諫早湾干拓事業の概要
小江干拓地
約90ha
中央干拓地
約580ha
いさはや新池(調整池) 約2600ha
雲仙多良シーライン(潮受堤防) 約7km
月約12万台が利用
北部排水門
南部排水門
全長約7kmの潮受堤防により水位を低く管理された調整池の設置に
より、高潮・洪水や常時の排水不良等に対する防災効果を強化。
防災機能の強化
優良農地の造成
平坦で大規模な農地において、調整池からの安定した農業用水を
利用し、環境に優しい農業による先駆的な農業経営を推進。
諫早湾干拓の現在
新たな漁場環境に適合した漁業
(カキ養殖など)
干拓事業の目的
九州最大のビオトープ
営〄と干拓を繰返し築かれてきた背後地
約600年間で、3500haの干拓地が造成され
うち2700haは、標高2.5m以下の低平地
1
有明海の反時計回りの潮流に乗ってガタ土 が押し寄せる 図-1
諫早平野は6百年前から干潟、干拓、干潟、干拓を繰返してきた特異な地域
(50年に一度は干拓)
1 諫早湾の干潟は反時計回りの潮流に乗ったガタ土が押し寄せ、堆積してできており、1年に10m程沖合へ伸びる
と言われている。
2 ガタ土は排水門や河口等を閉塞し、干潟も1年に5~6cmも堆積し、背後地より高くなり、排水不良が発生している。
3 6百年ほど前から本地域は干潟を干拓し、排水を確保するとともに農地として活用してきており、干潟の堆積と干拓
が繰返され、諫早平野ができた。
4 このため、諫早平野の大半が海面より低い干拓による低平地であり、ガタ土の堆積で排水不良を起こし、洪水、
高潮被害を受けやすい地域である。(大潮の満潮位2.5m以下の農地約2,700ha、宅地約800戸)
ガタ土の堆積により干潟が拡大図-2 干潟の形成
ガタ土が海から押し寄せ堆積し、背後地よりも海側が高くなる ガタ土が5~6cm/年堆積し、干潟が約10m/年沖合へ伸びる 干潟の伸び 10m/年 ガ タ 堆 積 5~6cm/年 筑後川など有明海に 流入する河川から 搬出された土砂が 潮流で運ばれ堆積 干 拓 地 干拓:潮を締切り干潟を干しあげる工法で埋立 とは異なるので外海より標高が低い 埋立:土砂を盛立てて地盤高を高くする工法 排水により 干潟を乾燥 干潟を干拓してきた結果、 大潮の満潮位2.5mよりも低い地域 農地→約2,700ha(※1) 宅地→約800戸 ※1)東京都港区と中央区を併せた面積の約9 割図-1 有明海の潮流は反時計回り
潮 流 緑川 白川 菊池川図-3 干拓の仕組み
図-4 諫早湾奥の干拓の歴史
筑後川 塩田川 諫早湾 背後地 干拓地図-5 排水樋門に堆積したガタ土
図-6 人力による重労働のミオ筋確保
2
諫早湾周辺は集中豪雤が発生しやすく、台風の通り道という災害を受けやすい地域
1 諫早平野は、東シナ海からの湿った風が収束し、集中豪雤を発生しやすい、雲仙、多良岳等の山〄で囲まれた
独特の地形である。(諫早市の日雤量90mmを超える大雤の年間平均日数は東京の1.9倍)
2 諫早平野は干拓による低平地のため、集中豪雤で湛水被害が発生しやすく、苦しんでいた。
3 諫早湾沿岸地域は日本に接近・上陸した台風のうち、約5割が接近している台風の通り道で、海岸沿いの低平地
は高潮被害に苦しんでいた。
多良山系 諫早図-2 台風の常襲地帯
2004年の日本上陸台風10個のうち5個が諫早に影響
図-3 昭和32年諫早大水害に遭い屋根で救助を待つ住民 図-4 昭和60年8月◎高潮被害(台風13号)の状況(諫早市川内町) 図-5 同左図-1 集中豪雤が発生しやすい地形特性
雲仙山系 出典:国交省HP 諫早 ・諫早湾沿岸(諫早市)の10ケ年 平均(H7~16年度)の年間 総降水量は東京の1.4倍 ・日雤量90ミリを超える大雤の 平均年間日数は東京の1.9倍 集中豪雤による 低平地での湛水被害 湿 舌東シナ海からの湿った風が
湿舌
となり大雤をもたらす
3
福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県
68.0
93.3
16.6
53.7
63.8
174.3
25.0
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 180.0 河川 延長 (k m )1 長崎県の河川は、延長が短い
長崎県の平均河川長は、16.6kmで、
九州で一番短い県である。
長崎県内一の河川
本明川 流域面積 249k㎡(利根川比 1.5%)
幹線流路延長 28km( 〃 8.7%)
図-12 地下水利用と地盤沈下
平成10年までは、地下水を多く利用したため、地盤沈下が著しい傾向を示している。
平成11年以降、調整池が淡水化し、地下水の汲み上げが減尐したことで、地盤沈下が沈
静化している。
干拓地の宿命として水不足が発生する地域である。
1 干拓地は、海を干して造成するため水源が確保できず、周辺の河川等に求めざるを得ない土地である。
2 さらに、長崎県の河川は、延長が短く、水量が尐ない。(図-1)
3 その水源を地下水に求めた場合には、汲み上げによる地盤沈下が大きな問題となり、この周辺の森山干
拓では8年で140mmも沈下した場所がある。
平成11年以降は調整池の淡水化に伴い、背後地の水源への海水の浸入が無くなった為、農業用水への
利用が可能となり、地下水の汲み上げが減尐したことで、地盤沈下が沈静化している。(図-2)
平均河川延長=(一級+二級河川延長)/(一級+二級水系数) 背後地の旧干拓地(森山地区) (H3-H12) 地盤沈下の沈静化 地盤沈下が著しい 地下水利用が多い 図-2地下水利用と地盤沈下量の相関
地盤沈下量 (mm) 地下水利用量(m3 / 月) 平成10年 平成3年 地下水利用が尐ない 8年間で 140mm地盤沈 下 潮受堤防締切 調整池淡水化 地下水位(m) 累計沈下量 地下水利用量 平成6年4
③ ② ①
長
崎
大
干
拓
構
想
食
料
増
産
1.目的S57
打切り①S39長崎干拓事業
・干拓面積10,090ha ・干陸面積 6,720ha 食糧供給、地域開発 2.事業概要 3.項目 食料増産 背後地の防災 水源開発 水産振興 工業立地 自作農の創設 農業の近代化 1.目的②S45長崎南部
総合開発事業
・干拓面積 8,470ha ・干陸面積 4,850ha ・都市用水 20万t 農業と商工業の振興 2.事業概要 3.項目 1.目的③ S61諫早湾干拓事業
・干拓面積 3,550ha ・干陸面積 1,635ha うち農地面積 1,477ha ・防災対策 ・用水が確保された優良 農地 造成 2.事業概要 3.項目 高生産性農業の育成 (環境保全型農業) 1.目的 ・S32諫早大水害の洪水量 ・伊勢湾台風級の台風による 高潮の災害を防ぐことのでき る防災機能 事業計画の変遷S27
S61.12月 事業着手 H9.4月 潮受堤防の締切 H11.3月 潮受堤防完成 H13 再評価 H14.6月 規模縮小見直し ・防災機能の十分な発揮 ・概成しつつある農地の 早期利用(1/2に縮小) ・環境への一層の配慮 ・予定工期の順守(H18年度)ガタ土の堆積・災害・水不足の長年の問題の解消に取り組む諫早湾干拓事業
1 当初、戦後の食料不足を解消する食料増産を目的にスタートしたが、「ガタ土堆積・災害・水不足の解消」と「農業振興」の2つ
の目的を一貫して実現しようとしてきたのが諫早湾干拓事業である。
2 S57年までは、背後地の防災・水源開発と農業振興を両輪とし、工業立地、淡水漁業も含めた地域開発計画として拡大された。
さらに水不足に悩まされている長崎市等周辺市町への都市用水も追加された。
3 S57年の打切り、漁業関係者等との調整等を経て、S61年には干拓でできた諫早平野の宿命である
高潮・洪水に対する防災
と用水が確保された
優良農地の確保
の2つの柱に限定して念願の干拓事業に着手された。
4 H14年には更に、環境への一層の配慮と工期厳守等のため干陸規模を縮小し、H20年3月に完成した。
事業及び調査・検討の経過 ・干拓面積 3,542ha ・干陸面積 942ha うち農地面積672ha戦後の食料不足の中で、
県民の食料を確保
干拓地の農業用水 のみ完
成
H19
干拓農地
を長崎県農業振興公社が
51
億円で取得
672
ha
農
業
者
41
経
営
体
に
干
拓
農
地
を
リ
ー
ス
し
、
営
農
開
始
H20
高潮防止 洪水防止 排水改良 農業用水 工業用水 水道水 淡水魚養殖 水源開発 水産振興 工業立地 農業用水 都市用水 工業用水 淡水魚養殖 高生産性農業 の育成背
後
地
の
防
災
重
視
の
計
画
に
見
直
し
背後地の防災 高潮防止 洪水防止 排水改良 廃 止 最小限に縮小 背後地の防災 高潮防止 洪水防止 排水改良5
諫早湾干拓事業の完成によって高潮・洪水の防止、常時の排水改善等に対する防災効果が
発揮されている。これにより地域住民の永年の悲願であった台風や大雤に対する安全で安心な
暮らしが獲得できている。
1 干拓事業の完了によって調整池の水位を平均海水面から1m低く(標高-1.0m)管理し、ミオ筋の浚渫が完了
したため、背後地の排水が改善され、低平地の洪水・湛水被害がほとんどなくなった。
2 潮受堤防の完成によって、高潮の被害は完全に解消された。
3 潮受堤防によって海から押し寄せて来ていたガタ土の堆積がなくなり、ミオ筋管理の重労働が不要となり、また
調整池の水位が-1.0mで一定なことから、水役による危険で昼夜を問わぬ樋門の管理作業から解放された。
(図-1) 締切り前後 高潮・洪水の防災効果の比較
調整池水位を低く保つことにより背後地の常時排水も改善。 背後地樋門前のガタ土の堆積が無くなり、管理作業を軽減。 類似大雤時にも被害は極軽微高潮時における高潮防災効果
潮受堤防の設置によって、台風等による高潮、波浪 を遮断し、高潮被害を解消。 H.16年台風襲来時の状況 潮受堤防完成後 H.11年9月台風18号 3.2mの高潮でも被害なし(図-2)締切り前後常時の排水改善効果
人力によるミオ筋浚渫 (重機が入らず重労働) 調整池水位-1.0mになったことにより、排水樋門外側 (海側)のガタ土が乾燥し、浚渫工事が可能となった。 ミオ筋のガタ土浚渫が完了し、排水が良好となっている。 樋門に押し寄せたガタ土の状況(海側) 大開樋門 大開樋門 調整池の水位を標高-1.0mで管理。大雤時におい て背後低平地の雤水を一時的に調整池に貯留し湛 水被害を軽減。洪水時における防災効果
S.57年長崎大水害で冠水した背後地 (諫早市赤崎町) 潮受堤防の調整池側(内側) (平穏で高潮被害なし) 潮受堤防の諫早湾側(外側) (排水門に打ち寄せる高波) S.60年8月台風13号 3.2mの高潮で被害発生 海側 調整池側 締切り前 締切り前 締切り後 締切り後6
諫早湾の潮位変動( 大潮時)
水位 (m) 時間経過 → +2.5m -2.8m 0m -1.0m (参考)(m)
+7
+6
+5
+4
+3
+2
+1
±0
-1
-2
-3
-4
-5
旧 堤 防 内 部 堤 防 中央干拓地 調整池 諫早湾 大潮満潮時 平均 約2.5m7m
3.5m
5.5m
最高畑面標高 約2m 開門時上昇水位 約2.5m 現在、調整池内は、 マイナス1mの水位で管理 背後地農地 最低標高 約-0.8m 最低畑面標高 約-1.4m-2.9m
遊水池最高水位 -1.4mで管理 潮 受 堤 防 大潮干潮時 平均約-2.8m 平均海水面 海抜0m 資料:浸水区域調査概要図は市政いさはや 号外より1.諫早湾の潮位は概ね1日2回干満を繰り返し、大潮の満潮時の平均は標高+2.5m、干潮時は標高-2.8mと、
潮位差が大きく、最大では約6mにもおよぶ大きな変動が見られる。
2.諫早湾干拓事業により潮受堤防で締切られ、潮位の変動にかかわらず、調整池の水位を平均海水面から1m低く
(標高-1.0m)管理できるようになった。
3.これにより、最低標高が約-0.8mの低平地である背後地から、常時排水ができるようになった。
調整池の水位を標高-1.0mに管理することで、背後地の排水が改善された。
図-1
図-2 調整池の水位管理
背後に広大な標高+2.5m 以下の農地約2,700ha(宅 地等800戸が存在) 干潟を干し上げて乾燥し た干拓農地で営農中 開門した場合、大潮満 潮時の約2.5mまで上 昇 <現在の管理水位 標高-1.0m>7
これらの事業効果を失う中・長期開門調査には反対
図-1 調整池からの大量の水源確保により、 大区画、大規模な営農が展開中である1 干拓事業の完成に伴い、国から長崎県農業振興公社に干拓農地が配分され、県公社は41の経営体に対して農地
をリースし、平成20年4月から営農が開始された。
2 大規模ハウスや集出荷施設、大型農業機械など、先駆的な大規模経営に約41億円が投資されている。
3 41の経営体による有機栽培を含めた環境保全型農業が意欲的に展開され、延べ作付面積1,435ha、
収穫された生産物は約12,300tである(平成20年度)。
4 生産された農産物は品質が良いことから、市場で高い評価を得ている。
調整池を水源とする灌漑用水を利用し、大区画で平坦な優良農地を活用した
日本農業をリードするモデル的な農業が始まっている
延べ作付面積(H21.3) 品目 面積(ha) 露地野菜 532.1 施設園芸 7.8 飼料作物 491.1 その他 141.9 緑肥 262.4 計 1435.3 主な品目収穫量 (H20.4~H21.3) 品目 収穫量(t) ばれいしょ 約6,500 レタス 約2,000 はくさい 約2,400 にんじん 約1,000 たまねぎ 約 400 計 約12,300 図-5 レタスの収穫 図-6 ばれいしょの栽培 ミニトマトハウス団地 野菜集出荷施設 図-4 大都市で高い市場評価を得ている (流通業者との商談会) 図-8 新干拓地の作付面積お よび収穫量 図-2 ミニトマト、きくなどの施設園芸団地で収益性の高い農業を展開されている (ハウス・集出荷場などに約41億円の投資がされている) 図-3 大型農業機械を駆使した効率的な 営農がされている(たまねぎの収穫作業) たまねぎの収穫8
図-7 新干拓地の作付け状況(平成20年4月)H14年に「短期開門調査の実施」だけでなく「H18年度の事業完了」の合意が、3県漁連と、
佐賀県知事、福岡・熊本県副知事の立会いのもとなされている 。
<経緯のポイント>
○短期開門調査におい
て、有明海には事業の
影響がないことが明らか
にされている。
○中長期開門調査につ
いて、専門家等による検
討会議において、調査
を行っても成果について
は不明確との結論。
○これらを踏まえ、H16
年に大臣が「中長期開
門調査を実施しない」と
判断し、その下で全てが
進んでいる。
H14年4月15日、以下の条件を合意し、短期開門調査を受け入れ(長崎県としての苦渋の決断)
◆農林水産大臣、長崎県知事、3県漁連会長の合意(立会:佐賀県知事、福岡・熊本県副知事他)
<合意事項> ・短期開門調査を実施 ・諫早湾干拓事業を平成18年度に完了 (国の責任で補償、施設管理)
○短期開門調査の実施
(H14年4月24日~5月20日に海水導入) ・海水導入量:約6,600万m3 ・水位管理範囲:標高-1.0m~-1.2m ・調査内容:水質、潮位・潮流、底質、生物○調査結果
(1)有明海潮位への影響は認められず (2)潮流への影響は諫早湾奥に限定 (3)海域のCOD等の変化は湾奥に限定 (やや増加) (4)海域の濁りの拡散は湾奥に限定 等○開門総合調査結果
専門家による開門総合
調査運営会議を設置し、
短期開門調査等の結果
を分析
(結論)潮受堤防の締切
りによる影響は、ほぼ諫
早湾内に止まっており、
諫早湾外の有明海全体
にはほとんど影響なし
中長期開門調査検討会議(平成15年3月~12月)
専門家による中長期開門調査検討会議を設置・検討し、中長期開門調査の論点を整理
○論点整理のポイント ・中長期開門調査によって諫早湾干拓事業による有明海の環境への影響を検証できるかについて、明確な結論は得られなかった ・常時開門を行った場合、大きくかつ速い局所的な流れが生じ、海域環境にどのような影響を与えるかは未知の部分が多い ・排水門を開けることにより被害が生じないようにするためには、相当な対策とかなりの時間が必要○調査による影響
①調整池等の淡水への回復まで約半年、②背後地の農業用水源に塩水が浸入、 ③調整池内で淡水魚介類が大量斃死、海域でアサリ等斃死(国が補償) ④調整池からのCOD等の負荷が海水導入前より増加 ⑤調整池内の貧酸素現象出現、プランクトン量の増加 等2 中長期開門調査の検討
3 農林水産大臣の中長期開門調査に関する判断
中長期開門調査に関する大臣判断(平成16年5月11日談話発表)
農林水産省としては、中長期開門調査を実施せず
、これに代わる方策として、 有明海の調査、現地実証、及び調整池の水質対策を進めると判断 ○有明海再生対策 (平成16年~)を実施1 短期開門調査
9
3.開門調査によって
成果が得られない
可能性が大きい。
○既にH14年度の短期開門調査では、専門家により、有明海に影響がないという結果が得られている。 ○中長期開門調査も、専門家により、調査を行っても成果については不明確との結論が出ている。 ○有明海でのノリ生産は増加傾向、今年度に入りタイラギも豊漁。 ○諫早湾でも現状においてカキ養殖拡大、底物魚もとれ出してきており漁場安定傾向にあるところを危険に犯すことになる。 ○にもかかわらず、開門による被害を抑えるためには多大な工事が必要とされ、調査のためだけに莫大な費用が必要。1.事業完了に伴い、国は長崎県農業振興公社に土地配分を行っており、また、農業者も入植している。
○ H20年3月に諫早湾干拓事業が完成。長崎県振興公社が干拓地を取得し、4月より41農業者にリースを行い本格営農開始。 ○干拓地農業では、調整池から直接取水した水を農業用水として使用。 ○41農業者は、広大な干拓地に一世一代の膨大な投資を行い、大規模農業を展開。 (補助事業、融資等合わせて約41億円(H20~21年度)…農業者1人当り平均1.0億円) ○開門調査による風評被害の発生、金融機関等の農家への融資等に対する信用不安を誘発する恐れあり。2.開門調査により前回調査時よりも
大きな被害
が出る可能性が高い。(P.17以降参照)
○前回の短期開門調査(約1ヶ月)においてさえ、背後地の農業用水や海域のアサリ等への被害あり。 ○同じく短期開門調査において、排水樋門前にガタ土が約6cm堆積。 ○干拓地で大規模畑作が開始され、また、背後地では畑作が拡大しており、影響・被害は大きい。 (畑作は稲作と比較し、塩害や潮風害を受けやすい) ○諫早湾では水産振興対策が実施されており、開門によりそれらがムダになる可能性もあり。1 有明海では、諫早湾干拓事業以前から熊本新港や筑後大堰等の大規模な工事が行われており、貝類等の漁獲高の減尐は、
これらと並行して減尐している。(筑後大堰、ノリ酸処理の影響?) (P.11参照)
2 諫早湾調整池の水質は、他の有明海に流入する河川の水質に比べ、特段悪いわけではない。
(佐賀クリーク等の水質は調整池の水質よりも悪い) (P.14参照)
3 諫早湾干拓調整池のアオコが特別に問題視されるべきものではなく、アオコは調整池に限らず国内の湖沼やため池等でも
多数発生しているもの。(P.15参照)
740 760 780 800 820 840 860 880 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 麦類 麦類 0 20 40 60 80 100 120 140 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 大豆 大豆 0 100 200 300 400 500 600 700 ( a ) 平成8年 平成14年 平成19年 施設園芸 ミニトマト 花き いちご アスパラガス 0 2 4 6 8 10 12 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 露地野菜 かぼちゃ たまねぎ 堤防締切り 堤防締切り 麦類 大豆 施設園芸 露地野菜 740 760 780 800 820 840 860 880 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 麦類 麦類 0 20 40 60 80 100 120 140 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 大豆 大豆 0 100 200 300 400 500 600 700 ( a ) 平成8年 平成14年 平成19年 施設園芸 ミニトマト 花き いちご アスパラガス 0 2 4 6 8 10 12 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 露地野菜 かぼちゃ たまねぎ 堤防締切り 堤防締切り 740 760 780 800 820 840 860 880 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 麦類 麦類 0 20 40 60 80 100 120 140 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 大豆 大豆 0 100 200 300 400 500 600 700 ( a ) 平成8年 平成14年 平成19年 施設園芸 ミニトマト 花き いちご アスパラガス 0 2 4 6 8 10 12 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 露地野菜 かぼちゃ たまねぎ 堤防締切り 堤防締切り 麦類 大豆 施設園芸 露地野菜 潮受堤防締切り(平成9年) 小長井で カキのブ ランド化真の有明海の問題解決が必要
多額の投資で ハウス等を建設 背後地営農の 新たな動き(P.18参照)
10
有明海全域における複合的な要因を考慮に入れた総合的な調査・研究、対策が必要。
有明海再生に向けた取組
中・長期開門調査検討会議の 報告を受けた大臣判断におい ては、開門調査に代わる方策と して、有明海の環境変化の更な る解明調査、有明海の環境改 善を進めるための現地実証、調 整池の水質改善を進めていくこ ととされた。有明海沿岸4県の漁獲量等の推移
1 有明海では諫早湾干拓事業以前から熊本新港や筑後大堰等の大規模な工事が実施されており、貝類の漁獲
の減尐はそれに併行して進んでいた。
2 魚介類への影響が疑われているノリ養殖への酸処理剤の使用も、堤防締切以前から本格化している。
3 貝類漁獲量は減尐傾向が続いていたが最近は安定・回復の兆しも見えており、ノリの生産量は平成12年漁期
(平成12年11月~平成13年4月生産)の不作を除けば一貫して増加傾向にある。
0
40
80
120
160
200
48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19生
産
量
・
漁
獲
量
貝類 ノリ類 魚類 酸処理有効性発見 (出典:平成13年9月20日開催のノリの第三者委員会中間報告書資料、「農林水産省 農林水産統計年報」) ※暦年で整理千t
年
潮受堤防 締切 熊本新港建設工事 筑後大堰の建設工事 諫早湾干拓事業 福岡県・熊本県が酸処理開始 三池炭坑海底陥没埋戻工事ノリは増加傾向
貝類は干拓以前から大きく変動
雲仙・普賢岳噴火 佐賀県が酸処理開始 新聞報道によれば、 平成21年は、佐賀県太良町沖 でタイラギ貝が1日で約422㌔ の水揚げとなるなど、潮受堤 防締切前年の平成8年以来13 年ぶりの豊漁。 漁場の安定を示唆するものと も考えられる。 ⇒ 開門により、漁場不安定 化のおそれ。11
有明海に影響を及ぼす可能性がある要因(位置図)
熊本新港
(防波堤約3km)
ノリ養殖(緑色)
諫早湾干拓有明海全域における複合的な要因を考慮に入れた総合的な調査・研究、対策が必要。
三池炭坑海底陥
没埋戻工事
筑後大堰
ノリ養殖(緑色)
有明海全体の
流域の約3%
有明海全体の流
域の約34%(諫
早湾干拓調整池
の約11倍)
12
有機酸処理剤の使用
クエン酸
リンゴ酸
栄養塩
を含む
プランクト
ン
養殖ノリ
赤潮発生
光をめぐって競合
富栄養化
ノリの葉緑体構造が
崩壊し、色落ち
プランクトンの死骸
硫化水素の発生
酸欠状態
海底へ沈降・堆積
貝類、カニ類等の
底生生物の斃死
硝酸アンモニウム
硫酸アンモニウムの投入
栄養塩補給
江刺洋司著「有明海はなぜ荒廃したのか~諫早干拓かノリ養殖か~」を一部引用
酸処理剤の使用量:H9~H11年は右の文献より引用 H14年以降は長崎県調べ 赤潮発生件数は「日本水産資源保護協会」HPをもとに作成 2,091 2,008 3,660 3,684 3,549 2,259 2,336 2,870 3,778 3,501 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 H9 H10 H11 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 酸 処 理 剤 の 使 用 量 ( ト ン ) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 赤 潮 発 生 件 数 酸処理剤使用量 赤潮発生件数図1 有機酸処理剤の使用量と赤潮発生件数(北部4県)
・有明海のノリ養殖では、海藻の付着を除去するために、年間3,500トン(18リットルの灯油缶20万缶分に相当)という
大量の有機酸処理剤を使用。図1にみるように、有機酸処理剤の使用量と赤潮発生件数には相関が見られる。
・さらに、佐賀県内では、ノリの成長を促す目的で硝酸アンモニウムなどを漁場に大量に投入している。
・これらの薬剤は、ノリの増産と同時に、プランクトンの異常増殖ひいては赤潮発生を促す。その死骸は海底に沈降
堆積し、その分解過程で酸欠状態や硫化水素の発生を引き起こし、貝類やカニ等底生生物の斃死を招く。
有機酸処理剤の使用と並行して有明海での赤潮発生が増大
アオノリの防除
病原菌からの予防
ノリ活性剤
3,500トン
(18リットル灯油缶20万缶分)
13
1 漁業補償
・諫早湾干拓事業では、事業開始前に本事業に関係する漁協等に対し、漁業補償を実施した上で、事業に着手している。(図-1)
・漁業補償は、諫早湾内の漁協だけでなく、長崎県島原の関係漁協や佐賀県の大浦漁協に加え、佐賀、福岡、熊本の有明海の3県漁連
に対しても行っている。
2 ムツゴロウの生息
・ムツゴロウは諫早湾干拓事業以前に大きく減尐していたが、有明海全体で見ると近年は復活しつつあり、絶滅の危険にあるものではない。
諫早湾干拓事業の漁業への影響に対する補償とムツゴロウの復活について
図-1
県
地域
漁業補償額
長崎県
諫早湾内漁協(潮
受堤防内8漁協)
202億円
諫早湾内漁協(潮
受堤防外4漁協)
41.5億円
島原11漁協
12.1億円
佐賀県
有明海漁連、大浦
漁協
14.3億円
福岡県
有明海漁連
4.9億円
熊本県
熊本県漁連
4.4億円
計
279.2億円
諫早湾干拓事業に係る漁業補償額 一覧表
(漁業補償契約締結当時の漁協数で整理)1 漁業補償の概要
直接、諫早湾干拓事業により、漁場が消滅する長
崎県諫早湾内8漁協の他、本事業により影響があ
ると想定された、潮受堤防外の諫早湾内4漁協、島
原11漁協の他、佐賀、福岡、熊本の3県の漁連等
に補償を実施。
2 ムツゴロウの復活状況について
ムツゴロウの減尐は諫早湾干拓以前に始まっている
①「昭和39年代には200トン以上の漁獲量があったが、その後は減尐し、昭和63年にはわずか2トンと なった。」(佐賀県HPより) ②「1972年と1988年の有明海全域における調査で・・(中略・・)、1988年(昭和63年)に高密度分布範囲の 縮小が認められた。」(環境省レッドデータブックHPより)ムツゴロウは近年は増加傾向にある
尐なくとも絶滅の危機に瀕しているものではない。
①「(漁獲量は)ここ数年は20トン前後まで増えている。」(佐賀県HPより) ②以下の生息密度調査の結果からも、1986年(昭和61年)以降増加していることが伺える。 *竹垣他.2005.有明海・八代海の河口干潟におけるムツゴロウの分布と生息密度.魚類学雑誌52(1):9-16 より ①「現在の生息状況は緊急の保護を要するまでには至っていないが、注意が必要である。」(環境省 レッドデータブックHPより) ②「長崎県の諫早湾北岸の金崎町から小長井町の佐賀県境に至る干潟(6地点)で、1972年以降31 年振りに生息が確認された」(竹垣他.2005.魚類学会誌52(1):9-16 より) 図-2 ムツゴロウの生息分布の推移 1997年潮受堤防締切り14
0 2 4 6 8 10 12 諫早湾干拓調整池 鹿島川 塩田川 佐賀クリーク 六角川 嘉瀬川 筑後川 沖の端川 福岡クリーク 矢部川 大牟田川 菊池川 白川 緑川 T -N(m g/L ) 0 5 10 15 20 25 30 35 諫早湾干拓調整池 鹿島川 塩田川 佐賀クリーク 六角川 嘉瀬川 筑後川 沖の端川 福岡クリーク 矢部川 大牟田川 菊池川 白川 緑川 C O D (m g/L ) 0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 諫早湾干拓調整池 鹿島川 塩田川 佐賀クリーク 六角川 嘉瀬川 筑後川 沖の端川 福岡クリーク 矢部川 大牟田川 菊池川 白川 緑川 T -P (m g/L ) 注)河川水質 :平成9~18年度の平均値 河川水質のうち, 菊池川,白川,緑川のCODについては平成9~17年度の平均値である。 クリーク水質:平成14~18年度の平均値 出典:河川水質 :公共用水域水質測定結果 クリーク水質:九州農政局北部九州土地改良調査管理事務所測定結果
調整池の水質は有明海流入河川と比べてみても決して悪くない。
1 諫早湾干拓の調整池の水質は、他の主要河川およびクリークに比べても平均程度であり特別には悪くない。
むしろ、他の河川の方が水質が务っているものがある。
2 また、その負荷量(COD)が占める割合は、有明海全体の流入負荷の2%。
○調整池と有明海流入河川河口部の代表地点等との水質比較
○有明海周辺のクリークでも白い濁りが見られる。
クリーク水路(佐賀市諸富町)
クリーク水路(福岡県大川市)
大牟田川 矢部川 福岡クリーク 沖の端川 筑後川 嘉瀬川 六角川 佐賀クリーク 塩田川 鹿島川 本明川 諫早湾調整池 菊池川 白川 緑川図-6
図-1 図-2 図-3 図-4図-7
図-5 有明海における流域別負荷量
調整地の流域は3%ながらCOD負荷量 の占める割合は2%と低いことからも、 調整池の水質は特別には悪くない。 有明海に流入するCOD負荷量全体 に占める各河川の割合15
1 アオコは国内外の湖沼で広く発生。アオコ由来の毒素であるミクロシスチンは各地の湖沼から検出され、諫早湾
干拓調整池は他と比較しても高い濃度ではない(図-1)
2 アオコは有明海沿岸の佐賀県等のクリークでも発生している。
3 諫早湾カキのミクロシスチン濃度は、分析機器の定量下限値未満であり、カキの安全性には問題なし。(図-2)
4 このように、アオコの発生は一般的に見られるものであり、諫早湾干拓調整池だけが特別ではない。
図-2
<諫早湾カキのミクロシスチン濃度:H22長崎県>
○分析地点:諫早湾内6地点
○分析方法:LC/MS/MS法およびELISA法
○分析結果:すべて定量下限値未満
アオコは国内外で広く発生しており、調整池だけが特別ではない。
図-1
*1 *1 ミクロシスチンは主にアオコ等の藍藻類のミクロキスティス属が産生する毒素図-3 佐賀県クリークのアオコ発生状況
16
開門調査を行うことで懸念される「地域住民の安全・安心な生活」、 「農業」、 「漁
業」、「自然環境」への影響
地域住民の安全・安心な生活への影響
排水門の開放により締切前の状態に戻り、水位調整や、ガタ土の堆積により排水が困難になり、かつてのよ
うな
洪水被害や排水不良
が発生
農業への影響
調整池への海水導入により、干拓農地の
農業用水が確保できなくなる
ととともに、干拓農地のみならず背後
地の農地も、
地下からの塩分遡上
や台風時の
潮風による塩害
が発生
漁業への影響
排水門周辺で速い流れが発生し、
ガタ土を巻き上げ
、諫早湾外まで濁りを拡散し、
魚介類や海藻類に深刻な
被害
が発生
自然環境への影響
平成9年の堤防締切り以降、調整池に形成されている
淡水系の生態系
や調整池や周辺干陸地の多様な動植
物が生息する
自然環境を破壊
参照P.23~25
参照P.28
参照P.18~22
参照P.26~27
17
北部排水門 中央干拓地 小江干拓地 森山地区 吾妻地区 小野地区 有明海 調整池 ガタ土が 有明海に拡大 南部排水門 最大 流速 5. 9m /s 海 水 流 入 図 想定される被害 海域側から調整池側へ流速1.6m/s以上の範囲 調整池側から海域側へ流速1.6m/s以上の範囲 ● 排水ポンプ整備箇所 老朽護岸整備+防風ネット整備箇所 老朽護岸整備箇所 標高+1.0m未満 標高+1.0m~2.5m 凡 例
図-1
① 海水導入・排水による水門の保全 ○捨石工 145万m3 ○既設護床工 4.2万m3 ②背後地の防災機能の確保 ○排水ポンプ等の整備 14施設 ○既設樋門の補修 14箇所 長田地区 最大 流速 6. 2m/ s 最大 流速 5. 7m/ s ③農業用水確保・潮風害対策 ○潮風害防止用の防風ネットの設置 延長22km 高さ2m ④水棲生物の保護その他 ○生物の保護・放流 ○水門への侵入防止ブイの設置等 ⑤旧海岸堤防の補修 ○腹付け護岸工 L=21.0km 最大 流速 5.7m /s 鳴門海峡の最大流速 5.0m /s ⑥排水ポンプの維持管理費 ○排水ポンプ等の整備 14施設開門調査を実施した場合の影響について
① 海水導入・ 排水による排水門の保全 洗堀防止のた め捨石工等の実施 約422億円 ② 背後地の防災機能の確保 既設堤防補修、排水ポンプの設置等 155m3 / s 約202億円 ③ 農業用水確保・ 潮風害対策 防風ネットの設置等、( 新た な水源確保は困難) 約5億円 ④ 水棲生物の保護そ の他 調整池の生物保護・放流、侵入防止ブイの設置等 約2億円 小 計 農林水産省試算(佐賀地裁へ提出) 約631億円 ⑤ 旧海岸堤防の補修等 腹付け護岸工 L=21.0km 約44億円 ⑥ 排水ポンプの維持管理費 5 年間の排水ポンプの維持管理費 約6億円 合 計 約681億円 ※上記対策を行っても、「農業用水の確保」が困難である。 項 目 内 容 対策費 図-2 対策及び概算工事費約681億円
1 開門調査を実施した場合には、潮受堤防の開放により防災効果が消失し、干拓農地の営農用水がなくなり営農
が困難となるなどの影響が懸念される。
2 その費用は、困難な農業用水の確保を除いて、尐なく見積もって
約680億円
3 防災の対策を行っても農業用水の代替水源の確保は困難である。(P.19参照)
① 海水導入・排水による洗堀 ○ガタ土の巻き上げ ○底泥の諫早湾内拡散 ○洗掘の発生 ② 背後地の湛水の危険性 ○調整池水位標高ー約0.5m以上で背後地 に湛水が発生 ③ 農業用水の塩水化・潮風害 ○農業用水消滅、調整池の塩水化による新干 拓地や広い地域で農産物への潮風害の発生 ④ 水棲生物の斃死 ○調整池塩水化により淡水魚介類が斃死 ⑤旧海岸堤防等からの塩水の浸入(追加試算) ○既設樋門、既設堤防の老朽化により塩水が 浸入し後背地での塩害発生 ⑥調整池水位の上昇に伴う常時排水の不良 ○排水ポンプの稼動 想 定 さ れ る 被 害開門調査のために最低限必要な対策工事
(代替水源の確保は困難)
図-3 旧海岸堤防の損 傷18
諫早中央浄化センター P 本明川 有明海 小野地区 P 表 下水処理水の水質 下水処理水水質 農業用水基準 (H19諫早中央浄化センター) (農水省:S.45年) T-N(全窒素濃度) 8.1(6.4~9.2) mg/L 1.2mg/L 1mg/L以下 出展 諫早中央浄化センター放流水水質検査年報(平成19年度) 項 目 調整池水質 (H19) ③下水道処理水の利用 農業用水として水量不足(図-1参照) 農業用水の水質基準の8倍と著しく超過(図-2参照) ∴風評被害の恐れ ④干拓地周辺にため堀を新設 中央干拓地、小江干拓地や周辺の土地は、優良 農地で使用中 ∴用地確保が困難 ②干拓地周辺の河川水利用 流域面積が小さく、河川の水量が尐ない。 ため池や地下水も合わせて農業用水を確保して いる状況 ∴新たな水源とはならない ①本明川の河川水利用 2 防潮堰を新設 ・干拓地に必要な水量が確保できるか不明 (流量観測データ無し) ・建設費用は膨大 ∴現実性に乏しい 揚水機場
①本明川の河川水利用
1 公園堰から農業用水確保の検討 公園堰すぐ下において、望ましい河川流量(正常流量)は 毎秒0.25トンであり、1年間のうち355日を下回らない 流量(渇水流量)が毎秒0.08トンであるため、新たな農業 用水の取水はできない。 2 防潮堰を新設して農業用水確保の検討 調整池が塩水化した場合、潮位の影響が公園堰まで遡上 するため、農業用水を確保するには防潮堰の新設が必要。 仮に、河口部に防潮堰を新設しても、必要な農業用水が 確保できるか不明である。 また、建設費用についても膨大となり、現実性に乏しいと 思われる。②干拓地周辺の河川水利用
周辺河川は、河川延長が短く、水量も尐ないため、ため池や 地下水も合わせて農業用水をギリギリ確保している状況で、 新たな農業用水の取水は困難である。 ③下水道処理水の利用 諫早市の下水道処理水は、年間229万トン放流されて いるが、干拓地の農業用水は、330万トン必要で、約100万 トンの水量が不足する。(図-1) また、下水道処理水の全窒素濃度(平均)1㍑当たり 8.1mgと農業用水質 基準1㍑当たり1mg以下を満足しない。 (図-2) 水質が満足しないことにより、風評被害の恐れがある。④干拓地周辺にため堀を新設
中央干拓地、小江干拓地や周辺の土地は、優良農地として 活用されており、ため堀するための用地確保は困難である。 ①本明川の河川水利用 1 公園堰 ・本明川の流量は、望ましい河川流量 (正常流量)に達していない。 ∴新たな農業用水を取水できない 公園堰 河口堰調整池が塩水化した場合、干拓農地の代替水源の確保が大きな問題であり、代替水
源の可能性を検討したが、利用することは困難である。
1 本明川の河川水を利用するためには、新たな水利権の設定が必要になるが水量が尐なく、新たな水源として
確保することは困難である。
2 干拓地周辺の河川水利用についても、同様に水量も尐なく困難である。
3 下水道処理水の利用については、その処理量が不足するとともに、全窒素濃度が農業用水基準の8倍と高く
農業用水としての利用に適さない。
4 干拓農地周辺にため掘を新設することについては、干拓農地については、既に入植者による営農がなされて
おり、用地の確保が困難なことと、周辺についても、優良農地として確保されており、用地確保は困難である。
中央干拓地 調整池 図-1 用水必要量と供給量 図-2 下水処理水の水質 年間 1日最大取水量 (事業計画) (事業計画) 用水必要量(計画) 330万トン 21,800トン 11,973トン 下水処理水量(H.19) 229万トン (70%) 6,242トン (29%) 6,242トン (52%) 過不足 ▲101万トン ▲15,558トン ▲5,731トン 日最大使用実績 (H21.9)19
下水道処理水を干拓地の農業用水として使用した場合、質と量に問題がある
諫早中央浄化センター 本明川 公園堰 中央干拓地用水必要量と供給量
下水処理水の水質
○下水道処理水の水質は、農業用水基準値の
8倍
下水道処理水の水質は、農業用水基準値を超過
∴風評被害の恐れ
○下水道処理水では、農業用水として不足
下水道処理水量は、干拓地の1日最大取水量の3割、
日最大使用実績でも1/2(H21実績)
農業用水取水口
下水処理水水質
農業用水基準
(H19諫早中央浄化センター)
(農水省:S.45年)
T-N(全窒素濃度)
8.1(6.4~9.2) mg/L
1.2mg/L
1mg/L以下
項 目
調整池水質
(H19)
年間
1日最大取水量
(事業計画)
(事業計画)
用水必要量(計画)
330万トン
21,800トン
11,973トン
下水処理水量(H.19)
229万トン
(70%)
6,242トン
(29%)
6,242トン
(52%)
過不足
▲101万トン
▲15,558トン
▲5,731トン
日最大使用実績
(H21.9)
20
干拓地の1日最大取水量を賄う「ため池」は、本明川ダムを更に造るのに匹敵
○干拓地に必要な農業用水
1日最大取水量 21,800トン/日
【佐賀県の主張】
農業用水を賄うため、干拓地周辺に「ため池」
をつくるなども考えられるでは?
【長崎県の主張】
○干拓地周辺には、ため池をつくる用地は
無い
○干拓地内に広大なため池をつくっても、
塩分が混入し農業用水に利用できない
○1日最大取水量21,800トン/日は、
計画されている本明川ダムの1日当たり
取水量に匹敵するダムが必要。
本明川ダム
諫早湾
中央干拓地本明川ダム 建設費 約780億円
本明川ダムの取水量内訳
市町村名 取水量(トン/日) 利用目的
長崎市
8,000 上水道
諫早市
10,200 上水道
長与町
2,500 上水道
時津町
4,300 上水道
計
25,000
■本明川水系流域図
諫早市 大村市 本 明 川 大村湾21
農業用水を確保するため本明川に河口堰を建設した場合、膨大な費用が必要
淡水
河口堰 出典:本明川河川整備計画(国交省HPより) 常時開門:TP+2.0m 制限付き開門:TP-1.0m 揚水機場敶高:TP-1.95m 公園堰 半造川 長田川 福田川 6.5km 出典:本明川河川整備計画(国交省HPより) 常時開門:TP+2.0m 制限付き開門:TP-1.0m 揚水機場敶高:TP-1.95m 公園堰 半造川 長田川 福田川 6.5km筑後川大堰
堤長 501.6m
総事業費 343億円
(再現費用 420億円)
完成年度 昭和59年度
※基礎地盤は良好
河口堰 農業用水取水口 防潮堰を設けて干拓地に必要な水量が確保できるか不明である。 (流量観測データがない) 本明川河口の川幅は約450mあり、北部排水門の2倍以上の幅 となり、建設費用は膨大となることが予想される。。【試算】
北部排水門 200m
南部排水門 50m
建設費 349億円
本明川川幅 450m
河口堰建設費 630億円
約580ha22
台風や強風時に農作物への潮風害発生の恐れがある。
1 調整池が海水になるため、台風や強風時には、新干拓地や背後地で農作物に対する潮風害が発生する恐れがある。
2 過去の台風時の被害状況では、海岸に近い2km未満の地域で被害が大きい。
3 現在は、淡水化している調整池により潮風害から守られている。
4 しかし、開門すれば農地近くまで海水が進入し、潮風害が発生する危険性が高まる。
現在
開門後
淡水域北~東の風で潮風害の危険
塩水の進入 平成3年の台風と似たコースをとった平成18年の台風13号でも有明海沿岸の広い地域で潮風 害が発生した。 佐賀県での米の作況指数は戦後最悪の49で、全国最下位であった。 図-2 潮風による水稲の被害。葉は白変枯死し、収穫は半作となった。 (平成3年9月 台風17号 諫早市高来町) 図-3 潮風による水稲の被害。葉は白変枯死、籾は黒変し、収穫は ほぼ皆無となった。(平成3年9月 台風17号 諫早市高来町) 海水域 図-1 農地から海水域までの距離(現在と開門時) 新干拓地から海水域まで3km の距離があり、淡水の調整池 が緩衝帯となり潮風害から守 られている。 開門により海水域は旧堤防 (背後地)から2kmの距離まで せまり、新干拓地や背後地で 潮風害の危険性が高まる。潮風害は尐ない
2km締
め
切
り
前
に
は
二
年
に
一
回
程
度
、
恒
常
的
に
発
生
2km 3km 海岸に近い2km未満の地域で被害が大きい
23
図-1 干拓地の土壌中の塩分濃度(mg/kg乾土)の経年変化 締切り直後は塩分 濃度が高く耕作は できなかった 10年後には塩分 が低下し、農地とし て利用できる状態 になった。 図-5 メロンの塩害(昭和62年諫早市森山地区:背後地) 図-3 堤防締め切り前後の地下水位と潮位の経日変化(諫早市森山地区) 締切り後 締切り前 農作物に塩害が発生する仕組み
堤防を締切った平成9年4月14日以前は、潮位の変化に伴い地下水位 も変動していたことから、地下水が海水とつながっていたことは明らかであ る。そのため堤防を開放し、調整池に海水が侵入すると地下水が塩水化し、 塩害が発生する恐れがある。 地下水面 暗渠排水 塩分上昇 土壌の乾燥、蒸発 毛 管 現 象 図-4 現在の諫早湾干拓の土壌塩分と開門した場合、予想される諫早湾干拓の土壌塩分の移動 通常は、灌漑により塩分は洗い流されるが、土壌を乾燥 させると塩分が遡上し、干拓後30年を経過した背後地でも、 ビニール栽培のメロンが枯死し、収穫不能になった。 ※平成22年は上層部:0~20cm、下層部:20~50cm、 深層部:50~85cmで調査 図-2 干拓地土壌の塩分濃度調査結果(mg/k乾土)
<干ばつ時>
(2年に1度は干ばつ月が出現)1 干拓農地では、締切りで地表近くは塩分濃度が下がっているものの、深層部には塩分の高濃度層が残されている。
2 この状態で海水を導入すると調整池の海水位が上昇し、地中の塩分が表面に押し上げられ、塩害が発生する可能性が
極めて高い。
3 現に地下水と海水が連動することがわかっており、地下からの浸透が心配される。
4 さらに農業用水が不足するため、灌漑による洗い流しができず、塩分が遡上し、干ばつ時には塩害が発生する。
開門により調整池へ海水が侵入すると塩害が発生する危険性が高まる。
直近の調査でも深層部には多量の塩分が残っており、 調整池に海水が侵入すると、再び土壌中の塩分が高ま り塩害が発生する恐れがある。 平成9年に堤防を締切り後、約10年を経過して、塩分が低下し農地として 利用できる状態になった 干ばつ時、農業用水の不足で洗い流しができない ※平成9年4月6日~4月21日のデー タ ※佐賀県の塩害対策 (佐賀県ホームページから抜粋) ・本県の農作物に対する塩害は、有 明海沿岸やその近隣干拓地を中心 に発生しやすい。 ・塩害については、塩水(海水)が一 時的に圃場内に侵入した場合と、 干拓地のように海水の影響を慢性 的に受けている場合があるため、 農作物対策と圃場の除塩対策の二 つに分けて述べる。なお、海成沖積 土壌地帯では塩水の侵入以外でも 地下水やクリーク水のClやNa濃度 が高いことがある。 深層部:70cm前後 下層部:15~30cm 上層部:0~15cm 背後地の地下水位(森山地 区) 地下水位が変動 地下水位が安定 潮位 平成10年3月 平成22年3月 上層部 1,111 30 下層部 4,301 36 深層部 6,641 高い塩分濃度 2,586 現在の状況 開門された場合、塩害の恐れ 降雤、灌水 地下水面 暗渠排水 土壌中の塩分移動 塩分濃度が高い 塩分濃度が低い 土壌中の塩分移動 上昇 塩分濃度が 高くなる 塩分濃度が高い 調整池の農業用水で洗い流しが可能24
740 760 780 800 820 840 860 880 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 麦類 麦類 0 20 40 60 80 100 120 140 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 大豆 大豆 0 100 200 300 400 500 600 700 ( a ) 平成8年 平成14年 平成19年 施設園芸 ミニトマト 花き いちご アスパラガス 0 2 4 6 8 10 12 ( ha ) 平成8年 平成14年 平成19年 露地野菜 かぼちゃ たまねぎ
堤防締
切り
堤防締
切り
麦類
大豆
施設園芸
露地野菜
背後地で拡大している畑作に、深刻な打撃を与える。
締切り後に作付けが増えた作物や野菜の栽培がまた出来なくなる。
1 排水や塩害の心配が無くなったため、背後地の畑作の産出額は2億円→4億円に増加したが、大打撃を受ける。
2 平成14年の短期開門調査時に、水源の塩素濃度が調整池と連動する傾向を示した場所もあり、旧堤防からの
塩水浸透が考えられる。
3 野菜類への灌漑に使用できる水の塩素濃度目安は200ppm程度以下であり、このままでは用水使用は困難。
図-3 背後地の水源と調整池の塩素濃度推移(H14 短期開門調査データ) ※樋門は閉切っている状態で測定 図-2 背後地の農業産出額の比較(JA調べ、農林統計等より算出) 図-1 背後地の営農の推移(JA調べ) 調整池 背後地の水源農業用水として利用できる塩分
濃度は200ppm程度以下であり、
短期開門調査では、調整池の塩
分濃度が5000ppmまで上昇し、
用水としては利用は出来なかっ
た。
219,155千円 4,558千円 80,182千円 30,185千円 1,788千円 5,192千円 0千円 5,040千円 92,210千円 平成8年 麦類 大豆 かぼちゃ たまねぎ アスパラガス いちご ミニトマト 花き 合計 398,663千円 10,256千円 178,182千円 38,864千円 17,875千円 29,419千円 6,725千円 18,620千円 98,722千円 平成19年 麦類 大豆 かぼちゃ たまねぎ アスパラガス いちご ミニトマト 花き 合計増 加
25
開門した場合の漁業への影響①
1 常時開門すると、早い流れや濁りの発生等により、安定してきた漁場環境を激変させる可能性が高い。
2 養殖適地の喪失や資源の減尐等、多くの悪影響が懸念される。
短期開門調査、中長期開門調査検討の結果から
常時開門すると、排水門周辺でガタ土を 巻上げるような早い流れ6.2m/s(鳴門 海峡の最大潮流 (流速5m/s)以上)が発生 し、諫早湾外にまで濁りが拡散する。 図-1ガタ土が拡散する様子(開門30日後) (H15中・長期開門検討時のシミュレーション) ○海水の導入で調整池の透明度が上昇し、光合成が促進されて植物プランクトンが 増大した。(H14短期開門調査) ○海水の導入で調整池の淡水魚介類が大量に斃死した。(H14短期開門調査) 開門期間中、クロロフィル濃度(=植物プラン クトン量)が上昇。 開門期間中、濁りが減尐。 図-2 調整池内の濁りの変化 図-3 調整池内のクロロフィル量の変化 図-4 斃死魚(フナ、コイ等)回収状況 図-5 イシ貝類の斃死状況 ○開門により漁場環境が激変する懸念
漁業者の生活に影響
○濁り・浮泥の発生や潮流の変化による影響
・アサリ・カキの養殖適地が失われる。
・魚介類の漁場形成の変化や資源の減尐がおこる。
・タイラギ稚貝の着底・成長が阻害される。
*短期開門調査時においても、アサリ等の斃死増加が確認され、 損失補償が行われている。 開門後の調整池は、赤潮発生に以下の好適な条件を備えており、そこ が赤潮の発生源となり、排水により諫早湾に拡散し、漁業に深刻な被 害をもたらすことが懸念される。 ①背後地からの栄養塩の供給も多いこと ②赤潮に好適な静穏な水面であること ③短期開門時においても植物プランクトンの増大が観測された事実
○斃死魚やゴミの流入により、風評被害等の発生
○調整池が赤潮の発生源化する危険性
・漁場に流出して有機汚濁を助長し、貧酸素化を招く ・漁具・漁網の汚損 ・正常な漁獲物への風評被害の発生 ・調整池内において富栄養化が進み、赤潮の発生に拍車 池内7.7トン、海域1.1トンの斃死魚を回収26
カキ養殖の導入 貧酸素対策等、各種 試験研究の実施 アサリ、タイラギ漁場の整備 短期開門調査後、有明海再生に向け640億円以上を投入(~H21) 安易な開門の実施は