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大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践

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Academic year: 2021

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大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践 神 戸 芸 術 工 科 大 学 紀 要「 芸 術 工 学 2 0 1 8 」 ( 共 同 研 究 ) )

大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践

STUDY AND PRACTICE FOR DESIGN INCUBATION UNDER UNIVERSITY BRAND

………. 田頭 章徳 芸術工学部プロダクト・インテリアデザイン学科 助教 見明 暢 大学院芸術工学研究科 准教授 山本 忠宏 芸術工学部まんが表現学科 助教 池内 宏行 元・芸術工学部プロダクト・インテリアデザイン学科 実習助手 宮谷 直子 芸術工学部プロダクト・インテリアデザイン学科 実習助手

Akinori TAGASHIRA Department of Product and Interior Design, School of Art and Design, Assistant Professor

Nobu MIAKE Graduate School of Arts and Design, Associate Professor

Tadahiro YAMAMOTO Department of Manga Media, School of Art and Design, Assistant Professor

Hiroyuki IKEUCHI Department of Product and Interior Design, School of Art and Design, Former Assistant Naoko MIYATANI Department of Product and Interior Design, School of Art and Design, Assistant

………. 要旨 日本のデザイン教育は、学生や学生の作品を市場に結びつ ける段階まではカバーできておらず、デザインインキュベー ションという視点においてヨーロッパのデザイン先進国から 大きく遅れを取っている状況にある。 本研究では、デザインインキュベーションセンター立ち上 げを目指して、先例を実践している大学の調査を行う。また、 作品を商品として完成させるプロセスを実践し検証すること を通して、教育プログラムとしての可能性も検討する。 4 月のミラノでの展示会出展、6 月の神戸での展示会開催な どを経て、継続的に展示会出展を含む活動を行なっているこ との成果を確認できた。 デザイン先進国では、国柄や文化に合った形で大学や学生 が市場と繋がる取り組みを積極的に行っている。 調査を通じて、日本でも独自のデザイン・インキュベーシ ョンを推進していく上で参考となる事例を確認できた。 Summary

In Japanese design education, educational institutions can not cover the stage of linking student and student work to the market. From the viewpoint of design incubation, Japan is significantly behind the design advanced countries of Europe.

In this study, in order to set up the Design Incubation Center, we will conduct a survey of universities that practice precedents.And we also consider possibilities as an educational program through practicing and verifying the process of completing a work as a product.

After having exhibited in Milan in April 2017 and holding an exhibition in Kobe in June, We confirmed the result of continuing activities including participation in the exhibition.

In advanced countries in the design, universities and students are actively engaged in activities linked to the market in a way that suits nationalities and cultures. Through the survey, we have confirmed cases that serve as reference for promoting unique design incubation in Japan.

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大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践 神 戸 芸 術 工 科 大 学 紀 要「 芸 術 工 学 2 0 1 8 」( 共 同 研 究 ) 1) 背景と目的 海 外 の デ ザ イ ン の 大 学 で は 、「 商 品 化 」「 販 売 」「 起 業 」 と い っ た 、 学 生 の 作 品 を 市 場 と 結 び つ け る 段 階 ま で を デ ザ イ ン 教 育 に 組 み 込 ん で い る ケ ー ス が 多 数 存 在 す る が 、 日 本 で は ほ と ん ど 見 ら れ ず 、 日 本 の デ ザ イ ン 教 育 は 、 こ の 部 分 に お い て 大 き く 遅 れ を 取 っ て い る 状 況 に あ る 。 本 研 究 で は 、 翌 年 度 以 降 の デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン セ ン タ ー の 立 ち 上 げ を 視 野 に 入 れ て 、 デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン の 先 例 を 実 践 し て い る 大 学 の 調 査 や 、 大 学 か ら の デ ザ イ ン の 発 信 と 、 商 品 を 市 場 へ 流 通 さ せ る た め に 作 品 を 商 品 と し て 完 成 さ せ る プ ロ セ ス を 実 践 し 検 証 す る こ と を 通 し て 、 教 育 プ ロ グ ラ ム と し て の 可 能 性 も 持 っ た デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン セ ン タ ー を 立 ち 上 げ る た め の 、 実 現 可 能 性 を 持 っ た 計 画 案 の 作 成 を 目 指 す 。 2) 研究方法 デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン の 先 行 事 例 を 有 す る 大 学 に つ い て 調 査 し 、 情 報 を 収 集 す る 。 デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン セ ン タ ー 立 ち 上 げ に 必 要 な 知 見 を 蓄 積 し て い く た め に 、 ブ ラ ン ド 発 信 の 実 践 も 行 う 。 世 界 的 に 認 知 さ れ 、 ブ ラ ン ド 価 値 を 持 つ 「 デ ザ イ ン ソ イ ル 」 を 軸 と し て 考 え 、4 月のミラノサロー ネ 出 展 な ど の 活 動 を 継 続 し 、 ブ ラ ン ド 価 値 の 維 持 を 図 る と と も に 生 産 体 制 も 考 慮 し な が ら 作 品 制 作 を 進 め る 。 立 ち 上 げ 時 に 訴 求 力 の あ る も の を 発 信 で き る よ う 準 備 を す る こ と が 必 要 で あ る た め 、 デ ザ イ ン ソ イ ル の 過 去 の 作 品 を 学 生 と と も に 「 商 品 」 と し て 再 開 発 す る 。 こ の 、「 作 品 」を「 商 品 」に 仕 上 げ て い く プ ロ セ ス に 大 き な 学 び が あ り 、 デ ザ イ ン イ ン キ ュ ベ ー シ ョ ン に と っ て 重 要 な プ ロ セ ス で あ る 。 3) ミラノでの展示会出展と神戸での展示会開催 2017 年 4 月 に ミ ラ ノ で 開 催 さ れ た VENTURA LAMBRATE 2017 に出展を果たした。今回は、「GOOD LACK」というテーマを設定し、ものにとってあまり歓迎 されることではない「欠ける」「無くなる」という状態に 着目した。例えば折れた棒にも別の使い道があるように、 失うことが新しい価値につながる場面がある。穴が開いた り、底が外れたり、何かを失って初めて気がつく発見から インスピレーションを受け、ものの一部が無くなることで 生まれる機能を探し出し、家具の新しい可能性として提示 した作品5 点を展示した(写真 1)。今年度も、VENTURA LAMBRATE の各種展示の中で、世界各国の大学が展示 を行う「VENTURA ACADEMIES」という枠での出展と なった(写真2)。 写真1 VENTURA ACADEMIES への出展作品 写真2 VENTURA ACADEMIES での展示風景

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大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践 神 戸 芸 術 工 科 大 学 紀 要「 芸 術 工 学 2 0 1 8 」( 共 同 研 究 )

また、VENTURA LAMBRATE 2017 と同時期にミラノ で「SaloneSatellite 20 years of new creativity」という 展示会が開催された。この展示会は、若手の登竜門とも呼 ばれる展示会「SaloneSatellite」の 20 周年を記念し、過 去の出展作品の中から選ばれた作品が一堂に会する展示 会である。ここに、これまでのDESIGN SOIL の作品か ら11 点が出展作品として選ばれ、展示を果たし(写真 3、 4)、同時に出版された記念作品集にも掲載された。11 点 もの作品展示は、ひとつのグループとしては最大数の選出 であった。この展示会は、錚々たる著名なデザイナーの作 品が展示される記念碑的な一大イベントであり、継続した 活動があったからこそ実現した快挙である。

写真3「SaloneSatellite 20 years of new creativity」出展 作品

写真4「SaloneSatellite 20 years of new creativity」会場

5 月に学内のプロダクト・インテリアデザイン学科工房 で報告会を開催し、新メンバーの募集を行った。 6 月には新神戸にある竹中大工道具館で、VENTURA ACADEMIES 出展作品と、これまでの DESIGN SOIL の 作品から選んだ作品、合わせて46 点を展示する「神戸芸 術工科大学デザインソイル展」を開催した(写真5)。 写真5 竹中大工道具館での展示会 会期中には、スウェーデンの洗練された木工技術をベー スに、クリエイティブなプロジェクトに取り組むスウェー デンのヨーテボリ大学ステネビー校木工家具デザインコ ースの教員と学生が来日し、竹中大工道具館の展示に訪れ、 本学学生ともワークショップなどを通して交流した(写真 6)。DESIGN SOIL の活動、クリエイティビティや作品 の質が評価され、コラボレーションの打診を受けた。 写真6 本学におけるヨーテボリ大学ステネビー校とのワークシ ョップの様子

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大学ブランドでのデザインインキュベーションのための調査と実践 神 戸 芸 術 工 科 大 学 紀 要「 芸 術 工 学 2 0 1 8 」( 共 同 研 究 ) 4) 先行事例の調査 先行事例として、2010 年に視察したシンガポール国 立大学デザインインキュベーションセンターの D.Lab ブ ランドの展開が先駆的である。学生の優れた作品が、大学 独自のブランド-D.Lab-の商品として、大学内の工房で生 産、梱包され、世界各国の小売店を通して市販されている。 大学の研究という閉じた領域だけでデザインを完結させ るのではなく、D.Lab ブランドの商品を展示会だけでなく 見本市などにも出展し、さらに市場に流通させる事で、 D.Lab という大学ブランドの価値を向上させ、さらに大学 のブランド価値をも向上させていくという戦略は革新的 である。 海外の大学において、「商品化」「販売」「起業」とい った、学生の作品を市場と結びつける段階までをデザイン 教育に組み込んでいるケースが多数存在する。 スイスのローザンヌ美術大学(ECAL)では、大学が優 秀な学生をプロモーション面だけでなく資金面でも集中 的にバックアップし、スターとして育てることで強固な大 学ブランドを確立することに成功している。そうして育て たデザイナーやクリエイターたちが母校で教鞭を執る。学 生たちは、若くして成功した憧れのデザイナーの教えを真 剣に学ぶ、という好循環を生み出している。今では世界的 な ス タ ー デ ザ イ ナ ー と な っ た デ ザ イ ン ス タ ジ オ 「BIG GAME」などが好例である。 ドイツのカールスルーエ造形大学では、優秀な学生作品 を数量限定の「作品」として生産し、「kkaarrllss」とい うブランド名で展示、販売する活動を行っていた。この売 上が、卒業する学生たちの起業資金、活動資金として、彼 らがデザイナーとして生きていくための第一歩を支援す る役割を担っていた。同じくドイツのブルグ・ギービヒェ ンシュタイン芸術大学では、「自身の作品をショップ店頭 で販売する」ことを授業の一環として課している。これは、 学生が卒業後にデザイナーとして独り立ちするための実 践的な教育として位置付けられている。 またオランダの多くの大学では、デザインの大学に限ら ず経営学など起業するノウハウを基礎教養的に教えてい たり、デザイナーの必須スキルとして認識され、専門的に 学ぶ分野となっている。 5) まとめ ヨーロッパでは、デザイナーは大きな企業のインハウス デザイナーとしてではなく、個人や少人数のデザインスタ ジオなどのかたちで活動することが多い。ヨーロッパの大 学では学生が独力でも生きていくことができるようにす るためのサポートを積極的に行っているのは、このような 国柄や文化的な背景があるためであると考えられる。一方、 日本では長らくデザイナーはメーカーのインハウスデザ イナーとして「就職」するケースが大多数を占めていた。 このため、個人で活動をしていきたい学生を支援する体制 はまだまだ不十分である。デザイナー個人に注目が集まる ようになってきた時代にあって、企業に所属することなく 個人や少人数でデザイナーとして活動することを志す優 秀な学生を、デザインインキュベーションという形で在学 中から支援することは、学生の活躍を強力な後押しとなる。 また、大学のプロモーションとしても非常に高い効果を得 られるということは、ヨーロッパの大学の事例で確認でき る。今後、日本の社会形態にも適応した、大学としてのデ ザインインキュベーションが求められていくだろう。 参考文献 田頭章徳、久慈達也、見明暢、柊伸江、岡田準人、「「大 学ブランド」のブランディングを軸としたデザイン活動 の研究」、『神戸芸術工科大学紀要2011』、2011 年

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