上流端に止氷壁のある低堰堤下の最短流線長について
中 崎 昭 人●篠 和 夫
(農学部構築工学研究室)
Minimum Length of Streamline under a Dam with a Row of Sheetpiles Set on the End of Upstream Side of Dam
Akito Nakaza。and Kazuo S Hlr、JO
(Laboratory of Construction Engineering、 Faculty of Agriculture)
Abstract : The piping phenomenon is one of important problems of seepage flow under a dam built on a permeable layer. In general, impervious sheetpiles are used in purpose of preventing piping。
In this paper, streamlines are calculated and minimum length of streamline is obtained in case of a row of sheetpiles set on the end of upstream side of dam resting on the
surface of an finite depth of porous material. Minimum lengths of streamline are calculated for various values・of e/1 and d/e, where l is width of ・a d!am, e is depth of a permeable layer and d is depth of a row of sheetpiles. It is recognized that the general form of the minimum length of streamline Ls is approximated by the equation
LS= I まえかき n 理論解析 Lo十L, -2.1
in the region of 0.5∼3.0 for e/1 and of. 0.2∼0.9 for d/e,‘where L。 is so called creep length and L lis creep length by the method of short path.
透水性地盤上に築造される低堰堤には,パイピング防止等のために止水壁を設けることが行われ る.止水壁の設置により,必要な浸透路長が確保され,パイピング防止に有効となる.従来,これ に関して, Blighの Creep Theory や Laneの Weighted Creep Theory などが知ら れているが,前者は構造物と透水性地盤との接触面の長さL(いわゆる浸透路長)と,構造物の 上・下流の水位差△Hとの比L/△Hが基盤の性質によって決まるある一定値より大きけ れば構造物は安全であるというものであり,後者はさらに,水平方向と鉛直方向の透水係数の違い を考慮し,浸透路長に重みをつけたものである.これらは経験公式として意味をもつが,パイピン グ現象は最短浸透路長と関わりがある.と考えられる.従って,ここでは,低堰堤の上流端に止水壁 がある場合の最短浸透路長を求め,いわゆる浸透路長等との関係を比較することにした.解析法は Schwarz-Christoffelめ変換を用いた. Fig. 1 に示すように,止水壁が低堰堤の上流端にある場合, Muskat''による解を参照して, z一平面とぐ一平面の関係は
である.bは と表わせる. e m= cosec −m+1 ―m-m cot(脊) φ U Z=一一 ’臨? ̄二 ̄7 と表わせる.ここで, πd -2e 1j=1+cot?( 背)tanh2 z一平面 (c)ζ一平面 −1 (d) t一平面 ㎜--- -●--●〃四心●〃●・-●・ へ/m2− 1 十へ/ぐ−1へ/ぐ+1 む. 2e (a)実平面 ξ φ V (りω=平面 Fig. j● 写像平面 次に,C一平面のE, A, G, D点をt一平面のE。A, G, D点に対応させると次式 が成り立つ。 b一m -b+1 よって, k<lであることから, 1/k -1/k +1 1− 1/k 1/k 1+1
上流端に止水壁のある低堰堤下の最短流線長について(中崎・篠) こい、/フフ元ご二万 k= m(b+1) どなる. さて,ω一平面とt一平面との関係は, Schwarz-Christoffelの変換により, dω -d t dω= c, -(t+1/k)(t+1)(t−1)(t−1/k) c, kdt
、/匹 ̄万万 ̄匹
79 となる.ここでt=snwとおくと, dt= cnw dnw dw ●・ であるから,これを(2)式に代入すれば, dω・= Ci kdw これより, ω= Ci kw十C2 ………‥………,・…・(3) となる.ここでCI,C2を決定するために, E, A, G, D,点におげる境界条件を考えれば φ1−φ2 2kK φ1−φ2 C,=-i C2=iφ2十二 を得る。これらを(3)式に代入すれば, これより, ここで となる ψ十iφ=(φl−φ・2) ぐ= F≡ 一 一 b+1 1−k 一-m ― b ,2づ
−(φ1−φ2) U 2K (4) V 2K となる。 一方,ぐ一平面とt一平面との関係は, ぐ−m kt- 1 b ― m 2 また, t=snwから, t =sn( iH-iv・)sn udn v十icn udn usn vcn v en'V + k 「U 「V φl十φ2 - {(k十叫F)「十(「nF-1」} -1 (k十「11F」s {(k−F)r−{1十F}十i(た−F)s
高知大学学術研究報告 ’第32巻 自然科学 従って,w一平面上の(u, v)を与えると, (4)式により(V', <t>)が定まり,同時に(6)式から (r, s)が定まり,この(r, s)から(5)式によって(ξ,77)が定まり,さらに(1)式によって, (x, y)が定まることにより,z一平面上での楡,φの分布が求まることになる. Ⅲ 計算結果とその考察 低堰堤の底面幅を1,透水性地盤の深さをe,低堰堤の上流端に設けた止水壁の深さをdとす る.計算に使用したモデルは,透水性地盤の深々e/Iを0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5,及び3.0の 6通りとし,各e/lについてd/eを0.0から0.1間隔で0.9までの10通りにとり:各組合せの 合計60通りについて計算を行った. 得られた結果を流線網に描いた.e/I=1.0で,d/e≒0.2, 0.4及び0.6の場合の流線網 をFig. 2∼4に示す. ● . | 一流 線 一一一一・等ポテンシャル線 0.4723 Fig. 2. 6/1=1.0, d/e=0.2における流線網 流 線
3 . 0 L/Lo 2.0 1.0 水壁のある低堰堤下の最短流線 ついて 流 線 篠) 0 . 9 1 . 0 81 −−−−・等ポテンシャル線
Fig. 4/ e/l=1.0, d/e = 0.6における流線網
これらの図を比較すれば,止水壁の深さが深くなるにつれ.同一の流関数値をもつ流線長が長く なって行くのが明瞭である. さて,これらの流線網について,流関数値汐/k△hごとにその流線の長さLをcurvimeter で測定した.このφ・/k△hをそれぞれの全流量喩2/k△りで割った値 ^l/■/^^2を横軸に, Lを止水壁及び構造物底面に沿う長さLo(いわゆるcreep length)で割づた値L/Loを 縦軸にとり,両者の関係をd/eをパラメータとして, e/1 = 1.0, 2.0及び3.0の場合につい
/
ゲ9 F斗
/
ヅ 才
づ
ケ二尚
/
づ
三
回
昌 言
非
Q芦 ``Wi心
S・
四=!!2 / 0。0 0.! 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 φ/φ2 Fig. 5, e/I=1.0の場合のψ/資2とL/ L。 の関係82 3.0 L/Lo 2 . 0 】 . 0 高知大学学術研究報告 第32巻 自然科学 Q &ご レ / χ S’
/ノ
/ /∧
/
牛
/
/
/
∠ ノ
士
谷
/
ノ
/レ
/レ
言
士
ゲ
ノ
/
三
士
診 ⑤
斜
/
/ 心 心 〃S に ̄ 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 φ/φ2 0.6 0.7 0.8 3.0 L/Lo 2 . 0 1 . 0 Fig. 6. e/1=2.0の場合のψ・/も1とL/L。,の関係 0.9 1.0&/?
/
/
/
//
/
/
犬
≪
、
ノ
/
ソ
∠
☆≒
ノ
∠
才レ
貢
貢牛
ノ
/
ノ
]
よ
彭
謳
ジ
/ ’W J -=〃・ / 0。0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 岫2 Fig. 7. e/l = 3.0の場合の喩/f2と L/L。の関係上流端に止水壁のある低堰堤下の最短銀線長について(中崎・篠) 83 て図示しだのがFig. 5∼7である.これらの図より,一次のことが示される.即ち,止氷壁の無 い場合(d/e=0.0)を除き.止氷壁のある場合は,各d/eで,いずれも流関数値の増大につ れてL/Loが一旦減少し,ある喩/や2の値を境に増大している.この,L/Loの最小値 は,e/lが小さい場合は,d/eの増加とともに図上で右へ移動していくが,e/Iが大きくな ると,この関係が満たされなくなる. φ ■ 3= 0 . 4 7 2 3
Fig. 8. e/l=1.0, d/e = 0.2の場合の最短流線
02=0.4073
高知大学学術研究報告,第32巻 自然科学 ψ2=0.3385 Fig.10. e/l=1.0,d/e = 0.6の場合の最短流線 さて,これらの曲線の極値が各d/eにおける最小のL/Loを示すが,最短流線長をLs としたとき,この値がLs/ Lo を 表わす.このLs/ Lo を各d/e Fig. n.ショートノヽrス についてe/lをパラメータとして示 しだのがFig. 12である.ここでFig. 2∼4の場合の最短流線を示すとFig. 8∼10の様である. さて,上述の浸透路長Loに対し, ショートパスの方法2)による浸透路長 を考えることがある.これは, Fig. 11 に示すように,浸透水は基礎地盤中を 上・下流水位の最短距離を流れるとい う仮定に基くもので,L, = d+,へ/?7戸を 浸透路長と考える方法である いま,先に求めた最短流線長Lsを,このLIで割った値Ls/LIとd/eの関係を e/lをパラメータとして表わしたものがFig. 13である. Fig. 12 から, Ls/ Lo に関しては,e/Iが0.5及び1.0ではd/eの増加にともない減 少する傾向が見られるが, d/e が1.5∼3.0では,d/eの増加にともない,一旦Ls/ Loが減少するが,あるd/eを境に増大する傾向となる.また, Fig. 13に示すLs/L, に関しては,e/lが0.5及び1.0ではd/eの増加にともない増大するが,e/lが1.5∼3.0 では,一旦増大したのち,減少する傾向にある.従って, Fig. 12, 13からは,Loあるいは Lsと最短流線長との簡単な関数関係を与えることができない.そこで,いま,それぞれの逆数で あるLo/LsとL,/Lsを加えた値Cを求めるとFig. 14の様になる.
1 . 0 LS/Lo 0 . 9 0 . 8
ト
い
yー
X
fly
\ χ. jN
\
へへ
Sノ1 S蜀
回
ぺ
に・ iJ
にヨS
・ ・ i ゛`i ゛ 4 、 . j 7 v=*喝 ?‘e1 ∼ , j L _ − - ● j尚
硝
ら■・e/l = 0.5 ら 1.0 e-一一一一e l .5 四 2.0 -一一一一- 2.5 四 3.0 0。0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.'8 0.9 d/e Fig. 12. 各e/lに対するd/eと LyL。。の関係 8586 高知大学学術,研究報告 第32巻・ 自然科学 1 . 1 Ls/Li 1 . 0 2 . 1 J
g
r ’ ’ ‘ ● 酬 − ∼ ・ i へ ` ヽ 、 j i=−4 -71
μ ・ ・ g = ! | j『
/づ;/
回
弓
にミ?メ
1!、.β
/
/`/
lり
S:
● ・屹 ク
心 ●μ
●-−−-−・・ e/l = 0.5 Q−一一7一一{3 1.0 ・9一一一一9 1 .5 四 2.0 四 2.5 ,四 3.0 0.0 0.1 0.2 0・.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 d/e Fig・13. 各e/lに対するd/eとWL, の関係 1 ● 加 S l1 ・ i 4 S ! j心
・ ● ・ ● ! i ・ ・ j1!に
● ● S ( ● C ● ・ S ・ Sリ
r ・.゜ C ● ● : ・ ・ lS ! ・ ● e/I=0.5 0 1.0 ● 1.5 ∽ 2.0 − 2.5 心 3.0 Lo十Li -Ls 2 . 0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 d/e Fig. 14,各e/Iに対するd/eと(L汁LI)/L。の関係上流端に止 ある低堰堤下の最短流線長について(中崎・篠) 87 この図から,Cは若干の変動はあるが,各e/目こおけるd/eによる変動は,d/eが0.0 ∼0.2では2.0から次第に増えるが,d/eが0.2以上では,e/1毎にそれぞれ,ほぼ一定の値 をとる.d/eが0.2∼0.9の間で,これらすべてのCの平均値を求めると2.063,標準偏差 は0.0172となった.従って,d/eが0.2以上の場合,透水性地盤上に築造された止氷壁をもつ構 造物の最短流線長は,若干の余裕をみて,次式によって求めることができる. LS= Lo十L, 2.1 IV まとめ 上,下流方向無限,下方に有限な透水性地盤上に設けられた低堰堤の上流端に止水壁を設置した 場合の,透水性地盤内の浸透流について, Schwarz-Christoffelの変換を用いて解析し,流線 網を描いた.低堰堤の底面幅I,透水性地盤の深さe,止水壁の深さdとし,e/I,d/eをパ ラメータとして計算し,描いた流線網より最短流線を求めた.その結果,e/Iが0.5∼3.0の間 で,d/eが0.2∼0.9の場合に,いわゆる浸透路長Loと,ショートパスの方法による浸透路 長LIを用いて,最短流線長Lsは.次の式で表わせることが示された. Lo十L, Ls=一友T-参考文献
1) Muskat M : The Flow of Homogeneous Fluids through Porous Media, McGraw Hill Book CO. pp. 216-217(1946)
2)野知浩之:鄙十の手引,頭首工,土地致良新聞社pp82 83(1961)
(昭和58年9月21日受理) (昭和59年1月31日発行)