63巻2号(2011) 1. は じ め に 首都高速道路における交通事故発生件数は,年々減少傾 向にあるものの,未だ年間約11000件以上と非常に多く, その約半数が追突事故によるものである.また.首都高速 道路の交通渋滞の発生原因の約11%が交通事故によるも のであり1) ,更なる事故削減と円滑な交通流の実現のために は,動的な情報提供をはじめとするより効果的な対策が必 要である.そのためには,事故要因を詳細に分析し,それ ぞれの要因に応じた対策が重要となってくる. これまで,首都高速道路の追突事故に関する研究として, 3号渋谷線・4号新宿線を対象とした研究1) や,追突事故 の頻発する赤坂トンネル付近を対象とした研究2) 3) 4) が多角 的に行われてきた.しかし,交通流の分析に使用されたデ ータは,全て集計された車両感知器データ(1分・5分デ ータ)であり,より細かな交通流の分析には至っていない. そこで本研究では,分析対象区間を赤坂トンネルと同じ く追突事故の頻発する3号渋谷線上り・谷町 JCT手前のサ グ部とし,車両感知器パルスデータを用いた詳細な事故発 生状況の分析を行い,追突事故リスクの高いミクロ的な交 通流状態の特定と,その発生状況を解析することを目的と する. 2. 対象区間及び分析手法 2.1 分析対象区間の概要 分析対象は追突事故の最頻発区間である,3号渋谷線上 り・谷町 JCT手前のサグ部とした.図1に対象区間の縦断 勾配と谷町 JCTからのキロポスト,及び看板設置位置を示 した.この区間は片側2車線道路で,谷町 JCTでの1 :1 分流を控える区間であり,0.39kp付近から下流側は,車線 変更禁止区間となっている.図2にキロポスト別事故発生 件数と事故形態を示す.事故の多くが0.5~0.7kpのサグ手 前の下り勾配区間に集中しており,そのほとんどが追突事 故となっており,また車線別では左車線に集中している . 事故の集中する0.5~0.7kp区間で発生した全24件の追 突事故を発生時間帯別に見ると図3のようになり,事故は 昼間に集中し,夜間は発生していないという特徴が見られ る.ここで,平均交通量は,事故の無かった2010年2月3 日~9日の1週間の時間帯別交通量の平均値を用いている. 生 産 研 究 研 究 解 説 173
首都高速道路における追突事故リスク予測に関するミクロ的分析
MicroscopicRisk AnalysisofRear-End Collision on Tokyo Metropolitan Expressway三 浦 久
*・洪 性 俊
**・割 田 博
***・田 中 伸 治
**・桑 原 雅 夫
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要 旨 本研究では,首都高速道路における車両追突事故リスクの事前予測を通じて,追突事故の減少に寄与させること を主旨とし,追突事故の頻発する首都高速道路3号渋谷線上り・谷町 JCT手前のサグ部を対象として,事故発生時 の交通流の解析を行った.解析には車両感知器パルスデータを用い,サグ前後における個別車両の速度推移状況か ら,事故発生のメカニズムを仮定し,追突事故リスクの高いとされるミクロ的な交通流状態を導出した.また,そ のようなリスクの高い交通流の出現状況について,分析を行った. AbstractIn thisstudy,aspecifictrafficflow condition observed justbeforerear-end collisionsisidentified,which can beutilized for reduction ofthosecrashesby meansofdetecting therisky situationsin advanceand warning drivers.Thestudy siteisasag which islocated atupstream ofTanimachiJCT on Tokyo Metropolitan Expressway Route3 (TanimachiJCT direction),where rear-end collisions frequently occur. Using pulse data collected by traffic detectors, speed fluctuation characteristics of individualvehicleswereanalyzed.A speed drop and itspropagation to upstream wereconsidered foridentifying therisky trafficcondition,and thefrequency ofthatsituation on thestudy siteispresented in thispaper.
東京大学大学院工学系研究科 * 東京大学生産技術研究所 先進モビリティ研究センター (ITSセンター) ** 首都高速道路㈱ *** 東北大学大学院 情報科学研究科 ****
63巻2号(2011) 2.2 取得データ 対象区間であるサグ部前後での交通流を分析するため, 図1に示す2地点の車両感知器パルスデータを取得した. ・地点:地点1…0.41kp(下流側) 地点2…0.56kp(上流側) ・期間:2010年2月1~15日,3月1~31日 車両感知器のパルス発生周期は60msecであり,特に高 速域の車両の感知精度が落ちてしまうものの,パルスの波 形を解析することで,各地点における個別車両の通過時刻 ・速度・車長などが算出可能となる.解析においては,全 ての車両が車両感知器の2つのヘッド間を等速度で走行し たと仮定して速度を算出し,ヘッド間での車線変更車は除 外して行った. 3. 事故直前の交通流の解析 3.1 分析対象事故の抽出 分析対象とする事故は,以下に該当する8件を抽出した. 抽出した8件のうち,左車線事故が5件,右車線事故が3 件となっている. ・発生地点:0.5~0.7kp ・事故形態:追突事故 ・発生期間:2010年2月1~15日,3月1~31日 (パルスデータの取得期間) 3.2 事故直前交通流の分析 3.2.1 左車線事故 まず,この区間で追突事故が集中している左車線の事故 直前交通流の分析を行う. 抽出した5件の左車線事故発生直前の地点1(サグ下流 側)及び地点2(サグ上流側)の2地点における速度遷移 状況を,パルスデータより算出し,そのうち3件を例とし て図4に示した.同図の最右端が事故発生時刻であり,詳 生 産 研 究 174 図1 対象区間の概要図 0.2kp 0.3kp 0.4kp 0.5kp 0.6kp 0.7kp 0.8kp -2.31% -5.00% -0.84% 2.03% ⼱↸JCT ὐ2 (ᵹ) ὐ1 (ਅᵹ) ㅴⴕᣇะ ❑ᢿ൨㈩ 0 2 4 6 8 10 12 14 16 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 ⊒ ↢ઙᢙ kp ㅊ⓭ ㅊ⓭એᄖ 6 19 ฝゞ✢ Ꮐゞ✢ ㅴⴕᣇะ 図2 3号渋谷線上りにおける kp別事故発生件数 (2010年1月~3月) 図4 左車線事故直前速度変動(サグ上・下流地点) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 12:43 12:44 12:45 12:46 12:47 12:48 ㅦᐲ (k m /h ) ᤨೞ 214ᣣ Ꮐゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ਅᵹ ⊒↢ ᵹ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 12:42 12:43 12:44 12:45 12:46 12:47 ㅦᐲ (k m /h ) ᤨೞ 37ᣣ Ꮐゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ਅᵹ ᵹ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 16:32 16:33 16:34 16:35 16:36 16:37 ㅦᐲ )k m /h ) ᤨೞ 38ᣣ Ꮐゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ਅᵹ ᵹ 兼 献 献 験 兼 献 献 験 0 700 1400 2100 2800 3500 0 1 2 3 4 5 0: 0 0 2: 0 0 4: 0 0 6: 0 0 8: 0 0 10: 00 12: 00 14: 00 16: 00 18: 00 20: 00 22: 00 ᐔ ဋㅢ ㊂ (v ev /h ) ⊒ ↢ઙᢙ ᤨೞ ⊒↢ઙᢙ ᐔဋㅢ㊂ 図3 時間帯別追突事故発生件数(0.5~0.7kp)と 平均交通量(2010年2月3日~9日)
63巻2号(2011) 細な事故発生時刻は,パルスの乱れから推測した. 掲載していない2件の事故も含め,5件全ての事故直前 の交通流に共通する特徴として,地点1における速度低下 が見受けられる.速度低下量の大小には差異があるものの, 地点1での速度が一時的に20km/h以下へ低下するのに対 し,地点2では速度30~60km/hと比較的高い水準を維持 している.そして地点1で発生した減速波がサグ上流側の 下り勾配区間へ伝播し,その減速波に対応できなかった車 両が事故に至ったと推測される. 赤坂トンネル付近を対象とした既存の研究2) 3) 4) よると, 追突事故時の交通状況として,ⅰ)渋滞末尾に到達する場 合,ⅱ)不安定な渋滞流中の粗密波に遭遇する場合,ⅲ) 低速渋滞流中の場合の3パターンに分類されることが示さ れている. 今回抽出した5件の左車線事故はいずれもⅱ)に近い交 通状況であり,サグ先の上り勾配が減速波の発生を促して いると言える.減速波の発生箇所は特定し難いが,地点1 (0.41kp)付近・あるいはさらに下流側であるとも考えられ る.しかし,地点1付近での事故件数は少なく,事故発生 地点はサグ底(0.5kp)より上流側に集中していることから, 道路構造の違いが事故リスクへ大きな影響を与えていると 考えられる.すなわち,減速波はサグ先の上り勾配区間で も生しているが,上り勾配という構造が事故リスクを軽減 させているのに対し,減速波が下り勾配区間,さらには情 報板設置地点に伝播することで,リスクが増大されると言 える. 3.2.2 右車線事故 左車線と同様に,右車線事故3件についても分析を行っ た結果,左車線事故の直前交通流とはやや違った傾向が見 られた(図5).2月1日,3月15日の2件については, 先に挙げた追突事故パターンのⅲ)に該当するものであり, 3月16日の事故については,ⅱ)に該当するものと考え られる.しかし3月16日の事故に関しては,事故直前1分 間の速度変動のみに焦点を当てると,下流側で速度20km/h 以下へ低下するのに対し,上流側では速度30~40km/hと なっており,左車線事故と同様の傾向が見られる. 3.3 追突事故リスクの発生メカニズム 両車線における事故直前交通流の特徴から,対象区間で は左車線事故5件,右車線1件に共通して見られるような, 地点1での急激な速度低下によって減速波が生じ,上流側 へ伝播することで事故につながるという形態が頻発してい ると考えられる.低速渋滞流中の事故も両車線で発生して いると考えられるが,他区間に比べ頻度が高いとは言い切 れない.このことから,対象区間における事故リスクの発 生メカニズムとして次のように考える. ⅰ)サグ先の上り勾配区間にて,速度20km/h以下への 速度低下と減速波の発生 ⅱ)比較的高い速度水準を持つサグ手前の下り勾配区間 への減速波の伝播 これらの現象を段階的に分けて考え,リスクの発生状 況の分析を行う.まずは次章にてⅰ)速度低下の発生状況 の分析を試みる. 4.サグ先上り勾配における速度低下発生状況 4.1 速度低下の発生要因 高速道路サグ部はボトルネックとしても知られ,速度低 下の発生しやすい区間である.サグ部での渋滞発生現象に ついては数多くの研究がなされ5) 6) ,速度低下の発生原因は 高密度時の加速不足や車線変更によるものであることや, 減速波の発生位置がサグ底より下流約100mの区間にある ことが報告されている. 対象区間のサグ先上り勾配における速度低下の要因とし ても同様に,以下の3つが考えられる. 1)大型車をはじめとする上り勾配での加速不足 2)右車線からの車線変更車の影響 生 産 研 究 175 0 10 20 30 40 50 60 70 80 15:45 15:46 15:47 15:48 15:49 15:50 15:51 ㅦᐲ (k m /h ) ᤨೞ 21ᣣ ฝゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ਅᵹ ᵹ ⊒↢ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 16:53 16:54 16:55 16:56 16:57 16:58 ㅦᐲ (k m /h ) ᤨೞ 315ᣣ ฝゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ᵹ ਅᵹ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 17:09 17:10 17:11 17:12 17:13 17:14 ㅦᐲ (k m /h ) ᤨೞ 316ᣣ ฝゞ✢ ㅊ⓭ ᵹ(06) ਅᵹ(05) ᵹ ਅᵹ 図5 右車線事故直前速度変動(サグ上・下流地点)
3)都心環状線からの先詰まり 5件の左車線事故直前の速度低下については一時的なも のであり,低下後すぐに回復傾向にあることから,1),2) の可能性が高いと考えられ,3月16日の右車線事故直前の 速度低下は3)の可能性が高いと考えられる.しかしいず れの場合も,車両感知器データのみからの速度低下の要因 特定は困難であろう.したがって,地点1での速度低下は 確率的に発生すると考え,その発生状況や発生頻度につい て分析を行うこととする. 4.2 分析手法 分析にあたっては,地点1におけるパルスデータを10秒 単位で集計し,10秒毎の平均速度データを用いることとす る.10秒という単位を用いた理由としては,細かな速度変 動をスムージングし,ノイズを取り除くことができること, また10秒単位での集計後のデータからも,事故直前に見ら れるような20km/h以下への速度低下が観測できることが 挙げられる. 表1は左車線事故5件と,3月16日の右車線事故直前の 地点1での10秒単位の速度変化をまとめたものである. 地点1での平均速度が20km/hを下回った10秒間を基準と し,その前後30秒間の平均速度,並びに,地点1で平均 速度が20km/hを下回った時刻における地点2での平均速 度を示した.地点1では30km/h以上の速度水準から,約20 秒間で10km/h程度まで低下し,その約30秒後には元の速 度水準まで回復している.それに対し,地点1での20km/h 以下遷移時の地点2の速度は,速度低下前の地点1の速度 水準に近い30km/h以上の速度水準を持っている. 4.3 速度低下の発生状況 事故の無かった1週間を取り上げ,同様にして地点1で の速度を10秒単位で集計し,昼夜別・車線別に速度低下 の発生状況の分析を行った. ・期間:2010年2月3日~9日(1週間) ・時間帯:7時~17時(昼間10時間) 0時~6時,20時~24時(夜間10時間) ・車線:左車線,右車線 分析に当たっては,地点1における速度20km/h以上から 20km/h以下への遷移回数を計測し,それぞれの遷移時にお ける前後30秒間の地点1の速度,並びに,遷移時の地点 2の速度を算出した.表2は昼夜別・車線別の遷移回数を まとめたものである.全ての遷移に対して追突事故リスク があるとは言えないが,遷移回数だけを比較しても,昼夜 の差が顕著に見られる.夜間における地点1での速度低下 回数の少なさが,夜間に事故が発生していない要因の1つ として考えられる. 次に昼間に焦点を当て,各遷移に対する事故リスクの大 きさを考える.ある1回の遷移においても,速度低下量の 大きさ・20km/h以下遷移時の地点2での速度の高さ,によ って,事故へつながるリスクが変化すると考えられる.そ こで,昼間の各遷移を速度低下量と遷移時の地点2での速 表1 事故直前下流側(05地点)速度推移(km/h) 遷移時上 流側速度 30秒後 20秒後 10秒後 20km/h以 下遷移時 10秒前 20秒前 30秒前 54.5 47.1 33.3 22 7.1 23.4 63.2 64 2月 14日 38.5 30.8 27.3 13.8 16.9 32.6 35.5 34.3 3月2日 31.9 40.7 25.3 18.2 11.2 25.8 32.8 43.5 3月7日 52.6 38.1 29.3 10.2 12.6 33.6 40 36.7 3月8日 50.8 33.3 26.1 16.8 16.9 27.3 33.3 39.5 3月 14日 32.9 26.5 27.7 14 4.4 28.8 32 26.6 3月 16日 表2 車線別・昼夜別速度20km/h以下遷移回数 合計 2月 9日 2月 8日 2月 7日 2月 6日 2月 5日 2月 4日 2月 3日 320 70 50 7 51 52 56 34 左車線-昼 271 97 0 9 11 148 6 0 右車線-昼 25 13 0 2 1 2 1 6 左車線-夜 33 8 1 0 1 0 0 23 右車線-夜 表4 速度低下量・地点2速度別遷移回数 (右車線) 20km/h以下遷移時の地点 2速度 (km/h) 右車線 昼間 0-10 10-2020-30 30-40 40-50 50-60 60-70 70-80 80-90 0 0 0 0 0 0 0 0 0 60-65 速 度 低 下 量 (km/h) 0 0 0 1 0 0 0 0 0 55-60 0 0 3 1 0 0 0 0 0 50-55 1 0 0 2 1 0 0 0 0 45-50 0 1 2 4 2 0 1 0 0 40-45 0 1 2 4 4 5 1 0 0 35-40 0 0 1 2 9 5 4 1 0 30-35 0 0 3 3 8 4 2 1 0 25-30 0 0 1 6 7 14 8 7 2 20-25 0 0 0 7 4 3 13 18 6 15-20 0 0 0 1 4 7 15 20 10 10-15 0 0 0 1 1 3 10 10 5 5-10 0 0 0 0 0 1 0 5 2 0-5 表3 速度低下量・地点2速度別遷移回数 (左車線) 20km/h以下遷移時の地点 2速度 (km/h) 左車線 昼間 0-10 10-2020-30 30-40 40-50 50-60 60-70 70-80 80-90 0 1 0 0 0 0 0 0 0 60-65 速 度 低 下 量 (km/h) 0 0 0 1 1 0 0 0 0 55-60 0 0 0 1 2 1 0 0 0 50-55 0 0 0 4 3 0 0 0 0 45-50 0 0 2 2 6 2 0 0 0 40-45 0 1 2 7 7 1 0 0 1 35-40 0 0 1 5 13 11 3 0 0 30-35 0 0 1 6 18 13 4 2 0 25-30 0 0 1 10 28 16 8 4 1 20-25 0 1 1 7 20 23 9 5 0 15-20 0 1 1 4 7 9 9 4 2 10-15 0 0 0 0 2 7 6 4 2 5-10 0 0 0 0 0 1 2 2 1 0-5 表5 リスクの高いとされる遷移回数 合計 2月 9日 2月 8日 2月 7日 2月 6日 2月 5日 2月 4日 2月 3日 167 30 24 5 34 26 28 20 左車線 -昼 98 31 0 5 8 51 3 0 右車線 -昼 13 8 0 0 0 1 1 3 左車線 -夜 15 7 1 0 1 0 0 6 右車線 -夜 兼 献 献 献 献 験
63巻2号(2011) 度で分類し,左車線を表3,右車線を表4にまとめた.着 色されたセルは,表1にまとめられた事故直前の遷移が該 当するセルである.同表から,全ての事故直前の遷移は, ・速度低下量20km/h以上 ・遷移時地点2速度30km/h以上 の範囲内に含まれることから,その条件に該当する遷移 を,リスクの高い遷移と考えることとする. そこで表2における1週間の遷移回数のうち,先の条件 を満たす遷移回数を抽出すると,表5のようになった.昼 夜に加え,左右車線の遷移回数にも顕著な差が見られるよ うになり,各車線における事故発生件数との相関があると 考えることができる. 4.4.5 分集計データにおける速度低下発生状況 先に挙げた事故の無かった1週間データを5分単位で集 計し,全ての5分集計データの中から,表4に示したリス クの高いとされる遷移を含むデータを抽出し,差別化させ て Q-V グラフ上に示した(図6).なお,この集計は全て 昼間データで行った.同図における高リスク遷移ありとは, その5分間の交通流中に,リスクの高いとされる遷移(地 点1速度低下量20km/h以上かつ,遷移時地点2速度30km/h 以上)が最低1回発生したことを表している. 同図から,両車線において,5分間平均速度10~40km/h 時に高リスク遷移が集中して発生していると言える.特に 左車線では,平均速度30~40km/h付近の交通流内で頻繁 に高リスクの遷移が発生しているのに対し,右車線では平 均速度30~40km/hの交通流自体の出現率が低くなってお り,高リスクの遷移も発生していないことが分かる.これ は,同じ都心環状線の先詰まりにおいても,左車線では30 ~40km/hの速度水準である割合が高いのに対し,右車線で は20km/h以下まで低下する割合が高いためであると考え られる.各速度域あるいは交通量域における遷移発生率に ついてはさらなる分析が必要であるが,このような車線間 での交通流の出現率の違いによって,高リスクの遷移の発 生回数に差を生じさせていると考えられる. 5. ま と め 本研究では,3号渋谷線上り・谷町 JCT手前のサグ部を 対象とし,車両感知器パルスデータを用いて,事故直前交 通流のミクロ的な分析を行った. その結果,事故直前にサグ下流側の下り勾配区間で大き な速度低下が発生し,その減速波がサグ上流側の下り勾配 区間・さらには情報板の設置地点へ伝播することで,事故 が発生していると推測された.また,サグ先の下り勾配区 間での速度低下のうち,速度低下量20km/h以上・速度低 下時のサグ上流側速度30km/h以上の速度低下に焦点を当 て,その発生状況を分析したところ,夜間より昼間の方が, 右車線より左車線の方が,発生回数が多いという結果が得 られた.この発生回数は,昼夜別・車線別の事故発生件数 と相関があると考えられ,そのような速度低下の発生が追 突事故リスクを高めていることが示唆された.そして,そ のようなリスクの高い速度低下の発生状況は,都心環状線 からの先詰まり時の交通流状況に影響されていると言える. 今後は,今回示唆された事故と交通流との相関の検証と 共に,サグ上流側への減速波の伝播と流入交通流との関係 について分析していきたい. (2011年2月2日受理) 参 考 文 献 1) 前田剛,割田博,岡田知朗,菊池春海 :首都高速道路における 速度・密度に着目した事故発生状況分析,第28回交通工学研 究発表論文報告集,pp81-84,2008 2) 赤羽弘和,長谷川潤,森田綽之 :都市高速道路における追突事 故発生状況の感知器データによる分析,第20回交通工学研究 発表論文報告集,pp.1-4,2000 3) 池田公雄,岡田知朗,割田博,田中淳,竹平誠治,川崎洋輔,上 條俊介 :事故発生時画像とヒヤリハット調査による事故要因 分析,第5回 ITSシンポジウム,pp.211-216,2006 4) 萬沙織,森博子,割田博,赤羽弘和 :VICS情報に基づく事故発 生警報の提供,第28回交通工学研究発表論文報告集,pp 121-124,2008 5) JXing,越正毅 :高速道路サグにおける渋滞現象と車両追従 挙動の研究,土木学会論文集,No.506/IV-26,pp.45-55,1995 6) 平井節生,畠中秀人,平沢隆之,山田康右,前田雅人,片山恭紀 :AHSを活用した車線利用率適正化によるサグ部渋滞策,第 5回 ITSシンポジウム,pp.211-216,2006 生 産 研 究 177 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0 50 100 150 200 ㅦᐲ (k m /h ) 5ಽ㑆ㅢ㊂ (veh/5min) Ꮐゞ✢-ᤤ 㜞䊥䉴䉪ㆫ⒖䈭䈚 㜞䊥䉴䉪ㆫ⒖䈅䉍 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0 50 100 150 200 ㅦᐲ (k m /h ) 5ಽ㑆ㅢ㊂ (veh/5min) ฝゞ✢-ᤤ 㜞䊥䉴䉪ㆫ⒖䈭䈚 㜞䊥䉴䉪ㆫ⒖䈅䉍 図6 5分間交通量-速度 (上 :左車線 ,下 :右車線) 兼 献 験