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Hanbury-Brown Twiss (ver. 2.0) van Cittert - Zernike mutual coherence

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(1)

星の視直径測定にまつわる話:マイケルソン干渉・

Hanbury-Brown Twiss

効果

(ver. 2.0)

河原 創

平成 25 年 4 月 4 日

目 次

1 はじめに 2

2 二次のコヒーレンス 2

2.1 van Cittert - Zernike定理 . . . . 2

2.2 一様ディスクの mutual coherence . . . . 4 3 Hanbury-Brown Twiss効果 (四次のコヒーレンス) 5 3.1 波の強度干渉 . . . . 5 3.2 HBT効果と強度相関関数 . . . . 6 3.3 半古典論ー Mandel の光子統計 . . . . 7 3.4 熱輻射 . . . . 9 4 Hanbury-Brown Twiss効果の量子光学的記述 10 4.1 量子力学とヒルベルト空間の復習 . . . . 10 4.2 生成消滅演算子と光子数状態. . . . 11 4.3 コヒーレント状態 . . . . 11 4.4 コヒーレント状態の電場 . . . . 13 4.5 光子の熱的励起状態 . . . . 13 4.6 コヒーレント状態の混合状態としての単一モードの光子の熱的励起状態 . . . . 14 4.7 HBT . . . . 15 4.8 光子数状態に対する g2 . . . . 15 4.9 コヒーレント光に対する g2. . . . 16 4.10 カオス光に対する g2 . . . . 16 5 遮蔽による天体の回折 16 5.1 Helmholtz-Kirchhoffの定理 . . . . 16 A 準単色光の表現 17

(2)

1

はじめに

この文章は、恒星の視直径測定というある意味マニアックな話に、たまたま出会ってしまった私1が、個 人的に調べ、まとめたものです。すなわち私の専門分野ではありません。星の視直径を測るという研究が、 Hanbury-Brown Twiss効果を通じて、光の量子的性質の解明につながっていったという歴史的側面が、非常 にかっこいいと思うのです。参考にした図書は • ウォルフ:光のコヒーレンスと偏光理論 • Mark Fox:Quantum Optics An Introduction • ボルン・ウォルフ: 光学の原理 • 松岡正浩: 量子光学 • 北野正雄:量子力学の基礎 などです。なぐり書きの文面ですし、いろいろ誤解・不足等もあるとおもいます。間違い・勘違いなどのご 指摘は [email protected] までお送りいただけるとうれしいです。 ちなみに私の最近の専門は、太陽系外惑星、特に地球型惑星の表面の地図を反射光から作製する方法論の開 発です (Spin-Orbit Tomography: Kawahara and Fujii 2010,Kawahara and Fujii 2011,Fujii & Kawahara submitted)。これは限りなく小さい系外惑星の表面を見る方法論ですので、遠くの小さいものを見るという 点で恒星の視直径測定と似ています。それゆえ親近感がわいたのかもしれません。

2

二次のコヒーレンス

遠方にある天体と光の干渉の間を結ぶ基本定理である van Cittert-Zernike 定理について述べる。ここで考 えている光は準単色光とよばれるもので、その場の記述の仕方は Appendix A にのせておいた。しかし基本 的には単色光のように複素数で表される場 V を考えればよい。

2.1

van Cittert - Zernike

定理

相互コヒーレンス関数 (mutual coherence function)

Γ(Q1, Q2, τ )≡ ⟨V∗(Q1, t)V (Q2, t + τ )⟩ (1)

とこれを規格化した複素コヒーレンス度 (complex degree of coherence) γ(Q1, Q2, τ )≡⟨V (Q1, t)V (Q2, t + τ )I(Q1)I(Q2) (2) を定義する。 1新宿ジュンク堂で

(3)

P2 P1 Sm Rm1 Rm2 図 1: 有限な光源上の素片 Smから2つの点 P1, P2への光線。 図1のような有限の光源中の素片 Smから出た光 Amを用いて、点 P1、P2への場は Vm1(t) = Am(t− Rm1/c) e−iω(t−Rm1/c) Rm1 (3) Vm2(t) = Am(t− Rm2/c) e−iω(t−Rm2/c) Rm2 (4) となる。すると全有限領域から P1、P2への場の同時刻相互コヒーレンスは Γ(P1, P2, 0) ≡ ⟨V∗(P1)V (P2) (5) = ∑ m ⟨A∗ m(t− Rm1/c)Am(t− Rm2/c)⟩ e−iω(Rm2−Rm1)/c Rm1Rm2 (6) (7) である。ここで光路差 Rm1− Rm2がコヒーレンス長 ∆∼ 2πc/∆ω より小さい領域では Amは変化しない から、 Γ(P1, P2, 0) = ∑ m ⟨A∗ m(t)Am(t)⟩ e−iω(Rm2−Rm1)/c Rm1Rm2 (8) I(S)e −iω(R2−R1)/c R1R2 dS (9) 最後の近似は Rm1≈ R1、Rm2≈ R2を用いている。複素相互コヒーレンス度を用いて書くと γ(P1, P2, 0) = 1 √ I(P1)I(P2) ∫ I(S)e −iω(R2−R1)/c R1R2 dS  (10) I(Pj) ≡ Γ(Pj, Pj, 0) =I(S) R2 j dS (11) となる。これが van Cittert-Zernike 定理である。 遠方領域においては、有限な光源に角度座標系 (α, β) をはり、点 P1,P2のところにも物理座標 (X1, Y1), (X2, Y2)を貼ることで γ(P1, P2, 0) =

eiψdαdβI(α, β)e−ik(αx+βy)dαdβI(α, β)   (12) ψ k[(X 2 2+ Y22)− (X12+ Y12)] 2R (13)

(4)

の形の二次元フーリエ変換となる。ここで x≡ X2− X1, y≡ Y2− Y1である。 これからわかるのは、二点 P1, P2をむすぶ線 (この線を基線という) を二次元上でさまざまな長さでとっ て、何らかの方法で mutual coherence (複素数) をはかれれば、フーリエ変換で天体の像が得られるという ことである。電波干渉計では P1、P2での波情報を記録し、あとで相関器にかけて相関を取ることができる ので、原理的には二次元フーリエ変換により像再生をすることができる。しかし、光赤外干渉計では直接光 を干渉させる必要があるため、一般の像再生ではもっと難しい逆問題となる。

2.2

一様ディスクの mutual coherence

星の視直径測定では一般の像再生は必要なく、一様の円盤を仮定すればよい。この場合、mutual coherence の絶対値と半径の関係を導出することができる。 式12において、強度分布が見込み角 ρ、基線長 b の時、 γ(P1, P2, 0) = 2J1(ν) ν e (14) ν ≡ kρb (15) となるので、 |γ(P1, P2, 0)| = 2J1(ν) ν (16) となり、mutual coherence の絶対値を知ることが出来れば、見込み角を知ることができる。最初のインコ ヒーレント、すなわち干渉縞がなくなる基線長は b = 0.61λ ρ (17) の時である。ここでシリウスの視直径を 6.3 mas (ミリ秒) として、波長 0.5 µ m の場合にこの基線長を見積 もってみよう。 0.61 0.5× 10 −6 0.0063π/(3600× 180) ∼ 10m (18) である。つまり 10 m 程度はなした二点での観測があればよい。 例えば P1と P2にきた光を点 Q で干渉させることを考えると、場は V (Q, t) = k1V (P1, t− t1) + k2V (P2, t− t2) (19) であるから、たとえば強度そのものは I(Q) = ⟨V∗(Q, t)V (Q, t)⟩ (20) = |k1|2⟨V∗(P1, t− t1)V (P1, t− t1)⟩ + |k2|2⟨V∗(P2, t− t2)V (P2, t− t2) + 2Re[|k1||k2|⟨V∗(P1, t− t1)V (P2, t− t2)⟩] (21)

= |k1|2I(P1) +|k2|2I(P2) + 2|k1||k2|Re[Γ(P1, P2, t1− t2)] (22)

= I(1)(Q) + I(2)(Q) + 2

I(1)(Q)I(2)(Q)Re[γ(P

(5)

となる (I(j)(Q)は片方の経路のみの場合の強度)。γ(P 1, P2, t1− t2)は A(t) と Φ(t) にくらべ δ = ντ = 2π(R2− R1)/λで早く振動するため、スクリーン上ではコヒーレント長の中では 2I(1)(Q)(1± |γ(P1, P2, t1− t2)|) (24) 間を振動するので (I(1)= I(2)を仮定), フリンジの高さを平均で割ったものが mutual coherence 絶対値の観 測量 visibility となる |γ(P1, P2, τ )| = Imax(P )− Imin(P ) Imax(P ) + Imin(P ) (25) マイケルソン干渉計では光路長を同じにして τ = 0 にしておくので、visibility から|γ(P1, P2, 0)| がわかる。 P2 P1 Q 図 2: ヤング干渉

3

Hanbury-Brown Twiss

効果

(

四次のコヒーレンス

)

マイケルソン型干渉では、visibility から mutual coherence の絶対値を求めたのに対し、強度干渉計では、 二点の強度 (ゆらぎ) の相関から mutual coherence の絶対値を求める。大気が効く場合、大気ゆらぎは phase のみ変えるので、強度干渉計は大気ゆらぎに強い。また光を直接干渉させなくて良いので装置の安定性も 強い。 P2 P1 図 3: 強度干渉計

3.1

波の強度干渉

50年代、Hanbury-Brown により確立された電波強度干渉法は、電波星からの電波強度ゆらぎを観測する ことで相互コヒーレンスに関する情報 (この場合は絶対値) を知る方法である。電波観測では波の情報を電子 情報として記録することができるので、ここでは光を波として扱い、波の強度相関を考えよう。

(6)

強度ゆらぎは

∆I(rj, t)≡ I(rj, t)− ⟨I(rj, t)⟩ (26)

で定義される。二点での強度ゆらぎの相関は ⟨∆I(r1, t)∆I(r2, t + τ )⟩

= ⟨(I(r1, t)− ⟨I(r1, t)⟩)(I(r2, t + τ )− ⟨I(r2, t + τ )⟩)⟩ (27)

= ⟨I(r1, t)I(r2, t + τ )⟩ − ⟨I(r1, t)⟩⟨I(r2, t + τ )⟩ (28)

= ⟨V∗(r1, t)V (r1, t)V∗(r2, t + τ )V (r2, t + τ )⟩ − ⟨V∗(r1, t)V (r1, t)⟩⟨V∗(r2, t + τ )V (r2, t + τ )⟩ (29) さてここで光を出しているものの確率過程を仮定する。熱放射の場合、V はガウス場となっているため、 ガウス過程 xjの Lsserlis の定理、⟨x∗1x2x∗3x4⟩ = ⟨x∗1x2⟩⟨x∗3x4⟩ + ⟨x∗1x4⟩⟨x2x∗3⟩ を用いると ⟨∆I(r1, t)∆I(r2, t + τ )⟩ = ⟨V∗(r1, t)V (r2, t + τ )⟩⟨V∗(r2, t + τ )V (r1, t)⟩ (30) = Γ(r1, r2, τ )Γ(r1, r2,−τ) (31) = |Γ(r1, r2, τ )|2 (32) となる2。強度ゆらぎ相関からは相互コヒーレンスの絶対値のみえられ、位相は得られない。この方法から、 電波星の直径が得られた。

3.2

HBT

効果と強度相関関数

Hanbury-Brownと Twiss は、星の直径測定のため可視・赤外光による強度相関を考えた。この場合、光 電子による検出がおこなわれるため、電波強度相関の時に用いられた定式化をそのまま適用できるか自明 ではない。彼らはまず実験的にこれを確かめ、その後、Hanbury-Brown らは、Narrabri Stellar Intensity Interferometerを製作し、32 個の近傍の高温星の視直径を求めた (Hanbury-Brown, Davis, Allen 1974)。こ の 32 個は数 mas から ζP up の 0.41± 0.03 mas (1969 年測定) までの非常に小さい視直径測定に成功してお り、40 年もの間、視直径測定最小記録を誇っている。私はいまの最新がどうだかは知らないが、Bigot et al. 2011ではマイケルソン型で 0.445 mas とでているのでそろそろ抜かれるか抜かれているだろう。しかしこの 強度干渉という方法論の孤高のかっこよさは永遠に失われないだろう。 今後のために式 (33)を二次の強度相関関数 g2(すなわち場の4次の相関) を用いて書いておく。 g2(τ ) = |γ(r1, r2, τ )|2+ 1 (33) g2(τ ) ⟨I(r 1, t)I(r2, t + τ )⟩ ⟨I(r1, t)⟩⟨I(r2, t + τ )⟩ (34) となる。この式から分かるように波の描像では g2≥ 1 である。 2最後の変形は Γ(r 1, r2,−τ) = Γ∗(r1, r2, τ )を用いた

(7)

1 2 PhotoMultiplier PhotoMultiplier correlator 0 beam spliter 図 4: HBT 実験、簡略図。

3.3

半古典論ー Mandel の光子統計

Mandelは半古典論的に光子の統計を考え、HBT の強度相関が古典論と同様になることを示した。Mandel の光子統計では、光を波として扱うが光電子過程のみ粒子として扱うことで、光子の離散からおこる統計性 を取り込んでいる。この場合、光電子が微小時間 t-t + ∆t の間に放出される確率は I(t) = V∗(t)V (t)に比例 する。すなわち P (t)∆ = αI(t)∆t (35) ここに α は量子効率。 さて t から t + T の間に n 個の光子が放出される確率 p(n, t, T ) は、T を T /∆t 区間に分割して、区間 tr1, ..., trnに一個ずつ光子が放出され(右辺第一項)、他の区間では放出されない確率 (第二項) の積である: p(n, t, T ) = lim ∆t→0 1 n!    T /∆t r1=0 T /∆t r2=0 ... T /∆t rn=0 (α∆t)n rnr=r1 I(tr)   ×T /∆t i=0 [1− αI(ti)δt]n j=1[1− αI(trj)δt] (36) = lim ∆t→0 1 n!{∗2} × ∗3 ∗1 (37) である。 ∗1 → 1 − nO(δt) → 1 (38) ∗2 →   T /δt r1=0 αI(tr1)δt   n [ αt+T t I(t′)dt′ ]n (39) ∗3 → exp [ −αt+T t I(t′)dt′ ] (40) を利用して p(n, t, T ) = 1 n![αW (t, T )] ne−αW (t,T ) (41) W (t, T ) t+T t I(t′)dt′ (42)

(8)

とかける。一般には光は入射場 I は集合であることから、W の確率分布を p(W ) として P (n, t, T ) = p(n, t, T ) = 0 dW p(W ) { 1 n![αW (t, T )] ne−αW (t,T ) } (43) p(n, t, T ) = 0 dW p(W )Pp(n, W ) (44) とかける (平均化∫0∞dW p(W )f (W )を f (W ) であらわす)。これを光子計数統計の Mandek 公式という。{} 内は通常のポアソン分布 Pp(n, W )であることに注意。時間間隔 t− t + T の間に計数される光子の分散は n = n=0 np(n, t, T ) = 0 dW p(W ) n=0 nPp(n, W ) (45) = ∫ 0 dW p(W )αW (46) = αW (47) n2 = n=0 np(n, t, T ) = 0 dW p(W ) n=0 n2Pp(n, W ) (48) = ∫ 0 dW p(W )(αW + α2W2) (49) = αW + α2W2 (50) を用いて (∆n)2 = n2− n2= αW + α2W2− α2W2 (51) = n + α2[∆W ]2 (52) となる。ここで第一項は離散過程によるポアソンゆらぎ、第二項は Intensity のゆらぎによる項である。この ように強度ゆらぎのある過程では一般に (∆n)2> nとなり、ポアソン分布より裾の広いスーパーポアソン分 布となる (バンチングともいう)。強度ゆらぎがなければ、(∆n)2= nとなり、ポアソン分布となる。コヒー レント光はこの条件を満たしている。しかし、半古典近似では扱えない、光そのものの量子化を考えると、 (∆n)2< nの状況も考えうる (アンチバンチング)。 さて HBT の計数ゆらぎ相関は Mandel の光子計数統計を用いると n1n2 = n1=0 n2=0 n1n2p1(n1, t, T )p2(n2, t, T ) (53) = n1=0 n1p1(n1, t, T ) n2=0 n2p2(n2, t, T ) = α1α2W1W2 (54) より ∆n1∆n2 = n1n2− n1n2= α1α2∆W1∆W2 (55) ∆Wj ≡ Wj− Wj (56) となる。すなわち計数ゆらぎの相関は古典場 W の強度ゆらぎの相関に比例するので、波の描像の結果と一 致する。

(9)

3.4

熱輻射

熱輻射の統計性を求める。熱輻射のあるモードの光は調和振動子エネルギー En= (n + 1/2)ℏω (57) の用いたボルツマン分布に従った確率で n 光子を持っている: Pω(n) = exp (−En/kT ) n=0exp (−En/kT ) (58) = x n n=0xn (59) = xn(1− x) (60) x ≡ exp (−ℏω/kT ) (61) ここに∑n=0xn= 1/(1− x) を用いた (x < 1)。平均光子数は n = n=0 nPω(n) (62) = n=0 nxn(1− x) (63) = (1− x)x d dx ( n=0 xn ) (64) = (1− x)x d dx ( 1 1− x ) (65) = x 1− x (66) (67) すなわち n = 1 exp (ℏω/kT ) − 1 (68) となる。Pω(n)を n で書き直すと Bose-Einstein 分布 Pω(n) = 1 n + 1 ( n n + 1 )n (69) であり、これを用いて、計数の分散を計算すると (∆n)2= n=0 (n− n)2Pω(n) = n + n2 (70) となっている。ただし現実にはモードの数 Nmだけなまされ (∆n)2= n + n2/Nm (71)

となるらしい (Mandel & Wolf 95) ので通常はポアソンとなる。

また式68が意味するのは温度が高いほど、バンチして、スーパーポアソンになるということである。HBT による視直径測定が高温度星の方が有利である理由となっている。

(10)

4

Hanbury-Brown Twiss

効果の量子光学的記述

量子光学的記述での HBT を考える。

4.1

量子力学とヒルベルト空間の復習

ここでは量子力学の表記について復習する。数学的な証明などは省くので適当な教科書を参考のこと。

ブラケット表記

量子力学で用いる状態は、複素数を係数にもつ有限もしくは無限次元のベクトル線型空間、ヒルベルト空 間H で表される。いまは有限次元の場合を考えよう。ψ, ϕ ∈ H として、ヒルベルト空間上での内積は、 (ψ, ϕ) = ψ· ϕ (72) と定義される。これを正規直交基底{ei} で展開する: ψ = ni=1 ξiei (73) ϕ = ni=1 ηiei (74) そうすると、ψ, ϕ の行列表記1, ξ2, , , , ξn} と {η1, η2, , , , ηn} が得られる。この行列表記で式 (72)を表すと {ξ∗ 1, ξ2∗, , , , ξn∗} T. 1, η2, , , , ηn} (75) となる。ここでの内積は、ヒルベルト空間上の二つの要素 ψ, ϕ から一つの複素数を得るという操作を考え た。これをヒルベルト空間上の一つの要素 ϕ に対する演算として捉え直すやり方が、双対空間を用いたブラ ケット表記である。 ケットベクトル|ϕ⟩ を、ヒルベルト空間を H の要素と考える (|ϕ⟩ ∈ H)。H の双対空間 (dual space) H∗ とは、ヒルベルト空間上の要素|ϕ⟩ に対して、複素数 C を線形的に対応させる写像、線形汎関数全体が作る 線形空間のことである。双対空間の要素をブラベクトル⟨ψ| で表す (⟨ψ| ∈ H∗)と、写像H → C、すなわち 式 (72)の内積は (|ψ⟩ , |ϕ⟩) = ⟨ψ | ϕ⟩ ∈ C (76) と簡潔に表される。H∗上の⟨ψ| は H 空間上の |ψ⟩ と1対1対応している。この ⟨ϕ| と |ϕ⟩ の対応関係を (|ϕ⟩)† = ⟨ϕ| (77) (⟨ϕ|)† = |ϕ⟩ (78) で表す。

(11)

演算子

密度演算子

物理量の期待値は⟨Ψ| ˆA|Ψ⟩ で与えられるが、位相だけを変えた状態 (|Ψ′⟩ = eiθ|Ψ⟩) に対しても同じ期待 値を与える: ⟨Ψ| ˆA|Ψ⟩ = ⟨Ψ′|e−iθAeˆ iθ|Ψ′⟩ = ⟨Ψ′| ˆA|Ψ′⟩ (79) 位相だけの違いのケットの集合 {|Ψ′⟩ = e|Ψ⟩ | − π ≤ θ ≤ π} (80) を Fiber(斜線) という。期待値を考える時に、Fiber と 1 対 1 対応する演算子、密度演算子 ˆρを用いると便 利である。 ⟨Ψ| ˆA|Ψ⟩ =i ⟨Ψ|ei⟩ ⟨ei| ˆA|Ψ⟩ =i ⟨ei| ˆA|Ψ⟩ ⟨Ψ|ei⟩ = Tr( ˆA ˆρ) = Tr( ˆρ ˆA) (81) ˆ ρ ≡ |Ψ⟩ ⟨Ψ| = |Ψ′⟩ ⟨Ψ′| (82) ここに{|ei⟩} は正規直交基底。 ちなみに最後の変形に関連して、 Tr( ˆA ˆB ˆC) = ∑ i ⟨ei| ˆA ˆB ˆC|ei⟩ =ij ⟨ei| ˆA|ej⟩ ⟨ej| ˆB ˆC|ei⟩ = ∑ ji ⟨ej| ˆB ˆC|ei⟩ ⟨ei| ˆA|ej⟩ =j ⟨ej| ˆB ˆC ˆA|ej⟩ = Tr( ˆB ˆC ˆA) (83) のように Trace 内の演算子の順番は循環的に入れ替え可能であることに注意。 複数の状態{|Ψ1⟩ , |Ψ2⟩ , ... |Ψk⟩ , ... |ΨN⟩} のそれぞれが pkの確率で現れる混合状態の期待値を同様に考え て、混合状態の密度演算子を以下のように定義できる。 ∑ k pk⟨Ψk| ˆA|Ψk⟩ =k pki ⟨Ψk|ei⟩ ⟨ei| ˆA|Ψk⟩ =i ⟨ei| ˆA| ( ∑ k pk|Ψk⟩ ⟨Ψk| ) |ei⟩ = Tr( ˆA ˆρ) = Tr( ˆρ ˆA) (84) ˆ ρ k pk|Ψk⟩ ⟨Ψk| (85)

4.2

生成消滅演算子と光子数状態

4.3

コヒーレント状態

コヒーレント状態|α⟩ は ˆ a|α⟩ = α |α⟩ (86) を満たす状態として定義される。

(12)

表 1: 生成消滅演算子のおさらい creation and annihilation operators :

ˆ a†|n⟩ =√n + 1|n + 1⟩ ˆ a|n⟩ =√n|n − 1⟩ ˆ a|0⟩ = |0⟩a, ˆa†] = 1 number operator : ˆ n = ˆa†ˆa ˆ n|n⟩ = n|n⟩ Hamiltonian : ˆ H =ℏω(n +ˆ 1 2 ) ˆ H|ψ⟩ = ℏω(n +12)|ψ⟩

コヒーレント状態の光子数状態による展開

コヒーレント状態を光子数状態で表す。まず光子数状態による正規直交展開 |α⟩ = n=0 |n⟩ ⟨n|α⟩ (87) を考えると⟨n|α⟩ が分かれば良い。式 (86)の両辺に⟨n − 1| を掛けることで ⟨n − 1|ˆa|α⟩ = (ˆa†|n − 1⟩)|α⟩ = (n|n⟩)|α⟩ =n⟨n|α⟩ (88) = α⟨n − 1|α⟩ (89) なので ⟨n|α⟩ = √α n⟨n − 1|α⟩ = αn n!⟨0|α⟩ (90) となる。 |α⟩ = ⟨0|α⟩ n=0 αn n!|n⟩ (91)

(13)

として、⟨0|α⟩ は規格化条件 ⟨α⟩ = | ⟨0|α⟩ |2 n=0 m=0 αn(α∗)m n!√m! ⟨m|n⟩ = | ⟨0|α⟩ |2 n=0 m=0 αn)m n!√m!δm,n = | ⟨0|α⟩ |2 n=0 (|α|2)n n! = | ⟨0|α⟩ |2exp (|α|2) (92) が 1 であるべきことから ⟨0|α⟩ = exp ( −|α|2 2 ) (93) であり、まとめると |α⟩ = exp ( −|α|2 2 ) n=0 αn n!|n⟩ (94) となる。

4.4

コヒーレント状態の電場

4.5

光子の熱的励起状態

熱的に励起された単一モードの光子の密度演算子は各光子数状態のボルツマン分布による重ね合わせで ある。 ˆ ρ = ∑ n Pn|n⟩ ⟨n| Pn e−βℏωnn′e−βℏωn′ = (1− e−βℏω)e−βℏωn β 1 kT (95) Thermal lightの平均光子数は密度演算子を用いて、 ⟨n⟩ = Tr(ˆρ ˆn) =⟨m|ˆρ ˆn|m⟩ = ∑ mn mPn| ⟨m|n⟩ |2= ∑ mn mPnδn,m= ∑ n nPn = ∑ n ne−βℏωn(1− e−βℏω) = e −βℏω 1− e−βℏω (96)

(14)

ここに∑nxn= (1− x)−1の微分で得られるnnx n= x(1− x)−2を用いた。 逆に e−βℏω= ⟨n⟩ 1 +⟨n⟩ (97) であるから、単一モードの Thermal light の密度演算子を平均光子数で書くと ˆ ρ = 1 1 +⟨n⟩m ( 1 1 +⟨n⟩ )m |m⟩ ⟨m| (98) となる。

4.6

コヒーレント状態の混合状態としての単一モードの光子の熱的励起状態

密度演算子を複素空間上での混合状態で ˆ ρ =2P (α)|α⟩ ⟨α| (99) のように表すやり方を P 表示という。 単一モードの光子の熱的励起状態では P (α) = 1 π⟨n⟩e −|α|2/⟨n⟩ (100) というようにコヒーレント状態の Gaussian 分布となる。以下に証明を与える。 ˆ ρ = 1 π⟨n⟩2e−|α|2/⟨n⟩|α⟩ ⟨α| = 1 π⟨n⟩ 0 dr 0 dθe−r2/⟨n⟩mn e−r2 r m+n+1 m!√n!e i(m−n)θ|m⟩ ⟨n| = π⟨n⟩ 0 dre−(1+⟨n⟩1 )r2∑ m r2m+1 m! |m⟩ ⟨m| = 1 ⟨n⟩ ⟨n⟩ 1 +⟨n⟩m ( ⟨n⟩ 1 +⟨n⟩ )m 0 dse−ssm 1 m!|m⟩ ⟨m| = 1 1 +⟨n⟩m ( ⟨n⟩ 1 +⟨n⟩ )m |m⟩ ⟨m| (101) まず式 (94)を代入、α = reiθと極座標表示に変換する。次に 0 = e i(m−n)θ = 2πδ m,nを用いる。次に s≡ r2(1 +⟨n⟩)/ ⟨n⟩ の変換。最後に 0 dse−ss m= m!の公式を用いている。

(15)

4.7

HBT

HBT実験系、図4における強度相関 g2(τ )を考える。 g2(τ ) = ⟨n 1(t)n2(t + τ )⟩ ⟨n1(t)⟩⟨n2(t + τ )⟩ (102) これを量子化すると g2(τ ) = ⟨ˆa 1(t)ˆa†2(t + τ )ˆa2(t + τ )ˆa1(t)⟩ ⟨ˆa†1(t)ˆa1(t)⟩⟨ˆa†2(t + τ )ˆa2(t + τ )⟩ (103) となる。ここで分子の順番が生成演算子が先で消滅演算子が後になるのは normal ordering とよばれ、光電 子検出過程の詳しい考察から来るらしいが、ここでは触れない (Mandel & Wolf 95)。

ˆ a1 = ˆa0/ 2 (104) ˆ a2 = ˆa0/ 2 (105) を用いて ⟨ˆa†1aˆ1⟩ = ⟨ψ0|ˆa†0aˆ00⟩/2 = ⟨ψ0|ˆn00⟩/2 (106) ⟨ˆa†2aˆ2⟩ = ⟨ψ0|ˆa†0aˆ00⟩/2 = ⟨ψ0|ˆn00⟩/2 (107) ⟨ˆa†a†a2aˆ1⟩ = ⟨ψ0|ˆa†0aˆaa00⟩/4 (108) = ⟨ψ0|ˆa†0(ˆaa†0− 1)ˆa00⟩/4 (109) = ⟨ψ0|ˆn0(ˆn0− 1)|ψ0⟩/4 (110) (111) なので、したがって g2(τ ) = ⟨ˆn(ˆn − 1)⟩ ⟨ˆn⟩2 (112) となる (添字の 0 を取った)。

4.8

光子数状態に対する g

2

0⟩ が photon number state |n⟩ の時は、

g2(τ ) = n(n− 1) n2 < 1 (113) となり、また (∆n)2 = ⟨n|(ˆn − n)2|n⟩ (114) = ⟨n|ˆn2|n⟩ − n2= 0 (115) と分散 0 のサブポアソンとなる。

(16)

4.9

コヒーレント光に対する g

2 coherent stateは複素数 α を用いて ˆa|α⟩ = α|α⟩ である。よって ⟨α|ˆa†ˆaˆa|α⟩ = |α|4 (116) ⟨α|ˆa†ˆa|α⟩ = |α|2 (117) より g2(τ ) = 1 (118) となる。また (∆n)2 = ⟨α|(ˆn − n)2|α⟩ (119) = ⟨α|ˆn2|α⟩ − n2 (120) = ⟨α|ˆa†aˆˆa†aˆ|α⟩ − n2 (121) = ⟨α|ˆa†a + ˆˆ a†ˆa†ˆaˆa|α⟩ − n2 (122) = (n + n2)− n2= n (123) のポアソン状態となる。

4.10

カオス光に対する g

2

5

遮蔽による天体の回折

5.1

Helmholtz-Kirchhoff

の定理

Helmholtz-Kirchhoffの定理は、ある点 P における時間に依存しない場 U (P ) を周囲の閉曲面上での場の 面積分によって表す定理である。ここで時間に依存しない場とは、単色スカラー波 V (x, t) = U (x)e−iωt (124) の空間依存成分のことで波動方程式 (2+ k2)U = 0 (125) を満たす。いまこのような二つの場 U, U′を考えると Green の定理から ∫ σ ( U∂U ∂n − U ′∂U ∂n ) =V dV (U∇2U′− U′∇2U ) = 0 (126) となる。ここに σ は閉曲面、V は σ によって囲われる領域である。また n は閉曲面上の単位法線ベクトル である。また、最後の等式は式125による。ここで一つの場を P からの球面波 U′(x) = e iks s (127)

(17)

図 5: ととり(ここに s は点 P からの距離)、閉曲面を図5のように σ = S + S′をとる。ここに S′は点 P 周りの 微小球である。 ∫ S dS ( U∂(e iks/s) ∂n − (e iks/s)∂U ∂n ) = S′ dS′ [

(eiks/s)(ik− 1/s)U − (eiks/s)∂U ∂n ] → 4πU(P ) [radius of S′ → 0] (128) つまり Helmholtz-Kirchhoff の定理は U (P ) = 1 S dS [ U ∂n ( eiks s ) ( eiks s ) ∂U ∂n ] (129) となる。

A

準単色光の表現

非単色光の場 V(r)(t)は、単色光 a(ν) cos (ϕ(ν)− 2πνt) の足し合わせ V(r)(t) = 0 dν a(ν) cos (ϕ(ν)− 2πνt) (130) で書くことができる。この場の複素表示3 V (t) = V(r)(t) + iV(i)(t) = 0 dν a(ν)ei(ϕ(ν)−2πνt) (131) V(i)(t) 0 dν a(ν) sin (ϕ(ν)− 2πνt) (132) 3解析信号という

(18)

を考える。いまある周波数 ν の周りの ∆ν の幅を持つ準単色光を考える。すなわち δν/ν≪ 1 の ν を持つ場 の成分のみが値をもつ。準単色光の場を、ν = ν の単色光のように

V (t) = A(t)ei(Φ(t)−2πνt)= (A(t) eiΦ(t))· e−2πiνt (133) と書く。この場合、単色光ではないので係数 A と位相 Φ が時間の関数となっていることに注意。式 (131)と 式 (133)を連立することで A(t) eiΦ(t) = ∫ −µ [ a(µ) eiϕ(µ) ] · e−2πµt (134) µ ≡ ν − ν (135) とかける。すなわち

V (t) = (A(t) eiΦ(t))· e−2πiνt= {∫ −µ [ a(µ) eiϕ(µ) ] · e−2πµt}· e−2πiνt (136) とかける。ここで a(µ) は µ = ν− ν = 0 付近でしか値を持たないため、右辺 {} 内は µ = ν − ν ≪ ν のよう

な、e−2πiνtの項の ν に比べ低周波数の µ しか値を持たない。したがって、式 (133)の A(t) eiΦ(t)の項は、低

周波成分をあらわし、A(t) と Φ(t) は ν にくらべてゆっくり変化する。このため A(t) は包絡線、Φ(t) は包絡 線に随伴する位相係数であると解釈できる。

表 1: 生成消滅演算子のおさらい creation and annihilation operators :
図 5: ととり(ここに s は点 P からの距離)、閉曲面を図 5 のように σ = S + S ′ をとる。ここに S ′ は点 P 周りの 微小球である。 ∫ S dS ( U ∂(e iks /s)∂n − (e iks /s) ∂U ∂n ) = − ∫ S ′ dS ′ [

参照

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