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持続可能な地下水の保全と利用の実現に向けた地下水汚染対策に求められるもの

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Academic year: 2021

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(1)巻 頭 言. 持続可能な地下水の保全と利用の実現に向けた 地下水汚染対策に求められるもの 公益社団法人 日本地下水学会 副会長 国際航業株式会社 フェロー 中島 誠  令和の時代が幕を開けた2019年 5 月に公益社団法人日本地下水学会の副会長を仰せつかってから,約 1 年半が過ぎました。昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック) により世界中で人々の健康や生活,社会・経済が大きく脅かされた激動の一年となりました。会員の皆 様の研究や仕事・学業におけるご苦労をお察しいたします。この感染症の拡大は日本地下水学会の活動 にも大きな影響を与え,春季大会や各委員会関係のイベントの開催をやむなく中止し,秋季講演会をオ ンライン開催に変更するというかたちになりました。新型コロナ感染症による影響は未だ収束の兆しが 見えておらず,2021年もコロナ禍で活動していくことになると思われますが,魅力ある学会活動を実現 できるよう理事会や常設委員会にて事業計画や活動方法について議論が行われています。近年,あらゆ ることにおいて「持続可能性」がキーワードとなっていますが,日本地下水学会にとっても「持続可能 な学会活動」の推進が重要なテーマとなっています。財務状況改善のために2021年度より正会員と特別 会員の年会費および購読費を値上げさせていただくこととなりましたが,ご理解いただきますようお願 いいたします。  さて,昨年は,地下水学に関係が深いものとして,水循環基本計画の初めての改訂が 6 月16日にあり ました。今後概ね 5 年間での重点的な取組として,流域マネジメントによる水循環イノベーション,健 全な水循環への取組を通じた安全・安心な社会の構築,次世代への健全な水循環による豊かな社会への 継承の三つが挙げられています。  土壌・地下水汚染対策に長年携わってきている技術者として,健全な水循環の維持又は回復に当たっ ての課題の一つとされている「持続可能な地下水の保全と利用」の観点から今後の地下水汚染対策のあ るべき姿について最近考えていることを述べさせていただきます。  地下水汚染については,環境基本法に基づき,水質汚濁防止法と土壌汚染対策法を中心に対策が行わ れてきています。1989年の水質汚濁防止法が改正により地下水汚染の未然防止,状況把握および汚染源 対策に関する規定が設けられ,飲用井戸等での地下水汚染の発覚を契機に地下水汚染機構を解明し,究 明した汚染源で汚染源対策をとるという対応がとられるようになりました。これに歩調を合わせて,地 下水中での汚染物質の挙動に関するデータや知見の蓄積,揮発性有機化合物や重金属等による地下水汚 染のメカニズムおよび調査・対策技術に関する研究や技術開発が大きく進展しました。2000年代に入る と,不動産としての土地の汚染という観点で土壌汚染問題がクローズアップされ,2003年に土壌汚染対 策法が施行されました。土壌汚染対策法における地下水汚染への対応は,潜在的な地下水汚染源である 土壌汚染の存在を把握し,その土壌汚染に起因して汚染された地下水を飲用井戸等から人が摂取(飲用) する可能性がある場合には地下水汚染が土壌汚染地から拡散しないよう土壌汚染対策を行うものです。 この土壌汚染対策法の施行によって,地下水汚染対策の姿は,地下水汚染の未然防止を図るとともに, 潜在的な地下水汚染源である土壌汚染の状況を把握し,飲用井戸等に地下水汚染が到達すると予測され る場合は汚染源対策を行う,汚染源対策を要しない地下水汚染については特に対策は求めず地下水質の ― 5 ―.

(2) 常時監視により状況を監視し続けるというかたちになりました。このような施策の変化にともなって, 研究や技術開発の対象も土壌汚染範囲を対象とした調査・対策に関わるものが中心となり,これらにつ いて大きく進展しました。一方で,地下水面下での汚染物質の挙動や広がりに関わるデータや知見の蓄 積に注がれる力が減ってしまったように思います。  水質汚濁防止法および土壌汚染対策法における地下水汚染対策では,いずれも地下水汚染による人の 健康被害の防止が目的とされ,飲用井戸等から汚染地下水を人が摂取(飲用)することがないようにす ることが求められています。裏を返せば,既設の飲用井戸等に地下水汚染が到達しないのであれば,土 壌汚染に起因して下流側に地下水汚染が拡散することを許容するということです。この考え方は,2019 年 4 月 1 日に改正土壌汚染対策法が完全施行され,土壌汚染対策時の目標濃度の考え方が導入されたこ とでより明確になりました。下流側に飲用井戸があった場合も,飲用井戸に到達した時点で地下水が汚 染されていなければよく,ある濃度レベルまでの地下水汚染がそれよりも上流側で拡散することは許容 されるようになりました。このようなリスクベースの考え方は欧米でも一般的であり,私自身,我が国 の土壌汚染対策もこのような考え方をとるようにすべきだと考えてきました。現存する人の健康リスク への対策という意味で非常に合理的で,汚染原因者や汚染された土地の所有者等に過度な負担を与えな いという意味でも正しい施策であるといえます。しかしながら,水循環基本法や水循環基本計画の趣旨 に合っているのかと言われると回答に困るところがあります。  水循環基本計画では,地下水汚染は地盤沈下,塩水化などとともに地下水障害の一つとされており, 地下水障害の防止を図りながら持続可能な地下水の保全と利用を推進することが求められています。持 続可能な地下水の保全と利用を考えると,現存する飲用井戸等に到達しないかたちであれば流域内で地 下水汚染が拡散し残存する状態であっても許容されてよいのか,将来世代がそこに飲用井戸等を設置し たりして地下水を利用し,健全な水循環による恵沢を享受することを阻害して問題はないのかというこ とを考えてみる必要があるように思います。他にも,飲用井戸等が存在していない地域で地下水を量 的,熱的または質的に利用する際に地下水汚染が残存していて利用上の問題はないのか,地下水の利用 に対する影響と地下水の保全に対する影響の両方を考えてみる必要があるように思います。2019年 4 月 1 日に施行された東京都の改正環境確保条例では,いち早く,健全な水循環を意識した地下水環境保全 の考え方が土壌汚染対策に取り入れられ,飲用等に地下水が利用されない地域でも地下水汚染の拡大防 止対策が求められるようになりました。今後,他の自治体でも同様の動きが出てくる可能性があると思 われます。  今後,持続可能な地下水の保全と利用を図る上で,流域内での水循環を意識したかたちで地下水汚染 対策を考えることが必要になってくるのではないかと思います。そのためには,その検討に資するため の地下水面下での広域的かつ詳細な汚染物質の挙動や地下水汚染の範囲・状況変化に関わるデータや知 見のさらなる蓄積,下流側に広がり長期間残留する地下水汚染の低コストかつ効果的な対策方法の開 発・実用化などが重要であり,地下水学を専門とする研究者や技術者の果たす役割も今まで以上に重要 になってくるのではないかと思います。. ― 6 ―.

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