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日本語教育学講座研究会 2010 年 10 月 29 日(金) 日本語会話に見られる質問表現の機能の男女差 日本語教育学講座 M2 小山 友里江 1. はじめに 本研究では日本語母語話者の「質問のパターン・形式・機能」の特徴を明らかにし、男女差・共通 点が見られるかを明確にする。 2.先行研究 2.1 質問 南(1985) ① 質問者が知らない点について情報を求める ・お名前は?(本調査のデータ) ・次の委員長は誰ですか? ②質問者の方から知りたい事柄を相手に示す ・何と呼べばいいですか?(本調査のデータ) ・次の委員長は田中さんですか? 宇佐美・嶺田(1995)・陳(2000)・仁田(2003) ①真偽疑問文(Yes-No Question) ・雨、降ってませんか? ②補充疑問文(WH Question) ・鈴木さんは、どこにいる? ③選択疑問文(Alternative Question) ・コーヒー、飲む?それとも紅茶にする? (④中途終了型発話文) ・お仕事は何を? (通常はお仕事は何をなさってるんですか?) 2.2 初対面会話における質問 中井(2004)では日本語母語話者同士の会話では「補充質問」も「真偽疑問文」も全体の会話の中で 大体同じ頻度で用いられている。 小田切(1997)は日本語母語話者同士と日本語学習者と日本語母語話者の初対面の自由会話で見られ る話題転換表現を言語機能で分類。 ①日本語母語話者同士の会話→男性が話題転換の担い手となり、女性はそれを維持する役目を果たして いるとし、男女間状況の要素が強く影響している。 ②日本人女性の話題転換に関して日本語母語話者同士の会話では、相手と共有できる情報の提示の出現 回数が多い。 ③日本語母語話者は日本語学習者との会話では相手の話を促進する質問が多くなるため同言語文化状 況と異言語文化状況では、言語機能を変えている。 2.3 男性と女性の会話の特徴 男女の会話スタイル、話題転換の特徴を研究したコーツ(1990)がある。 質問は女性と男性では意味が違う。 ・女性の場合(間接様式)、男性より多く質問をする。 質問は後続の言語行為の「答え」を要求する言語行為のため質問をするということは会話が続く保証に

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なり、会話の流れを促進するものとして見ている。 ・男性の場合(直接様式)、質問は情報を求めるための単なる依頼と解釈する、額面通りに受け取る。 2.4 男女の会話行動の性差 内田(1997)は初対面の日本人大学生 40 名にトピックを与え、話題や会話表現、行動に男女差・共 通点があるかを分析している。相手が同性か異性かでどの様な違いが現れるかという観点から分析を行 っている。 ・「質問」や「感嘆詞」は異性に対しての方が同性同士においてより多く出現している。 3.本研究で取り扱う研究対象 用語の定義 ・質問:「相手がいることを前提とし、相手に何らかの問題を提示し、情報提供を要求すること」 (南 1983)を参考 ①聞き手がいる・いない。 (→本研究では聞き手がいることを前提) ②質問内容が話し手にとって既知か否か。(→本研究では両者の間で相違・共通点が現れるか分析) ③質問内容が聞き手にとって既知か否か。(→本研究では既知に焦点を当て分析、今後の課題とし て両者を比較する) ・質問のパターン 宇佐美・嶺田(1995)・陳(2000)・仁田(2003)を参考 ①真偽疑問文(Yes-No Question) ②補充疑問文(WH Question) ③選択疑問文(Alternative Question) ④中途終了型発話文 ⑤ ①・②・③・④・⑤以外で分類が判断が不可能なもの。 ・質問の形式(文末、終助詞を中心に) 中井(2004)・仁田(2003)を参考 1.「~か?」(発話+終助詞「か」+上昇イントネーション) ・エミリーさんは 3 年生ですか? 2.「~な?」「~ね?」(発話+終助詞「ね」「な」+上昇イントネーション) ・日本で生まれましたね? 3.「~かしら?」「~かな(ぁ)?」 (発話+終助詞「~かしら?」「~かな(ぁ)+下降イントネーション)・行くかしら?いくかなぁ? 4.「~でしょう?」「~だろう?」(発話+「でしょう」+上昇イントネーション) ・時々こう聞きたくなるでしょう? 5.「~の?」「~のか?」(発話+「の」「のか」+上昇イントネーション/下降イントネーション) ・学校に行ったの? 6.「~よね?」(発話+終助詞+「よね」+上昇イントネーション) ・あの人、案外、よくしゃべるよね? 7.「~のではないか?」

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・この部屋、ちょっと暑いんじゃない? 8.「~しようか?」「~しましょうか?」 (動詞の意志形「しよう」に「か」が付加/丁寧形は「しましょうか?」) ・荷物、お持ちしましょうか? 9.「~でしょう?」「~だろう?」 (疑問詞+「~でしょう?」「~だろう?」+下降イントネーション) ・うん、これ何だろう? 10.「~っけ?」(発話+終助詞「~っけ」+上昇イントネーション) ・あれ?君、あの時、いましたっけ? 11.「~ば?」「~たら?」(動詞の条件形「ば」「たら」+上昇イントネーション) ・お風呂に入ったら? 12.「~よ?」(発話+終助詞「よ」+上昇イントネーション) ・もう 2 時だよ?朝じゃないぞ。 13.文中に疑問詞を用いる ・え、ここにはいつまでいるの? 14.文末上昇のイントネーション ・英語の先生っていうのは、じゃあ、あのー、中学校? 15.感嘆詞を用いる A:いや、高校から始めました。(本調査データ) B:えっ? A:高校から 16.「と思う?」・ねぇ、私、何歳だと思う? A:ハリーポッタ。うち観てない。どう思います?連作読む派からいくと。(本調査データ) B:まぁ、結構適当だよ。 質問の機能 吉田(2008)を参考 ①「同意・同調」を求める機能(文脈や内容面で相手に同意・同調を求める) ・うちら今日、やっと布買いに行くんだけど、やばいよね?(本調査データ) ②「意味交渉」を求める機能( 不明瞭な意味を確認するための相互交渉を求める) A:今日 30 度らしいな?(本調査データ) B:うん、どっちが暑い? A:ここと? ③「事実の情報」を求める機能(相手や話題に関する事実の情報を求める) ・あっ、お名前何っていうんですか? ④「意見や感想」を求める機能(相手の意見や感想を求める) A:春樹の道にはまっとる。(本調査データ) B:あれ、面白いんですかね?

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4.先行研究からの考察 これまでの質問研究は日本語母語話者と日本語学習者との接触場面において日本語母語話者の全体 の特徴、傾向を分析している。また、内田(1997)では「質問」の出現傾向に留まっており、「質問」 の要素や特徴などは詳しく述べられていない。「質問」の内面における男女の比較分析を行っている研 究はまだ少ない。よって本研究は男女の「質問」の内面という点に着目して日本語母語話者の初対面会 話の中で用いられている質問のパターン・形式・機能に焦点を当てる。そして話をする相手が同性か異 性で「質問」の内面にも相違点、共通点が現れるかを掘り下げて分析を行う。 5.データ収集 (1)調査対象:日本語母語話者 名古屋大学の学部 1 年生 男性 10 名 女性 10 名 。平均年齢 18 歳。 (2)調査期間:2010 年 5 月 7 日~6 月 15 日(3)調査場所:名古屋 (4)調査時間と内容: 1 グループ(4 名)×5 合計 20 ペア <1 グループ 4 名(男女各 2 名)/組み合わせ:女⇔女・男⇔男・女⇔男・女⇔男> 1 回の会話は約 15 分間の自由会話、会話終了後 5 分間のフォローアップ・インタビューを行う。 自由会話、フォローアップ・インタビューはIC レコーダーで音声録音し、全て文字起こしを行った。 6. 分析及び考察 6.1 質問の出現傾向 ①15 分の会話全体の質問数(全体・男女別) <図 1> ②話し手が知らないことを聞くとき、話し手が知っている情報を聞くときの質問数(男女別)<図2> 6.2 質問のパターン、形式、機能の出現数 話し手が知らないことを聞くとき・話し手が知っている情報をもとに聞くときのパターン・形式・機 能を個別に。(男女別) <パターン→図 3><形式→図 4><機能→図 5> 6.3 質問のパターン・形式・機能を全て 1 つのセットで見た場合 1 つの質問の中のパターン・形式・機能を 1 セットと考えた場合にどの様な組み合わせが多く見られ るか。(男女別)<図6> 7.まとめ 今回の本研究のデータから話す相手が同性・異性での「全体の質問数」には男女に大きな差が見られな かった。しかし「質問の内面」であるパターン・形式・機能には男女の差が見られた。以下にまとめる。 ①パターン <考察> ①共通点→出現回数より、話す相手によってパターンを変えている。 ②相違点→女性は「話し手が知らないこと聞く」場合、相手が同性・異性の場合でも真偽疑問文が中心。 男性は異性に「話し手が知らないこと聞く」場合は補充疑問文が中心。 ②形式 <考察>

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②相違点→女性の場合は情報の有無に関わらず全体的に「~よね?」や「~ね?」が出ていることから、 質問を用いることで「共感」を求める傾向にある。 男性の場合は相手が異性の場合は「~よ?」で気付かせたり、「~ば?」で提案を行うなど 相手に「アドバイス」などをするために質問を用いていることもある。 ③機能 <考察> ①共通点→男女共に「話し手が知らないことを聞く」際には①「事実の情報」②「意見や感想」、「話し 手が知っている情報をもとに聞く際には①「事実の情報」②「同意・同調」そして5 分から 質問数が増える傾向が見られた。 ②相違点→「自身への問いかけ」は女性は相手を選ばずに使用しているが男性の場合は異性よりも同性 で用いている。 6.今後の課題及び予定 日本語母語話者の初対面会話で見られる「質問のパターン・形式・機能」を分析した。男女共に全体 の質問数の出現に大きな違いは見られなかった。しかし情報の有無、「話し手が知らないことを聞く」「話 し手が知っている情報をもとに聞く」時では「パターン・形式・機能」の出現数に相違が見られた。ま た、相手が同性・異性かで「質問」を変えていることも明らかになった。内田(1997)の会話意識調査 で女性は「相手が男性のときに心理的距離を感じていて自身が女性であることを意識している」、男性 は「相手が女性だと下手に見られないように気をつける」という内観が出ていたという結果から本研究 でも相手にどう思われるか、どう見られるかということが大きく会話の「質問表現」にも影響している と考えられる。しかし「意識」ではなく「言語表現」からのはっきりした違いや共通点を今後深く追求 していきたい。また今回、大きな傾向だけを見たため、「パターン・形式・機能」の関連性が十分に明 確に出来なかった。これからは関連性について細かくデータを分析していく。また、A さんは同性と話 す時→「聞き役」、異性と話す時→「積極的に会話をリードしていた」・Bさんは同性と話す時→「聞き 役」、異性と話す時→「聞き役」というデータも見られたため、1 人ずつの傾向も見ていきたい。 <参考文献> 宇佐美まゆみ・嶺田明美(1995)「対話相手に応じた話題導入の仕方とその展開パターン:初対面二者間の会話分析より」『名古屋学院大学日本語学・日本 語教育論集』2 130.145. 内田伸子(1997)「会話行動に見られる性差」井出洋子(共編)『女性語の世界』明治書院 74-93. 小田切由香子(1997)「異言語文化間・男女間コミュニケーションにおける性差-会話開始における題転換上の特徴」『横浜国立大学留学生センター紀要』 4 42-53. 佐々木由美(1998)「初対面の状況における日本人の「情報要求」の発話-同文化内および異文化間コミュニケーションの場面」『異文化間教育』12 110-127. ジェニファー・コーツ(1990)『女と男とことば-女性語の社会言語学的研究法-』研究社出版 171-184. 田鴻儒(2010)「接触場面初対面会話の初期段階における普通体の使用」『201 年度日本語教育学会春季大会予稿集』171-176. 中井陽子(2004)「話題開始部で用いられる質問表現-日本語母語話者同士および母語話者/非母語話による会話をもとに」『早稲田大学日本語教育研究』2 37-54 早稲田大学. 仁田義雄(2003)本語記述文法研究改(編)『現代日本語文法 4 第 8 部 モダリティ』くろしお出版. 南不二夫(1985)「第 2 章 質問文の構造」水谷静夫(共編)『朝倉日本語新講座 4 文法と意味Ⅱ』39-74 朝倉書店. 吉田睦(2008)「中級日本語学習者と母語話者の談話展開-会話進行に伴う情報要求表現に 着目して-」筑波応用言語学研究』15 139-152.

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