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CSR charity principlestewardship principle voluntary CSR 9 CSR CSR CSR 3. 韓国の CSR の発展過程 CSR

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1.問題提起 CSR 問題をめぐって,大企業の不祥事や地球 規模での自然環境の悪化,市民の関心の高さ, SRI の拡大などを背景に世界的に CSR 問題に対 する関心も高まり,国際機関の CSR に関連する 取り組みも活発に行われている.このような現状 の中,欧米を始めとする先進諸国は CSR をいち 早く取り入れ,積極的に推進し,欧米の CSR の 現状や動向に対する研究も盛んに行われている. 一方,アジア諸国(日本を除く)においては CSR の取組みが先進諸国に比べて遅くそれほど 進展していないため,アジア諸国における CSR の取組み状況や動きについての研究は活発に行わ れていない.しかし,グローバル企業や海外に進 出して事業を行う企業が数多く存在する韓国にお いては CSR を真剣に取り組もうとしている.し たがって,本稿の目的は,アジア諸国の CSR に 対する研究の一つとして韓国を取り上げ,ステー クホルダー・アプローチに基づき,韓国企業のス テークホルダーへの対応を通じて韓国の CSR の 現状および動向を検討する. 2.企業とステークホルダーとの関係 企業と社会の関係を理解するには,ステークホ ルダー概念およびステークホルダー・アプローチ に基づくのが有効であると言われており,企業と 社会との関係を扱う研究においては,ステークホ ルダー・アプローチが多く採用されている2) ステークホルダーという単語が経営学文献に始 めて現れたのは,1963 年のスタンフォード研究 所の内部メモであると言われている3).Freeman (1984)の用いた先駆的かつ代表的なステークホ ルダーの概念およびステークホルダー・アプロー チは多く採用されている.フリーマンによると, ステークホルダーは, Any group or individual who can affect or is affected by the achievement of the firm's objectives. 「企業目的の達成に影響を及ぼ し,あるいは影響される集団もしくは個人」と定 義され,それらは,現代企業にそれぞれ利害 (stake)関係をもっている4).また,Post et al(1999)

によると, stakeholders are all the people and groups affected by, or that can affect, an organization s decisions, policies, and operations. ステークホルダー は,「組織の意思決定,政策,運営に影響を及ぼ し,あるいは影響される個人および集団」である とし5),フリーマンのステークホルダーの概念を 採用している.すなわち,企業は社会と相互に影 響し合う(interact)関係にあり,企業はステーク ホルダーと相互に影響し合う関係にある.このこ とは,企業とステークホルダーが相互に影響し合 う関係を意味し,企業はステークホルダーの期待 に応じ,ステークホルダーの「支持(support)」 を得なければ企業の存続は不可能になることを示 し,企業と社会(ステークホルダー)との問題が CSR 問題でもあると言える.CSR の概念に関し ては,多様な視点によってさまざまな見解がある が,本稿においては,高田(1974)および森本 (1994)に従い,CSR を,企業が永続事業体(ゴー イング・コンサーン)として存続し,成長するた めに,「企業を取り巻く環境主体であるステーク ホルダーおよび社会や環境に対して企業が自発的

─韓国企業のステークホルダーへの対応を通じて─

金   在 淑

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に果たすべき責任」と定義づける. CSR の 本 来 の 意 味 は,「 慈 善 原 理(charity principle)」と「受託原理(stewardship principle)」 に基づいており,前者は,富裕層は貧困者に対し て慈愛の施しをする,すなわち,企業は社会的に 貧困な人々や集団に自発的(voluntary)に援助す ることであり,後者は,経営者は社会の資源の使 用を任せられた受託者である,すなわち,企業は 企業の意思決定や政策に影響されるステークホル ダーの受託者として行動することである6).例え ば,前者に基づく企業の行動とは,企業の慈善財 団の設立,社会問題の解決のためのイニシアチブ の提供,従業員のボランティア活動,貧困層と社 会的パートナシップの提携などの企業の慈善事業 や社会的良いとされる自発的な行動を通じた企業 のボランティア活動であり,後者に基づく企業の 行動とは,法的必要条件を満たし,企業の経営戦 略計画へのステークホルダー・アプローチを用 い,企業と社会の相互依存を認め,社会における 多様な集団のニーズと利害の均衡を図る活動であ る7) 企業とは,「社会のための道具であり,社会の ための組織である」8)が故に,企業が存続し,機 能するためには,社会の要求に応じなければなら ない.CSR の基本的な理念は,企業は社会的存 在であるため,社会的問題を解決するにあたり一 定の役割を担うべきであり,企業は自らの「社会 に対する義務」を真剣に受け止め,それを実行す る努力をすべきである9).現代の企業は,企業の 大規模化に伴う影響力および支配力が増大してい る.それとともに,ステークホルダーも多様化し, そのステークホルダーからの CSR に対する期待 や要請が高まっており,企業の社会的存在として のその役割が大きくなっている.すなわち,多様 化しているステークホルダーの期待や要請に応じ ることこそが CSR への対応を意味しており,ス テークホルダー・アプローチに基づいて企業と企 業経営について論じる「企業と社会」論が CSR の経営学的研究の基礎になっている. 3.韓国の CSR の発展過程 1980−1990 年代の民主化運動に伴い労働・環 境問題など企業の社会的責任問題が台頭し10) 2000 年以後 CSR の論議が活発に行われるように なった. 例えば,1991 年の斗山の 2 度にわたるペノー ル汚染事件(水道水にペノールが流入され,水道 水から悪臭が発生し,食水が中断されるなど), 1995 年の三風デパートの崩壊事件(死傷者約 700 名),1995 年−1996 年までの 2 年間,韓国 30 大 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 水質汚染 大気汚染 19 15 9 7 8 9 7 4 5 5 2 5 5 4 1 6 2 4 5 22 11 15 11 6 4 5 8 7 7 9 6 6 6 8 3 6 3 1 4 2 3 3 1 5 24 51 32 14 31 22 1 0 0 0 現代 KUMHO 大宇 ロッテ 韓和 DAERIM 双龍 サムスン GOHAB HANSOL KIA 東亜 SHINHO 東洋 SUNKYUNG MIWON 東武 KORON TONGKUG KYOHYOU… 韓進 斗山 韓一 考星 眞露 HAITA I HANRA NEWKOA ANAM LG 図 1.韓国 30 大規模集団の環境汚染件数(1995 年〜1996 年) 出所)韓国新聞『毎日経済』1997 年 10 月 2 日付のデータより,筆者作成

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規模企業集団が起こした大気汚染および水質汚染 の件数が 315 件で,その中で,現代グループ系列 会 社 は 41 件,LG が 26 件,KUMHO が 24 件 な どの環境汚染基準の違反が摘発され,行政処分を 受けるなど,1990 年代に多くの環境問題や企業 不祥事が起きていた. 2000 年以後は,大宇の倒産,SK の粉飾会計な ど相次ぐ大企業の不祥事が多発し,社会による批 判が高まった.このことをきっかけにこれらの問 題に対応すべく,韓国企業は企業内部の不正腐敗 を防止するための企業倫理を中心としたコンプラ イアンス経営や社会問題を解決するための社会貢 献活動を中心に CSR を企業経営に取り組み出し た. 2000 年頃までは,倫理経営,社会貢献などを 中心とした CSR 活動が行われており,経済・社 会・環境の側面を考慮した CSR の概念は受け入 れられていなかったが,2003 年に韓国企業とし て初めて「持続可能経営報告書」が発行され, 2003 年以後,CSR を持続可能性または企業の社 会的責任という概念として取り入れられるように なったと言われている11).UN のグローバルコン パクトの加入社が 2006 年までには 20 社に満たな かったが,2008 年には 118 社(法人以外のすべ ての組織機関を含む)と拡大され,CSR が韓国 企業に浸透し始めた.このことは,2007 年に UN の韓国協会が創立されたことや Ban Ki-Mun 氏が UN の事務総長に就任したことが影響してい る12) 4.マクロレベルおよびミクロレベルでの CSR 韓国の CSR 現状を検討するに当たって,韓国 政府を含む企業社会全体の CSR に対する取り組 みと韓国企業の CSR に対する取り組みを分けて 検討する. 4. 1 マクロレベル(社会全体)での取組み 4. 1. 1 韓国政府 韓国政府の CSR に対する取り組みをみると, 政府の主要部署である「知識経済部」を始め,「労 働部」,「保健福祉家族部」,「環境部」など,部署 ごとに様々な CSR 支援政策を打ち出し,CSR 問 題への取り組みを行っている.例えば,2003 年 には「知識経済部」が公企業および民間企業を対 象に,「倫理経営実態」を調査・評価している. 2006 年には「大韓商工会議所」および「産業政 策研究院」が「韓国型持続可能経営報告書指標」 を開発し,普及させている.「環境部」は,2002 年に環境報告書のガイドラインを開発,2006 年 には持続可能経営の拡大を支援するための「産業 発展法」の改定案の成立,2007 年には持続可能 発展委員会とともに「持続可能発展基本法」13) を制定している. しかし,総合的に CSR を管理する CSR 専任機 関や組織は構成されておらず,部署ごとの個別的 な対応をしており,欧州の政府に比較すれば,韓 国政府の CSR 問題に対する認識および対応が脆 弱であるとの指摘もあるが14),CSR 関連の法制 度の整備を行っており,CSR に貢献していない とは言えない. 4. 1. 2 社会全体 韓国社会全体,主に,韓国国民の消費者および 投資家の CSR に対する認識について行われた調 査報告をもとに検討する.韓国国民の CSR に対 する認識調査報告書によると15),以下のような 調査結果が得られている. 韓国消費者の CSR に対する要求は,2006 年ま では企業倫理および法的規制の強化を 62%が支 持していたが,2008 年の調査では 44%と 19%減 少しており,法的規制の強化よりも企業の自律的 な対応を要求していることが分かる. 社会および環境問題に対する企業の対応が不十 分であるという消費者の評価が 74%を占め,企 業の CSR に対する否定的認識が高い.消費者が 企業の CSR に対してイメージが向上するケース は,CSR に対応した製品やサービスの提供が 76%,慈善団体への寄付が 68%,企業の社会・

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環境関連のキャンペーンが 65%,職員のボラン ティア休暇の許可が 64%,CSR 報告書の発行が 60%を占め,消費者の CSR に対する要求や関心 が高まってきていることが分かる.なお,消費者 が企業の CSR に対する情報を収集する媒体は, マスコミおよび企業の製品・サービスの体験を通 じるケースが 60%と多い. また,韓国消費者の CSR に対する消費者の影 響力および CSR 費用を負担する意志に対する調 査結果16)によると,企業の CSR に影響力を行使 できると応答した者が 72%で,先進国の 60%∼ 80%に比べて引けを取らない.しかし,企業の CSR 活動による製品やサービスに 10%以上の価 格引き上げ分を負担するかどうかに対する質問に 負担すると応答した者は 44%で調査対象国17)24 カ国中 22 位(韓国より下位の国は,メキシコ, ロシア)と下位を占め,24 カ国の消費者の平均 68%に比べても低く,CSR に対する意識は高い ものの実際の消費行動はそれに伴っていなく,ま だ消費者の消費行動が CSR に影響力を行使する ほど,成熟していないと思われる. 株主に CSR が株式投資に及ぼす影響について 調査した結果によると18),CSR 活動が活発な企 業が利益も上がるという認識が約 60%と高いも のの,CSR 活動が株式の投資を決定することに 影響を及ぼすという応答は約 29%に止まり,株 主の CSR 活動に対する認識と投資決定に対する 影響力の違いがみられ,株主の実際の投資決定に 企業の CSR 活動が及ぼす影響力の少なさを示し ている. 投資家の 82%が投資家に CSR に関する情報を 企業が十分に提示していないと答えており,企業 の CSR に対する情報開示が十分ではないことを 示し,不十分な情報開示が株主の SRI の発展を 妨げている原因にもなっているように思われる. このように韓国の消費者及び投資家(株主)の CSR に対する認識は高いものの CSR に対して影 響を及ぼすことができるほどの消費行動や投資行 動が伴っていなく,CSR に対する高い認識と実 際の CSR 行動に不一致がみられる. 4. 2 ミクロレベル(韓国企業)での取組み 4. 2. 1  個別企業の CSR 事例─「サムスン電子」 および「現代自動車」 韓国企業の個別企業の CSR 事例として韓国を 代表する電子産業の「サムスン電子」および自動 車産業の「現代自動車」の CSR 活動内容をそれ ぞれの会社が発行している CSR 報告書を中心に 比較検討してみよう. ① 会社概要 「サムスン電子:Samsung Electronics」は,世 界半導体メーカー売上高ランキングにおいて, 2002 年より,インテルに次ぐ第 2 位の座を維持 している韓国最大手の電機メーカーである.1969 年に設立され,生産法人 40 か所,販売法人 50 か 所,研究所 18 か所,他 91 か所など全世界に 199 拠点を有するグローバル企業であり,サムスング ル ー プ の 中 核 企 業 で あ る. ま た,DRAM や NAND 型フラッシュメモリーは世界シェア 1 位, 携帯電話は世界シェアで 2 位,デジタルビデオカ メラ部分においては世界シェア 5 位,ブルーレイ ディスプレイヤ─部分は北米市場でシェア 1 位を 占めている.「サムスングループ」はサムスン電 子を始め,62 の系列会社で構成されている19) なお,サムスン電子の代表取締役副会長は専門経 営者の「Choe. Gi-Seong」であり,彼は,2009 年 の代表取締役社長を経て,2010 年より代表取締 役副会長になっている.会長はサムスンの創立経 営者の息子である「Lee. Gun Hee」である.彼は, 1998 年から 2008 年までサムスン電子代表取締役 会長を歴任し,2010 年 3 月より,会長に復帰し ている. 「現代自動車:Hyundai Motor」は,1967 年 12 月に創立された韓国最大手の自動車製造業であ り,世界規模の生産台数は世界 6 位を占め,アジ アに本拠を置く自動車メーカーとしてはトヨタグ ループに次ぐ第 2 位である.1998 年には現代自

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動車の傘下に起亜自動車が入り,2000 年に現代 自動車,起亜自動車を始め自動車部品会社 10 社 など総系列会社 41 社で構成される現代・起亜自 動車グループとなり,「現代・起亜自動車グルー プ大規模企業集団」として指定された.現在, 190 カ国で 300 万台の自動車を販売,生産工場 8 か所,研究所 12 か所,ディーラー5,300 店を保有 しているグローバル企業である20).なお,代表 取締役は創立経営者の息子である「Chung. Mong-Gu」であり,彼は「「現代・起亜自動車グループ」 の代表取締役会長も兼任している. ② CSR 報告書の主要内容 韓国を代表する 2 社の CSR 報告書の内容は以 下の通りである.サムスン(サムスン電子)の CSR 報告書は,現代(現代自動車)に比べて項 目ごとに詳細な情報が掲載されているが,概ね CSR 活動の内容の面においては両社とも非常に 類似した CSR 活動を行っている. 両社が最も注力している CSR 活動は,環境面 における CSR 活動である.CSR 報告書の約 20 頁 に亘り,当社が環境面に対していかに積極的に CSR 活動を行っているかを示している.また, 社会貢献活動にも環境に対する CSR 活動に劣ら ないほど,活発に行っている.両社とも海外にお いて事業活動を活発に行われているグローバル企 業であり,国内のみではなく,海外においても NGO とのパートナシップを提携し,グローバル における社会貢献活動が顕著である.なお,国内 における社会貢献活動は主に教育・福祉関係が多 く見られる. ステークホルダーへの CSR の取り組みをみる と,環境面や社会貢献面に比べてそれほど力を入 れているようには見えない. 例えば,従業員に対する CSR 活動をみると, 両社とも消極的な態度を示している. サムスンは,労働組合がない代わり労使協議会 を運営しており,CSR 報告書によると「従業員 が自主的に労働組合を組織する必要性を感じない ように最善の努力を尽くしています.」と記載さ れているが,サムスンは従業員に労働組合を作る 権利と自由を与えた上で,そのような方針を打ち 出しているかどうか疑問である. 労働組合はあるが労使対立が多い現代自動車 は,労働組合との関係改善のための協力などに対 する活動が見当たらない.また,両社とも女性社 員の採用率(サムスン 22%,現代 9%)および女 性役員の採用率(サムスン 7.1%,現代 4%)が 低く,男女に平等な雇用機会を与えているとは思 えない. 顧客(消費者)に対する CSR 活動は,顧客満 足度調査,製品の品質および安全性向上,クレー ム管理などを行っているが,CSR 報告書に占め る割合は数頁にしか及んでいない. 取引先に対しては,「共生」をキーワードにし ており,取引先との経営面,技術面,社員教育面 での協力活動を中心に行っているが,グローバル 企業としての海外のサプライヤに対する CSR の 支援などの活動が殆ど行われていない. 株主に関しては,コーポレート・ガバナンスに 対する情報公開は行われているが,株主の持分比 率,配当比率などの情報は公開されていなく, SRI に対する企業の対応も触れていない.  両社とも,報告書の最後に GRI のガイドラ インに沿って報告書を発行したことや第 3 者検証 による外部検証報告書を載せている点は評価に値 する点ではあるが,両社とも企業トップによる不 正な違法行為などの不祥事については,一切公表 していなく,コンプライアンス経営を重視すると しながら,実践が伴っていないことは遺憾であ り,公正な情報開示が必要である21) 4. 2. 2 韓国企業の CSR の特徴 サムスン電子と現代自動車の CSR 活動の内容 を検討したが,他の韓国大企業の CSR 活動にお いても著しい差異はない. 韓国企業の CSR 報告書は,「持続可能経営報告

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表 1.サムスン電子および現代自動車の CSR 報告書の主要内容 項目(サムスン報告書の頁数/現 代報告書の頁数) サムスン電子(2011 年報告書) 現代自動車(2010 年報告書) 1 CSR 報告書の発行 2000 年∼2005 年「緑色経営報告書」 2006 年∼2007 年「環境・社会報告書」 2008 年∼2011 年「持続可能経営報告書」 2003 年∼2010 年「持続可能報告書」 2 その他の報告書発行 ─ 2003 年∼2008 年「グループ社会貢献報告書」 ─ 2006 年∼2009 年「社会貢献白書」 3 UNGC 加入 未加入 2009 年 10 月加入 EICC 加入 2007 年 10 月加入 4 検証 独立的な検証機関 PwC の検証済み 外部監査人によ検証および外部検討委員会 (利害関係者で構成)による検討 第 3 者検証報告書 86−87 頁 82−86 頁 検証基準 GRI G3.1 適用 GRI G3.1 適用 5 コーポレート・ガバナンスの公開 ○取締役の構成および取締役のプロフィー ル,委員会および取締役会の活動の内訳 ○取締役会の現況 株主構成 ○ ─ 6 経済面(財務実績) (12−17 頁/23−27 頁) ○ ○ 7 CSR 委員会設置 2009 年 CEO 直属の CSR 事務局を新設・運営 2008 年社会責任委員会を新設・運営 8 ネットワークサービス運営 ブログ,ツイッター,フェイスブックなど ─ 9 主要 issue 人材経営,遵守経営,緑色経営,社会貢献, 取引先共生,製品サービス 経済,環境,社会(従業員,顧客,取引先,地域社会) 10 従業員および人材経営 (24−35 頁/55−63 頁) 女性役員採用率 7.1% 女性役員採用率 4% 女性採用率 女性大卒採用率 22% 女性新期採用率 9% 労働および人権 従業員満足度調査,労働組合無し,労使協議 会運営 従業員満足度調査,労働組合有り 児童労働禁止 違反件数無し 児童労働禁止 従業員の安全 産業災害率 0.04%,国内製造業体の平均 1.04% 産業災害率 1.44%,国内製造業体の平均 1.04% 従業員の健康 2010 年より,健康研究所の設立など 健康管理開始 健康増進センター運営 11 遵守経営(法違反事例) 国内外での製品の談合の 2 件 ○ コンプライアンス委員会設置 ○ ○サイバー監査室 12 環境(40−55 頁/30−50 頁) エコ商品開発強化,環境マーク認証取得 2210 個 環境面(30 頁−50 頁) 米環境庁(EPA)の環境優秀企業受賞 CO2 の減少,有害物質使用禁止,資源の再活 用など 13 社会貢献およ地域社会 (56−64 頁/74−81 頁) グローバル社会貢献活動(慈善寄付金募金,学校設立など) グローバル社会貢献活動(交通事故の被害者の子供に教育・医療サー ビスの提供,など) 国内社会貢献活動(奨学金,児童センター運 営など) 社会福祉,教育・学術,スポーツ,文化・芸術部門に社会貢献事業を行う(子供交通安全 教育,障害者移動手段の増進事業など). NGO とのパートナーシップ提携 ○ ○ 14 取引先(64−69 頁/70−73 頁) 取引先の職員の職務教育,IT インフラ改善支 援,取引先満足度調査の結果,代金支給,取 引文化には満足,取引先選定,契約,発注, 納品,支援制度には改善が必要 自動車部品産業新興財団設立し,取引先の技 術・品質の指導,経営管理の顧問などの協力. グリーンパートナシッププログラム施行 (SCEM,SCEP,SCCM) 15 顧客および製品サービス (70−75 頁/64−70 頁) グローバル顧客満足部分受賞多数 品質満足度の向上,顧客サービスセンター運営※ 2009 年 度 米 国 JDP 社 の 新 車 品 質 調 査 (IQS) 一 般 ブ レ ン ド 1 位, 耐 久 品 質 調 査 (VDS)一般ブレンド 6 位 顧客クレーム管理 ○ 2009 年国内 3000 万件,海外 1900 万件 ○2010 年国内 3400 万件,海外 2299 万件 ○現代独自の顧客満足度インデックスを利用・実施,99 年 64 点から 2009 年 77 点に向上 製品の安全性向上 ○ ○車両安全優先 出所)サムスン電子の「2011 年持続可能経営報告書」および現代自動車の「2010 年持続可能報告書」より,筆者作成 注)※ JDP 社の 2009 年米国自動車新車品質(IQS)調査は,新車を購入もしくはリース契約したユーザーを対象に購入後 90 日間における車両の初期品質調査を調べるものである.JDP 社の 2009 年米国自動車耐 7 久品質(VDS)調査は,新 車購入後 3 年が経過した時点で車の耐久品質について調べるものである.

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書」,「持続可能報告書」,「社会責任報告書」,「企 業市民報告書」など多様なタイトルで報告されて いる.これら以外にも「環境報告書」,「社会貢献 白書」などの報告書も発行されている.

韓国企業の CSR 報告書の特徴は,①大部分が 「GRI(Global Reporting Initiative)22)ガイドライン」

を活用し,自社の CSR 報告書を作成している企 業が多い,②第 3 者の検証または検討意見を受け て報告書を作成している企業が多いが,その検証 内容が客観的かつ公正的に行われているかどうか は確かではない,③報告書の作成に当たり,ス テークホルダーの意見を取り入れるなど,ステー クホルダーの参加がみられる23) 確かに 2006 年以後大企業における CSR 報告書 の発行数は徐々に増えているが,大規模企業 30 社中,一回も CSR 関連報告書を発行していない 企業が 12 社もあり24),CSR が企業経営に浸透し ていないことを示唆している.また,大概の CSR 報告書は当社にとっての不利な情報は公開 していなく公正な情報開示が必要である. Fortune Global500 企業に選定されている韓国企 業 6 社の CSR 報告書を分析した調査結果25)や韓 国大企業 10 社の CSR の情報公開現況を調査した 報告書26)においても韓国大企業は,倫理経営, 環境経営および社会貢献活動を中心に CSR を行 なっているが,その反面,雇用問題(女性,障害 者,非正規職の雇用や人権問題)およびステーク ホルダーに対する情報開示には消極的であると指 摘している. 韓国企業全般は CSR に対する組織体系がまだ 整備されていないが,CSR 委員会,倫理員会, 社会貢献委員会などの CSR 関連委員会を設置し 運営している企業も増えている.これらの委員会 は CEO 直属機構と取締役会内小委員会の形態を 取っている.例えば,CSR 委員会を設置・運営 している会社は,サムスン SDI,ポスコ,韓国電 力,KT,現代自動車などがある. 4. 2. 3 ステークホルダーへの対応 Post et al(1999)によると,企業の最も重要な 目的は,商品やサービスを社会に提供することで あり,社会は企業に必要な資源を提供する関係に あるとし,企業と相互依存関係にある集団の中で も,企業の事業活動に影響を与える投資家,従業 員,サプライヤ,消費者などを第 1 次(primary) ステークホルダーとして分類している27).投資 家は企業に資本を,従業員は企業に労働力と知識 を,サプライヤは企業に原料を,消費者は企業に 商品やサービスに対する対価を提供するなどこれ らの主体は企業に必要な資源を提供する.この第 1 次ステークホルダーは,企業の戦略と経営者の 政策決定に影響を与え,会社の存在および活動に とって欠かせない存在である. また,第 1 次ステークホルダーとそれらの活動 および決定によって直接的あるいは間接的に影響 される一般社会,地域社会,政府,社会活動団体 (NGO)などを第 2 次(secondary)ステークホル ダーとして分類している28) 研究者によってステークホルダーの多様な分類 方法があるが29),本稿においては,資源の取引 やその活動によって分類している Post et al(1999) のステークホルダーの分類に従い,韓国の CSR のステークホルダーへの取り組みを検討すること にする. 表 2.CSR 関連委員会設置現況 区分 委員会無し 委員会有り 合計 小計 CSR 委員会 倫理委員会 社会貢献委員会 環境委員会 企業数 45 40 11 24 4 1 85 比率 52.9 47.1 12.9 28.2 4.7 1.2 100 出所)전국경제인연합회(2008)

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① 第 1 次ステークホルダーへの対応 第 1 次ステークホルダー(従業員,投資家,サ プライヤ,消費者)に対する韓国企業の対応をみ ると,女性および障害者の雇用や非正規職の雇用 の問題に対する取り組みは消極的であり,人権問 題に対しても自社の従業員に限定して最小限の取 組みを行っているのが現状で,従業員に対する CSR への対応は不十分であると言える.また, 1997 年経済危機以後,コーポレート・ガバナン スの改革や市民団体の要求により,コーポレー ト・ガバナンスを認識している企業が多く,年次 報告書や CSR 報告書に情報開示を行うなど,投 資家に対しての対応は改善されつつある.消費者 に対しては,CSR 報告書において製品の安全性 の重視や消費者の意見収集やクレーム対応なども 行っている.サプライヤに対しては,一部の海外 進出企業が行動規範を設定するなどの対応を試み ているが,サプライヤを CSR 活動の対象として 認識している企業はわずかである. このように第 1 次ステークホルダーに対する CSR 活動を行っているが,企業が一方的に第 1 次ステークホルダーに対して行った CSR 活動を CSR 報告書などに公開する活動が大半であり, 第 1 次ステークホルダーとの対話を重視する活動 や要求に応じるといった活動が不足している. 韓国企業が第 1 次ステークホルダーに積極的に 対応していなく,その要因として考えられるの は, 第 1 に,CSR を 取 り 入 れ 始 め た 時 期 か ら CSR に対する概念がもっぱら企業倫理や社会貢 献として理解されたことである. 第 2 に,ステークホルダーを CSR の概念に取 り入るようになったことや韓国社会全般が CSR に関心を持ち,CSR を意識し始めたのが,たか が 10 年余りの最近のことも考えられる.CSR が ステークホルダーに認識され始めたばっかりであ るだけに,企業の CSR に対して働きかけや影響 力を行使するような積極的な CSR 行動を行うス テークホルダーがいないことも一因している. すなわち,韓国企業が第 1 次ステークホルダー に対して積極的に対応していない要因は,第 1 次 ステークホルダーによる企業の CSR 問題に対す る関心や働きかけが欠如しているためであると考 えられる. ② 第 2 次ステークホルダーへの対応 第 2 次ステークホルダー(政府,NGO,地域 社会,一般社会)に対する韓国企業の対応をみる と,環境問題や企業倫理に関する CSR 活動およ び社会貢献活動が活発である.また,NGO との パートナシップ関係を有し,社会貢献活動を展開 するケースも増えている.このことは,地域社会 や一般社会,NGO に対して積極的に対応してい ると言える. 韓国企業の社会貢献費用の総支出規模の推移を みると,2000 年より飛躍的に増加し,2005 年に は前年度対比 14%も増加している30).また,韓 国企業(190 社)の社会貢献費用の売上高対比支 出比率は 0.17%であり,日本企業(302 社)の 0.13%よりも高く31),いかに韓国企業が社会貢献 活動に積極的に取り組んでいるかが見て取れる (2002 年時点). 韓国企業の社会貢献費用の支出比率を分野別に みると,教育・学校・学術分野が 45%,社会福 祉分野が 37%,文化芸術および体育分野が 7%順 で支出費用が高い32) 表 3.社会貢献費用総支出規模推移(単位:百万ウォン,%) 1996 年 1998 年 2000 年 2002 年 2004 年 2005 年 総支出費用 306,764 332,710 706,060 1,086,594 1,228,432 1,402,510 前年対比増減率 − 32.1 61.7 47 13.06 14.17 出所)전국경제인연합회(2006)

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韓国企業の企業倫理経営憲章採択企業が 2005 年より増加し,企業倫理経営憲章採択率は 95%, 企業倫理経営教育施行率は 92%と殆どの企業が 企業倫理を重視している.倫理経営憲章で重要視 している内容は,内部業務遂行基準および規定遵 守(60%),公正取引および法律順守(28.8%) と約 90%がコンプライアンス経営に相当し,倫 理経営の中にコンプライアンス経営が占める割合 がかなり大きい33) しかし,企業倫理を企業経営の中で実践してい る企業が増えている反面,近年においても経営者 の反倫理的行為が度々行われ,経営者の倫理的経 営に対する認識が足りないことを示唆している. 韓国企業の CSR は,環境問題,企業倫理,社 会貢献活動に積極的に取り組んでおり,第 1 次ス テークホルダーに対する対応に比べ,第 2 次ス テークホルダーに対する対応が積極的である.そ の理由としては,第 1 に,韓国企業に対して韓国 政府が環境問題に関する CSR 問題を重点的に推 進したことが挙げられる. 第 2 に,韓国企業が韓国企業および企業家(所 有経営者)に対する国民の否定的なイメージを向 上させるために倫理経営や社会貢献活動に積極的 に取り組んだことによるものと考えられる. 韓国国民の韓国企業および企業家に対する意識 調査結果によるといかに韓国国民が企業および企 業家に対して否定的なイメージを持っているかが 示されている.その調査結果34)によると,企業 に対して好感を持っているが 17.5%しか占めてお らず,企業に対する好感度は極めて低い.好感を 持たない理由としては,政経癒着が 52%,世襲 経営が 38%,不透明な経営慣行が 38%などを占 めている.また,企業家(所有経営者)に対して 好感を持っていると応答した国民が 34%,好感 を持っていないと応答した国民が 66%を占めて おり,所有経営者に対しても否定的なイメージを 持っている反面,専門経営者に対しては 66%の 国民が好感を持っており,所有経営者に対する否 定的なイメージと対照的ある.なお,所有経営者 の個人財産の利用方法について社会に還元すべき であると応答した国民が 60%を占め,所有経営 者の個人財産の蓄積過程が不当であるという認識 の表れのように思われる. ③ 日 ・ 欧 ・ 米と韓国の CSR への対応 韓国と CSR 先進国の CSR に対する取組みを比 較してみよう. 例えば,CSR 先進国(西欧および日本,北米) の経営者の CSR に対する意識調査結果35)による と,西欧および日本は,環境分野を最も重視し, 次に労働 ・ 雇用,人権,法令遵守分野順に CSR への意識が高く,北米は,環境と法令遵守を最も 重視し,次に労働・雇用,人権分野順に CSR へ の意識が高い.CSR 先進国の経営者の意識の高 い CSR 分野,すなわち,重視している分野とし て,環境以外にも労働・雇用分野や人権,法令遵 守を重視しており,このことは,従業員への CSR 対応が積極的であることを意味している. また,日本が重視している CSR 分野は,韓国 同様,環境,社会貢献分野を重視しているが,そ れ以外にも,人事制度,安全衛生,教育研修,製 品サービス,顧客の安全と衛生分野を重視してい る企業が多い36) 北米の場合は,フィランソロピー精神やチャリ ティー精神の浸透により,社会貢献活動も活発に 行われているが,企業の不祥事(1960 年代の GM の欠陥自動車に対するキャンペーン,1990 年代のナイキ社の児童労働問題に対する不買運動 など)に対していち早くから消費者や NGO によ る CSR 活動が活発に行われていたため,企業は 消費者(顧客)や NGO に対して積極的に対応し ている.また,ソーシャル・スクリーン(Social Screen),株主行動(Shareholder Activism/Shareholder Engagement)などの SRI の発達により,社会面 および環境面に対する CSR も重視されている. 欧州の場合は,1990 年代の若年者の深刻な失 業問題に悩まされてきたことや多国籍企業の労働 問題などが多発したこともあって社会問題への

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CSR 対応を重視し,コンプライアンスや企業倫 理は CSR というよりも企業の義務であるという 認識が強く,CSR として認識しない傾向にある. 欧州委員会(EC)が中心となり,欧州労働連 盟(ETUC),欧州産業連盟(UNICE),欧州労働 者 組 合 委 員 会(CECOP), 欧 州 の 消 費 者 団 体 (BEUC),世界経済人会議(WBCSD)の代表など, 欧州の産業界,労働組合,各種 NGO などが参加 して欧州の CSR の発展および実施を促すために 議 論 し ま と め た EU の「マルチステークホル ダー・フォーラム」の最終報告書においても CSR を理解するためのベースラインとして CSR is the voluntary integration of environmental and social considerations into business operations, over and above legal requirements and contractual obligations. 「CSR とは,法的な要請や契約上の 義務を上回り,企業業務に環境面および社会面で の考慮を自発的に統合する」ことであると記載さ れているように37),欧州においての CSR への対 応は,コンプライアンスを超えて,社会面および 環境面を重視することである. このような CSR 先進国の CSR への対応と韓国 企業の CSR への対応を比較してみると,韓国企 業は環境面においては先進国に引けを取らないほ ど,十分に対応している反面,社会面,とくに第 1 次ステークホルダーである従業員,消費者(顧 客),株主に対する CSR 対応が進んでいないと言 える. 5.インプリケーション 韓国における CSR への取り組みは,国際的な 動向に伴い近年本格的に取り組み出しており,と りわけ,海外進出企業は比較的に CSR 経営を実 践している.韓国大企業 CSR への取組みは,社 会貢献活動や環境問題を中心に行われており,第 1 次ステークホルダーへの取組みは不十分であ る. ステークホルダーとは,Freeman(1984),Post et al(1999)によって「企業目的の達成に影響を 及ぼし,あるいは影響される集団もしくは個人」, または,「組織の意思決定,政策,運営に影響を 及ぼし,あるいは影響される個人および集団」と して定義され,広く引用されているが,いずれの 定義においてもステークホルダーと CSR の関係 に必要不可欠な要素は,企業の CSR に「影響を 及ぼす」主体としてのステークホルダーの存在で ある.実際に企業が CSR を達成するかどうかは 企業の CSR に「影響を及ぼすことのできる」ス テークホルダーが存在するかどうかに左右される と言って良い.欧米の CSR が発達している主要 要因として市民団体をはじめとするステークホル ダーの CSR に対する高い関心や働きかけの影響 力が挙げられる.また,韓国の CSR の現状(ス テークホルダーによる企業の CSR に対する影響 力が弱いため,とりわけ,第 1 次ステークホル ダーに対する企業の CSR への取り組みが不十分 である)においても明らかになっているように, 企業が CSR に積極的に取り組むには,企業の CSR に影響を及ぼすステークホルダーの存在が 欠かせない.すなわち,企業の CSR に対するス テークホルダーの関心や働きかけが積極的であれ ば,企業は CSR に対して積極的に対応する傾向 にあり,その反面,企業の CSR に対するステー クホルダーの関心や働きかけが消極的であれば, 企業の CSR に対する対応も消極的になる傾向に ある.したがって,韓国の CSR の発達のために は,第 1 次ステークホルダーの CSR に対する高 い関心や積極的な働きかけが必要である. 本稿においては,CSR を,企業が永続事業体 (ゴーイング・コンサーン)として存続し,成長 するために,「企業を取り巻く環境主体であるス テークホルダーおよび社会や環境に対して企業が 自発的に果たすべき責任」という高田(1974)や 森本(1994)の定義に従っているが,これらの定 義は「自発的に果たすべき責任」が「CSR」であ り,企業が CSR を自発的に果たすべき責任とし て認識し,行動すべきであるということを示して いる.しかしながら,実際に CSR に取り組む大

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部分の企業は,企業の存続に影響し得る社会から の高い関心,働きかけ,批判,圧力などによる ケースが多く見られる.このことは,CSR の「自 発性」を企業側に求めることの「限界」と CSR に対する「外部からの働きかけ」が企業の CSR に及ぼす影響力を示し,企業の CSR の「自発性」 の実現は容易ではないことを示唆している. なお,韓国企業が国民に信頼される企業になる ためには,形式的 ・ 外向的な CSR 活動ではなく, 社会,特に第 1 次ステークホルダーと共存する企 業として CSR に取り組む努力が必要である.こ のことを裏付ける事例として,最近(2011 年 3 月 1 日),CSR 関連の市民団体である「良い企業 センター」が売上高基準の大上場企業 100 社中, CSR 報告書を発行している 45 社の企業を対象に CSR 問題を調査し,韓国主要企業 10 大企業の CSR イシューを発表した報告がある.例えば, 「サムスン電子」は 2007 年∼2010 年まで半導体 作業場において有害物質漏出による被害者 120 名,白血病および癌による死亡者 45 名が発生す るなど労働環境の問題,「現代建設」は過去 4 年 間(2007 年∼2010 年)産業災害で 33 名が死亡す るなど安全規範の問題,「現代自動車」は社内下 請けの不法派遣による非正規職労働者の雇用不安 および差別雇用問題,「韓国電力」は急増する負 債および不透明な電気料金の算定基準による公正 取引問題など,韓国を代表する大企業における CSR 問題が浮き彫りになった38).このような実 態は CSR の報告書の内容に実際の企業経営上の CSR の実践が伴っていなく,形式的・外向的な CSR 活動を行っていることを示唆しており,韓 国企業の真の CSR の実践が問われる. (日本大学経済学部助手) 1) この論文は,2011 年 6 月 19 日神奈川大学平塚 キャンパスにおいて日本マネジメント学会(旧日 本経営教育学会)第 63 回全国研究大会で発表し, 多くの先生方にコメントおよびアドバイスを受 け,修正・加筆したものである.

2) Freeman(1984),Post ,Lawrence and Weber (1999), Carroll. A. B and Buchholtz. (2003)など.

3) Freeman(1984) p.31. 4) Freeman(1984) p.25.

5) Post ,Lawrence and Weber (1999) p.7. 6) Post ,Lawrence and Weber (1999) p.60−61. 7) Post ,Lawrence and Weber (1999) p.62−64. 8) Drucker, P. F(1993) 192 頁. 9) Freeman(1988) p.131−132. 10) 고동수(2006). 11) 한겨레경제연구소(2008)25−27 頁. 12) 한겨레경제연구소(2008)25−27 頁. 13) 2010 年に「持続可能基本法」となり,一部改定 されている. 「持続可能発展基本法」とは,持続可能発展を 成し遂げ,持続可能発展のための国際社会の努力 に参加し,現在世代と未来世帯がより良い人生を おくることができるようにすることも目的とした 法律である.「持続可能性」とは現在の世代が必 要とするものを満たすために未来の世代が使用す る経済.社会・環境などの資源の浪費や要件を低 下させないで調和と均衡を成すことである.「持 続可能発展」とは,持続可能性を基にし,経済の 成長,社会の安定や統合および環境の保全が均衡 を保つ発展をいう(2007 年 8 月 3 日法律第 8612 号,第 1 章,第 2 章に拠る). 14) 한겨레경제연구소(2008)30 頁. 15) EAI(2009)5−8 頁. 16) EAI(2007)7−10 頁. 17) ギリシャ,ドイツ,メキシコ,米国,ブラジル, スイス,アルゼンチン,英国,UAE,イタリア, インド,インドネシア,中国,カナダ,トルコ, ペルー,ポルトガル,フランス,フィリピン,オー ストラリア,チリ,韓国. 18) EAI(2009)9−10 頁. 19) サムスンのホームページ,サムスンの「2011 持 続可能経営報告書」各種韓国新聞報道. 20) 現代自動車のホームページ,現代自動車の「2010

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持続可能報告書」各種韓国新聞報道. 21) 数年前に「現代自動車」の代表取締役兼会長が 900 億ウォン相当の会社資金を横領し,系列会社 に 2100 億ウォン相当の損失を与えた容疑で起訴 された件などの違法行為に対する情報は一切掲載 されていない. 「サムスン電子」も同様,会長のエバーランドの 転換社債の息子への不透明な譲渡件の背任や脱税 の罪に問われるなどの違法行為に対する情報は一 切触れていない. 22) GRI はオランダに本部を置く NGO で,CSR(企 業の持続可能性報告書)ガイドラインづくりを目 的とする国連環境計画(UNEP)の公認協力機関 である.2000 年 6 月に GRI ガイドライン第 1 版 が発行され,2002 年には第 2 版,2006 年に第 3 版が出されている. 「GRI ガイドライン」は,企業が年次報告書を作 成する際に経済面,社会面,環境面のトリプル・ ボトムラインの考え方が骨格になっており,この 三つの分野における企業の取組みを一定の形式に 従って開示するように求めている. 23) 한겨레경제연구소(2008)43−45 頁. 24) 韓国新聞誌「朝鮮日報」2010 年 10 月 12 日付. 25) 한겨레경제연구소(2008)62−64 頁. 分 析 対 象 の 6 社: 現 代 自 動 車, 韓 国 電 力, POSCO,SK エネルギー,KT,サムスン電子. 26) Emerging Market Disclosure Project Korea Team

(2010) p.6−8.

分析対象 10 社:サムスン電子,Shinhan 金融グ ループ,現代自動車,韓国電力,POSCO,LG 電 子,LG 化学,KT,SKT,Hynix 半導体. 27) Post Lawrence and Weber (1999) p.9−10. 28) Post Lawrence and Weber (1999) p.9−10.

29) Steiner&Steiner(2000), Carroll. A. B and Buchholtz (2003),Mtichell and Agle and Wood(1997)など. 30) 전국경제인연합회(2006)5 頁. 31) 전국경제인연합회(2005)5 頁. 32) 전국경제인연합회(2006)2 頁. 33) 전국경제인연합회(2009)2 頁. 34) KDI 경제정보센터(2004)5−8 頁. 35) 経済産業省(2004a)3 頁. 36) 経済産業省(2004b)13 頁.

37) European Multi-stakeholder Forum on CSR (2004) p.3.

38) Center for Good Corporations (2011)3−18 頁.

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