− −5 理工学部 准教授
麓 隆 行
Sweden の図書館事情
―Lund 大学図書館といくつかの市立図書館を通して―
Denmark との国境から電車で約 40分、耕作 地帯を抜けると Sweden のほぼ南端部にある 人口約 11万人の Lund に到着します。Lund の 街並みは、Lund 大聖堂(1145年建設)と Lund 大 学を中心に広がっています。著者は、その Lund 大学に在外研究のため 2017年 4月から滞在し ています。 Lund 大学は 1666年に創設、1668年に正式 に発足し、昨年末から 350周年を迎えています。 2016年度の学生数 42,000人、教職員数 7,400人 を誇る Sweden 国内屈指の総合大学です。例 えば、強力な X 線源をもつ Max Ⅳやパルス中性 子源をもつ European Spallation Source(ESS) が建設されるなど、高度な研究が期待されて います。この Lund 大学において図書館は、学生や教 員の教育・研究資源として重要な施設です。図 書機能は大学創設当初から存在し、1698 年に は国王から納本図書館(Legal deposit library) に指定されてます。納本図書館とは、日本の国 立国会図書館と同様に、国内で印刷されたす べての出版物のコピーを 1 通受領することを 法律で定められた図書館であり、Sweden では 国立図書館と 6 つの大学図書館が指定されて います。そのため、現在 116 shelf km と表記 されるほどの本や雑誌の蔵書量を有していま す。また電子化にも力を入れており、多様な 電子ジャーナルや電子化書籍が閲覧できます。 大学図書館の建物は、設立当初に Liberiet、 1690年から Kungshuset と変遷し、現在は 1907 年に建てられた Helgonabacken が使用されてい ます。常に Lund の中心部にある大聖堂や大学 本部の付近に位置し、いずれの建物も現存して います。現在の Helgonabacken は、緑が映える 100年以上の歴史ある煉瓦建物で、観光客も立 ち寄る名所です。その内部には木材がふんだ んに使用され、一部には歴史あるたたずまい を残しつつ、近代的な設備も兼ね備えた施設 となっています。 図 1 Liberiet 図 2 Kungshuset 図 3 Helgonabacken の外観 Sweden の図書館事情 ―Lund 大学図書館と南部の市立図書館を通して―(麓)
− −6 Lund 大学の図書施設は、キャンパスが広い ことから、各校舎や研究施設に隣接する専門 分野に特化した分室もあり、その数はメイン となる Helgonabacken を含めて 26施設にのぼ ります。図書施設は 91名のスタッフで運営さ れており、2016年度の施設利用者は約 23万人、 WEB 利用者は約 8万人と記録されています。 Helgonabacken は 4階まで利用可能で、も ちろん自習室やミーティングルームが用意され ていますが、学生数に比べるとそれほど多くあ りません。その代わりに、各校舎には数多くの ミーティングルームやミーティングスペース、 カフェルームがあり、電源も準備され、気軽に 雑談や学習に利用できるようになっています。 図 4 Helgonabacken 内の自習室(左)と書棚(右) 図 6 校舎内に並ぶミーティングルームとその内部例 図 5 建設系図書の分室 香散見草:近畿大学中央図書館報 No.50, 2017
− −7 この記事を書くにあたり、市立図書館も訪 問してみました。Sweden の図書への関心は高 いようで、特色ある市立図書館が充実してい ます。 例えば、Stockholm の市立図書館は円形の吹 抜け構造で、観光客が絶えず訪れる、まるで 映画のワンシーンのような建物です。Malmö の市立図書館は、Malmö 城に隣接する公園角 にあり、内部が改装された煉瓦建物の旧館と 近代的な吹抜け・ガラス張りの新館が連結し た魅力的な建物です。また、Lund の市立図書 館は、平面でゆったりとしたガラス張りの建 物です。施設内にはパソコンや閲覧スペース が充実し、開放感のある空間で多様な情報に 触れることができます。また、大きなガラス 窓付近にソファが置かれ、日の光を浴び、新 緑の公園や広場で読書しているような空間が 作られています。さらに子供用書籍のスペー スは土足厳禁の場所があり、デザイン性のあ る本棚、遊び場、イベントスペース等に囲ま れ、自由なスタイル、タイミングで書籍や情 報に触れることができます。Lund 郊外の各所 には、検索設備も備えた移動図書館車が週 1 回程度訪れています。 図 8 Stockholm 市立図書館内部 図 9 Malmö 市立図書館内部 図 10 Lund 市立図書館内部 図 11 移動図書館車 図 7 校舎ロビーにあるミーティングスペース(左)やカフェルーム(右) Sweden の図書館事情 ―Lund 大学図書館と南部の市立図書館を通して―(麓)
− −8 夏と冬で日照時間が大きく異なる Sweden に は、特有の生活様式が数多く見られます。例 えば、公園や郊外にはベンチがあふれ、夏期 には芝生で数多くの人が日光浴を楽しみます。 10時と 15時に行われる Fika と呼ばれる Coffee break の習慣から、街の至る所に Cafe があり、 そこでゆったりとした時間を過ごしています。ま た、古い建物や緑を大切にし、色とりどりで デザイン性のある建物に囲まれた都市空間が 広がっています。すなわち、空間や時間を大 切にしていると考えられます。図書館に置き 換えれば、学生や市民がゆったりと自由に雑 談する場やのんびりと読書する空間を提供す る中で、図書館がその一翼を担っている、と いうことなのだと思います。 Sweden の図書館事情に倣えば、近畿大学に は、知の資源である図書館や知の出会うアカ デミックシアターなど、新しい自由で創造性 のある空間が創造されつつあります。それら の施設が、近畿大学が自由で闊達な場となる 一翼を担うのだと期待しています。 香散見草:近畿大学中央図書館報 No.50, 2017