験 震 時 報 第63号 (2000) 35~ 48頁
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日山口県北部(山口・島根県境付近)の地震
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被害調査報告
福岡管区気象台技術部地震火山課* 下関地方気象台 (Received March 23.
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999 : Accepted July 22.
1
999) 1. はじめに 1997年6月25日18時50分に山口県北部(山口・島 根県境付近,北緯34度26.3分 東 経131度40.1分) の深さ8.3kmを震源とするM6.3の,地震が発生した.. この地震により島根県益田市で震度5強,山口市・ 萩市・下関市などで震度4となったほか,中部地方か ら九州南部にかけての広い地域で有感となった. 下関地方気象台は,震源地周辺の現地調査を実施し. たのであわせて報告する. 2.地震活動の状況 震度分布図および観測点名を第1図に示す. 1998年6月30日までの約1年間に本震を含み632 jの地震(うち有感地震は25回)の震源が決まったが, 余震活動は本震発生後から順調に減衰した(第2図). 気象庁の震度観測点で有感となる地震は 7月上旬 まで多かったが8月に2回発生した以降は1998年2月 および5
月に単発しただけである. 今回の活動は,本震-余震タイプの活動経過をたど っている.余震は北東一南西方向に伸びる約20x
10kmの範囲で発生しており 本震は余震域分布のほ ぼ中央部に位置している.本震のメカニズムは, P波 初動による解及びCMT解とも およそ東西方向に圧 力軸をもっ横ずれ断層型である. このことと余震分布から,今回の地震は北東一南西方 向に伸びる約10kmのほぼ垂直の断層が右横ずれを起 こし発生したものと推定される(第3図). 最大余震は本震8分後の25日18時58分に本震の北 東約3km (深さ13.3km)および26日11時45分に 本震の南東約 1km (深さ10.7km)で発生したM4.0 である.また,震源の決まる前震は観測していない (第4図 (A)). 気象庁が山口県美称市に高感度の地下埋設型の76型 地震計を設置して,山口県付近の地震に対する検知力 が向上した1979年7月以降の周辺の震央分布および 時空間分布を第4
図(
B
)
に示す. この期間には1.984年3月末に地震資料伝送網, 1994年9月末に津波地震早期検知網が運用を開始し, 検知力が向上している. 第4図 (B)からみると1986年頃からA-B領域 の南半分の領域での活動が活発になっていたが今回の 震源付近では特に目立つ地震はなく,周辺に比べて地 震は少ない. 1926年(昭和元年)以降の約70年間でM 5以上の 地震は,山口県中部の地震 (1987年11月18日M5.2), 周防灘の地震 (1991年10月21日M6.0)と今回の山 口県北部の地震 (M6.3)の3回である. 3.現地調査と被害状況 下関地方気象台は、地震発生の翌日 (26日),家 屋・道路・崖崩れ・地割れ等の被害状況,揺れ・地鳴 り等の開き取りについての現地調査を行った. 震源地から南西に約6kmのところにある山口県阿東 町の生雲田野中地区を中心に被害が大きく,その概要 を次に示す.なお,被害状況を第l表,山口県内の過 去の被害地震を第2
表に,被害写真を巻末に掲載した. 被害調査を行った場所を第5図に示す.図中の番号は 写真の番号に対応している. 3. 1 .地区別被害状況 は}田野地区 地震直前にドドォーン或いはジェット機のハ*ツクファイ トに似た音を聞き, ドーンと突き上げられた後,北東 南西の揺れを感じ家具類のほとんどが倒れ散乱. また南北方向の7----8秒ぐらいの揺れを感じた人も いる.36
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の被害調査報告 1田70020 00:00 --19980630 24:00 N=臼2い。ら
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年06月30日) 山口県北部の地震活動 第2図3
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ー1997 01 0100:00 --1.997 06 25 18:50 N=28 io M ・ o μ ' ! jad 本 震 o
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1997 06 25 18:50 除214 倹知カ肉」ュ 震央分布図 ① 断面図(枠内のみ) ぬ86 ④M-T
図(枠内のみ).-" 過去の地震活動(1919年7月 1日00時00分-1997年6月 25日 18.'時50分} ② (B) 山口県北部の本震発生以前の地震活動 (A)最近の地震活動 (1 997 年 01 月 01 日 00 時 00 分~1997 年 06 月 25 日 18 時 50 分) (B)過去の地震活動 (1 979 年 07 月 01 日 00 時 00 分~1997年06月25日18時50分) 第4図40 験震時報第 63 巻第 1~2 号
第5図 被 害 写 真 位 置 図
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の被害調査報告4
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倒壊していない墓石は北東方向にずれ,反時計回りに る. 数度から270
度くらい回転している. (写真一3)
生雲西分450
番の家主の話では,r
いきなりドーン と突き上げるような強い揺れが10秒間程度つづいた, 私はマッサージをする椅子に座っていたが,あまりに も揺れが強いため身動きできなかった,聞きの戸は聞 いて,中のものが飛び出し,棚のものはみな落ちた, 家の中も亀裂がはいったところがある」と話されてい る. (写真一 10) ( 2)正地地区 ジェット機のようなゴォーという烈しい音を聞き底 から突き上げられた後 南北に横揺れを感じたとのこ と, 1 0秒ぐらい揺れを感じた人もいる. 畑から庭にかけて大きいところで幅5cm地割れがで、 き10-20m
続いていた. コンクリートでできた近くの橋(掛沖橋)の一部が 損傷,家屋では新築の屋内壁の剥がれ落ち,外壁にひび¥ 屋内の土壁,浴室のタイルに亀裂,家具類が倒れ,そ の一部が損壊,ガラスが割れる,鬼瓦の傾き,玄関の 戸の外れ,鴨居が数cm下がる,天井板の落下等が発生し ている. (写真一 6, 7) ( 3 )中村地区(阿東町森林組合) 建物の外壁にひび、が入った,食器棚の茶碗が落ちて割 れる被害が発生している. ( 4 )水戸地区 地鳴りがあったかは不明であるが南北方向の揺れを 感じた. 瓦を止めている漆喰が剥がれ落ちる被害が出ている. ( 5 )その他の地区 島根県の津和野小学校で体育館の北側の壁が剥離, 柿木村大井谷旧道脇の石垣が崩れる被害が発生してい3.2
道路等の被害状況 田野中付近の県道(迫田・篠目線)では,道路の地 割れ;隆起,道路の至るところに亀裂がはいり,道路が 南北方向に4cmず、れた箇所,長さ約13m最大幅3cm の亀裂が約30度の走向にはいった場所.南側路肩付 近には60cmの幅の道路表面のアスフアルトが,道路に 沿う走向 (30度)で北の部分の上にのりあげていた 箇所がある. (写真-8, 9) 県道迫田・篠目線(高佐下・阿東線と迫田・篠目線 との交差点から西へ約40m
入った所)の道路の南の 斜面が幅3-4m
にわたって崩落し落石の一部が道路 におちていた. (写真一11) 県道(徳佐・下阿東線)の矢柱側から南へ500
m
入ったところでは,細い道路を横切る亀裂,ほぼ東 西方向に走る亀裂. 県道(十種ヶ峰線)の市場神社から青少年野外セ ンター付近で所々で小石が道路に散乱していた.4
.
まとめ 今回の地震による被害の多くは,阿東町田野に局所 的に集中していた. しかし同じ田野地区内でも県道 (迫田・篠田線)に沿って北東および南西側では,道 路の亀裂・崖崩れ・瓦の落下等何らかの被害が発生し ていたが県道から北西の方向200m
ぐらいの所にあ る住居の被害は少ない.ほとんどの人が地震直前にゴ ォーというかなり大きな地鳴りを開いていた. 断層については,調査した地点では発見できなかっ たが,地割れは道路や,畑などで多数みられた. 第1表 被 害 状 況 は 自 治 省 消 防 庁 (7月4日 18時30分現在)資料による 阿 東 町 む つ み 村 人 的 被 害 軽 傷 2名。
住 家 被 害 全壊(棟) l棟。
ー ー ー ー 一 ー ー ー 一 一 』 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 一 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 一 半壊(棟) 2棟。
ー ー ー ー ー ー ー ー 一 一 ー ー ー ー 一 一 一 ー ー ー ー ー ー ー ー ー 一 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 一 ー ー ー ー ー 』 ー ー ー ー ー ー 一 部 破 損 1 5 5;j:東 2 1棟 非 住 家 被 害 半 壊 2棟 0棟 道 路 被 害 1ヶ所。
水 道 断 水 阿東町,むつみ村の2町村でピーク時90戸 そ の 他 津 和 野 小 学 校 の 体 育 館 北 壁 の 剥 離 " ー ー ー ー ー ー ー ー 一 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー 『 ー 明 司 胆 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ーl 柿 木 村 大 井 谷 旧 道 脇 の 石 垣 の 崩 れ4
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第2表山口県で被害のあった地震(1885年以降) 験震時報第 63 巻第 1~2 号 被 害 状 況 :県内の震度 ;年/月/日;時:分:深:MAG : 震 央 地 名 ;Q
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1898/04/03 : 15:48 : 10 : 6.2':山 口 県 北 西 沖 ; 見 島 西 部 で 強 く , 石 垣 の 崩 壊 ・ 地 面 の 亀 裂 ・ 家 屋 の ) 下 関 強 ・ 萩 強 :破損など多く,また長門市でも神社仏閣の損傷多い:山口弱@
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1905/06/02': 14:39 : 60 : 7.3:安芸灘 !岩国の小学校の釣屋墜落,麻郷で、木小屋2軒 転 倒 下 関V l山 の 岩 石 墜 落 , 屋 代 島 で 墓 石 ・ 燈 篭 の 大 部 分 が 転 位 ;@
1941/04/06 :01:49 : 10: 6.2:山口県北西沖i
奈古・石見津田駅間の鉄橋の橋脚等に亀裂,益田・津i
下 関E ;田駅間で線路沈下,貨物列車転覆。道路亀裂・崖崩; ④ 1949/07/12 :01:10 : 40 : 6.2 安芸灘倒
1979/07/13 : 17: 10 : 70 : 6.1 伊予灘 :下松市にて地震で切断された高圧線で感電即死1名 : 下 関E・萩E j家屋の崩壊で負傷2名 。 壁 の 落 下50軒,電線切断i
l徳地町で通行中のダンプカーに落石,運転者が重傷:下関N
・萩E ;山口E 部 レ し , 寸 J 勺 県 分 大 n x u n h u q ‘ u p h d n H v p h U Q f u // n x u n H U 〆 / 心 、 内 ‘ u n x u n 叫 u ' ⑥ , ⑦ 1987/11/18 :00:57 8: 5,2 :山口県東部⑨
1991/10/28 : 10:09 : 19 : 6.0:周防灘 : 広 島 市 で 負 傷 し そ の 他 , 崖 崩 れ ・ 水 道 管 破 裂 等 (下関E・萩E :山口E J山口県旭村で発生した地震により山口市で負傷2名 ; 下 関E・萩E :建物一部損壊,地割れ(巾8'"'-9 Cm)等 が 発 生 。 山 口N t宇部市の銀行で時計落下, 1名 負 傷 。 北 九 州 市 内 で 。 下 関 田 ・ 萩E : は ビ ル 壁 の 落 下 や , 石 柱 上 の 記 念 像 が 倒 壊 。 : 山 口 皿 @ 199i16/25 :18:50 8 ; 6, 3・山口県北部 " 。倒れてきた食器棚に頭をぶつけたり,落ちてきた蛍 I4:下関・萩・ :光灯を踏んだりして女性2人 が 軽 傷 。 壁 が 崩 れ る 等 : 山口 l被害住宅は全半壊3棟を含め阿東町やむつみ村で179 : 3:岩 田 ・ 防 府 :棟(県警調べ) , 道 路 は 阿 東 町 等 で ひ び 割 れ や 土 砂 : 宇 部 ・ 田 布 ;崩れ・落石のため通行止。水道はむつみ村で'20戸 が1
施・豊田 :断水し,須佐町や阿東町・むつみ村で濁る。(県消:2:下松・豊浦 '防防災課)また阿東町ではほとんどの墓石の倒壊。 MAGcマク'ニチュード)は気象庁地震月報による-42'-1
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写真一1 田野地区
家の柱や梁カf折れ、棟の中心部分がへこんでいる。
写真一2 田野地区
44 験震時報第63巻第1---2号 写真一3 田野地区の墓地 およそ40墓あるうち半数以上カ市j壊し、残りの墓は 墓標カ宮北東方向にずれ、反時計回りに数度 から270度 ぐらい回転している。 写真一 4 田野地区 北側に面したのり面が崩れ落ちた。
-44-1997年6月 25日 (山口・島根付近)の地震 (M6.3)の被害調査報告
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写真一5 田野地区
畑に地割れが起きる。
写真 6 正地地区
46 験震時報第63巻第1...2号 写 真一7正地地区 公会堂の玄関の戸が外れガラスが割れている。 写 真一8県道 (迫田・篠田線)の田野中付近 道路のいたる所に亀裂が入札 道路が南北方向に 約4cmずれが生じた。
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の被害調査報告 写真一9 県道 (迫田・篠目線)田野中付近 道路が南北に4cmずれた。 写真一10生雲西分450番 畑の亀裂 (最大幅約lcm.長さ2m)南北に亀裂が生じた。 4748 験震時報第63巻第1---2号
写 真一11 県道高佐下
(阿東線と迫田・篠目線との交差点から西へ約40km入った南斜面) 落石の一部は道路に散乱。