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Academic year: 2021

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(1)

局地風は,熱的原因の日変化に起因するもの(海陸風・ 山谷風)と気圧配置と地形によって起こるもの(山脈風 下の平野で観測されるおろし風・峡谷から平野や盆地に 吹きぬける地峡風),地形と熱的要因の複合的な作用に よって起こるものと,大きく 3 種類に分類することがで きる。 吉野(1986)によれば,おろし風の地域的な特徴とし て,風下側に起こり,中でも峠の陰,谷間の出口で特に 強く,その範囲は一辺約 10km 以下と狭いものであるこ と,風上の山脈は複雑なものより単純な孤立山脈の方が 起こりやすく,卓越風向は山脈の走向に直角であるこ と,風上側から山脈に向かって,その左側の山側斜面に 起こりやすいこと,の 3 点があげられている。 1 はじめに 水平スケールおよそ 10 ∼ 100km の範囲で局地的に吹 く風を局地風という。局地風は,農業や人々の生活にさ まざまな影響を及ぼしている。一方,局地風は風力発電 の資源としても注目されている。日本における局地風 は,「清川だし」(山形県)・「広戸風」(岡山県)・「やまじ 風」(愛媛県)が有名であり,北海道における局地風は, 「寿都だし」・「日高しも風」・「羅臼だし」・「雄武のひか た風」がよく知られている(大川,1992)。局地風に関す る研究は,個々の局地風に関するもののほか,北海道各 地の局地風の特徴をとらえるために,主成分分析等を用 いた研究もなされている(加藤,1982;Kato, 1983)。

河合 隆繁

・中條 麻衣

**

・加藤 央之

***

・山川 修治

Climatological characteristics of local strong wind in the Tokachi district are analyzed. Strong wind appeared most frequently in April, while not in Januar y and August. Approximately 70% of strong wind blew in the wind direction of WNW . The strong winds are classified into 4 types judging from air temperature and water vapour pressure. These are 1) Type Fw accompanies Foehn with rain on the windward mountain side. 2) Type Fd, Foehn without rain on the wind-ward mountain side. 3) Type B, Bora. 4) Type N, no substantial change of air temperature and water vapour pressure. The strong wind is also classified into 3 types depending on the wind flow patterns in Tokachi district. Type 1 is gence pattern both in south and north side of Tokachi district. Type 2 is divergence pattern in south side. Type 3 is diver-gence pattern in the northern part. Type 1 occurred under the stable layer in the lower troposphere and accompanies foehn phenomenon. Type 2 occurred under the strong stable layer in the lower troposphere with a north wind. Type 3 appeared in the unstable layer in the lower troposphere. From these results, the various strong wind flow patterns in the Tokachi district are mainly controlled by the stability in the lower atmosphere and 850hPa wind direction.

Keywords: local Wind, Tokachi, Foehn, Bora, hydraulic jump

北海道十勝地方の局地風「十勝風」の気候学的特徴

Climatological Characteristics of Local Wind in the Tokachi District, Hokkaido, JAPAN

Takashige KAWAI

, Mai NAKAJYO

**

, Hisashi KATO

***

and Shuji YAMAKAWA

(Received September 30, 2007)

Depar tment of Geosystem Sciences, College of Humanities and Sciences, Nihon University:3−25−40 Sakurajosui Setagaya-ku, Tokyo, 156−8550 Japan

**

Focus System Corporation: 2 − 7 − 8 Higashi-Gotanda, Shinagawa-ku, Tokyo, 141−0022 Japan

***

Central Research Institute of Electric Power Industr y: 1 − 6 − 1 Ohtemachi, Chiyoda-ku, Tokyo, 100−8126 Japan

඾ུఱڠ໲ၑڠ໐౷ݩΏΑΞθشڠش : 〒 156−8550 東京都世田谷区桜上水 3−25−40 **Ȫڼȫέ΁Ȝ΃ΑΏΑΞθΒ : 〒 141−0022 東京都品川区東五反田 2−7−8 ***ഩႁಎ؇ࡄݪਫ਼ : 〒 100−8126 東京都千代田区大手町 1−6−1

(2)

上空の風向・風速のデータとして,気象庁のウインド プロファイラデータから,帯広の観測値を使用した。ま た,上空の気温については,気象庁の高層気象観測デー タから,札幌の観測値および状態曲線を用いた。さらに, 850 hPa 面一般場の風,等圧面の高度のデータとして, アメリカ環境予測センター(NCEP)とアメリカ大気科 学研究所(NCAR)が作成した再解析データを使用した。 本研究で用いたウインドプロファイラは,上空の風 向・風速を連続的に観測する装置で,2002 年 4 月より運 用が開始された。ウインドプロファイラには,「ウィン ド(風)のプロファイル(横顔・輪郭・側面図の意)を描 くもの」という意味がある。ウインドプロファイラは, 上空の風を連続的に観測しており,風速は連続した観測 から求めた 10 分間平均風速である。観測可能な高度は 降水粒子がないときには上空約 3 ∼ 6 km の高度,降水 粒子があるときには上空約 7 ∼ 9 km の高度で観測でき, 天気予報のための気象観測のほか,事例解析のデータと しても使用されている(Ishihara et al., 2006)。 本研究の対象地域は,十勝風が吹走する十勝平野とそ の周辺地域である。風向,風速,気温については,十勝 管内のアメダス観測点のうち,図 1 に示した 18 地点を対 象とした。また,地上気象観測による気象要素と高層気 象観測については,図 2 に示した地点を解析対象とした。 解析対象期間は,ウインドプロファイラデータとその 他のデータの比較が可能な 2002 年 4 月から 2005 年 12 月 までの 45 ヶ月間とした。 3 解析結果 3. 1 帯広における強風の発生状況 十勝風の事例を抽出するにあたって,まず,帯広にお いて強風が吹いた事例を抽出した。アメダスの帯広にお いて,毎正時に観測された 10 分間平均の風速が 9.5m/s 以上(0.1m/s 単位を四捨五入して 10m/s 以上)の場合 を強風と定義した。対象期間内において,強風は 1 時間 ごとの観測において,計 128 回観測された。月別強風発 生回数(表 1)をみると,強風は秋(11 月)から春(4 月) にかけて多く発生し,特に 4 月の発生回数が多いことが わかる。また,年によって発生回数にばらつきがある。 強風の発生時期は,北海道の東を通過する低気圧が多い 時期と一致していることから,帯広における強風吹走時 の総観場の特徴として,低気圧の存在が必要条件である と考えられる。風向別の強風発生頻度(表 2)をみると, 強風は,西北西の風がもっとも多く,全体の 67%(128 回中 86 回)であることがわかる。また,強風発生時の 82%(128 回中 106 回)において風向が,西南西・西・西 清川だし(佐々木ほか,2004)や,羅臼だし(佐川, 2000)のような山越え気流としての局地風は,主に標高 1000 m 程度以上の山列の風下に出現する。一方,寿都 だし(佐川,2004)のようにそれほど標高の高くない地 形の風下で吹走する局地風もあることから,局地風の吹 走条件としては,標高と山の形状の両者に支配されてい ると考えることができる。 本研究対象である『十勝風』は,北海道日高山脈の東 側の十勝地方に吹走する局地的強風である。十勝風は春 に多く吹走することから,植え付けを終えたばかりの農 作物の苗が吹き飛ばされたり,乾燥した風により,元々 水分の少ない土壌を更に乾燥させてしまう(日下部, 1965)等農業への被害がでている。そのため,防風ネッ トや防風林などによる強風対策が行われている。十勝風 は,北海道東方に低気圧があり,北海道上空に北西の気 流が流入するときに吹くことが多いため,石狩山地と日 高山地の地形的影響によるおろし風といわれてきた(荒 川,2001)。しかし,力石・蓬田(2006)は,平均的な十 勝風には正午過ぎに最も強く夜間に収まるという日変化 がみられることと,日照時間が長く下層大気が不安定に なっているほど,風が強い傾向が認められることから, 十勝風は,日中の日射により対流が発生し,熱対流が上 空の強風を下層に運ぶために地表で強い北西風が吹く熱 対流混合風であるとした。 力石・蓬田(2006)は,近藤ほか(1984)による熱対 流混合風と十勝風の違いとして,風の吹きだし時に気温 の上昇がみられないことを指摘している。このことは, 十勝風は,事例によって,フェーンの性質や,熱対流混 合風の性質が現れる場合があるとともに,それらとは異 なる性質をもつ場合があることを示唆している。そこ で,本研究では事例ごとの十勝風吹走時の気温と水蒸気 量の変化から十勝風の性質を分類する。さらに事例ごと に,十勝風の性質による風向・風速の特徴を明らかにす る。また,大気の安定度と十勝風の吹走パターンから, フェーンの性質をもつ十勝風と,それとは異なった性質 をもつ十勝風に分類し,それぞれの気象要素の対応を明 らかにして,十勝平野での地域的な風向・風速の分類か ら気象要素の特徴を見出だし,十勝風の気候学的特長を 明らかにすることを目的とする。 2 解析資料 本研究においては,気象庁のアメダス観測データか ら,十勝地方の 18 地点の風向・風速・気温の観測値を用 いた。また,地上気象観測データから,帯広と岩見沢の 風向・風速・気温・水蒸気量・天気の観測値を使用した。 

(3)

北西・北西の連続した 4 方位に含まれている。帯広の西 北西には,石狩山地と日高山脈の鞍部である狩勝峠(図 2)があり,強風が特定の風向に偏在していることの原 因として,地形の影響が大きいことが示唆される。 128 回の強風事例の多くは,低気圧が北海道の東を通 過する前後の数時間にわたって吹いている。そこで,低 気圧の通過にともなって,9.5m/s 以上の強風が観測さ れ,かつ,その前後の時間に 7.5m/s 以上の強風が継続 して観測された事例を,以下の 3 つの条件で抽出し,本 研究における十勝風の事例とした。 ①帯広における 7.5m/s 以上の強風が連続で 4 時間以 上観測されていて,かつ,その間の 1 時間ごとの観測で 9.5 m/s 以上の強風を 1 回以上観測していること。 ②帯広における,7.5m/s 以上の強風の風向が西風系 (西南西,西,西北西,北西のいずれか)であること。 ③狩勝峠の風上側で,帯広と狩勝峠を結ぶ線の延長線 上にあたる岩見沢の風向が西風系であること。 なお,抽出にあたって,前後の時間には 7.5m/s 以上 の風を観測しているものの,その間の時間帯の風速が 7.5 m/s 未満の場合については,前後 1 時間を含む 3 時間 平均の風速が 7.5m/s 以上であった場合には,十勝風が 継続して吹走しているものと判断した。この結果,表 3 に示した 26 事例が十勝風の事例として抽出された。な お,事例 2,事例 12,事例 21 については,一時的に風が 弱まったものの,数時間後に再び強風が吹いた事例であ るため,十勝風の継続時間は,前半と後半にわかれてい る。 3. 2 気温・水蒸気量の変化からみた十勝風の特徴 抽出された 26 事例の十勝風は,風上側の山地の影響 によるおろし風の性格をもつ強風であると考えられる。 図 1 アメダス観測地点 表 1 帯広における月別の強風発生回数 単位(回) 図 2 周辺の地形およびアメダス以外の観測点 観測点は青で示した        鞍部(狩勝峠)は赤で示した    㪡㪘㪥 㪝㪜㪙 㪤㪘㪩 㪘㪧㪩 㪤㪘㪰 㪡㪬㪥 㪡㪬㪣 㪘㪬㪞 㪪㪜㪧 㪦㪚㪫 㪥㪦㪭 㪛㪜㪚 㪉㪇㪇㪉 㪌 㪉 㪎 㪇 㪇 㪇 㪊 㪎 㪉 㪉㪇㪇㪊 㪈 㪊 㪍 㪉 㪉 㪈 㪇 㪇 㪉 㪇 㪊 㪉 㪉㪇㪇㪋 㪈㪈 㪋 㪈㪊 㪈㪋 㪈 㪇 㪉 㪉 㪇 㪉 㪌 㪉 㪉㪇㪇㪌 㪇 㪋 㪇 㪈㪊 㪉 㪇 㪈 㪇 㪈 㪉 㪇 㪈 ᐔဋ 㪋㪅㪇 㪊㪅㪎 㪍㪅㪊 㪏㪅㪌 㪈㪅㪏 㪉㪅㪇 㪇㪅㪏 㪇㪅㪌 㪇㪅㪏 㪈㪅㪏 㪊㪅㪏 㪈㪅㪏

(4)

(3)風下側の帯広で,強風の吹走開始とともに気温低 下,もしくは平均的な日変化パターンでは気温が上昇す る時間帯に気温が上昇せず,強風によって気温の上昇が 抑えられた事例をボラ型(B 型)とした。 (4)強風の開始前後に,気温と水蒸気圧に顕著な変化 がなかった事例は,顕著な変化なし型(N 型)とした。 さらに,山の標高よりもやや高い高度に安定層がある ときに,強いおろし風が吹走しやすいことから,対流圏 下層の安定層の有無を,札幌の気温の状態曲線から読み 取った。 事例 1(図 3-1)では,08 時に帯広で風向が南南東から 西北西に変化し,また,06 時から 11 時にかけて,気温 が 10℃以上上昇している。また,これと同時に,帯広 の水蒸気圧も下降している。帯広における,気温の急激 な上昇と水蒸気圧の下降は,上層からの温位が高く乾燥 した空気が,風下側の斜面で下降したことを示している と考えられる。このとき,岩見沢での降水は観測されて いない。高層気象観測による札幌と根室の状態曲線をみ ると,十勝風吹走前 09 時の札幌では 900hPa 付近に安定 層がみられた。このような特徴をもつ事例を Fd 型に分 類した。事例 1 のほか,事例 5,事例 14 が同様の特徴を もっており,これらの事例も Fd 型に分類された。 事例 8(図 3-2)では,08 時に帯広で風向の変化と共に 気温の上昇があり,その後,水蒸気圧の下降もみられる。 このとき岩見沢で降水があり,高層気象観測による札幌 の状態曲線で,対流圏下層に安定層が認められる。帯広 における気温の上昇と水蒸気量の低下は,山越え気流の 断熱昇温によるものと考えられる。このような特徴をも つ事例を Fw 型に分類した。事例 8 のほか,事例 2,事例 4,事例 18,事例 21,事例 23,事例 25 が Fw 型に分類さ れた。 事例 11(図 3-3)では,気温は,日変化パターンで上 昇しておらず,夕方,西風系の風が吹き始めた時刻から の気温の下降幅が大きい。また,水蒸気圧も徐々に下降 している。これは,風上側に溜まった寒気が,西風系の 山越え気流によって,帯広に向かって移流したものと考 えられる。このような特徴をもつ事例をB型に分類した。 事例 11 のほか,事例 6,事例 9,事例,15,事例 17 が B 型に分類された。 しかしながら,十勝風吹走前と吹走時で,気温変化や 水蒸気量の変化に目立った特長のない事例も見受けられ た,例えば,事例 22(図 3-4)では,気温は日変化パター ンを示し,水蒸気圧もほぼ一定である。このような事例 は N 型に分類した。N 型に分類された事例は,事例 22 を 含む 11 事例であった。 おろし風には,吹走前に比べて吹走後に風下側で気温が 高くなるフェーン型と,吹走前に比べて吹走後に風下側 で気温が低くなるボラ型に分けられる(吉野,1976)。お ろし風が吹く際に起こるフェーン現象には,飽和した空 気塊が湿潤断熱減率にしたがって気温を下げながら風上 側の山の斜面に沿って上昇し,山を越えてからは乾燥断 熱減率にしたがって気温を上げながら斜面を下降するこ とで,風下側で気温が上昇する場合と,風上側の空気塊 が湿っていなくとも山頂から山麓まで下降するときに, 乾 燥 断 熱 減 率 で 気 温 が 上 昇 す る 場 合 が あ る( 山 岸, 2002)。一方,ボラ型のおろし風では,風下側では,ボ ラが吹く前より気温も湿度も下降する。力学的にみれば 両者とも同じメカニズムによって気温上昇を生じるが, ボラは風上側の気塊が非常に低いので,斜面に沿って下 降するときに断熱昇温をしていても,風下山麓では,風 が吹き出す前より気温が下降する(吉野,1989)。 以上のようなおろし風の特徴から,「十勝風」の 26 事 例を分類するために,十勝風吹走時の帯広ならびに風上 側にあたる岩見沢の,気温,風向・風速の時系列図と水 蒸気圧の時系列図(図 3)を作成した。これらの図をも とに,それぞれの事例を以下の 4 種類に分類した。 (1)風下側の帯広で,強風の吹走開始とともに急激な 気温上昇と水蒸気圧の低下があり,風上側の岩見沢で降 水あった事例を降水フェーン型(Fw 型)とした。 (2)風下側の帯広で,強風の吹走開始とともに急激な 気温上昇と水蒸気圧の低下がみられ,風上側の岩見沢で 降水がなかった事例を無降水フェーン型(Fd型)とした。 㘑ะ ⊒↢㗫ᐲ䋨࿁䋩

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表 2 風向別強風発生頻度

(5)

以上の分類結果を,表 4 にまとめた。その結果,Fw 型 が 7 事例(27%),Fd 型が 3 事例(12%),B 型が 5 事例 (19%),N 型が 11 事例(42%)となった。吹走時に気温 の上昇を伴う,Fw 型と Fd 型の合計の出現頻度は,26 事 例中 10 事例と全体の 38%であった。 3. 3 十勝平野の風向分布からみた十勝風の特徴 帯広において,十勝風が吹走しているときに,十勝平 野全体ではどのような風が吹いているのかを確かめるた め,十勝地方のアメダス 18 地点(図 1)の観測値を使用 して,26 事例について強風吹走時間を平均した,風向・ 風速分布図(図 4)を作成した。 十勝風の吹走傾向から,アメダス観測点 18 地点のう ち,事例ごとの風向のばらつきが大きい 3 地点(陸別・ 糠平・広尾)を除く 15 地点を以下の 3 地域に分けた。 地域 A(十勝平野北側):上士幌・足寄・本別 地域 B(十勝平野中央):鹿追・新得・駒場・池田・芽 室・帯広・糠内・浦幌・大津 地域 C(十勝平野南側):上札内・更別・大樹 A ∼ C の地域ごとの風向・風速の分布から,十勝平野 における十勝風の吹走パターンを,以下のⅠ型∼Ⅳ型に 分類した。 (1)Ⅰ型(南北発散型):地域 A では地域 B に比べて西 よりの風が吹き,地域 C では地域 B に比べて北よりの風 が吹くパターン。事例 1,2,8,12,21,25 が当てはまる。 (2)Ⅱ型(南発散型):地域 C では地域 B に比べて北よ りの風が吹くが,地域 A において風向のばらつきが大き いパターン。事例 5,6,7,11,14,16,17,19,20,22, 24,26 が当てはまる。 (3)Ⅲ型(北発散型):地域 A において,地域 B に比べ て西よりの風が吹き,地域 C では地域 B とほぼ同じ風向 の風が吹くパターン。事例3,4,13,15,18が当てはまる。 表 3 十勝風の事例

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(6)

図 3 代表的な事例の気温・風・水蒸気圧の時間変化    実線:帯広 破線:岩見沢 点線:帯広と岩見沢の差    風向・風速は上が帯広,下が岩見沢 長い矢羽が 1m/s,旗印が 5m/s を示す í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour         

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 2 4 6 8       22 24 Hour  図 3 -1. 事例 1(Fd 型) 十勝風継続時間は 11 時∼ 18 時        

Vapor Pressure [hPa]

 2 4 6 8  2 4 6 8 2 22 24 Hour  í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour  図 3 -2. 事例 8(Fw 型) 十勝風継続時間は 09 時∼ 13 時 í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour         

Vapor Pressure [hPa]

 2 4 6 8  2 4 6 8 2 22 24 Hour  図 3 -3. 事例 11(B 型) 十勝風継続時間は 18 時∼ 23 時 í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour         

Vapor Pressure [hPa]

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く傾向が明瞭である。事例 5(図 4-5),事例 16(図 4-16) では,大樹において,北よりの風が吹く傾向がみられな いが,他の地点では,Ⅱ型の特徴がみられる。 事例 3(図 4-3),事例 4(図 4-4),事例 13(図 4-13),事 例 15(図 4-15),事例 18(図 4-18)において,地域 A にお いてⅢ型の特徴がみられる。 事例 9(図 4-9),事例 10(図 4-10),事例 23(図 4-23) からは,I 型∼Ⅲ型の特徴に当てはまる風向分布の傾向 を読み取ることができなかった。 3. 4 リチャードソン数からみた十勝風の特徴 3.3 で分類された十勝風の分布パターンには,大気の 安定度が強風の性質や,風向・風速の分布に影響すると 考えられる。そこで,帯広のウインドプロファイラによ る風速の観測データと,札幌の高層気象観測による気温 観測結果から求めた温位を使用して,安定度の指標とな (4)Ⅳ型:Ⅰ型∼Ⅲ型にみられる特徴がないもの。事 例 9,10,23 が当てはまる。 事例 2(図 4-2),事例 12(図 4-12),事例 25(図 4-25) においては,地域 A で西よりの風が吹き,地域 C で北よ りの風が吹く傾向が明瞭である。事例 1(図 4-1)では地 域 C における傾向が不明瞭ではあるが,地域 C の中で もっとも風速の大きい上札内において,地域 B と比べ, 北よりの風が吹いていることからⅠ型とした。事例8(図 4 -8)では,大樹においては,北よりの風が吹く傾向がみ られないが,他の地点ではⅠ型の特徴がみられる。事例 21(図 4-21)では地域 A の本別で,西よりの風が吹く傾 向がみられないが,他の地点ではⅠ型の特徴がみられる。 事例 6(図 4-6),事例 7(図 4-7),事例 11(図 4-11), 事例 14(図 4-14),事例 17(図 4-17),事例 19(図 4-19), 事例 20(図 4-20),事例 22(図 4-22),事例 24(図 4-24), 事例 26(図 4-26)においては,地域 C で北よりの風が吹

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表 4 十勝風の事例の分類 気温 +:吹走時に気温上昇,−:吹走時に気温下降,N:吹走時の気温は日変化パターン 水蒸気圧 −:吹走時に下降あり,N:吹走時に下降なし 安定層 ◎:明瞭な安定層あり,○:弱い安定層あり,×:安定層なし 分類 Fw:降水フェーン,Fd:無降水フェーン,B:ボラ,N:特別な変化なし 網掛けは,分類時に着目した要素

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3. 5 2002 年 6 月 9 日の事例 事例 2(2002 年 6 月 9 日)は帯広では Fw 型の強風が吹 いた。十勝地方の風向・風速の分布をみると,Ⅰ型の風 向分布を示しており(図 4-2),またリチャードソン数は 2.7 と,比較的安定な場となっている。また,この事例 における,気温,風の時間変化を図 5 に,ウインドプロ ファイラデータを図 6 に示す。 図 6 によれば,09 日の 02 ∼ 04 時に強い下降流が現れ ている。ウインドプロファイラで強い下降流を示すとき は降水の可能性があり,同時刻に帯広では降水を観測し ている。その後,05 時頃から地表付近の風向が変化し始 め,時間が進むにつれて風向の境界線が上空へ移動して いる。これは,前線が通過したことを現しており,実際 に寒冷前線が通過していた。その後,徐々に風速が増し 20 時に風速 10m/s を越えた。以降 1 ∼ 2 時間間隔で上昇 流と下降流が繰り返される,という現象が起こる。風速 10 m/s 以上の時間(09 日 20 時,10 日 10 時,13 時,14 時, 17 時,21 時,22 時)は全て下降流が現れている。これら の上昇流と下降流の繰り返しは,周期 1 時間∼ 2 時間程 度の山岳波動を検出したものと考えられ,また,6 月 10 日 09 時の気象衛星の可視画像(図 7)には明瞭な波状雲 がみられることから,ハイドローリックジャンプ現象 (跳ね水現象)の発生を示唆している。 4 考 察 4. 1 十勝風の性質と風向分布パターンの関係 本研究で抽出された十勝風の事例のうち,フェーンの 性質をもつ Fw 型と Fd 型は,26 事例中 10 事例と全体の 38%であった。残りの 62%は,吹走時にフェーン現象 による気温の上昇を伴わないものであった。そこで,十 勝風の性質と風向分布パターンの関係を表 6 に示した。 表 6 から,Fw 型の場合,風向分布はⅠ型に,Fd 型,B 型, N 型では,風向分布はⅡ型になる傾向があることがわか る。Fw 型では,斜面を滑昇した風上側の空気塊が,風 下側の比較的安定した場の状態で南北に発散したものと 考えることができる。一方,Fd 型や B 型では,風下側の 発散が,Ⅲ型よりも強いことが引き金となり,海側への 発散が引き起こされたものと考えることができる。おろ し風で,ハイドローリックジャンプ現象を伴う場合,強 風域の風下側では,逆風(剥離流)の領域が表れる。ウ インドプロファイラにおいて波動現象が明瞭であった事 例 2(図 6-1,6-2)において,風下風系にハードローリッ クジャップの結果とみられる 2 つの強風のピークを読み 取ることができる(図 4-2)。第一強風域が帯広付近で, るリチャードソン数(Richardson,1920)を求めた。リ チャードソン数は以下の式によって与えられる無次元数 である。



θ:温位〔K〕  U:風速〔m/s〕 z:高度〔m〕  g:重力加速度〔9.8m/s2 〕 リチャードソン数が小さい場合には上下の混合が起き やすい不安定な状態になり,リチャードソン数が大きい 場合には,上下の混合が起こりにくい安定な状態にな る。Ri ≧ 1 では安定,Ri < 1 では不安定で,傾度風の影 響が大きくなるとの指摘もある(Holland,1952;吉野, 1986)。さらに,Ri < 1/4 は乱流発達の基準として認識 されている(二宮,2000)。すなわち,∂θ/∂z は,温位の 差による対流の発生のしやすさのパラメータであり,力 石・蓬田(2006)が指摘しているような,日射による熱 対流が活発な場合には,この値が小さいものになり Ri の値も小さくなる。∂U/∂z は,下層と上層の風の鉛直 シアーの大きさのパラメータであり,鉛直シアーが大き いときにこのパラメータが大きくなるため,Ri の値が小 さくなる。リチャードソン数が表す不安定な場とは,上 層と下層の温位の差が小さく,上層と下層の風速の差が 大きい状態である。 リチャードソン数を計算するにあたって,鉛直方向の 風速差は帯広におけるウインドプロファイラ観測の高度 49 m の観測値と高度 1614m の観測値を使用した。49m は,帯広におけるウインドプロファイラ観測の最下層の 観測高度,1614m は下層から 6 層目にあたる観測高度で, 対流圏下層を代表する 850hPa 面にほぼ対応するレベル である。しかしながら,ウインドプロファイラ観測では, 温位を求めるために必要な上空の気温の観測ができない ため,温位差は札幌における 12 時間おきの高層気象観 測から内挿して求めた高度 49m の気温と高度 1614m の 気温を使用した。 各事例における,十勝風吹走時のリチャードソン数の 平均値を表 5 に示した。リチャードソン数は,事例によ るばらつきが大きいことがわかる。十勝風は,リチャー ドソン数からみると,幅広い成層状態のもとで吹走しう るが,リチャードソン数 1/4 以上の,乱流を発達させる ほど不安定ではない場で,鉛直シアーの小さい条件下で 吹くということが解明された。つまり,対流圏下層の安 定成層(ないしそれに近い成層)がその下方の強風を助 長しやすいタイプの局地風という解釈が可能であろう。

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図 4 風向・風速の平均図 矢羽は風向・風速,青線は風速を表す  図 4 -1 事例 1(Ⅰ型) 図 4 -2 事例 2(Ⅰ型) 図 4 -3 事例 3(Ⅲ型) 図 4 -4 事例 4(Ⅲ型) 図 4 -5 事例 5(Ⅳ型) 図 4 -6 事例 6(Ⅳ型) 図 4 -7 事例 7(Ⅳ型) 図 4 -8 事例 5(Ⅰ型) 図 4 -9 事例 9(Ⅳ型)

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図 4 風向・風速の平均図 矢羽は風向・風速,青線は風速を表す 図 4 -10 事例 10(Ⅳ型) 図 4 -11 事例 11(Ⅱ型) 図 4 -12 事例 12(Ⅰ型)   ੐଀ 㧔 ဳ㧕 図 4 -13 事例 13(Ⅲ型) 図 4 -14 事例 14(Ⅱ型) 図 4 -15 事例 15(Ⅲ型) 図 4 -16 事例 16(Ⅱ型) 図 4 -17 事例 17(Ⅱ型) 図 4 -18 事例 18(Ⅲ型)

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図 4 風向・風速の平均図 矢羽は風向・風速,青線は風速を表す ੐ ੐଀ 図 4 -19 事例 19(Ⅱ型) 図 4 -20 事例 20(Ⅱ型) 図 4 -21 事例 21(Ⅰ型) 図 4 -22 事例 22(Ⅱ型) 図 4 -23 事例 23(Ⅳ型) 図 4 -24 事例 24(Ⅱ型) 図 4 -25 事例 25(Ⅰ型) 図 4 -26 事例 26(Ⅱ型)

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4. 2 鉛直安定度と風向分布パターンの関係 リチャードソン数と風向分布パターンの関係を表 7 に 示した。表 7 より,リチャードソン数が 1 よりも小さく 上下の混合がおきやすいやや不安定な場合はⅢ型,リ チャードソン数が 3 以上で非常に安定しており,上下の 混合が極めて起こりにくい場合はⅡ型,リチャードソン 数が 1 ∼ 3 の間のやや安定な場合はⅠ型になる傾向があ ることが読み取れる。Ⅰ型・Ⅲ型とⅡ型の大きな違いは, 帯広と風下側の強風域である。Ⅰ型・Ⅲ型では,浦幌と 大津が風下側の強風域となっているが,Ⅱ型では,上札 内や大樹が風下側の強風域になっている。これは,Ⅰ型・ Ⅲ型では,強風が十勝平野を吹走するときに風向があま り変化しないことを意味する。一方Ⅱ型では,十勝平野 を吹走するときに,日高山脈の山すそに沿って,南向き に風向が変化することを示している。対流圏下層の場が 安定な場合,風が鞍部の狩勝峠に集中するため,鞍部南 側の日高山脈の東斜面を滑降する風はⅠ型・Ⅲ型に比べ 弱くなるものと考えられる。その結果,十勝平野に吹き 下りた風が,南方向に発散するものと推定される。Ⅱ型 で,風下側の気温と水蒸気量に顕著な変化がみられない 事例が多いこととも,強風を吹かせる空気塊が,標高の 低い鞍部を越えたためであると考えることができる。一 方,Ⅰ型・Ⅲ型では,風の鞍部への集中はみられるもの の,日高山脈の尾根を越えた風が東斜面を下降するた め,十勝平野でも南方向への発散が起こりにくいと考え られる。また,Ⅰ型・Ⅲ型においては,風が鞍部だけで なく尾根全体を越えるため,Ⅱ型にくらべ,標高の高い 場所を越える気流によって,フェーン現象が明瞭化する と考えることができる。 4. 3 850hPa の高度,風と風向分布パターンの関係 NCEP/NCAR 再解析データの日平均値を用いて,十 他の事例よりやや風下側に現れ,第二強風域が沿岸の大 津付近に認められる。狩勝峠と第一強風域の間,および 両強風域間には,剥離層の逆風こそ観測されていないも のの,比較的弱風な地域が現れている。このことは,山 岳波動が風下でやや長波のハイドローリックジャンプを 形成し,帯広付近および沿岸部で風害の恐れが高まるこ とを示唆している。 ⴫ ฦ੐଀ 䊥 ᢙ ੐଀⇟ภ 䊥䉼䊞䊷䊄䉸䊮ᢙ 㪈 㪍㪅㪇 㪉 㪉㪅㪎 㪊 㪈㪅㪉 㪋 㪇㪅㪋 㪌 㪇㪅㪍 㪍 㪉㪊㪅㪏 㪎 㪏㪌㪅㪌 㪏 㪈㪅㪏 㪐 㪇㪅㪎 㪈㪇 㪇㪅㪎 㪈㪈 㪈㪊㪅㪉 㪈㪉 㪉㪅㪎 㪈㪊 㪇㪅㪎 㪈㪋 㪋㪉㪅㪐 㪈㪌 㪇㪅㪐 㪈㪍 㪈㪐㪏㪅㪎 㪈㪎 㪈㪅㪌 㪈㪏 㪇㪅㪎 㪈㪐 㪉㪅㪈 㪉㪇 㪊㪇㪅㪐 㪉㪈 㪈㪏㪅㪈 㪉㪉 㪌㪌㪅㪉 㪉㪊 㪈㪅㪍 㪉㪋 㪋㪎㪅㪏 㪉㪌 㪉㪅㪉 㪉㪍 㪌㪅㪐 表 5 各事例のリチャードソン数 高度 49m と高度 1614m の観測値から求めた。 í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour  í í         Temperature [deg C]  2 4 6 8       22 24 Hour  図 5 事例 2(2002 年 6 月 9 日∼ 10 日)の気温・風の時間変化

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図 7 2002 年 6 月 10 日 09 時の気象衛星可視画像    明瞭な波状雲がみられる。(高知大学気象情報ページより)

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表 6 十勝風の性質と風向・風速の分布パターンの関係 それぞれの型・パターンに当てはまる事例数

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勝風の風向分布パターンごとに,850hPa 面の風向・風 速・ 高 度 場 の 合 成 図 を 作 成 し た( 図 8)。 Ⅰ 型 で は 850hPa 面の擾乱の中心は他の型にくらべ,十勝地方に 近いが,擾乱の規模は小さい。Ⅱ型とⅢ型をくらべると, Ⅲ型の方が擾乱の中心が北寄りである。十勝平野付近の 気圧傾度は,Ⅱ型が,他の型に比べてやや小さい。北海 道を吹く 850hPa 面の一般風の風向は,Ⅰ型・Ⅱ型では 北西風,Ⅲ型は西北西の風である。ボラ型はⅡ型にほぼ 限定されるが,上層に寒気を伴う北西風が流入していた こと,ならびにその上空寒気の風下滑降の際の方向性が 「南発散」に寄与していたことが解明された。 Ⅱ型が他の型よりも 850hPa の気圧傾度がやや小さい ことは,他の型よりも,気圧傾度によって吹く風を弱め る方向に働き,これが,風を鞍部に集中しやすくしてい るのではないかと考えられる。一方,Ⅰ型やⅢ型では, 850 hPa 面において,気圧傾度によって吹く風がⅡ型よ りも強いため,風が鞍部だけでなく,標高の高い尾根を 越えるのではないかと考えられる。これらの気圧傾度に よって吹く 850hPa の風が,山を越えた風下側の十勝平 野の地上風の風向に影響を与えたものと考えることがで きる。 5 まとめ 以上の解析結果から,以下のことが明らかになった。 (1)十勝風は,リチャードソン数 1/4 以上の,乱流が 発達するほど不安定ではない,鉛直シアーが比較的小さ い条件下で,吹走することがわかった。 (2)十勝地方の風向・風速の分布パターンから十勝風 吹走のメカニズムを 3 種類に分けることができた。 ①Ⅰ型十勝風(フェーン型):風下側での気温上昇を 伴うフェーンの性質をもつ強風で,リチャードソン数が 1 ∼ 3 程度の,比較的安定な場のときに吹く。十勝平野 において,南北への水平発散がみられる。山越え気流は 鞍部に集中するものの,尾根全体にわたって強い山越え 気流が発生していると推定される。十勝平野を吹きぬけ た強風は,水平収束や水平発散がほとんどみられず,そ 表 7 リチャードソン数と風向分布の関係 ⴫ 䊥 ᢙ 㘑 ಽᏓ 㑐ଥ 䊥䉼䊞䊷䊄䉸䊮ᢙ䋨

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(16)

のまま太平洋に向かって吹き出す。 ②Ⅱ型十勝風(地峡風型):風下側での気温上昇をと もなわない強風で,リチャードソン数が 3 以上の非常に 安定な場のときに吹く。十勝平野において,南側への明 瞭な水平発散がみられる。鞍部の狩勝峠に強い山越え気 流が集中する地峡風の性質が強くあらわれている。十勝 平野を吹き抜ける強風は,日高山脈の山麓に沿って風向 を変化させてから太平洋に向かって吹き出す。また,ボ ラの性質をもつ強風もⅡ型に分類された。 ③Ⅲ型十勝風(不安定型):850hPa の風速が大きく, 風向が西北西のときに吹く強風。フェーンの性質を伴う 場合と伴わない場合がある。リチャードソン数が 1/4 ∼ 1 程度のやや不安定な場のときに吹く。発生メカニズム はⅠ型に似ているが,十勝平野の南側への水平発散が不 明瞭である。 (3)ウインドプロファイラデータから,フェーン型十 勝風発生時に,山岳波動とみられる鉛直流の時間変動を 抽出することができた。この時間変動は,ハイドロー リックジャンプ現象の発生によるものと考えられる。風 下で発生するやや長波のハイドローリックジャンプが形 成されることにより,帯広付近および沿岸部で風害の恐 れが高いことを示唆している。 以上の結果から,十勝風は,対流圏下層のリチャード ソン数から求められる安定度の違いによって局地風とし ての性質が異なり,また,十勝平野の中で,強風が吹く 地域が南北にシフトすることが明らかになった。しかし ながら,不安定型の強風については,フェーンの性質を もつ場合ともたない場合があり,両者の違いがどのよう にして決まるのかを明らかにするための解析を進めてい く必要がある。また,ウインドプロファイラデータを活 用することで,これまでの地上の風向・風速の観測では 解明することが難しかった,局地風のメカニズムの理解 に,新たな知見を加えることが可能であると考えられ る。 謝辞 本稿のまとめにあたり帝京大学の谷治正孝教授には大変貴 重な多くのご助言を賜わりました。ここに深く感謝の意を表 明いたします。 荒川正一(2001):『局地風のいろいろ』成山堂書店,149p. Holland, J.Z.(1952) : The diffusion problem in hilly terrain. Air

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参照

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