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教材面から見た現行の音楽教育の問題点 : (国際理解をめざす音楽教育とは) (<特集>「各教科における実践上の問題」)

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Academic year: 2021

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教材面から見た現行の音楽教育の問題点

(国際理解をめざす音楽教育とは)

芸術系音楽

鍋島史

I 、現行の音楽教育の問題点

1、日本の音楽教育の現状 日本における学校の音楽教育に、奇妙な現象がみられる。 それは 音楽の授業で扱われている教材や楽器が、本来の日本の音楽に基く ものではなく、明治時代に近代化政策o}一環として日本に取り入れ られた、欧米諸国の文明圏でつくられた音楽を中心としていること である。 例えば、歌唱曲も歌唱教材を始めとして、西欧の音楽の形 式を基礎とした音楽に、日本語の歌詞がつけられている曲が殆どで あり、その伴奏も大半ピアノが用いられており、生徒が演奏する楽 器は鍵盤--モニカやリコ-ダーなど、西欧で発明された楽器を基 礎として作られたものが中心である。 また、音楽の創作に際しても 西欧の音階構成を基礎とし、さらにそれを西欧で発明された五線に よる記譜法が用いられている`) そして、さらに私達音楽教師も、この五線による楽譜を用いて新 しい教材-の導入をはかるのが普通である。 ただ、歌唱の場合は口 頭伝承で教えることもあるが、楽器の演奏においては、まず、音符 を読んで(または歌って)聴かせ、そのメロディを覚えさせてから 演奏に移る方法が取られるoその時に用いる音符の読み方は、例え ば「ちょうちょう」をリコ-一ダーで吹かせる準備として、最初に音 符を読む時も、決して日本音名で"トホホヘニニトニホヘトトtJ' と読むのでなく、イタリア音名の"ソミミファレレドレミファソソ ・J"と読んで教えるのである。 これは、鑑賞教材としての日本の伝 統音楽すらでも、五線によって記譜するという弊害を生み出してい る。 このようにEl本の学校の音楽の授業では、もともと日本にあっ た音楽を教えている(習っている)のではなく、西欧から輸入した 音楽、あるいは西欧化した伝統音楽を、ほとんど人が「もともとど この国の音楽であったか?」という疑問すら持たずに「音楽とはこ ういうものだ」と思って教えたり、習ったりしているのが現状であ る。

(2)

-68-2、現在の子どもたちを取り巻く音楽的状況 それでは、現代の子どもたちが実際日常生活で聴いている、ある いは体験している音楽にはどのようなものがあるだろうか。 何年か前まではピアノあるいは電子鍵盤楽器を習うことが情操教 育の一環とされ、幼児期より音楽教室に通う子どもも少なくなかっ たOしかし、それも現在は比較的少なくなり、子どもたちの音楽体 験は、もっぱらマス・メディアを通した受動的体験となり、ポピュ ラーミュージックやロック、ラップなどそのジャンルを問わず流れ てくる音楽を聴取する形態へと変化した。 さらに、オ-ディオ機器 の発達とともに、CDやLDが簡単に手に入るようになり、子どもたち は、自分のお小追いでそれらを購入し、気軽に家庭で聴いている。 そして、それは家庭内に止まらず、少し買い物をしようと思い外出 すると、ス一一パーマーケットや書店など,あらゆる場所でこの種の 音楽がBGMとして流れており、簡単に耳にすることができるのであ る。 このように、現在では年齢制限なく、同じ音楽を全国レベルで 聴くことができるようになっている。 また、これとは逆に子どもたちは、地域独特の音楽体験もしてい る。 石川県輪島では名舟・白山神社の例大祭が毎年8月1日に取り 行われており、その仁恒こ名舟集落の男子のみに厳しく伝承されてき た御陣乗太鼓がある。 この御陣乗太鼓は、成人男子により打たれる ものであるが、しかし、この名舟田丁の子どもたちは、幼い頃は男女 を問わず打ち方を習っているのである。 その他にも高知県では、同 じく8月によさこい祭りが催されており、そこで踊られる鳴子踊り には老若男女問わず大勢の参加が見られるが、その中の8割近くを 占める20代前半までの若者の踊りは、参加グループごとに非常に個 性的で変化に富んでおり、自分たちの色をアピールすることに特徴 がみられる。 毎年その参加者を募る5月頃になると、中学生以上の 年齢の子どもたちは、どのグループに参加申し込みをするかという ことが、話題の中心を占める程である。 . このように、現在の子どもたちを取り巻く音楽的状況は、地域色 の濃いものから全国レベルのものまで、そのジャンルを問わず多種 多様であるoこれに対し、学校の音楽の授業は特にその方法や教材 面で、普段子どもたちが好んで聴取、あるいは体験している音楽と は大きなギャップがあるように思われる。

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-69-Tl、望ましい音楽の搾業とは(同際押解教育という民地から)

1、音楽における匝=摩交流の可能性 現代(特に日本では明治維新以後)は、産業や技術の発展にとも ない、人間が国境という境界を意識をしないで交流し得る時代であ るOそれは言い換えると、日本国内で日本人同士が交流をすること でなく(もちろんそのような場合もあるが)、日本人が日本以外の 国の人間と交流することである。 そして、それはまた政治、経済、 文化等の枠にとらわれることなく、あらゆる分野おいて行われてお り、その交流手段も数限りなくあり、可能性は広がって行く。 しか し、世界各国にはそれぞれの土地に根ざした多くの民族が存在する のであるから、当然``ことば"の違いなど、交流に際して大きな障 害となるものが存在するのも事実である。 世界を舞台にした場合、 ``ことば'の違いが真の王朝翠を難しくしていることは否めないが、 しかし、言葉を、音楽を使って表現することによって、国際交流を 大いに促進していると言えるのではないだろうか。 なぜなら、音楽 を手段として表現される感情内容には、各民族間である程度共通な 要素が認められるからである。 さらに、音楽、美術等芸術全般で国 際交流が行われる前提条件として、他国民に自国の文化の意味、歴 史等を説明する必要がある場合もあり、国際理解の基礎である自国 の文化理解をすることで、国境を越えての会話が可能になると思わ れる。 そして、その手段として音楽で会話をするためには、今日本 に存在する音楽の頁の意味を知り、日本の文化として捉える必要が あろう。 2、音楽教育における国際理解のあり方 すでに述べたように、現行の古楽の授業における西欧音楽中心主 義的な傾l・l那ま、一方では、日本は西欧から輸入した音楽に日本語の 歌詞をっけて歌うなど、一種の混合文化を作って来たとして、日本 の音楽の発展的変遷として、背走的に捉えることができるかもしれ ないが、他国を知る前に、まず、その基本媒体である自分について 知り、アイデンティティを確立することが要求される国際理解の見 地に立っならば、純粋に日本の風土に根ざした民族がっくり出した 日本伝統音楽が、音楽の授業では重きを置かれていない(近年まで 学校教材としてほとんど使用されていないばかりか、指導できる吉

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-70-楽教師がほとんどいない、などの点から推察される)点や、口常時 に耳にする音楽がいかなる種頬のものであるか、という疑問さえ抱 いていない点で、大きな問題があるのではないかと思う. ) そして、日本の伝統音楽の時代的な変遷も含め、音楽の授業にお ける国際Il的抑)あり方を考えると、音楽は人類共通の財産であると 同時にその人類の生活文化から生まれたものであり、私をはじめと する音楽教師は、たとえそれらの間に違いはあつても傍劣はない、 という捉え方を前提として、教材の改革を行うなど、授業のそのも のを根本的に見直す必要があるように思われる。 同時に、世界各地 に伝統的に存在している音楽に対し、柏定の価LL研削ことらわれるこ となく、耳を開いて受容する態度を養うことを要求されるであろう この見地に&-て考えると、現行の、西欧音楽のみを基礎として成 り立っている教材構成や持薬方法には、反省すべき点が多く感じら れる。、さらに、現在の、音楽教員養成機関の中心をなす音楽大学の 西欧音楽中心主義についても見直されるべき時期にきているのでは ないかと思われるo 音楽は、2It! 蛸己には独立した教科としての存続すら危ぶまれてい る現在、新しい時代の音楽教育は、従来の技術面を強調する授業で はなく、国際理解、文化理解の一助としての役割を巣たすものでな ければならないと考える「、その意味でも、まず自国の文化遺産とし ての音楽を知ることから出発して、同心円的に周辺社会の、最終的 には世界の音楽へと目を向ける授業を構築したいと考えているt,

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