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Réflexion sur la prononciation à l'occasion d'une discussion dans un group work

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Academic year: 2021

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Réflexion sur la prononciation à l’occasion d’une discussion dans

un group work

大山大樹 (大阪市立大学非常勤講師)

Résumé

Dans une classe nombreuse, il est presque impossible d’enseigner la prononciation à chaque apprenant en raison des différences de niveau et de motivation. C’est pourquoi Oyama (2019) a présenté une façon, « Pair work en group work », pour l’apprentissage autonome de la prononciation en classe. Avec cette méthode, les apprenants ont chacun à leur tour l’occasion de ne pas participer à l’activitié. D’un côté, l’analyse a montré que cette méthode était efficace pour la réfléxion individuelle ; d’un autre côté, cette méthode laissait à désirer. Un apprenant n’a pas partagé la réflexion avec les autres. Donc, le but de cet article est de présenter une façon efficace de partager la réflexion en groupe pour réfléchir en profondeur et de diverses manières. Dans ce but, nous avons donné l’occasion de discuter directement des questions de prononciation après le « Pair work en group work ». Nous avons analysé un group work de débutants qui ont été filmés. L’analyse a montré que cette occasion était efficace. À cette occasion, les apprenants ont réfléchi sur la prononciation en groupe en discutant à propos de la prononciation.

 大人数の授業では,レベルや目標がことなる学習者一人ひとりに合わせて発音指導す ることは難しい。そこで,大山(2019)は授業内における発音の協働的学習法として「グ ループ形式でペアワーク」を提案した。この方法は,リフレクションを促すために活動 に参加しなくてもよい機会をあえて組み込んだものである。分析の結果,個別のリフレ クションを促しうることが分かったが,一方で,個別のリフレクションがグループ全体 に共有されないという問題点も明らかになった。そこで,本研究は「グループ形式でペ アワーク」の後に,発音についての疑問を直接話し合う機会を設けることを提案する。 フランス語初級クラスでの実践を録画記録し,やりとりの分析をおこなった結果,学習 者たちは課題をすすめるなかで抱いた疑問をその機会を利用して共有し,リフレクショ ンを促し合っていた。この結果から,本研究は,直接的に疑問を話し合う機会を設ける ことが個別のリフレクションの共有を促す有効な手段であると主張する。

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Mots clés

prononciation, group work, réflexion, Pair work en group work

発音,グループワーク,リフレクション,グループ形式でペアワーク

1 はじめに

 コミュニカティブ・アプローチが広まり,「ヨーロッパ言語共通参照枠」(Cadre européen commun de référence pour les langues : CECR)の考え方が一般的になりつつある なかで,外国語の授業は大きく変わった。教師が一方的に説明するという伝統的な知識 伝達型のスタイルは否定され,学習者の主体性・協働性・自律性を重視する方法が導入 された。具体的に,多くの授業でペアワークやグループワークがおこなわれ,会話だけ でなく,独りの作業と考えられてきた読解(舘岡, 2005)や作文(池田, 2004)も他者と の協働のなかで学ぶ方法が実践された。  そのようななか,発音指導は簡略化される傾向にある(菊地, 2014 : 14-16)。そして, 発音指導に関する研究は,教師が正しい発音方法を教えるという考え方を前提とし,習 得の困難な点などを明らかにする基礎研究や,歌などを使った指導法を開発する応用研 究などがおこなわれている。しかし,どうすれば教師がより良く教えられるのかが問わ れるばかりで,発音を他者との協働のなかで学ぶという視点からの研究はほとんどおこ なわれていない。  この問題意識のもと,大山(2019)は「グループ形式でペアワーク」というグループ ワークのデザインをもちいて発音の協働的学習法の開発を試みた。この方法では,3 人 グループでペアワークをするなど人数を意図的に余らせることで参加しなくてもよい機 会を作り出し,その機会を利用してリフレクションを促す。検証の結果,その機会の有 効性が明らかになったが,一方で問題点も明らかになった。それは個々のリフレクショ ンがグループ全体に共有されなかったことである。個々のリフレクションは,当該の活 動に関係しつつも独自の内容を含むため,他のメンバーに新たな気づきをもたらし,リ フレクションを促す可能性を有している。ゆえに,共有されることが望ましいと考えら れる。  そこで,本研究は個々のリフレクションをグループ全体に共有させる方法を提案する ことを目的とする。具体的に,グループワーク後に,発音についての疑問を直接的に話 し合う機会を設け,その効果を検証する。  以下では,まず先行研究を概観し本研究の位置づけを示す(2 章)。次に分析データ の概要を述べたあと(3 章),いくつかの事例をとりあげ,発音についての疑問を直接 話し合う機会がリフレクションを促しうることを論証する(4 章)。そして分析結果から, フランス語教育への示唆を得る(5 章)。

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2 先行研究 2.1 発音指導  発音指導についての研究は,学習者が授業内で教師から正しい発音方法を教わり,授 業外で自律的に学ぶという考えを前提としておこなわれている。例えば,基礎的な研究 として,学習者にとって困難な点を明らかにするもの(Sauzedde, 2014)や,発音の上 手な学習者が使うストラテジーを明らかにするもの(井上, 2014)がある。また,応用 的な研究として,シャンソン(西山, 2017)や,数詞(山根, 2018)を使う方法,学習項 目に沿って指導していく方法(菊地, 2014)が提案されている。これらの研究にくわえて, 授業外での自律的学習を目指して,学習者のリスニングの困難な点を明らかにするもの (北村, 2018)や,正確な発音の知識を得るための自習用教材を作成するもの(田口, 2018)がある。  一方,学習者たちが授業内で発音を協働的に学ぶ方法については十分な研究がおこな われていない。しかし,これは理論と実践の両面から要請されるものである。まず理論 面について,CECR の理論的基盤である構築主義と複言語・複文化主義に基づくならば, 目標とする発音のレベルは学習者で違って良い。そして,正しい発音とは口を模範的に 動かすことではなく,その場のコミュニケーションの目的を十分に達成できるかどうか で判定される。すなわち,学習者には他者との相互行為のなかで発音を学ぶとともに, リフレクションしながら自律的に学ぶことが求められる。次に実践面について,クラス が少人数なら学習者のレベルや目標を考慮しつつ全体指導と個別指導を組み合わせるこ とが可能だろう。しかし,それは大人数のクラスでは現実的に不可能である。さらに, たとえ少人数であっても,学習者は自律的に学ぶことが求められる状況になりつつある。 なぜなら,既に述べたように,発音指導の内容も時間も簡略化される傾向にあり,発音 の規則をほとんど扱わないテキストもあるからだ。  以上の理由から,発音の協働的学習法の開発は喫緊の課題だと考えらえる。 2.2 グループ形式でペアワークの効果と課題  上に述べた問題意識のもと,筆者は「グループ形式でペアワーク」(大山, 2016)を発 音練習に応用し,その効果を検証した(大山, 2019)。この方法は,リフレクションを促 すために,活動に参加しなくてもよい機会をあえて組み込んだものである(図 1)。検 証の結果,他者のつまずきをきっかけに自分もつぶやく,他者の発話をきっかけにプリ ントを見返す,他者の発音をまねるという行為などの行為が観察され,リフレクション の促進に有効であることが分かった。  一方,この方法の問題点も明らかになった。それは,参加しなくてもよい機会におこ なわれた個々のリフレクションが,グループ全体に共有されなかったことである。個々 のリフレクションは当該の活動の内容をきっかけとしておこなわれるため,活動に何か

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しらの関連を持ちつつ,独自の視点を含む。そのため,グループ全体に共有されると, 他のメンバーに新たな気づきを与え,リフレクションを促し得ると考えられる。なお, グループ形式でペアワークのデザインの開発段階において,個々のリフレクションの共 有によるグループ全体のリフレクションの促進は,狙いのひとつとして想定されていた (大山, 2017a)1  そこで,本研究はこの問題点を改善するために,グループ形式でペアワークの後に, 発音についての疑問などを直接的に話し合う機会を設けた。具体的に,「発音相談タイム」 と称して,発音について分からない箇所や疑問などをグループで直接的に話し合うよう に指示を出した。このように発音についてメタ的に会話する機会を課題の進行とは別に 用意することで,個別のリフレクションが全体に共有されるのではないかと考えた。 3 データと分析方法 3.1 データの概要  分析するデータは,2019 年 4 月下旬(前期 2 回目),筆者が担当するフランス語初級 クラスにおいて,360 度撮影可能なビデオカメラ 1 台で記録したものである。学習者た ちに研究内容を書面と口頭で説明し,同意を得たうえで撮影をおこなった。このクラス はフランス語の応用能力の育成を目的とし,授業の大半がグループワークで構成されて いる。受講者は 20 人であり,各グループは 3 人か 4 人で作られ,誰と組むかは授業ご とに教師がランダムに決める。机は移動可能な 1 人用のものであり,学習者たちはグルー プを作ってから授業の最後まで向かい合って座るように指示される(図 2)。なお,分 析するグループは,撮影に同意した学習者たちの中からランダムに選ばれた。  授業が始まると,まず教師がランダムに番号をふってグループを作り,前回の復習が おこなわれた。次にグループでテキスト(図 3)の分析と和訳をおこなった。それから, 図 1 : グループ形式でペアワーク(大山, 2017b : 165) 1 ただし,最初に想定されたのは,発話する役割がまわってきたときに,そのパフォーマンスを通 しておこなわれる間接的な共有であった(大山, 2017a)。

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教師の解説をはさんで,クラス全体でテキストの発音練習をおこなった。具体的には音 声を聞いたあと,全体で何度も発音を確認し,途中で発音の仕方や注意点が説明された。 続いて,発音相談タイムの 1 回目が約 2 分間おこなわれた。そして,グループ形式でペ アワークによる発音練習をしたあと,2 回目の発音相談タイムが約 1 分間おこなわれた。 グループ形式でペアワークの前にも発音相談タイムを設けたのは,疑問を持ったのが, クラス全体で練習した時なのか,自分たちで練習をした時なのかを明確にするためであ る。 3.2 分析方法  分析には,学習者たちの発語を書き起こしたもの(トランスクリプション)を使う。 学習者は A,B,C で示し,各々の発語を記述する。改行は,話し手が交代するときか, 発語が長いために一行では収まらないときにおこなう。行数は「01」のように表し,言 及するときは「01 行目」,複数の行にまたがるときは「01-02 行目」のように記す。なお, 表 1 のトランスクリプションの記号は,会話分析で一般的に使われているものにくわえ て,西阪(1997)を参考にした。 図 2 : 座席配置 図 3 : テキスト

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4 分析

4.1 発音相談タイム(1 回目)

 クラス全体での発音練習後,約 2 分間の発音相談タイムが指示されると,C が⑤ « Quelle est votre profession ? » を指で押さえながら,« r » の発音が難しいと感じている ことを述べる(05, 07 行目)。

 このやりとりをきっかけに,学習者たちは « Quelle est votre profession ?» をひと単語 ずつ,互いに確認しながら何度か発音する。そして « votre » まで進んだとき,C が « r » の発音の疑問を具体的に述べる。それは,どれぐらい摩擦させればよいのかが分からな いことと(01 行目),« r » が口蓋垂摩擦音ではなく日本語のラ行の音に聞こえる時があ るという疑問であった(02-03 行目)。 表 1 : トランスクリプションの記号 記号 説 明 [ オーヴァーラップの開始位置。 (数字) 括弧内の数字の秒数の間隙があることを示す。 (.) 0.1 秒前後の僅かな間隙があることを示す。 : 音が引き延ばされていることを示す。数は相対的な長さを示す。 hh 呼気音。多くの場合は笑い声で,数は相対的な長さを示す。 > < 記号内の発語が他の部分に比べて速いことを示す。 ? 直前部分が上昇調のイントネーションを持つことを示す。 X 聞き取り不可能であったことを示す。 = 連続する発語に付され,切れ目なく連続していることを示す。

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 学習者たちは « r » が口蓋垂摩擦音であることを今まで以上に意識しながら « profession » を互いに確認するように何度も発音する。そこに,C が « r » の発音の関 連から,⑦ « Paris » について疑問を投げかける。ここで,C と A が « r » を日本語のラ 行の音で発音している一方(01-04 行目),B は « r » を口蓋垂摩擦音で発音しながら, ラ行の音ではないだろうと指摘する(04 行目)。  B の指摘を受け,それぞれが口蓋垂摩擦音を意識して « Paris » をくり返し発音したあ と,« Quelle est votre profession ? » の発音練習に戻る。このように « r » を意識しながら 各自が発音しているところで,A が « r » を発音することについての感想を少し冗談交 じりに述べ(01 行目),学習者たちは笑い合う。

 学習者たちは互いに確認するように « profession » を約 19 秒間発音する。そして,少 しの沈黙をはさんで,今度は約 22 秒間各自が別々に練習をおこなう。そこに,教師か

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らグループ形式でペアワークを始める指示が入る。  以上,1 回目の発音相談タイムのやりとりを見てきた。断片から明らかなように,学 習者たちはクラス全体の練習のなかで再認識した « r » の発音についての疑問を直接的 に話し合い,リフレクションをおこなっていた。 4.2 グループ形式でペアワーク直後  グループでの発音練習は,④~⑦を使って,1 人が質問を,もう 1 人が回答を読むか たちでおこなわれ,役割を交代しながら 1 週目はゆっくり丁寧に,2 週目は可能な限り 相手の顔を見て発音するように指示された。表 2 は参加しなくてもよい機会にいる学習 者のふるまいの概要を示したものである。表から明らかなように,学習者たちはこの機 会を利用し,リフレクションをおこなっている。  グループ形式でペアワーク後,質問する役割だった C がこの日初めて⑦の発音の困 難さに言及する(01 行目)。これに対して,A はまず笑いで反応し,« Je suis » を発音 する(02 行目)。そして,B や C が応じると(03-04 行目),③を指さしながら「なんか さっきがドゥやったから」と,自分が « Je suis de » の « de » を「ドゥ」と発音した根拠 を説明する(05-06 行目) 表 2 : 参加しなくてもよい学習者のふるまいの概要 回 学習者 ふるまいの概要 1 C ・途中から一緒に発音したり,口を動かす ・発音に困った A や B と一緒に悩む 2 A ・ C が « étudiante » を 2 回発音すると,1 回目は小声で, 2 回目は口だけを動かし発音する ・B と C が発音するたびに,うなずく 3 B ・A と C の会話に合わせて口を動かす 4 C ・A が悩むと一緒に悩み,プリントを見る 5 A ・基本的に B と C の顔を見ている ・C がつまると視線をプリントへ向ける 6 B ・口を動かして,« profession » の練習をする

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 このあと約 5 秒の沈黙があり,B が再び「ジュシドゥ」と発音した直後,A は個々の 文ではなく,テキスト全体の感想を述べる。そして,この A の発話に応じるように,B もテキスト全体の感想を述べる。この直後,クラスの他のグループも発音練習が終わっ たため,教師が 2 回目の発音相談タイムを指示する。  以上,グループ形式でペアワーク直後の隙間時間におこなわれたやりとりを見てきた。 4.1 で確認したように,1 回目の発音相談タイムの最後に,学習者たちは約 22 秒間別々 に練習をおこなっていた。このことから,断片 5 の « Je suis de » の発音についての疑問 は,グループ形式でペアワークのなかで生まれたものだと考えられる。また,断片 6 に 見られたテキスト全体への感想は,自分たちで発音してみたからこそ出てきたものだと 考えられる。 4.3 発音相談タイム(2 回目)  すべてのグループが発音練習を終えたことを確認した教師は,1 分間,あらためて発 音について疑問などを話し合うように指示する。すると,C がすぐさま断片 5 で言及し た⑦を再び取り上げる(01,03 行目)。しかし,そこに B が④の « Vous vous appelez comment ? » から順番に発音し始める(04 行目)。すると,この B の発話に合わせて, A と C もいっしょに発音し始める。

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 3 人がほとんど重なるようにテキストを読み進め,最後の « Je suis de Paris. » を発音 し始める。B がまず発音し(01 行目),それに C がつづく。ただし,« de » を「デ」と 発音する(02 行目)。そこに B が再び「ジュシドゥ」と発音すると(02 行目),C はそ れを聞いて「ドゥ」と発音し直す(03 行目)。  この後,学習者たちは各々 « Paris » の発音をくり返す。そして,« r » の発音について, 力が入りすぎてしまうために頷くように頭が動いてしまうという感想を共有する。  以上,2 回目の発音相談タイムのやりとりを見てきた。学習者たちは,この機会を利 用して,グループ形式でペアワーク直後に共有した « Je suis de » の発音を改めて確認す るとともに,1 回目の発音相談タイムの時に話し合った « r » の発音についても改めて

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感想を共有し,その発音の困難さに言及した。  ここまでの分析から明らかなように,学習者たちは発音相談タイム,すなわち発音に ついて直接的に話し合える機会を利用して疑問を共有し,リフレクションを促し合って いた。この結果をふまえ,次章では発音相談タイムの教育的効果を考察することで,フ ランス語教育への示唆を得る。 5 教育的示唆  発音についての疑問を直接的に話し合う機会の教育的効果を考察するうえで,まず注 目したいのが,« de » の発音の変化である。B も C もクラス全体での発音練習では「ドゥ」 と発音していたが,録画記録によるとグループ形式でペアワークでは「デ」と発音して いる。その後,B は断片 5 の A の指摘によって「ドゥ」であることを意識化した。一方, C は断片 8 の B の発話によって意識化できた。つまり,B と C は最初は偶然 « de » を 「ドゥ」と発音していたに過ぎず,発音について直接的に話し合うことによって, « de » の発音がはじめて分かったと言える。このことは,ただ音声をくり返すだけでは, その発音の仕方を意識化できるわけではないことを示している。  次に注目したいのが,テキスト全体に対する感想が共有されている点である。まず, 断片 6 における A の「ジュマペルしかすらすらでてこん」(01 行目)や B の「なんか 全部おんなじに見えてくる」(04 行目)から明らかなように,このやりとりをとおして, 学習者たちは自分たちの発音の現状を確認している。そして,断片 9 の « r » の発音の 仕方についてのやりとりから明らかなように,自分たちの今の課題を確認している。学 習者たちは日ごろから自分たちの発音の現状や課題を意識しているわけではない。つま り,このような発音についてのメタ的な会話によって,現状と課題がはじめて認識され たと言える。  グループ形式でペアワーク中は,学習者たちは課題の進行を優先するため,自分が抱 いた疑問などをその場で共有することは少ないと考えられる。くわえて,分析したグルー プの学習者たちは,グループ形式でペアワークが終わったあと,みずから発音について 話し合いを始めた(断片 5,6)。このように積極的に疑問を共有しあう学習者がいる一 方で,指示された活動以外では関わろうとしない学習者がいることも確かである。その ため,グループワークのデザインに,発音についての疑問を直接的に話し合う機会を組 み込むことは,発音についてのリフレクションを促すという点において有効であると考 えられる。  以上の考察から,発音についての疑問を直接的に話し合う機会は,グループ形式でペ アワークにおける個々のリフレクションを全体に共有させる仕掛けとして有効であると 言える。

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6 まとめ  本研究の目的は,グループ形式でペアワークにおける参加しなくてもよい機会でおこ なわれた個々のリフレクションを,グループ全体に共有させる方法を提案することで あった。具体的に,活動の直後に発音についての疑問を直接的に話し合う機会を設ける ことが有効かどうかを検証した。フランス語初級クラスでの実践をビデオカメラで記録 し,やりとりを分析した結果,直接的に話し合う機会において,学習者たちは活動のな かで抱いた疑問や感想を共有し,リフレクションを促し合っていた。この結果から,直 接的に疑問を話し合う機会を設けることは,個々のリフレクションをグループ全体に共 有させるための有効な手段のひとつであると考えられる。  学習者によって発音のレベルや目標はことなる。そして,大人数の授業では,教師が 学習者一人ひとりに合わせて発音の指導をおこなうことは難しい。そのため,我々教師 は発音の仕方を指導するだけではなく,学習者たちが発音について自律的に学んでいけ るように導く必要がある。これまでの研究では授業外での自習というかたちで自律的学 習が言及されてきた。その一方,本研究は授業内のグループワークのなかでそれを実現 することを目ざす立場からの研究であった。本研究の成果は,グループワークにおいて, 発音についての疑問を直接的に話し合わせる機会を用意することが,そのための有効な 手段のひとつであることを示している。  ただし,本研究が扱ったのは,教科書のテキストをペアで発音するという活動のグルー プワークだけである。他のさまざまな内容のグループワークにおいても効果があるのか について,今後の検証を必要とする。くわえて,分析したグループの学習者たちは,グ ループ形式でペアワークが終わったあと,みずから発音について話し合うような積極的 な学習者たちであった。一方,指示された活動以外では関わろうとしない学習者たちが いることも確かである。そのような学習者たちのグループに,本研究が提案した方法が どのような効果をもたらすのかについても,今後の検証を必要とする。 参照文献 池田玲子(2004).「日本語学習における学習者同士の相互助言(ピア・レスポンス)」 『日本語学』23(1), 36-50. 井上美穂(2014).「フランス語の発音上達のための発音学習ストラテジー」Revue japonaise de didactique du français 9(1-2), 39-59.

菊地歌子(2014).『フランス語発音指導法入門』,大阪:関西大学出版部.

北村亜矢子(2018).「フランス語の聞き取りにおけるリエゾン,アンシェヌマ ン , s c h w a 脱 落 の 問 題 ― 自 律 型 学 習 プ ロ グ ラ ム モ デ ル の 構 築 に 向 け て ― 」 『Lingua』28, 35-50.

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西阪仰(1997).『相互行為分析という視点――文化と心の社会学的記述』,東京:金子 書房. 西山雄二(2017).「シャンソンによるフランス語学習法」『首都大学東京教職課程紀 要』1, 91-97. 大山大樹(2016).「グループワークにおいて発言の順番を待っている学習者のふりかえ りの実際――日本語会話クラスの相互行為分析から――」Мовні і концептуальні картини світу 58, 133-138. 大山大樹(2017a).「グループワークにおける発語していない学習者のインタラクショ ンとリフレクティブ・グループワークの実践――フランス語クラスと日本語クラス の相互行為分析から――」,博士論文,大阪市立大学. 大山大樹(2017b).「グループワークにおける参加と不参加の繰り返しによるリフレク ションの生成」Мовні і концептуальні картини світу 60, 164-169. 大山大樹(2019).「グループワークにおける発音のリフレクション――不参加の機会に 着目して――」Revue japonaise de didactique du français 14(1), 53-65.

Sauzedde B.(2014). Difficulté des phonèmes vocaliques du français, Revue japonaise de didactique du français, 9(1-2), 97-112. 田口亜紀(2018).「フランス語初学者を対象とした発音指導」『共立女子大学・共立女 子短期大学総合文化研究所紀要』24, 41-51. 舘岡洋子(2005).『ひとりで読むことからピア・リーディングへ――日本語学習者の読 解過程と対話的協同学習』,神奈川:東海大学出版会. 山根祐佳(2018).「フランス語初学者の発音指導―30までの数字を使って―」『学術研 究:人文科学・社会科学編』66, 311-319.

参照

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