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壁面緑化による空調熱負荷軽減に関する研究 (その1)熱的薄壁試験体による日射遮蔽効果の比較検討(PDF)

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Academic year: 2021

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(その1)熱的薄壁試験体による日射遮蔽効果の比較検討

橋本 幸博* 安井 悠希子**

Study on Cooling Load Reduction by a Planted Wall

Part1 Discussion on the Shield Effect of Solar Radiation by Thin Wall Test Panels Yukihiro HASHIMOTO Yukiko YASUI

Abstract

This paper investigates the shield effect of solar radiation by a planted wall. Heat flows are compared by using 4 thin wall test panels of non-insulated, internally insulated, externally insulated and planted walls. Surface temperatures and heat flows are measured for each test panel to analyze the effect of solar radiation on the typical days of summer and autumn in 2009. As a result, a planted wall is observed to cancel solar radiation by climbing plant leaves.

Keywords: Planted Wall, Energy Saving, Cooling Load, Solar Radiation, Thin Wall 1.はじめに 近年、都市部におけるヒートアイランド現象 は熱帯夜の増加や局地的豪雨をはじめとする異 常気象の誘発など、地球温暖化の様々な影響が 観測されている。東京都では1905 年から 2003 年までの約 100 年間で年平均気温が 3.0℃上昇 している。他の大都市の平均上昇気温2.4℃、中 小規模の都市の年平均上昇気温 1℃に比べると 大きな差であり、ヒートアイランド現象の傾向 が顕著に現れている。東京都では、ヒートアイ ランド現象対策として屋上緑化や壁面緑化など の都市部の緑化を推進している。特に壁面緑化 は、屋上空間よりも容易に面積的に広い緑化が できること、隣接する建物や歩行者などの周囲 から目に留まりやすく美観効果が高いことから、 屋上緑化に続いて関心が高まっている。壁面緑 化によって得られる主な効果には、建築物外壁 表面温度の低減効果、室内の温熱環境緩和効果、 日射遮蔽による省エネルギー効果、建築・構造 物の保護効果などが挙げられる。特に、建物の 日射遮蔽効果に関しては、西日を受ける西面で は、垂直面日射量が増大することから、壁面緑 化が効果を発揮するものと期待される。壁面緑 化は、建築物に対する外部遮蔽であり、植物の 蒸散作用による表面温度の低下が利用できるこ とから、日射遮蔽効果は大きいと考えられる。 壁面緑化の施工方法としては、①建物の下部 から主として蔓性植物を上方へ立ち上げる方法 ②建物の屋上から、主として蔓性植物を下方 へ降ろす方法 ③建物の外壁面に植物の鉢植な どのユニット化された植栽を設置する方法(写 真1)の 3 種類が行われている。 屋上緑化に関しては多くの研究事例が示され ているが、壁面緑化に関する研究事例は屋上緑 化に比べるとまだ十分とはいえない。 本研究では、非緑化・非断熱パネル、内断熱 パネル、外断熱パネル、壁面緑化パネルの計 4 つの条件の異なった試験体を用い、壁面緑化に よる日射遮蔽効果について表面温度、熱流量及 び垂直面日射量を計測して比較・検討を行い、 壁面緑化の日射遮蔽効果が十分期待できること を確認する。 写真1 壁面緑化の例(都心のオフィスビル)

* 職業能力開発総合大学校 建築システム工学科 Dept. of Architectural System Engineering, Polytechnic University **(独)雇用・能力開発機構 高知センター Kochi Center, EHDO

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2.実験概要 2.1 試験体概要 職業能力開発総合大学校1 号館屋上に、図1 に示す計4 体の試験体(左から非緑化・非断熱 パネル、内断熱パネル、外断熱パネル、壁面化 パネル)を設置し、試験体の表面を真南に向け る。太陽の南中時前後に塔屋及び他の試験体の 日影にならないように設置位置に配慮する。ま た、下げ振りを使用し試験体の設置角度を垂直 に調整する。熱的薄壁試験体パネルには、いず れも高さ1200mm ×幅 900mm×厚さ 12mm の建 築用合板を使用し、内断熱パネルと外断熱パネ ルの断熱材には厚さ50mm の押出ポリスチレン フォームを使用する。4体の試験体のパネル表 面及び断熱材表面に塗装は施さず、元の材料の 状態にする。壁面緑化パネルには、ヘデラ・ヘ リックス(セイヨウキヅタ Hedera helix キヅ タ属ウコギ科)を4鉢使用して、パネル表面に 設置したネットに蔓を絡ませて、パネル表面が 葉で十分に被われるようにする。各試験体は、 屋上スラブ表面からの熱的影響及び雨水による 劣化を緩和するために、レンガで屋上スラブ面 から約100mm 浮かせて設置した。 図2 に示すように、4 体の試験体すべての合 板及び断熱材の表面・裏面の中央部分に熱電対 の先端をコーキング材で貼り付けて、温度計測 を行う。内断熱パネル及び外断熱パネルには表 面・裏面に加え、断熱材とパネルの間にも熱電 対を取り付ける。また、4 体の試験体の裏面に 熱流計を取り付け貫流熱量の計測を行う。 4 体の試験体は屋上の日向に設置していて、 表面・裏面共に外気に接していることから、熱 的な影響は垂直面日射量のみに依存するものと 考えられる。 試験体パネルは、厚さ12mm の建築用合板で あり、熱容量が小さいことから、蓄熱による熱 伝導の時間遅れを無視できる熱的薄壁と見なす。 2.2 計測の概要 2009 年 8 月 26 日(水)から 10 月 31 日(土)にか けて、熱電対による温度計測、熱流計による貫 流熱量の計測及び水平面全天日射量の計測を行 った。水平面全天日射量を計測するための日射 計は、日影にならないように塔屋のパラペット 上に水平に設置した。計測データは、データロ ガーで1 分毎に採取して、PC にデータを保存し た。PC に保存した 1 分データは、10 分データ に変換して解析に使用する。また、10 月 22 日 (木)より日射計をもう1台設置して、試験体パ ネルの上部に固定して、南面の垂直面日射量の 計測を行った。表1 に、計測器の仕様を示す。 図1 試験体全体図   非緑化・比断熱 (基本型)S=1/10 外断熱 S=1/5 (基本型+断熱材) 内断熱 S=1/5(基本型+断熱材) 緑化 S=1/5 (基本型+緑化) 154 620 熱電対 熱流計 12 00 図2 試験体断面図 (熱電対・熱流計設置位置詳細図) 表1 計測器の仕様 種類 仕 様 備考 熱電対 T-CC 0.32φ 100×50×3t 京都電子工業 熱流計 測定範囲 0~3500W/㎡ ER2 出力 7mV/kW/㎡ 英弘精機 (水平面日射量) MS-601 出力 7mV/kW/㎡ 英弘精機 日射計 (垂直面日射量) ML-020VM 江藤電気 データロガー アナログ入力100 点 CADAC2 表2 代表日の気象条件(八王子) 8 月 27 日 10 月 28 日 平均気温(℃) 24 14.8 最高気温(℃) 30.4 21.9 最低気温(℃) 18 8.9 平均風速(m/s) 2.5 2.6 日照時間(h) 12 9.8 水平面日射量最大値(W/㎡) 923 693 垂直面日射量最大値(W/㎡) ― 950 職業能力開発総合大学 第40号A (理工学・技能編) 職業能力開発総合大学校紀要 第40号A (理工学・技能編)

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長期間連続的に計測を行った中で、晴天に恵 まれ、比較的日照時間が長く風速の小さい8 月 27 日(夏期)と 10 月 28 日(秋期)の 2 日間を 代表日とし、比較・検討を行う。表2 に気象庁 気象統計情報による各代表日の気象条件の詳細 を示す。 3.実験結果と考察 3.1 温度変化の比較 図3 と図 4 に代表日における各試験体の表裏 面温度変化と日射量を示す。図3 は、垂直面日 射量の計測を開始した10 月 22 日以前のため、 水平面日射量を採用し、図4 には垂直面日射量 を採用する。 図3 と図 4 の各試験体表面温度をみると、非 緑化・非断熱パネル及び内断熱パネルと比較し て外断熱パネル及び壁面緑化パネルの温度は 10℃前後低い。外断熱パネルでは、断熱材の反 射率が合板より高く、日射の熱的影響が緩和さ れているためであると考えられる。また、壁面 緑化パネルでは、緑化により日射遮蔽されてい るためである。 8 月 27 日の各試験体裏面温度は、14 時頃をピ ークに、非緑化・非断熱では40.6℃、内断熱で は 36.7℃、外断熱では 38.0℃、壁面緑化では 38.1℃を示している。非緑化・非断熱は、他の 試験体より約 2.5~4℃高い温度を示しているこ とから、日射の影響を大きく受けていることが わかる。また、同時刻の外気温度は30.4℃程度 であると考えられるので、いずれの試験体も日 射の影響は多少存在する。 10 月 28 日の各試験体裏面温度では、13 時前 後をピークに非緑化・非断熱では30.6℃、内断 熱では25.1℃、外断熱では 28.9℃、壁面緑化で は25.3℃を示している。非緑化・非断熱は、他 の試験体より約 2~5℃高い温度を示している。 これは、断熱材及び植物によって、日射による 熱的影響が緩和されていることを表している。 非緑化・非断熱と壁面緑化のみ比較すると、8 月27 日では 2.5℃、10 月 28 日では 5.3℃の温度 差が生じている。このことから、壁面に緑化を 施すことにより、50mm 厚の断熱材とほぼ同程 度の日射遮蔽効果が得られることが分かる。 3.2 垂直面日射量と熱流量の相関 図5 に、10 月 28 日における各試験体の垂直 面日射量と熱流量の相関を示す。ここでは、日 射量が得られる7 時から 16 時のデータ(1 分デ ータ540 個)のみを採用している。なお、試験 体は熱的薄壁であることから、熱伝導における 時間遅れを無視し、定常伝熱とみなすので、 各試験体表面温度と水平面日射量 2009/8/27 0 10 20 30 40 50 60 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 時間 温度 (℃ ) -200 0 200 400 600 800 1000 水平 面日 射量 (W /㎡ ) 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 壁面緑化 水平面日射量 (a) 各試験体表面温度変化と水平面日射量 各試験体裏面温度と水平面日射量 2009/8/27 0 10 20 30 40 50 60 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 時間 温 度( ℃) -200 0 200 400 600 800 1000 水 平面 日射 量 (W /㎡ ) 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 壁面緑化 水平面日射量 (b) 各試験体裏面温度変化と水平面日射量 図3 各試験体温度変化と水平面日射量 (2009 年 8 月 27 日) 各試験体表面温度と垂直面日射量 2009/10/28 0 10 20 30 40 50 60 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 時間 温度 (℃) 0 200 400 600 800 1000 垂直 面日 射量 (W /㎡ ) 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 壁面緑化 垂直面日射量 (a) 各試験体表面温度変化と水平面日射量 各試験体裏面温度と垂直面日射量 2009/10/28 0 10 20 30 40 50 60 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 時間 温度 (℃) 0 200 400 600 800 1000 垂 直 面日 射量 (W /㎡ ) 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 壁面緑化 垂直面日射量 (b) 各試験体裏面温度変化と水平面日射量 図4 各試験体温度変化と水平面日射量 (2009 年 10 月 28 日)

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同時刻のデータの相関を分析する。 非緑化・非断熱パネルの相関を見ると、垂直 面日射量が増加すると熱流量も同じく増加して おり、正の相関を示している。相関係数が R2 =0.8 と高い値を示していることから、パネルの 熱流量における垂直面日射量の依存性が高いこ とが分かる。 内断熱パネル、外断熱パネル、壁面緑化パネ ルの日射量と熱流量の相関をみると、内断熱パ ネルではR2=0.12、外断熱パネルでは R2=0.0125、 壁面緑化パネルではR2=0.0105 であり、日射量 が増加しても熱流量が必ずしも増加するわけで はなく、相関が非常に低いまたは無相関である ことを示している。非緑化・非断熱パネルでは 正の相関を示していたことから、内断熱・外断 熱パネルは断熱材、壁面緑化パネルでは植物に よって日射を遮り、日射熱の伝達を緩和させて いることが分かる。 内断熱・外断熱パネルと壁面緑化パネルの相 関係数を比較すると、ほとんど差がなく緑化と 断熱材に同等の効果が見られる。このことから、 壁面緑化による日射遮蔽が十分効果的であるこ とが分かる。 3.3 熱流量の比較 図6 に、代表日における一日の熱流量の変化 を示す。図7 には代表日における日平均熱流量 を示す。 8 月 27 日の熱流量のピークは、非緑化・非断 熱パネルが82W/㎡、内断熱パネルが 67 W/㎡、 外断熱パネルが58 W/㎡、壁面緑化パネルが 66 W/㎡の値を示している。ピークのみに焦点をあ てると、外断熱が最も値が小さいが、図7 の一 日の平均熱流量では、非緑化・非断熱パネルが 11.9W/㎡、内断熱パネルが 4.3 W/㎡、外断熱パ ネルが2.2 W/㎡、壁面緑化パネルが-0.6 W/㎡で、 壁面緑化の熱流量が最小値を示している。壁面 緑化パネルでは、熱流量が最小であるだけでな く、負の値を示している。これは、壁面緑化パ ネルの表面がヘデラの蒸散作用によって冷却さ れていることを示している。10 月 28 日の 1 日 の 平均熱流 量も、非 緑化 ・非断熱 パネル が 25.6W/㎡、内断熱パネルが 4.0 W/㎡、外断熱パ ネルが5.5 W/㎡、壁面緑化パネルが 3.3 W/㎡で、 8 月 27 日と同様に壁面緑化の熱流量が最小値を 示している。8 月 27 日における壁面緑化の熱流 量がマイナスの値を示していることから、パネ ル表面温度より裏面温度の方が高いことが分か る。これは、植物によってパネル(建築用合板) 表面に日射が直接当たるのを防ぐことで、壁面 の表面温度上昇を抑制しているためだと考え <非緑化・非断熱> 熱流量と垂直面日射量 相関図  2009/10/28 7:00~16:00 y = 0.1392x - 17.304 R2 = 0.7986 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 200 400 600 800 1000 1200 垂直面日射量(W/㎡) 熱流 量  W / ㎡ (a) 非緑化・非断熱 <内断熱> 熱流量と垂直面日射量 相関図  2 009/10/ 28 7:0 0~16 :00 y = 0 .0142x + 1.2612 R2 = 0.1198 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 200 400 600 800 1000 1200 垂直面日射量(W/㎡) 熱流量  W /㎡ (b) 内断熱 <外断熱> 熱流量と垂直面日射量 相関図  2 009/10/ 28 7:0 0~1 6:00 y = -0.0079x + 1 3.733 R2 = 0.0 126 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 200 400 600 800 1000 1200 垂直面日射量(W/㎡) 熱流量   W /㎡ (c) 外断熱 <壁面緑化> 熱流量と垂直面日射量 相関図  200 9/1 0/2 8 7:0 0~16 :00 y = -0.0044x + 2.731 4 R2 = 0 .0105 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 200 400 600 800 1000 1200 垂直面日射量(W/㎡) 熱流 量  W /㎡ (d) 壁面緑化 図5 熱流量と垂直面日射量 (2009 年 10 月 28 日) 職業能力開発総合大学 第40号A (理工学・技能編) 職業能力開発総合大学校紀要 第40号A (理工学・技能編)

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られる。また、植物の葉からの蒸散作用により 周辺の空気が冷却されることで、パネル表面の 温度が低下し、パネル裏面より低い温度を示し ていると考えられる。このことから、夏期及び 秋期において、壁面緑化による日射遮蔽が十分 効果的であることが分かる。 10 月 28 日よりも外気温度が高く日照時間が 長い真夏日の8 月 27 日の方が、非緑化・非断熱 パネルにおける1 日の平均熱流量が小さく、約 半分の値を示している。前項の熱流量と垂直面 日射量の関係より、非緑化・非断熱パネルの熱 流量に、垂直面日射量が大きく寄与しているこ とが分かった。垂直面日射量は太陽高度が大き く関係している。太陽高度が低くなることで、 垂直面(試験体表面)における日射の入射角が 小さくなり、日射の当たる面積及び日射量が多 くなる。そのため、太陽高度が低い10 月の方が、 8 月よりも垂直面に当たる日射量が多く、熱流 量も増加したと考えられる。内断熱・外断熱パ ネルにおける1 日の平均熱流量は、前項で述べ たとおり日射量との相関が非常に低いため、大 きな差は見られない。10 月 28 日の壁面緑化パ ネルにおける1 日の平均熱流量は、8 月 27 日の 平均熱流量が負の値を示していることと比較す ると、正の値に転じていることが指摘できる。 これは、垂直面日射量が増加したことから、葉 と葉の隙間からパネル(建築用合板)に直接当 たる日射の増加及び日射の反射率が増加したた めではないかと考えられる。また、夏期におい ては、ヘデラの蒸散作用が活発で、秋期には蒸 散作用が抑制されているのではないかと考えら れる。 3.4 熱画像の比較 図8 に 2010 年 8 月 3 日 12 時における試験体 の熱画像を示す。当日の水平面全天日射量の最 大値は940W/m2であり、南面の垂直面日射量の 最大値は 537W/m2である。熱画像の撮像には、 サーモトレーサー(NEC 三栄 TH-3100)を使用 した。左から、非緑化・非断熱、内断熱、外断 熱、壁面緑化パネルである。屋上スラブ表面温 度(水平面温度)は、最大で57℃程度になって いる。屋上スラブ表面の仕様は、軽量コンクリ ートの上に防水塗装が施工されている状態であ る。壁面緑化パネル表面温度は、33℃程度であ り、外気温度(32.7℃ 八王子 12 時)と同等で ある。これは、壁面緑化に使用しているヘデラ・ ヘリックスの葉の表面温度である。一方、非緑 化・非断熱及び内断熱パネルでは、48℃程度で あり、外断熱パネルでは42℃程度である。非緑 化・非断熱及び内断熱パネルの方が外断熱パネ 熱流量 2009/08/27 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14: 00 16 :00 18: 00 20:00 22:00 時間 熱流 量  W /㎡ 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 緑化 (a) 熱流量(2009 年 8 月 27 日) 熱流量 2009/10/28 -120 -80 -40 0 40 80 120 160 0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00 時間 熱 流 量( W /㎡) 非緑化・ 非断熱 内断熱 外断熱 壁面緑化 (b) 熱流量(2009 年 10 月 28 日) 図6 代表日における熱流量の変化 一日の平均熱流量 2009/8/27 -5 0 5 10 15 20 25 30 非緑化・非断熱 内断熱 外断熱 緑化 熱流 量( W /㎡ ) (a) 日平均熱流量(2009 年 8 月 27 日) 2009/10/28 代表日における平均熱流量 0 5 10 15 20 25 30 非緑化 内断熱 外断熱 緑化 熱流 量( W /㎡) (b) 日平均熱流量(2009 年 10 月 28 日) 図7 代表日における日平均熱流量

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ルより表面温度が 6℃程度高いのは、建築用合 板の日射吸収率がポリスチレンフォームの日射 吸収率より高いことによると考えられる。ちな みに、背景の温度が低い部分(33℃程度)は、1 号館北側に生育している広葉樹の葉の表面であ る。以上から、表面温度を低下させるためには、 植栽を利用することが効果的である。 壁面緑化は建物外部の表面温度を外気温度と 同程度に低下させることから、建物の空調熱負 荷を軽減するだけでなく、都市の放射環境の改 善に寄与すると期待できる。ヒートアイランド 現象の緩和には、都市の表面温度を低下させる ことが有効であることから、建物の外部表面を 緑化することは建物の内部及び外部に対して二 重に好ましい影響を与える。 4.まとめ 本実験を行った結果、各試験体の裏面温度の 比較より、壁面に緑化を施すことによって厚さ 50mm の断熱材を用いた内断熱・外断熱とほぼ 同程度の日射遮蔽効果が得られることが分かっ た。 本実験では、熱的薄壁試験体を使用したため、 熱伝導における時間遅れがないものとし、定常 伝熱とみなした。今後は、実際の建物を想定し て、蓄熱を考慮した非定常伝熱での実験を検討 する必要がある。また、本実験では、試験体パ ネルを南面に向けて設置したが、今後は垂直面 日射量の影響が最大となる西面における壁面緑 化の効果を壁面緑化なしの場合と比較検証した い。 【参考文献】 1)橋本幸博:屋上緑化の熱的評価に関する研究 第一報-夏季実測による土壌下部及びウッドデッキ下 部スラブ表面温度特性の検討、空気調和・衛生工学会論 文集No.120 2007 年 3 月 2)安井悠希子:壁面緑化の熱的特性に関する研究 ~壁面 緑化と内外断熱試験体による日射遮蔽効果の比較検討 ~、平成21 年度職業能力開発総合大学校卒業研究論文、 2010 3) 吉田伸治:緑のカーテンの夏季熱環境緩和効果に関す る研究 緑のカーテンの室内温熱環境緩和と日射遮蔽 性能の評価、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集 2009.9.15~17(熊本) 4)東京都環境局公式ウェブサイト「東京の環境」 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/ 5)気象庁気象統計情報 http://www.jma.go.jp/jma/index.html 6) 講談社エディトリアル編集:都市空間を多彩に創造す る屋上緑化&壁面緑化、講談社、2006 図8 熱画像 (2010 年 8 月 3 日 12 時) 48℃ 50℃ 42℃ 33℃ 57℃ 職業能力開発総合大学 第40号A (理工学・技能編) 職業能力開発総合大学校紀要 第40号A (理工学・技能編)

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