日本のODAと財政・財政投融資
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(2) ∫8. のトップ・ドナー期で,最大援:女直与国として. 融資は有償資金であるため,主として借款の財. のイニシアティヴを発揮する援助拡充期とされ. 源となり,贈与の財源とはなり得ない.出資国. る.. 債は国際機関への出資金に充てられることにな. 小浜[1992]では,日本の援助目的の歴史的. る9).この財源,援助形態という視点から,ま. 推移について,第1段階は,1954年に始まる賠. ず日本のODAの基本構造がどのようにして確. 償,コロンボ・プラン参加の時期,第2段階は. 立したかを明らかにする.その上で,その構造. インドに初めて円借款が供与された58年から. の下で,ODAがどのように変化してきたか, それはどのような要因によるものかを分析す. で,日本の輸出振興を目的とした援助期とする.. 第3段階は,60年代半ばからで,アジアにおけ る外交政策展開のための手段としての時期,第. る.. 4段階は77年,あるいは78年以降で,世界の経 済大国の責任としての援助が最も大きな目的と. 本稿では,ODAの実績(総額と援助形態別 の構成)に関しては1963年から2001年までを 見るが,1993年までは『財政金融統計月報』. なった時期とされる.ただし,80年代には. の国際収支特集各号の「わが国の発展途上国に. 「総合安全保障」確保のための手段,また大幅. 対する資金の流れ」の数値を10),94年以降は財. な経常収支黒字の還流の手段としての援助とい. 務省ホームページ「開発途上国に対する資金の. う視点も重視されるようになったとする6).. 流れについて」の数値を用いる.また,特に記. 前者は基本的に日本の国際経済における地位. さない限り,財政に関する数値は『財政統計』. とODAの規模に着目した時期区分と言え,後. 各年度版,財政投融資に関する数値は『財政金. 者は前述のように援助目的に着目しての整理で. 融統計月報』財政投融資特集各号による11).. あり,そこから日本のODAの地域的配分と前 者同様に日本の経済的地位も視野に入れている 7).. 9)国際機関への出資・拠出とその財源について,. 本稿では,財源とともに援助形態に着目して,. ODAの歴史的推移を見る.両者は強い関連を 持ち,一方の動きのみを見ていては,その動き. 行論では触れないが,国際機関への出資・拠出の 財源は一般会計と出資国債がその殆どを占める. 例えば1998年度の予算では,国際機関への出資・ 拠出2567億円のうち,一般会計が1190億円,出資. の意味するところを明らかにできないと考えら. 国債が1375億円,両者合計2565億円である. れるからである.ODAの主要な財源は一般会. (『ODA白書 1998年版』上巻P.104∼106).この 出資・拠出と両財源の関係について,85年度から. 計,財政投融資,出資国債であるが8),財政投. 6)小浜 [1992]P.26∼28.. 7)他に例えば『経済協力の現状と問題点 1983 年』では日本の経済協力について,1954∼64年を 戦後賠償を中心とする揺藍期,65∼77年を資金協 力,民間投資等の拡大期,78年以降を計画的拡大 期という時期区分をしている(P.121∼124).この. 時期区分は,前述の『ODA白丁』と基本的に同じ 内容と言える.また,国際社会全体での援助の歴 史的推移については白鳥[1995]P.15∼24を参照. 8)ODA事業予算には,一般:会計の他にこれら財. 投,出資国債等が含まれている.また,ODA事業 予算には過去の貸付分の回収金を含まないグロ ス・ベースとそれを含むネット・ベースがある.. 2001年度までの予算で見てみると(『ODA白書 各年版』),出資・拠出は時には大きな変動を示し つつ推移しているが,出資・拠出に充てられる一 般会計は,その変動に関係なく,緩やかな増加傾 向を示しつつ,安定的に推移し,出資・拠出の変 動には出資国債の増減で対応していることが読み 取れる.. 10)ただし,1979年から84年については対ドル. 為替レートが示されていないため,円表示での. ODA総額は79年,80年に関しては『ODA白書 1992年版』上巻P.88,81年から84年については 『ODA白書 1993年版』上巻P.116の数値を用い る.. 11)財政金融統計月報に関しては,「財政金融統 計月報ダウンロード」http://www.mof.go.jp/ kankou/zaikingedl.htmを用いた.なお, ODA実績 に関する統計は暦年,一般会計,財投に関する統 計は会計年度で,期間は厳密には一致しない..
(3) ∫9. しかし,ODAを歴史的に見ることは容易で はない.その最大の原因はODAが予算費目と. 出す日本のODAの基本構造がいかにして確立. して独立していないことにある.一般会計の主. されたかを見る.. 要経費別分類の経済協力費は主としてODAか ら成るが,ODAに含まれない国際機関への分. 日本の本格的な経済協力は1958年のインド. 担金や事務費が含まれており,その一方で文教. きた63年からODAの援助形態別の構成を見る と(表1参照),65年に貸付等の比率が急上昇 し,以後,70年代末まで45%以上で推移して. 費やエネルギー対策費の中にもODA関係費が 含まれている(片桐[1997]P.373∼374).財. 政投融資においては,ODAは殆どが使途別分. は96.4%である15).以下,こうした特徴を生み. に対する円借款に始まるが16),データを入手で. 類における貿易・経済協力費に含まれるが,例. いることが分かる.また,ODAの総額も63年 の1億3760万ドル,64年の1億1590万ドルから. えば2001年度では貿易・経済協力費(当初計. 65年には2億4380万ドルへと急増している.そ. 画)1兆5593億円に対し,ODA事業予算での. こで,まず64年から65年にかけての動きを分. 財政投融資等は6356億円に過ぎず12),貿易・経. 析する.. 済協力費の動向から財投によるODAの動向を. 援助形態ごとに具体的な額を見てみると,貸. 見ることはできない.そのため,財源の面から. 付等は1965年に前年の3750万ドル(再融資,. 歴史的にODAを分析する場合,厳密な分析は. 債権繰延べ分を除くと2590万ドル)から1億 4410万ドル(同じく8320万ドル)へと1億660 万ドル,1ドル=360円で383億7600万円(同. 極めて困難であり,本稿では,次節以下に示す ように方法を工夫しながら,財源,援助形態に 関する重要な傾向,要素を明らかにしたい. 2 基本構造の確立. じく5730万ドル,206億2800万円)の急増を示 した.この間,贈与は1350万ドル(48億6千万 円)しか増加していない.. 援助形態に関する日本のODAの重要な特徴 の1つとして贈与比率の低さが挙げられる.. この動きの背景にある財源に関しては具体的. 1998/99年の2ヵ年平均で見ると,約束額ベー. 動きから推測せざるを得ない部分が大きい.ま. スでDAC(Development Assistance Committee). ず,一般会計の経済協力費(1972年までは貿. 22ヵ国中7ヵ国が100.0%であるのに対し,日. 易振興及び経済協力費とされる)は前述のよう. 本は45.4%で最下位である.その結果,グラン. にODAと完全に一致するわけではないが,一 般会計によるODAのかなりの部分を含んでお り,その動向は一般会計を財源とするODAの 動きを強く反映している.その経済協力費は 64年の104億円から65年の124億円へと20億円. ト・エレメント13)も低く,10ヵ国が100.0%で あるのに対し,日本は83.6%で21位である14).. これらの特徴は,日本のODAにおいて借款の 比重が大きいことを示している.また,この他. なデータが得られず,一般会計や財政投融資の. にアンタイド比率が高いことも日本のODAの 重要な特徴の1つである.1999年の支出純額ベ ースで見ると,DAC平均83.8%に対して日本. そのため,この貸付等の伸びの財源は主とし. 12)『ODA白書 2001年版』P.140.. 15)『ODA白書 2000年版』資料編 図表一100.. 13)通常の民間銀行からの融資と比較して,貸 付条件が借り手である発展途上国にとってどれく. その他の日本のODAの特徴としては,供与額が世 界有数であること,その一方でGNP比は必ずしも 高くないこと,2国間援助の地域配分がアジア中心. らい優遇されたものであるかを示す指標. 14)『ODA白書 2000年前』資料編 図表98−1, 図表99.. の伸びを示したに過ぎない.. て財政投融資であると考えられる.そして,そ. であること等が挙げられる.. 16)『ODA白書 1994年版』上巻P12..
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(5) の当初計画の貿易・経済協力費は,1964年か. へと入る.高成長の下での経済成長→自然増収. ら65年にかけて,937億円から1219億円へと 282億円の伸びを記録している.しかし,財投 によるODAの具体的な規模とその伸びは確認. →積極財政→経済成長という好循環が国債不発. 行主義と積極財政を両立させていたが,65年 度の第3次補正予算ではついに赤字国債2750億. できない.. 円の発行に踏み切った(遠藤[1966]P.129,. そこで財政投融資の対象機関から,この時期. 153, 157).. の動きを見ることにする.財投資金を用いての. 一方,高成長の下で運用範囲を拡大させてい. ODA実施機関は,主として海外経済協力基金 (OECF)と日本輸出入銀行(輸銀)17)の2つで. た財投は,1961年度の拠出制年金制度の発足 や郵便貯金の規模拡大等,新規原資による規模. あった18).OECFは1961年に設立された円借款. の増加を受けて,さらに運用範囲を拡大させる. 実施機関であり19),65年に財政投融資による. ことになる.61年に設立されたOECFもそうし た新たな運用対象機関の1つである.また,50. OECFへの資金供給が初めて確認される.ただ し,この額は10億円に過ぎない(表2参照).. 年代には基盤i産業の整備を目標としていた財政. 一方で,輸銀は前述した58年のインドへの円 借款の実施機関でもあり,資金供給は64年か. 投融資だが,64年度の基本方針では,国際収. ら65年にかけて1162億円から1509億円へと. 加えられた(宮脇[1995]P.34∼36).この背. 347億円の伸びを記録している.そのため,こ. の時期の2国間ODAの貸付等の伸びは,輸銀. 景には,64年のIMF8条国への移行等による開 放体制への転換とともに,構造的不況を輸出の. によるところが大きいと考えられる.. 増進によってカバーしょうという意図があり. 次に,こうした動きの背景にある財政,財政. (遠藤[1966]P.154,162),輸銀を通しての. 投融資の状況を見てみよう.1950年代後半に 始まった高度成長は,60年の所得倍増計画, 62年の全国総合開発計画で加速されていった. ODA拡充は,この意図に沿ったものと言える.. が(片桐[1997]P.71),64年には構造的不況. 支改善に向けた輸出の振興が新たな目標として. その後,ODAの実施機i関としてOECFがそ の重要性を増していく.OECFへの財政投融資 による資金供給額も,1965年度には10億円だ. ったのが,68年度には200億円,75年度には 904億円へと急増する(表2参照).そして,75 17)金融上の援助を与えることにより,外国と の貿易を主とする経済の交流を促進するため,一 般の金融機関が行う輸出入及び海外投資に関する 金融を補完し,または奨励することを目的とした 政府系金融機関(『財政金融統計月報』第303号 「昭和52年度の財政投融資機関の概要」).. 18)OECFと輸銀は1999年に統合され,新たに 国際協力銀行が設立された.. 19)『ODA白書 1994年版』上巻P.13.途上 国・地域の産業の開発または経済の安定に必要な 資金で日本輸出入銀行や一般の金融機関から供給 を受け難いものについて,その円滑な供給を図る 等のために必要な業務を行い,海外経済協力を促 進することを目的とする(『財政金融統計月報』第. 年には新規円借款業務のOECFへの全面移管が 行われる20).ちなみに75年の時点で,ODAの 貸付等が1927億円であるのに対し,OECFによ る貸付・出資額は1399億円に達している2’).こ. のように,OECFの重要性が増していった背景 には,経済援助の目的として,輸出促進の重要. 性が低下していったことがある.1960年代末 には日本の経常収支は基本的に黒字化する.ま た,72年には海外経済協力基金法が改正され,. 291号「昭和49年度財政投融資機i関の概要」).その. 財源は,設立当初一般会計からの出資金によって いたものの,資金需要の拡大に伴い,後述のよう. に財政投融資資金の活用が開始された(宮脇 [1995] P.163).. 20)『ODA白書1994年版』上巻P.40.. 21)『財政金融統計月報』第291号「昭和51年度 財政投融資機関の概要」.ただし,この1399億円全 てがODAとは限らない..
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(7) 図1 0DAと財源,援助形態 20ρ00 18ρ00 16,000 14,000. 12ρ00 羅lq…. +ODA総額. ,..・置“’層’ D,.・圏. …謄…一 ハ会計の経済協力費. D.鳳. ,.眉’層’” @...置’ C..,・. 8,000. 一噛・一・・. ユ’. ,.,・× =[・x・”x. ..屠…・■’. 6,000. 」. 歯菰 賭望∴. 卸・…櫨” y’. 、,、・. 4,000. I激. 、. .轟. \. 、㍗. 需_..、n尾. @ 一議K! .:野断:瓢2ざ @ 箆・断’層層x’ 底 墾’「’. ・,. 2,000. nECFへの財政投融資. 。与 +貸付等 一x…. .置’. .、㌦. /. ェ監. / ,,『,x/. 吏..鑓メ・訳. 甜験幽辱蝉灘娘轟餓轟撫蝉憾範験十六 年 出所)『ODA白書』各年三,財務省ホームページ「開発途上国に対する資金の流れについて」,『財務統計』各年 度版,『財政金融統計月報』国際収支特集各号,財政投融資特集各号より作成 注)ODA総額,贈与,貸付等は暦年,一般会計の経済協力費, OECFへの財政投融資は会計年度. 図2 0DAと主要3財源の推計 20,000 18,000 16,000 14,000. 12,000. 一←ODA総:額. 轟1α… ....」・・’層層−層’『 C...…潤’ D..・鷹. 8,000. 一∵一. 〆ジ〆\. 6,000 ...,.…讐. ・〆’. ?、 //. /\. …噛・……. o資国債. 一躯財政投融資. \ //施∼敵Y. 秩E・・・・・…’匿’. Y. 4,000 \㍉・… 議「’. 2,000. 畷…一 ハ会計. 嚇・….広・『 …・. /ゼ/ @ 。 x. 焉E・両’一』’”』動’‘‘減・ ・ ・淑 ’. 0 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 19992000. 年 出所)『ODA白書』各年版,財務省ホームページ「開発途上国に対する資金の流れについて」,『財務統計』各年 度版, 「財政金融統計月報』国際収支特集各号,財政投融資特集号より作成 注1)ODA総額は暦年,その他は会計年度,またODA総額は実績,その他は筆者による推計である. 注2)OECFへの赤字補填のために一般会計からの資金投入が実際に供与されるODA総額に反映されないといった 事情により,3財源の合計額がODA総額を上回ることがある..
(8) 円借款のアンタイド化が進められていた22).. 等の比率は16.7%から56.5%の間で大きく変動. 以上,要約すると,借款の比率が高いという. し,時期を区分すべき変化は見出し難い(表1. 日本のODAの特徴に関して1965年が重要な画 期であり,これは財政投融資を財源とする輸銀. 参照).以下,ODAの援助形態の構成にこうし た大きな変動をもたらしている要因は何かにつ. を通しての借款の拡大によるところが大きいと. いて見ていくこととする.. 考えられる.その背景には,構造的不況により,. まず,図1に示したODAの総額,一般会計. 一般会計を通してのODAの拡充の余地が小さ くなる一方で,財政投融資がODAに限らず,. の経済協力費,OECFへの財政投融資による資 金供給額,援助形態別に贈与の額,貸付等の額. 規模,運用範囲両面で拡充されていたことがあ る.開放体制への転換,不況克服のために求め. の動きを見てみよう.ODA総額に関しては, 1991年までは増加傾向にはあるが2つの「谷」. られる輸出促進を目的として,財政投融資が積. が確認でき,92年以降は大きく変動している.. 極的に活用されたが,輸銀を通してのODAの. 一方で,一般会計経済協力費に関しては,着実. 拡充もその一環であったと考えられる.その後,. な伸びが指摘できる24).また,その財源の殆ど. ODAの目的として,輸出促進の意義が低下し ていくとともに,借款の実施機関としてOECF の地位が向上し,75年に新規円借款業務が OECFへと全面移管される.このことが,現在 の日本のODAの大きな特徴の1つである高い アンタイド率を実現する基礎となった.この 75年に財投を主たる財源とする借款が大きな. 全てが一般会計である贈与も,一般会計の伸び に比例して増加している.. 一般会計の着実な増加25)は,ODA総額の変 動が一般会計によるものではないことを示して. いる.そして,図1から,ODA総額の動きは貸 付等の動きと強い正の相関関係を持っているこ. 比重を占める,アンタイド率が高いという日本. と,さらに貸付等の動向はOECFへの財政投融 資による資金供給額とも強い正の相関関係を持. のODAの特徴を生み出す基本構造が確立した. っていることが読み取れる.. と考えられる.. OECFの資金調達計画について1998年度を例. 3 基本構造確立以降,1998年までの. ODAの動向とその要因 (1)ODAとその財源, i援助形態の動向. 本稿の主要な視点である援助形態の構成から. 見て,基本構造確立以降のODAの動向には, 何らかの画期が見出されるだろうか.1975年 から98年23)にかけての援助形態別の構成比を 見ると,贈与の比率は16.6%から58.0%,貸付. 24)1996年には,一般会計の経済協力費がODA 総額を上回っているが,これは前述のように,経 済協力費は一般会計によるODAと完全には一致せ ず,ODA以外の経費も含まれることによる.しか し,経済協力費は一般会計によるODAの大部分を 含んでおり,その動向は一般会計によるODAの動 きを基本的に反映しているといってよい.予算で 見てみると,1996年度の一般会計の経済協力費は1. 兆1906億円で,一般会計のODA予算1兆1452億円 を454億円上回っている. 25)草:野[1997],西垣・下村[1997]では,一. 22)小浜[1992]P.28.ひもつきi暖助と輸出促 進の関係については,小浜[1992]P.27,161, 162等を参照.. 23)OECFと輸銀は1999年に統合され,新たに 国際協力銀行が設立されたため,98年までを OECFが財投によるODAの中心的役割を果たして. 般会計予算から防衛関係費等の他の費目と対前年 度伸び率を比較して,ODA一般会計予算の例外的 とも言える高い伸びを指摘している.重要な指摘 ではあるが,ODA一般会計の拡充について,過大 評価しないよう注意する必要がある.例えば1990. 年度のODA一般会計予算の対前年度伸び率は. いた期間として99年以降と区別して分析を行い,. 8.2%という高いものだが,一般会計予算の構成比 で見てみると,89年度の1.1%から1.2%に上昇し. 99年以降については側節で見る.. たに過ぎない..
(9) に見てみると,合計8100億円のうち,財政投 融資が4390億円,一般会計出資金と交付金の 合計が3239億円,回収金等が471億円となって. 少が見られる時期,具体的には1981年,84年. も,資金調達について,直接借款等の事業計画. の水準を2年連続で下回った85年と86年,91 年の水準を大きく下回った92年と93年,そし て94年,95年とある程度持ち直した後,95年 の水準を大きく下回った96年と97年について 分析することによって,それを明らかにした. 額を示した上で,その「計画に必要な資金とし. い.. て,財政投融資∼億円を予定するほか,自己資. 1)1981年の財政投融資の状況. 金等27)∼億円を見込む」としている.これでは. 1981年の財政投融資の状況で,最初に指摘. OECFが行う円借款にとって, OECFへの財政 投融資は必ずしも重要ではないとも受け取られ. しておくべきことは「厳しい原資事情」である.. 「財政投融資計画の概要」で見ると,昭和54. かねないが,実際には自己資金等は主として,. (1979)年度から,こうした状態が指摘されて. 財投資金に対する支払利息が貸付金利を上回る. おり31),昭和56(1981)年度でも「…原資事情. いわゆる逆ザヤによる構造的赤字を補填する役. は限られたものとなっているため…規模の抑制. 割を担っていると言える28).前述の貸付等の動. を図る」32)と記されている.しかも,1981年. 向とOECFへの財投の動きが強い相関関係を示 していることも,借款の財源として財投が主た. 度の原資の状況は,郵便貯金が当初計画の8兆 9000億円に対し,実績が7兆5997億円にとどま. る役割を担っていることを示している29).. ったため,特に厳しいものとなった.対象機関. また,図2は1985年以降のODA総…額と,主. 別に資金供給の実績を見ても,当初計画より多. 要な3つの財源,すなわち一般会計,出資国債,. い資金供給を受けたのは国鉄と地方公共団体の. 財政投融資のODAに充てられた推計額を示し たものだが30),ここでもODA総額と財政投融. みであった.こうした背景の下で,OECFへの. おり26),財政投融資は約54%を占めるに過ぎな. い.また,「財政投融資機関の概要」において. 資の動向に,強い正の相関関係が認められる.. 資金供給も80年度の当初計画,実績ともに 2673億円から81年度は当初計画2600億円,実 績はさらに少ない2470億円となったと考えら. (2)OECFへの財政投融資からの資金供給の変動. れる(表2参照).. それでは,ODAの動きに重要な影響を与え ていると考えられるOECFへの財投による資金 供給の変動の要因は何であろうか.ODAの減 30)各年度の財源の額の推計方法は,丁般会計 では,一般会計経済協力費の決算額× (ODA一般 会計予算額/一般会計経済協力費予算額),出資国. 26)『財政金融統計月報』第567号「平成11年度 財政投融資計画の概要」.. 27)一般会計出資金・交付金と回収金等から成 る.. 28)西垣・下村[1997]P.205,206,宮脇 [1995] P.163, 164.. 29)なお,借款によるODAで予算配分されるの はOECFに限らない.1995年度まで輸銀への予算 が確認でき,さらにその他としての予算の計上も ある.ただし,OECFと比べるとごく小さなもので. 債では,ODAの国際機関に対する出資・拠出等の 実績額一〇DA一般会計予算の国際機関への出資・ 拠出の額,財政投融資では,財政投融資からの 1998年まではOECFへの,2000年は国際協力銀行 の海外経済協力勘定への資金供給額(実績),1999. 年はOECFへの資金供給計画額と国際協力銀行海 外経済協力勘定への資金供給実績額の合計×ODA 事業予算の借款に占める98年まではOECF,99年 はOECFと国際協力銀行の合計,2000年は国際協 力銀行の比率である.. 31)『財政金融統計月報』財政投融資特集各号. ある.95年度ODA事業予算の借款ではOECF9768. 「昭和各年度財政投融資計画の概要」.. 億円に対して,輸銀7億円,その他364億円となっ. 32)『財政金融統計月報』第351号「昭和56年度. ている(『ODA白書』道具版).. 財政投融資計画の概要」..
(10) 66「. 2)1985年,86年の財政投融資の状況. とがある38).. まず,1985年を見る.85年度の財投当初計 画の規模は54年度以来のマイナス33)を記録し,. 1986年も,資金運用部による国債引受5兆円 が予定されるといった事情は同じだが,財政投. 計画策定にあたっては「対象機関の事業内容,. 融資計画の策定にあたって,「内需の拡大…な. 融資対象等を厳しく見直す」34)とした.原資は. ど政策的必要性を踏まえ…積極的かつ重点的・. 前年度より1兆円以上多い25兆8580億円であ. 効率的な資金配分を行う」39)とされている.こ. り(表2参照),これは資金運用部資金による. の方針転換は,内政的には85年9月のプラザ合. 国債引受額が前年度の3兆6000億円35)から5兆. 意を契機とする異常円高と円高不況に対応した. 円36)に増えたことによるところが大きい.国債. ものだが,忘れてならないのは,この際の外圧. 消化における資金運用部の比率は79年度の. が円高誘導に留まらず,内需拡大の要請を伴っ. 19.7%から80年度には急上昇して28.1%とな. たことである.86年4月に発表された「前川レ ポート」では,輸出志向型経済を改めて,内需. り,80年代前半は30%前後で推移するが,85 年度には前年度からさらに5.9ポイント上昇し. 主導型経済成長を実現することが指針として示. て36.2%にまで高まった.このことは当然,財. され,投資需要の創出に関しては,住宅政策と. 投対象機関への資金供給を制約する要因となる. 都市再開発が挙げられた.同年10月置宮澤蔵 相とアメリカのベーカー財務長官との共同声明 では,補正予算案について,「この刺激は,公 共事業,住宅,建設等の主要分野における追加. 37).. また,1985年度の当初計画20兆8580億円, 前年度比一1.2%に対して,実績はさらに少な. 的投資によりもたらされるであろう」とされた. い20兆4905億円となる.85年度において,当 初計画より大きな資金供給を受けた機関は,首. 40).財政投融資もこうした方向に沿って運用さ. 都高速道路公団,阪神高速道路公団,本州四国. れることとなる.使途別分類(当初計画)を見. 連絡橋公団,日本鉄道建設公団の4つに過ぎず,. ると41),道路,運輸通信,地域開発,住宅,生. OECFも当初計画4217億円に対して実績は. 活環境整備といった分野が対前年度伸び率. 3717億円となっている.こうした財政投融資. 10%以上を記録したのに対し,貿易・経済協 力は85年度の一13.8%に続いて2年連続マイナ. の動きの背景には,第2次臨時行政調査会が した「官から民へ」という基本方向の下,特殊. スの一7.2%となった.OECFへの資金供給も 当初計画,実績ともに前年度比で1%前後の微. 法人等の再編が政策目標とされ,前述のように. 増に留まった.. 「対象機関の事業内容,融資対象等を厳しく見. 3)1992年,93年の財政投融資の状況とその背景. 直す」という方針が示された反面,公共事業は. 1992年,93年の動きを見る前に当時の経済. 景気への配慮等から相対的に優遇されていたこ. 的,財政的背景について把握しておく必要があ. 「増税なき財政再建」を実現するために打ち出. る.まず押えておくべきは日米構造協議の影響. である.その最終報告で,日本は社会資本整備 33)『財政金融統計月報』第603号「68.財政投融. の着実な推進を図ることによるインフレなき内. 資略年報」.. 34)『財政金融統計月報』第399号「昭和60年度 財政投融資計画の概要」.. 35)『財政金融統計月報』第387号「昭和59年度 財政投融資計画の概要」.. 39)『財政金融統計月報』第411号「昭和61年度. 36)『財政金融統計月報』第399号「昭和60年度. 財政投融資計画の概要」. 40)金澤[2002]P.41,42.. 財政投融資計画の概要」. 37)宮脇[1995コP.148,149. 38)金澤 [2002]P.39∼41.. 41)『財政金融統計月報』第435号「財政投融資 使途別分類の推移」..
(11) 表3 財政投融資当初計画使途別分類構成比・対前年度伸び率 1992年度. 構成比. 単位)%. 1993年度 対前年度. 構成比. Lび率. 対前年度. Lび率. 住宅. 30.4. 3.4. 29.5. 10.2. 生活環境整備. 16.0. 20.1. 16.6. 17.7. 厚生福祉. 3.4. 8.1. 3.8. 25.9. 文教. 1.8. 0.1. 1.8. 11.5. 中小企業. 15.0. 7.5. 14.6. 10.6. 農林漁業. 2.8. 一〇.0. 2.5. 0.7. 国土保全・災害復旧. 1.2. 1.2. 1.4. 42.2. 10.5. 13.1. 9.9. 7.5. 運輸通信. 6.9. 51.9. 7.9. 29.6. 地域開発. 2.5. 16.3. 2.7. 19.0. 産業・技術. 3.0. 3.0. 3.5. 33.5. 貿易・経済協力. 6.5. 10.9. 5.8. 0.0. 100. 10.8. 100. 13.4. 道路. 合計. 出所)『財政金融統計月報』第507号より作成. 需の持続的拡大を通じて,経常収支黒字の縮小. 備等10兆6200億円),9月緊急経済対策(社会. が実現されるだろうとされた.そして,具体的. 資本整備等5兆1500億円),94年2月「総合経 済対策」(公共投資の拡大7兆2000億円)であ. には,91年度から2000年度を対象とし,投資. 総額430兆円の公共投資基本計画が策定され. る43).. る.これは一般政府ベースで公共投資総額を毎. 財政投融資も当然,生活関連社会資本整備の. 年6.3%のテンポで上昇させるという異常なほ. ための公共投資の拡大という方向で推移するこ. どの規模の計画である.内容は主として生活関. ととなった.当初計画で(表3参照),1992年. 連社会資本の整備であるが,これは日本の国際 競争力の向上を抑止しつつ,公共投資を拡大さ. 度では生活環境整備,地域開発,93年度では 生活環境整備,厚生福祉で高い対前年度伸び率. せようというアメリカ側の戦略に沿ったもので. を記録している44).また,上述の補正予算関連. ある.さらに景気後退がこれに重なることとな. で当初計画の改定もなされた.例えば,92年. る.いわゆる「バブル」が崩壊し,1991年に は3.8%であった実質GDP成長率が,92年には. の総合経済対策関連では,住宅金融公庫への 4000億円,地方公共団体への1兆4000億円等,. 1.0%,93年には0.3%42)に低下する.そのため,. 合計5兆1569億円が45),93年の総合的な経済対. 公共事業を柱とする景気対策のための大規模な. 策では地方公共団体への1兆5000億円,住宅金. 補正予算:が組まれることとなる.具体的には. 92年8月の総合経済対策(公共事業8兆6000億 円),93年4月総合的な経済対策(社会資本整. 42)林健久他編[2001]P.134.. 43) 金2睾 [2002] P.46∼P.50.. 44)運輸通信の伸び率も1992年度で51.9%,93 年度で29.6%という極めて高いものだが,これは 国鉄の長期債務償還のための資金供給による(『財 政金融統計月報』第495号,第507号「平成4年度, 5年度財政投融資計画の概要」)..
(12) 68. 融公庫への8500億円等,合計4兆9607億円が 追加された46).改定計画において,地方公共団. 億円から95年度には7兆9500億円に達してい たが,96年度には8兆5910億円,97年度には. 会資本整備の実施においては,地方公共団体に. 12兆300億円へと一層増加していった.その結 果,財政投融資原資から前述の国債引受と資金. よるところが大きいためである.地方公共団体. 運用事業への融資を除いたものとなる一般財政. への資金供給の対前年度伸び率は,当初計画で. 投融資の規模は,当初計画ベースで96年度の. は92年度で12.1%,93年度で17.3%,実績で. 対前年度伸び率が0.7%,97年度は一3.0%を記. は92年度で31.2%,93年度で28.0%を記録し ている.. 録することとなった.97年度の対前年度比の マイナスは,資金運用事業創設以前の85年度. こうした生活関連社会資本整備への資金供給. 以来のことである49).この一般財政投融資規模. の急激な高まりを受けて,OECFへの資金供給. の縮小が,OECFへの資金供給額の低迷の最も. が削減される結果となったと考えられる.. 重要な原因と考えられる.. OECFへの財投からの資金供給の実績は1991年 度の7349億円から92年度には6011億円,93年 度には4377億円へ,対前年度伸び率では,92. (3)小括. 体への資金供給が際立っているが,生活関連社. 年度一19.2%,93年度一27.2%と大幅な減少を. 以上,見てきたように,ODA総額の減少の 最も重要な要因と考えられるOECFへの財投か. 記録した.. らの資金供給の抑制・減少の背景には,財投の. 4)1996年,97年の財政投融資の状況. 原資事情の厳しさか財投資金に対する需要,よ. 1996年度と97年度については,まず,1985. り具体的には内需拡大のための公共事業への資. 年度と同様に国債の引受の影響を指摘できる.. 金需要の増大があった.そして,OECFへの資. 94年度には4980億円という低水準となった資 金運用部資金による国債消化額だが,95年度 には3兆3513億円に増加,96年度にはそれより. 金供給の変動は,貸付等の形態で行われる ODAの動きに大きな影響を与えている.これ は,ODA総額の変動は,財投の原資あるいは. さらに1兆5000億円以上高い4兆9683億円に,. 財投に対する資金需要の動向に大きな影響を受. 97年度も4兆7761億円47)という高水準となっ. ける借款によるODAの変動が主な原因である,. た.さらに,資金運用事業の規模拡大が一般財. とも換言できる.. 投の規模縮小へとつながつた.資金運用事業は,. とはいえ,財投における原資事情の厳しさや. 87年度に創設された制度で,郵便貯金,年金. 資金需要の増大が,そのまま全てOECFへの資. 資金,簡保等の機関がいったん財政投融資計画. 金供給の抑制・減少に結び付くわけではないこ. に資金を預託した上で,再び資金を借り入れて. とには留意する必要がある.例えば1998年度 は,一般財政投融資の対前年度伸び率(当初計. 株式や債券等に自主運用を行う制度である48).. 資金運用事業に対する融資は87年度の3兆3500. 45)『財政金融統計月報』第495号「平成4年度 における財政投融資計画の改定の概要(含む5年度. 画ベース)は一6.8%を記録したが,OECFへ の資金供給は500億円以上増加して5120億円と. なっている(表2参照).図1からODA総額の 動きを見ても,91年までは2年連続の減少さえ なく,92年以降も変動は大きいものの,それ. の改定状況)」.. 46)『財政金融統計月報』第507号「平成5年度 における財政投融資計画の改定の概要」.. 47)『財政金融統計月報』第555号「国債の消化. 49)『財政金融統計月報』第603号「68.財政投融. 状況及び保有状況」. 48)片桐[1997]P.332.. 資略年報」..
(13) 表40DA予算の財源構成. 単位)億円(%). 1998年度. 1999年度. 2000年度. 2001年度. 一般会計. 10473(60.5). 10489(55.6). 10466(55.5). 10152(55.8). 出資国債. 1375(7.9). 1670(8.9). 1550(8.2). 1546(8.5). 財政投融資等. 5328(30.8). 6574(34.8). 6728(35.7). 6356(34.9). 145(0.8). 132(0.7). 120(0.6). 140(0.8). 17321(100). 18864(100). 18863(100). 18196(100). 特別会計 合計. 出所)『ODA白書』同年版より作成. は一貫した減少が見られないとも換言できる.. 向を見ると(表4参照),2000年度,01年度と. ODA総額に関して,一定の配慮がなされてい. 連続して削減されている.これは財政赤字削減. ると考えてよいであろう.. のための歳出見直しの一環である.. しかし,この配慮を過大評価することもでき. の抑制,削減を受け,ODA総額が減少した年. 次に財投について見るが,1999年以降に大 きな動きが2つある.まず,特殊法人の整理合 理化の一環として,OECFが日本輸出入銀行と. の中に,財投で経済協力,国際社会への貢献が. 統合され,国際協力銀行が99年に新設された.. 重視されていた年が含まれることからもわか る.1985年度には財政投融資計画の資金配分. ただし,この動き自体がODAに大きな影響を 与えるとは考えられない52).. について「住宅,生活環境整備,道路,技術開. もう1つの大きな動きは,2001年度から財政. 発,経済協力等に重点的に配意する」50),92年. 投融資の重要な原資であった郵便貯金,年金積. 度は財政投融資計画の策定にあたって「社会資. 立金,簡保積立金が金融市場で自主運用される. 本整備,国際社会への貢献,地域の活性化等の. ようになったことである53).その結果,財政融. 政策的要請に的確に応え,重点的・効率的な資. 資資金が財投原資の中核をなすことになる.そ. 金配分を行う」5’)としていた.日本は,国際関. の財政融資資金の財源として最も重要なのが財. 係において,対米関係にあまりにも重きを置く. 投債(財政融資資金特別会計国債)であり,こ. ため,国際社会への経済的貢献と言えば,アメリ. の財投債発行により,金融市場から必要な資金. ない.そのことは,前述のOECFへの資金供給. カが求める内需による経済成長を最重要視する. を調達し,財投対象機関に対して融資を行うの. こととなる.ODAに一定の配慮をしつつも,財. である54).. 投におけるその優先順位が必ずしも高くない原. 因の1つは,国際社会への経済的貢献において. この財投改革は,ODAにどういう影響を与 えるだろうか.まず,1998年までに関して指. ODAの地位が高くないことにあると思われる.. 摘した原資事情による影響は小さくなると考え. 4 1999年以降のODA. られる.金融市場の状況によって調達コスト面. 最初に,一般会計に関して,予算からその動. 52)この統合に関する問題点,課題に関しては 西垣・下村[1997]P.206,207を参照.. 50)『財政金融統計月報』第411号「昭和60年度 財政投融資計画の概要」.. 51)『財政金融統計月報』第495号「平成4年度 財政投融資計画の概要」.. 53)ただし,経過措置として,2001年度以降7年 間,郵貯や年金積立金等で後述する財投債の一部 を直接引受ける措置がとられる. 54)『財政統計 平成14年度版』P.38∼P.40..
(14) 70. で影響を受けるとは言え,予め一定の原資の枠. して輸出促進の意義が低下していくとともに,. がある以前とは異なり,政府はその政策意図に. 借款の実施機i関としてOECFの地位が向上し,. 基づいて資金調達することになるからである.. 75年に新規円借款業務がOECFへと全面移管さ. ただし,これは財政投融資を通したODAの拡. れる.これにより,日本のODAの大きな特徴. 充が容易になったことを必ずしも意味しない.. の1つである高いアンタイド率を実現する基礎. 「平成14年度財政投融資計画の概要」55)に「財. が確立する.この75年に財源,援助形態,ア. 政投融資改革,行財政改革の趣旨を踏まえ,全. ンタイド率から見た日本のODAの特徴を生み. 体規模を縮減しつつ,対象事業の重点化を図る」. 出す基本構造が確立したと考えられる.. とあるように,財投全体とともに財投を通して られると思われる.実際に財投当初計画の対前. 基本構造確立以後の1975年から98年までの 動きを見ると,まず,財源に関しては,一般会 計の着実な伸びが指摘できる.そして,無償資. 年度伸び率は2000年度が一17.4%,01年度. 金である一般会計を財源とする贈与でのODA. が一15.0%,02年度が一17.7%となっており56),. も一般会計の伸びに比例して着実に増加した.. 極めて急速にその規模を縮小させている.. しかし,それにも関わらず,ODA総額には大. ODA予算の財源構成を見ても(表4参照), 一般会計が減少傾向を示す中で,財政投融資等. きな変動が見られる.その原因は主として貸平. のODAも,規模の縮減と効率化が厳しく求め. がそれを補うように増加していたが,2001年 度には,財政投融資等も減少している.一般会. 等でのODAの変動にある.そして,その背景 には,主たる財源である財投における原資事情. や資金需要の動きがあった.ODA総額と財投. 計の減少傾向と同様に,財投によるODAも今. との強い正の相関関係は,図2からも明らかで. 後さらに削減される可能性もある57).. ある.. 5 まとめ. 1999年以降のODAについて予算から見てみ ると,財政危機を受けての歳出削減の一環とし. 以上,財源,援助形態に着目して,歴史的推. て一般会計分が削減され,それを補うように増. 移を踏まえつつ日本のODAについて分析した.. 加した財投分も2001年度には減少した.財投. その内容は,以下のように要約できる.. 改革の具体的な影響については,今後の動向を. 援助形態から見た日本のODAの特徴である 借款の高い比重については1965年が重要な画. 見守る必要がある.. 日本のODAに関する改革は,財投改革を含. 期となっている.これは財投を財源とする借款. む財政改革の影響を強く受けている.しかし,. の増大によるが,この時点では輸出促進を目的. 現在議論されている財政改革は,いかに財政赤. とする輸銀を通しての借款によるところが大き. 字を削減するかという問題に卑小化されてしま. かったと考えられる.その後,ODAの目的と. っており,その結果,ODA改革においても, 規模の縮小がまず第1に求められている.本稿 において示してきた,財源の状況がODAに大 きな影響を与えるという日本の特徴がここにも. 55)『財政金融統計月報』第603号. 56)『財政金融統計月報』第603号「68.財政投融 資略年報」.. 57)イラク復興に対するODAといった特殊事情 の影響も予想され,財投改革の影響を含む今後の ODAの実際の動きを予想することは困難である. ただし,対イラクのような臨時・緊急の経済援助 の要求に対しては,財投が重要な役割を果たす可 能性が高いと考えられる.. 見られる.. 本来,財政改革は政府が果たすべき役割を踏 まえた上で,それを確実かつ効率的に果たすた. めになされるべきものである.ODA改革につ いても,日本政府が果たすべき責任を踏まえて,. それをいかに効率的に実現するかという視点か. ら論じられねばならない.ただし,ODAのあ.
(15) 7:τ. るべき姿については,国際的にも明確なコンセ. することは出来ないが,融資に対するニーズの. ンサスがあるとは言えず,その確立は被援助国. 低さ,あるいは返済能力によるアクセスの制限. も含む国際社会全体の課題といえる.そして,. という可能性に関しては,経済発展段階の低い. それを考える際,ODAを通した国際的な所得 再分配の位置付けが重要な問題となろう.. 諸国においても共通するのではないだろうか 61).. 小浜[1992]においては,「人道的規範では. その一方面,国際社会において,貧困が最大. なく,長期的視野に立った国益にもとつく援:助. の原因と考えられる不安定化が極めて重大な問. が中心になるべき」であり,「援助の主流は,. 題となっている.また,途上国政府は,世銀の. あくまで経済発展の局面移行を促進するような. 構造調整政策等を通して市場化,自由化,公的. ものであるべき」58)との立場から,円借款を高. 部門の縮小を半ば強制され,所得再分配政策を. く評価している.また,BHN(basic human needs)の充足は,基本的には経済成長の達成. 実質的に制限されている.そうした中,先進国. によって,国内的に充足すればよいという考え. という利益があると同時に,大きな責任がある. 方を示している59).確かに,一定の経済発展段. のではないだろうか.そして,それを実現する. 階に達した途上国に対しては,借款により経済. 方法として,借款による援助の有効性は,前述. 成長を支援し,その成長を通してBHNの充足 を実現するというやり方は説得力があるだろ. のように一定の範囲に限定されると考えられ. う.しかし,一定の経済発展段階に達していな. 際貢献の利益と責任は依然として大きく,それ. い諸国においては,このやり方の実現性は極め. に相応しいODAを実行すべきである,また贈. で臭しいと考えられる.市場原理に基づく方法. 与による有効な援助の実施によってのみ解決さ. で貧困削減に大きな成果をあげているとして注. れる極めて重要な課題が存在し,財源面で言え. 目されるグラミン銀行においても,最貧困層の. ば,財投によっては果たせない一般会計の役割. 参加は必ずしも進んでいない60).その原因は,. がある,と考えられる.. には途上国のBHN充足に,国際社会の安定化. る.これらのことから,日本のODAによる国. 最貧困層においては返済しなければならず,直 接収益的活動にその資金を用いることが求めら. れる融資に対するニーズが低い,あるいは融資 の条件として返済能力がチェックされる結果, 最貧困層のアクセスが実質的に制限されている ことにあると考えられる.一国と個人を同一視. 61)本稿注4に示した西垣・下村[1997]の財政 負担を重視した見解も,有償資金によるODAの効 果の限定性を踏まえたものであると思われる.開 発政策に関して,市場原理に基づく方法の有効性 に限定性があることは経済i暖助に限らないと考え られる.インフラ整備における民活の限定性につ. 58)小浜[1992]p.7.. いては,金澤[2002]第11章を参照.. 59)小浜 [1992]P.53.. ただし,これは借款による援助の有効性自体を 否定するものではない.具体的な,借款が有効で. 60)Khandker&Chowdbury.[1996]のTable2に よれば,グラミン銀行進出村における最貧困者比 率は,全体では12.90%,グラミン銀行参加者では. あるための条件,あるいは借款の限界については,. 対象とされる分野,貸付条件,被援助国の政治. 参加対象・非参加者においては著しく高い.この 結果は,後述のように最貧困層においてグラミン 銀行への参加対象でありながら,実質的に参加で きないか,融資に対するニーズが低く,参加して. 的・社会的・経済的・自然的状況,援助が与えた 多様な影響,代替策の可能性等を踏まえた具体的 かつ詳細な実証研究によってしか明らかにされ得 ないと考えられる.ODAプロジェクトに関する問 題や成果とその直接的原因を明らかにすることに とどまらない,こうした視点からの実証研究が今. いない人々が多数いるためと考えられる.. 後の研究課題となると思われる.. 10.32%,参加対象・非参加者では17.07%となって いる.最貧困者の比率が参加者では全体より低く,.
(16) 参考文献 絵所秀紀[1994]『開発と援助 南アジア・構造調 整・貧困』同文舘 遠藤湘吉[1966]『財政投融資』岩波書店 大蔵(財務)省主計局調査課編『財政統計 各年 度版』大蔵(財務)省印刷局 財務省財務総合政策研究所編『財政金融統計月報』 第255号以降の国際収支特集,財政金融特集 各号 大蔵(財務)省印刷局 外務省経済協力局編[1987,89,91∼2001]『我が国. の政府開発援助(ODA白書) 各年版』国 際協力推進協会(外務省印刷局) 片桐正俊編著[1997]『財政学 転換期の日本財政』 東洋経済新報社 金澤史男編著[2002]『現代の公共事業 国際経験 と日本』日本経済評論社 草野厚[1997]『ODAの正しい見方』筑摩書房 小浜裕久[1992]『ODAの経済学』日本評論社. 桜井国俊・山崎圭一「日本のODAの新しい課題」 『環境と公害』第32巻第3号 白鳥正喜[1995]『ODAフロンティア』大蔵省印刷 局 白鳥正喜[1998]『開発と援助の政治経済学』東洋 経済新報社 総務庁行政監察局編[ユ988]『ODA(政府開発援助) の現状と課題』大蔵省印刷局 高木保興[1992]『開発経済学』有斐閣 田中義晧[2002]「人間の安全保障とODA」『世界 の窓』第17号. 通商産業省[1983]『経済協力の現状と問題点 1983年』通商産業調査会. 西垣昭・下村恭民[1997]『開発援助の経済学 「共生の世界」と日本のODA 新版』有斐閣 林健久・今井勝人・金澤史男編[2001]『日本財政 要覧 第5版』東京大学出版会 藤林泰[ユ990]「「ODA=政府開発援助」というビ ジネス」『法学セミナー』第35巻第3号 松本悟[2003コ「メコン河流域国から見たODAと 環境社会影響」『環境と公害』第32巻第3号 宮脇淳[1995コ『財政投融資の改革』東洋経済新報 社 森恒夫編著[1994]『現代財政学 グローバル化の なかの財政』ミネルヴァ書房 渡辺利夫編[2000]『国際開発学1 アジア国際協 力の方位』東洋経済新報社 渡辺利夫・草野厚[1991]『日本のODAをどうす るか』日本放送出版協会 Khandker, S, R.&0.H.Chowdbury[1996]乃㎎θ’α1. C7θ魏Pプ097α〃zsα%41∼%7αJ Poo〃砂吻 Bα〃g1α4θs〃,World Bank Discussion Paper. No.336 財務省ホームページhttp://www.mofgo釦 (鹿児島県立短期大学商経学科助教授).
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