工業用内視鏡を利用した切羽前方地山調査手法(DRiスコープ)の開発技術の特徴と適用実績について(PDF:1.13MB) 著者:法橋亮 関根一郎 石垣和明 小林由委
5
0
0
全文
(2) 工業用内視鏡を利用した切羽前方地山調査手法(DRi スコープ)の開発. ボアホールカメラやボアホールスキャナ等従来の 孔内観察技術では,調査機器の挿入・回収が困難と なるため適用対象となり難かった「破砕帯や未固結 土砂等」崩落性の強い地質条件でも調査を行える点 が大きな特徴である.また,ロッドを引抜きながら 延長方向の動画像を得ることで,切羽前方の地山の 状態変化を把握することができる.. ②ロッドを引抜きながら観察することで,延長方向 に連続的な動画やピンポイントでの静止画像が得 . られ,地山状態の変化が把握できる(写真‐2) ③トンネル掘削進行のほぼ1週間分を網羅できる調 査仕様(最大観察長27m程度)とすることで,工程 への影響を低減しながら,効率的な調査が行える. ④穿孔探査(DRISS)等の既存の調査技術と組み合わ せることで,切羽占有時間を最小限としながら, 前方地山に対する精度の高い情報が得られる. ⑤同梱のステレオレンズに変更することで,ステレ オ計測機能の使用が可能となり,割れ日の開口幅 や礫,鉱物の大きさ等を測定できる. ⑥防水機能を強化した距離カウンターが付属してお り, 孔内への挿入長をモニター画面に表示させる ことができる(写真‐3) .. 2.1 DRi スコープの諸元と特徴 DRi スコープを構成する工業用内視鏡の諸元を表 ‐1 に示し,続けて本技術の特徴について列記する. 表‐1 DRi スコープを構成する工業用内視鏡の諸元 視野角,視野方向とも光学 視野角 標準 120° アダプターにより変更可能. ケーブル先端の稼動域より 視野 方向. 光学系. 全周方向. 首振り(全周方向 60°まで の湾曲)が可能. 記録 形式. 動. と解. 静止画:JPEG 形式(最大約 30 万画素). 画:AVI 形式(約 30 万画素). 像度 光学 アダプター ケーブル. 外径. 長さ. φ8.5mm 30m (φ8.5mm). LD 照明 (レーザーダイオード) 最大有効観察長 27m 程度 写真‐3 挿入長と重力方向の確認モニター画面. ①小口径の調査機構(φ8.5mm)を採用することで, ロッドがケ―シングの代わりを兼ねるため(写真 ‐1),孔壁崩壊が発生するような不良地山でも可 視化した情報が得られる(写真‐2) .. ⑦内視鏡先端部の重力センサーにより,上下左右等 光学アダプターの向き(45°刻み)が把握でき, 観察したい孔壁位置をピンポイントで観察できる (写真‐3).これにより,割れ目の方向について も間接的な情報が得られる. (写真‐4)を使用し,DRi ⑧付属の「挿入補助装置」 スコープをロッド送水孔に挿入しながら送水する ことが可能で,これにより摩擦抵抗を低減して挿 入を円滑にすることができる.. 写真‐1 ビットから突出した光学アダプター(φ8.5) (ロッドとビットはケーシングを兼用). 写真‐4 挿入補助装置. ⑧一般の工業用内視鏡はトンネル切羽での使用を想 定していないので,防水機能が充分とは言えない が,DRiスコープでは湧水,滴水に対する防水機能 を強化している. 写真‐2 孔内観察画像のモニター表示の一例. 13-2.
(3) 技術研究報告第 43 号. 2017.11. 戸田建設株式会社. 2.2 DRi スコープの適用可能延長と調査時間 ケーブル長の制約から,1 回当たりの調査延長は 25m 前後(最大 27m 程度)が基本となる. 調査対象が軟岩地山を主体とする場合には,準 備・削孔時間を含めても 1 回 2 時間程度で調査を完 了させることが可能である.週 1 回の調査を掘削サ イクルに組み込めば,工程への影響を最小限にしな がら,トンネル全線の適用も可能となる.. 3.1 未固結・崩壊性地山への適用 はじめに,自立性の悪い未固結・崩壊性地山の孔 内画像を連続的に取得できた事例を示す. 本調査は,トンネル直上(ΔH≒8m)で交差する 導水路への掘削影響を把握することを目的として, この直下を構成するトンネル部の地山の状態を事前 に把握するため,DRi スコープを適用したものであ る.本節記載の調査では,DRISS 削孔 6m 時点で逸水 が起こり削孔不能となったため,その段階で第 1 回 目の DRi スコープを適用することとし,後日次節に 示すとおり,第 2 回目の調査を実施した. 孔内観察の結果,花崗岩由来の斜長石や石英を主 とするφ10mm 程度の鉱物・岩片(崖錐-扇状地性堆 積物)が孔壁を構成していることが明らかとなった. 細粒分を含まないために自立性が悪く,ロッドの引 抜きと同時に孔壁が崩壊してしまいそうな状態であ る(写真‐5).このような条件下では,ボアホール カメラ等従来の調査機器では挿入・回収を含めて適 用が難しいが,ロッドをケーシング代わりとする本 工法では,何ら問題なく調査を行うことができ,孔 内・孔壁の状態を高精度で記録することができた.. 2.3 DRi スコープで識別可能な地質情報 得られた孔内画像の観察で識別できる地質情報は 以下の通りである. (1) 岩種 色調・組織・表面粗さ・亀裂頻度等の差異より特 定する.ただし,造岩鉱物の同定は困難な場合が多 く,くり粉を採取しこれを鑑定することが前提とな る.また,調査前までの掘削実績(切羽状況)や既 往の調査報告書等を参照する必要がある. (2) 地層境界位置・深度 記録動画像の引抜き開始時刻と終了時刻とから, 延長 1m 区間毎の引抜き時間と引抜き速度を求め,観 察点の深度を算定する.つまり,本調査は一定速度 で引抜くことを前提としている.距離カウンターを 併用することで,深度特定精度の向上が図れる. (3) 風化・変質の有無とその程度 風化の程度の指標となる「褐色汚染の程度」に着 目して判定を行う.観察モニターに表示される色調 により,風化の程度を充分に評価することが可能で ある. (4) 割れ目の程度 幅の広い開口割れ目であれば明瞭に識別可能であ る.密着した割れ目等は識別困難である場合が多い が,孔壁画像の陰影等を利用することで多少なりの 判定ができることがある.また,同梱のステレオレ ンズを用いれば,開口幅等の測定が可能となる. (5) 地質脆弱区間の特定 孔壁崩壊等による孔径の大小変化,孔壁面の表面 粗さ等に着目することで,相対的な地質脆弱部を抽 出することも可能である. 以上の地質情報は,穿孔エネルギー値やノミ下が り,くり粉の観察結果と関連付けて評価することで, より精度の高い前方地山の情報として活用できる.. 写真‐5 未固結地山中の孔内画像. 本技術が,断層破砕帯のような崩壊性地山におい ても充分に適用可能であることが改めて裏付けられ た.山岳トンネルで一般に問題となりやすい”突発 的な断層破砕帯の位置や性状の把握”,あるいは” 坑口部における岩盤と未固結層の地層境界の把握” 等,特殊条件下において有効な調査手法として今後 期待できるものと考える.. 3. 適用事例 H26 年 7 月に DRi スコープを現場で試行してから, H29 年 7 月までの 3 年間に延べ 30 回, 総延長 L=600m 以上の適用を行った.この間, 「名古屋支店上高地ト ンネル(L=588m)」では,技術提案のコアボーリン グに代えて DRi スコープによる調査を行うことが認 められた.また, 「名古屋支店祖山トンネル(L=512m)」 では,最初の技術提案履行現場として,トンネル全 線にわたる DRi スコープの調査適用を実現した. 本章では,これまでの適用実績から,代表的な調 査事例を取り上げ紹介する.. 3.2 地質変化の把握 次に,孔壁の色調および形状等の差異に着目し, 地質の変化を明確に把握した事例を示す. 本調査は,前節の調査の延長として後日行った第 2 回目の調査である(L=16m) .この間,崖錐-扇状地性 堆積物は,高角度不整合面(アバット)を境に急変 し,基盤岩である中生代の付加体構成岩類が分布す る状況となっていた.事前調査の結果から,今回の 調査区間には泥質岩・玄武岩混在岩とこれを貫く閃 緑岩の分布が予想されていた.. 13-3.
(4) 孔内観察の結果,混在岩の色調が白色(玄武岩優 勢部:炭酸塩化し交代変質している)ないし黒色(泥 岩優勢部)を呈し,不均質かつ表面粗度が大きい孔 壁形状だったのに対し,深度 10.74m から 15.47m で 観察された岩体(閃緑岩と判定)は緑灰色で孔壁が 均質かつ滑らかであり,くり粉とこれら画像情報を 根拠として,岩種および地質境界を明確に識別する ことができた(写真‐6,写真‐7) .. 15.47m 10.74m 閃緑岩. 泥質岩-玄武岩混在岩. 穿孔エネルギー(J/cm3). 工業用内視鏡を利用した切羽前方地山調査手法(DRi スコープ)の開発. 深度(m) 図‐2 岩種区分と穿孔エネルギー値との関係. No30+18.0 No30+18.0 DRISCOPE L=15m 150 支保工基数@1.0m. 160 泥質岩玄武岩混在岩. 泥質岩玄武岩混在岩. SL 閃緑岩. ボーリング軸での縦断図. 写真‐6 玄武岩・泥質岩混在岩の孔壁画像. 閃緑岩. 泥質岩玄武岩混在岩. 泥質岩玄武岩混在岩. SLでの平面図. 図‐3 掘削実績を基に作成した地質縦断図・平面図. できることも示せた.ただし,地層の走向・傾斜が 特定できていない場合や地質構造が複雑な場合には, 追加調査を実施し,地質構造を 3 次元的に把握した 上で,前方地山の状況を予測することが重要である. このときの調査結果をとりまとめたものを図-4 に 示す.調査区間の地山の状態を視覚的に理解できる ように柱状図形式で整理していることが特徴である. 併用して実施する DRISS の穿孔エネルギー値やくり 粉の状況等も同図中にまとめておけば,切羽前方の 要注意地質区間の抽出が容易に行え,安全性や経済 性の向上等,施工の合理化に寄与できる.. 写真‐7 閃緑岩の孔壁画像. DRi スコープで捉えられた地層境界は,穿孔エネ ルギー値の変化・推移とも一致していることが確認 された(図‐2) . また,これらの調査結果は,図‐3 に示すように, 掘削実績とも概ね一致しており,DRi スコープを適 用することで,トンネル区間の地質を精度良く把握. 図‐4 DRi スコープ成果品の一例. 13-4.
(5) 技術研究報告第 43 号. 2017.11. 戸田建設株式会社. 3.3 地層境界面の方向の把握 続いて,重力センサーの情報と砂岩泥岩互層の地 層境界面の出現状況等より,地層の傾斜方向を特定 できた事例を示す. 調査地の地質は,新第三紀のグリーンタフ層から なり,海底地すべり(スランピング)による異常構 造・堆積物を伴い地質が急変することが特徴であっ た.スランプ層の出現をいち早く特定するため,DRi スコープによる調査を適用した. 孔内観察の結果,砂岩泥岩の地層境界面が明確に 捉えられた.この地層境界面と孔壁面とがなす交差 線(写真‐8)を,DRi スコープ引抜き時の連続動画 像より分析したところ,トンネル縦断方向に約 20 度 で傾斜していることが予測できた.傾斜方向やその 角度は現地一般部の切羽状況とも整合し,乱れのな い地層構成であったことから,スランプ層ではなく, 正常堆積物と判定し調査を終えた. 孔内観察に基づく割れ目の方向の特定は,堆積岩 地域における前方地山の地質構造の 3 次元的な把握 や,火成岩等塊状岩盤地域において抜け落ちを発生 させる割れ目(キーブロック)の抽出にも一役を買 うものと期待される.現状,その精度は十分なもの と言い難いが,将来的には地層面の走向・傾斜を正 確に特定できるレベルまで発展・成長させたい.. 写真‐9 側視レンズによる割れ目の位置抽出. 写真‐10 開口割れ目の間隔測定状況(W=4.54mm). また,開口性の節理が系統的に存在する状況から, 落石危険岩体となりうる可能性があるものと判断し, 後続の調査につなげることができた. 走向線. 4. おわりに. 天地. 本稿では,DRi スコープの特徴と代表的な調査事 例について紹介した. 本技術は,切羽前方の地質状況を穿孔エネルギー 値やノミ下がりといった定量的なデータとして把握 しながら,孔壁地山の状態を地質条件に関係なく, 原位置で可視化し評価できる点で優れた調査手法と 言える.とくにトンネル工程への影響を最小限にし ながら,調査の高精度化を実現できた利点は大きく, 新たな切羽前方調査手法として期待ができる. 今後,適用事例を更に充実させ,切羽前方地山の より正確な把握に尽力していきたい.. 表示 天頂 写真‐8 地層境界面と孔壁面とがなす交差線. 3.4 割れ目間隔の把握 最後に,割れ目(節理系)の発達する硬質塊状岩 盤が分布するトンネルで,ステレオ計測機能を用い て,割れ目の幅・間隔を特定できた事例を示す. 本調査は,切羽評価に直結する割れ目の幅・間隔 の定量測定を試みるとともに,直上斜面に分布する 岩塊が,落石危険岩体となりうる開口性亀裂を有し ているのかどうかを確認するため,DRi スコープを 適用したものである.ステレオ計測は,側視レンズ で適当な割れ目の位置を抽出した後(写真‐9),ス テレオレンズに交換して実施した. 調査の結果,孔壁部を構成する系統的な開口節理 の存在が明らかになり,主要な割れ目で 1.1~4.5mm 開口している状況が確認された(写真‐10) .これに より,切羽評価の一項目である「割れ目の幅・間隔」 を定量的に把握することができた.岩判定等の発注 者立会時に,有効な資料になるものと期待される.. 参考文献 1) 関根一郎,小林由委,法橋亮,石垣和明,平田康夫:工 業用内視鏡で切羽前方の地山状況を把握する=DRi ス コープの開発=,建設機械,Vol.51,No.7,pp 35-38,2015. 2) 関根一郎,法橋亮,小林由委,石垣和明,平田康夫:工 業用内視鏡による切羽前方地山調査法の開発,地盤工学 会誌,Vol.65,No.5,pp 20-23,2017. 3) 法橋亮,関根一郎,小林由委,石垣和明:工業用内視鏡 を利用した新たな切羽前方地山調査手法の開発,第 44 回岩盤力学に関するシンポジウム,2016.. 13-5.
(6)
関連したドキュメント
事前調査を行う者の要件の新設 ■
第4 回モニ タリン グ技 術等の 船 舶建造工 程へ の適用 に関す る調査 研究 委員 会開催( レー ザ溶接 技術の 船舶建 造工 程への 適
1 昭和初期の商家を利用した飲食業 飲食業 アメニティコンダクツ㈱ 37 2 休耕地を利用したジネンジョの栽培 農業 ㈱上田組 38.
ユースカフェを利用して助産師に相談をした方に、 SRHR やユースカフェ等に関するアンケ
第一の場合については︑同院はいわゆる留保付き合憲の手法を使い︑適用領域を限定した︒それに従うと︑将来に
規格(JIS)等の国内外の民間規格に適合した工業用品の採用,或いは American Society of Mechanical Engineers(ASME 規格)
[1]Comite Euro-International du Beton : CEB-FIP MODEL CODE 1990 (DESIGN
NACCS を利用している事業者が 49%、 netNACCS と併用している事業者が 35%おり、 NACCS の利用者は 84%に達している。netNACCS の利用者は netNACCS