第1回CO2フリー水素WG
事務局提出資料
平成28年5月13日
資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネルギー部
燃料電池推進室
資料21 2020年 2030年 2040年 フェーズ1 水素利用の飛躍的拡大 (燃料電池の社会への本格的実装) 09年 家庭用燃料電池/14年 FCV市場投入 2017年 業務・産業用燃料電池:市場投入 2020年頃 ・エネファーム自立化(PEFC80万円/SOFC100万円) ・ハイブリッド車の燃料代と同等以下の水素価格の実現 ・FCV4万台程度:水素ステーション160箇所程度 2025年頃 ・ボリュームゾーン向けのFCVの投入、及び同車格のハイブリッド 車同等の価格競争力を有する車両価格の実現 ・FCV20万台程度:水素ステーション320箇所程度 → 2020年代後半に水素ステーション自立化 2030年頃 ・FCV80万台程度 2020年代後半 ・海外からの水素価格(プラント引渡価格)30円/Nm3 2030年頃 ・海外での未利用エネ由来水素の製造、輸送・貯 蔵の本格化 ・発電事業用水素発電: 本格導入 2040年頃 CCSや国内外の再エネの活用との組み合わせによる CO2フリー水素の製造、輸送・貯蔵の本格化 フェーズ2 水素発電の本格導入/ 大規模な水素供給システムの確立 フェーズ3 トータルでのCO2フリー 水素供給システムの確立 水素供給体制の構築見通しを踏まえた計画的 な開発・実証 開発・実証の加速化 水素供給国との戦略的協力関係の構築 需要拡大を見据えた安価な水素価格の実現 東京オリンピックで 水素の可能性 を世界に発信
水素・燃料電池ロードマップにおけるCO2フリー水素の位置づけ
水素・燃料電池戦略ロードマップ(2016年3月改訂)においては、よりCO2の排出が少ない水 素供給構造を実現していくため、将来的には再生可能エネルギーの活用等を進めていくことが必 要とされている。 2040年頃をターゲットとして、トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立を目指すこととされ ているが、Power to Gas技術を目下の社会課題への対処に応用しつつ、将来のCO2フリー水 素の利活用に向けた足がかりとしていくことが必要。 本WGでは、こうした将来の目指すべき姿に向けた技術的、制度的課題について時間軸とともに 整理し、対応の方向性を定めることとしたい。化石燃料 (石油、天然ガス等) 化 石 燃 料 を 高 温で水蒸気と反 応させることで水 素を製造 副生水素 (製鉄・化学等) 苛性ソーダ等の 製造時に、副生 物として水素が 発生 鉄鋼製造プロセ スのコークス精製 時に水素リッチな 副生ガスが発生 現在:工業プロセスで既に実用化 未利用エネルギー 褐炭などの低品位炭、 原油・ガス田随伴ガ スなどの未利用エネ ルギーから水素を製 造(将来的にはC CS等のCO2排 出を低減する技術を 活用) 未利用の副生水素 を活用 中期:未利用エネの活用 再生可能エネルギー (風力、太陽光等) 水に再生可能エネ ルギ ー等に よる電 気を流すことによっ て水素を製造(水 の電気分解) 長期:再エネの活用 2
水素の製造方法
CO2フリー水素
(総発電電力量) (総発電電力量) 原子力 18~17%程度 原子力 22~20%程度 LNG22%程度 LNG27%程度 石炭22%程度 石炭26%程度 石油2%程度 石油3%程度 2013年度 2030年度 (実績) 12,780億 kWh程度 10,650億 kWh程度 2030年度 再エネ 22~24%程度 再エネ 19~20%程度 省エネ 17%程度 電力 9808 億kWh 程度 電力 9666 億kWh 地熱1.0 ~1.1%程度 バイオマス 3.7~4.6%程度 風力1.7%程度 太陽光7.0%程度 水力8.8% ~9.2%程度 経済成長 1.7%程度/年 省エネ+再エネ で約4割 徹底した省エネ 1,961億kWh程度 (対策前比▲17%) 電力需要 電源構成 3
再生可能エネルギーを取り巻く状況
「長期エネルギー需給見通し」(2015年7月)では、2030年度における再生可能エネルギー比 率を22~24%と見込んでいる。 発電電力量(億kWh) 導入量(万kW) 水力 939~981 4,847~4,931 太陽光 749 6,400 風力 182 1,000 バイオマス 394~490 602~728 地熱 102~113 140~155 [出典]長期エネルギー需給見通し小委 総発電電力量(億kWh) 再エネ 2,366~2,515 2030年における導入見込量余剰再エネ問題とPower to Gas技術の活用可能性
一方で、出力変動の大きい再生可能エネルギーの導入拡大による既存系統網への負担増により、 出力制御(マクロの需給バランスの問題)や送配電網への接続保留(局所的問題)などの課 題が生じている。 エネルギーミックスに基づき今後も再エネの導入を拡大していく中、これらの課題の解決策として、中 長期的には再エネを水素に転換するPower to Gas技術の活用可能性を探るべきではないか。 平成28年3月時点 系統連系制約マップ 連系制約の状況(九州電力管内の例) [出典]九州電力 4 出力抑制指令を実際に行った事例(種子島) [出典]電力広域的運営推進機関ドイツにおけるP2G取組
ドイツにおいては既に余剰再エネに起因する電力系統問題が顕在化しており、積極的に実証プロ ジェクトが進められている。 ドイツがP2Gの取組を進める背景には、再エネ供給地と需要地間を結ぶ電力グリッドが脆弱である 一方で、国内のガスグリッドが発達していることに加え、電力取引市場において安価な電力を調達 可能である等、水素エネルギーを安価に製造、輸送、貯蔵しやすい環境があると考えられる。 プロジェクト名 実施者 電解方式 入力電力 (kW) (m3/h-H2) 水素発生量 水素の製造、利用方法Audi e-gas projekt (事例①) Etogas,EWE, Energie 他 アルカリ 6,000 1,300 風力を用いて製造した水素と、バイオガスプラントから排出さ れるCO2を活用してメタン化、CNG車へ供給 Hybridkraftwerk Prenzlau Enertrag他 アルカリ 600 120 風力を用いて水素を製造し、風力発電の出力低下時に水 素混焼コジェネを稼働
Windpark RH2-WKA HasseEng.他 NOW, アルカリ 1,000 210 風力を用いて水素を製造し、コジェネで地域へ熱電を供給 Pilotanlage
Falkenhangen E.ON アルカリ 2,000 360 風力を用いて水素を製造し、天然ガス網へ2%以内で注入 Energie Park Mainz
(事例②)
Linde,
Siemens他 PEM 6,000 1,000
風力を用いて水素を製造し、天然ガス網、水素ステーション 等へ供給
Wind Gas Hamburg (事例③) E.ON, Hydrogenics 他 PEM 1,000 265 風力を用いて水素を製造し、天然ガス網へ供給 ドイツでの主なP2G実証事例 [出典]各種資料を基に資源エネルギー庁作成 5
P2G技術の特徴
[出典]” Energieträger der Zukunft – Potenziale der Wasserstofftechnologie in Baden-Württemberg (ZSW,2012)”を基に資源エネルギー庁作成 各種電力貯蔵技術の位置づけ 水素(P2G)によるエネルギー貯蔵の特徴 ・大規模かつ長期のエネルギー貯蔵で有利 ・地形や地質など、環境条件による影響小 CAES・・・圧縮空気エネルギー貯蔵 貯蔵期間 貯蔵規模 6 水電解+水素タンクの複合システムは、競合する蓄電池技術との比較優位の観点では、時間経 過によるロスが少なく、水素タンクなどの拡張性が高いなどの理由から、現在、大規模かつ長期間 の蓄エネ領域における適用可能性が高いと見られている。 今後我が国において再生可能エネルギーの導入が拡大していく中で、系統連系等の問題への対 応策の有望なアイテムの一つになりうると期待される。
P2Gの効率
P2Gは電気を異なる二次エネルギー形態である水素に変換し、利用時に電気等に再変換するた め、基本的なエネルギーロスが大きく単純なエネルギー効率は低いものの、利用が難しい再エネ余 剰電力の活用につなげることが可能。 P2Gの実施に当たっては、水素によるエネルギー貯蔵・輸送の特性を踏まえ、経済性も含めて効 率的なエネルギーシステムとなるよう検討が必要。 P2Gの効率[出典]”Technology Roadmap Hydrogen and Fuel Cells” (IEA, 2015) T&D・・・Transmission and Distribution
再エネ由来水素(P2G技術)の活用
我が国においても再エネの系統接続問題が顕在化しており、P2G技術を活用することで無駄なく 再エネ導入量の拡大を図ることを検討。また、これによってCO2フリー水素チェーンの実現に向けた 足掛かりとすることが可能。 特定のケースにおいて経済性、効率性を確保できる場合がないか、既存インフラの活用を含めた P2G技術の利活用の方策について検討すべきではないか。 P2G活用方策(例) ① 水素製造による需要創出(ディマンドリスポンス) → 再エネによる系統の調整電源への負担の軽減 ② 水素製造・貯蔵による自然変動電源の変動出力の吸収(短期) → 余剰再エネの最大利用、エネルギーの地産地消 ③ 水素製造・貯蔵による自然変動電源の変動出力の吸収(中長期) → 余剰再エネの季節を超えた利用 ④ 経済価値の低い不安定電力を活用した水素製造 → 変動出力を水素製造で吸収し、安定部分は電気として利用 89
P2G活用シーン①:系統負荷軽減(ディマンドリスポンス)
米カリフォルニア州における”Duck Curve”に代表されるように、再生可能エネルギーの拡大に伴い、 火力発電等調整電源への負荷が増大。 ディマンドリスポンスの一種として水素製造・利用を調整力として活用することで、調整電源への負 荷を軽減することが可能。さらに、例えば製造した水素を混焼発電等に利用することで、系統電源 の燃料節減につなげることが可能と考えられる。 Duck Curve(カリフォルニア) 水素による負荷変動吸収(イメージ) 実質負荷 (総負荷-再エネ) 総負荷[出典]”DEMAND RESPONSE AND ENERGY EFFICIENCY ROADMAP” (CAISO, 2013)
再エネに対応する 負荷を創出 水素活用による 燃料節約 再エネ エネルギー変換 (水素→電力) 水素混焼発電等 エネルギー変換 (電力→水素) 水電解
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P2G活用シーン②:自然変動電源の変動吸収(短期)
電力の生産と消費の同時性制約から、(系統側調整電源による吸収が無ければ)時間的・空 間的に多寡の異なる再生可能エネルギー源を有効に消費することはしばしば困難を伴う。 蓄電池だけでは吸収し切れない自然変動電源からの再生可能エネルギーを水素として貯蔵すれ ば、エネルギー利用の時間的シフトにより再エネを余すこと無く消費することが可能。 エネルギーの地産地消の観点から意義があると考えられ、まずは、離島等のエネルギーセキュリティ に係る制約がより厳しい環境等において活用可能性が見込まれる。 蓄電池と水素を組み合わせたエネルギー貯蔵・利用(ゆめソーラー館やまなし) 水素貯蔵・利用 [出典] 山梨県企業局・神鋼環境ソリューション・パナソニック実証試験提供データから 資源エネルギー庁作成 [出典] 神鋼ソリューションズ 出入力 [kW]11
P2G活用シーン③:自然変動電源の変動吸収(中長期)
更に、太陽光や風力等は季節によってもその賦存量が異なることから、年間を通じて一定割合の 再生可能エネルギーを安定して利用することは困難が伴う場合がある。 この問題に対し、水素の貯蔵特性(長期間・大容量の貯蔵が可能)に着目し、例えば、水素吸 蔵合金を用いて自然変動電源出力の季節変動を吸収する取組が進められている。 水素による太陽光出力の季節変動の吸収 (ハウステンボス「変なホテル」) [出典] 東芝 [出典] 「風力発電の連係可能量の算定プロセス」(東北電力, 2011) 再エネ水素により年間を通じてホテルの電力を供給12
P2G活用シーン④:経済価値の低い電力の活用
太陽光や風力等、天候条件により変動する自然変動電源については、現在はFIT制度の下、そ の変動を系統側で吸収。 例えば、水素の変動吸収性に着目し、パワエレ・EMS技術等により出力を経済価値の高い安定 部分と低い変動部分とに分離し、安定部分は系統で電力として、不安定部分は水素製造に活 用することが考えられる。 6 12 18 [時] 水素製造入力 [ kW] 快晴時の出力 6 12 18 [時] 太陽光発電 出力 [k W] 晴れ時々曇りの出力 6 12 18 [時] 系統売電出力 [ kW] 不足分は蓄電池等で補償 自然変動電源出力の分離(イメージ) [出典] 資源エネルギー庁作成 従来、そのままの形で我が国に輸送することは困難であった海外の未利用エネルギーを、水素の形 に変換することで、輸送性や貯蔵性を高めようとする取組が進展。 将来的には、CCS等のCO2排出を低減する技術と組み合わせることで、トータルでのCO2フリーの 水素供給システムを確立することを目指す。 ガス化 水蒸気改質 等 水素の製造 水素の精製 褐炭 副生 水素 随伴 ガス 海外の水素源 水素キャリアへの変換 MCH 液化水素 水素 液化 トルエンと 化合 技術確立済み ・常温・常圧での輸送 →ケミカルタンカー利用 水素の製造 水素キャリアへの変換 CH3 水素キャリアの輸送 水素キャリアの貯蔵 水素の取出し 水素 利用 水素発電 燃料電池 工業ガス 等 有機 ハイドライド 液化 水素 液化水素船の開発が必要 技術確立済み ・常温・常圧での貯蔵 →石油タンク等利用 技術確立済み 液化水素タンクの大規模 化、ボイルオフ低減が必要 脱水素設備の大規模化、 脱水素高効率化が必要 水素をトルエンと化合させ、メチルシクロヘキサンに ⇒ 常圧水素の1/500に圧縮可 水素を-253℃まで冷却することで液化 ⇒ 常圧水素の1/800に圧縮可 13
トータルでのCO2フリー水素供給システムの確立
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