●オーストリアにおけるバイオ燃料規制の現状(その1)
オーストリアのバイオ燃料規制のセミナーを 2009 年 6 月 3 日に受講した。その内容につ いて、数回にわたって報告する。主催は ofi(Österreichisches Forschungsinstitut für Chemie und Technik:オーストリア化学技術研究協会)で、私的な検査研究機関である。 従業員数は 130 人、年間売上は 1,320 万ユーロ、うち研究部門が 25%、輸出部門が 25%を 占めている。重点を置いている事業は、バイオ燃料の分析、排出物の計測、それら計測機 器の設置などである。研究開発分野では、家畜の寝藁の燃料・木材ペレット化、木材ペレ ットのスラグ化、ペレットの製造最適化・規格化、燃焼装置の開発(500~5,000kW 級)等 である。国際的に取り組んでいる研究プロジェクトは、バイオ燃料規格化に関する調査 (BioNormⅡ)域レベルでの法的な適用に関する基礎構築に関する戦略(Astwood)、バイオ 燃料やその灰に関する情報提供(Phydades)、バイオマス燃料を使った一般向け住宅 (BioHousing)等がある。 1. バイオ燃料規制のための開発およびシステム 1.1 EU における 2020 年までの目標 20%以上のエネルギー効率向上、20%以上の再生可能エネルギー利用、20%以上の温室 効果ガス削減が 2020 年までの目標として挙げられているが、オーストリアでは、2020 年ま でに 34%の再生可能エネルギーの使用、ドイツでは 18%を掲げており、14%の熱量を再生 可能なバイオマス燃料によって賄うことを目標としているが、そのためにはさらなる固形 バイオマス燃料の市場拡大が必要である。 こうした状況において、規制というものが市場開発を先導していく役割を果たすことに なる。具体的には、関連団体の統合、一連の開発・最適化・品質確保、設備の自動化、市 場化方法、検査・認証による品質保証、顧客サービスの向上などが、規制によって図られ ることになる。 1.2 ペレット規制の歴史 ・1990 年 10 月:ÖNORM M7135-1 施行
ÖNORM は、オーストリア規制制度(Österreichisches Normungsinstitutz)、M は機 械類に関する規制であることを示す。本規制は、ペレットに関する性質に対する要求、 試験方法を示したものである。
・1996~1997 年:オーストリアやドイツでペレットの売買開始 ・1996 年 10 月:DIN51731 施行
DIN はドイツ規制協会(Deutsches Institut für Normung)を示す。 ・1998 年 2 月、2000 年 11 月:ÖNORM M7135 の改訂
1.3 オーストリアにおける規制の進展 固形バイオマス燃料に関するオーストリアの国内規制では、FNA 241 が挙げられる。また 現状で有効な ÖNORM (オーストリア規制制度)を下記に示す。 ①M7133 エネルギー化を目的としたウッドチップ ②M7135 木材圧縮物(ペレット、練炭) ③M7136 物流(ペレット) ④M7137 貯蔵(ペレット) さらに CEN-TS 14961 への補足を検討されているのが、以下に示す ÖNORM である。 ①M7139 エネルギー穀物 ②C4000 ススキからの燃料(C は化学関連規制の意味) ③C4001 ススキの足 ④C4002 ワラからのペレット 図1に木材ペレットに対する規制状況の概要、また表1に欧州での木材ペレット規格の 概要について示す。 図1 木材ペレットに対する規制状況の概要 木材ペレット 仕様書 規制 各国基準 スウェーデン ベラルーシ チェコ 2005 年 CEN 仕様 将来は ISO 規格へ イタリア フランス ドイツ オーストリア 品質保証マーク 出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料 (2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技術研究協会主催)、 Dr.M.Englisch 氏による冒頭講演)
表 1 欧州のおける木材ペレット規格の概要 ヨーロッパ オーストリア ドイツ スウェーデン ベラルーシ CEN/TS 14961 グループ A EN(草案) 2008 年 10 月 グループ A1 ÖNORM M 7135 DN 51731 SS 187120 グループ 1 TURB 600012401.002 2004 年 直径 mm 6/8 6/8 4≦D≦10 4≦D≦10 - 8-9 長さ mm - 3.15≦D≦40 <5×D <50 <4×D 30-50 真比重 kg/m3 - - ≧1.12 1.0-1.4 - - 水分 % ≦10 ≦10 ≦10 ≦12 ≦10 ≦12 灰分 % ≦0.7 ≦0.5 ≦0.5 ≦1.5 ≦0.7 ≦1.5 発熱量 MJ/kg >16.9 ≧16.5 ≧18.0 17.5-19.5 >16.9 >16.9 硫黄 % <0.05 <0.02 ≦0.04 ≦0.08 ≦0.08 - 窒素 % ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 - 塩素 % ≦0.03 ≦0.02 ≦0.02 ≦0.03 ≦0.03 - 摩耗度 % ≦2.3 ≦2.3 ≦2.3 - - - 成型助剤 % ≦2 ≦2 ≦2 - - - 粉化度 % 1/2 1 - - - - ヒ素 mg/kg - <1 - <0.8 - - カドミウム mg/kg - <0.5 - <0.5 - - クロム mg/kg - <10 - <8 - - 銅 mg/kg - <10 - <5 - - 水銀 mg/kg - <0.05 - <0.05 - - ニッケル mg/kg - <10 - - - - 鉛 mg/kg - <10 - <10 - - 亜鉛 mg/kg - <100 - <100 - - 1.4 灰分による品質特性および各国の実例 ペレット中の灰分が高くなることによって、 ①飛灰や主灰の増加、②クリンカ生成、③設備 からのダスト排出が困難となり、コンベヤ閉塞 発生等の原因となる、④設備清掃費用および灰 処理費用の増大、などの弊害の原因となる。 またペレットの灰分が高くなる原因は、①不 適物原料の混合、②汚染物質や土の塊などの混入、 などが挙げられる。灰分の多いペレットのクリ ンカの写真を図2に示し、また表2に各国での 灰分基準値一覧表を示す。 図 2 ペレットから生成したクリンカ 出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料 (2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技術研究協会主催)、 Dr.M.Englisch 氏による冒頭講演) 出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料(2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技術研究協会主催)、 Dr.M.Englisch 氏による冒頭講演)
表 2 ペレットにおける各国での灰分基準値一覧 ヨーロッパ オーストリア ドイツ スウェーデン フランス イタリア EN(草案) 2008 年 10 月 グループ A1 ÖNORM M 7135 DINplus DN 51731 SS 187120 グループ 1 ITEBE Extra Pellet Gold 直径 mm 6/8 4≦D≦10 4≦D≦10 4≦D≦10 - 6±1 - 長さ mm 3.15≦D≦40 <5×D <5×D <50 <4×D 10-30 - 真比重 kg/m3 - ≧1.12 ≧1.12 1.0-1.4 - ≧1.15 ≧1.15 水分 % ≦10 ≦10 ≦10 ≦12 ≦10 ≦10 ≦10 灰分 % ≦0.5 ≦0.5 ≦0.5 ≦1.5 ≦0.7 ≦1 ≦1 発熱量 MJ/kg ≧16.5 ≧18.0 ≧18.0 17.5-19.5 >16.9 ≧18.0 >16.9 硫黄 % <0.02 ≦0.04 ≦0.04 ≦0.08 ≦0.08 <0.05 <0.05 窒素 % ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 ≦0.30 <0.3 塩素 % ≦0.02 ≦0.02 ≦0.02 ≦0.03 ≦0.03 <0.30 <0.30 摩耗度 % ≦2.3 ≦2.3 ≦2.3 - - ≦2.3 ≦2.3 成型助剤 % ≦2 ≦2 ≦2 - - ≦2 <2 粉化度 % 1 - - - - ≦1 - ヒ素 mg/kg <1 - <0.8 <0.8 - <1 <0.8 カドミウム mg/kg <0.5 - <0.5 <0.5 - <0.5 <0.5 クロム mg/kg <10 - <8 <8 - <10 <8 銅 mg/kg <10 - <5 <5 - <10 <5 水銀 mg/kg <0.05 - <0.05 <0.05 - <0.05 <0.05 ニッケル mg/kg <10 - - - - <10 - 鉛 mg/kg <10 - <10 <10 - <10 <10 亜鉛 mg/kg <100 - <100 <100 - <100 <100 灰の状態として、小規模燃焼施設での最適条件値は 0.5%以下とされている。しかしなが ら ofi で検査したところ、120 サンプル中 17%が灰分基準値を超過しており、また他の研 究所では 25%が灰分基準値を超過するというデータも存在している。 すべて木材ペレットが DINplus や ÖNORM M 7135 の規格を満足させるためのポイントとし て、原料に樹皮は入れないこと、また硬い木材はできるだけ避けることが挙げられる。最 大の問題は、砂や土との混合物が析出することであるが、これは製造段階で十分回避可能 である。図3に上記規格を満たした木材ペレットを加熱した際の状況について示す。 またペレットの灰分は、乾き重量ベースでの値で評価される点に十分注意されたい。 出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料(2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技術研究協会主催)、 Dr.M.Englisch 氏による冒頭講演)
1.5 ヨーロッパでの規制着手状況 規制着手の状況について、図4にその流れを示す。1997~1998 年、欧州委員会(Europe Commission)が欧州標準委員会(CEN)に対して、バイオ燃料に関する規制の議論が必要で あると持ち掛けた。CEN は 2000 年に、固形バイオ燃料に関する規制(TC335)を施行した。 また 2002~2004 年においては、BioNorm プロジェクトの技術的支援によって、暫定的では あるが 27 のバイオ基準が技術仕様書(TS)の形で発行された。2007~2009 年においては、 引き続いて BioNormⅡプロジェクトとして同様に支援を受け、前述技術仕様書(TS)の欧州 規制(EN)への改訂を、2009~2010 年を目標に目論んでいる。 図 4 欧州でのバイオ燃料規制に関する着手状況の流れ 1.6 まとめ 今後、木材ペレットの普及に向けた課題を下記に示す。 ①規制による品質管理 ②欧州全体での品質の統一化 ③バイオ燃料の品質向上 ④バイオ燃料に関わる者すべての資格化 (製造者、使用者、操業者、工事業者など・・・) ⑤迅速で効果的なサービスの提供 (参考資料) ・バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料(2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技 術研究協会主催)、Dr. M. Englisch 氏による冒頭講演 出典:バイオ燃料に関する欧州規制の講演会発表資料 (2009 年 6 月 3 日、オーストリア化学技術研究協会主催)、 Dr.M.Englisch 氏による冒頭講演)