持続可能な地下水の保全と利用の実現に向けた地下水汚染対策に求められるもの
2
0
0
全文
(2) 常時監視により状況を監視し続けるというかたちになりました。このような施策の変化にともなって, 研究や技術開発の対象も土壌汚染範囲を対象とした調査・対策に関わるものが中心となり,これらにつ いて大きく進展しました。一方で,地下水面下での汚染物質の挙動や広がりに関わるデータや知見の蓄 積に注がれる力が減ってしまったように思います。 水質汚濁防止法および土壌汚染対策法における地下水汚染対策では,いずれも地下水汚染による人の 健康被害の防止が目的とされ,飲用井戸等から汚染地下水を人が摂取(飲用)することがないようにす ることが求められています。裏を返せば,既設の飲用井戸等に地下水汚染が到達しないのであれば,土 壌汚染に起因して下流側に地下水汚染が拡散することを許容するということです。この考え方は,2019 年 4 月 1 日に改正土壌汚染対策法が完全施行され,土壌汚染対策時の目標濃度の考え方が導入されたこ とでより明確になりました。下流側に飲用井戸があった場合も,飲用井戸に到達した時点で地下水が汚 染されていなければよく,ある濃度レベルまでの地下水汚染がそれよりも上流側で拡散することは許容 されるようになりました。このようなリスクベースの考え方は欧米でも一般的であり,私自身,我が国 の土壌汚染対策もこのような考え方をとるようにすべきだと考えてきました。現存する人の健康リスク への対策という意味で非常に合理的で,汚染原因者や汚染された土地の所有者等に過度な負担を与えな いという意味でも正しい施策であるといえます。しかしながら,水循環基本法や水循環基本計画の趣旨 に合っているのかと言われると回答に困るところがあります。 水循環基本計画では,地下水汚染は地盤沈下,塩水化などとともに地下水障害の一つとされており, 地下水障害の防止を図りながら持続可能な地下水の保全と利用を推進することが求められています。持 続可能な地下水の保全と利用を考えると,現存する飲用井戸等に到達しないかたちであれば流域内で地 下水汚染が拡散し残存する状態であっても許容されてよいのか,将来世代がそこに飲用井戸等を設置し たりして地下水を利用し,健全な水循環による恵沢を享受することを阻害して問題はないのかというこ とを考えてみる必要があるように思います。他にも,飲用井戸等が存在していない地域で地下水を量 的,熱的または質的に利用する際に地下水汚染が残存していて利用上の問題はないのか,地下水の利用 に対する影響と地下水の保全に対する影響の両方を考えてみる必要があるように思います。2019年 4 月 1 日に施行された東京都の改正環境確保条例では,いち早く,健全な水循環を意識した地下水環境保全 の考え方が土壌汚染対策に取り入れられ,飲用等に地下水が利用されない地域でも地下水汚染の拡大防 止対策が求められるようになりました。今後,他の自治体でも同様の動きが出てくる可能性があると思 われます。 今後,持続可能な地下水の保全と利用を図る上で,流域内での水循環を意識したかたちで地下水汚染 対策を考えることが必要になってくるのではないかと思います。そのためには,その検討に資するため の地下水面下での広域的かつ詳細な汚染物質の挙動や地下水汚染の範囲・状況変化に関わるデータや知 見のさらなる蓄積,下流側に広がり長期間残留する地下水汚染の低コストかつ効果的な対策方法の開 発・実用化などが重要であり,地下水学を専門とする研究者や技術者の果たす役割も今まで以上に重要 になってくるのではないかと思います。. ― 6 ―.
(3)
関連したドキュメント
突然そのようなところに現れたことに驚いたので す。しかも、密教儀礼であればマンダラ制作儀礼
このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた
耐震性及び津波対策 作業性を確保するうえで必要な耐震機能を有するとともに,津波の遡上高さを
笹川平和財団・海洋政策研究所では、持続可能な社会の実現に向けて必要な海洋政策に関する研究と して、2019 年度より
さらに, 会計監査人が独立の立場を保持し, かつ, 適正な監査を実施してい るかを監視及び検証するとともに,
汚染水対策につきましては,建屋への地下 水流入を抑制するためサブドレンによる地下
Global warming of 1.5°C: An IPCC Special Report on the impacts of global warming of 1.5°C above pre-industrial levels and related global greenhouse gas
このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと