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川の近くで? ローザが言った うん! クリスティはそう言うと 母親に向かって言った ママ 山のほうに行ってくる! ふたりとも 気をつけるのよ 母親が言った ありがと クリスティが言った 彼らは 歩いて川まで着いた 川の水面は輝いていた 朝の陽光を受けて きらきらと輝いていた 薄 紅色をした薔薇がロー

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Academic year: 2021

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聖なる水

ローザが目覚めたとき、涙はもう消えていた。枕は湿っていたが、彼女は、素敵な朝を迎えた。彼女は、 朝食の準備にとりかかった。水瓶を持って小川へ行くと、それを満たし、馬上の通りすがりの者に会釈を した。 彼女の名を呼ぶ者がいた。クリスティとその兄で、隣人だった。ふたりは、塀越しに彼女に手を振って、 大きな声を出していた。 「ローザ、こっちに来て-! おじいちゃんからの伝言だよ。」 「おじいちゃんから?」彼女は不思議に思った。 ローザの祖父は同居していたため、伝言など残す必要などなかったのである。 「なにそれ。」ローザが言った。 ホワイトマウンテンに行ってくる。ここで馬を借りていく。心配無用。正午には戻る。朝食はいらない。 「なんで言ってくれなかったんだろう。」ローザが言った。 「たぶん、心配かけたくなかったんだよ。」クリスティが言った。「もう朝食はすませた?」 「ううん。まだ。」 彼女は祖父の心配をしていた。彼は、光を失いつつあった。言い換えるならば、彼の目は見えなくなっ てきていた。朝食は一緒だった。ローザは、味のしないごはんを食べた。 皿を洗い終えると、クリスティはローザにたずねた。 「何考えてるの? おじいちゃんのこと?」 「うん。」彼女は、事細かな話は告げずにおいた。 「そんなに心配なんだったら、ついていけばいいのに。」クリスティが言った。 「それいい! でもどうやって? お馬さん、ここで借りちゃったんだよ。」ローザが言った。 「誰かに乗っけてもらえばいいよ。」クリスティが言った。

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「川の近くで?」ローザが言った。 「うん!」クリスティはそう言うと、母親に向かって言った。「ママ、山のほうに行ってくる!」 「ふたりとも、気をつけるのよ。」母親が言った。 「ありがと。」クリスティが言った。 彼らは、歩いて川まで着いた。川の水面は輝いていた。朝の陽光を受けて、きらきらと輝いていた。薄 紅色をした薔薇がローザのために植えてあった。祖父母によるものだった。 「もっと強くなんなくちゃ。」ローザはひとりごとを言った。 彼女は、泣きたかった。祖父の言葉が耳から離れなかった。「ローザ、目が見えなくなってきた。」 「おじいちゃんはね、もうすぐこっちに来るのよ、ローザ。」両親の写真からのしらせだった。 「いや。ひとりにしないでー。」ローザが言った。 ローザが川辺でじっとたたずんでいる頃、祖父は、街からの来訪者を探していた。 旅人から、うわさを耳にしていた。『白装束の男は、本当にいろんなことを知っている。第六感があっ て、奇跡を起こせるという。聖なる水を求めて、北へと旅をしている。ホワイトマウンテンの近くにある らしい。』 ホワイトマウンテンに聖なる水があるなどという話は、誰も聞いたことがなかった。 ローザの祖父は、生きるつもりでいた。孫娘の世話をしてやる必要があったのだ。彼女の両親は、彼女 がみっつのときに他界していた。 なんとしてでも、街から来た男に会わねばならなかった。 エメラルドタブレットによれば、その水はすぐ近くにあるはずだった。核心に近づくほどに、石から放 たれるオーラは増していった。波動を見れば、同じ光からきているのがわかった。 「よし。」男は言った。「絶対にこの近くだ。」 突然、馬のひづめの音が聞こえてきた。彼は、振り返った。馬に乗っている男性が、かつて会ったこ とのある人だとわかった。「こんにちは。たしか、以前、どこかで。」街から来た男が言った。

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敵ではないことはわかっていた。 ローザの祖父が彼に微笑みかけた。顔が、しわくちゃになった。 「やはりあなたでしたか! おひさしぶりですなぁ。」ローザの祖父が彼に言った。 「ごめんなさい。思い出せないんです。よろしければお名前を・・・。」 そこまで言った瞬間に、彼は、その顔が誰であるかがわかった。 彼らが出会ったのは、いちばん寒い冬のことだった。10 年前の一月だった。街から来た男は、家の前に 馬を停めると、一晩貸してくれないかと頼んだ。ローザの両親と祖父は、親切にも、彼に食糧と温かい毛 布を差し出した。 彼は、孫娘の誕生を予言していた。ひとりの少女が、山の氷が溶ける頃には、宿主の孫娘になるのがわ かっていた。彼の話は、以下のようなものだった。 「塀と 3 人の子供たちが見えます。ひとりは、片手に水瓶を持っていて、あなたにとてもよく似ていま す。孫娘さんじゃないかな。同じ瞳です。5 月か、6 月くらい。山の冠雪がほとんど見えないから。」 「それはいいですな。彼らの間に赤ん坊を待ち望んでいるからね。」彼らは微笑んだ。 「あなたにお願いがある。」ローザの祖父は言った。「わしの目に奇跡を起こしてはくれないだろうか。」 「目に? ちょっと見せてくださいね。」 すると突然、彼にはすべてのことが理解できた。 「そうそうそう! ここで待っていてください!」彼は、嬉しさのあまり叫びたかった。 「ローザっていう名前の女の子はご存知ですか?」街から来た男は言った。 「クリスティ? 2 頭のお馬さん、見える?」ローザが言った。 「うん。いたー! あの 2 頭の馬の近くで停まって。」クリスティが言った。 旅人がうなずいた。

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「おじいちゃん! 起きる前に言ってよー! すごい心配したんだから。」ローザが言った。 彼女は、彼の両腕の中で泣いていた。 ひとりぼっちにはまだ小さすぎるなと旅人は思った。 「おじさん、何やってるの?」クリスティーが言った。 「しーっ。涙を集めてるところだよ。」街から来た男が言った。 彼女の涙の一滴が、彼の手のひらを濡らした。そして、その輝きは、エメラルドタブレットのものと同 じだった。 彼は、彼女の涙の一滴で石を濡らした。 その石は、輝きはじめた。そして、街から来た男は、それがどこからきているのかを知った。 「ほら、見えますか。とっても小さなピンクの薔薇の花があります。掘って、よく面倒を見てあげてく ださい。毎日、水やりをするのを忘れずに。」 「すると奇跡が起こるのかね。」老人が言った。 「まちがいないです。」 毎日、毎晩、ローザは、祖父のために祈りを捧げた。彼女は、小さな薔薇に語りかけた。川から持って きて水やりをした。 ある日、薔薇の花が大きくなったとき、彼女は、両親の声をふたたび耳にした。 「ローザ、おじいちゃんの面倒はよく見るのよ。よくなってきてるからね。」 「ママ!」ローザが言った。「おじいちゃん、連れてっちゃダメ-!」 「もう来たわよ。あなたも一緒だったじゃない。」

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両親は、街から来た男の手紙に従って、ホワイトマウンテンの近くにピンクの薔薇を残しておいたのだ った。 いつか、娘さんが大きくなったときに、山へおじいさんを探しに出かけるでしょう。彼女には、おじい さんがあなたがたのところへ来ることになっていると伝えるのを忘れずにいてください。僕は、それに向 けて準備をします。 「ローザ? どこにいる?」祖父が言った。 「バラさんの前。」ローザが言った。 街から来た男は、意識を集中させると、彼女の両親と話をした。そして、どうしてもう一度、自分がロ ーザの家へやってきたのかという理由を知った。 「よし。」街から来た男が言った。 「どうやら、到達したいと思っていたところまで辿り着いたみたいだ。」そして、彼は手紙を残した。 すべてのものに対して目を開きなさい。目の前に見えるものだけでなく、自分の心から出ている光にも。 その光を、一緒に見つけた薔薇と同じくらい大切にするんだよ。おとうさんとおかあさんはいつでもどこ でも、君が探せばいつでもいるだろう。おじいさんは、君のそばから離れていかないからね。 そして彼は、この文を付け足した。 大きくなって、結婚して、ふたりの息子が生まれても、おじいさんはまだ生きてるよ。 彼の言葉は、その通りになった。 彼は、名前をエリヤと言った。そして、彼の言葉は実現した。それこそが奇跡だったのだ。 ローザは、幸福な人生を送った。両親と、祖父と、二人の息子たちに囲まれて。 毎年、雪の溶ける初夏になると、小さな薔薇を目にすることができた。ローザは、とてもよく面倒を見 て、いまでも祖父のために祈っていた。 彼は、命あるかぎり、その目の光を失うことはなかった。

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