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パウロ・フレイレとコミュニティ・オーガニゼーション:1970年代以降の北米のコミュニティ実践とその理論モデルへの影響: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

パウロ・フレイレとコミュニティ・オーガニゼーション

:1970年代以降の北米のコミュニティ実践とその理論モデ

ルへの影響

Author(s)

西尾, 敦史

Citation

沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of

Humanities and Social Sciences(12): 17-33

Issue Date

2010-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6265

(2)

沖縄 大学人文学部紀要 第12号 2010

パ ウロ ・フ レイ レとコ ミュニテ ィ ・オーガニゼー シ ョン

:1

970

年代以降の北米の コミュニティ実践 とその理論モデル-の影響

西 尾 敦 史

要 約 1970年代以降の北米 にお けるコ ミュニテ ィ ・オーガニゼー シ ョン (Community Organization, CO)の実践理論 の展開を概括的にカバー しなが ら,それ以降の実践 ・研 究に,ブ ラジル の教育 哲学者パ ウロ ・フ レイ レ (PauloFrelre)の思想 が頻繁 に引用 され,実践 において もその方法 が 幅広 く取 り入れ られ応用 され ている点 に着 目し,その影響 について検討す る. 北米のCOの研究の中か ら,プ レイ レに言及す る事例研究,理論研 究 を検討す るこ とに よ り, 自助価値 の高 ま りや社会福祉 の抑制,多文化主義 な どの北米の時代的 な社会状況 の変化 と, プ レイ レの思想 のCO 実践-の影響 とその特徴 を明 らかにす る.フ レイ レの実践 は,ひ とつの実 践理論モデル として,コミュニテ ィの住民の対話 に よ り,コ ミュニテ ィの抑圧構造 を意識化 し, 行動の 目標 を明 らかにす る方法 として,広範 に実践 され ,また理論的な位置 づ けが行 われ てい るが,抑圧 の構造 が複雑 なコ ミュニテ ィにおいては,必ず しも適合 しない とい う課題 も明 らか に されてい る. 北米のCOの発展 において フ レイ レを無視す るこ とはできず,日本 の CO実践 において も 「住 民 ワー クシ ョップ」の取 り組み を深化 させ るために,北米 の実践 に学ぶべ き内容 は少 な くない.

キー ワー ド :批判的な意識(criticalconsciousness),

課題提起教育(problem-posingeducation),プ ラクシス (praxis), 変容モデル (transformativemodel),多文化 主義 (mult卜culturalism) は じめに

コ ミュニテ ィ ・オーガニゼー シ ョン (CO :CommunityOrganization) は,1930年代以降の北 米 において独 自に発展 を遂げてきた実践領域 であ り,ケー ス ワー ク, グル ープ ワー ク とともに

ソー シャル ワー クの三つの基本的な方法 の一つ とされ てきた.

一方 で,今 日の ソー シャル ワー クは,CO を独 自の体系 としてではな く,「環境 の中の個人」 (PIE:PersonslnEnvironment)の認識 を基本 として,個人 とその環境 との関係 を全体的 に とら え,その接点 に多様 な方法 を使 い分 け, コ ミュニテ ィも環境の資源や要素の一つ として,統合 化 させ るジェネ ラル な ソー シャル ワー ク理解 が一般 的 になってい る.しか し,北米 において は, バ ラク ・オバマが大統領選挙戦 にお いて コ ミュニテ ィ ・オーガナイザーであった こ とを強調 し た よ うに,COが固有の実践領域 として認識 されてい る. 日本 において も,戦後の地域福祉 の組織化 の理論 として ロスOtoss,MG_)のCO理論 が導入 さ れ,地域社会 の団結協力や合意形成 に主眼が置 かれ る傾 向があった.それ は, 日本 の社会風土 にも受 け入れ られやすい性格 の ものであったが,それ以降は後述す る ロスマ ン (Ro也ma

n

,

)

-17

(3)

-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 の3モデル (1968年)の紹介 に とどま り,その後 はむ しろ,イギ リスの実践理論の移入 が主流 とな り,ア メ リカにお ける70年代以降の

CO

の多様 な展開やその成果が十分 に紹介 され てきた とはいい難 い. そ こで本稿 は,1970年代以降の北米 における

CO

の実践理論 の展開を まず概括的 にカバー し なが ら,と りわけそれ以降の実践 ・研 究 に,ブラジルの教育哲学者 パ ウロ・フ レイ レ(PauloFreire, 1921-1997)の名前 が頻 出 し,その識字教育思想 が数 多 く引用 され

,CO

実践 において もその方 法 が幅広 く取 り入れ られ応用 されてい る点に着 目す る.その上 で,北米の

CO

の実践理論研 究 の主要 な文献 を レビュー し, フ レイ レに言及す る事例研 究,理論研究 を検討す ることによ り, 北米の時代的な社会状況の変化 と, フ レイ レの思想 の

CO

実践- の影響 とその特徴 を明 らかに したい と考 えてい る. Ⅰ パ ウ ロ ・フ レイ レの息想 と教育実践 1 パ ウ ロ .フ レイ レの生涯 パ ウロ ・フ レイ レは,1921年 ,ブ ラジル北東部 のベル ナ ンブ コ州 レシフェに生まれ た.特 に 貧 しく半数以上の住 民が文字 をもたない地域 であったが,世界恐慌 の波 が押 し寄せ た1931年, 飢餓 と貧 困に苦 しむ農 民 と出会い, フ レイ レ自身 も飢 えによって就学 を中断せ ざるを得 なかっ た経験 か ら,飢餓 との闘いに一生 を捧 げる決意 を した と言われ る. その後,大学 で哲学 と言語 心理学 を学び,卒業後 中学校 のポル トガル語 の教師 となる.1946 年 か ら54年 までの8年 間は,ベル ナ ンブ コ州 の社会事業団 ・教育文化局で,成人の識字教育に 携 わ る.1959年 に学位 を取得 ,教育史,教育哲学 の教授 とな り, さらに識字教育運動 を広範 に 展 開す る,そ こで実践 され た方法 は

,

「文化 サー クル」(culturecircles)運動 と呼ばれ る方法で, その顕著 な成果 に よってブ ラジル 中の注 目を集 めた. 1964年,ブ ラジル政府 はプ レイ レの識字教育方法 を全 国に導入す ることを決定,フ レイ レ自 身 も 「全 国成 人識字教 育」 の代表調整者 として活動 を開始 した. ところが,その数週間後,文 民政府 は軍事 クーデ ター によって倒 され, フ レイ レの識字教育 は禁止 され, フ レイ レは逮捕, 監禁後,国外追放 とな る.そ してチ リに亡命す るが,チ リにおいて も識字運動 を展 開す る. 1969年 ,フ レイ レはチ リを離れ てアメ リカ合衆国に渡 り,--バー ド大学 「教育開発研究セ ンター」 の客員教授 として,また 「開発社会変革セ ンター」 の研究員 として迎 え られ る. この 時期 に英語 でま とめ られ た論文 のひ とつが 「被抑圧者 の教育学」(pedagogyoftheoppressed)で ある. 日本語訳 は1979年 に出版 され るな ど数 多 くの言語 に翻訳 され,世界 で75万部以上読 ま れ てきてい る.1970年 には,スイスのジュネー ブにある世界教会協議会 (WCC:WorldCoumcil ofChurchcs)の教育局 に招 かれ,活動 の場 をアフ リカ諸 国- と移 していった.1980年 によ うや く民主的政権 の回復 した母 国ブ ラジル に帰国 し,晩年 の1989年 か ら91年 には,サ ンパ ウロで 初 の労働者 党市長 の も と教育長 を務 めたが,1997年 に急逝 してい る1). 2 パ ウ ロ ・フ レイ レの義手教育の方法 と息想 1)文化サー クル と生成テーマ まず, プ レイ レの識字教育 の実践 の出発 点 となってい る 「文化サー クル」運動 にお ける実践 プ ロセ スの概 略 をみ てお きたい 2)

ー1

(4)

8-西尾 :パ ウロ ・プレイ レとコミュニティ ・オーガニゼーシ ョン 表1 パ ウ ロ ・フ レイ レの 文 化 サ ー ク ル の 方 法 と プ ロセ ス 1 まず コーデ ィネーター (教師ではない)が地域に入 り,住民 とのなにげない会話のや りとりか ら,坐 活 と労働の状況を表す言葉を集 める. 2 その中か ら音節が豊かで, 日常経験か ら切 り離せない,感情に訴 え,談論を引き起 こす よ うな言葉 を 「生成語」 として抽出す る.その生成語は16か ら17語の リス トに並べ られ る.は じめは,発声が し やす く,具体的な内容を表す言葉か ら始ま り, リス トの終わ りには,難 しい音節,また社会的政治的現 実をよ り抽象化 した言葉になるように配置 され る. 3 人び とが集 まれる教会や学校 などの場所が設定 され,文化サークルが定期的に開かれ る.そ こで

,

「生 成語」が表 してい る具体的な状況,例 えば人が働いている典型的な 日常生活場面を (自然 と文化,人間 と動物が対比 され るよ うな)描写 した絵や写真がスライ ドと して壁 に表示 され る.劇形式になる場合 も ある.これ を 「コー ド化」(codification)と呼ぶ. コー ド化 は参加者 と現実の状況 との媒介的な役割 を果 たす もので, コー ドには解答は決 して含まない. 4

:

..-5 最初の2週か ら8遇の間,参加者はコー ド表示を見なが ら対話 と討論 を行 う.プ ラジル北東部で行われた文化サー クルでは,10枚の絵 を使い,自然 と文化 を基調に したテーマが探究 され,10枚 目の絵にいたる頃には,参加者は大きな自信 をもち, 彼 らの文化に誇 りを持ち,読み書きの学習-の欲求をさらに強めた とい う. 左の絵 は,文化サークル で使われる絵の最初の1枚だが,コーディネーターは次 のような質問か らデ ィスカ ッシ ョンをは じめる

.

「この絵の中に何が見えますか」 コーディネーターは次に 自然 と文化 との違いに向けた質問を し,参加者 と対話 し 節 .閣. ■{ てい く.「たか」- さらに質問は続 く誰が井戸 を作つたか

.

「誰が木をつ くつたか

「なぜ,彼 はそれ を したか

「井戸 と木は どのよ うに違 うの

「どんな材料が使 われ か」「誰が家 と鍬 と本をつ くつたか」次第に議論は人び とが 自然の材料 を使い環境 を変えること,つま り文化をつ くることに導かれ てい く. 5 次の段階で,最初の生成語が導入 され る.例えばtijolo(レンガ)とい う言葉の場合, 1枚 目に レンガの 建築の場面だけが描かれた絵が準備 され,2枚 目には建築の場面に tijoloとい う言葉が書かれた絵が提示 され る.3枚 目には,tijoloとい う言葉だけが表示 され る,

次にtijolo声に出 して発声する.tijoloは,tiとjoとloの3つの音節 に ta te t,i to ttI 分解 されるが これ を次のよ うな音素系を分解 したカー ド (発見のカー ド と呼ばれる)を準備 し.配列す る.これ を水平に,また垂直に読むことで, ]la Ja le Je ll JOi lo lJuu 以 上 の よ うな 文 化 サ ー クル が 本 格 的 な識 字 教 育 に段 階 に入 る の は ,表 の5段 階 日以 降 で あ る が , そ れ ま で の 上 か らの識 字 教 育 に較 べ て , 住 民 の 学 ぶ 意 欲 の 点 で 大 き な違 い が あ り, そ れ が 識 字 学 習 の 成 果 に つ な が っ た の で あ る . フ レイ レの 方 法 は , 対 話 的 な 学 習 にお い て , 日常 生 活 を絵 な どに コー ド化 し, コー ド (code) を媒 介 とす る こ とに よ っ て , そ れ 以 前 に は散 漫 に , 漢 然 と して しか把 握 され な か っ た もの が 「自然 と文 化 」 とい っ た 対 比 を通 して意 味 を獲 得 しは じ め るの で あ る . この 場 合 の 教 師 の役 割 は , は じめ は 民 衆 か ら与 え られ た テ ー マ を彼 らに講 義 と して で は な く. 現 題 と して 再 提 出 す る (re-present) こ とに あ り, こ う して 再 提 出 され るテ ー マ を フ レイ レは 「生 成 テ ー マ」 (generativetheme) と呼 ん で い る . これ らの テ ー マ は 対 立 し,正 反 対 で さえ あ る他 の テ ー マ を暗 黙 の うち に含 み , ま た 実 行 され 成 就 され るべ き課 題 を指 し示 して い るの で あ り, 人 び とに は与 え られ た 状 況 を受 動 的 に受 け入 れ るの で は な く, 現 実 を否 定 し圧 倒 す る行 動 に よ っ て挑 戦 に応 じる こ とが 求 め られ るの だ とす る3). こ う した 実 践 の根 幹 を な す フ レイ レの 基 本 概 念 で あ る 「意 識 化 」 とそ の教 育 形 式 で あ る 「課 題 提 起 教 育 」 とい う方 法 にふ れ て お き た い .

2

)

「意 徽 化 J 文 字 を獲 得 す る とい う行 為 の 中 に は , 人 間 が 主 体 と して 世 界 と向 か い 合 うこ との 契 機 が含 ま れ て い る , そ れ は 日常 的 な 時 間 の 流 れ を絶 ち き っ て , 現 実 の 世 界 を相 対 化 し, 自覚 的 に 向 か い 合 うこ とを意 味 す る . 自 らの お かれ た 状 況 が 自然 で , 変 え られ な い 前 提 で は な く, 社 会 的 ・歴

-1

(5)

9-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 史 的 に構 成 され た もの で あ る こ とを認 識 す る, 非 能 動 的 な意識 か ら,批 判 的意識 (critical consciousness) に至 る意識 の発展過程 をフ レイ レは 「意識化」 (Consclentization) と呼んだ 4). 彼 の最初 の論文 「自由の実践 としての教育」の 冒頭 で プ レイ レは 「人間 として生 きる とい う こ とは,他者 お よび世界 との関係 において生 きる とい うこ とだ」 と述べてい る.人間は,他者 お よび世界 との絶 え ざる意識 的対話 あるい は交流 の 中で人間になってい く使命 をもってお り, その人間 としての可能性 の発揮 が歪 め られ,損 なわれ てい る状態か ら,実践 と省察 を通 じて解 放 され る過程 を 「意識化」 と名付 け,彼 の識字教育実践 の根底 に据 えてい る5).

3

)

「銀行型教 育」 と 「課題提起教 育」 フ レイ レは人 び との 「意識化」 の過程 にお ける働 きかけ,つま り教育 の方法 を見事 な対比で 浮 か び あ が らせ て い る . それ が

,

「銀 行 型 教 育」(banking education)と 「課 題 提 起 教 育」 broblem-posingeducation)である.

「銀行型教育」 とは,教 師が必要 な知識 を持 ってお り,それ を生徒 に一方的に伝達す る教育 形態,従来 か ら多 くの教育機 関で行 なわれ てきた教育方法 を指 してい る.つま り,教師 ・生徒 の関係 が基本 的 に一方的 に語 りかける とい う特徴 をもち,語 りかける主体 (教師) と忍耐づ よ く耳 を傾 け る客体 (生徒) とい う固定化 され た関係 にある. 教 師の仕事 は一方 的 に語 りかける内容 で生徒 を満 たす こ とであ り,それ によって生徒 は,杏 栄 ,つ ま り教 師に よって満 た され るべ き入れ物 になって しまってい る.その入れ物 をいっぱい に満 たせ ば満 たす ほ どそれだけ彼 はよい教 師であ る.入れ物 のほ うは従順 に満 た され ていれ ば い るほ どそれ だ け彼 らは よい生徒 となる.教育 は こ うして生徒 が金庫で教師が預金者 である預 金行為 とな る. これ に対比 され るのが,識字教育実践のモデル で ある 「課題提起教育」である. 人間は世界 との関係 にあ る意識的存在 としての人間の課題 を設定 しなけれ ばな らないのであ り,その課題 を提起す るために,教師 と生徒 は対話 (dialogue)を交わ しあ うなかで教 えるもの に も教 え られ るものに もな り,すべてが成長す る過程 において共 同で責任 を負 うよ うになる必 要 があ る.課題提起型 の教 師は,生徒 に考 えるた めの材料 を与 え,生徒 が発表す る,そ して彼 らの考 えを聞 きなが ら自分の以前の考 えを検討す る.教師の任務 は,憶見 (Doxa)の レベル に ある知識 が理性 (Logos)の レベル にある真 の知識 に よって とってか え られ るための条件 を生徒 とともに創造す るこ とにある.課題提起教育 においては,世界 を静止 した現実 としてではな く, 過程 にあ る変化 しつつ あ る現実 として見 るよ うにな る.銀行型教育 は生徒 を援助 の対象 とす る が,課題提 起教育 は彼 らを批判 的思考者 にす るのである 6). プ レイ レが,世界 の識字教育 に限 らず第三世界の民主化運動 ,貧 困地域 の開発 に今 日も広範 な影響 を持 ち続 けてい るのは, この よ う教 師 と生徒 が,あ るいは コーデ ィネー ター と住民が共 に,対等 な対話 を通 して人間 と現実的 な社会 (context) との関係 を 「意識化」す る とい う実践 と省察 の往 復運動 に よって,人 間の 自由を獲得す る とい う理念-の深い共感 を呼び,また,抑 圧 か らの解放 とい う具体的 な社会変革- の行動 に成功 してきたか らであろ う. Ⅱ 1970年代 以降の北米の

C

Oの動向 既述 の とお り,フ レイ レは亡命 中の1969年 か ら 70年 にかけてアメ リカで研究 し

,

「被抑圧 の 教育学」英語版 が70年 に発行 され てい る.70年代以降の北米 の

C

O 実践 にその方法 のみな ら ず,理論 のベー ス となる思想 として取 り上 げ られ基本 に据 え られ てい る. ここではその影響 を -

(6)

20-丙尾 :パウロ・フレイレとコミュニティ ・オーガニゼーション

記述 してい くが,その前 にまず,CO に関す る用語 の整理 を してお きたい.

ロスマ ン(Rothman,J)は1995年 の著作の改訂 以降,コ ミュニテ ィ ・オーガニゼー シ ョン (CO) ではな く, コ ミュニテ ィ介入 (communityintervention) と表現 してい る. ロスマ ンによれ ば, それは この用語 が多様 な地域 実践 をカバーす る一般的 な用語 であるこ とによる.

「コミュニテ ィ ・オーガナイ ジング」(commun ityorganiziJlg)とい う表現 も多用 され るが, これは通常

,

「ソー シャル ・アクシ ョン」 (socialaction) を意味 し, ときにセル フ-ル プ戦略 を含 む ワー ク を意 味す る傾 向 が あ り

,

「コ ミュニテ ィ ・オ ー ガ ニゼ ー シ ョン」 (community orga山zation)は,伝 統的 に包括的 な専門用語 ではあるものの,よ りラデ ィカル なニ ュア ンスの

ある 「コ ミュニテ ィ ・オー ガナイ ジング」と混同 され る傾 向があ る とい う.「コ ミュニテ ィワー ク」 (commu血tywork)は, しば しば 「地域 開発」 (localitydevelopment)の志 向性 を表現 し てい る.まだ標 準的 な用語法 が見つか らない中では, コ ミュニテ ィ介入 は,採用す るのに便利 で有用な包括用語 であ り

,

「コ ミュニテ ィ実践」 (communitypractice) が同 じよ うな性格 を持 ち,時に 「コ ミュニテ ィ介入」に代 わ る代替物 (alternative)として活用 しうる としてい る7). 本稿 においては

,

「コ ミュニテ ィ介入」はまだ 日本 において一般 的でない こ とか ら,伝統的 な用 語 である 「コ ミュニテ ィ ・オーガニゼー シ ョン (CO)」 を使用す るこ とに したい. 1 ロスマ ンの3モデル 北米におけるCO の実践 を体系的 に整理 した研究 と しては, ロスマ ンの 3モデル が一般的 で ある.1968年 に彼 は,CO の多様 な実態 を,地域 開発 (Community Development,のちにLocaljty Development),社会 計画/政策 (SocialPlaming), ソー シャル ・アクシ ョン (SocialAction)の 3 つの類型 に分類 した ものが代表 的 な実践理論 モデル とな ってお り, 1970 年 に ロスマ ンは "strategiesofCommunityOrgaJlization"にま とめてい る. この3モデル は,そのままの純粋 な形 で社会の中に存在す るわ けではないが,現実の コ ミュ ニテ ィの動 きを記述 し分析す るために有効 な道具 として活用す るこ とが可能だ とい う. 図 1 重 な り合 う介入モー ド InterventionModesShownOverlapping 出所:Rothman(2001)pp.47

1)モー ドA 地域 開発 localitydeyeloFXnent

このアプ ローチは,住民が 目標 を決定 し,行動 を起 こす際 に, コミュニテ ィ レベル での多様 な人び との広範 な参加 を通 して コ ミュニテ ィの変化 を追求す るべ きだ と考 えてい る

.

「相互性」, 「アイデ ンテ ィテ ィ」

,

「参加 」

,

「多元化」

,

「自立性」 な どがキー ワー ドとなる. 地域 開発 はプ ロセス ゴール を重視 し,住 民の参加 を促進す るこ とに よって コ ミュニテ ィのき ずなを強めることを志向 してい る. 自助 (セル フ-ル プ) を基礎 とした間層解決能力 と,異 な

(7)

-21-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 る民族 ,文化 ,社会階級 のグルー プの間の調 和 のある相互関係 ,文字通 りすべ ての人び との間 の社会統合 を重視 してい る. その リー ダー シ ップは, コ ミュニテ ィの内側 か ら 「できるよ うにす る」 (enabling)非指示的 な技術 で あ り,成人教育,公衆衛 生,セル フ-ル プ,イ ンフォーマルネ ッ トワー クな どと関連 してい る.一方 で,プ ロセ ス重視 であるために進展 が遅 く,際限ない ミーテ ィングを重ね る傾 向 をもち,参加者 が欲求不満 を起 こす可能性 もある 8).

2)モ- ドB 社会計画/政策 socialplanning/policy

このアプ ローチは,た とえば非行 ,住居,精神保健 な どの実際にある社会 問題 に関す る問題 解決 の技術的 な過程 を強調 してい る.デー タを重視 し,社会科学的な指 向 と経験的客観性 に根 ざ してい る.そのスタイル は技術官僚 的で,合理性 が主要 な理念 である. そのアプ ローチは,複雑 な現代 の社会環境 の変化 はエ キスパー トのプランナー を必要 として, プ ランナー は,技術的 な能力の行使 を通 して,量的なデー タを集 め,巨大 な官僚 的組織 をも操 作 しうる専 門能力 をもつ ことを期待 され てい る. 関心は問題解決 , タス クゴール にある.機 関の間に連携 を育 て,重複 を避 け,サー ビスのギ ャ ップを埋 めることな どが,サー ビス 目標 を達成す るにおいて重要 な関心 となってい る 9). 3)モー ド

C

ソー シャル ・アクシ ョン So¢iala¢tion ソー シャル ・アクシ ョンは,あるコ ミュニテ ィにおいて社会資源 にア クセスす るこ とができ ない,抑圧 され,権利 を侵害 された人び との存在 を前提 としている.そのため,力 (power) と 社会資源 (resources)の再配分 と人び との もつ力 を高 め (empowerment), さらに社会資源 ある いは決定権- のアクセスを獲得 し,利益 をもた らし, コ ミュニテ ィの基本 的な変革 を 目的 とし てい る.また, 「社会正義」 (socialjllStice) をその基本的 な理念 としてい る. そのスタイル は非常に敵対的,好戦的であ り,市行政や,福祉部門あるいは住宅 当局な どに 対 し,政策 の変更 を求 めるための直接行動 を行 う. 戦術 においては,対立葛藤 (conflict)戦術 が強調 され,デモ, ピケ,ス トライ キ,行進 ,ボ イ コッ ト,テ ィーチイ ン,市民不服従 な ど,社会 を混乱 させ注 目を集 めるためのキャンペー ン 等 が含 まれ る.それ はパ ワー レスな人び とが圧力 を行使す るためには,集 団のカす なわち 「ピ ープルパ ワー」 を活用せ ざるを得 ない と考 えるか らであ る10)

4

)

E

)

スマ ンの

3

モデルの変化

-

多元 ア プロー チの活用 後述す る時代状況の変化 の中で,CO の方法モデル も変化 してい く. ロスマ ンは,1995年の 改訂 においては,「混合2重モデル」(compositebimodalmixtures)を提起, 3モー ドのそれぞれ 重 な り合 う領域 についての実践 についての検討 を加 えてい る.その 中で,「開発」と 「ア クシ ョ ン」 の2重モー ドの実践領域 の中で プ レイ レの実践 を位置づ けてい るll). 開発/ ア クシ ョンの複合領域 は, フェ ミニス トの CO,また, フ レイ レス タイル の草の根の co の実践 に表現 されてい る. フェ ミニス トのCOは,民主的な過程 にケア,養育 な どの人間 的 な性格 を含み,合意の強調 ,課題 の割 りふ り,すべての参加者 の議論 を尊重 し使 うこと等 を 重視 し (モー ドA),一方 で,父権 的社会 とい う根本的 な文化 をターゲ ッ トとし,政治的変化 を 目標 とし,力 と特権 の抑圧的手段 を根絶す る ビジ ョンを提供す る (モー ドC). フ レイ レの方法 は, コー ドを用い,テーマ を分 か りやす く視覚化 し,対等 な関係 での対話 を 通 して,人び とが現実の社会 の構造 を客観 的 に意識化す ることを助 け (モー ドA)なが ら,そ -2 2

(8)

-西尾:パウロ・フレイレとコミュニティ ・オーガニゼーション PJann/'ng/11画/開発 Development 7クション Soclal /引画 Actl0∩ ソーシャルアクション 図 2 1 な り合 う介入モー ド (異 なる介入類型の割合)

OverlapplngJnteryentionModesShowingEstlmatedProportionalFrequenciesofDifferentI加ervention Categories(modal,bimodal,aJldintermixed) 出所 :Rothmat)(2001)pp.48

の意識 によって強化 され,閉 じた不公 平 な社会 を変革す るために,必要 なステ ップ を踏む動機 と必要 な手段 を手に入れ る (モー ド

C)

とい う,複合 モデル の一つ と位 置 づ け られ てい る12) 2 1969年以降の北米の社会環境の変化 ロスマ ンが COの 3モデル を発表 した 1968年 は,アメ リカでは公 民権運動 の進展やベ トナ ム 反戦運動 の高揚 な どが頂点 に達 した激動の時代 であったが,翌 69年 には共和党ニ ク ソン大統領 が就任 している.ニク ソン政権 は,ケネデ ィ, ジ ョンソン大統領 の も とで始 め られ た福祉 ・教 育事業の多 くを廃止,また削減 したが,その傾 向は 1981年 に就任 した レーガ ン大統領政権 の連 邦政府 の役割 を縮′トすべ き とい う哲学の も とで さらに徹底 され る.CO の歴 史 においては, こ の 1969年 をひ とつの節 目と して時代 を区分 してお り, フ レイ レの渡米 もこの年 である.69年 以後の時代 は,フ レイ レ以後 とも見 るこ とができる. 1970年代以降の CO 実践 に影響 を与 えた時代 のイデオ ロギー として,ガ- ビン とコックス

(GaJVi

n&

Cox,2001) はまず

,r

セル フ-ル プ活動 の価値」 (Valueofself-helpactivities)-の 信仰 を取 り上 げている.小 さな政府理念 の強調 の 自然 な成 り行 き と見 られ る面 と,一方 で, ラ ンニ ン グや 自然食 ,体 重 管 理 な どの健 康 改 善 の た めの 自己努 力 と通 じる とこ ろが あ り,

AA(AIcoholicsAn onymous)等 のセル フヘル プグル ープの広 が りと成功 がその背景 となってい る また,生活 スタイルや価値 が多様化 し,例 えば家族 は,結婚 してい る異 な る性 の2人の大人 と子 どもをもつ世帯の伝統的 な概念 が もはや規範 とい うよ りも例外 になった としてい る13) こ うした変化の トレン ドを表現す るのが 「多文化 主義」 (multicultuTaljsm)である. 1960年代の黒人層 を中心 とした公 民権運動 か ら,1970年代以降は先住民や ア ジア系,ヒスパ ニ ック系な どの他 のマイ ノ リテ ィに も運動 の影響 が広 が り,多 くのエ スニ ック集 団の間で 「ル ーツ」に代表 され る 自らの歴史 の探究や アイデ ンテ ィテ ィ確 立-の希求 が見 られ るよ うにな る. さらに,1980年代 に急激 に悪化 したアメ リカの経済状況は,とりわけマイ ノ リテ ィの人び と の経済的窮乏 を深刻 なものに した.大都市 を中心 として 白人 中産階級 が郊外 に居住空 間を移 し, 経済機能 も郊外 に移転 した結果 ,マイ ノ リテ ィの雇用機会 が減少 し,社会福祉政策の対象 とな る人 口比率 も急激 に伸びた14)

運動 によって獲得 され てきたマイ ノ リテ ィ-の積極的 な差別是正措置 (affirmativeaction)に

(9)

-沖縄大学人文学部糸己要 第12号 2010 対 しては保守層 か らの批判や攻撃 が相次 ぎ,大学 においてもマイ ノ リテ ィの学生 に対す る暴力 が増加す る一方,都市 の貧 困地域 においては,エスニ ック ・マイ ノ リテ ィの コ ミュニテ ィ活動 が多様 に展開 され発展 してい る15). こ うした 1980年代以降の市場 主義,グ ローバ リゼー シ ョンの中のア メ リカ社会 の変化 の特徴 をフィ ッシャー

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「公 的 な生活 の撤退」

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「私的 な生活 の重視 」 ととらえてい る. 都市 中心部の貧 困の拡大 と同時 に, 自立 ・自助 に価値 を置 く私的 な消費者 ,家族 とい う価値 を 重視す る個 人主義 の文化 が広 が り,限定 された閉 じた場所 (グーテ ッ ド ・コ ミュニテ ィ)や シ ョッピングモール の よ うな私的 な空間 によって都市が分割 され,都市住民 は コ ミュニテ ィの感 覚 か ら切 り離 され,浮遊す る感 覚 をいだき,階級,人種,民族 ,近隣 な どによって分断 されて い る. ソー シャル ワー クにおいて も,再び精神分析的,心理療法-の傾斜 が起 き,公的な意識 を発展 させ市民 をいかにエ ンパ ワーす るかは,CO のオーガナイザー に とっては新 たな挑戦 と なってい る.社会福祉 の負担 が ビジネスの世界的な競争力の足かせ とな らない よ う抑制 され る ペ きだ とい う考 え方 の下では,CO は公 的な資金 を絶 たれ,私的な資金 に頼 るよ うになったた めに,社会資源 をもつ人び と,組織 とのパー トナー シ ップを形成す るこ とはよ り重要にな り, ア リンスキー がかつて提示 した 「人び との怒 りの感情 をこす り上げ る」 コンフ リク ト戦略は効 果的ではな く,合意戦術 が必要 になってきてい る16). フィッシャー の言葉 か らは公 的 な コ ミュニテ ィ意識 の衰退 とい う CO に とっての危機意識が 感 じられ るが,フ レイ レの実践 とその思想 が盛 んに試み られ て きたの も,こ うした多文化主義, 私的 な個人主義化 の状況の 中での市民の公的な意識化 , さらに主体化 がカ ギである とい う認識 と関連 してい る と考 え られ る. 3 フ レイ レを基盤 に した

C

O実践事例 1970年代以降のア メ リカの CO実践 と教育 においては 「意識化」は 「エ ンパ ワメン ト」の根 底 思想 と考 え られ てお り,また,省察 を伴 った実践

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とい うフ レイ レ独 自の用語が頻 出 す るのは, フ レイ レ思想 がいか にアメ リカの CO 実践 に浸透 してい るか を裏付 けてい るが, こ こでは,その影響 の諸相 につ いて,CO の実践事例 を二つ取 り上げ検討 してみたい. 1) サ ンフランシス コ .テ ンダー ロイ ン地 区における低所得嘉齢者の

C

O実践 サ ンフランシス コ ・テ ンダー ロイ ン地 区は,都市 中心部のシングルルー ムのホテル がひ しめ き,多 くの高齢者 が,不健康 ,社会的孤 立,貧 困に直面 し生活 してい る地域 である.そ こに誕 生 したテ ンダー ロイ ン高齢者組織化事業

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年 の歴史 を もつ CO の推進 団体 である. 地 区は文化 的多様性 をもつ居住地で あ り,市平均 の 30倍以上の人 口密度 があ り,犯罪率が最 も高い地区で もあ る.大手スーパー の不在 ,酒販 売のア ウ トレッ トが集 中 し,住宅基準の不徹 底 な どの問題 が存在す る.強み

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としては,多言語新聞が長年 にわたって発行 されて お り,信頼 を集 める教会 ,進歩 的 な健康セ ンターや活発 な近隣の連携活動が存在 してい る.

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の 目的 は高齢者 と地域住 民 を援助 し,エ ンパ ワメン トを助 けるこ とにあ り, 目標 は住 民の

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, 自信 , リー ダー シ ップのスキル を引き出 し,社会的支援ネ ッ トワー クを 強化す るこ とに よって社会的孤 立 を減 らす こ とにある17) プ ロジェク トの基礎 には, フ レイ レのエ ンパ ワメン ト理論 がある.

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は 「フ レイ レ ・プ ロジェク ト」と呼び,学生の ファシ リテ一 夕-が実践場面で積極的 に活用 しよ うと試みてきた. ただ,根本原 因

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を考 える継続的 な対話 は,す ぐに直接的 な問題解決 には向かわず, -

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24-西尾・パウロ・フレイレとコミュニティ・オーガニゼーション 理論的な基礎 ではあった ものの,それ 自体 は方法 としては継続的 に採用 され ては こなかった. 日々の実践で よ り活用 され たのは,ア リンスキー (SaulAlinsky)の哲学 と方法 である.ア リ ンスキーは,「持 てる者」 (thehaves) との関係 において,抑圧 され ,剥奪 され た低所得 の コ ミ ュニテ ィを捉 え,そ の共有 され た利 益 ・関心 の もとに人 び とを結集 させ ,特定 の課題 や 目標 (target)を設定 し,行動 キャンペー ンに人び とを動員 し,その集団的 な行動 を通 して,力 を再 獲得す るプ ロセスを容易 にす ることを 目的 としてい る.フ レイ レとア リンスキー の理論 をつ な ぎ合わせ る形で,「深 く共有 された価値 に根 ざす行動 は,特定の不公正-の取 り組 み に依存す る よ り,持続 され る傍 向があ る」 とい うミラー (Miller,1993)の考 え方 を基礎 としなが ら,CO と民主的 な市民性 の関係 を重視 し,価値 について議論 し,対話 に よって抑圧 を内面化 したシス テムや個 人主義,消費主義 を乗 り越 えるこ とができる としてい る19). 1979年 に設 立 され た TSOPは,借家人協議会,ホテル協議会 な どの支援 グルー プをつ くる方 法 を採用 してきたが, これ は地域 に存在 す る さま ざまな 「援助機 関」や組織 をつ な ぐこ とに よ って正 当性 を確 立す るとい うア リンスキー の方法がモデル となってい る.カ リフォル ニア大学 バー ク レー校 のCO を学ぶ大学院生のボ ランテ ィアがホテル の協力 で,住 民の交流 の手段 と し て,ホテル ロビーで ドリンクを提供す る活動 が始 まった. こ うした 自由な雰囲気 の場 がで きた ことによって,住民の中に信頼 が高 まってきて,参加者 は,犯罪の恐怖,孤独 ,家賃 の こ と, 力 を奪われてい る感覚の ことな ど,個 人的 な関心 を語 りは じめるよ うになった. 学生の フアシ リテ一 夕- は, グルー プの結束 を助 けるためのCO と教育アプ ローチの融合 さ せた方法 としてフ レイ レの問題提起 プ ロセ スを,住民 が共有す る問題 について対話す るよ う支 援す る適切 な方法 として活用 した.同様 に,現状-の不満 を具体的 な行動 につ なげ,特定 の課 題 に焦点化す るよ うに助 けるア リンスキーの方法 も活用 された. 地域 の課題 と しては,住 民の栄養失調 が深刻 で, とくに新鮮 な フル ー ツや野菜の欠乏が明 ら かにな り,地元の業者 と契約 し,ホテル での 「ミニマー ケ ッ ト」 を週1回午前 中に運営 .朝食 を提供す るホテル もあ り,栄養 が取れ安 くつ くるこ とのできる 「調理 のい らない ク ックブ ック」 な どの成果 も生み出 した.この本 は後 にサ ンフランシス コ市 の保健所 か ら発行 され,3000部 が 無料 で配布 された. こ うした初期 の達成 は住 民 に困難 な課題 に対す る 自信 をもた らした. また,地域 の犯罪 と安全 を主要 な問題 として取 り上げ,「安全住宅プ ロジェク ト」 が始 ま り, 巡回パ トロール警察官の配置 を通 して,犯罪 率の減少 に貢献 した.犯罪 の根本原 因は貧 困にあ るこ と,ホー ム レスの擁護や失業者 の職業訓練 の必要性 が認識 された. こ うした取 り組み を通 して,住民は組織 スキル ,経験, リー ダー シ ップ を育て,社会変革 とい う目標 に向かい, コ ミ ュニテ ィの能力 (comrnunitycoTnpetenCe) を高 める とい う目的が達成 された20).

住民主導の活動 には,依存 の危 険性 が伴 うが,1980年代半ばには,直接サー ビスによって利 益 を受 け とることだけに関心が集 ま り,「オーガナイザーが相互援助 プ ログラムに時間 とエネル ギー をかけす ぎてい る」 とい う反省 が起 きた.議論 の末,直接 サー ビスプ ログラムは徐 々に廃 止 となった. しか し,住民の反対や,疲 労,無力感 な どの問題 も生 じ,実感 できる 「届 け られ る」サー ビスに較べて魅力 に乏 しいため,資金 を提供す る伝統的 な財 団の支援 が打 ち切 られ , 資金不足 によ り,オーガナイザー は資金集 めに奔走せ ざるを得 な くなった. 1995年 か らTSOPは,住民の要求だ けに焦点 を当て,権利擁護 を重視 し,住民 との対話 をは じめるが,エ ンパ ワメン トのための リー ダー シ ップ トレーニ ングに力 を入れ るこ とにな る,そ の後,住民組織 はグループ間の活動へ発展 し,若 い人たちの参加 が増加 し,多文化 の コ ミュニ テ ィの中で,若 い障害者,ホーム レス,失業者 に焦点 を当てたサポー トグルー プの活動 が生 ま れた.TSOP は,犯罪率の低下, コ ミュニテ ィの結束 をもた らし,多 くの住 民が グル ー プに参

(11)

-25-沖縄 大学人文学部紀要 第

1

2

2

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加 す るこ とで,孤独 や抑 うつ を感 じな くなった こ とが成果 と して あげ られ る, 最 終的 には,16年 間 にわた って行 われ てきた TSOPは,予算の確保 の困難 があ り,政府 の援 助 がな く,民 間財 団 に頼 らざるを得 ない状況 か ら,プ ロジェク トの終 了 を迎 えた21), TSOP の事例 か らは,貧 困 コ ミュニテ ィにおいて,オーガナイザー と住民,あるいは住民 リ ー ダー との 関係 づ く り,共通 の問題 を認識 す るプ ロセ ス において, フ レイ レの対話方法 が意識 的 に取 り入 れ られ ,問題 を特定 した後 の行 動 の段 階 にお いては, ア リンスキー の ソー シ ャル ・ ア クシ ョンが取 り入 れ られ てい る こ とが分 か る. 2)ニ ュー ヨー クの公立学校 の親 の リー ダ- シ ップ ・プ ロジ ェク ト

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つ ぎに,ニ ュー ヨー ク州 立大学 の親 の リー ダー シ ップ ・プ ロジェ ク ト

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の事例 をザ ッカ リ

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) の研 究 か ら紹介 す る.

CO

は都 市 の貧 困 コ ミュニテ ィの再生 に焦点 をあて るが,特 に コ ミュニテ ィの人間関係 の再 活性化 を 目的 とし,住 民参加 を促 進す る地元 の リー ダー の開発 が重視 され る.草の根 リー ダー は コ ミュニテ ィ再生 のプ ロセ ス にお いて,重 要 な役割 を演 じるが, リー ダー の存在 は

CO

の推 進 と同時 に大変 に厄 介 な敵 に もな り うる とい う,語 られ に くい実態 が あ る22).

CO

は こ うした リー ダー シ ップ を究極 の力 の源 であ る住 民 の積極 的 な参加 を促 し, グル ー プ が よ く運 営 され ,人 び との参加 を容易 にす るこ とがで き るよ うな一連 の技術や機 能 と して とら え られ るが,リー ダー とメ ンバー との相 互 の対話 を重視 す るフ レイ レの方法 を基礎 に してい る. ①

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の概要

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は学校 とコ ミュニテ ィの変革 に向 け,親 た ちが効果 的 な擁護者

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となるこ と を 目的 とした 「グル ー プ 中心

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アプ ロー チ に よる リー ダー シ ップ研修 で,生徒 との対話 ,親 の会議 ,親 の経 験 の尊重 な どが重視 され てい る.

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人以上 の親 が参加 したが,女性 が大 半で

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以上), また ア フ リカ系 または ラテ ン系 が

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以上 ,大学 を出ていない親 が

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以 上 と多 くを 占めてい た.複 数 の民 間財 団の補助金 に よって助 成金 を得 て運営 され ,ス タ ッフは, ひ と りの フル タイ ムのデ ィ レクター (教 師) と年 間平均5人 のパ ー トタイ ムの トレーナー によ って構成 され た.デ ィ レクター は 白人 で,研修期 間の トレーナー の8割 はア フ リカ系かラテ ン 系で あった,カ リキ ュラムは週1回 2時間の ワー クシ ョップ に よ り構 成 され 20週 間 を通 して 継続 的 に行 われ , リー ダー シ ップス キル を発展 させ ,最新 の教 育 の課題 の知識 を発展 させ るこ とを通 して,親 た ちを助 け,学校 にお いて変化 の媒 介 と して と して よ り活動 的 な主体 として巻 き込む よ うにす るこ とが 目的 であった23). ②

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の プ ロセス 研修 のプ ログラムの 中で重視 され た方 法論 につ いて は、表2の項 目に整理 し,参加 した親 の コメン トを交 えなが ら, そのプ ロセ ス を紹介す る24). こ うした

PLP

が大切 にす る原則 は

,

「相互支援

「相互尊重

「信頼 」の

3

つ に集約 でき る 25). ③

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の辞儀

PLP

には,取 り組 む課題 を親 た ちが生 きる現 実社 会 か らコー ド化 しなが ら対話 的 にテーマ を 深 め るフ レイ レの教育方 法 が基盤 となってい る.20週 にわた った ワー クシ ョップは,参加者 に コ ミュニテ ィ感 覚 を生 み だ し,親 た ちが リス クを引き受 け る こ とを可能 に し,親 た ちの間の高

(12)

一26-西尾 :パ ウロ ・プ レイ レとコミュニテ ィ ・オーガニゼーシ ョン 表

2 P

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の研修 プログラムのプロセス トレ- ニ ングの内容 l 参加者 (親 )の声 ①誓約の儀 式 を通 じた コ ミュニテ ィづ くり 最初 の段階 は参加 者の可能性 に影響 を与 える.皮 肉 な感 情や 「私 た ち は相 互 に活 動 す る た めお 互い の こ 無関心,不信 が取 り除かれ る必要 があ り,グル ープの中に コ ミ とを知 る必要があ る.ただ座 って手 を 上げれ ユニテ ィの感覚 をつ くるために 「アイスブ レイ ク」(icebreak) ぱいい のではない.

「緊張 した ら学習 はで き が行 われ る.参加者が相互 に知 り合 えるよ うな雰 囲気づ く りを ない.私 たちは完全 に リラ ックスできていた 行い,信頼 とr*重 の基礎 が形成 され る よ う努 め る. か ら,すべ て に没頭 で きた」 ② 力を分か ち合 うこと :投資 と所有 を築 く 事 前 に親 た ちは トレー ナーか ら学 びたい内容 につ いて イ ン 「研修 の 中で大切 な役割 を演 じてい たのは, タビュー され る.PLPが親 自身 のプ ログラムであ り, トレーナ 私 た ちが毎 日の生活 で使 っていたスキル で, -はその援助 を行 うとい うことが最初 に伝 え られ る.その内容 トレー ナー は私 たちか らそれ を得 た.」 がカ リキュラムの中に組 み込 まれ るの で,親 たちはPLPの共 同のオーナー になるこ とができる. pLPが力 と責任 を グルー プ と分か ち合 うよ う採 用 してい る 「おそ らく多 くの批判や攻撃が あ り,混乱 も 戦術 は,彼 らの経験 を可能 な限 り積極的 にお 互い に期待す る行 あるだ ろ う.だか らこそ,ルール を作 る必要 動 と態度 であ り.参加者 による共通基盤 (groundrules)ルール があ る.それ は,私 たちに力 を持 ってい る と の発展 である. い う感 覚を与 えて くれ た.」 ③参加 の文化 :尊重が学習 を促進す る 権威 的 な リー ダー は,フ レイ レの銀行型 アプ ローチ に似 てい 「私 たちの関心 を聞 くことがで きた.それ は る.逆にPLPの親 た ちの学習の最 も豊かな ソー スはグループ 私 が ま さに私 であるよ うに実感 で きた.私 は にお ける他 の親 たち との相互 の交流 の中にあった,参加 の文化 多 くの親 が家庭 の仕 事 に関 して 同 じ問題 を は共有 と傾聴 を発展 させ る.心理的 な安 心感 は親 た ちを積極的 持 ってい るこ とがわか った.だか ら,私 は決 に参加 させ る ことにつ なが る.自身 の経験 を分か ち合い,学校 してひ とりではない と実感 で きた.」 において遭遇 した問題 や 論 点 につ い て他 の親 た ちが話 す こ と 「だか ら.違い は,脅威 になった り,分 断 さ を聞 くことに よって,理解 され てい ると感 じるこ とが で きた. れ るこ とはなか った.」 ワー クシ ョップでは相 互活動 を重視 し,レクチ ャー を極 力抑 「私 が考 えてい た以 上 に私 が多 くを知 っ て える.互 い に学 び たい と感 じられ る小 さな グル ー プ で行 われ い る ことを明 らかに して くれ た.それ は私 が る.学習の最初か ら親 たちが もってい る経験 とアイデ ィア を使 知 らなか った ことではな くて,す でに知 って うことによって,親 たちはPLPか ら深 い尊重感 を受 け取 って い る ことの知識 を確認 す る助 けになった.私 いた. が リー ダー だ とい う実感 を もた らした.」 敬意 と高い期待 は,ワー クシ ョップ において相互の関係 して 「彼 (トレーナー)は,我 々が ワー クす る主 いる.安全 と信頼 が グループにおいて形成 され るよ うに,参加 体で あ ることを強調 しつづ ける.彼 は我 々が 者 と トレーナーは,それ ぞれ の考 え と前提 に挑 戦す るこ とがで すべ て をや るべきである道 をひ らき,促進 す きる,敬意 は個人 の経験 を証明す ることによって生 じ,期待す るた めにだけそ こにい る.彼 はわれ われ か ら ることによって運 ばれ て くる. 引き出 し,われ われ は常 に,考 え,評価 し, これ らの多様 なツール.アイ スブ レー ク,ニー ズアセ スメ ン 議論 し,それ らはわれ われ の中か ら出て くる ト,グループルール,′トグループ,ロールプ レイ,グル ー プ中 のです .」 心の フ アシ リテ- シ ヨンのテ クニ ックな どを創 造す る こ とを 「それ は私 が リー ダー と しての 自覚 を もた 「参加 の文化」 とい う. らしたのであ る.」 ④ スキルが あ りかつ謙血 な フアシ リテ- シ ∃ン :グルー プの 中一こ平等 と団結 をつ くりだす 高い技術の フ アシ リチー ターが必要 となる.親 たちは トレー 「彼 女 は非常 に正 直で,彼 女の人生 に起 きた ナ-の行動 が決定的 に重要だ つた と認識 してい た.トレーナー ことを深刻 ではな く話 した.参加 者 が感 情的 は時 には,自分 自身 の失敗 を積極的 に認 め,彼 らの経験 と傷つ になった とき,彼 女 は 『よ く聞い て,それ は きゃす さを率直に親 たちに投 げ出す ことで,信頼 とつ なが りの 私 に起 きた こ となの よ』 と言 った.彼 女 は大 感覚が作 られ,威厳 と平等 を グループの深 い感 覚 と して形成す 変 にオープ ンで,正直な人間だ った.彼 女 を ることに貢献 した.実際,ある親 は トレーナーが怒 りを見せ た とて も尊敬す る.」 とき,信頼が深 まつた とい う. 「時 々,彼 は怒 り,彼 が怒 ってい るこ とを皆 過 ちを認 め る能 力 は, トレーナー と参加 者 の間 の距離 を壊 に知 らせ た.私 は彼 の正直 さを評価す る.そ し,グループに平等 と尊厳 の感覚 を構築 した.この よ うな 「自 れ は多 くの リー ダー はそ ん なふ うに は しな 己のシェア リング」 は,参加者 の強力 なかかわ りを促進 した. いか らだ.」 ⑤学習者の コ ミュニテ ィの出現 :信頼 は親 たちが lJスク を負 うことを可能 にす る 20週間以上 の研修 は,親 たちの間に互いがつ なが ってい る と 「私 が毎 回 ここに戻 って き た の は雰 囲 気 が い う意識 と彼 ら自身 が リー ダー シ ップの能 力 を持 ってい る と よか つたか ら.それ はまった く家族 で あ る と い う自信 を もた らした.また,繰 り返 し語 られ た よ うに 「家族 」 い う感 じ,毎水曜 日会 うこ とが楽 しみ な家族

-27

(13)

-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 い結束意識 と個人的 な リー ダー シ ップ能力 -の よ り強い感覚 をもた らした.フ レイ レの方法が コ ミュニテ ィにお けるグルー プ ・エ ンパ ワメン トの方法 として捉 え られてい るのである. しか し,これ までのPLPには リー ダー シ ップの開発,コ ミュニテ ィ意識 の発展 で大 きな成果 があったが,それ が トレーニ ング とい う安全 な場 に限定 されてい るとい う限界 もあるこ とをザ ッカ リー は指摘 してい る.次のステ ップ,す なわ ち行動 (action)の段階 に リー ダー シ ップの発 展 が コ ミュニテ ィの状況 に どの よ うに力 を発挿す るのかについては,評価 が難 しい とい う26). 4 フ レイ レ息忠の

C

Oにおける理槍的位t づ け さて

,CO

の研究 にお けるフ レイ レ思想 の位 置づ けについて代表的な研究 を見ていきたい. 1) 多元化社会 の

C

O実践 リベ ラ とエー リッヒは,都 市の貧 困構造 とその差別 と抑圧 の状況 を変革 してい くためのアプ ローチ として,従来の政治的イデオ ロギー的 に中立であるべ き とい う漸進主義的,合意 を重視 す る

CO

戦略 は適 当ではない と主張す る. と りわけエスニ ック ・マイ ノ リテ ィの

CO

において は,人種 ,民族,文化 の面にお ける独 自性 とともに批判的意識 (criticalconsciousness)の発 展 とエ ンパ ワメン トの過程 を重視す る必要 がある と してい る.古典的な

CO

モデル では,マイ ノ リテ ィの問題 を素通 りし,適切 に対処 できない でい る とい う背景があるか らである27)

.

「冷 た く中立的 な技術者 である教育者 ,あるいは ソー シャル ワーカーであることはできない」 とフ レイ レの言葉 を引用 し, 中立性 を要求 し,偽装す るこ とは,現状維持 を助 けるだけだ とす る. その上 で,マイ ノ リテ ィの コ ミュニテ ィに強調 され なけれ ばな らない要素 として,①人種, 民族 ,文化的 なマイ ノ リテ ィの独 自性 ,② その独 自性 に よって果 た され る役割 としての多様 な 関係 にお け る意味,③批判 的意識 の発展 とエ ンパ ワメン トプ ロセス,を挙げてい る28), つ ぎに,彼 らは

CO

においてオーガナイザー とコ ミュニテ ィは双方に とって教育的である過 程 として概念化 され るべ きだ とし

,CO

実践のオーガナイザーの成功 に とって重要だ と考 え ら れ る要素 を リス ト化 してい るが,その 中で も特 にフ レイ レ独 自の用語 が直接使 われてい る 「意 識化」 とエ ンパ ワメン トのスキル ,は重要で,図式化 し記述 され てい る. 抑圧 され た コ ミュニテ ィにお けるオーガナイザー の主要 な課題 は,批判的 な意識 を発展 させ るプ ロセ スを通 じて人び とをエ ンパ ワーす るこ とであ り,その際,オーガナイザーは 目的や対 象 と してではな く, ともに主体 と して コ ミュニテ ィを見 るべ きで, 自分が答 えを もってい る と い う感 覚で コ ミュニテ ィに入 るべ きではない とす る.「意識化」の過程 を通 じて批判的意識 を発 展 させ るこ とは, 2重 の らせ ん として視覚化 され る (図 3). con80erltiヱation意 詫B化 l Co-¶mur111y コミュニ テ ィ 図 3 批判的意 義の発展 Rivcra,FG,Erlich,I_(1998)pp15

(14)

-28-西尾 .パウロ・プレイレとコミュニティ・オーガニゼーション

CO

は,特定の 目標 の獲得 に向けたキャンペー ンだ けに力 を入れ るのではな く,長期的 な努 力で,住民 自身 の力 を構 築す る こ とがで きる. この場 合 の力 (power) はアイデ ィアや 関心 (interest)を生み 出す が,それ は破壊 的 にも,生産 的 に もな りな り うる.特 に脅威 に も とづ く力 は抑圧 された コ ミュニテ ィに共通 して見 られ る.そ こである力 をターゲ ッ トに した ら

,

「勝 ち負 け」状況だけが生 まれ る.限定 された特別雇用 のプ ログラムは常に この形式 を とる とい う. しか し,力は交換 の形式 であ り,互恵的な関係 の中で最終結 果が 「ウイン ウイン」(win・win) となるよ うなある種の信頼 を熊成す るこ とができる. コ ミュニテ ィ, ライ フスタイル ,家妖 の 愛 として規定 され る力 が,オーガナイザー とコ ミュニテ ィを動機 づ けるのだ とす る. オーガナイザー とコ ミュニテ ィは相互 に学び合い,問題 を提供 し,戦略 と戦術 を獲得す るの であ り,それ は理論 と経験 の統合 としての実践 (praxis)の考 え方 に基づ いてい る とい う29)

2

)

ハーテ ィナ の 「変革 モデル」 ハ-デ ィナ(Hardina,D)は, ロスマ ンの 3つ の方法 モデル に 「変革モデル」(Transformative model)を加 えてい る. この実践モデル の第-の要素 は,権力 と資源 の獲得 を通 して奪 われ てい る力は悪い影響 を持 つ とい う前提 である.それ ゆえ

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o のプ ロセスは権威 の拒否 によって特 徴づけ られ る. したが って,すべての参加者 はオーガナイ ジ ングのプ ロセスにおいて平等 に教 われ

,

「エキスパー ト」も特別 な地位 にあるわけではない.--デ ィナ は,変革モデル のほかに, 多文化実践モデル ,フェ ミニス トモデル を擾示 してい るが,付加 的 な3つのモデル に,共通す るのは個人的な こ とと同様 ,政治的 な変化,変容 を重視す る とい う視点 である30). 「変革モデル」は,社会構造 が人び との生活 をいかに抑制 してい るか とい う理解 を高 めるこ とを意図 している.生徒 (住民) は,彼 らの生活 の形作 ってきた経験 か ら 「もっ とも優 れ た専 門家」(bestexperts)である と認識 され てい る.教師 と生徒 は対等 であ り,学習 プ ロセ スでは教 師は生徒 の経験か ら抑圧 を学び,生徒 は知織 を得 る.そ して,共通 の問題 を解決す るスキル を 発展 させ る能力 によって住民 をエ ンパ ワーす る.この過程 をプ レイ レは 「意識化」と呼んだが, これが

CO

プ ロセスにおいて も本質的な部分 となる. 「批判 的意 識」 の発 展 の プ ロセ ス におい て,す べ ての参加者 は

,

「活発 な学習者」 (active learner) となる.教育的なプ ロセ スの 目的 は参加者 の生活 の変革 である.フ レイ レは,参加者 が社会変化 を効果 あ らしめる, 自分 (たち)のス トレングス,能力 を知 るよ うにな る,つま り 自分たちの環境-のある種 の統御感覚 を獲得す ることを望 んでい る. 変革モデル は,アメ リカ,カナ ダで多様 な

c

o 実践 として展 開 され て きた とい う31).その特 徴 は,1)対話,2)生活 と文化的背景 専門職 が活動的 な学習者 になること,3)対等 なパー トナ ー,4)批判的意識 の発展,5)社会変化が個人的,政治的変革 に導 く, 5点に要約 できる. ハ-デ ィナ は,一方 で変革的アプ ローチの限界 も指摘 してい る. 一つは,フ レイ レモデル がブラジル の同 じ文化 を もつ教育者 に よる ワー クである点である. オーガナイザーは,階級や文化 な どの境界 を乗 り越 えるこ とを期待 され るが,参加者 の教育 に 焦点 を当てた多段階 の過程 において, ゴール の達成 をめ ざす参加者 の対話 には時間 がかか り, 時間を浪費す る とい う欠点があ り,危機的 な状況 に対応 できない とい う問題 がある とい う, また,参加者 が同 じ価値 を持 ってい る とは限 らない とい う点 も指摘 してい る.抑圧 が複雑 で, 多様 な レベル での抑圧 があ る場合 ,た とえば,陣がいのあ る黒人女性 は,異 なる由来の多 くの 抑圧 を経験 してい るこ とがあ り, グループによる対話 をすす める難 しさがある とい う.第3に は, コ ミュニテ ィの合意の難 しさがあ り

,CO

組絵 は財政的 に継 続す るために寄付者 の意向の 沿 う必要があ り,主要な文化 の価値 を採用 しなけれ ばな らない とい う問題 が生 じるのである32) --デ ィナは

,CO

の実践モデル を複数碇示 した上で,実践 アプ ローチ を選択す る必要性 を -

(15)

29-沖縄大学人文学部紀要 第12号 2010 提起 してい るが, この議論 は, ロスマ ンが3モデル ,複合モデル ,多元モデル を

C

O の段階や コ ミュニテ ィ状況 に応 じて発展応用す るこ とを提起 してい ることと重 な る. Ⅱ プ レイ レが北米の

C

O実践 に与 えた影響 さて,ここまで,パ ウロ ・フ レイ レの教育方法 が1970年代以降の北米の

C

O実践 に影響 を与 えてい る事例 と

,C

O実践 の理論化 に浸透 してきた位置づ けについて概観 して きた. 1960年代 に ソー シャル ・アクシ ョンが

C

O の一つ として類型化 されたが,それ以後の北米社 会 の変化 の中で, 自助価値 の高 ま り,多文化 主義 の普遍化,社会福祉 の抑制傾 向の中で,マイ ノ リテ ィの コ ミュニテ ィの貧 困 ・抑圧状 況 に取 り組む

C

O の方法 として フ レイ レモデル が広範 に,ア リンスキー スタイル の ソー シャル ・ア クシ ョン と同様 ,また併用 されつつ展 開 され てき た とい える. とりわけ,住民 との対等 な関係 を基盤 に した教育実践 として, コ ミュニテ ィの住 氏- の意識化, とくにオーガナイザー と住 民,住 民 リー ダー との関係づ く りにお ける実践 とし て取 り入れ られ てきた こ とがわか る.一方 で,エ スニシテ ィが多様 であった り,抑圧 の構造が 複雑 な コ ミュニテ ィにおいては,必ず しも上手 く活用 しえない面や,時間をかけた対話 による 意識化 は,直接 的な成果 が得 られ に くい とい う課題 も明 らかになってい る.

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o

実践 の理論化 においては, ロスマ ンの よ うに3モデル のひ とつのバー ジ ョン とす るもの と,ハ-デ ィナの よ うに従来の3モデル とは異 な る 「変革モデル」 として位置づ けるものがあ り,今後 も模 索が続 くと考 え られ る.いずれ に して も, ソー シャル ワー クの統合化 とい う トレ ン ドの 中にあって も

C

O が独 自の領域 として発展 してきた北米 において, フ レイ レの教育実践 がその根底 にあ る思想 とともに深 く広範 な影響 を与 え,不可欠の理念 として位置づいてお り, それ を無視 しては,北米

C

Oの発展 を理解 しえない こ とは確 かであろ う. おわ りに 一 日本 における

C

Oへの示唆 日本 においては,地域福祉 とい う独 自の実践領域 が存在 し,地域組織化 , コ ミュニテ ィワー ク, さらには コ ミュニテ ィ ・ソー シャル ワー クな どの用語 によって理論化 が試 み られ,模 索が 続 いてい る,その発展 においては,1970年代以降の北米

C

O の実践 ・理論 が取 り入れ られず, 影響 はきわめて限定的であった.それ は,北米 において も伝統的な手法 とはフイ ッ トしなかっ た よ うに, 日本 の コ ミュニテ ィワ--クが,社会福祉協議会 を中心 とした官製 に近い ものか ら出 発 したか らなのか.また, 日本 は北米 の よ うな多文化社会ではないか らなのか. この問いかけ が的 を得 てい る とすれ ば,その有効性 は小 さい と結論づ け ざるを得 ない. 当然 , 日本 と北米 とは社会 の伝統 も政治 システ ムもコ ミュニテ ィのあ り方 も当然大 き く異 な ってい る. 日本 では北米 の よ うに多文化主義 が国民のアイデ ンテ ィテ ィの上での中心的な議論 になるこ とはな く,集 団主義的なあ り方 はます ます強まってい るかの よ うにも見 える.さらに, 一人 の生活者 の感覚 か ら言 うな らば,個人 と社会 の距離 はます ます遠 くなってい るよ うに感 じ る.社会 の構造 的な不利益や抑圧 され た状況 だけでな く,人間相互の関係や家族 がつ くり出す 問題 が拡大 し,不透 明で見 えに くく複雑 にな り,一市民 として何かができる と実感 できるよ う な状況 か らは遠 ざか ってい る.プ レイ レのい う 「沈黙 の文化

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が別 の意味で 日本 の社会 を覆 ってい るかの よ うで もある. しか し,だか らこそ,フ レイ レの思想 と方法やそ の影響 を受 けた北米 の

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O 実践 が刺激 とな る可能性 はないだ ろ うか.社会 の変革 は一部の専門 家 だ けに委ね られ る課題 ではな く,生活 をす る住民 と社会の相互の関係性 の 中に こそ見出すべ きで あ り,た とえそれ が不透 明で見 えに くい として も,逆 にだか らこそ生活者 の 日常の素材や

-30

(16)

-西尾 :パウロ・フレイレとコミュニティ・オーガニゼーション 実感 か ら出発 して, フ レイ レが生成語 を生み出 した よ うに,生活 の課題 とテーマ を対話 を通 し て見出 し,再び人び とに生成 テーマ として提起す るよ うな課題提起型 のCO が 日本 において試 み られていいのではないだ ろ うか. 実はそのための方法論は,すでに 日本 において も住 民の参加 を促進 させ,課題 を提起 しなが ら住民 との協働作業で検討す る 「住民 ワー クシ ョップ」 とい う方法 として数多 く試み られ 多様 な実践が広 がってい る. この参加 と協働 実践 の展開において, フ レイ レの 「意織化 」 と 「課題 据起教育」の手法 を 日本社会 の現実 に即 したかたちに応用す るこ とに よって, ワー クシ ョップ の方法論が人間 と社会の現実 に按近 し,深 め られ るよ う追求す るこ とが必要 だ と考 えてい る. その可能性 の未来 に向けてパ ウロ ・プ レイ レの ことばで小論 を閉 じたい. 「人間 として生 きることは,他者 お よび世界 とかかわって生 きるこ とであ る.人間は世界 と距 離 をた もち,世界 にむかってひ らかれ てい るがゆえに,関係性 をもつ存在 である とい う特徴 を もつ.人間 は世界の中に生 きてい るだけではな く,世界 とともに生 きてい る.」 (フ レイ レ 「伝 達か対話 か」 よ り) 注 目 ,∼ I フ レイ レ,P 小沢有作,楠原彰 ほか訳 (1979)『被抑圧者 の教育学』亜紀書房 pp.255-305 Shor, I. (1987) Freire for the Classroom? A Sourcebook for Liberatory Teaching, BOYTON/COOKHEINEMANN,pp.215-231

3) ib.1)pp.109-156

4) ラテ ン系言語や英語 では,意識 と良心は同義 であ り

,

「良心化」あ るい は 「人間化」 と翻訳 す ることも可能である.

5) ib.1)pp.1-ll 6) ib.1)pp.65-92

7) Rothman,J(2001)AproachestoCommunity htervention,Rotlm an,J.ErlICh,J.L,Tropman,J.E. StrategleSOfCOMMUNITYINTERVENTION sixthedltion,THOMSON,pp.28-29

8) ib.pp.29-31 9) ib.pp.31133 10)ib.pp.33-35 ll)lb.pp・47-48 12)it).pp.49

13)Garvin,C.D.,Co又,F.M.(2001) A historyofCommunity organizingsincethecivilwarwith specialreferencetooppressedCommunities,JackRothman,Joml L.Erlich,JohnE.Tropman (200I)StrategiesofCOMMUNITYINTERVENTION sixthedition,THOMSON,pp.97

14)油井大三郎,遠藤泰生編 (1999)多文化 主義 のアメ リカ 揺 らぐナ シ ョナル ・アイデ ンテ ィテ ィ,東京大学出版会 pp.36

15)Rivera,F.G.,Erlich,J.(1998)Communityorganizinginadiversesoclety,Allyn&Bacon,pp・6-9 16)Fisher,R.2001,3.RobertFisherPoliticalEConomyAn dPublicLifeTheContextForCommunity OrganizlngRothman,J.Erlich,J.L.,Tropman,J・E・StrategiesOfCOMMUNITYrNTERVENTION sixthedition,T110MSON,pp.loo-116

17)Minkler,M.(2001)CommunityOrganizingAm ongTheElderlyPoorInSanFrncaisco'sTenderloin

(17)

-31-沖縄 大学人文学部紀要 第12号 2010

District,∫.Erlich,J.L.,Tropman,J.E.StrategleSOfCOMMUNITY INTERVENTION sixth edition,THOMSON,pp.285-287

18)ib.287-288 19)ib2881290 20)ib.290-292 21)ib.293-296

22)Zachary,E(2001) GrassrootsLeadershipTraining:ACaseStudyofanEfforttohtegrateTheory andMethod,DonnaHardinaeds.hnovativeApproachesforTeachingCommuniy Ort ganlZation SkillsintheClassroom,TheHaworthPress,pp.71-93 23)ib.pp.73-77 24)ib.pp.78-86 25)ib.pp.87-90 26)ib.pp.90 27)ib.15)pp7 28)ib.pp.10-ll 29)ibpp.)2117

30)Hardina,D.(2002)ANALYTICAL SLILLS forCommunly Ort ganizationPracticeColumbia UniversityPresspp6pp,76

31)ib.pp.77 32)ib.pp.80-81

参考文献

Hardina,D.(2002)ANALYTICALSLILLSforCommunityOrganizationPractice,ColumbiaUniverslty Press

Rivera,F・G.,Erljch,J.(1998)Communityorganizinginadiversesociety,Allyn

&

Bacon,

Rothman,JErlich,JL,Tropman,JE.(2001)StrategleSOfCOM MUNITY NTERVENTION sixth editlOn,THOMSON

Hardina,D.(2001)Innovative ApproachesforTeaching Community Organization SkiI1sin the Classroom,TheHaworthPress

油井 大三郎,遠藤泰生編 (1999)多文化 主義 のア メ リカ 揺 らぐナ シ ョナル ・アイデ ンテ ィテ ィ,東京大学出版会

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32-Paulo Freire and Community Organization:

Influence on community practices in North America since 1970s

Atsushi Nishio

Abstract

The purpose of this study is to examine the influence of Paulo Freire's pedagogical theory on community organization practices in North America since 1970s. We found that Freire's pedagogical methods of literacy education had been used in many community organization practices and his philosophical ideals had been frequently quoted in many studies on community organization as a theoretical basis in North America since 1970s.

We overviewed the development of practical theory of community organization in North America and analyzed some case studies and theoretical studies. Through these reviews, we identified the emergences of suppressed communities in inner cities and the changes in social conditions such as strengthening of self-help values, constraint of social welfare expenditures, or multiculturalism, and so forth.

An important element of Paulo Freire's work and his emphasis on dialogue were his concerns with conscientization, which are defined as developing a consciousness that is understood to deepen structural understanding of oppressed societies and have the power to transform reality. However, his works did not have adequate effects in diversified oppressed communities, as the use of dialogue was conceived time-consuming.

Paulo Freire's work can not be ignored and we should perceive the significance of his works as one of the basic concepts for community organization and tools for community workshops in Japan.

Keywords: critical consciousness, problem-posing education, praxis, transformative model, multi-culturalism

参照

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