
,
20
McGraw
−
HILL
Book
Company
.
New
York
Toronto
London
KOGAKUSHA
COMPANY
,
LTD
.
Tokyo
(
7
)Richard
I.
Leighton
;Ibid
.
,
P
.
2
McGraw
−
Hill
Book
Company
.
New
York .
St.
Louis,
San
Francisco .
DUsseldorf
,
London
.
Mexico
.
Panama
.
Sydney
.
Toronto
K
σgakusha
Ltd .
Tokyo
2 .
リ カア ドオ のシェー
マ につ いてか の有
名
な リカ ア ド オの シェー
マ は, イ ギ リス・
ポ ル トガ ル の 両 国 を 例に と り,
何れ もラシャ と ブ ド ウ 酒 を生 産し て い る が,労
働 費 用で は,
ポ ル トガ ル は何 れの財 貨の 生産 に お い て もイ ギ リス に絶 対 的に優 越 してい るが,
特にブ ドウ酒の生 産にお い て よ り大 な る優
越 を もっ てい る。 この 時におい て,
ポル トガル は ブ ドウ酒を,
イ ギ リス はラ シ ャ を 生 産 す るこ と に よ り, お 互い に その生産 物を交 換 するよ うにな る。
し た が っ て,
こ の貿
易 に よっ て, ポル トガ ルは 自国におい て これ を生産 する よ り も一
層 多 量の ブ ド ウ酒を取 得 する こ と に なる。 「占 典 派 経 済 学 者 達に よ れ ば,一一
国は相 対 的に僅
かの労
働で生 産 す るこ と がで きる一
商 品を輸出
し,
もしも 自国
で生 産 した ならば,
相 対 的に かな りの労 働 を 必要とする か も し れ ない 商 品 を 輸 入 する。一
定の商 品はすべ て の 国々 で同 量の労 働で 生 産 するこ とが で き ない。
好 都 合 な 資 源 は・
国 を 有 利に位 置 してい ない一
国よ り も少
な い 労 働で一
商 品 を生 産 するこ とに充て る。 例 えば,
地 面の近 くに石 炭 資 源 を もっ た一
国 は非常
に深い ところ にある石 炭 資 源 を もっ た一
国 以 ヒに1
トン につ きよ り少 ない労
働量
に向
け るこ とが必 要 だろ う。 II 」勿 論
,
気 温,
地 味,
水 利,
大 気等
特 定の自
然 的 な状況 の下 に ない と事
実 ヒ生 産で きな い 財貨
が ある。 リ カ ア ド オ は国 際貿
易の利 益 を,
財貨
の 種 類・
数 量の 増 加にある とみ な す。 す なわち,
特 定 量の 労 働 と資
本で よ り多種
,多
量の 満足 を獲得
する こ と がで きる か・
あるい は より少 量の労 働 なら び に資
本を もっ て特
定 種 類,特
定 量の満 足 を 獲 得 する ことに ある。 結 果と し て は,
財貨
の豊 富 と低 廉 とは消 費 者にとっ て有 利である。典 型 的に
資
本 主義貿
易は価格
の絶対
差に基い て行 わ れる ことになる。 生 産 可 能 な 財 貨 につ い ては, 自
国の財貨
の 価 格 が 低 廉で ある か ら 輸 出 する ことに なる し,
外 国の財貨
の 価 格 が 低 廉で あるから輸 人 するこ とにな る。 こ こか らの結 論と して,貿
易をする こ と か ら財 貨の数 量 が増加 し, 価 格の 下落 を もた らすこと になる。し か し乍ら, リ カ ア ドオの理 論 を検 討 した ときに は
,
こ れ と は異な る事情
がい ま一
一
・
つ 考 えら れ る。 そ れはその 国の生産 物と交 換に輸
入 さ れ る 財貨
,労
働 賃 金のそ れ に対 して費消
さ れ る とこ ろ の労 働者
の食物
その他
の生活
必 需 品の 場 合で ある。
何 故に問 題に なる か と言 えば,
こ の ような場 合に おい ては, 賃 金は下落し,
資 本の利 潤は上昇 する こ とに一 84 一
富 山 短 期 大 学 紀 要 第37巻 なる とい うこ と は; リ カア ドオの理 論か ら くる 必 然の結 果とい え る
。
利 潤 率は
賃
金の低
下以 外に は増 大 し ない し,
賃金の永 続 的低
下 は,賃
金が支 出 される 必需 品の ド落の 結 果 以 外 には生 じ ない と リ カア ド オ は『
経済学
及 び課 税の原 理 』で証 明 しよ うと努めて い る。 「
もしも外 国 貿 易の拡 張に よ り あ るい は機 械の 改 良によっ て,
労 働 者の食 物と必 需 品が低 減
さ れた 価 格で 市 場に もた らされう
る な ら ば, 利 潤は 上昇
する であろ う。 もしも,
わ れ わ れ が,
自 国の穀 物 を栽 培 し た り,
あ るい は労
働者
の 衣服
お よ び その他の必 需 品を製造
し た りするのでは な くて,
より安い価 格で こ れ らの商品
を われ われ に供 給 する こ と がで きる新しい 市 場 を 発 見す るなら ば.賃
金は低
下 し利 潤はE
昇 す る で あろ う。 しか し,
もしも外
国貿 易
の 拡 張に よ りある い は機
械の 改良
に よっ て,
より 安い 値 段で取 得さ れ る諸 商 品が,
もっ ぱ ら金 持によっ て消 費さ れ る諸 商 品で あ る な ら ば, 利 潤 率に は な ん らの変 更 も起 こらない で あろう。 た とえブ ド ウ酒, ビロー
ド ,絹織
物.
お よ び その他
の高
価 な 商 品 が50
パー
セ ン ト下 落 する と し ても,賃
金率
は影
響 を受 け ない で あろ う,
また その 結 果と して利 潤は ひ きつ づ き 不 変の ま まであ ろう。
そ
う
して み ると, 外 国 貿 易 は,
収 入 が 支 出 され る諸物
の 分 量と種
類 を増
加 し, また諸商
品の 豊富
と低 廉 とに よっ て,
貯 蓄と資 本の蓄 積と に刺 激 を与
え る か ら,
・
国にとっ て高
度に有 利である とはい え,
輸 入 さ れ る諸商 品が労
働の 賃 金が支 出さ れ る その種 類の も の でない か ぎ り,
資 本の利 潤を ひ き ヒげ る傾 向 を すこ し も もたない で あろ う。.
刊 註(
1
)Richard
I
.
Leighton
:Econornics
ofInternationai
Trade .
P2
McGraw
−
Hill
Bo
〔}k
company
.
New
York
.
St.
Louis .
San
Francisco .
DUsseldorf
.
London
.
Mexico .
Panarna
.
Sydney
.
Toronto
Kogakusha
Ltd .
Tokye
(
2
)DAVID
RICARDO
;The
Principles
ofPolitical
Economy
andTaxation .
P .
80
Everymam
ゴsLibrary.
London
New
York
3
.
賃 金 と利 潤につ い てリ カア ド オ に よ る と
,貿易
は諸 商 品の 数 量の,
したがっ て また,
享 楽 品の総 量の増加
に貢 献す る ところ甚
だ大 きい が,
決して即 時に は.
.
・
国 内の価 値 量を増 加 さ せ るもの で は ない。
然ら ば, 何 故に貿 易は生 産 物の 数 量の 増 加となるの か。 この解答
は,
リ カア ドオ の有名
な 比較
生 産 費説
で ある。 こ の理 論は,
比較 的労
働費
用優位
を もつ 生 産に特化
する とい うこと は, 結 局の とこ ろ,
絶 対 的に安 価 な 商 品の 生産に特 化 するこ とであ る。
そ し て,労 働費
用に よ る貿
易の方 向 と 貨 幣 費 用に よる 貿 易の 方向
と が一
.
一
致
する こ と を明確
に した もの である。 故に,
こ の理 論の必然 的 な 帰 結は,貿
易が 財貨
の 数量の増加
を斉
すこ と に な る という
こと である。 勿 論, こ の外に,
気 温,
地味,水
利,
大気等
という特定
の 自 然 的 状 況下で な け れば事 実上 生産 する こ との で き ない 財貨
が あ り, そう
い う財貨
が貿
易の 対 象になる。 した が っ て,
リ カア ドオ は国 際貿
易の利 益は財貨
の種 類 と 数 量の増
加 に ある とする。 そ こで,
結 果 と し て財貨
の 豊富
と低廉
は消 費 者に有 利で ある。 「貿 易 が行わ れ る
場
合に は光 景は変 化 する。各
国は あ る商 品の生産 を 増 加 し,
’
他の商 品の生 産 を 減 少 する か ま たは全 然 生 産 し なく
な る。
この こ と は恐らくは 各 国 が な お 生 産 を 続 けてい る商 晶の 生 産 費に作
用するであろう。
新しい 生産 費比率が確立せ ら れ るで あろ う、
この 新比率がなお外 国に存
する比 率と異 なっ てい るな ら ば,
貿 易 をさ ら に拡張
する こ と に よ っ て利 益が確立 せ ら れうる。 そ して これ が 再び各 国の生 産 費 比 率に作
用する。 その結 果 と して,
利 益を 生 じ る貿 易が行われ 尽 し た 場 合に は,
各 国の 生 産 費比率
は もはや外
国の 生産費
比率と は差 異 を もた な くなる とい うこ とに な る。 一
一
・
国は その 生産 費比率が外 国の 生 産 費 比 率と同 じ く なるまで各 種 商 品の生 産 を拡 張 また は縮 少 し, か くて発 生 し た余
剰 を 輸 出 し,
不 足 を 輸 入 すべ きである (ある部 面におい て は,
生 産は全 然放棄
せ ら れ る か も知れ ぬ。
そ して 貿 易 開 始 前に は国 内にお ける生 産 費 が 高 失 費につ くか ま た は生 産が不 可能
である た め に,
消 費 さ れ なかっ た商 品 が 輸 人 さ れる か もし れ ない.
1.
)、
,
リ カア ド オの
貿
易 論は,
比較 的 優 越をもつ 産 業に特化
する こ とは 財貨 1 単 位
を取 得 す る に 必要 な 費 用の低 減 を斉 らすこと に なるu これ は一
定 量の費用 で よ り多
量の 財貨
を獲
得 する こ と になる。「
利潤 率は賃
金の低 ドに よ る 以外に はけっ して増 大 し え ない 。 そ して 賃 金の 永 続 的 低 ドは,
賃 金が支 出さ れ る 必 需品の 下 落の 結 果と して以外に は起こ りえない,
とい うこ と を本 音 をつ うじて 証明するの が, 私の努
め て き た 点で あっ た。
.
到 い わ ゆ る,
外 国か ら 輸 人 さ れる財 貨が,
労 働 賃 金がこ れ に対 し て費 消さ れ る食物
その他
の生活必 需品で あ る 時におい て は,
賃 金は下 落 し,
利 潤 は 騰 貴 する か ら,
こ の ような国際貿易
は直接
的に そ の国の生産 者に とっ て有 利である。 リ カア ドオ は,
賃 金と利 潤 とは相 補 性 を もっ てい て,
一
一
方
の 騰貴
は他 方
の.
.
ド落に みちび き,
一
方の 下 落は他 方の騰 貴 をひ き 起 す 関 係にある と い うこ と を 意 味 する。
「1870年
代に イ ギ リス の経 済 学 者ケ ア ン ズは単 純 な 労 働 価 値 説に対
し て さ ら に進ん で異 論を高 く掲 げたu 彼はあ ちらこちら と仕 事 か ら仕 事へ と労 働の 移 動に おける制限 や制 度上 の 妨 げに よっ て保護
さ れ た1
グルー
プ が他の グルー
プ よ り よ り 高い 報 酬 を 受 け とる か もし れ ない とい うこ とを 指 摘 し たu賃
金は,
ゆ え に,労
働 時 間に一・
致 しない であろ う。
.
周註
(
1
)SIR
ROY
HARROD
;INTERNATIONAL
ECONOMICS
.
P
.
16・
17
DIGSWELL
PLACE
,
JA
MES
NISBET
&CO
.
LTD
,
CAMBRIDGE
,
AT
THE
UNIVERSITY
PRESS .
R
.
F .
ハ ロ ッ ド著 藤 井 茂 訳 ハ ロ ッ ド国 際 経 済 学 改 訂 版56
−
57
頁。 実 業 之 日本 社 版(
2
)DAVID
RICARDO
;The
Principles
c}f
Political
Economy
andTaxation .
p.
80
Everyman
’
sLibrary
.
London
New
York
P
,
ス ラ ッ フ ァ編MJH
.
ドッ ブ協力 第 1
巻経 済 学お よ び課 税の原理
堀
経 夫 訳
154
頁。雄
松 堂 書店
(
3
)SEYMOUR
EHARRIS
;Internati
〔〕nai andlnterregional
Economics .
p,
20McGRAW
一
富 山 短 期 大学 紀 要 第37巻
HILL
BOOK
COMPANY
,
INC
.
New
York
Toronto
London
KOGAKUSHA
COMPANY
,
LTD
,
,
Tokyo
4 .
穀 物の自由
貿易
につ い てリ カア ドオ は
穀物
の自由貿易
を 主張
する。穀物
の 自由貿 易
は,資本利潤
を高騰
さ せ, 穀 物の 輸人制 限は資
本 利 潤 を低
下 さ せ るこ とに な る。 したが っ て, 穀 物の 自 由 貿 易 を 主 張 する こ と か ら,
リ カア ドオも
ま た生 産者 ・資 本家本
位の見 地に立 脚 してい る と言
えよ う、
,
そ うである とす れば
,穀物
の輸
入制
限は何故
に資本利潤
を低
下 さ せ るこ とに な るの か。
リ カア ド オ に よ れ ば,穀物
の輸
入制限 が行わ れ る時に は, 富の 増 進 と 人凵増 加に よっ て, その食 物の 供 給を ば品質
の劣
れ るtl
地 に頼
ら な け れ ば な ら な くな る結
果 とし て, 食物の 供 給が 困 難 と なっ て しまい , その 供 給 さ れ る最 終 部 分の 生 産に一
層 多 量の 労 働 を 投下す るこ と が 必要となっ て し まい , この ために食物
の価 格
が騰
貴して し まうこ とに な る。し た が っ て, 限界土 地の
労
働 量が食 物の交 換 価 値 を 決 定 する。 食 物の騰 貴は,
労 働 賃 金の騰貴
とい う結
果 を 斉らす ことになる。 リカ ア ドオにおい て は,
財 貨の価 値の全 部 は,
一
つ は資 本の利 潤 を構 成 し,
他は労 働の 賃金 を構 成 するこ と になる 。 こ の価 値の一
構 成 部 分である労 働の 賃 金は どの ように して定 まるの で あろ うか。
「労 働は,
売 買さ れ,
そ して分量におい て増減
さ れ る。他
の すべ ての 物 と 同じく, その 自 然 価 格 とその 市場 価 格 とを もっ て い る。 1.
」労 働の 自 然 価 格は, 労 働 者を して, その 生
活
を維
持し, 増 減な くその種
族を永 続 さ せ る た め に 必要と さ れ る価 格である。労
働の 市 場 価 格は, 需要に対 する供給
の 自 然 的作
用 に よ り,労
働に対し て実 際に支 払わ れ る価 格で ある。 し た がっ て,
労
働の 市 場 価 格は, 結 局の とこ ろ,
労 働の 自然 価 格に一
致し ようとする傾 向を もっ て い る、
,
リカ ア ド オは, 貨 幣 価 格に変 動が ない としたなら ば,
賃金は.
一
二つ の原 因か ら騰 落を 免 れ ない と して,
次の二 つ を 挙 げ るの で ある。 「第・
に,
労 働の供 給 と需 要。 第二 に,
労 働 賃 金 が 支 出 さ れる商 品の価 格。嚠
刊 こ こか ら, 労 働賃
金 が費 消 され る諸 財 貨の最 大 部 分を占め てい る食物
の騰貴
は,
必然的
に労
働の自然価格
の高
騰 を導
くに 至 る。 リ カア ド オで は,労
働賃
金の騰貴
は利 潤の ド落と な る。
こ こ で,
下落す
る利 潤は限 界一
ヒ地に お け る農業資本
の利潤
だ けで はない。
農業資本
の.
般 利潤
は耕 作
の 限界
土 地に お け る資本
利 潤に よ り 規律さ れ る か ら して , 農業資
本の 利 潤一
般が低
ドす る。
農業 資
本だ けでは な く, 商工業
利潤
もそ うである。 資 本の利潤
・
般は全 く土 地に使 用さ れ る資本
の最後
の部
分の 利潤
に依 存 する。 故に,
ド落 するのは利 潤一
般 とい える。 耕 作の 改 善が行わ れず,
穀 物の 輸 入 が 制 限 さ れ るこ とに至 れば,
資 本の 利 潤 は 次 第に低 落の一
途 を辿 ら ざるを え な くなっ て しま う。 最 劣 等地の 耕作
の使
用 を 放棄
し な け れ ば,利潤
の低
下をき た す こと になる。 穀 物の貿 易 をば 白 由に して,
外 国か ら低 廉 な 穀 物 を 輸 入 する場 合には,
労 働の 賃 金は 下 落 して,
資 本の利 潤はL
昇 する。 資 本の利 潤が一
ヒ昇 すれ ば,
生産 者・
資 本 家 が 利 益 を得る ことに な る
。
その 限 り穀 物の白 由 貿 易は生 産 者・
資 本 家の利 益である。し か し乍ら, リカ ア ドオ はそ れ だ けの 理 由か ら穀 物の 自 由 貿 易 を 唱 えるの であろうか,
、
仮
に, リカ ア ド オ は利 潤が高騰
する とい う理 由だ け か ら穀 物の 自 由貿易
を 唱 える とし た なら, そ こ に は混交
してい るこ と に な っ て し まう
。 ところ が, リ カア ド オの穀物貿
易論
は奥
深いも
の が ある。 そ れ は穀物
を輸
入す
る こ と が労働者
の利 益 と矛盾
する ことにな り,
彼らの 利 益 を蹂躙
する もの で はあ り得
ない とい う考
えである。穀
物 を輸
人することを抑
制 す れば,
労 働の賃金
が騰貴
する。穀物
を輸
入するこ との制 限を撤寵
すれ ば,
労 働の賃
金 は下 落して しま う。
こ れ はい か な る意味
を もつ こ と に な るので あ ろう
か。穀物
の輸
入 を 制 限 すれ ば,賃
金は騰貴す
る こ と になる。 と こ ろ が,
この場合騰貴す
るの は貨幣 賃
金 とい うこ と で あ り,穀物賃
金は減
少 すること に な る。
リ カア ド オ は述べ る
。「
小麦 1
クォー
タ につ き4
ポ ン ドの と きに,労働 者
の賃
金は年
に24
ポ ン ド, すわ ち 小麦 6
クォー
ター
の価値
で あ る , と仮定
し, ま た彼の賃
金の半
分が 小麦
に支
出さ れ,他
の 半分
, すな わち12
ポ ン ドが,他
の 諸物
に支 出さ れ る, と仮定
し よ う。彼
は, 4ポンド4シリング8
ペンス24
ポンド14
シ リング583
クォー
タ小麦が
4ポン ド10シ リング
のときは
25ポンド10シ リング
す なわち
5
・
e6クオー
タの価値を
4
ボン ド16シリング 26ポンド8シ リング 5.
50クa一
タ5
ポンド2
シリング10
ペンス27
ポンド8シリング6ベンス 5.
33クt一
タ 受 けと るであろ う。彼 が 受 けるこれ らの 賃金 は
,
そ れ に よっ て彼が,
以前
と ち ょ うど同じ程 度の生活
を す る こ と が 可能 と な る だ け であっ て, よ りよい 生 活 を するこ とは で きない であろ う。
とい うわ け は, 穀 物が1
ク ォー
タにつ き4
ポン ドの と きに は,
彼は3
クォー
タの 穀 物に たい して,1
クォー
タにつ き4
ポン ドで……… ……12
ポ ン ド そ して他の 諸 物に たい して…………・
……・
………・
…… ……12
ポ ン ド24
ポ ン ド を 支 出 する であろ うし,
小 麦 が4
ポ ン ド4
シリン グ8
ペ ン ス の ときに は,彼と彼の家 族が消
費
する3
クォー
タ は……・
…一 ……・
……
12
ポ ン ド14
シ リング価 格の変 更 し ない
他
の諸物
は…・
………・
……・
……・
・
………・
12
ポン ド24
ポ ン ド14
シリングを 要 するで あろうし
,
4
ポ ン ド10
シ リン グ の と きには,3
ク ォー
タ の小 麦は……13
ポ ン ド10
シ リン グそ し て
他
の 諸 物は・
・
…・
…・
………・
・
………・
・
………・
…12
ポ ン ド25
ポ ン ド10
シ リン グ を 要 するで あろうし,
4
ポ ン ド16
シ リン グの と きに は,3
クォー
タの 小 麦は・
…・
・
14ポ ン ド8
シ リング一 88 一
富 山 短 期 大 学 紀 要第37巻
他の
諸物
は…・
……・
… ……・
………・
………・
・
…12
ポ ン ド26
ポ ン ド8
シ リング5
ポン ド2
シリング10
ペ ン ス の ときに は,3
クォー
タ の小麦
は…………15
ポンド8
シリング6
ペ ン ス他の諸 物は
・
・
………・
……… …・
・
………・
…12
ポ ン ド27
ポン ド8
シ リング6
ペ ン スを要 する で あ ろ うか ら である。
穀 物が
高
くな る に比 例 して, 彼 はよ り少 ない 穀物賃
金 を受
け とる であろう。
しか し彼 の貨 幣 賃 金はつ ね に増
加 するであろ う。 そ れにたい して,
前 記の 仮 定に よれ ば,
彼の 享 楽 品は ま さに 同・
であろう。 し か し, 他の諸 商 品の価 格は原生産 物が そ の構
成に参
加 す る に比 例 して ひき ヒげ ら れ る であろうか ら,
彼は これらの なかの若 干の もの に たい し て, よ り多 く を 支 払わ なけれ ば ならない であろ う。 判 した が っ て,穀物
の自由貿易
は, 生 産 者・
資 本 家の 利益 で あ る が, だ か ら とい っ て,穀物
の 自 由貿
易は労 働 者の 利 益 と矛 盾 して い る と は言え ない のである。 換 言 す れば,
生 産 者・資
本 家の 利 益 と労
働者
の 利 益と は,低廉
な穀
物 を 外 国か ら輸 入 すること につ い て は両 立 することになる。 勿 論,
消 費 者 につ い て は な ほの こ と と言 える。 そう する と,穀
物の 自 由 貿 易に よっ て不 利 益 を 蒙るの は誰であろ うか。 地主で ある と リ カア ド オ は言 うのである。リカ ア ド オは
,
地 代と は「
大 地の 生 産 物の う ち,
土 壌の本 源 的で不 滅 な力
の使
用に た い して地 主に支 払わ れ る部 分で あ る。/
a/
」と述べ る。 土地の使 用に対
して 地代
が 支 払わ れ るの は,
ヒ地は量に おい て無
限 で は なく, 質に おい て均.
一
では な くて,
位 置に おい て 便 不 便がある か ら とい え る。 したが っ て,
「資 本は む しろ旧 地に使
用さ れ, そ し て同 様 に地 代を創造
する であろう,
とい うのは,
地 代はつ ね に二つ の相等
しい 分 量の資 本と労 働の 使 用に よっ て取
得され る生 産物 間の差 額だ か らである。 t” 1 」 豊饒で便 利 な位 置を占 めてい る 土 地 が増殖
する人日 に対 する食 物生産の ため に 必要と さ れ る程 度 以上に 豊 富に存在
し てい る場 合や資 本 と労 働が旧上地に対
し てすこ し の減 収 も な しに無 際 限に投 下 す るこ とが できる とする場 合におい て,
地代と 地代
の 騰 貴はあ り得 ない 。実 際
,
土 地は有 限で 品質
に は差 等があるだ けで はな く,
位 置が どの ようで ある かで非常
に利 便 が 違 うこ とであ る。
そ して,
土 地 は収 穫 逓 減 法 則に左 右 され る こ と か ら,社会
が 発 展 してい く上 に おい ては, 最 も肥 沃であっ て,
最 も 有 利な位
置 を占
め る 土地が最 初 に耕 作 され ること に な る。 第二 の 豊 度 と 利 便 を もっ た:.
ヒ地 を 食 物が不 足 する解 決 策と し て,耕作
の拡張
をは か るこ とに よっ て,
第一
と第二 の 土地に おける収穫物
の差額
もしく
は収 穫物
の価値
の 差額
が地 代 と なるの である。 そ して,
第二 の土 地 を耕 作
するこ と に よ っ て,
第二 の土地に おい て も地代の発生 をみ る にお よん で,
両者
の収穫 物
の差額
, ある い は収 穫 物の価値
の差 額が その地代
と なるのである。 こ こか ら,
第.
.
・
の.
土 地の地 代はそ れ だけ 騰貴す
る に至る。土 地 の 生 産 物の交 換 価 値は
,
他の一
切の 貨 物の 交 換 価値
と同 じ よう
に,
こ れ を 生 産し て市 場に運 び 入 れるた めに は,
種々 の形態
で 必要 と さ れ る ところの 総労
働 量 を も とに して決 定さ れ るこ と か ら し て
,
品質
と位
置が劣っ て い る 土地が耕 作 されてい くに したが っ て,
あるい は 同一
の 土 地 に投
下 さ れ る とこ ろ の 追 加 労 働量 を多 くする こ とか ら,
原生 産 物の交 換 価 値は次 第に騰 貴 してい か ざるを 得 な くなる。 こ の場 合に おい て は,
原生 産物
の交換価他
を決定
する ものは, 最 も不 利 な事
情の 下におい て生 産 を継 続 する者が投 ドす る よ り 大 な る労
働 量 で あ る,
限 界土地の 生産 物に投 ドされる労 働 量,
そ うで な けれ ば 同一
の ヒ地につ い て で あ れ ば,
その最 終 部 分の収 穫に投 ドさ れ る ところの労
働 量とい うこ と になっ て くる。 だか ら して,
原 生 産 物の比 較 的に価 値が騰貴
し ていく
理由
は, その 取 得 され る限 界.
−
ll
地の生産 物,
あ るい は最 終 的 な 部 分の生 産 物に対し て・
層多 く
の労
働が 投 下 さ れる か らで ある とい える。 「そこで原 生 産 物の比 較 価 値が騰 貴
する 理由
は,
取 得 さ れ る最終
部 分の生産に よ り多 くの労 働 が 使 用 さ れる か らであっ て,
地 代が 地主に支払
わ れ る か らでは ない。
‘
T/.
i
そ して,
「穀 物の価 値は,
なん らの 地代 も 支払
わ ない質
のL
地 に おい て, またなん らの地 代 も 支 払わない 資 本 部 分 も 用い て,
その生 産に投下 さ れ る労
働量 に よっ て左
右 され るの で ある。 穀 物は地 代 が 支 払わ れ る か ら高い ので は な くて,
穀
物が高
い か ら 地代
が支
払わ れ るの である。」
71 」この ように して
,
自然は その贈 与
に過 度に ものお しみする につ れて, その労
働に対
し て 層 の高
い価
格を要 求す るこ と に な る。 地 代の騰 貴は,
その 国の 人口が 増 加 するこ と に対 し て食 物の供給
が困難
と な る こ と か ら 生 じ る。 生産 収 益が より小 な る ⊥ 地へ の 追 加 資 本の投 下 を 必 要 とする につ れ て,
その 追 加資
本の各
部 分ご と に は 地代が騰 貴 する、
, 社 会の 事情によっ て は,
か りにも 同 額の資 本 を ヒ地 に投下すること が不必要に なっ て くる が故
に,
その最 後に投 下 され る部 分 をば 層 生産 的 な ら しめる もの は,
地 代 を ド落せ し め るこ とに な るであろう。
農業 .
ヒの 改良
とか穀 物の輸 入の 場 合が そ れである。 と も か く も, 穀 物が高 価で あ る か ら して地 代 が 支 払われるのである。 そ し て穀 物 価 格 を決定
するの は あの 最 大労
働で 生産 される穀 物で あっ て,
地 代 は その価 格の構 成 要素
の 中に入 らない し, ま た 入 れ て は な ら ない もの で ある か ら に は,
地 代 を 負 担 す るのは.
・
般 消 費 者 とい うことになる。
こ こ か ら して,
地 主と一
般 消 費 者は利 害が対立する の は 明 ら かで疑 う余
地が ない とい える。地 代は生 産 物の価 格に よっ て規
定
さ れ る し, 必ず
とい っ て よい ほ ど消費
者の負
担 にな る もの で ある。 地 代のい かなる部 分 を も 農 業 生 産 者は攴 弁 する もの と は言 えない 。 農業
生産 者は地 代の騰 落に無 関 心で ある こ とになる。
こ の ように結 論 することは正 しい と は 言 え ない 。 そ れは農 業生産 者 も また地 代 を騰 責 させ ない し, む しろ生 産 物の 自 然 価 格 を 騰 貴 させ ない とい うことに明 確に利害
関 係 を もっ て い る。 という
の は,農業
生 産者
もま た原生巌 物 が その構 成 要 素と して入 り込 む 諾 貨 物の 個 の 生 産 者と し て, すべ ての 他の 消 費 者と ともに,
価 格 が 騰 貴 しない こ とによっ て利 益 を得るこ とに なる。 農 業 生 産 者 が 穀 物の 高 価 格に対 して重 大 な利 害 関 係を もつ の はなぜ か と言 えばそれ が賃金に影 響を 与 え る か らであ る。穀物
の価
格が騰 貴す る こ と は,
必ず 賃金の騰 貴を もた らすこ とにな り,
賃
金 に 比 例 して農 業生 産者の 利 潤は 逓滅 してゆ くの で ある。
し た がっ て, リ カア ドオ は,一
go一
富山 短期 大学 紀 要 第37巻 地 主 と 農 業 生 産 者 と もはっ き りと利 害が対立する もの と結 論づ けるの で あっ た。 そして
,
一
般 商工業 資 本の利 潤は農 業 資 本の 利 潤に依存
してい るの で,
地 主と商
工業 者
も 利害
の 対 疏 を招 くこ とになる。労 働 者につ い ては どうで あろ うか。 穀 物が高 価となる に し た がっ て ,
労
働者
の取得
す る貨
幣 賃 金は多 くなるけ れ ども,
その 支 配 し得る 生 産 物の数 量は減 少 する ことに なる。 そ してその 実 質 賃 金は低 下 するこ と か ら,
境 遇の悪 化をもた らすこ と に な る。
し か し,
地 主は どう
であろ うか。 地 主は, 穀 物 が 高 価 となる に し た が っ て,
明白
に 二重
の利益
を得
るこ と に な る。 第.
一
に,
地 主は地 代 と して よ り多 くの穀 物 を納める。 第二 に は,
その穀物
の一
定
量は前 よ り も 多 量の他の貨 物 と 交 換 するこ とがで き る。 したがっ て,
賃 金の 騰貴
と 地代
の 騰 貴の 間に本 質 的 な 差 異 が あるこ とにな り,
労 働 者と地主に おい て も,
明 白にそ の 利害
が対
立するこ と に なる。 穀 物の騰 貴は資 本 家 階 級と労 働 者 階 級の犠 牲の も と に, 地主 を 利 する もの である。 穀 物の下 落は地主 に とっ て は不 利で ある が,資
本家
階 級 と労 働 者 階 級 は 何 れに おい て も恩 恵を受
ける結 果と な る。
し た がっ て,外
国か ら穀物
を 自 由に輸 入 するこ と になれ ば,
地 毛は不 利 益に な り被害
を蒙
る こ とになる、 「リ カ ア ドオ が 最 初のそ して顕 著 なメンバー
の一
一
人 で あっ た,
イ ギ リス古
典学派
の経済学者
達は い くつ かの 共 通の特
色 を もっ てい た。
彼らの 中の一
人は労 働の 国 内 価 値 論であっ た。 古 典 学 派の経 済 学 者 達は・
国 内の 商 品価
格が そ れ ら を得
る た め に 必 要と した相対
的労
働 量 に 比例 して い た ところの 主 張に結 束 した。 しか しな が ら,
彼 ら はこ の理 論 が 労 働 と資 本 が異 なれ る諸
国問
で不動
で あっ た が 故に国 際 価 格 関 係の場 合に応 用で き た と考 え たの で あ る。
こ の 点で,
そ れ らが 国 内 的 範 囲か ら国 際 的 範 囲に応 用で きた ときに,
価 格 決 定に対
する費用の 接 近は不1
’
分 なこ と を証 明し た。
し か し な が ら, 占
典 学派
は,
し ば し ば彼
らの分析 を現 実の条 件 と抽 象 的 な 価 格に言 葉で表わすこ と に よっ て, よ り直 接 的に経 済 的 安 寧の諸 問 題に よ り直 接 的に関 連 さ せ る こと が で きたので あ る。
こ れ は同 時に彼らの 優 柔 不 断と強みで あっ たの である。L
頻
以 上の見 解か ら して
,
リ カア ド オ は,穀物
を輸
入するこ と を制限 し てい る政策
をお し の け ようと攻撃
して,
穀 物 貿 易の 自 由 を 主張 する。
リカア ドオ は,
単に生 産 者の 利 益で ある か ら とい う理 由で , 穀 物貿
易の 制 限を撤
廃す るべ き だ と主張
し てい るの で は ない 。 低 廉な穀物
の輸
入 は,労働者
の利
益で あ り,般 消 費 者の利 益に なる とい う。 穀 物 貿 易 の 利 益は全
体
の利
益 という
立場
か ら の把
握が なさ れ てい る。 穀 物貿
易におい て は, 消 費 者,
生 産者
お よ び労 働 者の 問に利 害の 融 合 が ある とい うの がリカ ア ドオの 主 張で あっ た。 リカ ア ド オ は,穀 物貿 易
の 制限 か もしくは穀 物貿
易の 自 由か に 関する 問 題 をば, 地 主の 為か, もしくは消 費 者,
生 産 者お よ び労
働 者の為か とい う 問 題 とし て提 起 したのはこ の ような理 由か ら であっ た。 リ カア ドオが 穀 物 貿 易の撤 廃 を 主 張 したの は,
消 費 者,
生 産 者 およ び労 働 者の問に は完 全に利 害の融 合 が ある とい うこ とである。 利 害が相 反 するの は地主で あっ た。 し た が っ て,
穀 物 貿 易を制 限 する か自
由にする か につ い て の 問 題は,
結 局の とこ ろ,
地主の為
か, もしくは消 費 者, 生 産 者お よ び労
働 者の為
かの 問題 に 関する議 論に最 終 的に落 ち 着 くこと に なる。 こ こ に おい て
,
後 者の利 益を図ら ん が た め に穀 物 貿 易の制 限 を撤 廃 するべ きで ある という
主張
であっ た。こ の立場の堅 持は
,
穀 物 輸 出 奨 励 金の是 非につ い て も 同じで ある。 リ カア ド オ は穀 物 輸 出 奨 励金制 度に対して 反対の立場
を と る。
そ れ は,輸
出奨
励 金の交付
が穀物
の貨幣価
値
の騰 貴 を も た らすか らである。 何 故 な らば,
当 該 国の穀 物に対 する外 国の需 要 増 加 は,
その市 場 価 格 を して 自 然 価 格 以 ヒに騰 貴 させる からで ある。 註(
1
)DAVID
RICARDO
;The
Principles
ofPolitical
Economy
andTaxat
三〇n,
p、
52
Everyman
’
sLibrary,
London
New
York
デ ィヴ ィ ド
・
リカー
ドウ全 集P .
ス ラッ フ ァ 編M
,
H
.
ドッ ブ協 力 第1
巻 経 済 学 およ び課 税の 原 理 堀 経 夫 訳
109
頁。 雄 松 堂 書 店(
2
)DAVID
RICARDO
;Ibid
.
,
p.
55
Everyman
’
sLibrary
,
London
New
York
デ ィ ヴ ィ ド
・
リ カー
ドウ全集 P
ス ラッ フ ァ 編MH .
ドッ ブ協 力『
同書
』堀 経
夫 訳
114
頁。 雄 松 堂 書 店(
3
)DAVID
RICARDO
;Ibid.
,
p.
52−53
Everyman
’
sLibrary.
London
New
York
デ ィヴ ィ ド
・
リ カー
ド ウ全集
P
ス ラッ フ ァ編M
.
H
.
ドッ ブ協力 『
同書』
堀
経
夫訳 120−122頁
Q雄松
堂 書店
(
4
)DAVID
RICARDO
:Ibid
,
,
p,
33
Everyman
’
sLibrary.
London
New
York
デ ィ ヴ ィ ド
・
リカー
ドウ全 集P
ス ラッ フ ァ 編M ,
H .
ドッ ブ協 力 『同 書 』 堀 経夫 訳
79
頁。 雄 松 堂 書店(
5
)DAVID
RICARDO
;Ibid.
,
p,
36
Everyman
’
sLibrary,
London
New
York
デ ィ ヴ ィ ド
・
リ カー
ド ウ 全集P
ス ラッ フ ァ 編MH
,
ドッ ブ協 力『
同書
』堀 経
夫 訳
84
頁。 雄 松堂書店
(
6
)DAVID
RICARDO
;Ibid
.
,
p.
38
Everyman
’
sLibrary,
London
New
York
デ ィヴ ィ ド
・
リ カー
ド ウ全集
P
.
ス ラッ フ ァ編M
.
H
,
ドッ ブ協 力 『
同書』
堀経
夫 訳
87 頁
。雄松
堂 書店
(
7
>DAVID
RICARDO
;Ibid
.
,
p.
38
Everyman
’
sLibrary
,
London
New
York
デ ィヴ ィ ド
・
リカー
ドウ全 集P
ス ラッ フ ァ 編M .
H .
ドッ ブ協 力 『同 書 』 堀 経夫 訳
87−88 頁
。雄松
堂書 店
(
8
)Stephen
Enke
.
Virgil
Salera
;International
Economics
.
p.
577
Prentice−Holl.
Inc .