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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 2050年以降を見据えたエネルギー社会ビジョン検討 : スキャニング手法を用いた長期未来洞察 Author(s) 髙橋, 玲子; 中村, 亮二; 鷲田, 祐一 Citation 年次学術大会講演要旨集, 32: 1-6 Issue Date 2017-10-28Type Conference Paper Text version publisher
URL http://hdl.handle.net/10119/15022
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本著作物は研究・イノベーション学会の許可のもとに 掲載するものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Research Policy and Innovation Management.
1A01
2050 年以降を見据えたエネルギー社会ビジョン検討
~スキャニング手法を用いた長期未来洞察~
○髙橋玲子,中村亮二,鷲田祐一(国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター) 背景と目的 地球温暖化など長期に亘るエネルギー・環境問 題に科学技術によって対処するためには、将来に 起きうる変化を十分に考慮した上で、社会の姿を 明確に描き、未来社会に寄与しうる研究開発の方 針を検討することが重要なポイントとなる。 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発 戦略センターでは、中長期の社会として 2050 年 以降を想定したときに、そこで予想されるニーズ や脅威への対処のために必要となる科学技術や 研究開発課題について、探索と検討を行っている。 この一環として、エネルギー関連分野の研究者に よるワークショップ(WS)「未来のエネルギー社 会のビジョン検討」を 2016 年に開催した1)。 この WS においては、エネルギー関連の学協会 を通して近未来のテーマを扱う観点から若手・中 堅の研究者を募り、2050 年以降の社会の姿と、そ こで必要とされる科学技術について議論した。議 論においては、将来の研究開発の方向性と技術に ついて、自由に討議する形式をとった。このアプ ローチは、参加者同士が制約なく意見を出し合い、 議論の視野を拡大するためには有益であった。し かし、議論の深化のためには、参加者間で将来の ビジョンを柔軟な洞察に基づき共有し、意見を統 合させていく必要がある。この点では、議論の進 め方に改善の余地があるとの認識を得た。 こうした課題認識を踏まえ、2017 年には、未来 洞察手法の一つであるホライズン・スキャニング 手法を用いて未来の社会の姿を描き、その社会に 向けたエネルギー関連の科学技術や研究開発課 題を討議する WS を、2016 年の WS の続編として開 催した。本稿では、討議において提示された将来 社会の姿と、その実現のための科学技術テーマに 見られる傾向や、ホライズン・スキャニング手法 の適用の観点から WS の概要について報告する。 WS の実施 (1)WS の概要 WS は、2017 年 8 月 28、29 日および 9 月 14 日 に開催した。未来のエネルギー社会の構築に関連 する 12 の学協会より 27 名の若手・中堅の研究者、 技術者が参加した。各学会からの参加者は、意見 の広がりを確保するために、産業界と学術界の双 方から構成されている。加えて、2016 年の WS に おける、「将来のエネルギー社会を語る上では、 理工系に限らず多様な学術的視座を有する参加 者を交えることにより、奥行きを持つ論点展開を 目指す構成とすべき」との指摘を受け、経済学、 消費者行動学、経営学などの人文・社会系領域の 研究者等 8 名を加え、合計 35 名の参加により開 催された。 (2)方法 本 WS のプロセスの概要を図1に示す。先述の ように、2050 年以降のエネルギー関連の科学技術 を検討するためには、将来の社会の姿を十分な想 像力をもって描くべきである。このため参加者同 士が互いの意見を共有し、柔軟に議論できる枠組 みが必要である。そこで、今回は、ホライズン・ スキャニング手法(スキャニング手法)を用いて 議論を行った。なお、図2に示すように、スキャ ニング手法とは、微細な社会変化に着目し、その 方向性を非線形な未来変化も踏まえて議論する ことにより、不確実な未来の兆しを捉える手法で ある2)。 図1:本 WS のプロセスの概要<社会変化仮説の構築> 将来社会の姿を洞察するために、ニュース情報 等に基づく 200 個の情報「スキャニング・マテリ アル」を最初に作成した。 WS 参加者はこのスキャニング・マテリアルを通 読した後、出身学会や専門領域の異なるメンバー から構成される 5 グループに分かれて議論を行い、 将来社会の姿を表現する「シナリオアイディア」 をグループごとに作成した。こうして作成された シナリオアイディアに対し、アイディア間の類似 性を可視化するためにコレスポンデンス分析を 行い、アイディアの分類・集約化を行った。本稿 では、この集約されたシナリオアイディアを「社 会変化仮説」と呼ぶ。 <未来イシューの作成> スキャニング・マテリアルの作成と並行して、 エネルギーに関連した未来シナリオである「未来 イシュー」を設定した。未来イシューとは、エネ ルギーに関する人間と社会の関わりのシナリオ を、専門的背景に基づき演繹的に設定するもので ある。作成にあたっては 2050 年を見据えたエネ ルギー関連の科学技術に関する複数の政策文書 (主な文献として3),4))を参照にし、エネルギー 政策の専門家の意見も参考にした。こうして設定 した 6 つの未来イシューを表1に示す。 <インパクトダイナミクスの構築> 作成された社会変化仮説と未来イシューから、 「インパクトダイナミクス」(図3)を作成した。 その上で、参加者の専門分野に基づき未来イシュ ーごとのグループに分かれ、インパクトダイナミ クスの各々のクロス領域のセルにおける「エネル ギー社会イメージ」(エネルギーに関連する社会 の姿やその社会におけるニーズや直面する脅威) を具体化するための議論を行った。加えて、発想 された各イメージに基づき、各セルにおいて導出 される科学技術、研究開発テーマ、および実施上 の課題について検討した。 表1:設定した未来イシュー 未来イシュー 説明 エネルギー生 産・消費の場 所、時間、役割 の変化 エネルギーは「消費に応じた生産」から、「賢く使う・貯める」になり、「自家消費、自立分散」を前提とし融通する 「循環財」に。システム最適、運用改善、ICT 制御、模調整力活用により系統が安定運用。効率最大化と CO2 排出最小化が両立。水素等によるエネ貯蔵・輸送システムが確立。消費可視化、効率化、行動科学を応用した デマンドレスポンスが実用化。 移動手段の低 炭素化と移動 以外の意義の 拡大 モータ駆動自動車が主流となり、低炭素エネルギー由来の水素やバイオ燃料が動力源に。電気自動車がエネ ルギー需給調整や災害対応の役割を果たす。都市構造コンパクト化、モーダルシフト、輸送距離短縮、物流情 報化、積載率向上、意識変革等により、効率的低炭素物流や自動運転、安全で高利便性の移動が一般化。 炭素・物質循 環社会 CO2分離、炭素循環利用が実現。材料・燃焼技術向上により CCUS 付や高効率の火力発電が確立。低温排熱 回収技術が発達し、排熱やエネルギーカスケード利用が実用化。エネルギーハーベスティング技術も一般化。 潜在的資源を回収し新規需要化する循環社会が確立。家庭廃棄物をほぼゼロ化する技術と制度が完成。 自立する持続 可能な地域社 会システム 多様な風土を活かした地域経済活性化と地域文化力向上。エネルギー自給地域社会が実現。ゼロエミ地方自 治体の再エネブランド住民誘致、域外資金自立が実現。高効率農業機器、施肥・水管理など適切な農地管理 や計画経済により農業企業化進む。電化、水素・余熱利用進み、廃棄物処理施設が地域エネルギー拠点に。 低炭素社会に 向けた経済・社 会システム 低炭素型製品輸出により日本の経済力が向上。低炭素燃料と化石燃料の同価格化により低炭素産業が価格 競争力を持つ。炭素価格経済や炭素投融資判断が一般化。インフラ間シェアリングエコノミーが発達し、コミュ ニティ内での自立的需給調整を助長する経済システムが発達。公共エネルギーは余剰電力を活用し、業種横 断的な省エネが実現。 新たな価値観 の創出と行動 の変化 消費者ニーズに対応した高品質生活とエネルギー消費最小化が両立。最小限の高品質製品をシェアする無 理ないライフスタイルが普及。CO2 排出レジャーの仮想化が進む。環境貢献情報の容易入手で楽しみながら エコを自発的に実践。ライフスタイルに応じた労働一般化し、労働生産性が向上。再エネルギーの供給状況に あわせた晴耕雨読型コミュニティができる。 図2:スキャニング手法の概要 1A01.pdf :2
結果 (1)社会変化仮説 グループ別の議論の結果、合計 24 のシナリオ アイディアが創出された。これらのシナリオアイ ディアについて参加者へのアンケートを行い、ア ンケート結果を用いてコレスポンデンス分析を 行った。続いて、この分析結果から得られた第 1 軸と第 2 軸に基づきプロッティングを行った(第 2 軸までの累積寄与率は 48%)。グラフ内のアンケ ート項目とシナリオアイディアの位置関係から 24 のシナリオアイディアを 6 つのクラスター(社 会変化仮説)にまとめた。クラスターとクラスタ ーを構成するシナリオアイディアの関係を図4 に示す。また各クラスターの概要を表2に示す。 (2)エネルギー社会イメージ インパクトダイナミクスに基づき、セル(36 セ ル: 6 つの社会変化仮説×6 つの未来イシュー) ごとの具体的な社会イメージが各参加者により 議論された。ここで描出されたエネルギー社会イ メージの概要を、未来イシューごとに表3に示す。 図4:シナリオアイディアの分析結果 図3:インパクトダイナミクスの例
表2:シナリオアイディアのクラスター(社会変化仮説)が示唆する未来のイメージ タイトル 未来のイメージ 移動する個人によ る豊かさの追求 各種の交通手段とテレワークが豊かに普及し、多様なツーリズムにより余暇生活は発展する。移動自体が 手段ではなくクリエイティブな活動であるという認識が芽生える。このような考え方は、勤務体系、居住の在 り方にも影響を与え、移動の活発化・日常化によって多拠点居住が普及する。 自立分散型社会へ の イ ン フ ラ 整 備 が 進む 上意下達型の社会インフラが終焉し、必要なエネルギー生産を実践する地域も出現する。技術革新により 電力価格が低化し、生活用エネルギーの自前確保が簡単になるが、節約意識の崩壊や、インフラへのテロ が懸念される。食用外資源の開発により、食糧問題は改良している。大量消費社会から、適量分散消費社 会への移行が実現する。 多様なカリスマ・ネ ッ ト ワ ー ク の 社 会 化 生活者の精神的な変化が起き、自立分散型の社会ビジョンが確立する。反面、人々は精神的な繋がりを 求めるようになり、精神的な指導者あるいは AI のように人間ではない指導者に注目が集まる。そのような カリスマ的存在が、日本中に点在する適量分散消費社会どうしを繋ぐネットワークのように機能している。 多様なニーズに応 える高度自動化プ ラットフォーム 移動やバーチャルリアリティに関するキーテクノロジーが普及し、こうした技術を前提にした社会が形成さ れている。生産システムや物流産業の自動化・高効率化が労働力不足を補っている。適量分散消費社会 に合わせ、カスタマイズされた工業製品の適量生産により、資源消費両は縮減している。多様で高度な自 動化プラットフォームを無数の AI とロボットが支えている。 新技術が生む新た な国際的な軋轢 日本列島近辺の地勢リスクが高まり、日本が何らかの国際的・軍事的な紛争にまきこまれている。国際紛 争に多数の新技術が用いられ、技術が人類文明への脅威になっている。また脅威に対応するための技術 も大量に求められる。ここでは、エネルギー資源の獲得自体が国際紛争の原因になっているという想定は ない。 オール人類でのフ ロンティア開拓 地球温暖化や戦争による生存環境の著しい悪化などによって、国際連携による、宇宙、大深度地下、海底 など本格的なフロンティア開拓が進められている。この開拓に関連する科学技術開発が進められる。自立 分散的な社会を実現している日本の一般生活者と、全人類的な科学技術開発の現場は、かい離の方向に 向かう。 表3:未来イシューごとのエネルギー社会イメージ 未来イシュー エネルギー社会イメージ エネルギー生産・消 費の場所、時間、役 割の変化 個々が自立・分散した社会の中で、ネットワーク化して全体を構築するようになる。セキュリティはすべて を横断する普遍的技術課題である。エネルギーはシームレス(いつでもどこでも)に利用することができ る。この結果、特徴のある文化、産業を持つ地域が発生し、個々の人々は、住む地域を自由に選択する テーマパーク型の住み方を選択するようになる。 移 動 手 段 の 低 炭 素 化と移動以外の意義 の拡大 人は、文化や食など体験を通して感動を得るために、移動欲求を基本的に持つことを前提とする。一方、 物は移動させずに入手することを重視するようになる。このようにして、リアルな移動と疑似体験などを通 したバーチャルな移動のあり方が大きく変化する。地上に加え空中も移動空間の範囲となる。 炭素・物質循環社会 二酸化炭素(CO2)排出削減に対する取組は、2040 年頃に二酸化炭素分離、貯蔵技術の確立により解 決されており、2050 年には既に CO2 の資源化に向けた体制が整備されている。この時代においては、エ ネルギーは安価で潤沢に供給されているため、資源問題も解決している。しかし、資源として CO2 を大量 に消費するため、CO2 が不足する社会が到来している。 自立する持続可能な 地域社会システム 「地域」を東京以外の全ての地域と設定した。「地域」の発展の方向性は、地域が東京と利便性などの点 で同等に向上する場合と、東京にはない役割を担う場合、の2つがある。将来は、地域間の連携を深め、 IT や再生エネルギー利用技術に支えられながらエネルギーや食糧を供給する地域が日本を支える。 低炭素社会に向けた 経済・社会システム 地球温暖防止に向けた科学技術による解決上の課題は 2050 年には既に達成されている。2050 年以降 の社会で課題となりうる社会課題には、エネルギー安定供給、科学技術との関わり方、安全保障、情報 セキュリティなどが想定される。こうした課題解決のための、社会・経済システムの構築、科学技術確立 後の社会実装および社会受容の獲得の進め方の研究が必要になる。 新たな価値観の創出 と行動の変化 人々は、多様な豊かさを満たす生き方や脅威への対応方法を自由に追求するようになる。この達成のた めに、引き続き科学技術を利用するが、エネルギー供給・消費に対する考え方や資源循環の概念など、 従来の科学技術との関わり方が大きく変化していく。 1A01.pdf :4
考察 (1)洞察されたエネルギー社会イメージについて インパクトダイナミクスに基づき導出された 社会の姿からは、以下の傾向が認められた。 まずエネルギー社会イメージに関しては、時間 や場所などの物理的制約や、ライフスタイル、役 割、社会規範などの社会的制約に影響されない、 多様なニーズを尊重する個が出現し、個の欲求に 沿った選択が達成できる社会が洞察された。また、 こうした価値観や行動様式・選択の変化が、中長 期的には社会システム全体に変容をもたらして いく見通しも示された。こうした一部の社会変化 は 2050 年より早い段階で発生する可能性がある 一方で、現時点で既に顕在化しているとの指摘も あった。 想定時期が遠い未来のエネルギー社会イメー ジほど、国際間紛争、資源問題、地球温暖化など の人類の存続に関わるような大規模な脅威への 危機感が増す傾向が見られた。その一方で、こう した問題の解決を楽観的に捉える見方もあった。 さらに遠い未来になると、人類の存続が主要な課 題となり、この解決のために国の壁を越えた科学 技術、研究開発の連携が進むとの指摘がなされた。 こうしたエネルギー社会イメージと関連付け られる科学技術に関しては、利便性をいっそう高 める方向での社会ニーズの充足と環境への負荷 低減など、相反する課題を同時に解決するための 自立(自律)分散化技術、自動化技術、さらには 資源循環などのシステム開発などが挙げられた。 これらは社会ニーズの充足達成に貢献する技術 開発の光の面がクローズアップされた結果と捉 えられる。 一方で、科学技術との関わり方に関する議論も 展開された。個別化、仮想化によって人間社会に 今まで以上に浸透した人工知能(AI)などの新技 術が制御不可能な想定外の脅威を人間生活に及 ぼす可能性や、従前の問題が新たな科学技術で解 決されることで新たな別の問題が引き起こされ る悪循環の可能性などが指摘された。これらは、 科学技術の影の面の指摘と捉えることができる。 なお、こうした影の面への対応として、環境に配 慮する行動への移行の加速や、科学技術に過度に 依存しない社会が出現するとの洞察もあった。 (2)導出された科学技術について 自立分散や適量消費といったキーワードで示 されるエネルギー社会イメージは、比較的近い将 来に実現すると予想されている。近い将来のイメ ージに沿って導出された科学技術は具体的な内 容が多く、従来から注目されている現状の延長線 上にある科学技術が提示される傾向があった。一 ルギー社会イメージに対しては、科学技術への言 及よりは、人々の価値観の変容や社会状況変化等 への言及が多い傾向が見られた。ある社会のニー ズや脅威の実現に必要な科学技術を具体的に検 討するためには、その社会をいかに具体的に洞察 できるかが重要であるが、今回得られた結果から、 より遠い未来ほど、試みに困難さが伴うことが改 めて認識された。 エネルギーの利用に関する使い手と作り手の 境界、電力・交通などのインフラシステムの境界、 産業分野の境界などが今後一層曖昧になってい くと予想されていた。こうした中で、従来にはな い社会システムの構築に関与する科学技術も複 数提示された。 一方で、例えばエネルギーセキュリティに関す る議論が比較的多く見られたが、エネルギー供給、 需給調整、信頼性などの観点からの定量的な議論 は十分ではなく、今後の検討が必要になる。同様 に、エネルギー資源確保や温暖化ガス排出の大幅 削減などの未解決の課題に対し、将来時点で既に 解決されているとの仮定をおいて議論を進める ケースも見られたが、こうした議論の妥当性等に ついての精査も、本 WS の成果を活用するための 有意義なプロセスと考えられる。 科学技術に関する議論では、社会への実装の実 現に向けた具体的な個別技術の分析に加え、社会 制度設計の進め方、社会的受容の方法などについ て、科学技術と社会の両面からの幅広い議論が行 われた。科学技術に関わる専門家の社会的責任と いう観点から国際的なルール作りの必要性を指 摘する意見もあった。 エネルギー社会イメージ実現のための科学技 術の課題として、社会受容性に関する課題が複数 見受けられた。これは、エネルギー関連の科学技 術が社会と密接に関連している一方で、技術利用 の政策決定プロセスへのエンドユーザのコミッ トメントが小さいことを示している。 科学技術利用の光と影の両面が注目される中 で、科学技術の負の問題や社会受容性の課題に自 然と議論が及んでいたことは、エネルギー分野が 社会と密接に関連した科学技術分野であること を示す証左であると同時に、本分野における自然 科学と人文・社会科学の連携の必要性や重要性を 再認識させるものである。 (3)スキャニング手法適用上の課題について スキャニング手法は、一たび手法適用の意義や 目的に理解が得られると、各参加者の専門分野や 制約を超えた自由な発想を導きだす有用な手法 であった。特に今回は、複数の専門分野の専門家 による洞察が、技術と社会の両側面からの幅の広
他方、通常スキャニング手法では、10 年程度の 将来を洞察の対象とするが、今回は 2050 年とい う長期の将来を設定した。こうした条件では前述 のように将来社会イメージの洞察が困難であり、 討議において、何らかの工夫が必要と考えられる。 まとめ 将来社会の姿の洞察へのスキャニング手法の 適用と、幅広い専門分野の視点に基づくイメージ の共有によって、未来のエネルギーに関連する 様々な社会イメージと、科学技術のアイディアが 導出された。 今回のように、通常は交流の少ない異分野の研 究者らが一堂に会し議論する経験が、参加者各位 の今後の研究活動に人的ネットワークの拡大や 発想展開の意味で影響を与えたとすれば、こうし た議論の機会の設定に一定の意義を認めること ができる。 今後、詳細な個別の科学技術テーマの議論等を 進める際には、実施可能性や条件設定などの検証 が必要になるが、提案されたテーマの深耕や全体 の俯瞰を通じて継続的に検討を進めていきたい。 謝辞 WS 実施において、貴重なご意見ならびに活発な 議論をいただいた参加者の方々、また参加者の招 請にご協力いただいた一般社団法人電気学会殿、 一般社団法人日本機械学会殿、一般社団法人日本 エネルギー学会殿、一般社団法人電子情報通信学 会殿、公団社団法人計測自動制御学会殿、公団社 団法人化学工学会殿、公団社団法人電気化学会殿、 公団社団法人日本生物工学会殿、公団社団法人土 木学会殿、一般社団法人日本交通学会殿、公団社 団法人自動車技術会殿、一般財団法人エネルギー 経済研究所殿にこの場をお借りして御礼申し上 げます。また WS 開催にあたりご協力いただいた 全ての皆様に、心よりの感謝の意を表します。 参考文献 1) 国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発 戦略センター「環境・エネルギーユニット俯瞰ワ ークショップ報告書『未来のエネルギー社会のビ ジョン検討』」(2017) 2) 鷲田祐一編著「未来洞察のための思考法 シナ リオによる問題解決」勁草書房(2016) 3) 環境省 中央環境審議会地球環境部会「長期低 炭素ビジョン」(2017) 4) 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 「エネルギー・環境イノベーション戦略」(2016) 1A01.pdf :6