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交通権 No 沼線を中心に関連すると思われる事例も含めて各地を実態調査した 具体的には JR 気仙沼線及び大船渡線は勿論 鉄道廃線跡を活用した BRT の先行事例等の調査であり 必要に応じて関係者からのヒアリング等を行った ここではそれらの調査内容を整理するとともに JR 気仙

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Academic year: 2021

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Ⅰ はじめに

 東日本大震災の発生から 3 年半が経過した。 東日本旅客鉄道(株)(以下 JR 東日本という)は、 気仙沼線及び大船渡線を BRT(バス高速輸送 システム:以下 BRT という)により仮復旧し ているが、いまだ鉄道での復旧については明言 していない。  一方、同様の被災路線である三陸鉄道(株)(以 下三陸鉄道という)では、懸命な復旧作業が進 められるなかで、2014 年 4 月に全線復旧を果 たした。その一年前の 2013 年 4 月には南リ アス線の一部区間が復旧したが、その際の報道 では復旧に喜ぶ住民の笑顔や三陸鉄道関係者の 引き締まった表情さらには、復旧に涙する社員 の姿が映し出されていた。また、新聞各社も「希 望も乗せ再出発1)「待ってた古里の列車2)「生 活の足戻った3)」「期待乗せ運行再開4)」など の見出しで大きく報じるとともに、「冬は道路 が凍って運転が怖かった。この土地には鉄道が 必要5)」「鉄道ファンや買い物客が立ち寄って くれて、またにぎやかになる6)」など、多くの 利用者、地域住民の喜びの声を掲載した。  勿論、被災地の復旧・復興が遅れるなかで、 沿線の人口が流出するなど、三陸鉄道の将来の 見通しは決して明るいものではないが、震災直 後から「復興列車」として被災地の住民を無料 で輸送したことをはじめ、震災からの復旧・復 興にむけて、三陸鉄道がこれまでに果たしてき た役割は極めて大きい。  三陸鉄道のこうした姿勢は共感を呼び、多く の支援の人々が現地を訪れたほか、グッズの購 入も含めて様々な形での支援がなされ、国民的 な大ヒット作となったNHK連続テレビ小説 「あまちゃん」でお馴染みの「お座敷列車北三 陸号」は大盛況となった。そして、三陸鉄道は 東日本大震災からの復興と観光振興に貢献した として、2013 年 10 月に第 5 回観光庁長官表 彰を受賞した。  このように、これまでの被災後の鉄道復旧に かかる JR 東日本と三陸鉄道の対応は対照的で あるが、JR 東日本冨田哲郎社長は「鉄道で復 旧した際には、安全対策ルート移設などにかな りの時間がかかる上、コストも現段階では明確 でない」「コストが確定しても誰が負担するか、 国、自治体がどこまで負担してくれるのか。そ ういう条件が明確にならない限り、鉄道復旧は 確約できない」などと述べた7)ほか、里見雅 行仙台支社長も「一事業者が負うべき範囲を超 えている。地域の足を守る責任は確かにあるが、 国にも負担をお願いしたい」などと述べた8)  確かに JR 東日本が主張するように、東日本 大震災のような激甚災害からの復旧に対しては 一定の国費を投入する必要があると考える。し かし、その一方で JR 東日本は仮復旧として BRT を導入しており、沿線住民は BRT の恒久 化に懸念を抱いている。こうしたなかで、菅原 茂気仙沼市長は「あくまでもゴールは鉄路の完 全復活だ」9)と繰り返し述べている。  BRT について賛否両論があることは承知す るが、筆者はいくつかの疑問をもとに JR 気仙

JR 気仙沼線 BRT をめぐる現状について

―気仙沼線の復旧のあり方を考察する―

後藤 智春

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沼線を中心に関連すると思われる事例も含めて 各地を実態調査した。具体的には、JR 気仙沼 線及び大船渡線は勿論、鉄道廃線跡を活用した BRT の先行事例等の調査であり、必要に応じ て関係者からのヒアリング等を行った。ここで はそれらの調査内容を整理するとともに、JR 気仙沼線の復旧のあり方を考察してみたい。

Ⅱ JR 気仙沼線 BRT をめぐる現状

1.気仙沼線の沿革   気 仙 沼 線 は 1957 年 に 本 吉 ~ 気 仙 沼 間、 1968 年に前谷地~柳津間が開業した。その後、 国鉄再建法が成立する直前の 1977 年に柳津~ 本吉間が開業し、念願の全線開通(総延長 72.8km)を果たした。また、駅は起点・終点 を含めて 23 駅設置されていた。路線のうち、 陸前戸倉から北上すると車窓に志津川湾が広が るが、気仙沼線には長短約 30 箇所のトンネル があり、比較的長いトンネルは柳津~本吉間に 存在する。  運行形態は、開業当初は各駅停車のみの運行 形態であったが、その後、仙台~気仙沼間を直 通運転する指定席連結の快速列車が運行される ようになったほか、観光シーズンや多客期には 臨時列車の運行もあった。運行本数は、東日本 大震災直前までは、下り 10 本、上り9本、こ れに加えて本吉~気仙沼間は下り2本(うち1 本は休日運休)上り1本の区間運転があった。 そのうち快速列車は2往復の運行となってい た。  従来、仙台~気仙沼間は快速列車で最速1時 間 58 分で到達していたが、現状では柳津~気 仙沼間を BRT 最速でも1時間 46 分、小牛田 ~柳津間は最速で 36 分、仙台~小牛田間は 45 分程度の時間を要するなど、乗車時間だけ で 1 時間以上余計にかかるほか、実際には乗 り換え時間もかかることになる。なお、震災前 から仙台駅前~気仙沼駅前間は高速バスが運行 されており、現在、最速 2 時間 27 分で結ばれ ている。 2.気仙沼線の被災状況   気 仙 沼 線 72.8km の う ち 柳 津 駅 以 北 の 55.3km は現在不通となっており、BRT による 仮復旧が行われている。また、被害箇所はおよ そ 250 箇所に(2011 年 4 月 4 日現在)及ぶ とされている10)。なお、JR 東日本は 2014 年 2 月に開催された「JR 気仙沼線復興調整会議」 において、ルート移設やルートと交差する河川 堤防のかさ上げに伴う新たな工事などの総事業 費は 700 億円、震災前の原状復旧の工事費は 300 億円となる試算を提示したと報じられて いる11)  この間、筆者は気仙沼線の実地調査に6度ほ ど行っているが、初回調査と比べてほとんど状 況が変わっていない箇所もあれば、大きく変貌 を遂げた箇所・区間もある。沿岸部を中心に甚 大な被害を受けた同路線だが、現在の不通区間 のうち、北端の気仙沼駅から不動の沢駅間及び 南端の陸前横山駅付近から柳津駅間は津波によ る被害は受けていなかった(表 1)。 3.専用自動車道の現状  現在の気仙沼線の BRT 区間は、道路運送法 第 2 条第 8 項に基づくバス専用自動車道(以 下専用道という)となっている。さらに、専用 道の構造設備等の基準については、一般自動車 道構造設備規則を準用している。なお、同規則 第 3 条では、1 ~ 5 級の級別に 70 ~ 25km/h の設計速度が定められており、気仙沼線の場合 は概ね2級(60km/h)とされるが、5 級(25km/ h)の区間も存在する。  気仙沼線の BRT 化は、2012 年 8 月 20 日に 最知駅~陸前階上駅間の 2.1km が暫定運行さ

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れた後、同年 12 月 22 日から陸前港駅~歌津 駅間が新たに開業し、本格運行が開始された。 さらに、2013 年 4 月 25 日からは本吉駅~小 金沢駅間などで専用道が整備され、同年 9 月 5 日からは新たな専用道(合計 10.1km)及び BRT 駅の供用開始、便所の新設などが行われた。 2014 年 4 月 17 日からは気仙沼駅構内への乗 り入れが開始され、専用道の総延長は 22.7km となった。  また、2013 年 9 月から供用された専用道(志 津川トンネル等を経由)により、朝夕の便の一 部はベイサイドアリーナを経由しないことと なった。そのため、清水浜の乗り場は線路跡を 挟んで南北2箇所に設置された。  このほか、気仙沼線の専用道の特徴としては、 トンネルが数カ所あり、センサー・信号機・遮 断機による誤進入防止装置が設置されており、 そのための待機場所も設けられている。トンネ ル内においても反射板、突起式路面標示等を設 置している。ちなみにトンネル内での不測の事 態の発生に際しては、電話機能付きタブレット 端末により運行管理者へ連絡し、対処すること としている。  一般道との交差部分は、交通量の多いところ は信号機と遮断機が設置されていたり、以前は 警備員を配置している箇所もあったが、農道と の交差部分などは標識等のみの設置となってい る。橋梁の箇所は鉄道のものを改良するなどし て転用している。橋梁は津波で流出した箇所が 多いが、陸前港駅付近に設置された港川橋梁は 周辺の嵩上げ計画などの関係もあって、流出箇 所に仮設橋梁を設置し、専用道化している。 なお、志津川駅は、元の駅から場所を復興仮設 商店街付近に移転のうえ新設しており、職員が 切符販売等の窓口業務を行っている。   一 方、JR 東 日 本 仙 台 支 社・ 盛 岡 支 社 は、 2013 年 9 月 5 日からの新たな専用道延伸等に より、柳津~気仙沼間は 2012 年 8 月 20 日の 暫定運行開始時と比べて、最速で 11 分短縮と なり、速達性が向上したとしている12)。しかし、 筆者が初めて BRT に乗車した際、トンネル内 のバスの時速は約 40km/h であったが、同じ ト ン ネ ル 内 の 走 行 で あ っ て も、 今 回 は 約 55km/h で 走 行 し て い た。 ト ン ネ ル 外 で は 60km/h で走行していたケースもあった。実際 に運転手にトンネル内や橋梁を走行する際の最 高時速を問うと「50 ~ 55km/h にスピードアッ プしている」という回答が返ってきた。そうい う意味では、後述のような乗降がない場合の通 過、あるいはスピードアップによる時間短縮効 果もあると考えられるが、専用道の延長だけが その要因とされていることに疑問を感じた。  さらに朝夕の渋滞について問うと、「ベイサ イドアリーナから志津川までは混雑する箇所は 表 1 各駅の被災状況と現状一覧   (2013 年 10 月現在) 被害 現状 場所 備考 気仙沼 A ◎ - 駅前にバス停設置 不動の沢 A ○ イ 南気仙沼 (市立病院入口) 松岩 C ● ロ 最知 C ○ イ 陸前階上 B ○ イ 既存の駅を改築 大谷海岸 C ● ロ 小金沢 C △ ハ 本吉 A ○ イ 既存の駅を改築 陸前小泉 C ● ロ 蔵内 A ○ イ 陸前港 C ○ イ 歌津 C ○ ロ 駅舎跡地に設置 清水浜 B △ ハ 2箇所設置 (ベイサイドアリーナ) - ● ハ 志津川 C ○ ハ 窓口設置あり 陸前戸倉 C ○ イ 陸前横山 A △ ハ 柳津 A ◎● - 駅前に設置 注1)被害状況は次のとおり(訪問時の私見による) A.ほぼ被害なし、B.一部損傷、C.流出・損傷 注2)現状は次のとおりとした ◎鉄道駅、○BRT駅(待合室、WC等あり)、 ●待合室付きバス停、△バス停のみ 注3)乗降設備の設置場所は次のとおりとした イ.同位置、ロ.近隣(駅前等)、ハ.別位置 C △ ハ 出所:現地調査をもとに筆者作成

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ある」と専用道延長による時間短縮効果は一定 あるという主旨の回答があった。しかし、驚い たのはその後の「志津川から南はかえって時間 がかかるようになった」という言葉だった。運 転手の主観によるところかもしれないが、志津 川から陸前戸倉までの区間は、トンネルのほか、 いくつかの高架橋を走行する区間である。過去、 南三陸町に居住する方と話をする機会があった が、その際に BRT が話題となり、この高架橋 の区間について、筆者が聞く前に「みんな怖い と言っている」との話があった。筆者は海風が 吹くであろう海沿いのこの橋梁区間について、 特に冬期間の凍結の危険性を懸念しているが、 そもそもほとんど被災しておらず、時間短縮に もつながらないこの高架橋を専用道化する必要 があったのか、大いに疑問を持った。 4.BRT の運行車両と運行状況  JR 東日本は、2012 年 8 月からの BRT 暫定 運行前の同年 7 月 26 日に一般乗合旅客自動車 運送事業の経営許可を受けているものの、実際 の運行はミヤコーバスが受託している。現在、 気仙沼線 BRT で使用されている運行車両は、 日野自動車製のブルーリボンシティ・ハイブ リッドノンステップバス(乗車定員 77 人)と なっているほか、2014 年 4 月 17 日からは電 気 BRT 車両と観光型 BRT 車両の運行を開始し た。  車内装備も充実しており、ニュースや運行情 報が液晶パネルに映し出されている。また、防 犯カメラや乗車人員等の調査用センサーも設置 されており、JR 東日本に提供されているそう だ。このほか、2013 年8月3日からは専用の IC カード「odeca(オデカ)」が導入されている。 運行状況は、気仙沼駅から本吉駅間が下り 34 本(平日:以下同じ)上り 31 本、本吉駅から 志津川、陸前戸倉、柳津駅間が下り 21 本、上 り 18 本となっている。当初、バスは停車スペー スと坂道という地理的条件で支障の出る小金沢 駅(バス停)を除き、乗降がなくても停車し、 ドアを開閉していたが、2013 年 9 月 5 日以降 は乗降がない場合、通過することとなった。  同線の柳津~気仙沼間の 2013 年度の平均通 過人員は 268(人/日)13)とされているが、 朝夕の利用者の大半は地元の高校生である。調 査時は日中であったため、回送も含めて多くの バスとすれ違ったが、いずれも乗車人員は芳し くなかった。しかしながら、通学時間帯となる 気仙沼駅 7 時 5 分発の本吉駅行は 3 台、同時 間帯の気仙沼駅行は 2 台でそれぞれ運行して おり、車内は学生で混み合っているそうだ。ま た、ゴールデンウイークなどはボランティアの 方も多く乗車されたという。このほか、試験等 の際は、学校側から事前に要望等がなされ、臨 時便等で対応するそうだ。筆者は乗車による調 査を数回実施した。時間的な制約もあり、平日 は一部区間の調査にとどまったが、その結果は 次のとおりとなっている(表 2)。  また、バスと鉄道の乗り継ぎだが、基本的(最 終を除き)にどちらも「遅れても待たない」の だそうだ。この点は乗車券を通しで買えるなど の状況からしても今ひとつ腑に落ちない。  一方、運転手サイドの状況は、概ね柳津駅か ら気仙沼駅の往復に本吉駅から気仙沼駅間が加 わる約 200km 運転が基本パターンだという。 これまでに三度ほど本吉駅での運転手交代を確 認している。 5.BRT のロケーションシステム、設備等  待合室のある駅やバス停にはバスがどこを運 行し、どの程度の遅れ(1分単位)があるのか が一目でわかるディスプレイが設置されている おり、バスが接近すると、その旨のアナウンス がなされる。さらに、運行状況はモバイルによっ ても同様の内容を知ることができる。BRT ネッ トの配信開始は 2012 年 12 月 22 日からであ

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り、駅舎内にも「“ もっと快適に利用してほしい ” という、思いこそ届けたい…」と記したポスター を掲示している。加えて、BRT ネットは単に 運行情報の把握だけではなく、2013 年夏頃に は BRT 及び沿線の復興のキャラクターのリス (おっぽくん)の愛称募集などでも活用された。 ちなみに JR 気仙沼線の場合、運行車両(ハイ ブリッドノンステップバス)に関わっては一定 の国庫補助を受けているものの、現時点ではこ のロケーションシステムに関する補助は受けて いないとのことである。  このほか、待合室内の設備では、センサーカ メラの設置をはじめ、2013 年 9 月 5 日に供用 開始された駅などで設置されたトイレは、男女 別、ウォシュレット付きの最新のものである。 なお、待合室のないバス停であっても、日が暮 れると自動的に照明が点灯するようになってい るなど、沿線の路線バスとは大きな違いがある。

Ⅲ 鉄道の廃止とバス専用道化

1.国内における鉄道廃線跡等のバス専用道化  ここまで、気仙沼線 BRT について述べてき たが、同路線と同様の道路運送法第2条第8項 に基づく専用道は全国に9路線ほどある。その 代表格は JR バス関東の白棚線14)であり、「日 本最古の高速バス道路」とも言われている。な お、五新線15)(奈良交通五條西吉野線)のバ ス専用道化については、この白棚線をモデルに したとされている。16)このほか、道路交通法 や軌道法に基づく路線もいくつか存在し、さら には過去に専用道として存在したものの一般道 路化あるいは廃止された路線もある。  また、気仙沼線と同じく宮城県内でかつて存 在 し た 仙 北 鉄 道( 築 館 線: 瀬 峰 ~ 築 館 12.6km:1950 年廃止、登米線:瀬峰~登米 28.6km:1968 年廃止)の場合は、専用道路 とされた後に一般道路化された一例である。実 際に筆者も幼少の頃に登米線の廃線跡の専用道 路を土煙を上げて運行する宮城バスに乗車して いる。この路線バスは「専用線経由登米行き」 というように運行されており、地元では「専用 線」という呼称が定着していたが、利用者の減 少により、現在は運行本数も含めて、大きく衰 退している。  前述のとおり、白棚線や五條西吉野線も含め 表 2 調査日・便における各駅の乗降実績 出所:現地調査をもとに筆者作成 2013年6月8日(土) 乗車 降車 乗客 乗車 降車 乗客 柳津 1 1 気仙沼 2 2 陸前横山 1 不動の沢 6 8 陸前戸倉 1 南気仙沼 志津川 4 5 (市立病院入口) (ベイサイドアリーナ) 1 4 松岩 2 1 10 清水浜 4 最知 10 歌津 3 1 陸前階上 10 陸前港 1 大谷海岸 1 1 10 蔵内 1 小金沢 10 陸前小泉 1 本吉 2 8 本吉 1 陸前小泉 8 小金沢 1 蔵内 8 大谷海岸 1 陸前港 1 7 陸前階上 1 歌津 3 4 最知 1 清水浜 2 2 松岩 1 (ベイサイドアリーナ) 2 南気仙沼 志津川 7 1 8 (市立病院入口) 陸前戸倉 8 不動の沢 1 陸前横山 1 7 気仙沼 1 0 柳津 7 0 2013年10月6日(日) 乗車 降車 乗客 乗車 降車 乗客 柳津 1 気仙沼 5 5 陸前横山 1 不動の沢 6 11 陸前戸倉 1 南気仙沼 志津川 3 4 (市立病院入口) (ベイサイドアリーナ) 4 松岩 1 2 16 清水浜 4 最知 2 14 歌津 1 1 4 陸前階上 1 2 13 陸前港 4 大谷海岸 1 12 蔵内 4 小金沢 12 陸前小泉 4 本吉 5 7 本吉 13 17 陸前小泉 7 小金沢 17 蔵内 1 6 大谷海岸 17 陸前港 6 陸前階上 1 16 歌津 1 5 最知 1 2 15 清水浜 1 4 松岩 1 14 (ベイサイドアリーナ) 1 5 南気仙沼 志津川 1 4 (市立病院入口) 陸前戸倉 1 3 不動の沢 2 3 陸前横山 3 気仙沼 3 0 柳津 3 0 2013年10月7日(月) 乗車 降車 乗客 乗車 降車 乗客 柳津 3 3 歌津 6 8 陸前横山 3 清水浜 1 9 陸前戸倉 2 5 (ベイサイドアリーナ) 志津川 4 9 志津川 7 2 (ベイサイドアリーナ) 陸前戸倉 2 清水浜 7 16 陸前横山 2 歌津 13 1 28 柳津 2 0 通過 通過 柳津6:03発→歌津6:46着(気仙沼終着) 歌津7:04発→柳津7:47着(気仙沼始発) 柳津14:38発→気仙沼16:37着 気仙沼16:55発→柳津18:54着 柳津12:37発→気仙沼14:33着 気仙沼14:55発→柳津16:51着 9 5 9 8 2 17 1 1

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て、鉄道廃止(工事中止含む)後に路盤をバス 専用道化している実例は国内でも半世紀前から 存在しているように、決して目新しいものでは ない。 2.先行的事例の調査結果から  筆者はこうしたなかで、既に鉄道廃止後にバ ス専用道化された路線(BRT の先行的事例) について、どのような効果があるのか、あるい は課題があるのか、その実態を調査することが 必要と考え、2012 年 12 月から約半年間の間 にいくつかの路線を実地調査することとした。 ここでは、各線の状況について、大まかではあ るが述べてみたい。 (1)JR バス関東白棚線  現在 20 往復程度(平日)が運行されている。 当初は大部分がバス専用道化されていたが、一 部区間は一般道路化あるいは廃止された17) 廃止された区間はそのまま放置されており、標 識なども残されたままとなっていた。しかしな がら、一般車両が進入できないよう、一般道路 との交差部分はガードレールなどで塞がれてい る。  これらの結果、現在、バス専用道として使用 されている区間は全区間の半分にも満たない が、一般道路との交差部分についても信号ある いは遮断機も設置されておらず、一時停止など の標識が設置されているのみである。また、専 用道には「国鉄高速度専用自動車道」と記され た看板も設置されているほか、道路そのものも ひび割れがあったり手入れが行き届いていると は思えなかったほか、ガードレールのない橋梁 の存在もあった。さらに、停留所の待合室も木 造、コンクリート製などまちまちで、永年使用 されているものと思われるなど、経費をかけて 整備している印象は受けなかった。 (2)奈良交通五條西吉野線(専用道路廃止)  かつて国鉄バスが運行されていた頃はそれな りの便数が運行されていたと思われるが、晩年 は平日 5 往復、土日に至っては 1 往復の運行 にとどまっていた。バスは五条駅付近こそ一般 道を走行するものの、城戸までの 9 割方バス 専用道を走行した。トンネルも数箇所あるほか、 アーチ橋をはじめとした橋梁もそのまま転用さ れている。この路線では比較的高所に架かる橋 梁もあり、流石に白棚線のようにガードレール のない橋梁ではなかったが、若干カーブとなっ た橋梁もあり、冬期間の走行の安全性を危惧し た。  また、一般道路との交差部分の一部には使わ れなくなった遮断機が残っているが、現在使用 されているものはない。また、トンネルの入口 を含めて、専用道に信号機は皆無である。  なお、同区間は衣笠トンネルの状況が悪化し たことから、2014 年 9 月末で専用道を閉鎖し た。並行して「日本一長い路線バス」として知 られる特急バスが運行されており、同バスから バス専用道路を眺めることができる。 (3)富山地方鉄道射水線18)(専用道路廃止)  新富山駅側の一部区間がバス専用道路となっ ていたが、北陸新幹線工事のため、その一部が 撤去された19)。残る専用道路区間には遮断機 も設置されていたが、訪問時にはこの区間も専 用道路としては既に廃止されていた。廃止区間 にはかつての駅を停留所にした箇所もあった が、その場所も含めて、専用道路の入口にはバ リケードが設けられ、放置された状況となって いた。 (4)ひたち BRT 20)  2013 年 3 月末に運行を開始したが、現在 33 往復(平日)が運行されている。バスはブルー ラピッドとサクララピッドの 2 種類が運行さ れているが、バスの車体には宣伝広告のように 「BRT」とデザインされた文字が大きく描かれ ていた(図 1)。

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 そして、ひたち BRT の運行情報を掲載した リーフレットの中で、路線バスより「早く」「決 まった時間に」「安全に」運行することができ る都市交通システムだとしている21)。なお、 同路線の実際に走行する距離は約 3.2km 程度 だが、交差点の信号機や遮断機は設置されてい る。 (5)かしてつバス22)   運 行 開 始 後、4 年 を 経 過 し た が、 石 岡 市 HP23)に よ れ ば、 同 線 は 全 国 初 の「 地 方 型 BRT」とされている。運行本数は石岡駅から小 川駅までの間において、茨城空港バスと合わせ て 60 往復(平日)近くが運行されている。こ のバス路線では、モバイルによるバス運行情報 サービスを提供している。同市の HP には「か してつバスネットワークニュース」が UP され ているが、気になるのは発行間隔が次第に開き、 半年間発行されていないこともあることだ。  このほか、HP では利用実態調査(2010 年度) の結果が公表されている24)。調査は調査員を バスに乗り込ませて実施したとされている。つ まり、同バスの利用者のみを対象とした調査、 逆に言えば鉄道は利用していたがバスは利用し ていないという人は調査対象とされていないこ とになる。これによれば、59%の利用者が鉄 道時代と比べて利便性がよくなったとしている が、その一方で 15%の利用者が利便性が悪く なったと回答している。  もともとこの路線は鉄道時代には一日 1,600 人の利用があったが、鉄道廃止後の代替バスで 600 人に落ち込み、かしてつバスによって 1,000 人まで持ち直したとされている。このよ うに鉄道時代と比較して利用者が大幅に減少し た要因としては3年間の代替バス運行があげら れている25)  なお、この路線の石岡南台駅は、かつてのホー ムをそのまま残し、バス停を隣接させている。

Ⅳ JR 気仙沼線 BRT の問題点と

  考察

1.被害のない区間の専用道化  これまでの報道では、専用道化率はおよそ 6 割まで進められると報じられていたが、現時点 では 4 割程度が専用道化されている。今後、 そういう意味では、今後さらに専用道が延長さ れるものとみられるが、これまでに専用道化さ れた区間では、ほとんど被害のない区間のレー ルあるいはホーム等の施設を撤去した箇所があ る。  具体的には、前述の気仙沼~不動の沢間、折 立トンネル陸前戸倉駅側坑口~志津川駅南側約 1km 地点、城場山トンネル志津川駅側坑口~ 志津川トンネル清水浜駅側坑口、本吉駅前後の 区間、不動の沢駅、蔵内駅の撤去などである。 なお、柳津~横山トンネル陸前戸倉駅側坑口付 近は、現時点では専用道化されていない。  筆者としては、三陸鉄道が復旧可能な区間か ら随時復旧させた例のように、仮に今後、町の 復興計画などがあるとしても、可能な区間から 出所:日立市役所 HP 図 1 ひたち BRT の車両のサイドビュー

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早期に復旧をさせるべきだと考える。さらに、 仮に BRT で仮復旧するとしても、被害のない 既存の施設は残すべきと考える。不動の沢駅や 蔵内駅についても、かしてつ石岡南台駅などの ように既存の駅の隣接地に乗り場を設置するな ど、既存の施設を残すことが、鉄道での復旧を 求める地元住民の希望にもつながるように思え るし、経費の面でも利点があるように思える。  一例では、柳津~志津川に関しては、陸前戸 倉駅周辺は壊滅的な被害を受けたが、専用道化 にした際に、陸前戸倉~折立トンネルまでの築 堤を一部復旧させている。地図で見る限り、横 山トンネルと折立トンネルの間は 2km 弱にな るが、この区間を復旧させれば、元の志津川駅 の南側約 1km 地点の区間まで復旧可能と考え られる。その途中には復旧作業員なども宿泊す る南三陸ホテル観洋もある。ホテルの駐車場の 前は黒崎トンネル志津川駅側坑口付近となって いるが、復旧可能な区間の終点もしくはこの付 近に仮の駅を設置すれば、被災地を訪れる多く の人の利便性も向上し、被災地の復興にも寄与 するようにも思える。  南三陸町は、まちづくり計画の中で、新志津 川駅の建設予定地を元の駅から約 1.5km 北側、 城場山トンネルと新井田トンネルの間としてい る26)。被害のない陸前横山駅周辺は仮設住宅 が建ち並んでいることもあり、暫定的であって も南三陸町内まで鉄道が復旧すれば、被災地を 激励することにもつながるのではなかろうか。  気仙沼線に限らず、JR 東日本は、他の路線 においても早期復旧が可能であるにもかかわら ず復旧していない。具体的には大船渡線の気仙 沼~陸前矢作間(17.5km)や、震災以前の 2010 年 7 月に発生した土砂崩れで全線運休と なった岩泉線の茂市~押角駅間(15.8km)だが、 実地調査の結果、目に見える大きな被害は見ら れなかった。  今後、柳津~陸前横山間のように被害がなく、 並行の国道も渋滞せず、速達性が大きく向上し ないような区間についても専用道化されるので はないかと危惧している。 2.専用道の安全性  専用道については、点検や保守管理等に係る 規程設置義務がなく、専用道を有する運送事業 者が自らその管理を行うことになる。そのため、 国側は供用開始時の検査は行うものの、その後 に国が定期的に専用道の状況を監査することに はならない。いわば事業者の責任において管理 することになるが、そういうこともあってか、 白鵬線のように見た目にも管理が行き届いてい ない印象を受ける専用道が存在するのかもしれ ない。  この間、気仙沼線の専用道では、一般道との 交差点付近で事故が発生した例もあるが、冬期 間の走行に関しては、一般道、専用道ともに安 全性の確保が重要となる。気仙沼線の場合、一 般道は国が直轄で管理する国道 45 号線を走行 するが、トンネル、南三陸町内の高架橋部分な どの専用道の部分は、事業者が管理することに なる。運転手に聞いた話では、冬期間は融雪剤 がまかれたりするものの、走行車両が少ないと 融雪剤も効果が薄くなったりすることもあると いう。海沿いの橋梁区間においては、冬期間、 海から冷たい風が吹き込んでくる。トンネル内 も積雪はないとはいえ、気温が低くなる。そう した面では、定時制の確保のためとはいえ、こ れらの区間の専用道化は冬期間の路面凍結等に よる事故等、安全面も含めて懸念がある。これ らのことから、トンネル、橋梁の多い気仙沼線 においては冬期間も含めて運行の安全性は鉄道 の方が高いと考える。現在、専用道となったト ンネルのうち、500 mを超えるものは表 3 の とおりとなっているが、専用道化されていない 区間では、気仙沼線では最も長い横山トンネル (3,508m)を筆頭に、白山トンネル、二十一浜

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トンネルなどが 500 mを超えるトンネルとし て存在する。  また、津波発生時の避難手段としてバスの方 が有効という声もあるが、これにも疑問がある。 避難のために道路が渋滞したら意味がない。ま た、一般道の渋滞により、パニック状態に陥っ た一般車両が専用道になだれ込む可能性もあ る。さらに、専用道から避難するとしても、専 用道と交差する一般道は比較的交通量が多いこ とから、渋滞となるだろう。交通量の少ない農 道とも交差しているが、BRT の車両が専用道 から出られるほどの幅員はない。そう考えると、 結局は徒歩で避難することになるのではない か。  国土交通省鉄道局は、2013 年 2 月に「津波 発生時における鉄道旅客の安全確保に関する協 議会」報告書を公表した。ここでは、様々な教 訓や対策なども盛り込まれており、鉄道で復旧 させることであっても、避難対策を講ずること は十分可能と考える。 3.日本型 BRT を推進する国土交通省  BRT とは、バス・ラピッド・トランジット(Bus RapidTransit =バスによる都市大量旅客高速 輸送)の略称となっており、諸外国ではすでに 都市部などで導入されている。一方、我が国に おいては道路運送法や道路交通法に基づくバス 専用道・バスレーンを運行する形態を BRT と 呼んでいる。国内でも藤沢市に導入された事例 のように都市部を走行する BRT も存在するが、 地方の鉄道廃線跡等をバス専用道化して BRT としている形態は諸外国の事例とは異なるもの であるほか、前述のとおり決して目新しいもの ではない。  一方、国土交通省は大震災発生以前から「新 交通システム」として「日本型 BRT の推進」 を施策に盛り込み、「生活交通サバイバル戦略」 として国庫補助も行ってきた27)。国土交通省 がどこまで「日本型 BRT」を推進するつもり なのかは定かでないが、もし、鉄道を廃止して BRT へ転換することを積極的に推進するとし ているならば、極めて重大な問題と考える。 さらに、最近では BRT を有望なアイデアだと して、さらに拡大すべきだとする意見もある。  具体的には、三陸鉄道の復旧方針に対し「三陸 沿岸部の再生に役立つとは思えない」「復興の シンボルになるという意見にも賛成できない」 として、気仙沼線の BRT に関わっては「被災 した路線だけでなく、その他の低利用路線も今 後は BRT に転換することを第一に考えるべき」 との見解である28)  しかし、都市部に導入される BRT はともか く、鉄道廃止後の BRT 導入は、一言で言えば バス転換である。全国的に見ても鉄道を廃止し てバス転換させた場合、そのほとんどが利用者 をさらに減少させている。さらにバスの減便、 運賃値上げが悪循環となり、最終的にはバス路 線も廃止に追い込まれることになる。これらの 背景には、バスになれば定時運行ができないこ とや乗り心地の低下、安全性の問題などがある と指摘されている29)。乗り心地の問題では、 バスの車内では勉強ができないなどの声も聞 く。また、鉄道のように足を伸ばして座れない、 駅弁を食べながら一杯やることもできないな ど、「旅の楽しみ」も半減する。  最近では近鉄内部・八王子線においても BRT が検討されてきたが、今後、BRT が地域公共 出所:現地調査をもとに筆者作成 表 3 専用道区間内で 500 mを超えるトンネル 名称 位置 延長(m) 折立 陸前戸倉~志津川 550 黒崎 同上 562 城場山 志津川~清水浜 621 志津川 同上 2,136 歌津 歌津~陸前港 1,744 港 陸前港~蔵内 590

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交通の確保・維持・改善を目的とした「新交通 システム」に位置づけられ、全国各地で鉄道か らバス(BRT)への転換が進むなど、企業努力 をすることなく、また、利用者の意向などを軽 視して安易に「鉄道廃止・BRT 化」という流 れが全国各地で加速する事態に陥らないか、大 いに危惧されるところである。 4.JR 東日本の経営姿勢  気仙沼線に導入されているロケーションシ ステムや各種設備は最新のものであり、過去に バス専用道化された路線は勿論、かしてつバス などのように近年導入された BRT とは別次元 のものとなっている。これらの状況を見ると、 およそ「仮復旧」とは思えないほど JR 東日本 が莫大な資金力をもって一大プロジェクトのよ うに BRT 化をすすめてきたように思える。そ して、そのことは「失敗が許されない」もの、 はたまた他の路線に導入するための「試験的な 位置づけ」と見えなくもない。  同社は、2008 年 3 月に発表した経営戦略(グ ループ経営ビジョン 2020 -挑む-)のなかで、 地方交通線について、「徹底した事業運営の効 率化を推進」「鉄道として維持することが極め て困難な路線・区間については、当社グループ を事業主体とする鉄道以外の輸送モードの導入 も含め、全体としてのサービス水準の維持・向 上をめざす」としている30)。この間、同社の HP には岩泉線や只見線の被災状況と巨額な復 旧費用、乗車人員の減少などが掲載されている が、極めて意図的に思える。こうしたなかでの 被災路線の BRT 化は「震災に乗じた経営戦略」 ではなかろうか。それどころか、被災路線のみ ならず、BRT を拡大させるつもりではないのか。  このほか、「BRT の旅」を宣伝した全国紙の 全面広告、吉永小百合さんを登場させたポス ターに CM、観光型 BRT 車両の導入である。 まるで BRT が「新たな商品」のような扱いに 思えてしまう。  さらに仙台駅での大規模開発に 100 億円以 上、東京駅の復元工事に 500 億円、2013 年 6 月に発表された豪華列車(クルーズトレイン) の導入などを見れば、利益優先という経営姿勢 を色濃くしているように思える。導入に関して 冨田社長は「震災からの復興につながる」など と述べているが、本気で復興を考えるのであれ ば、「被災地の鉄道を早期に全線復旧させて豪 華列車を走らせる」と言うべきでなかったかと 思う。  JR 東日本は巨額な内部留保を抱えており、 被災地の鉄道復旧が困難な経営状態ではない。 この間、「株主の理解が得られない」との主張 も報道されているが、完全民営化された企業と してわからなくもない。また、気仙沼線の利用 状況(表 4)からすれば、慎重に検討すること も理解できなくはない。しかし、これまでに JR 東日本が気仙沼線の利用者を向上させるた めの具体的な方策を講じてきたか、疑問がある。 その点で気仙沼線にクルーズトレインを走らせ ることはその一例にもなり得るのではないか。 実際に地元の利用者からも「気仙沼と仙台空港 を直接結ぶ特急列車を導入し、沿線の観光協会 表 4 東日本大震災発生前の気仙沼線利用状況 出所:東日本旅客鉄道(株)HP「路線別ご利用状況」をもとに作成。 1987年度 1992年度 1997年度 2002年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 前谷地~気仙沼 1,357 1,538 1,330 1,021 938 914 872 805 前谷地~柳津 1,311 - - - - 854 790 696 柳津~気仙沼 1,425 - - - - 932 898 839 平均通過人員(人/日) 区間

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と連携して気仙沼の海の幸をアピールするなど すれば、観光客や雇用増にもつながり、震災復 興につながる」という意見などが地元紙にも寄 せられている31)  この間、被災路線の復旧を巡って JR 東日本 は、山田線に関して地元自治体が拒否した BRT のほか、1 月末には三陸鉄道への移管案を提示 した。一方、気仙沼線に至っては、2013 年 8 月7日の復興調整会議において、一部区間につ いて、鉄路の内部移設案を提示したとされる。 しかし、気仙沼線の移設案は財政支援を前提に したものと考えられ、鉄道での復旧に積極的な 姿勢を示したものではないと考えられる。  後述の国の財政支援という問題があるにし ろ、JR 東日本には公共交通機関の使命がある はずであり、そうした観点も含めて、鉄道で早 期に全線復旧させることを大前提とした検討を 積極的に進めて欲しいと考える。 5.国の財政支援  現行の鉄道軌道整備法の被災鉄道にかかる災 害復旧事業費補助は国及び自治体が 1/4 ずつ となっており、あとは鉄道事業者が 1/2 を負 担することとなっている。三陸鉄道の場合、自 治体を支援する形での補助スキーム等により、 約 108 億円の費用はほぼ全額国が負担するこ ととなったが、補助を受ける鉄道事業者の被災 前3カ年度が営業損失となっていることなどの 要件があるため、JR 東日本のような経営状態 の場合、補助の対象とならない。  これに対し、2013 年 6 月 5 日の衆議院国土 交通委員会などの場では、土井亨(自由民主党)、 穀田恵二(日本共産党)両議員が鉄道軌道整備 法によらない国からの財政支援の必要性を主張 している32)  まちづくり、嵩上げなどの問題もあるが、気 仙沼線の鉄道での復旧は被災地の早期復旧・復 興に直結する問題であることから、鉄道軌道整 備法によらない形も含めて、国として何らかの 財政的な支援は必要と考える。また、今後は公 共交通機関の果たす役割の明確化などの意味合 いも含めて、国民の交通権を保障し、各鉄道会 社もそれに応えていくような法整備も必要と考 える。

Ⅴ おわりに

      気仙沼線 BRT 化を全面否定するつもりはな いし、BRT の運行に携わる多くの方々には深 く敬意を表する。しかし、その一方で BRT の メリットが強調されており、鉄道での復旧を不 要論とする声も出始める中で、筆者は津波発生 時の避難あるいはトンネル、橋梁の多い気仙沼 線においては冬期間も含めて運行の安全性は鉄 道の方が高いことや、震災からの早期復旧・復 興、鉄道が持つ多くの優位性から、JR 東日本 が早期に鉄道での全線復旧をめざす方針のも と、対応を図るべきと考える。特に JR 各社に おいては、完全民営化されたとしても、国鉄分 割民営化をめぐる経過などからしても、他の民 鉄とは違い、国土形成などにも影響を与える公 共交通機関であり、単に利潤の追求だけではそ の責任を果たしていないものと考える。  さらに言えば、全国の専用道の事例や、鉄道 を廃止してバス転換した事例などを見ても、 BRT を恒久化させることは、利用者にとって さらなる悪循環をもたらす可能性が高い。  震災からの復旧・復興では、鉄道での復旧が 遅れれば遅れるほど、利用者離れ、あきらめ感、 さらには被災地を支援する国民の意識の低下な どが進行し、その実現性は間違いなく遠のくも のと考えられる。逆に三陸鉄道などの事例を見 ても、早期復旧を図ることは、震災からの復旧・ 復興に大きく寄与する。それらのことから、JR

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東日本は気仙沼線をはじめとする被災路線を早 期に全線復旧させることが大きな鍵を握ってい るのではないかと考える。  筆者としては、JR 東日本に対し、公共交通 機関の使命を果たすべく鉄道での全線復旧に向 けた積極的な対応を求めるとともに、国に対し ても、被災地の復旧・復興と地域の再生・活性 化さらには国民の交通権確立に向けた対応を求 めたいと考える。  今後、JR 気仙沼線、大船渡線の BRT 導入に よって、全国的に安易に鉄道廃止= BRT 化と いう流れが加速することのないよう、さらなる 調査・研究活動も深めながら、各鉄道会社及び 国に対しては、鉄道の維持・発展にむけた対応 などを求めていきたいと考えている。 【注】 1)「毎日新聞」、2013 年 4 月 3 日付夕刊 2)「朝日新聞」、2013 年 4 月 3 日付夕刊 3)「日本経済新聞」、2013 年 4 月 3 日付夕刊 4)「読売新聞」、2013 年 4 月 4 日付朝刊 5)「日本経済新聞」、2013 年 4 月 3 日付夕刊、 利用者の女性(66) 6)「読売新聞」、2013 年 4 月 4 日付朝刊、盛 駅前で約 40 年前から喫茶店を経営する佐藤幸 子さん(65) 7)「河北新報」、2012 年 4 月 11 日付朝刊 8)「河北新報」、2013 年 3 月 15 日付朝刊 9)「河北新報」、2012 年 12 月 24 日付朝刊 10)JR 東日本 HP 津波を受けた7線区の主な 被害と点検状況 http://www.JReast.co.jp/pdf/check.pdf 11)「産経ニュース」、2014 年 2 月 6 日付 http://sankei.jp.msn.com/region/news/140206/ myg14020602190000-n1.htm 12)JR 東日本盛岡支社 HP http://www.JR-morioka.com/cgi-bin/pdf/ press/pdf_1373528261_1.pdf 13)JR 東日本 HP「路線別ご利用状況」 http://www.JReast.co.jp/rosen_avr/pdf/ 2009_2013.pdf 14)白棚線:白河駅(福島県)から磐城棚倉(同) を結ぶ。白棚鉄道として建設された後、国有化 された。太平洋戦争の激化とともに 1944 年に 休止となりレールが撤去された。1957 年に鉄 道の路盤を舗装・バス専用道化し、白棚高速線 として開業。 15)五新線:五条駅(奈良県)から新宮駅(和 歌山県)を結ぶ目的で建設された国鉄の鉄道路 線(未成線)。このうち 1959 年に路盤が完成 した五条駅から城戸駅間をバス専用道化。 16)森 口 誠 之『 鉄 道 未 成 線 を 歩 く 』JTB, pp.114,2002 17)宮 脇 俊 三『 鉄 道 廃 線 跡 を 歩 く Ⅶ 』JTB, pp.86-88,2000 18)富山地方鉄道射水線:新富山駅(富山県) から新港東口(同)を結んでいたが、1980 年 に廃止。 19)寺田裕一『新消えた轍 7』ネコ・パブリッ シング ,pp.52-53,2010 20)ひたち BRT:2005 年 3 月まで鮎川駅(茨 城県)から常北太田駅(同)を結んでいた日立 電鉄の廃止後、一部区間が BRT 化。(2013 年 3 月 25 日運行開始) 21)日立市 HP http://www.city.hitachi.ibaraki.jp/manage/ contents/upload/04804_20130607_0002.pdf 22)かしてつバス:2007 年 3 月まで石岡駅(茨 城県)から鉾田駅(同)を結んでいた鹿島鉄道 の廃止後、一部区間が BRT 化。(2010 年 8 月 30 日運行開始) 23)石岡市 HP 鹿島鉄道跡地バス専用道化事 業 http://www.city.ishioka.lg.jp/page/ page000721.html 24)石岡市 HP かしてつバス利用実態調査

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h t t p : / / w w w. c i t y. i s h i o k a . l g . j p / p a g e / page000726.html 25)『運輸と経済第 72 巻第 6 号』運輸調査局 , pp.65,2012 26)国土交通省 HP http://www.mlit.go.jp/common/000231284.pdf 27)国土交通省 HP http://www.mlit.go.jp/common/001008434.pdf http://www.mlit.go.jp/jidosha/topbar/yosan/ yosan19/gaiyou4.pdf ほか 28)福井義高『鉄道は生き残れるか「鉄道復権」 の幻想』中央経済社 ,pp.173-175,2012 29)堀内重人『鉄道・路線廃止と代替バス』東 京堂出版 ,pp.101,2010 30) JR 東日本 HP http://www.JReast.co.jp/press/2007_ 2/20080320.pdf 31)「河北新報」、2011 年 7 月 29 日付朝刊、 仙台市・後藤格さん(42) 32)衆議院 HP http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/ index_kaigiroku.htm

参照

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