今月のラインナップ
1.アフトヴァズ
言わずと知れたロシアの乗用車最大手。2002年秋、中古車の輸入関税引き上げ前の中古車駆 け込み需要で大きな打撃を受けたが、その後回復を遂げる。ロシア国内の好景気を背景に、高 価格の車種へのシフトをめざす。2.サン・インターブリュー
ベルギーとインドの資本によって設立されたビール醸造大手で、新興勢力ながら業界2位の 座を確保。ロシアのほかウクライナでも生産・販売を手がける。プラスチック容器・缶容器へ の出遅れなどで、2002年の経営は不振であった。アフトヴァズ
AvtoVAZ
http://www.vaz.ru
■基礎データ■ 沿革:1966年設立のヴォルガ自動車工場をベースに1993年に株式 会社化し、その後持ち株会社に。 所在地:サマラ州トリヤッチ市 売上高(2002年):1,194億ルーブル ロシア製造業売上高ランキング(2003年版):9位 利潤(2002年):13.32億ルーブル 主な商品の生産量(2002年):乗用車 70.3万台 従業員総数:12万1,600人経営トップ:カダンニコフ社長(KADANNIKOV, Vladimir Vasil'yevich)。 1941年生まれ。元ロシア政府第一副首相。1996年から現職。
概況
AvtoVAZ(ヴォルガ自動車工場)はロシア最大の自動車メーカーで、年産約70万台で、ロ シアの乗用車生産の7割以上を占める。最も生産量が多いのは、2110シリーズの乗用車とサ マラ・シリーズと呼ばれるVAZ-2108のプラットフォームを使用する一連のモデルである。価 格帯では4,000ドル未満の車が全体の29%、5,000ドル未満が31%、5,000ドル以上が40%とな っている。2002年の秋には、中古車の輸入関税引き上げ前の中古車駆け込み需要で、大きな 打撃を受けたが、その後は順調に生産を回復している。最近では、ロシア国内の好景気を背 景に、高価格の車種の販売に力を入れるなど、強気な経営を行っている。 2002年の生産・財務実績
2002年の生産台数は70.3万台で、2001年(76.7万台)を10.9%下回った。VAZ-2110シリーズ の生産台数は21万7,453台で、2001年(22万5,680)より10.4%減少した。 国内販売台数は57.7万台で、2001年(68.9万台)比で11.9%の減少、輸出は9.8万台(計画で は9.5万台)で、2001年(8.5万台)を15.3%上回った。VAZ-2110 生産能力は73万台で変化ない。VAZ-2110を年産1万5,000台にする設備の新規導入は、同数 のVAZ-2106台を生産する設備の廃棄によって相殺された。 2002年、同社は国内市場の飽和状態に直面することになり、10月26日から11月9日まで、 生産ラインを停止せざるを得なかった。その原因は、中古の外車の輸入関税が引き上げられ るのを前にして駆け込み輸入(ほとんどが中古車)が増大したこと、ロシアの主要金属生産 企業によって金属の価格が急激に引き上げられたこと、ウクライナがロシアから輸入される 車に輸入税を課したことである。 現在、2110シリーズをモデルチェンジするために2170プロジェクトが進行中である。2003 年の計画によれば、乗用車の生産台数は69万台、そのうち9万台が輸出向けである。 2001年夏、AvtoVAZ、GMとEBRDはAvtoVAZとGMの合弁企業を設立する協定に調印した。 AvtoVAZとGMがそれぞれ41.5%ずつ株を保有し、EBRDが残りの17%を保有している。2002 年9月、合弁企業GM-AvtoVAZでオフロード車VAZ-2123をベースにしたシボレー・ニワの生 産が開始された(費用は3億3,000万ドル以上)。シボレー・ニワの公式ディーラー基本価格 は8,000ドルと見込まれ、コンポーネントの99%はロシア製である。2002年のシボレー・ニワ の予定生産台数は約400台であるが、2003年には3万5,000台、2004年に6万台、2007年には フル生産の7万5,000台に達する予定である。GM-AvtoVAZは、2004年にシボレー・ニワ・ピ ックアップを、2005年にはコンボバンを生産する計画である。合弁企業は、2003年9月まで に、オペル社のエンジンと外国製のトランスミッションを搭載した輸出用のシボレー・ニワ の生産を開始する予定である。欧州、アジア、ラテンアメリカ、中東向けの輸出は2003年10 月に開始される。シボレー・ニワは2003年末までに5,000台の輸出が期待されている。フル生
産能力に達したところで、GMの欧州統括部を通してシボレー・ニワの欧州向け輸出を4万 台まで引き上げる予定である。 AvtoVAZのIASでの連結バランスシートによれば、2002年の売上高は1,194億ルーブルで、 2001年を10.9%下回った。2002年の粗利益は182億ルーブルで、2001年比で13.2%減少した。 2002年のAvtoVAZの連結ベースでの純益は13.3億ルーブルで、2001年の190.6億ルーブルを大 きく下回った。
株主資本と証券
AvtoVAZの定款資本は160.6億ルーブルで、額面価格500ルーブルの普通株2,719万4,624株と 優先株493万340株に分割されている。株主数は2001年では21万1,428人である。 個人株主のシェアは29.06%から25.87%に低下し、一方機関投資家のシェアは72.08%まで 高まった。投資会社ロシア自動車連盟(AVVA)と自動車金融会社が最大の株主である。国 のシェアは2002年初めで2.05%であった。 AvtoVAZは2001年にロシア証券市場で急成長した。普通株の価格は11倍上がって12月には 17.9ドルに、優先株は21倍上がって13.65ドルになった。2002年も引き続き同社株価が上昇し た。 投入予定のカリーナ・シリーズ(Lada-1117)2002年7月、AvtoVAZの普通株を対象とするグローバル預託証券(GDR)の預託先である The Bank of New YorkはAvtoVAZの1GDR=30普通株を1GDR=1普通株に分割した。定款資 本の約1%が年央にGDRに転換された。
2003年上半期の動き
2003年上半期、AvtoVAZは32万872台の乗用車を組み立てた。このうち、輸出向けは4万 3,950台(CIS向け1万9,320台、その他の外国向け2万4,630台)であった。主な輸出先は、ギ リシャ、リトアニア、フランス、トルコ、ウクライナ、カザフスタン、アゼルバイジャンで ある。 2003年上半期の売上高は503.4億ルーブルで、2002年上半期を2.7%上回った。粗利益は43.3 億ルーブル、純益は14.9億ルーブルであった。2003年の主要課題は、VAZ-2110のモデルチェ ンジと並んで、「カリーナ」シリーズの生産を準備することである。このために、2003年2月、 償還期間1年、四半期毎のクーポン付きの総額10億ルーブルの社債が起債され、ロシア外国 貿易銀行が組成者となった。サン・インターブリュー
Sun Interbrew
http://www.suninterbrew.ru
■基礎データ■ 沿革:1999年、ベルギーとインドのビール会社によって設立。 所在地:ロシア・モスクワ市、ウクライナ・キエフ市が本拠 売上高(2002年):4億3,300万ユーロ 利潤(2001年):2,240万ユーロ 主な商品の生産量(2002年):ビール 811万ヘクトリットル 従業員総数:4万3,000人 経営トップ:ストレラ総裁(STRELLA, Joseph W.) 概況
1999年に、Interbrew社(ベルギー)とSun Brewing 社(インド)によって設立された。ベ ルギーの親会社の管理の下、モスクワとキエフ(ウクライナ)を拠点に生産・販売を行って いる。11のビール工場(8つがロシア、3つがウクライナ)を有する。ビールの生産では、 ロシアで第2位、ウクライナでは第1位を誇る。主要なブランドは、ロシアではStella Artois、 Klinskoye、Sibirskaya Korona、Tolstyak、Volzhanin、ウクライナではStella Artois、Chernigovskoe、 Rogan、Taller、Yantarである。 ロシア国内でのビールの販売は、2002年は811万ヘクトリットル(1ヘクトリットルは100 リットル)で、2001年を3.6%上回った。この増加率はロシア平均を下回り、同社の市場シェ アは2001年の12.8%から12.2%へ後退した。同社の欠損の大部分は上半期に記録された(同期、 シェアは11.8%まで後退した)が、缶容器製造工場とプラスチック容器工場への投資によっ て、下半期にはシェアは12.5%までになった。 2002年の同社のロシア国内での実績は横ばいであった。これは、プラスチック容器と缶容 器でのビールのボトリングに出遅れたことと、価格が上昇したことである。同社の言い分で は、2002年の損失はSibirskaya Koronaを国産ブランドにしたことで、他のブランドを失ったこ とと関係があるという。ロシア・ビール市場のメーカー別シェア
(2002年、%) BBH 36.7 サン・ インターブリュー 12.2 オチャコヴォ 7.6 クラースヌィ・ ヴォストーク 6.3 Heineken Russia 5.6 RIT 4.2 SAB Miller 3.8 EFES 3.5 Stepan Razin 3.1 SEBS 2.6 その他 14.5 ロシア全体の 生産量: 7億200万dl プラスチックボトルの生産は同社の業績を急速に改善し、それはポピュラーになったので (特にロシア東部で)、Tolstyakやその他の地ビールは直接販売店に引き渡された。サン・イ ンターブリュー社のビールの多くがプラスチック容器で生産され、2003年末にはその比率は 50~51%に上昇する予定である。 ウクライナでの販売は、2002年には前年より10.1%増え450万ヘクトリットル、販売高は 19.2%増えた(クリミアでの生産を除く)。ウクライナ市場でのシェア(クリミアを除く)は 31.7%から32.2%まで高まった。これは、いくつかのプロジェクトが成功したことによるもの であるが、それにはChernigovskoe(新しい小麦ビール)が含まれ、同ブランドは54%売上を 伸ばした。Tallerアイスビールは33%売上を伸ばした。 専門家の大部分が、サン・インターブリューは2003年に巻き返すことが可能で、シェアを 回復するものと考えている。マネジメントにおける変更(2002年末、ウクライナの責任者で あったJoseph Strellaがロシアにおける責任者になり、2003年3月、サン・インターブリュー 社の責任者になった)、およびプラスチック容器生産のための大掛かりな投資がそれを後押し することになる。ユナイテッドフィナシャルグループ(UFG)のアナリストは、2003年第1四半期に売上は 6%上昇したものの、シェアは3%後退したと述べた。2003年、同社はプラスチック容器ビ ールであるPivopackwoの生産を開始した。UFGの予測では、2003年の販売高は12.3%伸びて、 910万になるという。