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建設アスベスト問題と労働衛生政策 : 労働安全衛生法・特定化学物質等障害予防規則との関連で

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論 文

建設アスベスト問題と労働衛生政策

─労働安全衛生法・特定化学物質等障害予防規則との関連で─

森   裕 之

1.建設業のアスベスト被害と労働衛生政策 2.産業組織からみた建設業  (1)建設業の特徴  (2)建設業の重層下請構造を通じた労働災害 3.特定化学物質等障害予防規則と建設業  (1)特定化学物質等障害予防規則の制定過程  (2)特定化学物質等障害予防規則とアスベスト  (3)特定化学物質等障害予防規則と建設業 4.労働衛生安全法と建設業  (1)労働安全衛生法制定の意味  (2)労働安全衛生法と建設業 5.特定化学物質等障害予防規則と労働安全衛生法との政策的不整合  (1)特定化学物質等障害予防規則の改正(1975 年)  (2)特定化学物質等障害予防規則と労働安全衛生法との政策的不整合

1.建設業のアスベスト被害と労働衛生政策

アスベスト(石綿)は繊維状の天然鉱物であり、断 熱、耐火、耐摩擦、防音など多くの面で優れ、かつ安価 であるという特徴をもつ。そのため、近代の産業発展に とって非常に有用なものとして世界的に使用されてき た。しかしその一方で、アスベストは石綿肺、肺がん、 中皮腫という深刻な疾病を引き起こす。これらの疾病は アスベスト曝露後 10~40 年をへて発症する。このこと は戦前から世界各国で知られるようになり、その医学的 知見は 1960 年代には定説になっている。 日本でもアスベストは戦前から使用され、これまでに 約 1,000 万トンが使われたと推計されている。これは全 世界の 5%近い膨大な量である。欧米諸国が 1970~80 年代にアスベストの使用量を急速に減らしたのとは対照 的に、日本は高度成長期から 1990 年代初頭まで大量の アスベストを使いつづけた。これらのアスベストは造船 や自動車など多くの産業で使用されたが、全体の実に 8 ~9 割は建設業において用いられてきた。そのため、ア スベストによる労働災害も建設業に集中している。2014 年度のアスベスト曝露による肺がん・中皮腫の労災認定 数 924 件のうち、建設業は 511 件(55.3%)を占めてお り、その傾向は近年一貫して続いてきたものである。 しかし、建設業にアスベスト被害が集中している原因 は、その使用量が多いという理由だけではない。いかに アスベストが大量に使われていたとしても、適切な予防 措置がとられていれば、建設作業従事者のアスベスト曝 露を防ぐことができた可能性があるからである。かりに 建設業において予防措置をとることが非現実的であった とすれば、石綿建材の製造禁止(代替化)を可能なかぎ り迅速に実施しなければならなかったであろう。つま り、アスベストの大量使用と、政府・企業双方による労 働衛生政策の不備があいまって、建設業における甚大な アスベスト被害が引き起こされているのである。 労働衛生の問題は、政府の規制とそれに基づく事業者 等と作業従事者双方の対応が適切に機能することによっ てかなり軽減することができると考えられる。本稿では この点に着目し、次のような内容で議論を展開する。ま ず、最大のアスベスト被害を出している建設業の産業組 織上の特徴を把握する。これは、アスベスト被害に対す る労働衛生対策が建設業という産業分野において機能す るためにはどの程度厳格な公的規制が必要であったかを

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考察する上での前提となる。次に、政府が建設業におけ る労働安全衛生の状況をどのようにとらえていたのかを みた上で、アスベスト被害の予防のために講じられた特 定化学物質等障害予防規則(特化則)についての検討を 行う。その際、特化則が建設業との関係においてきわめ て不十分な実効性しかもちえなかったことを示し、それ が後に建設業をメインの対象産業として制定される労働 安全衛生法との関連でも政策的に整合していなかったこ とを明らかにする。この政策的不整合は、建設業という 産業での公的規制が強力に求められることを政府が認識 していた一方で、その省令としての特化則がそれに対応 したものに改正されたのかどうかみる上で重要である。

2.産業組織からみた建設業

(1)建設業の特徴 特定の産業における労働災害について検証する際に、 当該産業のもつ特有の産業組織構造を検討しておくこと は必須である。全産業にわたって同一の法令による規制 がかけられたとしても、それが機能する度合いは各産業 のもつ労使関係や下請構造、さらには伝統的慣習などの 諸要因によって規定されざるをえないからである。この ような組織・制度への配慮を欠いた規制は画餅になる可 能性さえもっている。 建設業は、1972(昭和 47)年には約 405 万人、1981 (昭和 56)年で約 497 万人、1991(平成 3)年で約 528 万人、1996(平成 8)年で 578 万人の従業者数を抱え、 それぞれ全産業に占める割合は概ね 1 割という巨大産業 である。そのうち、土木を除いた建築関連業は建設業全 体の約 8 割を占めている1)。アスベストの大部分は建設 業の中でもこの建築業によって使用されてきた。 以下では、アスベストが大量に使用され、かつ、それ に対する公的規制がかけられる時期にあたる 1960~70 年代の建設業の産業組織上の特徴について主にみていく ことにする。 第一に、建設業は「受注産業」「注文生産」であるこ とである2)。通常の産業では、製品をつくって市場で販 売するという企業行動がとられる。しかし、建設業では 直売による建売住宅などを別にすれば、大部分は注文が あってから生産が行われる。このことは、建設業の生産 物である建設物が、他産業に比べて規模、構造、生産条 件、需要の規模などの面で多種多様であり、設計・施 工・仕様がすべて異なっていることを意味している。そ のために、建設業では品質管理の導入が困難であっ た3)。これは労働安全衛生面にも当てはまるといってよ い。 第二に、建設業は「移動産業」であることである4) 建設物は土地に固定されるものであることから、建設業 は一つの場所に工場を設置して生産活動を行うというこ とはない。都市部から農山村部にいたるまで、あらゆる 場所に生産の場が移動する。これは、建設業に材料を供 給する建材メーカーなどとは異なった特徴である。建材 メーカーは特定の場所に工場を構え、そこから自社製品 を注文先へ輸送するという形態をとるが、建設業はそれ を受け取る場所がたえず変化するのである。この建設業 の移動性によって、建設作業従事者の労働実態の把握を 追跡することが困難となる。 第三に、建設業はいわゆる「屋外産業」として行われ ることが他の産業に比べて多いということである5)。密 閉された空間のみで作業する製造業やサービス業とは異 なり、建設業は「屋外」でも作業が行われる。このこと によって、建設業は他の産業に比べて自然的・人為的影 響を受けやすくなる。また、機械の故障・消耗が激しく 耐用年数も短いために、減価償却費が大きくなるという 問題も生じる。このことは、労働衛生設備などの設置が 他の産業よりも一層費用がかかることを示しており、こ れらの装備に対してマイナスのインセンティブを与え る。また、屋内での生産活動に比べて、屋外作業は労働 災害が発生する可能性も高い6) 第四に、建設業は「総合産業」であるということであ る7)。これは、建設業というカテゴリーに含まれる業種 が非常に多岐にわたっていることを意味している。建設 業の生産物が規模や生産条件の点で多種多様であること が、各業種各層の建設業者を多数生み出す基盤となって きた8)。具体的には、建設業法に基づく分類でも、土 木、建築、大工、左官、とび・土工、石工、屋根、電 気、管工、タイル・レンガブロック、鋼構造物、鉄筋、 ほ装、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕 上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、造園、さく井、 建具、水道施設など、実に多くの業者区分がなされてき た9)。このことは、一つの建築物を生産する際に、多様 な業種が同じ空間で作業を同時に行うことを意味してい る。 第五に、建設業は「重層下請構造」をもっているとい

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うことである10)。これは、建設業が「総合産業」であ るという横軸からみた特徴を元請から末端下請までの縦 軸でとらえなおしたものといってよい。下請制度そのも のは建設業にかぎられたものではないが、建設業の重層 下請構造の特徴は、必要労働のほとんど全体を覆ってい るところにある。古川修は、建設業下請制はその依存率 が非常に高くほとんど 100%に近いこと、その性質が製 品や半製品の納入ではなく現場における直接労働の提供 という形をとることが多いことを指摘している11)。ま た菊岡倶也は、建設業の中核にあたる総合建設業者(総 合元請業者)は建設業数全体の約 1 割にすぎず、残り 9 割は下請企業群であり、そのために中小企業の割合が高 いとしている12)。このような建設業の強い下請依存は、 ①受注生産・移動生産という建設生産の性格から、労働 力その他の生産要素を元請が常時保有することがむずか しいこと、②受注生産にともなう危険分散・生産性の確 保を行うこと、③建設工事がもつ多種多様性から、一企 業レベルですべての必要生産能力を保有することがむず かしいこと、などの諸特徴から発生している13)。注文 生産や需要の変動性・不安定性などのリスクを分散させ るために、建設業は自前の機材や労働力を常時保有する ことを避け、それらを下請に依存するという性格を強く もち、各下請も同様にそれをさらに次層の下請へと転嫁 していくという構造をもつことが、建設業特有の重層下 請構造をつくりだしてきた。その末端には小規模零細業 者や一人親方などの労働保護が及びにくい建設労働作業 従事者が広範な層をなしている。 このような建設業の産業組織上の諸特徴は、いずれも アスベスト被害を引き起こしやすく、またその実態をつ かみにくいものにする要因を生み出している。ここに、 アスベスト被害が建設業に集中的にあらわれる原因の一 つがある。 (2)建設業の重層下請構造を通じた労働災害 建設業特有の重層下請構造は、同産業における労働災 害多発の重大な原因として指摘されてきた。では、それ は具体的にどのようなメカニズムによって引き起こされ てきたのであろうか。 第一に、重層下請構造によって、そのピラミッドの末 端におかれる小規模零細業者や一人親方14)ほど建設コ 建設工事 軀体工事 仕上工事 設備工事 仮設工事 タイル工事 電気設備工事 土工事 木工事 受電・変電設備工事 地業・基礎工事 金属工事 自家発電機設備工事 鉄筋コンクリート工事 左官工事 電灯・動力幹線設備工事 鉄骨工事 建具工事(木製・鋼製) 電灯コンセント設備工事 防水工事 硝子工事 動力幹線設備工事 ブロック・れんが工事 塗装工事 電気時計設備工事 石工事 内装工事 放送設備工事 雑工事 自動火災感知器設備工事 避雷針設備工事 衛生設備・空調換気設備工事 ボイラー設備工事 冷凍機設備工事 空気調和設備工事 水道設備工事 配管設備工事 換気設備工事 各種管制・自動制御設備工事 昇降機・ダムウェーター設備工事 電話設備工事 図1 建設業の下請組織 出所)菊岡倶也(1980)『建設業』東洋経済新報社、64 ページ。

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スト削減の圧力をうけやすく、そのしわ寄せが労働安全 衛生面にあらわれるからである。 重層下請構造は建設業の元請の利潤に大きく関係して いる。というのは、価格が与えられる受注生産におい て、元請の利潤の大部分は下請取引による製品の原価の 水準によって決まるからであり、その転嫁のメカニズム はさらにその下位にある下請への再転嫁として徹底され ていくことによる15)。このことは、下請にあたる業者 や建材メーカーがコスト削減のための圧力を絶えず受け ざるをえない構造をつくりだしてきた。 図 1 は、建設業の下請組織をみたものである。大きく 分けて、軀体工事、仕上工事、設備工事に分類され、そ の下に多様な職種があることがわかる。これらが建設作 業現場において渾然一体となりながら、実際の建設物が つくられていくことになるのである。 第二は、多種多様な業種が関わる重層下請構造によっ て、建設業における労務管理が著しく困難になってしま うからである。古川修は、建設業で頻発する労働災害の 原因の一つとして重層下請構造を挙げ、元請は直接労働 を下請に依存することによって労務管理が不徹底にな り、安全管理の面でも下請との責任の配分が曖昧になる としている。さらに、建設作業従事者の組織力が弱いこ とから、元請・下請ともに安全措置を徹底しないとい う16)。内山尚三も、建設業に特有の重層下請構造にお いて、元請が把握できるのは通常は一次の下請の段階に とどまるとしている17) これらのことは、建設業においては、重層下請構造に よって労働災害の発生が多発する条件が埋め込まれてい ることを意味する。菊岡倶也は、全産業の死傷者数の 3 分の 1、死亡者数の半数近くを占める建設業は「労働災 害多発産業」という有難くない名称でよばれていると し、さらに建設業は作業従事者の意識も低く企業側も隠 そうとするために、建設業における労働災害はもっと高 くなると指摘している18) 発生後に即時的または短期間のうちにあらわれる死亡 や障害などの労働災害は、建設業においてとくに多発し てきた。それは、重層下請構造をはじめとする建設業の 産業組織上の特徴から引き起こされてきた事態であり、 建設業ではこのような即時的な労働災害でさえも十全に 予防することがいかに困難であったかを物語っている。 そこから類推すれば、労働災害の被害が数十年後に明ら かとなるような遅発性のアスベスト被害の場合には、そ の防止のための労働衛生が政府や企業によって優先的に 対応されることはほとんど望み得なかったであろう。 アスベスト災害という点からみて、建設業の産業組織 のもつ諸特徴はいずれもアスベスト被害を発生させやす い構造を内包していた。そして、重層下請構造はその最 たるものであった。 そのなかで、政府は建設業に対するアスベスト災害の 予防をどのようにはかっていこうとしたのであろうか。 そして、そのような予防措置はそもそも有効なものとし て機能することが期待できるものであったのであろう か。次に、これらの点についてみていくことにする。

3.特定化学物質等障害予防規則と建設業

(1)特定化学物質等障害予防規則の制定過程 日本がアスベスト規制に本格的に取り組みはじめたの は、1971(昭和 46)年の特定化学物質等障害予防規則 (特化則)からである。1960(昭和 35)年に制定された じん肺法においても、アスベストは粉じんの一種として 規制の対象とされた。しかし、特化則によってアスベス トが取り上げられたのは、それが粉じん一般としてのみ ならず、発がんをともなうという有害性をもっていたか らである。 当時の労働省は特化則の制定に先立ち、1970(昭和 45)年 9 月に 46 種類の有害物質を取り扱う事業場の総 点検を実施した。調査対象となった事業場は 13,665 に のぼり、このうちアスベストを取り扱う事業場は 150 あった。しかし、アスベストを最も多く使用していた建 設業はこの調査対象からは外されていた19)。これらの 状況は、アスベストを取り扱う産業が建設作業従事者の 健康被害上の高リスクを招いている一方で、その一つで ある建設業は有害物質に係る労働衛生対策の対象から外 されるという不適切な政策がとられていたことを示唆し ている。 これらの点検作業をふまえて、労働省は 1971(昭和 46)年 1 月に「石綿取扱い事業場の環境改善等につい て」(基発第 1 号)を発出し、すべての石綿取扱い作業 について可能な限り局所排気装置を設置させることなど を事業場に対して監督指導することを指示した。その 際、労働省は「最近、石綿粉じんを多量に吸入するとき は、石綿肺をおこすほか、肺がんを発生することもある ことが判明し、また、特殊な石綿によって胸膜などに中

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皮腫という悪性腫瘍が発生するとの説も生まれてきた」 と述べ、アスベストの発がん性についての認識も同時に 示している20) 労働省は労働環境技術基準委員会を設置し、規制すべ き有害物質や当面採るべき対策などについて議論を行 い、労働安全衛生規則を改正する省令案要綱をとりまと め、1971(昭和 46)年 2 月に中央労働基準審議会に対 して有害物質による障害の防止に係る規制に関する諮問 を行う。この要綱に盛り込まれた規制事項を再検討した 結果、有害物質等の規制に関する省令を予定されていた 旧労働安全衛生規則の一部を改正するという当初の考え が変更され、当時の労働基準法第 5 章「安全及び衛生」 の箇所を実施する独立した規則として、特定化学物質等 障害予防規則が 1971(昭和 46)年 4 月 28 日に制定され た。 (2)特定化学物質等障害予防規則とアスベスト 特化則の制定過程をみても、1971(昭和 46)年の時 点で労働省はすでにアスベストの発がん性について把握 していたのは間違いない。この点について、特定化学物 質等障害予防規則の制定当時に労働省労働基準局の担当 官であった内藤栄治郎は「石綿が特に特化則の対象物質 とされたのは、石綿肺がけい肺に劣らず、重篤な肺疾患 であるのみならず、ある種のものは肺がんまたは胸膜な どに中皮腫という悪性腫瘍をおこす疑いがあるため、そ の解明は、今後の調査研究にまつとしても、予防は有害 物質と同等に取り扱う必要があるとされたからである」 と述べている21)。ここでとくに注意すべきなのは、「予 防は有害物質と同等に取り扱う必要がある」という点で ある。実際にアスベストがどのような有害物質として扱 われたのかは後に検討することにする。また、わが国の アスベストの医学的権威である森永謙二も「法的に石綿 の発癌防止の観点から規制の対象となったのは、1971 年の特定化学物質等障害予防規則からである」としてお り、やはりアスベストの発がん性を理由とした規制が特 化則によってとられていることを指摘している22)。さ らに、中央労働災害防止協会も「労働省は石綿ががん原 性物質であることを理由に昭和 46 年(1971 年)に施行 された特定化学物質等障害予防規則の対象物質として石 綿を指定し行政対応の強化を計った」として、当時の労 働省がアスベストの発がん性を根拠に特化則としての対 応を行ったことを明らかにしている23)。1971(昭和 46)年の特化則制定によるアスベスト規制が発がん性に 基づくものであったとみることは妥当であろう。 さて、特化則においては、アスベストは「第二類物 質」として分類された。第二類物質とは、「主として、 慢性障害の発生を防止するため、ガス、蒸気または粉じ んの発生源を密閉させる設備または局所排気装置を設け るための設備を必要とする物」である24)。しかも、重 大な点は、この第二類物質は第一類物質とともに、「微3 量3 で3 有害な作用をするところに特徴がある」25)ことで ある(傍点は原典著者である元労働監督署長の井上浩に よる)。つまり、微量でも有害である点が第二類物質の 特徴をなしているのであり、このことはアスベストが少 ない量でも人体に有害であること、つまり発がん性を前 提として特化則で取り扱われていることを示している。 なぜなら、じん肺の一種である石綿肺は微量の曝露では 発症することがないからである。 特化則では第二類物質の規制に関して、第 4 条で粉じ んが発散する屋内作業場3 3 3 3 3 においては局所排気装置を設置 しなければならないとした(傍点は筆者)。しかしその 一方で、「ただし、局所排気装置の設置が著しく困難な 場合又は臨時の作業を行なう場合は、この限りではな い」と規定している(同条)。また、局所排気装置を設 置しない場合、使用者には全体換気装置の設置や湿潤化 を行うことなどによって、労働者の健康障害を予防する ために必要な措置を講じることを求めている(同条の 2)。 この特化則の規定における要点は、①局所排気装置の 設置は「屋内作業場」に対するものであること、②「著 しく困難な場合」「臨時の作業を行なう場合」について は局所排気装置の設置の義務を除外し、全体換気装置等 での対応を求めていることにある。この「著しく困難な 場合」「臨時の作業を行なう場合」のそれぞれの意味に ついては次項でみることにする。 このような特化則の規制の進め方については、労働監 督 署 長 で あ っ た 井 上 浩 が わ か り や す く 整 理 し て い る26)。それによれば、アスベストのような有害物の規 制措置として最良の方法は使用禁止であるが、それを使 用する場合には有害物を「密閉」する。その次の方法と しては、有害物の気体や粉じんが発散する「局所」でそ れを捕捉し、動力により強制的に排気する「局所排気装 置」を用いる。さらに、気体や粉じんの有害度が低い場 合に限って、有害物発散場所の「全体」を動力で換気す

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る「全体換気装置」を用いて有害物の濃度を薄めるとい う方法がある。このような規準に依拠すれば、アスベス トのような有害物質の規制は最低でも局所排気装置によ ることが当然であったといえる。 しかし、井上によれば、これらの方法は、「有害物が 常時発散しており、しかも発散場所が動かない場合には 適しているが作業が臨時的なものであったり、作業場所 が移動したりする場合には適当でない場合がある」27) としている。この内容は、移動産業であり、建材の切断 等で粉じんの発散場所がたえず変化する建設作業現場に 対しては、それが「屋内作業場」としての実態があった としても、特化則が想定している規制内容では対応が困 難であることを指摘していると考えてよい。 次に、これらの特化則の規定や井上の整理を念頭にお きながら、特化則が建設業をどのように取り扱っていた のかについて詳しくみていくことにする。 (3)特定化学物質等障害予防規則と建設業 特化則の制定過程をみれば、1970(昭和 45)年の総 点検調査の段階から建設業は対象外とされており、特化 則と建設業の関係は当初から稀薄なものであったことは 明らかである。それに加えて、上記の特化則の諸規定 は、アスベスト粉じん対策が実際の建設現場において機 能しない、つまり、建設業への適用が骨抜きにされてし まう作用をもっていたことをあらわしている。 第一に、特化則がいう「屋内作業場」は「作業場の建 家の側面の半分以上にわたって壁、羽目板その他のしゃ 蔽物が設けられておらず、かつ、ガス、蒸気または粉じ んがその内部に滞留するおそれがない作業場は含まれな いこと」とされていた28)。建築物はその建設過程にお いて必ずしも側面の半分以上をしゃ蔽されている状態で はなく、さらに閉じられた空間ではないことによって、 実際の状態とは関係なく、粉じんは滞留するとはみなさ れにくい。そのため、建設業は「屋外作業」であると扱 われてきた。1994(平成 6)年 10 月の『労働衛生』は、 「工場等屋内における作業に比べ、建設業、陸上貨物運 輸業に代表される屋外作業型の業種では、労働衛生対策 が進めにくいといわれる」と述べている29)。厚生労働 省の資料においても、建設作業従事者が原告となってい る訴訟を「建設労働者型(屋外型)訴訟」と呼んでいる 30)。また、輿重治らも建築現場で作業をおこなう「設備 工事業」については「特化則の適用されていない石綿取 り扱い事業場」であると指摘している31)。このように 現実には建設業が「屋外作業場」としてみなされてきた ということは、特化則の有害物質規制において最も重要 であった局所排気装置の設置義務がそもそも建設業には 適用されえないという事態を招くことになった。しか も、このことは実際の建設現場においてアスベスト粉じ んが滞留しなかったことを意味しているわけではなく、 ましてや石綿建材の吹き付けや切断の直後に多量のアス ベスト粉じんを吸引してしまう危険性と矛盾するもので は決してない。この点については、建設業でのじん肺有 所見者に関するところであらためて論じることにする。 第二に、建物そのものをつくる建設現場では、局所排 気装置の設置が「著しく困難」であるとみなされたこと である。この意味は、「種々の場所に短期間ずつ出張し て行なう作業の場合または発散源が一定していないため に技術的に設置が困難な場合があること」と説明されて いる32)。すでにみたように、建設業の特徴は「移動産 業」であるという点にあり、また「粉じん作業が行われ る場所は頻繁に変更」33)されるために発散源は一定し ない。この規定も、かりに建設業が「屋内作業場」であ るとみなされた場合であっても、局所排気装置の設置を 不要とすることを意味した。さらに、建設作業現場にお ける局所排気装置の設置は純粋技術的にみても明らかに 困難だといってよい。この技術的な困難さは、建設業が 建築物の構造や生産条件などが多種多様で設計・施工・ 仕様がすべて異なる「受注産業」であり、かつ「屋外作 業場」であるという点と関係している。通常の屋内作業 場とは異なり、建設現場は構造物そのものがつくられて いく過程であり、巨大なダクトや空気清浄装置をもつ局 所排気装置の設置のための適切な場所の確保をわざわざ 設定するといった規制が合理的に機能するとは考えられ ない。しかも、建設業においてはこのような装置は自然 環境等に影響されやすいため、劣化も激しくコストもか さむ。そのため、このような装置の設置や運転は可能な かぎり回避しようとする建設業のインセンティブは一層 強くなる。そのことを考慮すれば、このような法令適用 上の例外を設けることは、建設業における労働衛生政策 としては致命的であったといってよい。 特化則の解説において示された局所排気装置は図 2 の ようなものであるが、建材の切断等が現場のあちこちで 行われる建設業において、このような装置型設備が設 置・運転されるとは考えにくいであろう。

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政府(環境庁)も 1978(昭和 53)年から 1984(昭和 59)年までの間に行った調査をふまえ、建設業のアスベ ストについては「建築物には大量のアスベストが用いら れており、解体時及び建設時には、局限された範囲内で はあるが、一般大気中より高濃度が出現することが確認 されている。・・・解体及び建設は屋外作業であるため 局所排気装置の設置等の設備対策は困難であり」と指摘 している34)。これは、建設作業現場ではアスベスト粉 じんが高濃度で発生していたとしても、局所排気装置の 設置困難さが政府によって初めから認識されていたこと は明らかであったことを示すものである。また、内山尚 三は、建設業の特徴の一つである「屋外労働」に関連し て、「工場を作って暑いときはクーラーをいれて労働環 境をよくしてというようなことは、建設現場においては 事務所を除いてはできないということである」と述べて いるが、これは空気清浄機のような設備が建設現場には 設置できないことを指摘したものである35)。このこと はクーラーなどよりも遙かに巨大な局所排気装置にも当 然に当てはまる。 第三に、建設労働は様々な業態が断片的に行われる 「臨時の作業」の集積であり、建設業は特化則による局 所排気装置の設置の義務から事実上外れていたことであ る。「臨時の作業」とは、「その事業において通常行なっ ている作業のほかに一時的必要に応じて3 3 3 3 3 3 3 3 3 行なう第二類物 質に係る作業を行なう場合をいうこと。したがって、一 般的には、作業時間が短時間の場合が少なくないが、必 ずしもそのような場合のみに限られる趣旨ではないこ と」(傍点は筆者)という説明がなされている36)。これ を具体的に考えた場合、アスベスト建材の吹き付けや切 断といった作業は、建築物の建造を目的とする建設労働 全体からみれば一時的必要によるものとみなされるであ ろう。さらに、この解説では「臨時の作業」は時間の短 さだけに限定されるわけではないとしていることから、 特定の建材の切除や吹き付けなどはよりいっそう「臨時 の作業」と扱われることになったことは想像に難くな い。この点については、厚生労働省も建設労働者の作業 内容等を①建築・解体工事現場で、建材の切断等が必要3 3 な場合のみ3 3 3 3 3 粉じん作業に従事、②粉じん作業が行われる 場所は頻繁に変更3 3 3 3 3 3 3 3 (傍点は筆者)、という整理をおこ なっている37)。このようなとらえ方からすれば、実際 の建設労働作業はすべて「臨時の作業」としてみなされ ても当然であったといえる。こうした「臨時の作業」を 連続的に行いつづける建設作業従事者からみれば、この 規定は彼らが長期間のアスベスト曝露にさらされる結果 を引き起こすことを容認するものに他ならない。 第四に、仮に建設作業現場が「屋内作業場」とみなさ れたとしても、そこでの局所排気装置の設置は求められ なかった可能性が高いことである。特化則第 5 条では局 所排気装置の設置の適用除外として、「屋内作業場の空 気中における第二類物質のガス、蒸気又は粉じんの濃度 が常態として衛生上有害な程度になるおそれがないと当 該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長が認定し たした場合は、適用しない」された。これは具体的に は、第二類物質の製造や取り扱いに関して、その取扱 量、生産工程、作業方法、作業場内の気中濃度等からみ て、 労 働 基 準 監 督 署 長 が 判 断 す る こ と を 指 し て い る38)。この「有害な程度になるおそれがない」基準と なる測定は、連続する 2 日間にわたって、発散源とそこ から半径 0.5 m上の 4 点以上において行われるものとさ れた39)。上でみたように、建設業でのアスベストの扱 図 2 局所排気装置のイメージ図 出所) 労働省労働衛生課編(1984)『改訂 特定化学物質等障害予防規則の解説』中央労 働災害防止協会、46 ページ。 発散源 発散源 ダクト ダクト フード フード

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いは「臨時の作業」であり、かつ、発生する粉じんの中 に占めるアスベストの割合を判別するなどまったく不可 能であろう。そのうえ、2 日間以上にわたる複数箇所で のアスベスト測定が「屋外作業場」としてみなされてい る建設労働現場でわざわざ行われるとは考えにくい。そ のため、たとえ建設作業が「屋内作業場」的なところで 行われていたとしても、そこで発生するアスベスト粉じ んの濃度が「常態として有害な程度」であるといった判 断ができるはずもなかった。 第五に、上記の点に関係して、特化則では第二類物質 に対する環境測定についても義務づけているが、これも 建設業は「屋外作業場」とみなされていることなどに よって実施されない状況があった。すなわち、特化則第 29 条では「第一類物質又は第二類物質を常時製造し、 又は取り扱う屋内作業場について、当該物質の空気中に おける濃度を六月をこえない一定の期間ごとに測定し」、 その記録を 3 年間保存するとされたが、これも「常時の 取り扱い」、「屋内作業場」、「6 ヶ月をこえない期間ごと の測定」など、建設作業現場の実際とは著しくかけはな れた規定が設けられていたのである。

4.労働衛生安全法と建設業

(1)労働安全衛生法制定の意味 特化則は労働基準法の省令として制定されたが、1972 (昭和 47)年に労働安全衛生法が労働基準法から独立し て制定されるにともない、同法における省令として位置 づけられることになった。つまり、特化則は労働安全衛 生法の理念に基づいて、その役割を果たすことが期待さ れることになったのである。そこで、以下では労働安全 衛生法の内容について考察を加えておくことにする。 労働省によれば、労働安全衛生法が独立して制定され た理由は、原則として直接的な雇用関係を前提としてい る労働基準法では、①有害物等の製造流通段階における 規制、②重層下請、ジョイント・ベンチャー等特殊な雇 用関係における規制、③職業性がんなど重篤な職業病に かかるおそれのある有害業務従事者の離職後の健康管 理、④公害等の防止に対する配慮等、の対策を十分に進 められないことにあった40)。ここでの特徴は、一つに は有害物質に係るあらゆる経済活動段階での規制、もう 一つには重層下請などの雇用関係に関するもの、という 2 点に集約することができる。前者については建材メー カー等との関係性が指摘されており、また後者の典型が 建設業であることはいうまでもない。 労働安全衛生法において重視されたことは、建設や港 湾などの重層下請関係の強い産業を中心にした産業にお ける元請の安全衛生上の責任を明確化することであっ た41)。すなわち、特化則のもっていた建設業に対する 消極的な扱い方とは異なり、労働安全衛生法では建設業 をメインの対象産業として位置づけていたのである。以 上の点が、労働安全衛生法を単独立法とすることで、労 働基準法では労働者の安全と健康を有効に確保できなく なってきたことを克服しようとした理由になっている。 労働安全衛生法では、第三条の 2 で「事業者等の責 務」として、「機械、器具その他の設備を設計し、製造 し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸 入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、 これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これ らの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に 資するように努めなければならない」と規定されてい る。これは、機械等の設計者・製造者・輸入者、原材料 の製造者・輸入者、建設物の建設者・設計者・工事注文 者など、労働災害の発生の防止にかかわりをもつ者は、 それぞれの立場から労働災害の防止につとめることを求 められたものである42) 労働安全衛生法では、安全衛生管理体制の整備のため に「総括安全衛生管理者」をおくこととした。これに よって、建設業、林業、鉱業などの「屋外労働的業種」 では一定規模以上の事業場において、安全衛生のための 業務を統括管理する総括安全衛生管理者を選任しなけれ ばならないこととなった43) さらに労働安全衛生法は、建設業の特徴である重層下 請関係を想定した安全衛生上の規定を特別に行ってい る。まず、一つの場所において行われる事業の仕事の一 部を請負人に負わせている事業者のうち最高の立場にあ る「元方事業者」の中で、建設業その他政令で定める業 種に属する事業を行う者を「特定元方事業者」と定め る。特定元方事業者は、直接の下請から後次の請負人す べてを含めた「関係請負人」の労働者が同一の作業場所 における労働災害を防止するために、統括安全衛生責任 者を選任し、一定の統括管理をさせなければならない (第 16 条)。ただし、これらの労働者の数が政令で定め る数未満(50 人程度)であるときは必要ないとした。 特定元方事業者は、関係請負人の労働者の作業が同一の

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場所において行われることによって生じる労働災害を防 止するために、①協議組織の設置及び運営を行うこと、 ②作業間の連絡及び調整を行うこと、③作業場所を巡視 すること、④関係請負人が行う労働者の安全又は衛生の ための教育に対する指導及び援助を行うこと、⑤その 他、当該労働災害を防止するため必要な事項、に関する 必要な措置を講じなければならないとされた(第 30 条)。しかし、労働安全衛生法では(特定)元方事業者 に対する法令違反への罰則規定はとられなかったため、 その実効性は担保されたとはいいがたい。 では、建設業とアスベストの関係についてはどうか。 労働安全衛生法の中にも有害物に関する規制が設けら れ、黄りんマッチやベンジジンなどについては製造等の 禁止(第 55 条)、ジクロルベンジジンなどについては製 造許可(第 56 条)が求められた。その他にも、ベンゼ ン等の特定化学物質等障害予防規則第一類物質について は、流通に際して、名称、成分および含有量、人体に及 ぼす影響、取扱い上の注意等の表示義務が課せられた (第 57 条)。しかし、これらの中に、アスベストは明示 的には含まれてはいない。 アスベストによる労働災害と関係があるのは、事業者 の講ずべき措置を定めた部分である。それは、法第 22 条によって、事業者が「原材料、ガス、蒸気、粉じん、 酸素欠乏空気、病原体等による健康障害」を防止するた めに必要な措置を講じなければならないとしている点で ある。しかし、このような一般的・抽象的規定は、1947 年に制定された旧労働基準法にも含まれていたものであ り、労働安全衛生法の成立によって特別の意味をもつと はいえないものであった。 (2)労働安全衛生法と建設業 以上のことから、労働安全衛生法において、建設業は 次のように扱われたということができる。 第一に、重層下請構造をもつ建設業には(特定)元方 事業者に労働災害防止の全体的な取り組みが義務づけら れた。これは、労働安全衛生を確保するという点におい て、建設業は多重かつ広範な下請構造をもつため、その 他の多くの産業よりも困難の度合いが大きいことを労働 行政が認めていたことを示している。しかし、(特定) 元方事業者の講ずべき措置等の違反については罰則規定 がなく、実効性が当初から問題とされていた44) 第二に、粉じんによる健康障害の防止といった一般的 な規定は盛り込まれていたが、アスベストなどの有害物 質に関する規定が特別に盛り込まれることはなかった。 つまり、建設業に対しては、転落事故などの労働災害に 関する事業者の責任は強化されたが、アスベストなどの 有害物質については労働安全衛生に関係づけられること は実際にはなかったといってよい。 第三に、建設業で頻発する労働災害に対しては、当該 産業のみならず、製造や流通など関連産業全体に対して も労働災害の防止のための責務を規定していたことであ る。これは、政府が建設業での労働安全衛生の確保のた めには、全経済過程における規制が不可欠であることを 認識していたことをあらわしている。 以上をまとめれば次のようになる。労働安全衛生法に おいては建設業がその構造上から労働災害を多発させる 性質をもつことを政府は認識していたことは明らかで あった。それを克服するためには、建設業において特徴 的な重層下請構造に鑑みて、(特定)元方事業者と建設 業に関連する製造・流通過程の事業者への予防責任が求 められた。それらを通じて、建設業等における労働災害 の多発を防ぐことこそが労働安全衛生法を独立した法律 として制定した最大の意味であった。しかし、その全体 としての実効性は乏しく、とくにアスベスト被害を防ぐ という点での同法の規定はきわめて不十分なものでしか なかった。そのため、労働安全衛生法の理念の具体化 は、その下の省令としての特化則の改正に委ねられるこ とになったといってよい。

5.特定化学物質等障害予防規則と労働安全

衛生法との政策的不整合

(1)特定化学物質等障害予防規則の改正(1975 年) 労働安全衛生法の制定後の 1975(昭和 50)年に特化 則が大きく改正された。この改正においては、当初の特 化則(旧特化則)における屋内作業場、局所排気装置、 臨時の作業等に関する規定はそのままとなった。これら の点については、改正特化則においても建設業への適用 困難性という基本的なスタンスに変化はなかったとみて よい。 しかし、改正特化則では旧特化則と比べて、アスベス トに関して次のような規定を加えている。 第一に、アスベストを「特別管理物質」として、「人 体に対する発がん性が疫学調査の結果明らかとなった

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物、動物実験の結果発がんの認められたことが学会等で 報告された物等人体に遅発性効果の健康障害を与える、 又は治ゆが著しく困難であるという有害性に着目し、特 別の管理を必要とするもの」とあらためて位置づけたこ とである。これは、アスベストが発がん物質であること を一層明確にしたものである。 第二に、第 1 条に「事業者の責務」として、旧特化則 に規定されていた「使用する物質の毒性の確認」「作業 方法の確立」「関係施設の改善」などに加え、「代替物の 使用」が位置づけられたことである。これは、アスベス トのようながん原性物質についてはできるだけ代替物を 使用する措置を講ずることを事業者に求めたものであ る45)。後でみる改正特化則第 38 条の「石綿等に係る措 置」に関連して、大阪労働基準局は「石綿は可能な限 り、有害性の少ない他の物質に代替すること。現在まで に石綿を使用していない部門での石綿導入を避けるこ と」という解説を行っている46)。この事業者の責務に 関する規定はいわゆる努力義務であるために罰則は存在 しない。しかし、井上浩によれば、この事業者の責務を 定めた第 1 条は、特定化学物質等に関して特に注意すべ き規定であって、民事責任発生の基準になるものであ る47) 第三に、アスベスト(石綿)については第二類物質の ままとされたが、附則として「石綿」とは「石綿を含有 する製剤その他の物。ただし、石綿の含有量が重量の 5%以下のものを除く」という規定が加えられた。これ は逆にいえば、重量比 5%以下であれば、アスベストは 特化則の規制外になることを意味した。 第四に、アスベスト等を製造し、又は取り扱う作業場 には特別管理物質に関する諸事項を作業に従事する労働 者が見やすい箇所に掲示しなければならないとした(第 38 条の 3)。その事項とは、①特別管理物質の名称、② 特別管理物質の人体に及ぼす作用、③特別管理物質の取 扱い上の注意事項、④使用すべき保護具、であり、事業 者は常時作業に従事する労働者について、氏名・作業概 要・作業従事期間等を 30 年間保存するものとした(第 38 条の 4)。これは先述のとおり、発病までに長期間を 要するというアスベストのがん原性物質としての特徴を うけてのものである。 第五に、「石綿等に係る措置」(第 38 条の 7)として、 ①事業者は、石綿等を吹き付ける作業に労働者を従事さ せてはならない、②事業者は、ⅰ吹付けに用いる石綿等 を容器に入れ、容器から取り出し、又は混合する作業場 所は、建築作業に従事する労働者の汚染を防止するた め、当該労働者の作業場所と隔離された屋内の作業場所 とする、ⅱ当該吹付け作業に従事する労働者に送気マス ク又は空気呼吸器及び保護衣を使用させる、という措置 を講じたときは、建築物の柱等として使用されている鉄 骨等への石綿等を吹き付ける作業に労働者を従事させる ことができる、③労働者は、事業者から保護具の使用を 命じられたときは、これを使用しなければならない、と いう措置がとられた。このうち、柱等へのアスベストの 吹き付けが認められたのは、建築基準法に基づく鉄骨等 の耐熱性能の確保によっている48) さらに、「石綿等に係る措置」(第 38 条の 8)として、 ①事業者は、ⅰ石綿等の切断、穿孔、研ま等の作業、ⅱ 石綿等を塗布し、注入し、又は貼り付けた物の破砕、解 体等の作業、ⅲ粉状の石綿等を容器に入れ、又は容器か ら取り出す作業、ⅳ粉状の石綿等を混合する作業、のい ずれかに掲げる作業に労働者を従事させるときは、石綿 等を湿潤な状態のものとしなければならない、②事業者 は、前項の作業を行う場所に、石綿等の切りくず等を入 れるためのふたのある容器を備えなければならない、と された49)。ただし、石綿等を湿潤な状態のものとする ことが著しく困難なときは、この限りではないという例 外事項が設けられている。ここでいう「著しく困難なと き」に関しては、「湿潤な状態とすることによって石綿 等の有用性が著しく損なわれるときが含まれること」と されている50) 第六に、アスベストのような第二類物質の特別管理物 質については、作業環境測定結果の記録、労働者の作業 記録、健康診断個人票について 30 年間保存することが 義務づけられたことである51)。かりにこれが正しく遂 行されてきたとすれば、2014 年現在においても 1980 年 代半ば以降の作業環境記録等がすべて残されていなけれ ばならない。 以上をまとめれば、次のようになるであろう。改正特 化則においては、政府は発がん物質としてのアスベスト の有害性や特性を一層明確にし、事業者に対しては代替 物を使用することを責務の一部に加えるという規制強化 の方向性を示した。しかし、重量比 5%以下のものを石 綿の定義から除くという例外を設けることで、含有率の 確認を含めた公的規制の実効性が大きく毀損される規定 を行った。建設業との関係では、基本的には旧特化則が

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もっていた同産業への適用困難性は維持したが、その一 方で、作業危険度の甚大な石綿吹付け作業の一部禁止の 規定を設けた。しかし、それも当該作業従事者のみに対 する防護措置さえ行えば、従来どおり柱等へのアスベス トの吹付けは可能なままとなった。これは、重層下請構 造をもつ「総合産業」としての建設業においては、吹付 け作業者以外の多種多様な建設作業従事者を危険にさら すことになったといってよい。さらに、石綿建材の切断 等においても湿潤化をもとめたが、これも当該作業がア スベストの発じんをともなう危険性の大きな作業である ことを政府が認めたことを意味する。しかし、これも石 綿建材等の有用性が損なわれる場合には湿潤化を除外す ることで、建築物の部材として石綿建材を使用する建設 段階での適用を困難なものにした。 総じていえば、政府は改正特化則の制定を通じて石綿 建材を取り扱う作業の危険性を広く認めながら、いくつ もの例外規定を設けることで、建設業での特化則の適用 が依然として実効性の欠いたものとしつづけたと評価す ることができる。 (2)特定化学物質等障害予防規則と労働安全衛生法との 政策的不整合 労働安全衛生法では、建設業での労働災害の中でもア スベスト等の衛生面での具体的な対策については特化則 に委ねるかたちをとったが、旧特化則および改正特化則 は建設業を規制対象として十分に位置づけてこなかっ た。労働安全衛生法によって(特定)元方事業者に対す る法令違反への罰則規定がなかったことも、特化則の実 効性を担保しなかった要因であった。ここに、建設アス ベスト問題に関連して、労働安全衛生法令全体としての 政策的不整合が見出される。 この政策的不整合をめぐる政府の責任は重大である。 というのは、政府は労働安全衛生法において建設業のも つ重層下請構造に起因する労働安全衛生上の問題点を明 確化していた一方で、アスベスト被害を防ぐための省令 である特化則に関しては建設業への規制を著しく脆弱な ものにしつづけたからである。労働安全衛生法の制定後 の改正特化則においては、建設業の産業構造上の特徴を 適切かつ十分にふまえた改革を行わなければならなかっ たのである。 このような政策的不整合による建設現場での労働災害 の認識は、政府の雇用審議会が 1975(昭和 50)年に出 した建設労働に関する報告書のなかにみることができ る52)。同審議会では、建設業の重層下請構造による下 請けへの労働条件悪化について次のように述べている。 「広く零細企業を含めて多数の建設業者が存在するもと では、工期の設定、工事費の積算等請負契約の内容につ いて発注者の意向が強く働くことになりやすく・・・。 受注における無理は、しばしば下請にしわよせされ、下 請企業の不安定性と、そのもとにおける労働条件の劣悪 化をひきおこしているものとみなければならない」53) 下請けへのしわ寄せによって労働災害が多発している点 については、「建設業においては、その生産方式や作業 の特性、限られた工期での施工、零細企業における安全 衛生管理体制の不備等の理由から、労働災害が多発」し ていることを指摘している54)。さらに、大型機械の採 用、新建材の開発、工法の改良等のような建設内容の変 化によって、「労働災害の大型化、多様化のほか、新し い型の労働災害や健康障害をも発生させつつある」55) としており、特化則によって有害物質として定められた アスベストによる健康障害もここに含まれていると解す るのは自然であろう。 さらに同審議会では、労働関係法令が十分に機能して いない実態と、それが政府の努力不足と建設業の産業構 造や体質から発生している点について、次のように指摘 している。「これまで建設業界において労働関係法令に 対する理解やその厳正な運用等に欠ける場合がしばしば みられたのは、当局の努力不足もさることならが、あい まいな雇用関係を改善する力のない零細企業をおびただ しく抱えている我が国建設業の性格に由来するところが 多い。したがって、たんなる法令の整備に終ることな く、建設業の体質改善に努めるとともに、法令の厳正な 実施について一層の指導や助成に努めることが、業界並 びに政府の建設労働対策にとって不可欠の基礎をなして いることを強調しておきたい」56)。とくに、重層下請構 造に関しては以下のような指摘もなされている。「建設 業においては、数字にわたる下請が形成され、末端下請 段階では、雇用であるか請負であるかがあいまいであ り、建設作業従事者にとって誰が使用者か、したがって また、誰が使用者としての責任を負うかが不明確なこと が多い。ここに、今日の建設業における労働問題の大半 が由来する直接の根元がある。すなわち、ここから賃金 等をめぐって就労上種々のトラブルが発生し、また賃金 不払い、労働災害等の事故の場合にもその責任の所在が

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はっきりしない」57) 以上の内容は、労働安全衛生法の施行以後において も、建設業のもつ重層下請構造と下請けへの種々のしわ 寄せ、そして、政府の労働関係法令の運用の不備によっ て、建設作業従事者における健康被害が広くあらわれて いることを政府自らが把握していたことを示している。 その原因が特化則や労働安全衛生法による政策的不整合 によって、建設業が非常に曖昧なかたちで取り扱われて いた点にあったことは間違いない。 アスベストの発がん性の認識、特定化学物質等障害予 防規則による建設業の規制対象除外、労働安全衛生法に よる建設業の労働実態の把握、さらには建設現場におけ る高濃度のアスベスト発じんの認識などを総合すれば、 建設業におけるアスベスト被害に対する政府の責任は甚 大なものであったといわざるをえない。 1 ) 厚生労働省「建設労働関係統計資料」(http://www.mhlw. go.jp/bunya/koyou/kensetsu-kouwan06/siryou.html)。 2 ) 内山尚三(1974)『転換期の建設業』清文社、263 ページ、 および、菊岡倶也(1980)『建設業』東洋経済新報社、17 ページ。 3 ) 古川修(1963)『日本の建設業』岩波新書、36 ページおよ び 38 ページ。 4 ) 内山(1974)、前掲、264 ページ、および、菊岡(1980)、 前掲、21 ページ。 5 ) 内山(1974)、同上、265 ページ、および、菊岡(1980)、 前掲、21 ページ。 6 ) 菊岡(1980)、同上、22 ページ。 7 ) 内山(1974)、前掲、265 ページ。 8 ) 菊岡(1980)、前掲、19 ページ。 9 ) 菊岡(1980)、同上、33 ページ。 10) 古川(1963)、前掲、108 ページ、および、内山(1974)、 前掲、304 ページ。 11) 古川(1963)、同上、108 ページ。 12) 菊岡(1980)、前掲、20 ページ。 13) 菊岡(1980)、同上、28~29 ページ。 14) 一人親方は、営業者の立場であっても労働実態が下請企業 等の労働者と何ら変わらず、同じ下請構造の末端層を構成す る建設労働作業従事者として存在する。このことは、労働者 災害補償保険法の適用を受ける「擬制適用」の規定からも首 肯されるところである。労働省労働基準局補償課編(1984) 『労災保険特別加入制度の解説』労働基準調査会、4~6 ペー ジ。 15) 古川(1963)、前掲、120 ページ。 16) 古川(1963)、同上、140~141 ページ。 17) 内山(1974)、前掲、278 ページ。 18) 菊岡(1980)、前掲、89~91 ページ。菊岡はここで全日建 労組委員長の藤島栄による「死亡を除いて(建設業労働災害 の・・・筆者注)全体の 3 分の 2 は隠されている」という発 言を引用している。菊岡(1980)、同上、91 ページ。 19) 労働省はこの総点検の対象とした主要な石綿取り扱い業種 として「石綿製品製造業」と「セメント製品製造業」の二つ だけをあげており、この中に建設業は含まれていない。労働 法令協会(1970)『労働法令通信』Vol.23 No.31、29 ページ。 20) 厚生労働省(2005)『アスベスト問題に関する厚生労働省 の過去の対応の検証』2005 年 8 月 25 日、6~8 ページ。 21) 内藤栄治郎(1971)「石綿障害予防対策の現状と関係法規」 『労働の科学』26 巻 9 号、29 ページ。 22) 森永謙二(1989)「わが国における石綿関連疾患の疫学的 知見」『病理と臨床』Vol.7 No.6、686 ページ。 23) 中央労働災害防止協会(1985)『日本のじん肺対策』第 2 分冊、38 ページ。 24) 労働省労働衛生課編(1984)『改訂 特定化学物質等障害 予防規則の解説』中央労働災害防止協会、24 ページ。 25) 井上浩(1978)『労働安全衛生法』北樹出版、264 ページ。 26) 井上浩(1978)、同上、258~267 ページ。 27) 井上浩(1978)、同上、259 ページ。 28) 労働省労働衛生課編(1972)『改訂版 特定化学物質等障 害予防規則の解説』中央労働災害防止協会、39 ページ。 29) 中央労働災害防止協会(1994)『労働衛生』第 35 巻第 10 号、96 ページ。 30) 厚生労働省(2013)「大阪アスベスト訴訟(第 2 陣)控訴 審関係説明資料」5 枚目シート。 31) 輿重治・神山宜彦・松井一光・中館俊夫(1985)「石綿取 扱い実態調査」労働省産業医学総合研究所(1985)『産業医 学総合研究所年報(昭和 59 年度)』36 ページ。これは後述 する高田勗による『「石綿取扱い事業場等実態調査研究」報 告書』(1985 年 3 月)に関しての要約である。 32) 労働省労働衛生課編(1972)、前掲、39 ページ。 33) 厚生労働省(2013)、前掲。 34) 野呂隆(1987)「アスベストと労働組合」『労働の科学』42 巻 12 号、42 ページ。同じ内容は、環境庁の次の文献にも記 されている。環境庁大気保全局大気規制課監修(1985)『ア スベスト排出抑制マニュアル』180 ページ。 35) 内山尚三(1974)、前掲、265 ページ。 36) 労働省労働衛生課編(1972)、前掲、39 ページ。 37) 厚生労働省(2013)、前掲。 38) 労働省労働衛生課編(1972)、前掲、40 ページ。 39) 労働省労働衛生課編(1984)、前掲、41 ページ。 40) 労働省労働基準局安全衛生部編(1972)『あたらしい労働 安全衛生法のあらまし』20 ページ。 41) 内山(1974)、前掲、346 ページ。

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42) 労働省労働基準局安全衛生部編(1972)、前掲、22 ページ。 43) 労働省労働基準局安全衛生部編(1972)、同上、23~24 ページ。 44) 宮島尚史はこの点について「特定元方事業者の責務(三〇 条)違反につき、処罰など実際には考えていないにも等しい といえようし、同条一項三号の『作業場巡視』など、見ても 見なくてもうろつけというお役所的発想にとどまる」と批判 している。宮島尚史(1972)「労働安全衛生法に対する総合 的批判」『賃金と社会保障』No.596、15 ページ。 45) 労働省労働衛生課編(1984)、前掲、13 ページ。 46) 大阪労働基準局労働衛生課(1976)「石綿による障害」大 阪労働基準局監修『基準月刊』No.280、26 ページ。 47) 井上(1978)、前掲、266 ページ。 48) この例外的措置がとられた理由について、国は次のように 説明している。「柱やはり等に使用されている鉄骨等への石 綿等の吹付けが認められたのは、石綿等の吹付けによらなけ れば建築基準法に基づく鉄骨等の耐熱性能を確保することが できないとの理由によるものであること。」井上(1978)、同 上。建設業労働災害防止協会の「建築物の解体、改修工事に おける石綿粉じん対策管理者講習会」のテキストには、「こ の特化則第 38 条の 7 の第 2 項で建築物の建設、修理等の際 に柱、はり等として使用されている鉄骨等への石綿等の吹き 付けが認められたのは、石綿等の吹き付けによらなければ建 築基準法に基づく鉄骨等の耐熱性能を確保することができな いという理由からである」と解説されている。野呂(1987)、 前掲、42 ページ。このように、改正特化則の段階において 同規則と建設業との関係への着目が強まっているが、それは 労働省労働基準局長「石綿粉じんによる健康障害予防対策の 推進について」(基発第 408 号、昭和 51 年 5 月 22 日)の次 の文言からも明らかである。「一 . 関係事業場及び石綿取扱 者のは握 (1) 石綿は、石綿管および板、石綿セメント、自 動車ブレーキ、石綿織布等の製造のほか、建設業、造船業ま たは化学工業等における断熱工事に広く利用されてきてい る。」 49) 「本条は、屋内、屋外3 3 の作業場を問わず第 1 号から第 4 号 までに規定する作業を行う場合には、石綿粉じんの発散を防 止するため、原則として湿潤にしなければならないこととし たものであること。」(傍点は筆者)労働省労働衛生課編 (1984)、前掲、117 ページ。これは、屋外においてもアスベ スト曝露が危険であることを明確に示したものである。 50) 労働省労働衛生課編(1984)、同上、117 ページ。 51) 労働省労働衛生課編(1984)、同上、15~17 ページ。 52) 雇用審議会(1975)『建設労働対策について』1975 年 12 月 10 日。 53) 雇用審議会(1975)、同上、6 ページ。 54) 雇用審議会(1975)、同上、18 ページ。 55) 雇用審議会(1975)、同上、8 ページ。 56) 雇用審議会(1975)、同上、10 ページ。 57) 雇用審議会(1975)、同上、11 ページ。

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