特集総説
余暇の過ごし方と労働安全衛生
†高 橋 正 也
*1 労働者の安全と健康を確保するためには,労働の量的および質的側面の改善が必要である.現在でも,長時 間労働の削減や職場の心理社会的環境の改善に向けて,多くの努力がなされている.このような職場の労働条件 の向上に加えて,職場以外における過ごし方,特に余暇,を適正にすることは,労働安全衛生の水準をさらに高 めるのに有益であると期待されている.最も基本的な余暇は終業後から次の勤務までの時間である.欧州連合の 労働時間指令に示されているように,この時間間隔の確保はなにより重要であり,そこで行われる休養や睡眠の 充実に不可欠である.同時に,労働に費やす時間の減少にもつながる.一日ごとの余暇活動の中でも,量的およ び質的に充分な睡眠は労働者の安全,疲労回復,健康維持に必須であることが実証されている.一方,週休二日 制であれば,週末に二日間にわたる休日が得られる.こうした一週ごとの余暇を適切に過ごせると(例えば,長 い朝寝を避ける),疲労回復には一定の効果がある.ただし,週内で蓄積した睡眠不足による心身への負担を完全 に解消するのは難しいことに留意する必要がある.さらに,良好な睡眠を長年にわたってとれない状況が続くと, 高血圧,心疾患,糖尿病,肥満などの健康障害が起こりやすくなるばかりか,筋骨格系障害や精神障害などの理 由で早期に退職せざるをえない確率が2~3 倍高まることが示されている.多くの労働者では,一生の中で労働者 として過ごす時間はほぼ半分を占める.一生涯の生活の質を高めるためにも,労働時間の中,そして外の要因(余 暇と睡眠)が最適化されなければならない.この課題を達成するには,行政,事業所,労働者個人それぞれの層 で,余暇の見直しと根拠に基づいた実践が求められる. キーワード: 勤務間インターバル,睡眠,疲労回復,ワーク・ライフ・バランス,労働生活の質 1 はじめに 私たちは健康で安全に働かなければならない.この目標 を達成するには様々な努力が必要である.第一に,職場の 労働条件を改善することが求められる.その筆頭は労働時 間である.わが国の労働時間は減少してきてはいるものの, 世界的にみて,いまだに長い1).また,労働の量的側面に 加えて,「現在の仕事や職業生活に関することで強い不安, 悩み,ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者」 の割合が 60%を超えているというデータからは,労働の 質的側面も深刻であるように思われる2). こうした職場内の状況を反映するかのように,職場外 の状況も改善がみられていない.例えば,年次有給休暇 についてみると,平成24 年では付与された日数が 18.3 日に対して,実際に取得した日数は9.0 日であった(取 得割合49.3%)3).年次有給休暇の取得割合が50%を下 回っている状態は過去 10 年にわたって続いている.こ のままでは,欧州ほかのように,1 ヶ月以上にわたるよ うな休暇(バケーション)をとれるようになるのはおそ らく夢かもしれない. わが国の労働者を取り巻く社会経済の変化に対応し, 労働安全衛生を確保するため,厚生労働省は第 12 次労 働災害防止計画(12 次防)を平成 25 年 4 月より開始し た4).12 次防では優先的に取り組む健康確保・職業性疾 病対策の一つとして,過重労働対策を挙げている.その 中では,健康診断や労働時間の管理等による健康管理の 徹底とともに,効果的な疲労の回復につながる働き方・ 休み方の見直しを推進することが示されている.従って, 過重労働を是正していくには,職場の労働条件を適正に し,かつ職場以外での過ごし方をいかに上質にするかが まさに問われていると言える. 労働安全衛生はともすれば,職場における健康と安全 に関することがクローズアップされがちである.いった ん職場を離れたら,労働者の私生活の領域ということも 相まって,あたかも労働安全衛生の範疇ではないかのよ うな見解がないわけではない.だが,健康で安全な労働 生活の実現が目標であれば,働いている時も,働いてい ない時も,それぞれの状況の改善に努めるという態度は 合理的であり,今後広く共有されてよいはずである.米 国でも労働安全衛生研究所を中心に,同様の概念に基づ いたプログラム(Total Worker Health™)が展開され ている5, 6). 労働以外の時間として余暇がある 7, 8).この余暇のあ り方を見直すことは,狭義には過重労働対策を充実させ, 広義には働く人々の健康,安全,福利(well-being)の レベルを向上させるのに役立つ可能性を秘めている.こ のような視点から,本稿では余暇の持つ意義をこれまで の研究成果に基づいて検討する.その際,余暇における 活動の中でも,疲労回復に不可欠な睡眠に着目する. 2 余暇のとらえ方 余暇はいくつかの次元からとらえることができる.こ こでは,表1 のように,長さ,タイミング,内容という 面から整理する.最も基本的な余暇は一日一日における 終業後から次の勤務開始までの時間である.勤務体制に † 原稿受付 2014 年 01 月 14 日 † 原稿受理 2014 年 01 月 31 日 *1 (独)労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ 連絡先:〒214-8585 川崎市多摩区長尾 6-21-1 (独)労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ 高橋正也*1 E-mail: [email protected]時間
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間
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短
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一日ごとの休息,睡眠
週半ば
ノー残業デー
週末
一週ごとの休息
長
長期休暇
旅行,自己啓発等
よってその長さは異なるが,残業のない固定日勤では往 復の通勤時間を除けば,13 時間程度となろう.この時間 帯には夕食,団欒,趣味,入浴,睡眠などの活動が含ま れる.多くの人では睡眠に費やす時間が最長となる. 一週間という枠では,週末の余暇が基本となる.完全 週休二日制であれば(平成24 年の採用企業割合 44.5%) 3),一ヶ月でのべ8 日間の休日が得られる.一方,事業 所の中には週の半ばにノー残業デーを設け,その日は所 定労働時間を過ぎたら帰宅を促しているところもある. そうなると,その日については長い余暇時間が確保され やすくなる. 夏期や年末年始の休暇などでは,数日から1 週間程度 の余暇をとることができる.こうした長い余暇では,ふ だん行いにくいような休養やリフレッシュが期待されて いる.とはいえ,なんらかの特別休暇制度をもつ企業の 割合はせいぜい約6 割(57.5%)であり,夏季休暇とて 43.5%(最長付与日数の平均 4.2 日)しかないという現 状に留意する必要はある3). これまで述べた余暇のうち,本稿では一日ごと(終業 後から次の勤務まで)および一週ごと(週末)の余暇に 焦点を当て,労働者の健康と安全との関連を探る. 3 終業後から次の勤務まで 終業から次の始業までの時間は,平日における一日ご との余暇にあたる.この中でどのくらい休養がとれるか, 良好な睡眠によってどのくらい疲労回復できるかは,労 働者の健康にきわめて重要な意味を持つ.余暇の効果を 得るためには,まず余暇に使える時間を充分に確保しな ければならない.欧州連合(European Union, EU)では労働時間指令9)
に基づいて,24 時間につき最短でも連続 11 時間の休息 (労働時間でない期間)が労働者に与えられなければな らないとしている.労働以外の時間の長さを決めること によって労働時間の長さを規制するというのは,余暇を 重視しながら労働時間を管理する画期的かつ有効な方策 と考えられる. 勤務と勤務との間隔(インターバル)が労働者,特に 日勤者にとってどのような効果があるのかについては, どういうわけか,これまでほとんど調べられていない. それに対して,交代勤務者については,ある勤務(シフ ト)から次のシフトまでのインターバルの意義がより強 くなるせいか,いくつかの研究がある10, 11). 図1 短いシフト間隔に伴う健康問題12) 縦軸はシフト間隔11 時間未満の年間回数が 0 回を基準(=1)
にした調整済みオッズ比(Odds Ratio, OR)と 95%信頼区間(縦
棒).調整:年齢,性別,年間夜勤回数,夜勤従事年数,雇用形 態. ノルウェーの看護師を対象にした最近の横断研究では, シフト間隔が 11 時間未満となる回数が多くなるにつれ て,不眠,強い眠気,過労の訴えは増加することが示さ れている(図1)12).基準となるインターバルが11 時間 で最適かという問題はこれから検証すべきではあるが, この知見は勤務間インターバルの確保が睡眠や疲労の改 善に役立つことを示唆している. 一日ごとの余暇の時間の中では,睡眠が大半を占める ことになる.従って,睡眠のあり方は労働生活の質の向 上という点から,言うまでもなく重視される.睡眠が不 充分であると,翌日は眠気や疲労感が強くなり,生産性 が低下する13, 14).不適切な睡眠は運転業務のような常に 注意集中を求められる仕事に悪影響を及ぼしやすい.し かも,仕事(例えば,運転)を始めるまでの睡眠の状況 (履歴)がほぼ即時的(急性)に影響する.実際,仕事 を始めるまでの睡眠時間によって,その後の事故の起こ りやすさを予測するモデル(先行睡眠覚醒モデル)も提 唱されている15-17). この先行睡眠覚醒モデルに基づいて,わが国のトラッ ク運転手(約800 名)を対象にした調査では,乗務開始 24 時間前までにとる総睡眠時間と不安全運転との関連 を横断的に検討した18).図2 にまとめたように,この総 睡眠が6 時間未満の場合,居眠り運転や交通事故を申告 する割合は増えることが明らかになっている.従って, 注意集中を維持し,業務上のけがや事故を減らすために は,始業までに睡眠を充分にとること,同時にそれを可 能にするような勤務体制が重要になる.
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30 回 以 下 0 回 30 回 超 シフト間隔11 時間未満の年間回数(OR)
30 回 以 下 0 回 30 回 超 30 回 以 下 0 回 30 回 超 30 回 以 下 0 回 30 回 超不眠
強い眠気
抑うつ
過労
表1 余暇のとらえ方図2 トラック運転手における乗務 24 時間前までの総睡眠時間 と居眠り運転・交通事故との関連18) 乗務24 時間前までの総睡眠時間は直近 3 日間の睡眠状況から 測定した.居眠り運転と交通事故の有無は過去1 年間に経験し たという回答によって,それぞれありとした.縦軸は総睡眠6 時間群を基準(= 1)としたときの調整済みオッズ比と 95%信 頼区間(縦棒).調整:運転形態,荷主要求の受容度,荷役の頻 度(居眠り運転);走行計画の遵守度(交通事故). なお,近年の研究からは,睡眠時間の短縮に伴う神経 行動機能の低下は,その短縮が続いている間(例えば, 平日5 日間)に蓄積的に大きくなることが明らかにされ ている19-21).その上,数時間の睡眠短縮が続く場合,神 経行動機能は客観的に低下するにもかかわらず,主観的 には眠気の増加を感じにくくなるという現象も起こる. となると,睡眠を自発的に修正する機会は失われやすく なる. 悪化した神経行動機能が元の水準にまで回復するには, 充分な(例えば,8 時間)睡眠を数日間とっただけでは 足りず,それ以上の長い時間を要するとみられている19, 22).これは借金に似ている.つまり,気づいた時点では 借金が膨れ上がっていて,その返済に難渋するかのよう である.そうならないようにするには,日々,一定量の 睡眠をとるほかない. 睡眠時間以外では終業後から次の勤務までの中でも, 就寝までの過ごし方が疲労回復という観点から,特に注 目が集まっている.インターネットや情報機器の発展に より,帰宅後も自宅で仕事を行おうと思えば,行える. こうした“自宅残業”は当然かもしれないが,睡眠問題 や精神的不調に関連することが示されている23). 実際に作業に携わらないにしても,仕事に関連した問 題をずっと考え続けること(反すう)は疲労回復や睡眠 を妨げることが報告されている24, 25).対照的に,1 日の 仕事が終わった後に「仕事のことは全く考えない」,「仕 事のことを忘れる」などにより,仕事のことから心理的 に距離を置けると,疲労回復や睡眠の促進に有効である ことが産業保健心理学的研究から明らかにされている 26-28).しかも,心理的距離の効果的な置き方や余暇の過 ごし方に関して,労働者向けの訓練プログラムもドイツ では提案されている29). 就寝前の状態が引き続く睡眠に与える影響について, 主観的指標を用いた研究だけではなく,終夜睡眠ポリグ ラフ検査から客観的に評価した研究もいくつか行われて いる30, 31).いずれも,就寝前に心配やストレスのレベル が高いと,その晩の睡眠では深いノンレム睡眠が減少し たり,睡眠効率(実睡眠時間÷就床時間)が低下したり することが示されている.従って,就寝までの時間はい わば快眠への助走のようであり,この時間帯をいかに快 適にするかは重要な条件であると言える. 以上をまとめると,終業後から次の勤務まで時間を充 分に長く確保すること,その内容(特に睡眠)を改善す ることは,労働者の安全,疲労回復,健康維持に密接に 関連すると指摘できる. 4 週末 上述したEU 労働時間指令9)では,7 日ごとに最短で も連続24 時間の休息を与えることも義務づけている. 24 時間ごとの 11 時間の休息と合わせれば,連続 35 時 間の休息となる.このような一週ごとの余暇は週内に蓄 積した疲労の回復と翌週への準備として,非常に重要な 期間となる.そうなると,一日ごとの余暇と同様に,週 末における余暇の時間を確保し,そこでより上質に過ご すことが求められる. 従来,週末を遅寝・遅起きで過ごすと,翌月曜日の体 調が悪くなる,いわゆるブルー・マンデー現象の生じる ことが認められている32).最近のデータによれば,週末 をそのように過ごした場合,翌週への望ましくない影響 は水曜日まで続く可能性がある.オーストラリアで行わ れた介入実験において,週末の遅起き条件では金曜日と 土曜日の夜は午前0 時頃に就寝し,翌朝は午前 10 時半 ごろに起床した33).対照条件では同じ時刻に就寝し,午 前7 時半頃に起床した.その結果,遅起き条件では対照 条件より,眠気や疲労感が翌月曜日だけでなく,火曜日, 水曜日も高かった.同時に測定した唾液中メラトニンの 解析から,遅起き条件では体内時計の位相は後ろにずれ た(遅れた)ことが確かめられている.このように,週 末に長い朝寝をして平日の睡眠不足を週末で解消しよう とする試みは,その効果がそもそも得られにくいばかり か,翌週も労働者にとって不利益になる可能性が高い. 週末のより適正な睡眠のとり方を探るために,著者ら は平日の睡眠が 6 時間以下の労働者 26 名を対象に,次 のような介入実験を行った34).すなわち,介入条件では,
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(OR)
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交通事故
居眠り運転
乗務24 時間前までの総睡眠時間金,土,日曜日の 22 時から 9 時の間に 8 時間以上の 睡眠をとり,昼間の仮眠はとらないよう教示した.この 根拠は夜間に睡眠をまとめてとりながら,週明けのブル ー・マンデー効果を避けるためである.一方,対照条件 では普段通りに週末を過ごすよう教示した. 図3 の上段に示したとおり,参加者は睡眠に関する教 示をよく遵守したことが分かる.神経行動機能を精神運 動看視課題で評価したところ,介入条件では対照条件よ り,月曜日は反応が有意に早く,正確であったことが明 らかになった.しかし,木曜日の時点ではこの効果は消 失していた. こうした調査結果には多数の要因が関与しているが, なかでも,週明けの睡眠による影響は大きいと考えられ る.週明けにおける睡眠のとり方は特に教示を与えなか ったため,参加者は普段の通りに短い睡眠(5 時間ほど) しかとらなかった.結局のところ,週末に睡眠時間を適 正に確保すると,週明けの神経行動機能は高まるけれど も,充分な睡眠時間を引き続き保たないと,その効果は 維持できないと言える.このことは,前項で述べた睡眠 不足に伴う悪影響の蓄積という点からも支持できる. 図3 週末の適切な睡眠と翌週の神経行動機能34) ●介入条件,○対照条件.睡眠時間は携帯型活動量計で測定し た.灰色部は各条件で過ごす週末.見落としは反応速度が 500 msec 超となる試行.*対照条件と有意差あり(P<0.05).縦棒 は標準誤差. いずれにしても,労働生活にとってきわめて重要な週 末の役割については,上述の生理学的研究や若干の産業 保健心理学的研究35, 36)からしか検討されていない.今後 の精査が求められている領域である. 5 労働者における睡眠問題の長期影響 不適切な睡眠が毎日,毎週を越えて,より長期化する ことは労働生活全体からみて大いに懸念される.睡眠疫 学の成果によれば,睡眠時間の短い状況が長年続くと, 高血圧,心疾患,糖尿病,肥満などが起こりやすくなる 37).労働者集団についても不眠など睡眠問題の長期影響 として,なんらかの健康障害によって仕事を続けられな くなり,退職せざるをえなくなることが指摘されている. フィンランドの約6 千名の労働者を対象にした追跡調 査によれば,寝つきが悪いなど睡眠の問題を多く抱えて いる者は,そうでない者に比べて,就業不能によって早 期に退職しやすいことが判明している(図4)38). また,図5 に示したとおり,睡眠問題のない群に比べ て,多い群は就業不能によって退職する確率が約2 倍高 かった(調整済みハザード比2.2,95%信頼区間 1.5-3.2, 図5).就業不能となる主な原因は筋骨格系障害(42%) と精神障害(26%)であった.そこで,これらの原因ご とに調べても,全原因の結果と同様であった(筋骨格系 障害2.4,1.4-4.4;精神障害 3.7,1.3-10.7). 健康上の理由で仕事を途中でやめなければならないこ とは労働者には避けたい事態である.もしそうなると, 家族にとって,家計の維持など深刻な状況に陥る.さら に事業所にとっても,経験の豊かな労働者がいなくなる ことは大きな損失になる.そうなると,睡眠問題にもし 図4 就業不能で退職しない労働者の累積率:睡眠問題別38) 追跡は6-8 年間.睡眠問題はジェンキンス睡眠調査票から評価 し,過去4 週間で 1-14 回であれば「少ない」,15 回以上であれ ば「多い」と定義.
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図5 睡眠問題とその後の就業不能による退職38) 縦軸は睡眠問題なし群を基準(=1)にした調整済みハザード比 (Hazard Ratio, HR)と 95%信頼区間(縦棒).調整:年齢, 性別,婚姻,職位.残業時間,交代勤務,物理化学的および心 理社会的職場環境,睡眠時間,現病歴,喫煙,飲酒,身体活動, 肥満 適切に対応できたとしたら,このような悲劇は防げると 思われる. 6 今後の取り組み わが国では労働者の心身の健康を保持増進し,仕事と 生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が求められて いる.行政としては,12 次防に則り,労働と余暇の両面 から労働環境の改善の方向性を示し,労働安全衛生の水 準を国全体で上昇させることが期待される.その際,将 来的に増加が見込まれる,労働と余暇との境界があいま いになりがちな勤務形態(例えば,在宅勤務39))につい ても,科学的根拠に基づいた政策の立案が重要となる. 労働と余暇のあり方の充実という統合された目標は各 事業所で共有されていかなければならない.そのために は,経営陣が経営課題の一つとして認識し,方針として 位置づける必要がある40, 41). 上司は部下の多様な状況を考慮しながら,生産性の向 上とその基礎になる余暇・睡眠の改善を柔軟に支援する ことが求められる42).実際,ワーク・ライフ・バランス を尊重する上司の下で働く労働者はそうでない者に比べ て,睡眠時間は長く,心血管系の危険因子(例えば,喫 煙や肥満など)の数も少ないというデータがある43). 労働者個人としては当然ながら,職場で100%の労働 力を提供し,それができるように余暇を計画実行しなけ ればならない.関係者それぞれの取り組みを促すために, 今後,調査研究に加えて,事業所レベルでの良好実践の 収集と分析から始めるのが望ましいと思われる. 7 おわりに 本稿では,労働安全衛生の確保に向けて,一日ごと, 一週ごとの余暇の持つ意義を検討した.特に,余暇の中 心となる睡眠のあり方に焦点を当てた.終業後における 余暇が真に充実し,良好な睡眠を介して疲労回復が完遂 するのが理想である.一日ごとの疲労回復の不全は神経 行動機能や健康に蓄積的な悪影響を持つ.週末の余暇に は疲労回復に一定の効果があるけれども,週内で蓄積し た疲労回復不全や睡眠不足を完全に解消することは難し い.多くの労働者では,一生の中で労働者として過ごす 時間はほぼ半分を占める.一生涯の生活の質を高めるた めにも,労働時間の中,そして外の要因(余暇と睡眠) が最適化されなければならない. 文 献
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(HR)
睡眠問題(初回調査時)なし 少 多
なし 少 多
なし 少 多
全原因
筋骨格系
障害
精神障害
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Optimizing Non-work Time for Better Safety and Health at Work
by
Masaya T
AKAHASHI*1Safety and health at work are to be achieved through improving work conditions both quantitatively and qualitatively. To further upgrade the quality of working life, we need to optimize non-work time, combined with improved work circumstances. The most common timeframe of non-working hours is the interval from the end of the workday to the start of the next workday. As stipulated in the European Union’s Working Time Directives, a sufficient duration of rest after work should be provided on a daily basis. Studies demonstrate that among activities during the daily rest period, adequate sleep serves a critical role in fatigue recovery, safety on the job, and overall good health. On a weekly basis, weekends can be an essential time period for recovery from fatigue accumulated during weekdays and preparation to the next week. It is impossible, however, to fully compensate sleep deficit with a longer duration of sleep by getting up later on weekends; on the contrary, excessive sleep on the weekends may cause increased sleepiness and fatigue up to the following Wednesday. From a long-term perspective, a prolonged period of short or poor sleep is associated with elevated risk of health disorders and disability retirement. Better health and safety during working hours will require protected periods of non-working hours and better sleep. This novel challenge is a task shared by authorities, workplaces, and workers themselves.
Key Words: inter-shift interval, sleep, recovery, work-life balance, quality of life