社
会
系
教
科
教
育
学
会
『社
会
系
教
科
教
育
学
研
究
』
第24
号 2012
(p.118-119)
【課
題研
究
報告
】
防
災を視点として地域的特色を追究する中学校社会科の授業構成
一地理的分野匚
身近な地域コミュニテ
ィの調査」を中心にー
(2012
年
2
月19
日
開
催)
本発表では,東日本大震災を契機として,自分 の生活の場である地域を災害への対応という視点 からとらえ直す社会科授業をめざした。中学校社 会科地理的分野「 ̄身近な地域の調査」単元におい て,匚防災」に関わる事象を中核に置き,身近な 地域の地域的特色及び地域コミュニティの特色を 追究するプランを開発・提案した。 本研究は人口構成の変化や災害に対する多元防 備の必要性の観点から,地域コミュニティの重要 度が増しているという立場をとる。本研究におけ る地域コミュニティは匚地域性」や匚共同性」を その基本的な構成要件とし,町内会に代表される 地縁団体や消防団のように地域に組織された機能 団体等が中核となって形成・維持されるものを想 定するO 住民の生活圏としての地域コミュニティには災 害リスクが蓄積している。災害は,市街地の地形 や位置,構造物や都市機能の集積状況などの災害 リスクに,地震や台風等の自然要因が加わったと きに発生することから,身近なところに潜む災害 リスクを認識させることを重視する必要がある。 また,地域コミュニティが機能することによって 実践されうる活動を通して,地域の環境改善を志 向し,「防災」の視点から地域コミュニティを形 成しようとする態度を育てたい。以上を踏まえ, 地域コミュニティを調査・分析する視点を考察し, 単元の学習内容を確定した。 地域コミュニティは,特定の目的や関心に応じ て成立するテーマコミュニティとは異なる。山崎 (2003)が「コミュニティは,社会生活関係の結 合化,複合化した全体的な包括的概念としてとら えていくべ総合的である。地域に関わる様々な事象が地域コきもの」と述べるように,その性格は -塩 満 貞 徳 (鹿児島市立紫原中学校) ミュニティとして向き合う対象となり得るととも に,地域コミュニティに関係する広範な世代の多 様なニーズに応える必要もある。地域コミュニティ は一般的に,地理的な範囲や公共性において,政 府や地方自治体等の匚公」と家庭や個人の匚私」 の匚中間]的なものとして,様々な機能を果たし てきた。阪神・淡路大震災や中越地震等をケース とする災害社会学に関する諸研究は,震災発生直 後や避難生活,復興事業の推進等において,地域 コミュニティの機能が発揮された事例を提供して いるが,地方自治体やボランティア, NPO組織 ではなく,地域コミュニティこそが担う機能とは 何だろうか。地域コミュニティの本質に「 ̄地域性」 と匚共同性」が位置付くことを踏まえれば,地域 コミュニティが依って立つ地域の空間を管理する 機能が浮かび上がってくる。有事に匚共同性]を 発揮する地域コミュニティでは,その構成員の間 に地域の課題や問題点が共有されている。この共 有を図るためには,平時から生活環境を把握し, 災害リスクを改善する実践が求められるのではな いだろうか。したがって,地域コミュニティを調 査・分析する視点を匚地域コミュニティ組織は生 活環境を管理する活動を実践しているか」と規定 した。単元開発にあたっては,地域コミュニティ 組織による住民の把握,危険箇所の把握,人的・ 物的資源の把握,生活環境を維持・向上させるた めの定期的な活動等の項目に関わる調査活動を組 み込むこととし,単元の学習内容を次のように整 理した。 剛災害発生の構造の理解 災害は匚人災」でもあり,クライシスマネージ メントにおける地域コミュニティの果たす役割が 重要であること。 (2)地域が抱えるリスクと災害の関係の理解 118−地域の構造(匚まち)のつくり)が災害状況と どのように関連しているか。 (3)地域コミュニティの特色の理解 ① 身近な地域には,どのような地域コミュニ ティ組織があるか。 ② 身近な地域における地域コミュニティ組織 は生活環境を管理する実践を行っているか。 (前述の視点に基づく調査・分析) なお,本研究では匚身近な地域」を中学校区規 模に設定した。単元目標および単元の展開の概略 を示す。 ●単元名:身近な地域コミュニティの調査 瑤単元目標 匚紫原地域は鹿児島市中心部に位置するシラス台 地上に広がる地域である。鹿児島市の人口急増に 伴い,昭和30年代以降,住宅地の開発が進んだ。 鹿児島市内において,シラス台地上の住宅造成が 最初に行われた場所が紫原地域である。現在では, 市内有数の住宅地として町丁別人口は最大を誇り, 大学や高等学校も立地する文教地区でもある。市 内中心部へは市営・民営のバス路線で結ばれ,運 行本数が多く,アクセスが容易である。防災の視 点からとらえると,道路幅員が狭い,避難所とし て機能する公共施設やオープンスペースの不足, 崩落危険性の高い崖などの危険リスクがある。地 域には,町内会やあいご会,地域PTA等,多様 な地縁型コミュニティ組織が存在し,活動方針や 年間計画に基づいた実践が行われているOしかし, 単独世帯を中心とする住民把握が困難である,組 織リーダーの世代交代が進まない,形骸化した活 動かおるなどの課題を抱えている」のように,身 近な地域の特色・地域コミュニティの特色を説明 することができる。 @単元の構成(全9時間) 第1次:鹿児島8.6豪雨災害(2時間) 「 ̄・鹿児島8.6校庭の地下に貯水槽が豪雨災害の概要あるのはなぜか」 ・鹿児島市中心平野鄙における浸水地域の拡大と シラス台地における住宅開発との関連 第2次: 匚災害への対応」を視点としたフィール ドワーク(2時間) 厂私たちの『まち』はどんなところか。どんなつ くりをしているか」 -・地形図による校区の概観(道路,オープンスペー ス,ビルの分布,公共機関の分布等の確認によ る校区における災害リスクの把握) ・地震発生を想定したフィールドワークの実施, 調査結果の整理 第3次:地域コミュニティのはたらき(1時間) 匚 『まち』は誰が管理・改善を行うのか」 ・第2次における調査結果の発表,意見交換 ・災害時において地域コミュニティの機能が発揮 された事例の検討(神戸市長田区真野地区,小 平谷市十二平地区,川口町相川地区) 第4次:「 ̄地域コミュニティ」を視点とした調査 活動(3時間) 匚身近な地域コミュニティを調査しよう」 ・地域コミュニティを調査・分析する視点に基づ くフィールドワークの準備,実施,調査結果の 整理 第5次:身近な地域の特色(1時間) 匚私たちの『まち』はどんなところか。そこには, どんな地域コミュニティがあるか」 ・ 匚災害への対応」の視点からみた身近な地域の 強みと弱み ・身近な地域における最優先課題とその対応 単元プランは匚防災」を中核として,他地域の 成功事例を組み込んだ内容である。災害発生の構 造の理解から,身近な地域の匚つくり」に関する フィールドワーク,地域コミュニティの機能の理 解,身近な地域コミュニティのフィールドワーク, 身近な地域及び地域コミュニティの特色のまとめ への過程を経る。先行実践では匚地域コミュニティ」 の調査・分析をねらいとするものはほとんど見ら れない。社会科授業において,地域の再生や活性 化の基盤はコミュニテに取り上げてよいのではないだろうかィにあることをより積極的。 〈参考文献〉 ・山崎丈夫(2003)『地域コミュニティ論一地域分権へ の協働の構図』自治体研究社i 40p. ・福与徳文(2011)『地域社会の機能と再生 農村社会 計画論』日本経済評論社, 149p. 119−