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日中のアフリカ政策 -- 東アジアの資源安全保障 (特集 世界の資源外交 -- 資源外交の新展開)

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日中のアフリカ政策 -- 東アジアの資源安全保障 (

特集 世界の資源外交 -- 資源外交の新展開)

著者

平野 克己

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

211

ページ

4-7

発行年

2013-04

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003723

(2)

●中国のアフリカ攻勢

  中国は世界の原油貿易の一割 、 鉱産物貿易の四分の一を吸収する 世界最大の資源輸入国で、その輸 入量は経済成長にともなって年々 急速に増大している 。世界中で もっとも急迫した資源調達要請に 直面しているわけで、中国の新し いアフリカ政策もまた資源獲得を 軸線に据えていることは明白であ る。   自身が産油国でありながら中国 は一九九五年に石油の純輸入国に なった。この年中国石油天然気集 団公司︵CNPC︶がスーダンの 油田権益を取得している。中国が 最初に手に入れたアフリカの資源 権益だった。翌九六年に江沢民国 家主席がアフリカ諸国を歴訪し 、 アフリカ統一機構︵現アフリカ連 合︶で二一世紀に向けた中国アフ リカ関係の強化を訴えている。九 九年には中国有色金属工業総公司 がザンビアの銅鉱山に進出した。   スーダンは一九九三年にアメリ カからテロ支援国家に指定され 、 欧米企業は撤退しつつあった。ザ ンビアでは基幹産業である銅鉱山 の民営化が、なかなか買い手がつ かず難航していた 。中国はその ニッチに進出したわけだが、しか しながら 、これらはよい買い物 だったとはいえない。スーダンで はその後ダルフール紛争がおこ り、政府による住民虐殺に中国が 加担しているという国際社会の非 難を生んで、北京オリンピックの ボイコット運動にまで発展した 。 ザンビアの銅鉱山では、おそらく 収益性の悪さが遠 因 となって労使 対立が絶えず、現地従業員の死亡 事故が多発して反中感情を醸成す ることになるのである。当時の中 国ではこの程度の権益にしかアク セスできなかったともいえる。   江沢民のアフリカ訪問以後中国 は対アフリカ戦略の策定にとりか かり、二〇〇〇年にはアフリカの 閣僚を北京に招待して﹁中国アフ リカ協力フォーラム﹂ ︵FOCA C︶が開催された。FOCACは 三年毎に、中国とアフリカ交互に 会場を移して開かれており、昨年 は北京でFOCAC 5が開催され た。二〇〇二年に国家主席に就任 した胡錦濤は在任中に計四回アフ リカを歴訪、一八カ国を直接訪問 している。これだけ多くアフリカ の国を訪れたアフリカ以外の国家 元首は史上初である。   中国は国交を有する︵ソマリア を除いた︶すべてのアフリカの国 に大使館を設置しており、外相は 毎年最初にアフリカを訪問する慣 行となっている。アフリカに対す る中国の外交努力は、このように 他国の追随を許さない。   毎回のFOCACを節目としな がら、中国はアフリカ政策を急速 に拡 幅 してきた。従来の OECD 開発援助委員会 ︵DAC︶ とはまっ たく異なる援助方式をとりなが ら 、 ア フ リ カ に 対 す る 支 援 ニューの拡大と整備を進めてきた のである。中国内ではこれを﹁中 国版マーシャルプラン﹂として位 置づけようという意見すら存在す る。これは、資源を開発して輸入 するのみならず、アフリカ諸国の 開発全般を促進し、中国製品の市 場として育成しようというアイデ アだ。実際中国の進出は資源分野 に限られてはおらず、さまざまな 産業や各種インフラ建設に国有企 業、民間企業が進出することを奨

アフリカはいま順調な経済成長を謳歌しているが

、それは資源高によってもたらされたもの

。しかも

、一九七〇年代の石油価格高騰時とちがって今度は大量の投資がアフリカに流入し

ている。

産油大陸、

鉱産物大陸としてのアフリカに国をあげて最初に注目したのが中国であった。

日中

東ア

資源外交の新展開

(3)

励している。中国企業専用の経済 特区を各地に造成し、アフリカの 中小企業に対する融資制度も創設 した。さらには、アフリカ一四カ 国に孔子学院を設置して中国語の 普及をはかり、およそ三万人のア フリカ人留学生を受け入れ、ケニ アには中国語・英語・スワヒリ語 によるFM放送局を開設した。一 四カ国に農業技術センターを、三 〇カ国にマラリア対策センターを 設置したほか、農業技術者二〇〇 〇人、医療技術者三〇〇〇人の養 成も約束している。 風力発電、 太陽 光発電、小型水力発電などクリー ンエネルギー開発支援にも熱心 で、中国製品の浸透をはかってい る。二〇一二年にはエチオピアの 首都アジスアベバにアフリカ連合 ︵AU︶ビルを建設して贈与した。   この よ う に し て 、かつて ア フ リ カ に植民地帝国を築いたイギリスや フランスよりも広範で多様な関 係 を、 中国はわずか 一 〇 年 で ア フ リ カ とのあいだに構築したのである。

●破格の資金投入

  こういった活動を支えているの が大量の資金投入である。商務部 対外援助司による無償援助や無利 子借款のほか 、中国輸出入銀行 、 国家開発銀行、中国銀行、中国工 商銀行、中国建設銀行、中国アフ リカ発展基金が競うように譲許的 資金を提供していて、その貸出額 はすでに世界銀行を上回ったとい われる。   中国の資金援助は完全タイドで あって、すべて中国企業が受注す るシステムだ。またバイヤーズク レジットや輸出信用を多用し、原 油や鉱産物による現物返済契約が 多いことも特徴である 。つまり 、 援助した資金は中国企業の収入と なって回収され、長期融資を出せ ば出すほど将来の資源輸入が確保 されるわけだ。FOCAC 4では 一〇〇億ドル、昨年のFOCAC 5では新たに二〇〇億ドルの援助 融資が約束されている。これがす なわち 、﹁援助の出し手と受け手 がともに開発途上国である以上 、 双方の経済発展に供する援助でな ければならない﹂という中国流 ﹁南々協力﹂である 。このような 中国の援助方式は、貿易市場の公 平性維持を掲げて輸出信用と援助 を峻別させ、完全アンタイドを原 則としているDACの政府開発援 助︵ODA︶方式とは相容れない ものだ。   なかでも中国の援助が国際社会 の耳目を集め、また中国にとって もっとも重要で有望な対象国に なったのがアンゴラである。アン ゴラでは一九七五年の独立以来続 いていた内戦が二〇〇二年によう やく終結したが、戦後復興資金の 目処がたたなかった。戦時経済を 支えてきた石油公社の収支が不明 で、財政の透明性がまったく欠如 していたため、IMFとの交渉が 行き詰っていたのである。   そこに中国が登場した。二〇〇 四年にアンゴラ政府は中国と二〇 億ドルの融資契約を結び、ここか ら原油大増産とアンゴラ経済の高 速成長が始まった。中国にとって アンゴラはいまやサウジアラビア に次ぐ世界第二位の原油輸入先で あり、中国経済の存続に欠かせな い存在である。アンゴラに対する 融資はその後どんどん増額され 、 供与総額はすでに一〇〇億ドルを 超えているという。中国はアンゴ ラにおける鉄道、港湾、住宅など さまざまなインフラ建設を請け負 い、そのための資金を提供するこ とで、国づくりそのものに関与し ようとしている。   しかしながらそのアンゴラは 、 中国の支援によって手に入れた新 興産油国という立ち位置を使って アフリカでは独特の路線を歩み始 めている。自国の油田を買い戻し ているのみならずアフリカ諸国の 油田や製油所の権益を取得、ベネ ズエラの油田開発にも参画してい る。その一方で、生産仕様が中国 向けに偏りすぎているとの理由か ら中国との製油所建設契約を破棄 した。さらにはIMFとの交渉を 再開し、二〇〇九年にIMFから 一三億ドルの新規融資を引き出し た。結果として中国はアンゴラの 自立を慫 慂 したのである。

●中国の資源ビジネス

  相手国政府といかに友好関係を 築こうとも、民間企業が握ってい る資源権益を手に入れることは容 易ではない。そのためには、外交 に加えてビジネス戦術が要る。   二〇〇七年、アフリカ最大の銀 行である南アフリカのスタンダー ド銀行に中国工商銀行が二〇%資 本参加することが発表された。ス タンダード銀行は世界二九カ国 、 アフリカ一七カ国に拠点をもつグ ローバルバンクであり、アフリカ のビジネス情報をもっとも豊富に 有している銀行だ。中国工商銀行 の出資額は五五億ドルにのぼり 、 当時は中国最大のアフリカ投資に

日中のアフリカ政策

― 東アジアの資源安全保障 ―

(4)

ン ト 社 と は 中 国 ア ル ミ 、 にチャルコが参加すること で合意している。 ほかにも、 中国海洋石油総公司︵CN OOC︶は仏トタール社と 共同でウガンダの油田開発 プ ロ ジ ェ ク ト に 参 加 し 、 ガーナではBPと共同で沖 合油田開発プロジェクトに 参加している。   表 1は中国の対アフリカ 輸入と資源依存度を、一九 九五年と二〇一〇年につい てみたものだ。なにより驚 くのは輸入総額の伸びで 、 一九九五年に比べて二〇一 〇年の輸入額はなんと四五 倍に膨張している。その六五%は 原油輸入で、半分以上はアンゴラ からのものである。二〇一〇年の 時点で中国は 、原油総輸入の二 二%、 鉱産物輸入の八%、 木材の一 〇%をアフリカに依存している。   アフリカからの輸入額について は、中国は欧米諸国を次々に抜き さり二〇一一年に第一位に躍り出 た︵ 図 1︶。米中が圧倒している のは、アフリカ産原油が米中に集 中して輸出されているからであ る。ただしアフリカへの輸出額を みると、中国がおよそ八五〇億ド ルであるのに対しアメリカはその 半分にもとどいていない︵図 2︶ この点において中国のいうウィン ウィンの関係が中国とアフリカの あいだには成立しているのであ り、南々協力という﹁ビジネス= 援助ミックス﹂が効果的に働いて いるといえる。

●日本のアフリカ政策

  一方、日本の対アフリカ政策が 変化するのは二〇〇八年のアフリ カ開発会議︵TICAD 4︶から である。TICAD 4によって援 助政策に官民連携が導入され、貿 易投資がTICADの柱のひとつ になった。   急激な資源高をうけて二〇〇六 年に経済産業省は﹁新・国家エネ ルギー戦略﹂を策定している。二 〇〇七年には当時の甘利経産大臣 が南アフリカとボツワナを訪問 し、そのときの合意に基づいて翌 〇八年、ボツワナに﹁地質リモー トセンシングセンター﹂が設立さ れた。実行機関は石油天然ガス金 属鉱物資源機構 ︵JOGMEC︶ で、衛星写真を使って埋蔵資源を 探査する技術をアフリカ側に提供 しながら鉱脈を共同探査するため の基地だ。資源が発見されればそ の権益を日本企業に引き継ぐこと になっていて、その準備として日 本は南部アフリカ諸国と次々に投 資協定を締結してきた。   探査の最大ターゲットはレア アースである。レアアースは先端 産業に不可欠な投入材で、日本が 世界需要の半分を占める。これま で中国からの輸入に全量依存して きたが、中国が輸出を規制し始め たことから価格が高騰していた 二〇一〇年に尖閣諸島事件が起 こったが 、このとき中国はレア アースの対日輸出をとめて外交手 段に使おうとした。日本は中国に かわる供給地を早急にみつけださ なければならないという要請に迫 られている。   二〇〇七年にマダガスカルで ニッケルとコバルトを採掘し精錬 して日本や韓国に輸出するという ﹁アンバトビープロジェクト﹂が 着工した。これには住友商事が二 七・五%資本参加していて、プロ ジェクト全体のコーディネーター を務めている。韓国の資源公社コ レスをプロジェクトに引き込んだ のも住友商事だ。完成すれば世界 のニッケル供給の三・八%、コバ ルト供給の八・三%を占めるよう になり、マダガスカルの GDPは 倍増するという巨大事業である 額(100万ドル) 依存度(%) 額(100万ドル) 依存度(%) 総輸入 1,423 1.1 63,495 4.6 燃料 265 5.2 41,475 22.0 鉱産物 257 13.0 8,864 8.2  鉄鉱石 132 10.7 4,687 5.9  銅鉱石 0 0.0 478 3.8  マンガン鉱 64 60.9 1,252 44.8  鉛鉱 0 0.0 199 8.3  クローム鉱 33 16.5 875 36.5  チタニウム鉱 0 0.0 25 9.9  タングステン鉱 0 0.0 7 14.5 鉄鋼 5 0.1 1,164 4.6 銅製品 26 1.3 4,087 8.9 プラチナ 4 37.8 1,555 33.0 ダイヤモンド 36 26.8 787 19.7 タバコ 20 5.7 162 20.5 木材 91 5.8 1,208 10.8

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ところがマダガスカルでは二〇〇 九年にクーデターが発生 、 プロ ジェクトはアフリカの政治リスク に直撃された。昨年ようやくニッ ケルの搬出が始まったが、マダガ スカル情勢はいまだに予断を許さ ない。   福島原発事故によって火力発電 用の燃料輸入が急増し、日本の貿 易収支は急激に悪化している。代 替エネルギー源の確保が急がれて いるが、近年東アフリカ沿岸で大 規模な天然ガス田が続々と発見さ れ、三井物産も一部権益をもって いる。アフリカにおける天然ガス 開発は日本にとって重要な意味を もつようになるかもしれない。

資源が結ぶ東アジアとアフ

リカ

  世界最大の資源輸入国となった 中国と、新たな資源供給地として 急成長しているアフリカ。両者の 関係が深まっていくのは、いって みれば歴史的必然である。日本は その中国から調達していた資源の 新たな供給先を探さなければなら ないわけで、韓国も同じ状況に置 かれている。東アジアは、膨張す る中国と世界の資源を分ちあわな ければならないのである。中国に 牽引されるかたちで、東アジアと アフリカ両地域の関係が今後緊密 化していくことになるだろう。   今年一月に起こったアルジェリ アの人質事件はアフリカビジネス のリスクを改めて浮き彫りにし た。中国も二〇〇七年にナイジェ リアで技術者が誘拐され、エチオ ピアではシノペックの油田探査基 地が反政府ゲリラに襲撃されて多 数の死者を出している。リビア政 変では中国の投資サイトが集中的 に襲われ 、中国人居 留 民 三万五 〇〇〇人の救出作戦を決行した。   アフリカに進出する国や企業は 同じ脅威に晒されているのであ り、安定した資源供給地を必要と しているという点で利害を共有し ている。アフリカへの関与が地域 大で進行していくとなれば、日中 や日中韓で共同することのメリッ トは大きいはずである。   昨今悪化しているものの日中 、 日韓関係は、東アジアを一義的生 存圏とする日本経済にとって死活 的な重要性をもつ。資源安全保障 という観点からアフリカ政策につ いて協議し調整していける関係を 構築できれば、地域全体の安定に も貢献できるだろうと思う。 ︵ひらの   かつみ/アジア経済研究 所  地域研究センター︶ ︽参考文献︾ 平野克己 [二〇一三] ﹃経済大陸ア フリカ﹄中公新書。 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 フランス アメリカ 中国 (10億ドル) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 図2 対アフリカ輸出 (出所)図1に同じ。

(出所)World Trade Atlasから作成。

2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 フランス アメリカ 中国 (10億ドル) 120 100 80 60 40 20 0 図1 対アフリカ輸入

日中のアフリカ政策

― 東アジアの資源安全保障 ―

参照

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