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診療ガイドライン

8 章

Ewing 肉腫ファミリー腫瘍

Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(Ewing’s sarcoma of family tumors:ESFT)は, 小児期から青年期に最も多く発症する肉腫である。診断は,病理学的診断に加え分子生 物学的診断を行うことで診断がより確実となる。病期は,限局例と転移例に分類され, 予後も明らかに異なっている。 治療法は,化学療法の進歩とともに治療成績の改善を認めており,外科治療,放射線 治療と組み合わせた集学的治療が必要である。発症部位は様々であり,頭頸部,脊椎, 骨盤部などは,手術,放射線照射を行い難い部位のため,集学的治療の工夫が必要であ る。転移部位は,肺,骨髄,骨が多く,転移した部位により予後は異なるが,一般に予 後は不良である。多剤併用化学療法に加え,大量化学療法を併用した造血幹細胞移植が 行われることもあるが,治療成績の改善は十分ではない。 治療成績の改善により長期生存者が増加するとともに,抗がん剤や放射線照射による 二次がんが増加しており,二次がんを含めた晩期合併症の長期にわたるフォローアップ が重要となる。 はじめに

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8 Ewing 肉腫 ファミリー腫瘍

診療アルゴリズム

診 断 CQ 1 骨髄微小転移 CQ 10 脊 椎 CQ 8 胸 壁 CQ 7 病期決定 CQ 2 再発例 CQ 14 二次がん CQ 15 転移例 CQ 11, 12, 13 局所例:手術 CQ 3, 4, 5, 6, 9

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 8 ファミリー腫瘍

クリニカルクエスチョン一覧

診断 CQ 1  診断方法は? CQ 2  予後因子は何か? 限局例 の治療 CQ 3 CQ 4  限局例に対する有効な薬剤は?  限局例に対する標準的化学治療は? CQ 5  推奨される手術法は? 切除範囲は? CQ 6  限局例における外科切除縁と放射線照射線量の関係は? CQ 7  胸壁原発の限局例に対する適切な局所治療は? CQ 8  脊椎原発の限局例に対する適切な局所治療は? CQ 9  限局例における初回化学療法後の組織学的治療効果と予後との関係は? CQ 10 限局例における骨髄への微小転移が全身再発に影響するか? 転移例 の治療 CQ 11 転移例に対する標準的化学療法は? CQ 12 転移例に対する造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か? CQ 13 肺転移例に対する全肺照射は有効か? 再発例 の治療 CQ 14 再発例の治療法は? その他 CQ 15 二次がんの発症率は?

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ESFT に対する診断は,基本的に腫瘍部位の病理組織学診断により行われるが,近年 は ESFT の病理発生に関連するキメラ遺伝子が明らかになってきており,これを検索 することにより診断の精度が向上する。

最も簡便かつ有力な診断手段は単純 X 線写真で,長管骨,骨幹部の境界不鮮明な骨 硬化像や骨融解像,骨皮質の破壊を認め,また Codman 三角や spicula 形成,onion peel などの骨膜反応を認める。骨端部よりも骨幹部に発症しやすい。病巣の進展範囲 を把握するため MRI,CT 検査を行う。限局例は 75 %で,発症部位は四肢 41 %,骨盤 25 %,肋骨 12 %,椎体 8 %,肩甲骨 4 %,頭蓋骨 4 %である。転移例は 25 %で,転 移部位は肺,骨,骨髄が多い。リンパ節,肝臓,中枢神経への転移は非常に稀である。 転移の検索では肺転移には胸部 CT,骨転移には骨シンチグラフィー(99mTc),骨髄転 移には骨髄穿刺を施行する。骨髄の転移は骨髄の局所的に転移するため骨髄の数カ所か ら穿刺する必要がある。 確定診断には生検は必須であり,すべての画像診断が終了してから施行する。正確な 病理診断のためには,針生検よりも十分な検体が採取できる切開生検のほうが良いが, 生検の進入経路にあたる組織は腫瘍細胞に汚染されてしまうので,広範切除の際に病巣 を含めて切除する必要がある。生検はすでに治療の一環であり,専門医が行うべきであ る1) 免疫組織学的診断では,MIC2 遺伝子産物で表面膜蛋白の一つである CD99 2)が陽性 であれば ESFT の可能性が高い。しかし CD99 が陽性となる腫瘍には,滑膜肉腫,非 Hodgkin リンパ腫や一部の消化管間質腫瘍などもあり,小円形細胞腫瘍である神経芽 背景・目的 解 説 8 Ewing 肉腫 ファミリー腫瘍

推 奨

診断方法は?

Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対して正しい病理組織学的 診断を行うためには,十分な組織検体を採取することが重要である ため,針生検よりも切開生検が望ましい。免疫組織学的染色では, MIC2 遺伝子産物で表面膜蛋白の一つである CD99 が陽性であれ ば,ESFT の可能性が高い。細胞遺伝学的検査にて ESFT のキメ ラ 遺 伝 子,EWS-FLI,EWS-ERG,EWS-ETV1,EWS-FEV な どが検出されれば確定診断となる。転移検索には胸部 CT,骨シン チグラフィー(99mTc),骨髄穿刺を施行する。  (エビデンスレベル Ⅰ) 推奨 グレード

A

CQ 1

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 ラーゼ(NSE),S-100 蛋白,Leu-7 4)が陽性となる。 ESFT の細胞遺伝学的研究により,22 番染色体の q12 にある EWS 遺伝子座の変異 が一貫して同定されており,この遺伝子座の変異には 11 番または 21 番など他の染色体 が関与している可能性がある。特徴的に EWS 遺伝子のアミノ末端が他の遺伝子のカル ボキシル末端に接している。大部分の患者ではこうしたカルボキシル末端は,EWS ファミリー転写因子遺伝子の一つであり 11 番染色体の q24 に位置する FLI1 のもので ある。EWS 遺伝子と融合するこの他の EWS ファミリーメンバーを頻度順に挙げると, 21 番染色体に位置する ERG,7 番染色体に位置する ETV1,17 番染色体に位置する E1AF,2 番染色体に位置する FEV となり,それぞれ t(21;22),t(7;22),t(17;22),t (2;22)の転座を起こす5, 6)表 1)。 このように免疫組織学的診断での MIC2 遺伝子産物 CD99 や EWS-FLI1,EWS-ERG を含むキメラ遺伝子を検索し診断を確定する。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“diagnosis”で検索し重要と思われる文献を参 考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/ewing/)

を参考にした。

1) Mankin HJ, Mankin CJ, Simon MA. The hazard of the biopsy, revisited. Members of the Musculoskeletal Tumor Society. J Bone Joint Surg Am 1996; 78: 656-63.(エビデンスレベル

Ⅳa)

2) Ambros IM, Ambros PF, Strehl S, et al. MIC2 is a specific marker for Ewing’s sarcoma and peripheral primitive neuroectodermal tumors. Evidence for a common histogenesis of Ew-ing’s sarcoma and peripheral primitive neuroectodermal tumors from MIC2 expression and specific chromosome aberration. Cancer 1991; 67: 1886-93.(エビデンスレベル Ⅳa)

3) Navarro S, Cavazzana AO, Llomobart-Bosch A, et al. Comparison of Ewing’s sarcoma of bone and peripheral neuroepithelioma. An immunocytochemical and ultrastructual analysis of two primitive neuroectodermal neoplasms. Arch Pathol Lab Med 1994; 118: 608-15.(エビ デンスレベル Ⅳa)

4) Shanfelt RL, Edelman J, Willis JE, et al. Immunohistochemical analysis of neural markers in peripheral primitive neuroectodermal tumors(pPNET)without light microscopic evidence of neural differentiation. Appl Immunohistochem 1997; 5: 78-86.(エビデンスレベル Ⅳa)

検索式・参考にした二次資料 参考文献 染色体転座 キメラ遺伝子 EWS における割合(%) t(11;12)(q24;q12) EWS-FLI1 85 t(21;22)(q22;q12) EWS-ERG 10 t(7;22)(q22;q12) EWS-ETV1 rare t(17;22)(q12;q12) EWS-E1AF rare t(2;22)(q33;q12) EWS-FEV rare

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5) Dellatre O, Zucman J, Plougastel B, et al. Gene fusion with an ETS DNA-binding domain caused by chromosome translocation in human tumors. Nature 1992; 359: 162-5.(エビデン スレベル Ⅰ)

6) Delattre O, Zucman J, Melot T, et al. The Ewing family of tumors ─ a subgroup of small round-cell tumors defined by specific chimeric transcripts. N Engl J Med 1994; 331: 294-9.

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の予後因子は,これまでの様々な臨床研究で報 告されている。予後因子を明らかにすることは最適な治療法の選択に寄与するものと考 える。

European Intergroup Cooperative Ewing’s Sarcoma Study(EICESS),Medical Re-search Council(MRC)/United kingdom Children’s Cancer Study Group(UKCCSG), Cooperative Ewing’s Sarcoma Study (CESS) Group の治療研究1)では,登録された

975 例の予後に関して後方視的に検討した。データベースはイギリスでは 1977 年,ド イツでは 1981 年から登録されている。予後因子としては,転移が強い予後因子となり 〔5 年無病生存率(DFS)で局所例と転移例の比は 55 %:22 %,P<0.0001〕,転移例の うち肺単独転移群とその他の部位への転移群(骨転移または肺と骨転移)を比較する と,肺単独転移群のほうが比較的予後良好因子となる。局所例においては,体幹部の発 症(四 肢 と 体 幹,P<0.001),15 歳 以 上(P<0.001), 腫 瘍 体 積 100 mL 以 上(P< 0.001)は予後不良因子である。診断時から 2 年以内と 2 年以降の再発後の 3 年生存率 は 4 % vs. 23 %(P<0.0001)と 2 年以内の再発が予後不良因子となる。 Bacci ら2)は,後方視的に 1979〜1995 年までに Rizzoli 研究に登録した限局例 359 例 の臨床経過,血液学的因子,治療,組織学的治療効果について検討した。予後不良因子 としては,化学療法に対する組織学的治療効果が不良(P<0.0001),発熱(P<0.015), 貧血(P<0.02),高 LDH(P<0.025)と報告している。特に手術症例での組織学的治 療効果が予後に相関する因子としている。その他の報告でも,化学療法に対する組織学 的治療効果は予後因子とする報告3-5)は多い。 Bacci ら6)は,後方視的に 1983〜2006 年までに登録された 888 例(限局例 702 例, 転移例 186 例)について臨床的因子,組織学的因子,検査学的因子に関し検討してい る。多変量解析から骨盤発症例,血清 LDH 高値,発熱,症状発現から診断されるまで の期間が危険因子となる。転移している率は前述の危険因子が 1 つもなければ 10 %,1 つでは 27.7 %,2 つでは 31.4 %,3 つでは 50 %であった。つまり,これらの危険因子 背景・目的 解 説

予後因子は何か?

局所例では体幹部,骨盤部の発症,15 歳以上の発症,腫瘍体積 100 mL 以上,診断時から再発の期間が 2 年以内,などが予後不 良因子となる。手術例に限られるが,化学療法に対する組織学的治 療奏効度は予後因子となる。また,転移も明らかな予後因子とな る。転移例でも肺単独転移は肺外転移に比べれば比較的予後は良好 である。 (エビデンスレベル Ⅳa) 推奨 グレード

B

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が多ければ転移している率が高いと報告している。

Grier ら7)は,1988 年 12 月から 1992 年 11 月に行われた NCI 研究 INT 0091(CCG

7881/POG 8850)では,VDC 療法(ビンクリスチン+ドキソルビシン+シクロホス ファミド)と IE 療法(イフォスファミド+エトポシド)の交代療法と VDC 単独療法 の前方視的ランダム化比較試験を非遠隔転移例 398 人,遠隔転移例 120 人に対して施行 した。遠隔転移例 120 人の 5 年無イベント生存率(EFS)は,VDC と IE の交替療法と VDC 単独療法では,5 年 EFS が 22 %とほぼ同様な結果で,遠隔転移例は予後不良で あった。原発部位別の 5 年無病生存率は,四肢遠位,四肢近位,骨盤部位で,それぞれ 68 %,61 %,50 %(P=0.003)であり骨盤部位の予後不良なことが明らかとなった。 年 齢 別 の 5 年 EFS は 10 歳 以 下,10〜17 歳,18 歳 以 上 で, そ れ ぞ れ 70 %,60 %, 44 %(P=0.001)と 18 歳以上は予後不良因子となった。 以上より,局所例においては体幹部の発症(四肢と体幹,P<0.001),特に骨盤部の 発症,15 歳以上(P<0.001),腫瘍体積 100 mL 以上(P<0.001)は予後不良因子とな り,化学療法による組織学的奏効度,転移の有無も明らかな予後因子となる。転移例で も肺転移のみは比較的予後は良好である。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“prognostic factor”で検索し重要と思われる 文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/

ewing/)を参考にした。

1) Cotterill SJ, Ahrens S, Paulussen HF, et al. Prognostic factors in Ewing’s tumor of bone: analysis of 975 patients from the European Intergroup Cooperative Ewing’s Sarcoma Study Group. J Clin Oncol 2000; 18: 3108-14.(エビデンスレベル Ⅳa)

2) Bacci G, Ferrari S, Bertoni F, et al. Prognostic factors in nonmetastatic Ewing’s sarcoma of bone treated with adjuvant chemotherapy: analysis of 359 patients at the Istituto Ortopedi-co Rizzoli. J Clin OnOrtopedi-col 2000; 18: 4-11.(エビデンスレベル Ⅳa)

3) Picci P, Rougraff BT, Bacci G, et al. Prognostic significance of histopathologic response toch-emotherapy in nonmetastatic Ewing’s sarcoma of the extremities. J Clin Oncol 1993; 11: 1763-9.(エビデンスレベル Ⅳa)

4) Picci P, Böhling T, Bacci G, et al. Chemotherapy-induced tumor necrosis as prognostic fac-tor in localized Ewing’s sarcoma of the extremities. J Clin Oncol 1997; 15: 1553-9.

5) Wunder JS, Paulian G, Huvos AG, et al. The histological response to chemotherapy as a pre-dictor of the oncological outcome of operative treatment of Ewing sarcoma. J Bone and joint Surg Am 1998; 80: 1020-33.(エビデンスレベル Ⅳa)

6) Bacci G, Balladelli A, Forni C, et al. Ewing’s sarcoma family tumours. Differences in clinico-pathological characteristics at presentation between localised and metastatics tumours. J Bone and joint Surg Br 2007; 89: 1229-33.(エビデンスレベル Ⅳa)

7) Grier HE, Krailo MD, Tarbell NJ, et al. Addition of ifosfamide and etoposide to standard che-motherapy for Ewing’s sarcoma and primitive neuroectodermal tumor of bone. N Engl J Med 2003; 348: 694-701.(エビデンスレベル Ⅱ)

検索式・参考にした二次資料

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 ESFT に対する初回治療における抗がん剤治療の薬剤選択に関しては,これまでの欧 米の治療研究によるエビデンスに基づいて行われており,多剤併用療法によって治療成 績の改善を認めている。 ESFT に 対 す る 最 初 の 化 学 療 法 は 1960 年 代 か ら 行 わ れ, シ ク ロ ホ ス フ ァ ミ ド (CPA)の有効性が報告1)され,その後,アクチノマイシン(ACD)2),ビンクリスチン (VCR)3),ドキソルビシン(DXR)4),イホスファミド(IFM)5)の有効性に関して報告 された。

ESFT に対する DXR の有用性は,米国で 1973 年に始まった Intergroup Ewing Sarcoma Study(IESS)により証明された。IESS-I では VCR+ACD+CPA の組み合 わせ(VAC 療法),VAC 療法と DXR(VAC+DXR),VAC 療法と両肺への放射線治 療(BPR)(VAC+BPR)について三者比較試験が行われ,VAC+DXR 群の 5 年無病 生存率が 60 %と最も良かった6)。続く IESS-II では,限局例に対し従来型 VAC+DXR と DXR を増量した VAC+DXR での比較試験が行われ,5 年無再発生存率はそれぞれ 56 %と 73 %と DXR 増量の有効性が示された7)。また,DXR の用量の強化と相関関 係8)も示されている。1974 年 Rosen らは,VCR+ACD+DXR+CPA の 4 剤を組み合 わせた有効性を報告9)している。IFM+エトポシド(VP-16)の組み合わせによる IE 療 法は,NCI のパイロット研究において,再発・既治療の Ewing 肉腫に対しての有効性 が示された10) 一方,固形腫瘍に有効なことが多い白金合剤のシスプラチンは,ESFT に対しての有 効性は証明されておらず11-13),初回化学療法として用いる薬剤としては,推奨できな い。 以上より,現在,有効とされている DXR,CPM,VCR,IFM,VP-16 と ACD の 6 剤を組み合わせた治療法が標準的に選択されている。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“chemothrapy”で検索し重要と思われる文献 を 参 考 に し た。 ま た,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/ 背景・目的 解 説 検索式・参考にした二次資料

限局例に対する有効な薬剤は?

Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対して有効性が高いもの は,ドキソルビシン,シクロホスファミド,ビンクリスチン,イホ スファミド,エトポシドとアクチノマイシンの 6 剤である。シス プラチンやカルボプラチンなどのプラチナ製剤は,ESFT に対して は有効性が低く,これらを追加することの有用性は証明されていな い。 (エビデンスレベル Ⅱ) 推奨 グレード

A

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ewing/)を参考にした。

1) Sutow WW, Sullivan MP. Cyclophosphamide therapy in children with Ewing’s sarcoma. Cancer Chemother Rep 1962; 23: 55-60.(エビデンスレベル Ⅳa)

2) Phillips RF, Higinbotham NL. The curability of treatment of Ewing’s sarcma with concur-rent radiotherapy and chemotherapy. J Pediatr 1967; 73: 249-251.(エビデンスレベル Ⅳa) 3) Sutow WW. Vincristine(NSC-67574)therapy for malignant solid tumors in

children(ex-cept Wilm’s tumor). Cancer Chemother Rep 1968; 52: 485-7.(エビデンスレベル Ⅳa) 4) Oldham RK, Pomeroy TC. Treatment of Ewing’s sarcoma with adriamycin(NSC-123127).

Cancer Chemother Rep 1972; 56: 635-9.(エビデンスレベル Ⅳa)

5) Van Dyk JJ, Falkson HC, Van der Merwe AM, et al. Unexpected toxicity in patients treated with iphosphamide. Cancer Res 1972; 32: 921-4.(エビデンスレベル Ⅳa)

6) Nesbit ME Jr, Gehan EA, Burgert EO Jr, et al. Multimodal therapy for the management of primary, nonmetastatic Ewing’s sarcma of bone: a long-term follow-up of the First Inter-group study. J Clin Oncol 1990; 8: 1664-74.(エビデンスレベル Ⅱ)

7) Burgert EO Jr, Nesbit ME, Garnsey LA, et al. Multimodal therapy for the management of nonpelvic, localized Ewing’s sarcoma of bone: Intergroup study IESS-II. J Clin Oncol 1990; 8: 1514-24.(エビデンスレベル Ⅱ)

8) Smith MA, Ungerleider RS, Horowitz ME,et al. Influence of doxorubicin dose intensity on response and outcome for patients with osteogenic sarcoma and Ewing’s sarcoma. J Natl Cancer Inst 1991; 83: 1460-70.(エビデンスレベル Ⅳa)

9) Rosen G, Wollner N, Tan C,et al. Procedings: Disease-free survival in children with Ewing’s sarcoma treated with radiation therapy and adjuvant four-drug sequential chemotherapy. Cancer 1974; 33: 384-93.(エビデンスレベル Ⅳa)

10) Miser JS, Kinsella TJ, Triche TJ, et al. Ifosfamide with mesna uroprotection and etoposide: an effective regimen in the treatment of recurrent sarcomas and other tumors of children and young adults. J Clin Oncol 1987; 5: 1191-8.(エビデンスレベル Ⅳa)

11) Kamalakar P, Freeman AI, Higby DJ, et al. Clinical response and toxicity with cis-dichloro-diammineplatinum(Ⅱ)in children.Cancer Treat Rep 1977; 61: 835-9.(エビデンスレベル

Ⅳb)

12) Baum ES, Gaynon P, Greenberg L, et al. Phase Ⅱ trial cispltin in refractory childhood can-cer: Children Cancer Study Group Report. Cancer Treat Rep 1981; 65: 815-22.(エビデンス レベル Ⅳb)

13) Pratt CB, Hayes A, Green AA, et al. Pharmacokinetic evaluation of cisplatin in children with malignant solid tumors: a phase Ⅱ study. Cancer Treat Rep 1981; 65: 1021-6.(エビデンスレ ベル Ⅳb)

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 限局性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対する欧米での標準的治療,治療成 績を検討した。 明らかな限局性 ESFT でも,診断時には微小転移はしている可能性が高いので,放 射線治療や外科治療などの局所治療と同様に多剤併用化学療法も必要である。 現在の限局性 ESFT に対する標準的な化学療法としては,ビンクリスチン(VCR), ドキソルビシン(DXR),シクロホスファミド(CPA),アクチノマイシン(ACD), イホスファミド(IFM),エトポシド(VP-16)の 4〜6 剤を組み合わせた多剤併用化学 療法が用いられている(CQ 3 参照)。 米国で 1988 年 12 月から 1992 年 11 月に行われた NCI 研究 INT 0091(CCG 7881/ POG 8850)1)では,VDC と IE の交替療法と VDC 単独療法の前方視的ランダム化比較 試験を非遠隔転移例 398 人,遠隔転移例 120 人に対して施行した。治療は各コース 3 週 ごとに行い,12 週目に外科治療を行い,合計 17 コース,49 週の治療である。なお, DXR の総投与量が 375 mg/m2に達したとき,DXR を ACD に変更する。結果は遠隔 転移例では VDC+IE 群と VDC 群とで成績に差はなかったが,非遠隔転移例では VDC +IE 群の 5 年無病生存率(DFS)が 69 %,VDC 単独群が 54 %と VDC+IE 群で有意 に成績がよかった。 ヨーロッパでの大規模な臨床研究2)では,CESS により 1986 年より 1991 年までの CESS 86 が行われた。腫瘍量が 100 mL 以上または,体幹に発症した症例を「高リス ク」(n=241)とし,四肢発症例は「標準リスク」(n=52)とした。「標準リスク」の 背景・目的 解 説

限局例に対する標準的化学治療は?

限局例に対する標準的な化学療法として,ビンクリスチン,ドキソ ルビシン,シクロホスファミド,アクチノマイシン,イホスファミ ド,エトポシドのうち 4〜6 剤を組み合わせた多剤併用化学療法が 用いられている。  米国での標準治療は,NCI 研究 INT0091 によるビンクリスチ ン+ドキソルビシン+シクロホスファミド(VDC 療法)とイホス ファミド+エトポシド(IE 療法)の交替療法である。  欧州での標準治療は,EICESS92 臨床研究による SR 群でのビ ンクリスチン+アクチノマイシン+イホスファミド+ドキソルビシ ン(VAIA 療法),転移を認めない HR 群でのエトポシド+ビンク リスチン+アクチノマイシン+イホスファミド+ドキソルビシン (EVAIA 療法)が推奨される。 (エビデンスレベル Ⅰ) 推奨 グレード

A

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限局例に VCR+ACD+CPA+DXR(VACA 療法),「高リスク」の限局例に VCR+ ACD+IFM+DXR(VAIA 療法)を 3 週ごとに 12 コースを行われた。UKCCSG/MRC 3)

においては,1987〜1993 年までの限局例 201 例,転移例 42 例に VAIA 療法を施行さ れている。

最近では,CESS と UKCCSG/MRC が統一され,EICESS が発足し EICESS 92 臨床 研究4)が行われた。四肢原発で腫瘍量が 100 mL 以下を標準リスク(SR),体幹原発か

腫瘍量が 100 mL 以上を高リスク(HR)としてリスク分類を行い,SR 群を VAIA 療法 と VACA 療 法 と に 振 り 分 け,HR 群 を VAIA 療 法 と VP-16+VCR+ACD+IFM+ DXR の EVAIA 療 法 と に 振 り 分 け, そ れ ぞ れ を 比 較 検 討 し た。SR の VAIA 群 と VACA 群の 5 年 DFS は 68 %と 67 %と有意差はなかったが,VACA 群に血液学的有 害事象が多くみられており,SR 群では VAIA が推奨される。 一方,転移を認めない HR 群での VAIA 群と EVAIA 群とを比較すると,5 年 DFS はそれぞれ 44 %と 52 %であった。これにより転移を認めない高リスク群で,VAIA に VP-16 を加えることにより生存率が上昇することが証明された。今後,転移を認め ない高リスク群では,IFM と VP-16 を組み合わせた治療が推奨される。 以上より,米国では VDC+IE を組み合わせた化学療法,欧州では標準リスク群には VAIA 療法,転移を認めない高リスク群には EVAIA 療法が推奨されている。

Pub MED で“Ewing sarcoma”AND“chemothrapy”AND“localized”で検索し 重 要 と 思 わ れ る 文 献 を 参 考 に し た。 ま た,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/

cancertopics/types/ewing/)を参考にした。

1) Grier HE, Krailo MD, Tarbell NJ, et al. Addition of ifosfamide and etoposide to standard che-motherapy for Ewing’s sarcoma and primitive neuroectodermal tumor of bone. N Engl J Med 2003; 348: 694-701.(エビデンスレベル Ⅱ)

2) Paulussen M, Ahrens S, Dunst J, et al. Localized Ewing tumor of bone: final results of the cooperative Ewing’s sarcoma study CESS 86. J Clin Oncol 2001; 19: 1818-29.(エビデンスレ ベル Ⅱ)

3) Craft A, Cotterill S, Malcolm A, et al. Ifosfamide-containig chemotherapy in Ewing’s sarco-ma: The second United Kingdom Children’s Cancer Study Group and the Medical Research Council Ewing’s Tumor Study. J Clin Oncol 1998; 16: 3628-33.(エビデンスレベル Ⅲ) 4) Paulussen M, Craft AW, Lewis I, et al. Results of the EICESS-92 Study: two randomized

tri-als of Ewing’s sarcoma treatment--cyclophosphamide compared with ifosfamide in stan-dard-risk patients and assessment of benefit of etoposide added to standard treatment in high-risk patients. J Clin Oncol 2008; 26: 4385-93.(エビデンスレベル Ⅱ)

検索式・参考にした二次資料

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8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍

5-1

限局性 ESFT に対する局所治療の意義,また放射線治療の位置付けについて検討し た。 ESFT は放射線感受性が高い腫瘍であり,歴史的には原発腫瘍に対して放射線治療が 第一選択とされた時期があったが,放射線治療単独では手術もしくは手術と放射線を組 み合わせた治療に比べて局所再発率が高いという報告や,照射部位からの二次がんの発 生,成長期の四肢長管骨での放射線による骨端線障害が原因となる四肢の発育障害など のため,四肢を含めて切除が可能な病巣に対しては手術が勧められる1-3)

PubMed で“Ewing sarcoma” AND “local therapy”を検索し重要と思われる文献を 参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/type/ewing/)

を参考にした。

1) Paulussen M, Ahrens S, Dunst J, et al. Localized Ewing tumor of bone: final results of the cooperative Ewing’s Sarcoma Study CESS 86. J Clin Oncol 2001; 19: 1818-29.(エビデンスレ ベル Ⅳ)

2) Grier HE, Krailo MD, Tarbell NJ, et al. Addition of ifosfamide and etoposide to standard che-motherapy for Ewing’s sarcoma and primitive neuroectodermal tumor of Bone. N Engl J Med 2003; 348: 694-701. (エビデンスレベル Ⅱ)

3) Schuck A, Ahrens S, Paulussen M, et al. Local therapy in localized Ewing tumors: results of 1058 patients treated in the CESS 81, CESS 86, and EICESS 92 trials. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003; 55: 168-77. (エビデンスレベル Ⅳ) 背景・目的 解 説 検索式・参考にした二次資料 参考文献

推奨される手術法は? 切除範囲は?

5-1.限局性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍の局所治療として手術は有効か?

手術は有効であり,切除可能な部位については切除すべきである。  (エビデンスレベル Ⅰ)

5-2.切除を行う際どの程度の切除縁を確保すべきか?

手術単独で局所治療を行う場合には,他の骨・軟部肉腫の手術と同 様に広範切除を行うべきである。 (エビデンスレベル Ⅰ) 推奨 グレード

A

推奨 グレード

A

(14)

5-2

切除の際の切除縁の違いによる再発率に関して検討した。 辺縁切除や腫瘍内切除などの不十分な切除縁しか得られなかった場合,術後に放射線 治療を追加する方法が一般的であるが,この場合でも十分な広範切除以上の切除縁が達 成された患者では,不十分な切除縁しか得られなかった場合よりも局所再発率が低いと の報告が多い1, 2)

PubMed で“Ewing sarcoma” AND “surgical therapy”を検索し重要と思われる文 献 を 参 考 に し た。 ま た,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/type/

ewing/)を参考にした。

1) Paulussen M, Ahrens S, Dunst J, et al. Localized Ewing tumor of bone: final results of the cooperative Ewing’s Sarcoma Study CESS 86. J Clin Oncol 2001; 19: 1818-29.(エビデンスレ ベル Ⅳ)

2) Schuck A, Ahrens S, Paulussen M, et al. Local therapy in localized Ewing tumors: results of 1058 patients treated in the CESS 81, CESS 86, and EICESS 92 trials. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003; 55: 168-77. (エビデンスレベル Ⅳ)

背景・目的 解 説

検索式・参考にした二次資料

(15)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 ESFT は高度に放射線感受性の腫瘍であることが知られており,放射線治療は化学療 法の導入以前から ESFT に対する標準治療の一環として用いられてきた。放射線治療 の線量については,50〜60 Gy が根治線量であるが,手術での切除度合いにより臨床試 験ごとに幅があるのが現状であるが,各臨床試験における外科切除縁と照射線量に関し て検討した。 Ozaki ら1)は,CESS 81,86,91 の外科手術の情報が利用できる限局例 244 例につい て後方視的に検討した。手術施行例の局所再発率は 10/241(4 %)で放射線治療のみの 15/102(15 %)と比べて有意に低かった。根治切除例では,全身再発は認められたが 局所再発はなかった。根治切除,広範切除を適切切除と定義し,辺縁切除と腫瘍内切除 を不適切切除と定義すると,局所再発に関しては適切切除では 8/177(5 %)であった のに対して,不適切切除では 8/67(12 %)と有意差が認められた。 発症部位による切除後の再発率をみると,適切切除で原発部位が体幹部位と四肢部位 での全身再発率は 6/51(12 %)と 2/126(2 %)と有意な差を認めた。このことから, 適切切除であっても体幹部位に発症した例は予後が悪いことがわかった。 組織学的奏効度と予後の関係では,組織学的奏効度が良好な場合は,適切切除をでき た例のほうが不適切切除例よりも予後は良好である。一方,組織学的治療効果が不良な 場合は,予後と切除の関係は,ないことがわかった。また,組織学的治療効果の良好例 は,不良例よりも予後は良好であった。 Bacci ら2)は,根治切除,広範切除となる適切切除ができる四肢の症例は,放射線治 療より外科療法のほうが優れており,辺縁切除や腫瘍内切除となる不適切切除の場合 に,放射線治療の照射線量を減量することにより,再発する症例が多くなり,不適切切 除が予想される場合には,根治的線量が必要であると報告している。

Schuck ら3)は,CESS 81,CESS 86,EICESS 92 の 1,058 人に対する外科切除縁と放

射線治療との予後に関して検討し報告した。広範切除で組織学的奏効度が良好な場合 は,照射の必要性がない。組織学的奏効度が不良の場合,腫瘍内切除,または辺縁切除 の場合は,術後放射線治療を併用したほうが局所制御は良好である。以下に EICESS 92 における放射線治療に関してのまとめを記載する(表 1,2)。 St. Jude 病院での 60 例の報告4)では,初回化学療法で組織学的治療効果良好群 48 例 背景・目的 解 説

限局例における外科切除縁と放射線照射線量の関係は?

広範切除で組織学的奏効度が良好な場合は,照射の必要性がない。 組織学的奏効度が不良の場合,腫瘍内切除または辺縁切除の場合 は,術後放射線照射を併用したほうが局所制御は良好である。  (エビデンスレベル Ⅲ) 推奨 グレード

B

(16)

には 30〜36 Gy,組織学的治療効果不良群 12 例では 50〜60 Gy を使用しているが,病 理学的奏効度良好群 48 例の 5 年無病生存率 58 %,局所制御率 68 %と満足のできる成 績ではなく,30〜36 Gy という低線量の放射線治療の妥当性は確立していない。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“surgical margin”AND“localized”で検索し 重 要 と 思 わ れ る 文 献 を 参 考 に し た。 ま た,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/

cancertopics/types/ewing/)を参考にした。

1) Ozaki T, Hillmann A, Hoffmann C, et al. Significanse of surgical margin on the prognosis of patients with Ewing’s sarcoma. A report from the Cooperative Ewing’s Sarcoma Study. Cancer 1996; 78: 892-900.(エビデンスレベル Ⅲ)

2) Bacci G, Longhi A, Briccoli A, et al. The role of surgical margins in treatment of Ewing’s sarcoma family tumors: experience of a single institution with 512 patients treated with ad-juvant and neoadad-juvant chemotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2006; 65: 766-72.(エビ デンスレベル Ⅲ)

3) Schuck A, Ahrens S, Paulussen M, et al. Local therapy in localized Ewing tumors: result Of 1058 patients treated in the CESS 81, CESS 86, and EICESS 92 trials. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003; 55: 168-77.(エビデンスレベル Ⅲ)

4) Arai Y, Kun LE, Brooks MT, et al. Ewing’s sarcoma: local tumor control and patterns of fail-ure following limited-volume radiation therapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1991; 21: 1501-8.(エビデンスレベル Ⅳa) 検索式・参考にした二次資料 参考文献 表 1 EICESS 92 2):12 週目より術前照射開始 放射線照射 手術不能 / 巨大腫瘍 辺縁切除また腫瘍内切除が予想される症例 広範切除が予想される症例 総線量   54 Gy 54 Gy 44 Gy 表 2 EICESS 92 2):12 週目に手術を施行後,照射開始 放射線照射 辺縁切除で病理学的奏効が不良か,または腫瘍内 切除 広範切除で病理学的奏効が 不良か,または辺縁切除で 病理学的奏効が良好 組織学的全摘除か,ま たは広範切除で病理学 的奏効が良好 1 相辺縁 5 cm 44 Gy 44 Gy 0 Gy 2 相辺縁 2 cm 10 Gy 0 Gy 0 Gy 総線量 54 Gy 44 Gy 0 Gy

(17)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 胸壁原発の限局性 ESFT に対する治療は,周囲に肺や脊髄などの重要な臓器がある ため,外科的切除ならびに放射線治療に特段の配慮を必要とする。胸壁原発 ESFT に 対する局所治療に関して検討した。

1981〜1993 年に行われた CESS 81,CESS 86,EICESS 92 に登録,治療された胸壁 原発(肋骨,肩甲骨,胸骨,椎骨)限局性 ESFT の 114 例に関して検討1)されている。 治療法は,多剤併用化学療法に局所療法(外科治療か,または放射線治療,または併用 療法)が行われた。広範切除術が行われれば,外科療法のみで,また,辺縁切除か,腫 瘍内切除であれば,放射線治療を加えることを勧めている。それぞれの放射線照射量 は,CESS 81 では,手術不能時は 50〜60 Gy 照射し,辺縁切除と腫瘍内切除など不適 切切除では,術後に 36 Gy 照射した。CESS 86 では,手術不能時は 60 Gy 照射し,術 後,辺縁切除または広範切除の場合は 44 Gy 照射,腫瘍内切除であれば 60 Gy 照射と した。EICESS 92 では,腫瘍巣に 44 Gy 照射し,10 Gy の boost を照射している。術後 は 44 Gy か 54 Gy を照射している。5 年無病生存率は肋骨 60 %,肩甲骨 37 %,椎骨 32 %と原発部位により異なっていた。局所再発をした 14 例中 10 例の詳細を検討した ところ,照射野が適正に設定されずに照射野の辺縁,外から再発している症例などがあ ることから,照射野を適正に設定することによりさらに局所治療の成績は改善するだろ うと述べている。 Schamberger ら2)の解析によると,1988〜1992 年(INT 0091)までと 1995〜1998 年(POG 9354)までの臨床試験に登録された 869 例のうち胸壁原発は,98 例で,5 年 無イベント生存率(EFS)は 56 %で,全部位の 5 年 EFS 64 %と有意差は認めなかっ た。胸壁原発例で,初期化学療法前に腫瘍切除し,その後に放射線治療が行われたのは 17 例(70.8 %)であった。一方,初期化学療法後に腫瘍切除した 62 症例のうちその後 に放射線治療が行われた症例は 25 例(40.3 %)であり,初期全身化学療法を先行し, 後に腫瘍切除したほうが放射線治療を必要としない割合が高かった。胸壁への放射線照 射は,二次がんの発症や慢性の肺線維症などの肺疾患,心筋疾患,冠動脈疾患などを発 症する危険性がある。切除縁に腫瘍細胞を認めなかった場合は,放射線治療を加えるこ とによる EFS の改善は認められなかった。 背景・目的 解 説

胸壁原発の限局例に対する適切な局所治療は?

肋骨に発症した腫瘍も治療の原則は,他の部位と同様に外科手術を 先行するより全身化学療法を先行したほうが胸壁腫瘍に対する広範 切除が可能となり,放射線治療を必要とする機会が減少するので, 全身化学療法を先行することを推奨する。放射線治療の適切な照射 野の設定も重要である。 (エビデンスレベル Ⅳ) 推奨 グレード

C

(18)

以上より,全身化学療法を先行すれば,胸壁腫瘍に対する広範切除が可能となる確率 が高くなり,その結果,術後の放射線治療を必要とすることが少なくなり2, 3),二次が

んや慢性の肺線維症などの肺疾患,心筋疾患,冠動脈疾患などの発症の危険性を少なく できる。ただ,これらの臨床研究は対象症例が少ないため,今後さらに対象症例を増や し検討する必要がある。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“chest wall”で検索し重要と思われる文献を参 考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/ewing/)

を参考にした。

1) Schuck A, Hoffman J, Rübe C, et al. Radiotherapy in Ewing’s sarcoma and PNET of the chest wall: results of the trials CESS 81, CESS 86, and EICESS 92 tumor. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1998; 42: 1001-6.(エビデンスレベル Ⅳa)

2) Shamberger RC, LaQuaglia MP, Gebhardt MC, et al. Ewing sarcoma/primitive neuroecto-dermal tumor of the chest wall: impact of initial versus delayed resection on tumor margins, survival, and use of radiation therapy. Ann Surg 2003; 238: 563-8.(エビデンスレベル Ⅳa) 3) Shamberger RC, Laquaglia MP, Krailo MD, et al. Ewing sarcoma of the rib: results of an

in-tergroup study with analysis of outcome by timing of resection. J Thorac Cardiovasc Surg 2000; 119: 1154-61.(エビデンスレベル Ⅳa)

検索式・参考にした二次資料

(19)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 脊椎原発の ESFT に対する治療は,外科治療や放射線治療に制限があり,十分に局 所制御ができるとは限らないため予後不良といわれている。脊椎原発の ESFT の治療 成績と局所治療,再発の形態に関して検討した。

1981〜1999 年までに CESS 81,CESS 86,EICESS 92 での治療成績,放射線治療後 の局所再発に関して報告1)されている。脊椎原発は 116 例で,このうち限局例は 87 例, 転移例は 27 例であった。(仙骨原発は除く)局所治療は手術または放射線治療(46〜 60 Gy)のみ,手術+放射線照射(44〜54 Gy,術前または,術後照射)が行われた。 腫瘍体積の違い,原発部位の違い,照射線量の違いは,無病生存率(DFS)に影響 がなかった1)。局所治療に関しても,放射線治療のみ,手術療法のみ,照射線量の違い による再発率の差は認められなかった。手術療法においては,広範切除できた例は再発 しなかったが,辺縁切除例や腫瘍内切除例は再発を認めており,広範切除を行うことは 重要だと考えられる。 14 例の局所再発症例を検討すると,13 例は照射野内,1 例は辺縁からの再発であっ た。脊椎原発例はほとんど治癒切除できない。放射線照射された脊椎原発例の予後は, 放射線照射が行われた他の原発部位の予後と同等と考えてよい。局所再発症例のほとん どは照射野からの発症であった。 仙骨を解析対象に入れた報告2, 3)では,脊椎の他部位と仙骨を比較すると明らかに仙 骨は不良であり,再発後の生存例はいない。このように予後が不良な原因としては,十 分な外科療法,放射線治療ができないことが原因の一つである。 以上より,限られた文献の検討であるが,脊椎原発例は外科的治癒切除ができる症例 が非常に少ない1-3)。このために脊椎原発例全体では,他の部位よりも予後は不良であ る。他の部位と同様に治癒切除が不可能な症例は予後不良であるが,腫瘍体積,原発部 位,照射線量に関しては DFS には影響しなかった。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“vertebrae”OR“spine”で検索し重要と思わ れる文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/ 背景・目的 解 説 検索式・参考にした二次資料

脊椎原発の限局例に対する適切な局所治療は?

脊椎原発の Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)は,治癒切除が 不可能な症例が多く予後不良であった。腫瘍体積,原発部位,照射 線量に関しては,無病生存率には影響しなかった。発症部位により 手術適応が異なり,症例数も少ないため明確な推奨はできないが, 化学療法を主体に放射線照射,手術療法を組み合わせた治療が行わ れている。 (エビデンスレベル Ⅲ) 推奨 グレード

C

(20)

types/ewing/)を参考にした。

1) Schuck A, Ahrens S, von Schorlemer I, et al. Radiotherapy in Ewing tumors of the verte-brae: treatment results and local relapse analysis of the CESS 81/86 and EICESS 92 trials. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2005; 63: 1562-7.(エビデンスレベル Ⅲ)

2) Bacci G, Boriani S, Balladelli A, et al. Treatment of nonmetastatic Ewing’s sarcoma family of tumors of the spine and sacrum: the experience from a single institution. Eur Spine J 2009; 18: 1091-5. (エビデンスレベル Ⅳa)

3) Indelicato DJ, Keole SR, Shahlaee AH, et al. Spinal and paraspinal Ewing tumors. Int J Radi-at Oncol Biol Phys 2010; 76: 1463-71. (エビデンスレベル Ⅳa)

(21)

8

Ewing

肉腫ファミリー腫瘍

予後因子は,部位,年齢,病期,腫瘍体積,初回化学療法への反応性などが挙げられ る。特に初回化学療法に対する組織学的奏効度の予後との相関について検討した。

Picci ら1)は,限局性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の 118 例の初回化学療法

の反応性の術後組織学的奏効度を Grade I から III まで分類し(表 1),予後との相関を 検討した。全範囲で壊死を認める Grade III では,5 年無病生存率(DFS)は 95 %で あった。一方,Grade I,Grade II での 5 年生存率は 34 %と 68 %と有意差を認めた。

Wunder ら2)表 2の分類を用いて,限局性 ESFT の 74 例の初回化学療法の反応性

(術後組織学的奏効度)と 5 年 DFS を比較した。5 年生存率は 14 例の Grade I は 0 %, 16 例の Grade II は 37.5 %,44 例の Grade III と IV は 84 %と有意な差を認めた。

Bucci ら3)は,限局性 ESFT の 174 例の初回化学療法の組織学的奏効度と DFS を比 較検討した。110 例の組織学的奏効度が良好例(Grade II,III)の 5 年 DFS は 77 % 背景・目的 解 説

限局例における初回化学療法後の組織学的治療効果と予後との関

係は?

限局性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍の初回化学療法の反応性と術後 組織学的奏効度は予後と相関する。 (エビデンスレベル Ⅲ) 推奨 グレード

B

表 1 外科的切除標本における術前化学療法の効果判定(Picci ら)1) Grade 効 果 Grade I 肉眼的所見で生存腫瘍細胞の結節が,少なくとも 1 つ以上認める。 腫瘍細胞の結節は,10 倍率で一視野を超える大きさである。 Grade II 肉眼的所見で生存腫瘍細胞の結節が,少なくとも 1 つ以上認める。 腫瘍細胞の結節は,10 倍率で一視野を超えない大きさである。 または,10 倍率で,腫瘍細胞の結節が,1 つ以上散在しており,その面積の合計が 10 倍率で一視野を超えない大きさである。 Grade III 肉眼的所見で生存腫瘍細胞の結節を認めない。腫瘍細胞の結節が,散在しているの を,認めない。 表 2 外科的切除標本における術前化学療法の効果判定(Wunder ら)2) Grade 効 果 Grade I ほとんど壊死像は認めない。 Grade II 壊死像は 50〜90%程度認める。 Grade III 壊死像は 90〜99%程度認め,活動性のある腫瘍細胞は,散在するのみ。 Grade IV 壊死像は 100%で,活動性のある腫瘍細胞は,認めない。

(22)

で,65 例の不良例(Grade I)は 28 %と有意差を認めた。 Sulga ら4)は,86 例の ESFT 患者に対して初回化学療法を行い,67 例で術後組織学 的奏効度を検討できた。組織学的奏効度の良好例は 33 例,不良例は 34 例で,それぞれ 5 年全生存率は 80.2 %,41.7 %,5 年 DFS は 68.8 %,51.3 %であった。 以上より,後方視的検討であるが,初回化学療法による術後組織学的奏効度はそれぞ れの症例における化学療法への反応性を反映しており,予後とも相関すると考えられ る。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“prognostic factor”で検索し重要と思われる 文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/

ewing/)を参考にした。

1) Picci P, Böhling T, Bacci G, et al. Chemotherapy-induced tumor necrosis as a prognostic factoer in localized Ewing’ s sarcoma of the extremities. J Clin oncol 1997; 15: 1553-9.(エビ デンスレベル Ⅳa)

2) Wunder JS, Paulian G, Huvos AG, et al. The histological response to chemotherapy as a pre-dictor of the oncological outcome of operative treatment of Ewing sarcoma. J Bone Joint Surg Am 1998; 80: 1020-33. (エビデンスレベル Ⅲ)

3) Bacci G, Ferrari S, Bertoni F, et al. Prognosic Factors in nonmetastatic Ewing’s sarcoma of bone treated with adjuvant chemotherapy: analysis of 359 patients at the Instiuto Ortopedi-co Rizzoli. J Clin OnOrtopedi-col 2000; 18: 4-11.(エビデンスレベル Ⅲ)

4) Sluga M, Windhager R, Lang S, et al. The role of surgery and resection margins in the treatment of Ewing’s Sarcoma. Clin Orthop Relat Res 2001; (392): 394-9.(エビデンスレベル

Ⅳb)

検索式・参考にした二次資料

(23)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 限局性 ESFT の診断時あるいは治療中の骨髄中の微小転移や末梢血中の循環腫瘍細 胞が全身再発に関係するか検討した。 Schleiermacher ら1, 2)は,ESFT 患者 172 人(限局例 125 例,転移例 47 例)の診断 時の末梢血または骨髄血中の融合遺伝子(EWS/FLI-1 または EWS/ERG)を RT-PCR 法で検索した。骨髄検査が行われた転移例 39 例中 18 例(46 %)に陽性,限局例 92 例中 18 例(19 %)に陽性であった。転移例に有意に高頻度に骨髄中に RT-PCR 法 で融合遺伝子が検出された。骨髄中の融合遺伝子陽性例と陰性例の無病生存率(DFS) を比較すると有意に陽性例が予後不良であったが,末梢血中の融合遺伝子陽性例と陰性 例とでは DFS に有意差はなかった。

Avigad ら3)は,限局性 ESFT 26 例で骨髄,末梢血の EWS/FLI-1 の検出が再発に

関係する因子となり得るかどうか検討している。診断時,限局例 14 例の骨髄検査で RT-PCR 法で 6 例(43 %)に腫瘍細胞が検出されたが,DFS には関係しなかったとし ている。一方,治療終了時に骨髄または末梢血中腫瘍細胞が検出されることは,再発の 危険因子になり得ると報告している。この研究での予後不良因子は,経過観察中の RT-PCR 法での腫瘍特異的融合遺伝子の検出が挙げられている。 Schleiermacher ら1)は,診断時の腫瘍細胞の有無は予後に関係すると報告しており, 観察期間や対象例数の違いによる可能性がある。 Yaniv ら4)は自家造血幹細胞移植を行った 11 例に対し,自家造血幹細胞中の腫瘍細 胞混入を RT-PCR 法で検査したところ 11 例全例で陽性であった。移植後,2 例のみ陰 性となり生存しているが,合併症で死亡した 2 例を除く 7 例は再発し死亡している。造 血幹細胞採取時の腫瘍細胞の混入は,移植後の再発に関係する可能性があると指摘して いる。 一方,Vermeulen ら5)は,大量化学療法時の自家末梢血幹細胞移植時における腫瘍 細胞の混入と予後との関連を検討した。88 例のうち移植片への腫瘍細胞の混入が検出 されたのは 8 例で,このうち再発をしたのは 4 例であった。このことより移植片への腫 瘍細胞の混入は,予後とは相関しないという報告をしており,議論のあるところと考え られる。 背景・目的 解 説

限局例における骨髄への微小転移が全身再発に影響するか?

診断時の末梢血や骨髄血中の腫瘍細胞特異的な融合遺伝子により検 出される微小な腫瘍細胞の存在や自家造血幹細胞移植時の輸注細胞 中への腫瘍細胞混入と予後の関係に関しては,検討された症例数が 少なく,かつ多くは後方視的研究であるため,予後に与える影響に ついては明確な結論は得られていない。 (エビデンスレベル Ⅳ) 推奨 グレード

C

(24)

以上より,骨髄血や末梢血中の腫瘍細胞の検出,輸注造血幹細胞中の腫瘍細胞の検出 と予後との関係は議論のあるところで,一定の見解は得られておらず,今後,多施設で の前方視的臨床研究が必要と考える。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“micrometastasis”OR“molecular detection” で検索し重要と思われる文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.

gov/cancertopics/types/ewing/)を参考にした。

1) Schleiermacher G, Peter M, Oberlin O, et al. Increased risk of systemic relapses associated with bone marrow micrometastasis and circulating tumor cells inlocalized Ewing tumor. J Clin Oncol 2003; 21: 85-91. (エビデンスレベル Ⅲ)

2) Fagnou C, Michon J, Peter M, et al. Presence of tumor cells in bone marrow but not in blood is associated with adverse prognosis in patients with Ewing’s tumor. Société Fran-çaise d’Oncologie Pédiatrique. J Clin Oncol 1998; 16: 1707-11.(エビデンスレベル Ⅳa) 3) Avigad S, Cohen IJ, Zilberstein J, et al. The predictive potential of molecular detection in

the nonmetastatic Ewing family of tumors. Cancer 2004; 100: 1053-8.(エビデンスレベル Ⅳ a)

4) Yaniv I, Cohen IJ, Stein J, et al. Tumor cells are present in stem cell harvests of Ewings sarcoma patients and their persistence following transplantation is associated with relapse. Pediatr Blood Cancer 2004; 42: 404-9.(エビデンスレベル Ⅳa)

5) Vermeulen V, Ballet S, Oberlin O, et al. Incidence and prognostic value of tumor cells de-tected by RT-PCR in peripheral blood stem cell collections from patients with Ewing tu-mor. Br J Cancer 2006; 95: 1326-33.(エビデンスレベル Ⅳa)

検索式・参考にした二次資料

(25)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 転移性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対する高い有用性を有する多剤併用 化学療法は確立していない。各研究グループからの治療成績に関し考察する。 転移性腫瘍に対する満足すべき結果を得るような標準的治療は報告されていない。ビ ンクリスチン(VCR)+ドキソルビシン(DXR)+シクロホスファミド(CPA)の VDC 療法とイホスファミド(IFM)+エトポシド(VP-16)の IE 療法,または VCR+ACD +IFM+DXR の VAIA 療法に外科治療,放射線治療を行う集学的治療を行うと,一時 的に完全寛解か部分寛解にいたるが,全生存率は 20 %前後にとどまる1, 2) NCI 3)では,VDC と IE の交替療法と VDC 単独療法の前方視的ランダム化比較試験 を遠隔転移例 120 人に対して施行した。5 年無病生存率(DFS)が 22 %とほぼ同様な 結果で VDC,IE 交替療法と VDC 単独療法との間には有意な差はなかった。

Kushner ら4)は,Memorial Sloan-Kettering Cancer Center で 36 例の ESFT に用量

を強化した治療プロトコールである P6 高用量 CDV(CPA 4.2 g/m2,DXR 75 mg/m2

VCR 2 mg/m2)療法と IE(IFM 1.8 g/m2,VP-16 100 mg/m2)療法を行った。原発部

位に対する治療反応性は良好であったが,全身転移例では予後の改善は得られなかっ た。

EICESS 92 臨 床 研究5)で は,HR 群 を VCR+ACD+IFM+DXR の VAIA 療 法 と

VP-16+VCR+ACD+IFM+DXR の EVAIA 療法に振り分け,HR 群で転移の有無で 分類すると,転移群では VAIA 群に VP-16 を加えても有効性は証明できなかった。 Meiser ら6)は,転移例 60 例に対し標準的な VDC-IE 投与量に薬剤を増量し治療を 行ったが,6 年無病生存率(DFS)は 28 %で,7 %に治療関連死を認め,9 %に二次が んを発症した。投与量を増量することは,標準治療と比較し無効であったと報告してい る。 以上より,転移例に対しての有効な化学療法は確立しておらず,限局性に対する標準 治療と有意差がない報告が多く,現時点では限局例に対する標準治療を用いることが推 奨される。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“metastasis”AND“chemothrapy”で検索し 重 要 と 思 わ れ る 文 献 を 参 考 に し た。 ま た,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/ 背景・目的 解 説 検索式・参考にした二次資料

転移例に対する標準的化学療法は?

転移性腫瘍に対する満足すべき結果を得るような標準的治療はな い。より強度を上げた治療を行っても治療成績はほぼ同様であり, 限局例に用いられている化学療法レジメンを行うのが標準的であ る。 (エビデンスレベル Ⅲ) 推奨 グレード

B

(26)

cancertopics/types/ewing/)を参考にした。

1) Miser JS, Krailo MD, Tarbell NJ, et al. Treatment of metastatic Ewing’s sarcoma or primi-tive neuroectdermal tumor of bone: evaluation of combination ifosfamide and etoposide-a Children’s Cancer Group and Pediatric Oncology Group study. J Clin Oncol 2004; 22: 2873-6.

(エビデンスレベル Ⅱ)

2) Paulussen M, Ahrens S, Burdach S, et al. Primary metastatic(stage Ⅳ)Ewing tumor: sur-vival analysis of 171 patients from the EICESS studies. Ann Oncol 1998; 9: 275-81.(エビデ ンスレベル Ⅲ)

3) Grier HE, Krailo M, Tarbell N, et al. Addition of ifosfamide and etoposide to standard che-motherapy for Ewing’s sarcoma and primitive neuroectodermal tumor of bone. N Engl J Med 2003; 348: 694-701.(エビデンスレベル Ⅱ)

4) Kushner BH, Meyers PA, Gerald WL, et al. Very high-dose short term chemotherapy for poor-risk peripheral primitive neuroectdermal tumors, including Ewing’s sarcoma, in chil-dren and young adult. J Clin Oncol 1995; 13: 2796-804.(エビデンスレベル Ⅳa)

5) Paulussen M, Craft AW, Lewis I, et al. Results of the EICESS-92 Study: two randomized tri-als of Ewing’s sarcoma treatment ─ cyclophosphamide compared with ifosfamide in stan-dard-risk patients and assessment of benefit of etoposide added to standard treatment in high-risk patients. J Clin Oncol 2008; 26: 4385-93.(エビデンスレベル Ⅱ)

6) Miser JS, Goldsby RE, Chen Z, et al. Treatment of metastatic Ewing sarcoma/primitive neu-roectodermal tumor of bone: evaluation of increasing the dose intensity of chemotherapy-a report from the Children’s Oncology Group. Pediatr Blood Cancer 2007; 49: 894-900.(エビデ ンスレベル Ⅲ)

(27)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 骨や骨髄転移を認めた患者に対しての造血幹細胞移植を併用した大量化学療法の,転 移性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍に対する有効性について検討した。 欧米から数々の造血幹細胞移植併用大量化学療法に関する報告がされているが,未だ 有効との報告はみられない。以下に報告例を述べる。 Stewart ら1)は,13 人の予後不良な患児に対し,VDCA〔ビンクリスチン(VCR) +アクチノマイシン(ACD)+シクロホスファミド(CPA)+ドキソルビシン(DXR)〕 にエトポシド(VP-16)やイホスファミド(IFM),シスプラチン(CDDP)を含めた 化学療法で初回治療を行っている。造血幹細胞移植併用大量化学療法として,メルファ ラン(L-PAM)140〜200 mg/m2に全身放射線照射(TBI)5 Gy を併用している。5 年 の無病生存率(DFS)は 21 %と不良であった。

Burdach ら2)は,Meta EICESS 研究において 36 名の進行例に対し tandem L-PAM

+VP-16(tandem ME)と hyper L-PAM+VP-16+TBI(hyper ME)の同種移植と 自家移植を行い比較検討した。5 年 DFS は hyper ME,tandem ME ではそれぞれ 22 %と 29 %で有意な差を認めず,tandem ME ASCT(自家造血幹細胞移植)の有効 性は証明できなかった。また TBI 併用レジメンおいて治療による毒性死が多かった。

Meyers ら3)は,前方視的検討による 23 人の診断時,骨,骨髄に転移のある患者に

大量の L-PAM+VP-16+TBI(12 Gy)を併用する研究を行った。最初に 5 コースの VCR+DXR+CPA の(VDC 療法)と IFM+VP-16 の(IE 療法)を交互に行い,末梢 血幹細胞を採取し大量の L-PAM+VP-16+TBI を併用する治療を行った。2 年 DFS は 20 %と低く効果は認められなかった。 最近,Oberlin ら4)は,75 例の転移例に対し移植前処置に大量ブスルファン(BUS) に L-PAM を併用した ASCT の成績を報告した。5 年 DFS は 47 %であった。肺のみ 転移の 44 例は 52 %,骨のみ転移の 22 例は 36 %であった。骨髄転移のあった 23 例の うち生存例は 1 例のみであった。予後因子を多変量解析すると,年齢が 15 歳以上,診 断時の発熱,骨髄転移が予後不良因子であった。このことから,肺のみ,骨のみの転移 であれば大量化学療法は有効と考えられると報告している。 Gardner ら5)は,ファーストラインとして ASCT を受けた 80 例,再発後受けた 36

例に関して多施設での後方視的解析を報告している。ASCT の前処置は TBI に CPA+ 背景・目的 解 説

転移例に対する造血幹細胞移植併用大量化学療法は有効か?

骨や骨髄転移を認めた患者に対しての造血幹細胞移植を併用した大 量化学療法の治療成績は欧米より報告されているが,無病生存率を 改善するというエビデンスは得られていない。  (エビデンスレベル Ⅳ) 推奨 グレード

C

(28)

VP-16 を加えるか,VP-16 と L-PAM を加えた治療を行っている。ASCT の限局例で ファーストラインで ASCT を受けた例の 5 年 DFS は 49 %,転移例では 34 %であっ た。診断時,限局例でその後再発した例の 5 年 DFS は 14 %と非常に不良であった。 この研究ではこれまでの移植を用いない化学療法の成績と大きな違いはない結果であっ たと報告している。

Rosenthal ら6)は,転移例または再発例に,tandem ASCT を 13 例に,1 回のみの

ASCT を 7 例に行った。1 回目の ASCT の前処置は,BUS+L-PAM が 11 例,L-PAM +カルボプラチン(CBDCA)が 9 例,2 回目の前処置は,L-PAM+CBDCA+CPA ま たは VP-16 などであった。治療関連死は 2 回目 ASCT 中に 1 例であった。治療成績 は,1 年全生存率(OS)は 60 %,3 年 OS は 45 %であった。Burdach ら2)も報告して いるが,集積症例数が少なく評価は難しいが,比較的安全に tandem ASCT を行うこ とが可能であった。 以上より,ほとんどの報告は 2〜5 年 DFS は 20〜30 %程度で,未だに予後は不良で あるが,肺のみ,骨のみの転移であれば大量化学療法は有効であるという報告もある が,まだ十分な症例数の蓄積もなく推奨はできない。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“high dose therapy”で検索し重要と思われる 文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/

ewing/)を参考にした。

1) Stewart DA, Gyonyor E, Paterson AH, et al. High-dose melphalan+/−total body irradia-tion and autologous hematopoietic stem cell rescue for adult patients with Ewing’s sarcoma or peripheral neuroectodermal tumor. Bone Marrow Transplant 1996; 18: 315-8.(エビデン スレベル Ⅳa)

2) Burdach S, Meyer-Bahlburg A, Laws HJ, et al. High dose therapy for patients with primary multifocal and early relapsed Ewing’s tumors: results of two consecutive regimens assessing the role of total-body irradiation. J Clin Oncol 2003; 21: 3072-8.(エビデンスレベル Ⅱ) 3) Meyers PA, Krailo MD, Ladanyi M, et al. High-dose melphalan, etoposide, total-body

irradi-ation, and autologous stem-cell reconstitution as consolidation therapy for high-risk Ewing’s sarcoma does not improve prognosis. J Clin Oncol 2001; 19: 2812-20.(エビデンスレベル Ⅳa) 4) Oberlin O, Rey A, Desfachelles AS, et al. Impact of high-dose busulfan plus melphalan as

consolidation in metastatic Ewing tumors: a study by the Société Française des Cancers de l’ Enfant. J Clin Oncol 2006; 24: 3997-4002.(エビデンスレベル Ⅲ)

5) Gardner SL, Carreras J, Boudreau C, et al. Myeloablative therapy with autologous stem cell rescue for patients with Ewing sarcoma. Bone Marrow Transplant 2008; 41: 867-72.(エビデ ンスレベル Ⅲ)

6) Rosenthal J, Bolotin E, Shakhnovits M, et al. High-dose therapy with hematopoietic stem cell rescue in patients with poor prognosis Ewing family tumors. Bone Marrow Transplant 2008; 42: 311-8.(エビデンスレベル Ⅳa)

検索式・参考にした二次資料

(29)

8 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍 転移性 Ewing 肉腫ファミリー腫瘍の肺転移例に対し,全肺照射による局所制御が期 待できるかどうか検討した。 Paulussen ら1)は,1990〜1995 年に EICESS に登録された肺または胸膜に転移を認め た 171 人に対して,14 歳以下は 15 Gy,14 歳以上は 18 Gy の全肺照射の施行例と非施 行例との予後の比較を行っている1)。全肺照射を行った患児の 5 年無病生存率は 40 % で,非照射例の患児は 19 %と全肺照射を行ったほうが有意に生存率は高かった(P< 0.05)。

Spunt ら2)は,1979〜1996 年に St. Jude Children Hospital で治療された肺転移を認

めた患者について後方視的に解析した。18 人の患児は初回化学療法で肺転移巣は制御 でき,1 人だけ全肺照射 16.5 Gy を行い,さらに病巣部に合計 21.5 Gy 照射した。また, 初回化学療法で肺転移巣が制御できなかった 10 人のうち 7 人に対しては全肺照射 16.5 Gy を行い,このうち 2 人は病巣部に 30〜35 Gy 追加照射を行っている。全肺照射 の 8 人のうち 3 人は 14 週後肺臓炎に罹患したが,ステロイド療法で改善した。検討症 例数が少ないため明確な結論は得られないが,初期の化学療法に対する反応が不良の場 合は全肺照射は有効と考えられるが,化学療法に対する反応性が良好な例に対する全肺 照射の有効性は明らかでない。今後は前方視的ランダム化比較試験が必要であるとして いる。 Bölling ら3)は,1990〜1999 年に EICESS 92 に登録された肺転移を認めた 99 例につ いて後方視的検討を行った。この研究では,肺転移のある症例は化学療法で病巣が制御 されていても両側の全肺照射(14 歳未満は 14 Gy,14 歳以上は 18 Gy)を推奨してい る。実際の照射線量は 12〜21Gy である。また,肺機能検査を行っており,検査を行っ た 12/28(43 %)の患者は,特に肺機能異常は認めなかった。残りの 16/28 は何らかの 肺機能異常を認め,2 例は重症であった。肺機能異常の出現率は照射線量による差は認 めなかった。この研究でも,全肺照射した例のほうが照射しない症例より 5 年全生存率 の有意差はないが良い傾向(61 % vs. 49 %,P=0.036)にあった。 以上より,肺転移を併発した患者では化学療法の治療効果にかかわらず,全肺照射を 実施したほうが予後は良好な傾向にある。全肺照射を行う場合は 12〜14 Gy が照射線 背景・目的 解 説

肺転移例に対する全肺照射は有効か?

肺転移を併発した患者では,全肺照射による局所制御の有効性が示 唆されている。全肺照射を行う場合は 12〜14 Gy が照射線量とし て推奨される。ただし,放射線照射による肺機能異常の出現率が 50 %を超える報告もあり,十分注意する必要がある。  (エビデンスレベル Ⅲ) 推奨 グレード

C

(30)

量として推奨される。しかし,放射線照射による肺機能異常の出現率は 50 %を超える 報告もあり十分注意する必要がある。

PubMed で“Ewing sarcoma”AND“pulmonary metastasis”で検索し重要と思われ る文献を参考にした。また,NCI-PDQⓇ(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/

ewing/)を参考にした。

1) Paulussen M, Ahrens S, Burdach S, et al. Primary metastatic(stage IV)Ewing tumor: sur-vival analysis of 171 patients from the EICESS studies. Ann Oncol 1998; 9: 275-81.(エビデ ンスレベル Ⅲ)

2) Spunt SL, McCarville MB, Kun LE, et al. Selective use of whole-lung irradiation for patients with Ewing sarcoma family tumors and pulmonary metastases at the time of diagnosis. J Pediatr Hematol Oncol 2001; 23: 93-8.(エビデンスレベル Ⅳa)

3) Bölling T, Schuck A, Paulussen M, et al. Whole lung irradiation in patients with exclusively pulmonary metastases of Ewing tumors. Toxicity analysis and treatment results of the El-CESS-92 trial. Strahlenther Onkol 2008; 184: 193-7.(エビデンスレベル Ⅲ)

検索式・参考にした二次資料

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