呼吸リハビリテーションを安全かつ確実に行うために
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(2) 686. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 理,感染管理,病態管理と一体となって治療を進展させなけれ. 臨床場面において,理学療法士と関連医療職の関係は,常に. ば奏功させることが不可能である。理学療法実施に際しては身. 明確な役割を提供しながら,専門性を生かすために①職種を越. 体所見に留まらずリスク管理,病態把握など幅広い高度な知識. えた幅広い高度な知識,②専門性と科学性に基づいた治療技術,. と能力が要求され,急性期理学療法,呼吸・循環・代謝など内. ③理学療法を教育・啓蒙できる能力が必須となる。理学療法士. 部障害系理学療法の教育の充実が必要不可欠となる。. は,関連職種と密接にコミュニケーションをとるなかで,お互. 本邦における理学療法教育機関の教育を見てみると,教育時. いの領域の専門性と総合性を発揮し合い共有・共生・共感する. 間では運動器疾患,中枢神経系疾患等と比較すると,急性期理. ことで,患者も医療者も満足する医療の提供が可能となる。. 学療法に必須の内部障害疾患(呼吸・循環・代謝)は明らかに. ICU のようなクリティカルな状況においては,様々な問題に. 少なく教育内容が大きく異なる。そして指導教員に関しては運. 単一職種では対応が困難なために,多職種連携を軸とした包括. 動器,中授枢神経疾患の臨床経験を積んだ教員は多いが内部障. 的なかかわりが必要となるが,現状では十分な体制が構築され. 害疾患の臨床経験は少なく,さらに臨床・教育・研究が不十分. た施設は少なく,専従理学療法士による早期リハビリテーショ. な若い教員が多く,臨床に対応できる専門教育の質が問われて. ンの正確な知識と技術による介入が絶対条件となる。そのため. いる。. 早期から協働の場に身を置いて,顔が見える関係を構築する努. 医療の高度化や疾病構造の変化を捉えた特徴的な内部障害疾. 力が必要で,職種間の壁を低くすることも重要である。さらに,. 患教育の積極的な取り組みと,内部障害疾患に関連した前術後. この分野に求められている呼吸理学療法の担い手に必要な資質. 管理学,集中治療医学,救命救急医学など急性期理学療法に特. とは,①医師や関連職種から厚い信頼を得ること,②専門職と. 化した教育が望まれる。. してリスク管理と評価をし,予後予測の能力をもつこと,③臨 床・教育・研究を通して第三者からの評価を上げること,④従. 2.卒後教育. 来の理学療法の枠組みを越えた実践活動ができることが望まれ. 日本理学療法士協会では,卒後教育の充実のため,協会主催. る。「井の中の蛙,大海を知らず」にならないように,どのよ. 理学療法士講習会(現職者講習会),専門理学療法研究部会主. うな活動,社会貢献ができるか,学術・教育の基盤を広げ,関. 催研修会などを実施している。講習・研修内容は,理学療法の. 連学会・職種と連携しながら認知を広げていく必要がある。. 理論と治療技術の習得に主眼が置かれたもので,講師はおもに 理学療法士であり医師や関連医療職による基礎的な臨床教育に. ま と め. は十分な時間が割かれていないのが現状である。. 急性期における早期理学療法は ICU や CCU に新たな理学療. 関連学会における教育に目を向けると,日本呼吸器学会呼吸. 法の展開の場を与えられるとともに,理学療法士にとって高度. ケアカンファレンス講習会,日本呼吸ケア・リハビリテーショ. な知識と技術を発揮できるポジションを提供されているが,現. ン学会研修会などでは,医師,理学療法士,関連医療職による. 状を見ると上述したように多くの課題が残されている。今後,. 病態,検査,評価,治療等,包括的な教育内容で臨床力を高め. この分野の理学療法を確立していくためには,卒前・卒後教育. るための幅広い知識や治療技術の習得をめざした充実した内容. を含めた幅広い実践的な臨床教育システムを構築し,さらにこ. となっている。. の分野に特化した高度な専門性を確立していく必要がある。ま. そこで臨床に役立つ理学療法教育とはなにかを考えると,. た,関連医療職と連携・協働した包括的なチーム医療として提. ICU,CCU での急性期における早期理学療法は,単一臓器に. 供されなければならず,理学療法士にはその中核としての大き. 対する治療から呼吸・循環器系,運動器系,神経系,内分泌・. な役割が期待されるとともに重要な責務を負わなければなら. 代謝系などの連関を加味した包括的な対応が必要不可欠であり. ない。. 幅広い教育が望まれる。年間約 1 万名の新人理学療法士が輩出 される現状において,国民が良質な保健・医療・福祉の提供を 受けるためにも,知識・技術の向上が必須の条件となり卒後臨 床教育のより一層の充実を図る必要がある。. 関連職種との連携・協働とはなにか ICU における早期リハビリテーションは,理学療法の専門領 域を駆使しても限界があり単独では不可能である。患者の病態 を十分に把握しながら,医師をはじめとする関連医療職との緊 密な連携・協働の下に全身管理,呼吸管理と密接にリンクしな がら実施されるべきである。また,常に高いリスクと対峙しな がら治療を遂行しなければならず,そのために理学療法士には 高度な能力が要求される。. 文 献 1) Barr J, Fraser GL, et al.: Clinical practice guidelines for the management of pain, agitation, and delirium in adult patients in the intensive care unit. Crit Care Med. 2013; 41(1): 263–306. 2) Schweickert WD, Pohlman MC, et al.: Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated critically ill patients: a randomized controlled trial. Lancet. 2009; 373(9678): 1874–1882. 3) Vasilevskis EE, Ely EW, et al.: Reducing iatrogenic risks: ICUacquired delirium and weakness-crossing the quality chasm. Chest. 2010; 138(5): 1224–1233. 4) 眞渕 敏:呼吸理学療法の現状:われわれはどこにむかうのか? ─急性期理学療法の立場から─.日本呼吸ケア・リハビリテーショ ン学会誌.2013; 23(2): 153–156..
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