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流動比率と収益性分析に関する試論

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Academic year: 2021

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(1)

長野大学紀要 第14巻 第2号 151-155頁 1992

流動比率 と収益性分析 に関す る試論

The Role of Current Ratio Aspects in Profitability Analysis

1

. 財務分析 の 意 義 (1)財務分析 と財務管理 広い意味の財務管理 は、経営諸活動 を貨幣計量 化 して、測定、計画、統制す るものであるが、財 務分析はいわゆる定 量分析の重要 な手段 であ り、 財務管理遂行上の基巧遅的な役割 をもつ o すなわち、財務管理 の執行手段 である予算制度 を通 じ、十全な経営計画の体系 を構築す るために は、 まず、定量的な経営実態の適確 な把握、実績 の検討が不可欠であ る。いうなれば、財務分析 は 財務管理 活動 で行 われ る

Pl

a

n

-d

o

-s

e

e

の循環 の中に組み込 まれた基礎的な分野であ り

、s

e

e

p

l

a

n

の出発点である ともいえる。 (2)財務分析の分 析視点 財務分析は収益性、安全性 (又は流動性)、成長 性 など、いろいろな視 点か らすすめ られる。特に 近年、付加価値会計に関連 していわゆる生産性分 析の重要性が認識 され、 また、企業の社会的貢献 の立場か ら、企業の利害関係者の範囲 を広 く社会 的に設定 した、 いわゆ る企業社会分析会計の開発 など注 目すべ き研究 も始め られている。 しか し、財務分析 における最 も基本的な分析視 点は、安全性の状況把握 と収益性の測定 とい う両 面の検索であ り、他 の視点は多かれ少 なかれ、 こ れ らの評量 をふ まえて沢生 して きている要素が多 い と考 えられ る。 (3)安全性 ・収益性分析 と財務管理 財務管理の基本的 な内容 をなす ものは、具体的 には資本計画 と利益 計 画である。端的に表現すれ ば、前者は安全性管理 に、後者は収益性管理 に密 接に結びつ く。

島 弘

Hiroto Nakajima

か くて、安全性 と収益性の問題 は、財務管理に おけ る計画、統制機能 を全 うす るえでの両輪 をな す管理視点であ るといえる。 2. 流動 比 率 の特 性 と留意点 (1) 流動比率 の意味 流動比率 とはい うまで もな く、貸借対照表に計 上 された流動資産 と流動負債の比較であ り、

語 賢

憲 ×100として示 され、本来、財務の安全性 (又は流動性) を測 る代表的な指標 とされているO 安全性の意味は概念的には、資本構成上の安全 性、或いは財務体質の安全性につ なが るもの とし て捉えることもで きる。 しか し、流動性の表現か らもうかが えるとお り、資本の状態、特に流動資 産一流動負債 -運転資本 として、増加運転資金の 割 り出 しを通 じ、短期資金管理の問題 として登場 す る場面が多いことか らも、安全性 とは端的には 営業資金の状態の良否 を測 るもの として考 えるの が平易かつ重要 であろう。 そこで、流動比率が資金の安全性 を測 るに十分 な指標であるか どうか、又、流動比率 をみ る場合 いかなる点に留意すべ きかについて検討 してみた

い。

(2) 静態比率 流動比率 は静態比率 である。 そ もそ も貸借対照表 に計上 された流動資産は、 い うなれば1年以内に資金化が見込 まれる資産で あ り、流動負債 は

1

年以内に支払いが義務づけ ら れている負債であるか ら、分子である流動資産が 分母 である流動負債 を上 拘るほ ど、すなわち流動 比率が100%をこえるほ ど、資金的に安全性 は良好

(2)

中島弘人 流動比率と収益性分析に関する試論 であると考 えるの も、先行指標的な意味あいにお いて一面の真実性 を認め ることは可能であろう。 しか し、現 にあ る

1

年以内の負債 は、現にある

1

年以内の資産の換金によって支払われ るとい う のは現実的には企業の活動実態 に反す る。going concernたる現代企業は、流入 して くる資金に よ って流出 してゆ く資金 を賄 うのであ り、貸借対照 表に表現 され る資産のス トックや負債のス トノク とは直接 に結 びつ くものではない。 貸借対照表 は一定時点の財政状態 を示す もので あって、実績 として期 間中の資金の流入量、流出 量 を物語 るものではないので、流動比率 を以て、 その まま資金の安全性 を測 るこ とはで きない。事 実、資金 ショー トをきた し、倒産の止むなきに至 った企業の倒産直前の財務指標が、流動比率 とし てはか な りの高率 を示 していた とい う事例が極め て多い。 期 間中の資金の流入量、流出量 を突刺 し、構造 的な資金状態 を検索す るためには、いわば発生主 義の静態比率 を現金主義にはん訳 して組みかえて 152 み る必要性がある。それには経常的な現金収入 と 経常的 な現金支 出の額 を計算 し、両者の比較 を流 動比率 との対比において、経常収支比率 として算 出 してみ る必要がある。 経常収支比率 はn期 とその直前期の財務諸表に よ り、概算的には次の計算によって、 n期 の資金 状態が容易に描出できる。 経常収入-売上高- (期末売上債権 一期首売 上債権)-その他の流動資産増加 額+引当金繰入板 +減価償却費 経常支 出-売上原価 - (期末買掛債務 一期首 買掛債務)

+

(期末棚卸資産 一期 首棚卸資産)+一般管理販売費十 その他の流動負債増加旗 (注 1) その他の流動資産、流動負債の中で、現金 預金、借入金、未払税金等の項目は、経常収 支の枠外 と考え、上記の計算から除外 してお く。 実務 的には経常収支額の計算 を容易にす るため に、次 に示す ような算出表 を用いるのが簡明であ 経常収支比率算出表 (経 常 収 入)

n

n'

期 (直前期)

n-n

'

売 受 取上 手 高

- △ 売 掛 金 △ そ の 他 流 動 資 産 △ 売 上 収 入 計 (丑

当 金 繰 入 -減 価 償 却 費 -非 資 金 費 用 計 ② 経 常 収 入 計 (》+② ㊨ (経 常 支 出)

n

n'

n一m'

売 支上払 放手 価

△ 只 掛 金 △ そ の 他 流 動 負 債 棚 卸 資 産 販 売 費 管 理 費 △ 経 常 支 出 計 ㊨

(3)

153 長野大学紀要 第14巻第 2号 1992 る。 以上 に よって計算 された経常収支比率 が100% を上 回るほ ど、 まざれ もな く営業上の現金流入量 が現金流出量 を上回っていたこ とを示 し、 この余 裕資金は借入金の返済や設備投資に充てられ るこ とになるが、逆の場合は財務収入 (借入金等)な ど、何等かの措置が必要であったことを物語 るも のである。

(

3

)

業種別態様 流動比率 は業種によってかな り特異 な態様 を示 す ことが多いO 極端 な例は電力会社.流動比率 と称 して も全 く 体 をなさない低率 である。百貨店、建設業界など に もその傾向を認め うる。 このような業種にはそれぞれに特有 な営業の仕 組があるので、流動比率の低 さを以て安全性に劣 るとみるのは全 くナ ンセンスである。 簿記の仕訳によって模式的に示せば、一般的な 営業の仕組が、 売上債権

×××

売 上

×××

現 金

×××

売上債権

×××

棚卸資産

×××

買掛債務 ・借入金

×××

費用 (又は設備)

×××

現金 ・借入金

×××

の如 き形態 をとるのに くらべ、上記の ような特殊 な業種では、 現 金

×××

売 上

×××

棚卸資産

×××

現金 ・買掛債務

×××

費用 (又は設備)

×××

現金 ・借入金

×××

の如 き循環 を反復す るO -股に売上債権や棚卸資産の回転率が高いほ ど ス トックの表現である流動比率 はむ しろ低 くなる のが道理 であ る。 しか し、 これ を現金主義にほん 訳すれば、期間中の経常収入は回転が速いほ ど多 額にのぼ るであろうし、在庫による資金圧迫 もな い (百貨店 も自社の在庫はさほ ど多 くない)0 特殊 な業界に限 らず、個別の企業にあって も営 業上の方針、慣習などによって様々な形態 をとる ものであるか ら、流動比率の高低のみによって安 全性 を測 るのは不適切である。 (4) 流動資産の内容 流動資産の内容の吟味な くして、正 当な流動比 率の姿 を判断す ることはで きない。 た とえば、回収困難な売上債権、販売困難な不 良在庫 などの不良資産 を抱 えてい る場合、流動比 率の高 さは死せ る運用が調達 を圧迫す るものであ り、む しろ著 しく安全性 を損 うものである。 安全性の指標 として流動比率 をみ る場合には、 少 くとも上記の ような基本的認識 を必要 とす るも のであることに留意 したい。

3.

収益 性 と流 動比 率 (1)流動比率のパ ラ ドックス 通常いわれるとお り、貸借対照表の貸方は資本 の調達 を示 し、借方は資本の運用 を示す もの とさ れ る。根本的な問題点は流動比率が100%をこえる とい うことは、運用が調達 をオーバー しているこ とを意味す る。そ もそ も売上債権や棚卸資産の増 加 は資金上の圧迫要因であ り、流動比率 の上昇は 資金的にはむ しろ安全性の逆 をゆ くもの と論理的 には考 えられ る。 しか し一般的には、いわゆる優 良企業が財務構成上、高い流動比率 を保持す るの が常態であ り、 この本源的な要 因は何処 にあるの か とい うこ とが問題である。 以下、試論 として述べ るところによ り、流動比 率 を以て安全性 を測 る尺度 とす るよ りも、む しろ 収益性 を測 る指標 として、 よ り重要 な意味 をもつ ものであるとい う論拠 を明 らかに したい。 (2) 流動比率 と収益性 との関係 そ もそ i)流動資産の主要項 目である売上債権は 売上に対応す るものであ り、い うまで もな く利益 含みの価額が計上 され る。い うなれば、通常の営 業活動によって生み出され る営業利益の唯一の源 泉が、流動資産の中に含 まれてい るのである。 理論の明確化のために、簿記でい う試算表等式 を想起 してみたい。 流動資産+固定資産 +費用 -流動負債 +固定負債 +資本 +収益 上記において 固定資産 -固定負債 +資本 つ ま り経営分析 で固定長期 適合 率が100%とい う一応の標準的な健全状態 を想定すれば、

(4)

中島弘人 流動比率 と収益性分析に関する試論 営業利益 -流動 資産 -流動 負債 -収益 一費用 とい う関係が描 き出 され る。 これ を標 準的試算表 第1回 標準的試算表図形 流 動 資 産 流 動 負 債 (利 益) 資固 定 負 債本 固 定 資 産 (利 益) 費 用 収 益 由来す るので\あれば、 そ こに こそ収益性 の指標 と しての流動 比率 の意味 を考 えたいのであ る。 事実 、 日本経 済新聞 の平成

3

3

月決算企業 の 決 算公告特 集 か ら約

2

0

0

社 を抽 出 して検証 して み た ところで も、流動比率 と売上高営業利益率 との 間にはか な り強 い相 関が認め られ た。 (3)営業 資本営業利益率 の考察 上 記 の とお り、標準的 な タイプ としては流動 比 率 と利益率 が正 の相 関 を示す のは当然 といえ るが、 生 きた企業 の実 態は千差万別 であ る。すべ ての企 業が絵 に描 いた よ うな態様 を描 出す る とは限 らな

い。

問題 は前述 した ように流動比率 が静態比率 であ る とい うこ とであ る。す なわ ち、売上債権 に しろ、 棚 卸資産 に しろ、資金化 が速 く回転が速 いほ ど、 ス ト ソクとしての流動 資産 の保有 は相 対的 に小 で あ る筈 であ り、従 って流動比率 も低位 にあ る とい う官業 形態 も当然存在す るであろ う。 その よ うな 業態 に あっては、流動 比率 は低 くて もかな り、高 い利益率 を示す場合が あ りうる。 そこで、流動 比 率 との関連 にお いて、利益率 を構 成す る因子の内 容分析 を試 みた。 収益 性 を測 る総合的 な尺度 として、総 資本 当期 利益率 或いは経常 資本経常利益率 な どの指標が あ 154 図形 として示 したのが第

1

図 であ る。 ここにみ られ る とお り、流動比率 が高い場合、 それが高水準の営業利益 を内包す るこ とに よって 第 2回 特殊 な試算表図形 淀 動 資 産 涜 動 負 債 固 定 資 産 固 定 負 債 資 本 (利 益) 費 用 収 益 る。 い うまで もな く、経営全体 に動 員 された資本 総額 に対す る利益総額 の比率 であ る。 こ ゝで、通 常 の営業 活動 に係 る利益 と、 これに対応す る営業 資本 の部分 との比率 (次 に述べ る営業資本営 業利 益率 ) を総 資本利益率 か ら分 割 してみ る。 す なわ ち、先 の試算表 図形か らもうかが え る と お り、貸借対照表 の構成上、通常 の営業活動 に係 る資本 の調達 と運用 に相 当す る部分 は、 と りもな お きず、流動 負債 と流動 資産 であ り、 この果実が 損益計算書 の営業利益 に相 当す る もの と模 式的 に 考 え るこ とは可能 であ る。 (注

2

)資本の調達 ・運用 と費用 ・収益の対応関係を 明確に トレースするためには、営業外収支の内 容 を短期資本 (通常の営業活動)に係 る資本収 支の部分 とそれ以外の部分 とに分割 し営業利 益 に加算又は減算す る等の操作 を講ず るのが 妥当であろう。 そ こで通常 の営業活動 に動 員 され た流動 負債 と この果実 であ る営業利益 の割合 を、仮 に営 業 資本 営業利益率 (略称

A・A

利益率) として捉 え る と、

A・A

利益率- 諾 諾

×1

0

0

とな る。 この

A・A

利益率 を構 成す る各要素 を数 式 的 に 分解す る と、

(5)

1

5

5

長野大学紀要 第14巻 第2号 1992

A ・A

利益率 -慧 穿 ×題 姦 ×駕 篭

×1

0

0

となる。 す なわ ち

、A ・A

利益率 は売上 高営業利益率 と 流動 資産 の回転率 と流動 比率 の三者の相乗積 とい うこ とになるO この三つ の要 因が何 れ も高率 とい うこ とはあ り得 ず、互 いに背 反関係 にあ るこ とは 理解 され よ うが、問題 は この三 因子の うち

A ・A

利益率 の高 さに最 も大 き く貢献 してい るのは どの 要 因か とい うこ とであ り、かつ、 これが財務 管理 上 の着眼点 として重要 な意味 を もつ。 ちなみに こ れ を図形化す る と第3図 とな り、三点 を結ぶ三角 形 の大 きさが

A ・A

利益率 の規模 を示す こ とにな る。 売 上 至完動資産 (4)総資本利益率 と

A ・A

利益率 の関連 総合的 な収益指標 であ る総 資本 当期 利益率 は、 次式 の とお り

A ・A

利益率 とその他 資本利益率 と の合成 で示 され る。 総 資本 当期 利益率

-A ・-A

利益率 ×営業 資禁 望碧 負債)総 資本 ・ 営要語品 慧崇 益 ×旦 鴛 欝 杢 す なわ ち

、A ・A

利益率 とその他 資本利益率 に 営業 資本構成 比、 その他 資本構成比 をそれ ぞれ加 重 して、両者 を合 算 した ものが総 資本 当期 利益率 であ るか ら、 これ に よ り収益性 に対す る両者 の貢 献度 が分 明す る。 次 に この貢献度 と上述 の

A ・A

利益率 を構成す る三要素 との関連 を、 前記 日経決算公告特集 の企 業群 の 中か ら実証 的 に検討 してみ る と、次の諸点 が うきぼ りに され た。 第- は

A・

A

利益率 ((注

2

)操作 前の数値)

2

0

%以上 の高収益企業 では、流動 比率 は最低 の場合 で も

1

5

0

%

を割 り込 む こ とが なか った。 第二 は

A ・A

利益 率 がか な り高 くて も、 それが 流動比率以外 の因子 に よって支 え られてい る場合 は、お しなべ て上 記 のその他 資本利益率 がマ イナ ス とな り、全体 の総 資本利益率 を押 し下 げ る結果 となってい る。 この関係 を試算表等式 に よって図形化 してみ よ う。 流動比率 が低 くて も利益率 はプ ラスであ る と い う財務体質 は第

2

図の ような形 を とる以外 には あ りえないO ここで読 み とれ るの は、 自己資本 の 著 しい弱体 ぶ りであ り、 いわゆ る国定流用的 な財 務体質 が うきぼ りに され る。 必然的 に支払利 息等 の営業外支 出が受取利 息等の営業外収 入 を大幅 に 上 回 る形 とな り、 これが

A ・A

利益率 に食い込 み、 総 資本利益率 をダウンせ しめ る結果 となってい る のであ る。 以上 の検証 に よ り、流動比率 の高低が、収益性 の高低 にか な りの因果関係 を以 て影響 を与 えてい る事実 を、臨床 的 に も見 出す こ とが で きる。 おわ リに 流動比率 は静態的には財務の安全性 をはか る指標 として意義 を認め うるが、一方、流動資産の回転効率 などの面か らみた場合には、その保有の高さは流動性 を損 うものであ り、双方の視点には明かに二律背反的 な要素がある。 この関係 をよ り適確 に整理づ けるのか今後の課題 であるが、流動性 とは本来、発生主義の土俵で論ぜ ら れるのは不十分であると考 えられるのに くらべ、流動 資産 と収益性の関係には二律背反的な要素がな く、論 理的には単純明快であろうと思われる。試論 として掲 げる次第である。 (なか じま ひろ と 講師) (1992. 6.23受理)

参照

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