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3 4/K 2/ atm, nm b 2 8e atm 16 MgAT MgAD 16 i e Cys -co C C C is 図 1 工業的窒素固定法であるハーバー ボッシュ法

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が喚起された.これが契機となり,当時の一流の科学者が開 発競争に参入し,その結果としてハーバー・ボッシュ法が ドイツで開発された.最初の特許取得からわずか 4 年後に, アンモニア合成の工業化が達成されたのである.当時,いか にこの新しいアンモニア合成が求められていたかを窺い知る ことができよう.20 世紀の人口増大に伴う食糧不足の危機 を回避できたのは,この 「 空気からパンをつくった 」 方法の おかげであり,20 世紀最大の発明の一つであるといっても 決して過言ではない. ハーバー・ボッシュ法は,高温高圧の反応条件下,鉄系触 媒を用いて窒素ガスと水素ガスからアンモニアを合成するエ ネルギー多消費型プロセスである(図 1 a).工業化が達成さ れて以来,エネルギー効率について改良が加えられ,もはや 限界といわれるまでに向上されている.鉄触媒は 20 年近く 長期間にわたり利用することができる.しかもこのような長 期間の使用後でも触媒は失活しておらず,触媒を取り替える よりも先にプラント自体が高圧に耐えきれなくなってしまう というから驚かされる.しかし,洗練されたプロセスではあ るものの,致命的な弱点を抱えている.高温高圧の反応条件 を含めてアンモニア生成過程で多大なエネルギーを必要とす ることはもちろんであるが,最も大きな問題点は天然ガス・ 石油・石炭などの化石燃料から,原料となる水素ガスを大量 に製造しなければならないことである.実際の工場でも水素 ガス製造プロセスがそのプラントの大部分を占めており,ア ンモニア合成プロセスの全エネルギー消費のうち,水素ガス 製造に費やされる割合は実に 90%を超えている.水素ガス 製造を含めると,全人類の消費エネルギーの数%以上がこの アンモニア合成に費やされている. 昨年,アンモニア生成過程の効率を大幅に向上させる研究 今,アンモニアが熱い! 2013 年は,アンモニア合成法が 工業化されてからちょうど 100 年目を迎える.この記念す べき年に,アンモニアが各方面から注目を集めている.窒素 肥料の原料として人類に多大なる貢献をしてきたアンモニア だが,最近になり,環境に優しい次世代エネルギーシステム である燃料電池での水素貯蔵体として,さらには容易に液化 できる扱いやすいエネルギー源として利用することが期待さ れている.また現在の日本のエネルギー問題を解決するため に,貯蔵の難しい電気エネルギーを,長期間の貯蔵や輸送が 可能な物質エネルギーへと変換する方法の開発が求められて いるが,ここでもアンモニアが候補物質の一つとしてあげら れている.本稿ではアンモニアを取り巻く動向を含め,筆者 らが見いだした常温常圧のきわめて穏和な反応条件下で進行 する次世代型窒素固定法の開発につながる成果について,そ の背景を含めて紹介する.

ハーバー・ボッシュ法

1898年,当時の窒素肥料であるチリ硝石の枯渇による世 界的な食糧不足の到来が指摘され,新しい窒素固定法の開発

西 林 仁 昭

東京大学大学院工学系研究科

20

世紀最大の発明といわれるハーバー・ボッシュ 法.世界を飢餓から救った窒素固定法が,今再 び注目を集めている.常温常圧のきわめて穏和な条件 で進行する次世代型の反応を目指して,21 世紀の科学 者の挑戦が続いている.

鉄触媒は「窒素固定能」を秘めていた!

―― 常温常圧の窒素ガスからのアンモニア変換に光明

にしばやし・よしあき ● 東京大学大学院工学系研究科准教授, 1995 年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了,<研究テーマ> 触媒的窒素固定法の開発,新規触媒反応の開発,<趣味>野球

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解 説

生する根粒菌がもつニトロゲナーゼは,常温常圧のきわめて 穏和な反応条件下で窒素ガスをアンモニアへと変換できる. この自然界に存在する酵素の機能を人工的に模倣できれば, きわめて穏和な反応条件下でのアンモニア合成が達成できる 可能性がある.ニトロゲナーゼの活性部位の構造は,炭素が 中心に存在する硫黄架橋鉄およびモリブデン多核有機金属錯 体であることがX線結晶構造解析などによって最近明らかに された2(図 1 b).近年,存在が見いだされた炭素の役割を) 含めた反応機構の詳細はまだ明らかになっていないが,活性 部位の遷移金属に窒素分子が配位して活性化されたのち,段 階的なプロトン化および還元によりアンモニアへと変換され ると考えられている.これらのことを背景に,鉄およびモリ ブデン窒素錯体の合成と反応性に関する研究が,穏和な反応 条件下での触媒的アンモニア合成法の開発につながることが 期待され,近年活発に展開されている. 1965年にはじめての遷移金属(ルテニウム)窒素錯体が報 告されて以来,さまざまな種類の遷移金属窒素錯体が合成さ 成果が報告された1).20 世紀の後半には,従来の鉄系触媒の 代わりに,炭素にルテニウムを担持させた触媒を用いて反応 条件の緩和を含めた効率化が達成されていたが,まだ本質的 な改良には至っていなかった.東京工業大学の研究グループ は,セメントの構成成分であり電子を取り込んだエレクトラ イドにルテニウムナノ粒子を固定化した触媒を用いると従 来の約 10 倍の触媒機能を発揮し,アンモニア合成の活性化 エネルギーを約半分にまで低下させたと報告した1)(図 1 a). 300 ℃の高温ではあるが,常圧下でアンモニア生成が進行す ることも確認されている.これらの成果は,アンモニア合成 に必要なエネルギーを大幅に低減できることを意味してい る.エレクトライドを高表面積化することや,ルテニウムに 代わる安価な鉄を用いた触媒の開発など,実用化を視野に入 れた展開がおおいに期待される.

窒素固定酵素と窒素錯体

ハーバー・ボッシュ法とは対照的に,マメ科植物の根に共 図 1 工業的窒素固定法であるハーバー・ボッシュ法と窒素固定酵素ニトロゲナーゼによる生物化学的窒素固定法 a)1913 年に BASF 社によってはじめて工業化されたアンモニア合成法.ルテニウム触媒を用いることにより,より穏和な反 応条件(70 ∼ 105 atm,350 ∼ 470 ℃ )下で反応が進行する改良が達成された.2012 年に東京工業大学の細野秀雄教授と原 亨 和教授らの研究グループは,セメントの構成成分の一つである 12CaO・7Al2O3の構造中に電子を取り込んだエレクトライドに, ルテニウムナノ粒子を固定することで高性能なアンモニア合成触媒を開発した.エレクトライドから電子がルテニウムに供与さ れ,配位窒素分子の結合切断を進行させるだけでなく,水素を取り込むことにより水素による被毒を抑制する効果があるとされ ている.b)窒素固定酵素ニトロゲナーゼは常温常圧のきわめて穏和な反応条件下でアンモニア合成を行う.ATP(アデノシン三 リン酸)から ADP(アデノシン二リン酸)への加水分解の際に生じるエネルギー源を駆動力として利用している.2011 年に活性 部位である FeMo-co の中心軽原子は炭素であることが複数の研究グループにより報告された. O2­ e­ N N N H H H H H 0.5nm Al Al Al O O O Ca Ca Ca

12 CaO・7Al2O3

N2 + 3 H2 触媒 Fe3 2 NH3 O4/K2O/Al2O3 200-500 atm, 500-600℃ a) N2 + 8e­ + 8H+ ニトロゲナーゼ 2NH3 + H2 室 温

16 MgATP + 16 H2O 16 MgADP + 16 Pi (1 atm) Fe Fe S S S S Fe Fe S Fe S Fe S Mo O S N O S Fe C S Cys His O COO– COO– NH FeMo-co ニトロゲナーゼの活性部位の構造 b) カゴのなかに 取り込まれた電子 カゴのなかに取り込まれた 水素イオン (H­) Ca O Al ルテニウムナノ粒子 HH

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れ,その反応性について検討がなされてきた3(図 2 a).遷) 移金属に配位した窒素分子の反応性については,ブレンス テッド酸を用いたプロトン化反応によるアンモニア合成反 応をはじめ興味深い分子変換反応が報告されていた.しか し,一部の例を除きそれらの多くは化学量論反応に留まっ ており,触媒反応への展開はほとんどなされてこなかった. 2003年になり,かさ高いトリアミドモノアミン四座配位子 をもつモリブデン窒素錯体を用いた窒素ガスからの触媒的 アンモニア生成反応の例が報告された4)(図 2 b).すなわち, 還元剤とプロトン(水素)源との組合せで,触媒当たり 8 当 量弱のアンモニア生成が達成されている.新たな突破口を開 いた研究成果ではあるが,報告以来 10 年を経ても,この方 向からは当初の触媒能を超える新しい触媒の開発は報告され ていない. 一方,2010 年末に筆者らの研究グループは,PNP 型ピン サー配位子をもつ窒素分子架橋二核モリブデン錯体を用いる ことにより,触媒的アンモニア生成反応を見いだした5).こ の反応系ではより安価な還元剤を用いて,触媒当たり 23 当 量(モリブデン当たり 12 当量)のアンモニア生成を達成した (図 2 b).この例は触媒的アンモニア生成の成功例としては 2例目であるが,市販で入手容易なピンサー配位子を用いて 簡単に合成できる窒素錯体が高活性な触媒能をもつことを見 いだした興味深い成果である.最近になり,配位子を修飾す ることで大幅な触媒活性の向上にも成功している(触媒当た り 52 当量).これら触媒的アンモニア生成反応の二つの成 功例6)は,ともに窒素固定酵素ニトロゲナーゼに含まれるモ リブデンを利用しており決して偶然とは思えないが,この結 果だけから活性種の金属はモリブデンであると決めつけるの は早計である.ここでは,幅広い酸化状態を取りうるモリブ デンの特性が,常温常圧の穏和な反応条件での窒素固定反応 の触媒として働くことを可能にしていると思われる.

鉄窒素錯体と触媒的窒素固定反応

モリブデンは高価な金属ではないが,希少金属に指定され ている元素である.今や日本の科学政策である元素戦略7) 観点からも,きわめて安価で入手容易な鉄を用いた触媒的窒 素固定法の開発が期待される.近年,さまざまな鉄窒素錯体 の合成とその反応性に関する検討が報告されている.窒素分 子を活性化した四核鉄窒素錯体を水素分子と反応させると, 化学量論量のアンモニアが生成することが報告された(残念 ながら酸処理がアンモニア生成に必須であるとのちに修正さ れている) 8) (図 3 a).また,鉄錯体に配位した窒素分子のプ N Ru N NH3 H3N NH3 NH3 H3N 2+ N Co N PPh3 Ph3P PPh3 H 世界初の 窒素錯体 世界初の窒素分子由来の窒素錯体 A. D. Allen (1965年) 世界初の 鉄窒素錯体 N Fe N H PEtPh2 H Ph2EtP Ph2EtP A. Saccoら (1968年) 世界初のf族金属 side-on型窒素錯体 Sm N Sm N W. J. Evansら (1988年) A. Yamamotoら (1967年) P 世界初のモリブデン 窒素錯体 Ph2 Ph2 Ph2 Ph2 N Mo N P P P N N M. Hidaiら(1968年) N+ H Cr 還元剤 プロトン源 N+ H Co 還元剤 プロトン源 iPr iPr iPr iPr iPr iPr Mo N N N N HIPT HIPT N N (HIPT) 触 媒 触 媒 1 2 a) b) 世界初の キュバン型窒素錯体 Y. Mizobeら(2007年) S Ir Ir S Ru S S Ir N N Me2 Me2 N N R N Mo Mo N R N N N N N N P P P P N N N N P =tBu2P 触媒当たり23当量のアンモニアが生成(R=H) 触媒当たり52当量のアンモニアが生成(R=OMc) 触媒当たり8当量の アンモニアが生成 N2 + 6e­+ 6 H2 NH 3 室 温 触媒Mo (1 atm) 図 2 遷移金属窒素錯体とその反応性(その 1) a)代表的な遷移金属窒素錯体.1965 年に世界ではじめて金属に窒素分子が配位したルテニウム錯体の合成・単離が報告された.こ れがきっかけとなり,コバルト,モリブデン,鉄などさまざまな遷移金属の窒素錯体が報告されている.b)モリブデン窒素錯体を用 いた触媒反応.❶トリアミドモノアミン四座配位子をもつモリブデン窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応.高い還元能をも つデカメチルクロムセンを還元剤として用いる必要がある.反応中間体の単離および理論計算による詳細な反応機構の解明に成功し ている.❷ PNP 型ピンサー配位子をもつ窒素架橋二核モリブデン窒素錯体を用いた触媒的アンモニア生成反応.還元剤として安価 で毒性がないコバルトセンを利用している.配位子であるピンサー配位子を修飾することで飛躍的な触媒活性の向上を達成している.

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解 説

ロトン化および還元剤との反応によるアンモニア生成に必要 な各段階の化学量論反応が続々と報告されている.さらに, 鉄アンモニア錯体と窒素ガスの配位子交換による鉄窒素錯体 の生成や,鉄ニトリド錯体からのアンモニア生成反応など(図 3 b)が達成された9,10).筆者らの研究グループでも,硫黄架 橋鉄二核錯体を触媒に用いてヒドラジンをプロトン源および 還元剤と反応させることによる触媒的なアンモニア生成反応 の開発に成功している11).ヒドラジンは窒素ガスからのアン モニアへの還元過程の重要な中間体の一つである.このよう に鉄錯体を用いた触媒的窒素固定法開発への準備は最近着々 と進んでいる. シリルアミンが加水分解処理により定量的にアンモニアへ と変換できることを考慮すると,窒素ガスからの触媒的シリ ルアミン生成反応は触媒的アンモニア生成反応の別法とな る(図 4 a).触媒的シリルアミン生成反応については,1972 年に最初の報告が行われた.塩化クロムに代表されるいくつ かの無機塩を触媒として使い,リチウムを還元剤,塩化ケイ 素化合物を求電子剤として用いることで,触媒に用いた金 属当たり最高 5 当量のシリルアミン生成に成功している12a) 1989年,単座ホスフィンを補助配位子にもつモリブデン窒 素錯体を用いて,還元剤にナトリウムを利用することで,シ リルアミンの生成量をモリブデン当たり最高 24 当量まで向 上できることが東京大学の干鯛眞信教授らにより報告され た12b).2011 年には,筆者らの研究グループでフェロセニル ジホスフィンを補助配位子にもつモリブデン窒素錯体を設 計・合成し,この錯体が触媒的シリルアミン生成反応におい て従来の結果を大きく凌駕する非常に高い触媒活性(モリブ デン当たり 220 当量以上)を示すことを見いだした12c).九州 大学の吉澤一成教授と田中宏昌博士らの理論計算による共同 研究により,相反する特徴である剛直性と柔軟性を兼ね備え たフェロセニルジホスフィンが配位子として高触媒活性達成 に決定的な役割を果たしていること,さらに系中で生成する シリルラジカルが活性種であることなどを明らかにし,詳細 な反応機構を解明した. この研究の過程において,もう一つ重大な発見があった. 実はフェロセン[Fe (η5-C 5H5)2]などの鉄錯体が,窒素固定能 図 3 遷移金属窒素錯体とその反応性(その 2) a)窒素分子を開裂した鉄窒素錯体と水素ガスの反応による化学量論的なアンモニア生成反応.鉄錯体が窒素分子の三重結合を開裂 し,対応する架橋ニトリド錯体が生成する.続いて架橋ニトリド錯体が水素分子と反応し,アンモニアが生成する.b)❶多座配位 子をもつ鉄窒素錯体の特異な反応性.❷四座配位子をもつ鉄窒素錯体上の末端窒素のシリル化反応と鉄錯体上でのアンモニアと窒 素ガスとの配位子交換反応.配位子交換反応では還元剤の添加が交換反応促進の鍵となっている.❸三座配位子をもつ高原子価鉄 ニトリド錯体からのアンモニア生成反応.ニトロゲナーゼのモデル反応でもある. Me3SiCl Na-Hg B Ph N N N N tBu tBu tBu2 N N FeV N H2O NH3 + SiMe3 Fe B N N iPr2P iPr2P PiPr2 Na Fe B N N iPr2P iPr2P PiPr2 BArF 4 Fe Si NH3 iPr2P iPr2P PiPr2 BArF 4 N2(1 atm) Co Fe Si N iPr2P iPr2P PiPr2 N B Ph X N N N N tBu tBu tBu2 N N FeII Cr b) N2(1 atm) KC8 N N Fe Cl Fe Cl N N Ar Ar Ar Ar Ar = 2,6-ジメチルフェニル Fe N N Ar Ar N N Fe Ar Ar N N Fe Ar N N Fe N N Ar K K Cl Cl H2(1atm) NH3 25℃ a) Fe B N N iPr2P iPr2P PiPr2 1 2 3

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をもつことを見いだしたのである.先述の研究途上,補助配 位子として用いたフェロセニルジホスフィンのみで対照実験 を行ったところ,少量ではあるがシリルアミンの生成が確認 できた.最初は反応性に乏しいと思われたフェロセン誘導体 のみを用いてシリルアミンが生成したことが信じられず,何 度も追試を行って再現性を確認した.常識に囚われず,目の 前の実験結果からいかに真実を捉えるかの重要性を再認識さ せられた. この実験を最適化した結果,安価で入手容易な単なる鉄粉 に,一酸化炭素を吹き込むことで合成される鉄ペンタカルボ ニル錯体[Fe (CO) 5]が有効な触媒として働くことを見いだし た(図 4 b).反応時間 20 時間で鉄金属当たり 25 当量のシリ a) b) d) CO Fe OC OC CO CO O C C O OC CO 25 17 N2 + 6 Na + 6 Me3SiCl (1atm) 室温THF 2 N(SiMe3)3 触媒 H3O+ 2 NH3 CrCl3 5 (還元剤:リチウム) (P=PMe2Ph) N Mo N N N P P P P N Mo N P P P P N N Et2 Et2 Et2 Et2 Fe Fe N2 + 6 Na + 6 Me3SiCl (1atm)還元剤 シリル化試薬 シリルアミン 鉄触媒の構造と鉄当たりの シリルアミン生成量(当量) 2 N(SiMe3)3 THF 室温,20時間 触 媒 27 Fe CO CO I Fe Fe 13 Fe Fe Me3Si SiMe3 23 Fe Me3Si Me3Si

Me3Si SiMe3SiMe3 SiMe3 34 FeFeCl2] [FeCl3][(Me3Si)2N ­ Fe­N(SiMe3)2] PF6 Fe 触媒活性なし 触媒の構造と触媒当たりのシリルアミン生成量(当量) 226 24 Fe OC OC CO COSiMe3 SiMe3 29 c) [Fe(N2)(SiMe3)2(THF)] (三重項) Fe SiMe3 Me3Si N N O Fe (Me3Si)3Si (Me3Si)3Si O [Fe(SiR3)2(THF)] T.D.Tilley, A. L. Rheingoldら (1987 年) Y. Sunadaら (2010 年) [Fe (SiR3) 2(C6H6)] 2(N2) ジシリル鉄錯体および鉄窒素錯体の合成例 鉄窒素錯体の推定構造 DFT計算(理論計算)の結果 Fe N N O Si Si 正四面体構造 SiMe2 Me2Si Fe N N Fe SiMe2 Me2Si N2(1atm) [Fe] [Fe(SiMe3)2(thf)]FeN N N(SiMe3)3 n Me3Si n Me3SiCl + n Na THF [Fe(CO)5] あるいは Fe 鉄錯体 窒素ガス 窒素錯体 3 Me3Si シリルラジカル ヒドラジド型錯体 アミン錯体 シリルラジカル シリルラジカル シリルアミン N(SiMe3)3 シリルアミン 3 Me3Si [Fe] N N SiMe3 SiMe3 SiMe3 [Fe] N SiMe3 SiMe3 SiMe3 図 4 遷移金属錯体を用いた触媒的シリルアミン生成反応 a)塩化クロムおよびモリブデン窒素錯体を用いた触媒的シリルアミン生成反応.b)鉄錯体を用いた触媒的シリルアミン生成反応.鉄 カルボニルやフェロセンなどを含む単純で入手容易な鉄錯体が有効な触媒として働くことが明らかとなった.c)理論計算により推定 した鉄窒素錯体の構造.構造推定に参考にしたジシリル鉄錯体およびジシリル鉄窒素錯体の報告例.d)理論計算により推定した触媒 反応経路.系中で生成したジシリル鉄錯体に窒素分子が配位し,この配位窒素分子の末端窒素に対してシリルラジカルが反応するこ とで,対応するヒドラジド型錯体が生成する.続いて二つの窒素間の結合が開裂し,最初のシリルアミンが得られる.シリルアミン が脱離して生成した活性な鉄錯体に対してシリルラジカルが反応することでアミン錯体が生成し,これから二つ目のシリルアミンが 得られる.ただし,ここで示した反応サイクルは概略のみであり,実際には 12 個の反応中間体を経由する複雑な反応経路で進行する.

(7)

解 説

ルアミン生成が確認できた13).鉄錯体を用いて,常温常圧で 窒素ガスがアンモニア等価体であるシリルアミンへと触媒的 に変換できたのである.いくつかの鉄カルボニル錯体に加 えて,フェロセン[Fe (η5-C 5H5)2]も若干活性は低いものの触 媒として働くことが明らかになり,それにトリメチルシリル 基を導入するとさらに触媒活性が向上した.一方,塩化鉄 ([FeCl2]や[FeCl3]),ビスアミド鉄錯体[Fe 〔N (SiMe3)2〕2],

ベンゼン鉄錯体[Fe (η5-C 5H5(η) 6-C6H6)] PF6などは有効な触 媒として働かなかった. この触媒反応の反応混合物からは,反応中間体を含めて鉄 錯体を観測することはできなかった.水銀を存在させて反応 を行った場合でも,反応系には影響は見られなかった.この 結果は,鉄ナノ粒子が活性種であるような不均一系ではな く,鉄錯体が活性種である均一系で反応が進行することを示 唆している.鉄カルボニル錯体およびフェロセンの両方に触 媒能があることから,反応系中で共通のある種の鉄窒素錯体 が活性種として生成していることが推定される.ジアミド 鉄錯体[Fe 〔N (SiMe3) 2〕 2]が不活性であったのに対して,ジ シリル鉄錯体[Fe (SiMe3) (CO)2 4]14)が活性であったことや,

ジシリル鉄錯体やジシリル鉄窒素錯体に関する報告例15,16) 考慮して,活性種はジシリル鉄窒素錯体[Fe (N2) (SiMe3)2] であると推定した.理論計算から,ジシリル鉄窒素錯体 [Fe (N2(SiMe) 3)(THF)]の存在(図 4 c)ならびに触媒反応経2 路についても図 4 (d)のように提案を行うことができた. 鉄窒素錯体の存在と反応機構に関する知見は,実験的には 得られていなかったが,触媒反応の結果は数年前にすでに見 いだしていた.しかし,共同研究者である吉澤教授らの尽力 により,反応活性種としての鉄窒素錯体ならびに反応経路の 提案を行うことができた.異なる分野の共同研究が大きな前 進を生む結果となったのである. ● 鉄カルボニル錯体やフェロセンなどの安価で入手が容易な 鉄錯体が窒素固定能をもっていることを最近の研究で明らか にした.研究室で普通に転がっているような単純な鉄錯体 が,窒素固定能を秘めていたことは大きな驚きである.この 系は,窒素ガスからの直接的なアンモニア生成系ではないが, アンモニア等価体であるシリルアミンの生成に成功し,鉄触 媒を用いた穏和な反応条件下での触媒的窒素固定の最初の成 功例である.この研究成果は,ニトロゲナーゼでの窒素分子 の変換がモリブデンと鉄のどちらの金属上で進行しているか を解明するのに重要な情報を与えるとともに,直接的なアン モニア生成反応系の開発に向けて大きな指標ともなりうる興 味深いものである17).しかし,現段階では学術的にはきわめ て興味深いものの効率的とはいえず,実用に耐えられる触媒 活性を達成したとはいいがたい.今後,電気化学的手法や水 のような安価な試薬を利用して反応を進行させることができ れば,化石燃料から製造する必要のある水素ガスをまったく 使わずに,より経済的で効率的なアンモニア合成を達成でき ることが期待される.これらの将来性を考慮すると,この反 応系は将来大きく展開できる可能性を秘めていると確信して いる.最初で述べたように,ハーバー・ボッシュ法に代わる 穏和な反応条件下で進行する簡便で経済的な次世代型窒素固 定法の開発が期待されている.筆者らもその一翼を担うこと を願いながら研究室スタッフおよび学生一同,日夜奮戦中で ある. 謝辞:最後になりましたが,触媒的シリルアミン生成反応の反応経 路解明にご尽力いただきました共同研究者である九州大学の吉澤一 成教授および研究員の田中宏昌博士に厚く御礼申し上げます.両氏 のご尽力なしには研究展開は不可能でした.また,本研究課題に関 する当研究室の共同研究者である研究員・結城雅弘博士,大学院生・ 佐々木晃逸修士,助教・三宅由寛博士の各氏にこの場を借りて深謝 致します. 参 考 文 献

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