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訪問リハのグローバルスタンダードを考える

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Academic year: 2021

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訪問リハのグローバルスタンダードを考える 563 はじめに  高齢化社会の日本における社会情勢とそのニーズにより訪問 リハは発展してきた。日本における訪問リハの需要は広がって いるが,急速な発展とともにその歴史は短く,多くの課題が残 されている。その状況で訪問リハのグローバルスタンダードを 語るには至らないが,世界における訪問リハの事例を参考に訪 問リハのグローバルスタンダードについて考える。 日本における訪問リハの歴史的背景(表1)  1981(昭和 56)年インスリンの在宅自己注射指導管理料の 導入により,診療報酬上の在宅医療が制度化された。これを契 機に診療報酬改定ごとに,在宅酸素療法指導管理料,在宅自己 導尿など在宅医療分野で診療報酬上の評価が行われるように なった。  日本における訪問リハの歴史は,1982(昭和 57)年に制定さ れた老人保健法にはじまっている。このときに創設された老人 保健事業において,壮年期からを対象とした健康教育,健康診 査,機能訓練および訪問指導などの体系的な予防サービスが市 町村で提供されることとなり,リハビリテーションが施設以外 の住みなれた地域で機能訓練や訪問指導として提供されること となった。  1986(昭和 61)年に厚生省より,在宅サービスシステムの 確立,施設サービスと合わせた総合的な施策を推進する施策の 方向性が示され,医療と福祉とが連携した総合的なサービスを 提供する施設として,家庭では十分なケアのできない要介護老 人に対し,医学的な管理と看護を中心としたサービスを行う老 人保健施設が創設され,全国的な整備が図られるようになっ た。  また,長寿社会対策大綱においても,可能な限り家庭を中心 とした日常生活の場での必要な医療,看護,介護が行われるよ うに,リハビリテーション等社会生活機能の維持増進に重点を 置いた医療体系の確立,保健師による訪問指導などと連携した 在宅看護の充実などにより,地域における在宅保険・医療サー ビスの拡充を図ることが明確化された。  1992(平成 4)年には,老人訪問看護制度が創設され,訪問 看護ステーションから,看護師,理学療法士,作業療法士など による在宅での看護・リハビリテーションが実施されることに なった。さらに 1994(平成 6)年の健康保険法等の改正によっ て,訪問看護の対象がすべての年齢層の在宅療養者に拡大され た。その後 2000(平成 12)年に介護保険法が成立し,病院で の在院日数短縮化のながれの中,訪問看護ステーションの役割 が認知され現在に至っている。  2003(平成 15)年には介護保険制度施行後,はじめてとな る介護保険料の見直しと介護報酬改定が行われ,介護老人保健 施設,介護療養型医療施設,通所リハビリテーション,訪問リ ハビリテーションにおいて個別リハビリテーションが導入され ている。 諸外国における現状  日本においては「国民皆保険」は社会保障制度の中核となっ ている。  1961(昭和 36)年に実現された「国民皆保険・皆年金」は, すべての国民が公的医療保険や年金による保障を受けられるよ うにする制度である。この「国民皆保険・皆年金」を中核とし て,雇用保険,社会福祉,生活保護,介護保険などの諸制度が 組み合わさって,日本の社会保障制度は構築されてきた。  次に諸外国における現状の一部を紹介する。 1.アメリカ2)3)  アメリカの健康保険は,民間の保険会社が提供している医療 保険のことを意味し,日本のように公的な健康保険があるわけ ではなく,医療保険の受け皿は民間の保険会社になっている。  アメリカの在宅サービスは,訪問看護,訪問リハビリテー ションといった医学的ケアから食事等の介助,家事援助,給食 サービスなど,地域によって多様なサービスが存在している。 また,平均在院日数が短いアメリカでは,介護サービスのほか, 在宅においても医療を提供する事業者も多い。 2.フランス4)5)  医療は社会保険,介護は社会扶助と別々に提供されている。 また,公的病院が8割を占めることから,保健・医療・福祉の 複合体は発達せず,医療に特化している。しかしながら,在宅 入院制度を活用して,医療ニーズの高い患者への集中的ケアマ ネジメントや重層的な訪問看護により,在院日数を短縮化しつ 理学療法学 第 40 巻第 8 号 563 ∼ 566 頁(2013 年)

訪問リハのグローバルスタンダードを考える

金 子 満 寛

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Consider the Global Standards of Home-visit Rehabilitation **

株式会社ジェネラス訪問看護ステーションほたる

(〒 460‒0012 名古屋市中区千代田 2‒16‒28 グラシア 2 号館 4 階) Mitsuhiro Kaneko, PT: Generous Co., Ltd. Home Nursing Station

Hotaru

キーワード:訪問リハ,グローバルスタンダード,理学療法

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理学療法学 第 40 巻第 8 号 564 つ質の高い在宅支援を提供している。  在宅入院制度とは,医療ニーズの高い患者の退院前後に,在 宅入院機関が中心となり,病院スタッフや個人開業者と連携し て在宅生活に移行させるシステムである。病診連携を核にし た,多職種・他機関による集中的ケアマネジメントであり,制 度を支えるケアコーディネーターは医師と看護師である。医師 の関与が強く,在宅入院機関のコーディネーター医師だけでな く,開業医や病院勤務医が協働で支える仕組みとなっている。 医療に特化したサービスを短期集中的に提供し,早めに介護 サービスに移行して在宅生活を長く続けてもらい,医療費を削 減するのが政府のねらいとなっている。  介護制度である個人自立給付制度は,要介護認定やケアプラ ンの作成を導入したが,介護サービスに限定されていることか ら医療との連携が弱い。 3.オーストラリア6)  先進国のなかでも医療技術が進んでいることで有名な国であ り,健康保険制度も先進国として充分な制度が設けられてい る。オーストラリアの健康保険は「メディケア」というもので, 永住権もしくは市民権をもっている人は全員が加入している。  メディケアに加入している人はほとんどの一般的な医療を無 料で受けることができるが,なかにはさらに高度な医療や美容 整形など生命に関わらない医療を受ける場合などに備え,民間 の保険会社による医療保険への加入も活発である。これらの制 度をうまく組み合わせることにより,オーストラリアでは高度 な医療が広く一般にまで浸透している。  メディケア制度導入以降は,オーストラリアの医療保障制度 の基本的な枠組みは維持されているが,医療費自己負担の引き 上げや,民間医療保険の加入推進などが進められている。当初 は,メディケアにより加入者数減少に悩む民間保険会社を助け るという目的で,民間医療保険加入促進政策を導入していた が,その後も,政府は,今後の高齢化の進展に伴う国の財政負 担軽減も図るため,民間保険の活用に力を入れている。 グローバルスタンダードを考える7‒9)  訪問リハビリテーションのグローバルスタンダードは,上記 のように各国の社会情勢による制度の違いや文化の違いによ り,制度そのものをスタンダードにすることは難しい。  少子高齢化社会を迎えた日本においては,少ない生産年齢人 口が多数の高齢者人口を支える人口構成となっている。今後も この状況は続くと考えられ,我が国が抱える重要問題のひとつ となっている。この問題を低減させる方法として高齢者の健康 寿命を延伸させることと,生活障害の重度化を防ぎ,改善可能 な場合はできるだけ障害を軽減することがある。その背景の元 で,厚生省は病院における在院日数の短縮と在宅療養および在 宅医療を推進している。 診療報酬 医療法 その他 1981 年 在宅医療における指導管理料の新設 インスリン在宅自己注射指導管理 料の創設 1982 年 老人保健法制定   疾病の予防 ・ 治療 ・ 機能訓練の 保健事業を総合的に実施 1985 年 第 1 次医療法改正 地域医療計画の創設 1986 年 訪問診療の概念導入 寝たきり老人訪問診療料の新設 各種の指導管理料の新設 老人保健法改正  老人保健施設の創設等  長寿社会対策大綱閣議決定  在宅サービスの拡充 1989 年 ゴールドプラン   市町村における在宅福祉対策の 緊急整備 1992 年 第 2 次医療法改正   「居宅」が医療提供の場として 位置づけられる 老人訪問看護制度が創設   訪問看護ステーションから,看 護師,理学療法士,作業療法士 などによる在宅での看護・リハ ビリテーションが実施されるこ とになった 1994 年 健康保健法等改正   在宅医療を「療養の給付」とし て位置づけ  指定訪問看護制度の創設 1995 年 新ゴールドプラン 高齢社会対策基本法の成立 1997 年 第 3 次医療法改正 地域医療支援病院の創設 2000 年 介護保険法施行 表 1 日本における訪問リハの歴史的背景

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訪問リハのグローバルスタンダードを考える 565  先進国の共通の課題も,高齢社会に伴う社会保障費の増加 と,縦割りで発達してきた医療と介護を効率よく提供するシス テムを再構築して,医療費を抑制することである。各国とも平 均在院日数は短縮しており(表 2),医療ニーズの高い在宅療 養患者が増加してくることが予想される。  また,日本においては,図 1 に示すように急性期病院退院後 の半数がそのまま在宅に戻り,最終的に急性期の 65%が在宅 へ戻るという報告もあり,医療ニーズの高い患者が在宅に増加 してくると考えられる1)。  日本においては,今後の看取りの場所も医療機関での増床は 期待できず,たとえ介護施設が増えたとしても,在宅療養患者 は年々増加していく傾向にある(図 2)。諸外国においても同 様な状況は予測され,訪問リハの重要性と必要性はますます高 まっていく。 日本 アメリカ フランス イギリス 2003 平均在院日数 36.4 6.5 13.4 7.6 平均在院日数急性期 20.7 5.7 5.6 6.7 2010 平均在院日数 32.5 6.2 12.7 7.7 平均在院日数急性期 18.2 5.4 5.2 6.6 表 2 各国の平均在院日数の比較 図 1 急性期病院退院後の行き先 図 2 今後の看取りの場所

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理学療法学 第 40 巻第 8 号 566  つまり訪問リハの役割が居宅における療養上の世話または必 要な診療の補助を行い,地域で安心して暮らすことのみではな く,医療ニーズの高い患者に対して質の高い理学療法が求めら れてくる。ここに国の違いや制度・文化の違いの壁を越えたグ ローバルスタンダードのひとつがあると考える。  訪問リハに携わる理学療法士として,理学療法の知識・技術 の向上は制度や文化の違いにかかわりなく世界共通の必要事項 である。  訪問リハを行う理学療法士として生活環境支援領域の知識や 技術を深めていくことだけが在宅生活の質を高めていくのでは なく,基本的な理学療法技術を中心として各分野の理学療法技 術を高めていくことが必要である。(図 3)  訪問リハのグローバルスタンダードは,まだ発展途中にある と思われる。日本においては訪問リハの質・量ともに十分とは いえず,まだまだ様々な障壁を乗り越えて進まなければならな い現状において,今後予想される社会の状況を踏まえ,求めら れる訪問リハへ対応していくことが早急な課題と考えられる。 文  献 1) 川越雅弘,小森昌彦,他:病床区分別にみた病床運営および退 院先とのリハビリテーション 連携状況の差異.理学療法兵庫. 2009; 15: 35‒42. 2) 長谷川千春:アメリカの医療保障システム.海外社会保障研究 Summer.2010; 171: 16‒32. 3) 渋谷博史,中浜 隆:21 世紀のアメリカ社会保障.海外社会保障 研究 Summer.2010; 171: 4‒15. 4) 篠田道子:フランスにおける医療・介護ケアシステムの動向.海 外社会保障研究 Spring.2008; 162: 29‒42. 5) 加藤智章:フランス社会保障制度を考える視点.海外社会保障研 究 Winter.2007; 161: 4‒14. 6) 笠木映里:医療制度─近年の動向・現状・課題─.外社会保障研 究 Winter.2007; 161: 15‒25. 7) 川島孝一郎,在宅医療推進会議作業部会:在宅医療のグランドデ ザイン─平成 19 年度厚生労働省長寿医療研究委託事業─.2008. 8) 厚生労働省医政局指導課:在宅医療の最近の動向.在宅医療推進 室.2012. 9) 渡邉大輔:各国の看取りと専門職の役割.長寿社会グローバル・ インフォメーションジャーナル.2012; 18: 8‒9. 図 3 求められる訪問リハ

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