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アメリカ・カナダ・日本企業の年次事業報告書 (江竜龍太郎教授追悼号)

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(1)

アメリカ・カナダ・日本企業の

      年次事業報告書

大矢知 浩 司

工 最近の動向

 周知のように,アメリカにおいては証券取引委員会(SEC)が企業の報告 する登録届出書,年次報告書10−K,8−K等について厳格な規定を設けている が,年次事業報告書(annual report)についてはSEC宛報告書の添付書類と して間接的に規制しているにすぎない。企業に相当の裁量権を与えている。そ こで,アメリカ企業は自社の年次事業報告書を「とおり一遍の株主宛報告書」 ではなく,「社会一般に対する積極的なコミュニケーション・メディア」とし てとらえ,これを広く社会の各層に配布している。最早や単に株主のみを対象 として作成してはいないのである。そこでは,各企業は社会とのコミュニケー ション効果を高め企業イメージを良くしようとして年次事業報告書に種々の新 しい試みを行ない,また,その作成の担当部門も変えてきている。  (1) コミュニケーションの新しい試み  寡聞ではあるが,たとえぽ,パラマウント映画,ホテル,自動車部品製造販 売会社を従属会社にもつ持株会社ガルブ・プラス・ウェスタン・インダストリ _ズ社(Gulf&Western Industries, Inc.)では,同社の20周年記念事業とし て52頁にも及ぶ1978年度年次事業報告書全体をrタイム誌』アメリカ版および       ヨーpッパ版1979年2月5日号に広告として掲載しており(費用は500万ドルと もいわれている),また,東京証券取引所にも上場しているスペリー社(Sperry !) Meyer, Herbert E., ‘Annual Reports Get an Editer in Washington’, Fortune, Vol.  99, No. 9 (May 7, 1979), p. 210.

(2)

 106 Corp.)では従業員向けに年次事業報告書の映画化を試みている。また,年次 事業報告書を送付するカラー写真入りの封筒の上に「重要な会社情報一すぐに 開封のこと」と明示しているテキサコ社(Texaco lnc.)のような企業の例も 現われている。  (2) PR部門による年次事業報告書の作成  また,新しいコミュニケーション手段として年次事業報告書を位置づけるこ とは,年次事業報告書の作成を専門とする年次事業報告書作成会社(annual re一       きう ports preparation service bureau)にアドバイスを求めている例がしばしばみら れることからも明らかなところである。さらに,年次事業報告書は広告グラフ       ヨ  イックとしても広く研究の対象とされている。そして,このような年次事業報 告書のもつ性格と企業における位置づけの変化に伴なって,企業の内部におい ても,年次事業報告書作成責任者が財務・会計担当者からパブリック・リレー ションズ担当者に変わるという組織上の変化がみられるようになってきてい の る。このようなアメリカにおけるいくつかの最近の傾向は年次事業報告書を 「とおり一遍の株主宛報告書」ではなく, 「社会一般に対する積極的なコミュ ニケーション・メディア」と考えていることを証明しているといえる。  このような新しい動向を示しているアメリカ企業の年次事:業報告書作成およ び配布実務について,本章ではフォーチュン誌ランキング・アメリカ産業会社 上位200社のうち回答をえた100社を対象として,類似した行動をとっているカ 2)代表的な企業にS.D. Scott Printing Cα, Inc., Corporate Annual Reports, Inc.  がある。 3)たとえば,Water Herdeg社は,毎年Graphis Annuα1−Jnternational Annual of  Advertising GraPhiCSを編集しており,その一節に年次事業報告書をとりあげ,そ  の代表的な表紙をグラフィックとして掲載している。 4)Meyer, Herbert E., op. cit., p.212.アメリカに限らず西ドイツ企業でも,経理部  門は資料を提供するのみで,年次事業報告書の編集は取締役事務局またはパブリッ  ク・リレーションズ部門がこれを担当しているといわれる。黒田全紀・武田隆二稿,  「西ドイツ営業報告書の検討」,『営業報告書の研究一日本会計研究学会特別委員会報  告』,昭和56年,24頁。

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      アメリカ・カナダ・日本企業の年次事業報告書  107 ナダ企業(フォーチュン誌ランキング36社のうち回答をえた19社),および, 日本企業と対比しつつ,その特徴を明らかにしてみたい。なお,各表に対比の ために示してあるイギリス企業の年次事業報告書およびその作成,配布につい ては,本章では直接言及しないことにする。 皿 年次事業報告書を規制する法制  年次事業報告書は,それぞれの国の会社法,証券取引所規程等にもとづき作 成されているといえるが,きわめて慣行的なものである。アメリカ企業の定期 的な年次報告書には,証券取引所法第13条または第15条第d項にしたがって証 券取引所および証券取引委員会へ提出されるアニュアル・リポート10−K報告 書および企業が慣行的に作成して株主その他広く社会の各層に配布しているア ニュアル・リポート,すなわち,本章でとりあげる年次事業報告書がある。ア メリカ企業において単にアニュアル・リポートという場創こは,後者の年次事 業報告書を意味する。  (1) アメリカにおける法制一州会社法,証券取引所上場協定,証券取引所    法規則  アメリカにおける年次事業報告書を規制する法制をみてみよう。メリーラン ド一般会社法のごとく年次事業報告書を株主総会に提出することを要求する州 会社法もあるが,デラウェア州一般会社法,ニューヨーク州事業会社法等のア メリカの代表的な州会社法は株主に財務報告することを要求していない。証券 取引所上場協定,1934年証券取引所法にもとつく規則が財務報告を規制してい るにすぎない。そこで,まずニュー一一ヨーク証券取引所上場協定豆一1によれば, アメリカ企業は財務諸表を年次株主総会より少なくとも15日前までに株主に送 付しなければならないとされている。これらの財務諸表は他の文書とともに年 次事業報告書として慣行上ひとまとめにされ,株主に送付される。また,証券 取引所法規則14 a−3(b)は,委任状勧誘規則として,このような年次事業報告書 の謄本を年次株主総会の前に各株主に郵送することを要求している。株主総会

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 108 前に株主に送付される点ではイギリス企業の年次事業報告書と類似している が,イギリスと異なる点は,アメリカ企業の年次事業報告書には株主総会招集 通知は含まれていないことである。したがって,「株主総会招集通知および委 任勧誘状」(notice of annual meeting of stockholders and proxy statement) は別に作成される。 「株主総会招集通知および委任勧誘状」と年次事業報告書 は同封されることもあるが,別送されることが多い。後者の場合には「株主総 会招集通知および委任勧誘状」に年次事業報告書を別送している旨記載しなけ ればならない。しかし,いずれにしろ,年次株主総会招集手続との関連におい ては両文書は対になっているので,アメリカ企業の「株主総会招集通知および 委任勧誘状」には財務諸表は掲載されていない。  また,株主総会終了後においても,慣行的に「株主総会報告書」(report of the’ annual meeting)が作成されることが多い。しかしながら,ここでは株主 総会における取締役会会長ないしは社長のスピーチが中心となっていて,財務 諸表が掲載されることは少ない。たとえ掲載されるとしても非常に簡略化され たものである(もっとも,第1四半期報告書を兼ねるものは別である)。  1934年の証券取引所法適用会社は,年次事業報告書とは別に10一一K報告書を 証券取引所および証券取引委員会に提出しなければならない。このことは先に 触れたところである。年次事業報告書にも,10−K報告書の要件を満たす内容 のものを作成する傾向がみられる。なかには,若干ながら「年次事業報告書お よび10−K報告書」(Annua正Report and Form 10−K)という名称の報告書を       ら  作成する企業もみられる。なお,株主は10−K報告書についても請求すれば無 料で入手できる。  (2) カナダにおける法制一会社法,州証券法  カナダにおいては,会社法には連邦法と各州の州法がある。連邦法であるカ        の ナダ事業会社法(Canada Business Corporations Act)にあっては,株主総会の 5) 深津比佐夫・平松一夫稿,「アメリカ営業報告書の検討」,上掲書,3頁。 6) Touche Ross & Co,, Canada Business Corporattons Act…An Anagysis, Toronto,  Touche Ross & Co., 1977.

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少なくとも21日前までに財務諸表および監査報告書を株主名簿上の株主の住所 宛に郵送しなければならない(第153条)と規定して,年次事業報告書を聞接的 に規定しているにすぎない。また,同法によれば,イギリス会社法にもみられ る年次登記申告書(annual return一 3 E 31日現在のもの)を毎年6月1日まで に消費者・会社担当省会社局の担当官(Director of the Corporation・s Branch of the Department of Consumer and Corporate Affairs)に提出しければなら ないとある(第256条)。また,州法(オンタリオ州事業会社法,ブリティッシ ュ・コロンビア州事業会社法等)にあっても,公開会社は年次総会前に年次財 務諸表と会計監査役の報告書の謄本を株主に送付することを要するといった規 定や会社の年次登記申告書に貸借対照表の謄本を添付しなければならないとい う規定にみられるように,年次事業報告書については直接的な規定ぱなく,慣       わ 行上の文書とみなされていることは,アメリカ,イギリスの場合と同じである。 さらに,州証券法(たとえぽ,オンタリオ州証券法Ontario Sec面ties Act)は すべての公開会社に財務諸表を州証券委員会に届出るように要求している(た とえば,オンタリオ州証券委員会Ontario Securities Commission)。法制上は アメリカと異なり,イギリスに近い形態をとっているが,実務的には,アメリ カ企業と同様な実務を採用しており,年次事業報告書,年次株主総会招集通 知,株主総会報告書を採用しているのをみることができる。  日本企業の年次事業報告書を規制する法制については,すでに概要のところ で述べているので,以下,アンケート調査の結果をみていこう。 皿 年次事業報告書の作成および配布  (1) 印刷総数および株主への配布  〔第1表〕は,アメリカ,カナダ,イギリスおよび日本企業の年次事業報告 書の印刷総数,株主以外への配布数,株主への配布割合を示している。まず, 7) 酒巻俊雄i稿, 「英連邦諸国の会社法(7)」,『国際商事法務』,第4巻第9号(ユ976年  9月),54頁,「カナダ・オンタリオ州新事業会社法(1)」,『海外商事法務』,第123号  (1972年8月),20頁に詳しく説明されている。

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110 第1表年次事業報告書の印刷・配布数 印 刷  総  数 株主以外への配布数 印刷総数に占める株主への配布割合

部数關刻て斐咽部数協{劉矧咽割合重刻て斐1・本

100万部 以  上 60∼99万 50’v59 40一一49 30一一39 20tv29 15・v19 10・v14 5tv 9 1tv 4

1未満

不  明

部上9949994994満

千MM∼∼∼∼未0

0

 000∩V

     ﹁011

20

ネ15105ユ

11﹁D︻0523

    13

1

133Qソ03

    1

44

 1

1324502848

     1122

3 1 不  明 6

42862

  13

115ρ06

  1

052

1

6ハ0﹁D1

142

61 2 1 100 % 90N99 80tv89 70rv79 60”v69 50tv59 40・v49 30tv39 20tv29 10.v19 0tv 9 不 明

47186882

  1121

6

13PD2

 41

414342

 1

1 2

1 22522113

会社数1・…93…il会社数1…1・93・62i会社数1…1・93・62

理解できることは,アメリカ企業は彪大な数の年次事業報告書を印刷して,こ れを広く社会一般に配布していることである。回答をえた97社の平均印刷総数 は188,000部(イギリス企業99,000部)である。これを規模別にみれば,フォ ーチュン誌ランキング上位50社に属する31社平均では361,000部,51∼100位 141,000部,101∼150位 88,000部,151∼200位 92,000部である。トップ10 位に属する6社の印刷総数は,それぞれ1,600,000部,860, OOO部,850,000部, 600,000部,560,000部,550,000部である。  それでは,このような多量の年次事業報告書は株主にのみ配布されているの であろうか。 〔第1表〕の印刷総数に占める株主への配布割合をみれば,アメ リカ企業は,カナダ企業の場合と同様に株主への配布割合が著しく低いことが わかるであろう。配布三一の内訳が全く記入されていない6社を除く94社平均 で48.6%である。これを規模別にみれば,フォーチュソ誌ランキング上位50社 に属する企業では55.5%,51MOO位47.6%,101∼150位43.1%,151∼200 位43.6%である。カナダ企業17社平均は43.9%である。したがって,アメリ カ,カナダの企業は,株主数の約2倍の年次事業報告書を作成しているといえ

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る。つぎに,それでは株主以外に,どのような利害関係者に年次事業報告書を 配布しているのかをみるために〔第2表〕を示そう。アメリカ企業について は,アンケートに示した各配布先について集計するにたる記入のある企業68社 について各々の配布先の印刷総数に占める割合を計算し,その割合を単純平均 したものである。なお,他の国々についても同様の処理をしている。以下,こ の〔第2表〕にもとづいて,しばらく分析を進めていく。        第2表年次事業報告書の配布割合 配 布 先 レ・・カ1・ナダ1・ギ・・1・本1 株主(新株主を含む) 従  業  員 潜在的従業員(リクルートのため) 証券業者,銀行,保険会社等(株主以外に) 大学,図書館,研究所等 公共利害関係者集団 政府,地方公共団体等 マ  ス  コ  ミ そ  の  他 配布差額(印刷総数一上記配布数) 46. 990 12.9 2.3 10.6 1.7 0.8 0.4 1.2 7.6 15.6 4s.60/o[ 12.2 l i.o 1 8.0 1 3.2 1,3

13

1.3 10.4 !5. 7 76.7%1

729732968601000G38

92.20/0 1.8 0.1 0.7 0.1 0.o O.1 0,1 0.7 4.2 会 社 数 6s 1 ls [ 24 i 61  (2)従業員への配布  従業員に対する報告は,欧米における古くて新しいテーマであり,種々の試 みがみられるところである。 〔第4表〕にみるように,特別な報告書を配布し ている企業があるので,正式な年次事業報告書の従業員への配布割合は,それ ほど大きくはない。アメリカ企業12,9%,カナダ企業12. 2%である。従業員向 けの特別な報告書を発行している企業を除いたアメリカ企業50社の平均配布割 合は14.3%である。さらに,従業員持株制度の発達しているアメリカ企業では 従業員にして株主である者に対する配布を従業員への配布に含めれば,従業員 への配布割合はもっと高くなるであろう。  このようなアメリカ,カナダの企業に対して,日本企業の従業員への配布割 合は1.8%と非常に少ない。しかも回答会社のなかには従業員持株会への配布

(8)

 112 を含めているところもあるので,従業員個人への年次事業報告書の配布はほと んど考えられていないように思われる。  また,アメリカおよびカナダの企業では,年次事業報告書を広くリクルート にも用いている。たとえば,採用人事担当者が年次事業報告書を持参して,希 望者に配布している風景は,大学における就職説明会の一コマである。日本企 業ではリクルートのための入社案内を別に作成しているのが実情である。  (3) 広報活動  アメリカ,カナダ企業の1つの特徴は,年次事業報告書を広報活動の一環と して広く社会の各層に配布していることである。大学,図書館,研究所,公共 利害関係者集団(public圭nterest groups),マスコミへの配布割合をみれぽ,主 要企業の広報活動に対する姿勢をみることができるであろう。まず,大学,図 書館,研究所等に対する配布をみてみよう。アメリカ,カナダの企業には,こ れらの機関から要望があれば,郵送リストにのせ定期的に送付するという慣行 がある。アメリカ企業の約70%,カナダ企業の67%は,これらの利害関係者に 1,000部以上の年次事業報告書を配布しており,また,10,000部以上を配布し ているアメリカ企業は4社もある。これに対して,日本企業の半数にあっても 大学等の利害関係者に年次事業報告書を配布しているというが,その部数は20 ∼30部といったところである。したがって,一般にアメリカの大学の経営学部 等では,年次事業報告書のコレクションが整備されているのに対し,日本では 有価証券報告書を定期的に購入し,それも限られた大学・研究機関において整 備されているにすぎないという違いがみられるところである。  また,公共利害関係者集団に対する企業の広報活動も盛んである。印刷総数 に占める割合は,アメリカ企業0.8%,カナダ企業1.3%にすぎないが,部数で は500∼2,000部が,この利害関係グループに配布されている。公共利害関係者 集団の定義は種々あり,また,その団体もシエラ・クラブ,鯨保護団体等の自 然保護団体から主婦連にいたるまで多種多様であって,一般にアンチ企業の色 彩が強い。日本企業では,これらの団体に年次事業報告書を配布した企業は2 社にすぎないのである。

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 (4) その他への配布  以上のような広報活動の一環としての年次事業報告書の配布は,その他への 配布内容をみれば,さらに明確になるであろう。アメリカ企業の場合には,事 業部門,従属会社幹部,社債権者,仕入先,得意先,年金受給者,市民指導者, アナリスト,証券外務員(registered representatives),広告業者,学生・教授, 会社訪問者等をあげている。カナダ企業の場合では,事業指導者,オピニオ ン・リーダー,農業社会,営業活動,郵送リスト,一般からの要求,上級従業 員,他の企業,雑説をあげている。同様に,日本企業においても営業関係,関 係会社,同業他社,持株会,加盟団体,資料交換,入札先等とかなり多様な配 布先を示している。しかしながら,ここでも日本企業の配布割合はO.7%と僅 かしかない。日本の各企業が株主以外にはいかに少数の部数しか配布していな いかを理解できるであろう。ちなみに,異なる業種に属するアメリカ企業5社. の各配布先への配布部数を参考資料として〔第3表〕に示しておく。         第3表アメリカ企業の年次事業報告書配布部数 株主数・従業員数・配布先

触薪撫事箋)騒蘭賑険到㌫売錯

株  主  数 従 業 員 数  配布先  株主(新株主を含む)  従  業  員  潜在的従業員(リクルート) 1証券業者,銀行,保険会社等 1大学図書館,研究所等  公共利害関係者集団 1政府,地方公共団体等  マ  ス  コ  ミ  そ  の  他・   仕入先及び関係会社   顧     客  配布差額(未使用分を含む) 1, 268, OOO  797, OOO 1, 268, OOO  102, OOO  140, OOO   s, goe   2, OOO   500   900  !8, OGO (18, OOO) 59, 700      32S・ooo 血セ己入なし 24・ 7001      47,200   一[ 2sz ooo 61,900L 430,200 336, ooo1 24, OOOI 100, OOO   100    01 1g, 900[ 72, OOO1 *48. 000  1, ooOI  30, OOO  5, OOO  5, OOO  1, OOO   一[ oro, OOO[    r (so, ooo)1 13, oool    l * 6, 500  1, OOO  5, OOO  6, OOO  1, oeo  1, OOO  2, OOO 67, 500 287, OOO 350, OOO  1. 000 50, OOO  5, OOO   100   100  1, OOO  1, OOO o: or4, soo 印 刷 総 数 i, 600, ooo[ 4so, ooo1 225,0001 90,000i 750,000 *両社は特別な従業員宛報告書を作成している。

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114 IV 特別な報告書およびその他の文書の配布  それでは,アメリカ,カナダおよび日本の主要企業は,ただ1種類の多目的 な年次事業報告書を作成して各利害関係者に配布しているのであろうか。それ ぞれの利害関係者に等しく,同じ情報を与えているのであろうか。この点を明 らかにするために,アンケート調査では,「株主宛年次事業報告書とは別に, 従業員,PRまたはその他の目的のために特別な(簡略な,または詳細な)年 次事業報告書を作成しているか」どうかを質問している。 〔第4表〕は,その 回答の集計である。        第4表 特別な事業報告書の作成

作成・有剰…カカナダ・ギ・刈・本

従業員に配布するため イエス          ノ  一

PRのためイエス

         ノ  一 その他の目的のため イエ入          ノ  一

371928

27 

9 

9

270918

1 

1 

1

4ρh︶371Qゾ

2 

2 2

PDρ0836 O

 rO 

5 

rD 会 社 数 100 19 30 61  (1) 従業員用,PR用の特別な報告書  〔第4表〕から明らかなように,アメリカ企業においては23%,カナダ企業 では11%の企業が従業員宛の特別な報告書を作成しているが,大多数の企業は 詳細な年次事業報告書1種類を作成して,これを広く社会の各層にも配布する という実務をとっている。PR用,その他の目的の年次事業報告書を作成して いる企業は非常に少数である。株主宛年次事業報告書そのものがPR媒体と考 えているからである。従業員宛に特別な報告書を作成していると回答したアメ リカ企業23社のうち,ベンディックス社(Bendix Corp.)は1977年度のみの試 みであり,1978年度では作成していない。また,この23社には数えていないが, イーストマン・コダック社(Eastman Kodak Co.)は社内新聞の特別号にて従 業員に事業報告を行なっている。また,さきにも述べたスペリー社は,財務成

(11)

果をそれほど詳しく説明するものではないが,15∼20分目従業員宛事業報告映 画(annual corporate“Report to Employees”fiim)を8力国語で作成してい 8) る。  日本企業の株主宛年次事業報告書は簡略な「飾りのない」年次事業報告書で あるため,PR用には全く不向きであるといえよう。株主に対してさえも,年 次事業報告書の郵送とはJliij lt=,「会社の現況」とか「株主へのお知らせ」とか 適宜送付してPR活動を行なわなければならないほどである。従業員宛報告書 を別に作成していると回答した企業5社のうち1社は,主として財務諸表から なる4頁(2枚折)のパンフレットを配布した上で決算説明会を行なったと述 べている。また,PR用に特別な事業報告書を作成していると回答している日 本企業は8社である。そのPR用事業報告書の実態は明らかではないが,すべ て英語版のアニュアル・リポートを作成している会社(英語版アニュアル・ リポートには,日本語版株主宛年次事業報告書の単なる翻訳にすぎないものも あるが,大部分はアメリカ流のカラフルな豪華版である)であるため,これを PR用と回答しているものとも推論できる。  (2) その他の配布文書  アメリカ企業は,すでに述べたように証券取引所および証券取引委員会に詳 細な10rK報告書を提出して公衆の縦覧に供しており,また,年次事業報告書 においても,この10−K報告書の請求先を明記しているが,「10−K報告書を        の 請求する株主はきわめて少ない」ので,年次事業報告書が企業の主たる広報文 書となっているのである。しかし,この他にもつぎのような文書が株主その他 に配布されている。 「四半期報告書」,「株主速報」等である。僅かに入手でき た資料ではあるが,アメリカ企業3社の速報の内容を〔第5表〕に示しておい た。速報の主たる内容は,四半期業績の速報,配当宣言,従属会社の設立・処 分・買収関係,発明発見,訴訟問題等である。70力国で事業活動を行なっている 8) Letter from Mr. Richard L. Robertson, Director of Public Affairs, Sperry  Corporation dated February 9, 1979. 9) Meyer, Herbert E., op. cit., p. 220.

(12)

ユ16 第5表 アメリカ企業の速報発行状況(1979.2∼1982.1) ”s;iiii   ’会社名

脚内容\轡唯一

 ス

傷籾

頬依

り ニ ユ 一一 ス

告告小言入行係更係係三十他

罪報情宣購騨顯鐸

 算測 の社買 採訴員

糊鷺当盤購謝の

四年忌配馬長従企石乱取慈そ

1        

12372105

1

7018

 2

チャーター (石油) ニュース・  リリース 10 −Qゾ

FO8

 2

ρ0戸01 2 カー・マッギー  (石油) ニュース・  リリース OO9臼 8 1

6Q﹂2

4

速報総発行凹型

77 67 34

月平均発行回数

2.2

L9

1.0 世界最大の衣料メーカーであるリーバイ・ストラウス社(Levi Strauss&Co.) は,慈善寄付の報告,マスコミ記事の紹介,株主の企業訪問旅行の勧誘等き めの細かい広報活動を行なっている。また,同社は社会的責任分野における活 動を報告する「コミュニティ・アフェアーズ・ジャーナル」を株主およびその 他の利害関係者に配布している。ちなみに,先に述べたスペリー社は「スペリ ー・ gゥデイ」(Sperry Today)と称する小冊子を適宜配布しているが,その 株主意見調査によれば,株主は研究・開発,製品・契約関係,事業の分析に興

      エの

味を示し,経営幹部等の交替の記事にはあまり関心を払っていないという。  カナダ企業においても,アメリカ企業とほぼ同様な「ニュース・リリース」 をみる。たとえばカナダの大手ビール会社ジョン・ラバット社(John Labatt Ltd.)がそれを発行している。日本企業も社誌株主通信の類を発行している 10) SPerror Today, Novernber 1980, p. 6.

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が,配布頻度は少ない。 V 年次事業報告書の使用言語と海外配布

 (1)使用言語

 それでは,このような年次事業報告書を,どのような言語で作成しているの かみてみよう。〔第6表〕は自国語のみで作成しているのか,それともいくつか の言語で作成しているのかを示している。このことによって,その国の主要企 業の政策の一端をうかがうことができるであろう。〔第6表〕によれば,アメ リカおよびイギリスの企業においては,英語のもつ国際性から自国語(英語版) のみの年次事業報告書を作成している企業が,85%,86%と圧倒的に多い。こ れに対して,カナダは少し事情が異なる。2力国語で作成している企業の用い ている言語は,すべてケベック州で公用語とされているフランス語である。し かし,2中国で書かれた1冊の年次事業報告書(bilingual edition)を作成して いる企業はカナダ・パッカーズ社(Canada Packers Ltd.)1社にすぎなかった。 他の企業は,英語版,フランス語版をそれぞれ作成し,株主の選択に応じて配 布している。  アメリカ企業の場合にはフランス語12社,ドイツ語10社,日本語5社,オラン ダ語3社,スペイン語3社であり,他国語で部分的に併記している企業が3社 である。5力国語以上使用している企業は,ゼネラル・モーターズ社(GeneraI Motors Corp,),プPtク三一・アンド・ギャンブル社(The Procter&Gambie       第6表 年次事業報告書の使用言語 言  語  の  数

アメリカ カナダ イギリス 日 本

自国語のみ

2 力 国 語 3 力 国 語 4 力 国 語 5力国語以上 2力国語以上の部分的使用

543233

8

 1

ρ03 2

ρ0111

101

24

会 社 数 !00 19 30 62

(14)

 118 Co.),スペリー社である。また, W. Rグレース社(W. R. Grace&Co.)の 年次事業報告書が,株主への書翰(1etter to shareholders)および財務諸表を フランス語,ドイツ語で併記しているのは興味深い。ただし,このように2力 国語以上の言語で年次事業報告書を作成している企業は,海外配布の多いフォ ーチュン誌ランキング上位100社に属する企業である。  日本企業においては,約30%の企業が日本語版しか作成していない。2力国 語と回答した企業も,すべて英語版を意味している。ただし,英語版アニュア ル・リポート作成については独立した質問をしていないため,詳細は不明であ る。3力国語を用いるとする企業の使用言語はドイツ語である。これは西ドイ ツの証券取引所に上場しているために,日本語版をドイツ語に翻訳したもので ある。日本企業の場合,英語版は日本語版をそのまま翻訳する場合と英語版ア ニュアル・リポートを別に作成する場合とがある。  (2)海外配布     第7表年次事業報告書の海外配布  このような多様な

言語で作成されて

いる年次事業報告書 が,国外にどの程度 配布されているので あろうか。配布部数 を要約した〔第7表〕 によると,アメリカ 企業は5,300部台と なっている。これを 規模別にみるとフォ ーチュン誌ランキン グ上位50社に属する 企業9,500部,51∼ 100位6,100部,101

配布部剃…カカナダ・ギ・ス日本

50, OOOt−65, OOO 40, ooorv4g, ggg 30, OOOtv39, 999 20, OOON29, 999 10, OOO”一19, 999 8, OOOt−v 9, 999 6, OOOt・一 7. 999 4, OOOtv 5, 999 2, OOOt−v 3, 999 1, OOOt一 1, 999  5001v 999  100tv 499

 50t一 99

 50未満

  o  不   明 3

154457975

    111

22ρ0  1

1

−nδ52∩01

3

114

126﹁0

4 6 1 2

1125325613

     1  

2

会社釧 …

19 30 62 回答会社平均 s, 3ss i ’ 2, 3s3 1 s, s43 1 1, 600

(15)

∼150位 1,600部,151∼200位 2,000部であり,大規模な多国籍企業に海外 配布部数が多い。  日本企業の場合には,質問表には日本語版と外国語版(主として英語版)の 区分を明示していないので,外国語版について記入していない企業がほとんど であるが,それを全体としてみれば,21社が配布ゼロであり,500部未満が23社 となる。平均すれば,1,600部であるが,このようセこ44社(74.6%)が500部未 満であることに注意する必要があろう。これに対して,外国語版を別に記入し ている企業だけをみれば,かなりの部数を海外に配布していることがわかる。 40,000部配布しているところもある。外国語版の作成を明記している企業の平 均配布部数は2,400部厚で,カナダ企業と並ぶことになる。  なお,このアンケート調査に関連して,アメリカにおいて若干の教授と意見 を交換する機会をもったが,彼等は,日本企業の英語版年次事業報告書に公認       ユ  会計士の監査報告書の添付されていないものがあることを指摘していた。日本 企業の英語版年次事業報告書が全くPR用として作成されているとしても,監 査報告書の添付されていない財務諸表は,海外では誤解をまねくものといわざ るをえない。 VI 年次事業報告書の費用と反応  (1) 直接印刷費  しからば,このような大量の年次事業報告書に対して,会社はどれほどの費 用をかけているのであろうか。また,このような費用をかけた年次事業報告書 に対して,受手の反応はどうであろうか。まず,年次事業報告書の作成費用に は,当然企業の会計組織を維持する費用を含めなければならないのであるが, 11)たとえば,筆者がカンザス大学滞在中に意見交換の機会をえたカンザス州ウィチタ  大学エステス教授は,その事実を論文に指摘しているところである。Estes, Ralph W.,  ‘Social Reporting in Japan’, in The Status of Social Reporting in Selected Countries,  Illinois, Center for lnternational Education and Research in Accounting, University  of lllinois, 1978, p・ 73.

(16)

 120 この把握は困難であ る。そこで,年次事 業報告書の紙代,デ ザイン料(外部委嘱 が多い)を含む直接 印刷費と郵送費をみ ることにした。 〔第 8表〕にみるごとく, アメリカ企業の直接 印刷費は1部当り平 均1ドルである。1 部当り直接印刷費を 企業規模別にみれば, フォーチュン誌ラン キング上位50社に 属する企業 0.67ド ル,51∼100位0.98 ドル,101∼150位 1.2!ドル,151∼200位 ある。 第8表 年次事業報告書の印刷費用(米ドル換算)

費用の階級幅

1…カ1・ナ幽霊咽・本

5tvg.9ドノレ 2N4.9 1 tvl. 9 90∼99セント 80nv89 70・一79 60tv69 50t−59 40・一一49 30tv39 20n“29 10t−v19 5tv 9 5未満

回答会社合計

機密事項とした会社 不明と記した会社

157178282232

  2    

1

8rD77 1

47131

621

1

21212

  1

321

1

﹁D14

2 2

1341!423

    !∩∠− 61 1 会  社  数 100 19 30 1 62 回答会社の平均  1.00 1.60 !.57 0.23 回答会社の平均   ドル  ドルポンド  円    (各国通貨)  1.00  1.80  0.82 53.02 1.52ドルである。直接印刷費総額は平均13.8万ドルで  これに対して日本企業の直接印刷費は,総額1.1万ドル,1部当り費用では 0.23ドルと著しく低い。ただし,アメリカ,イギリス,カナダ企業の間では,直接 印刷費の多寡が必ずしも年次事業報告書の豪華さを示すものではない。アメリ カ企業では大規模な企業ほど印刷総数が彪大なため,大量印刷によるコスト・ ダウンの恩恵を十分に受けており,カナダ,イギリスの企業はアメリカ企業ほ どにはコスト・ダウンの恩恵を受けていない点に留意しなければならない。  (2)郵 送 費  また,郵送費については,アメリカ企業は平均O. 19ドルである。従業員また

(17)

は潜在的従業員(リ クルート)への配布 は直接手渡しを考え ることができるので, 年次事業報告書印刷 総i数から,これらの 配布数を減算した数 によって郵送費を除 して各社の年次事業 報告書1部当り郵送 費を計算し,これを 単純平均したもので ある。したがって, 分母には未使用分, 郵送費のかからない その他の手渡し分が 含まれうるので,平 第9表年次事業報告書の郵送費(米ドル換算) 費用の階級幅 アメリカカナダイギリス日 本 !∼1.9ドノレ 90∼99セント 80iv89 70tv79 60・一69 50tv59 40・一49 30一一39 20・一29 10xv19 5tv 9 5未満

回答会社合計

機密事項とした会社 i 不明と記入した会社 1 1

112

61

7 1 ,, L 7﹂2 1

ρ040

ρ0 ∩0

43321

13 6

34132

  1

∩﹂!6 2 2

335312

  4

59 3

会 社 激

100 19 30 62

回答会社の平均

。.ig 1 o.30 1 o.26 [ o.2s 六会輪讃li。、旨ノ「。3//ル{菰ド58.4,円 均郵送費は若二F低く算出されることになる。また,アメリカ企業の場合には, 年次事業報告書の定期的な一括発送にはバルク・レート(標準的なbulk rate によれば,1部当り国内料金は約3,9セントといわれる)が適用されるであろう し,また,リクエストによる個別的な郵送には別の料金が適用されるので,こ の平均郵送費は実際の郵便料金ではなく,単なる平均値である。したがって, 単純に比較することはできないが,アメリカ企業の年次事業報告書の郵送費は 1部当り0.19ドルであり,日本企業は025ドル(58.49円)と大きい差異はな い。アメリカ企業の年次事業報告書の印刷に費やす費用は,日本企業の4.4倍 であり,また逆に郵送費は日本企業のほうが割高である。日本企業の場合には 年次事業報告書の紙代・直接印刷費のほうが郵送費よりも安いという奇妙な現 象を示してい.る。ちなみに,アメリカ企業のうちフォーチュン誌ランキング上

(18)

 122 位10位に属する5社の直接印刷費総額は平均約48万ドルである。

 (3)反 応  

第10表年次事業報告書に対する反応  しからば,このよ うな彪大な費用に見 合う効果はどうであ ろうか。マウツ等は 年次事業報告書の費 用。効果分析をアン ケート調査から行な     ユヨラ っているが,質問で は「年次事業報告書 に対して,年間概略 どの程度の電話また

は手紙による反応

(responses)を受け ているか」という反 応の程度を調べてみ た。

反応の程劇・…1・ナダi・ギ病・本

20,000∼25,000回 15, OOOA−19, 999 10, OOO1v14, 999 8, OOOtv 9, 999 6, OOON 7, 999 4, OOOtv 5, 999 2. 000N 3, 999 !, OOOtv 1, 999  500tv 999  100tv 499

 50tv 99

 30tv 49

 10 ・v 29

 10未満

   o  不   明

15813606901

      9臼1  1

9飼17  1

13FD34肖

3 ワ臼

!88η♂−

3

5445833

  1 2

会 社

釧…1

!9

301 62

回答会社平均隔932巨・84

930 24   〔第10表〕はその結果の要約である。アメリカ企業が受ける反応は,年平 均約3,900回である。これを規模別にみれば,フォーチュン誌ランキング上位50 社に属する企業4,500回,51∼100位5,300回,101∼150回目2,900回,151∼ 200位2,400回である。アメリカ企業では,一般にパブリック・リレーションズ 部門が手紙あるいは電話による反応ないしは要請を受けているのであるが,同 時に他部門でも反応を受けることもあり,正確なカウントは得られない。しか しながら,パブリック・リレーションズ部門またはその担当者が設けられてい るところがらみれば,年3,900回は大体の推定値とみて差支えないものと思わ れる。 12) Mautz, R. K. & May, William G., Financial Disclosttre in Competitive Economy,  New York, Financial Executives Research Foundation, 1978.

(19)

 これに対して,日本企業では,100∼300回の5社を除けば,反応の回数を回 答した企業の反応数は平均台20回以内であり,「ない」に等しい。反応が少な いのは日本的特徴であろう。もっとも,アメリカのようなカラフルな年次事業 報告書でも,一般株主がその通読に費やす時間は平均15分という推定が行なわ    ユの れており,もし,これが無味乾燥な文章と数字のみの「飾りのない」年次事業 報告書であれば,受手に読まれる時間はさらに少なくなるのではないかとも思 われる。アメリカ企業では「株主の反応を積極的に掘り起して」さえいるとい えるのである。  (4) 直接印刷費および郵送費の増加対策  それぞれの国のそれぞれの初度ないしは実務には,「それなり」の存在価値 があり,その意味では,「現在の」年次事業報告書の価値と費用とは見合って いるのであろう。しかしながら,これらの直接印刷費および郵送費の大幅な増 加が見込まれるとする場合には,どのような修正または対策が講じられるので あろうか。〔第11表〕が示すように,アメリカ企業42社は,カラー・イラスト の廃止,紙質の変更(軽量紙の採用),総数の削減,サイズの縮小をその対策 として述べており,なかには封筒の廃止,プラスチック封筒の採用,年次事業 報告書と委任勧誘状の同時発送という対策もみられる。しかしながら,年次事 業報告書の配布を制限するという対策をあげている企業は5社にすぎない。 おおよそ,「年次事業報告書の価値は予算額に見合っている」と考えられてい         第11表 年次事業報告書印刷・郵送費の増加対策

回答の内容レ・・カカナダ・ギ刺・本

カラー写真の廃止,紙質の変更,頁 数・サイズの縮小等の対策をする 対策は考えられない 回 答 な し

22ρ0

441

883

16 9βD ︻0ρ01

39臼

会 社 数 ioo 1 i9 1 30 62 !3) Georgeson & Co., Nexer Trends tn Annual Report Readership, New York,  Georgeson&Co,1972, p.4.この資料の入手は関西学院大学教授石田三郎先生のご  厚意によるものである。記して謝意を表したい。今後深く分析したい資料である。

(20)

 124 るのではないだろうか。  日本企業の場合にも,色刷り(カラー写真ではない)を落とす,頁数の削 減,軽量紙の採用,サイズの縮小(たとえば,18.5cm×16.5 onを19.Ocon×8.5 cUtこ変更)等を57%の企業が対策にあげている。しかし,実際のところ,「こ れ以上の対策は講じようがない」,「特別な節減策はとり難い」というところま で,「飾りのない」年次事業報告書となっているというのが現状であろう。 U む  す  び  以上のように,本章はアメリカ,カナダ,日本の主要企業の年次事業報告書 作成および配布実務の相違を明らかにしてきた。すなわち,欧米の主要企業 は年次事業報告書を「社会一般に対する積極的なコミュニケーション・メディ ア」と考え,これを広く配布しているのに対し,日本企業は「とおり一遍の株 主宛報告書」と考え,もっぱら株主にのみ配布している実情をみた。そして, また,このような年次事業報告書の基本的性格の相違から,それぞれが年次 事業報告書の作成および配布に費やす努力,費用も自ずから異なってくるのを みた。  しかしながら,なぜアメリカ企業が,かくも「カラフルな」高価な年次事業 報告書を作成し,惜しげもなく配布しなければならないのであろうか。また, なぜ日本企業が,かくも「飾りのない」安価な年次事業報告書を作成し,もっ ぱら株主にのみ配布することですますことができるのであろうか。はたして, アメリカ企業においては,このような年次事業報告書に積極的なコミュニケー ション機能を求めなければならないほど,企業とパブリックとの間に断層があ るのか,あるいはその必要が叫ばれるほど企業をめぐる利害関係者が目覚めて いて,企業は攻撃にさらされているというのか。  また,日本企業においては,従業員に会社との一体感がみられるごとく,企 業と従業員,さらに広く企業とパブリックとの間に隔絶がないというのか。ま た,日本の株主が企業の重要な構成員であるというのは制度上の虚構であっ て,配当あるいは株価のみに関心をもつにすぎない存在であるというのであろ

(21)

      アメリカ・カナダ・日本企業の年次事業報告書  125 うか。それぞれの国のそれぞれの制度ないし実務には,それを正当とする「そ れなりの」理由があるであろう。したがって,年次事業報告書の妥当性につ いても,それぞれの国の社会的背景に照らして判断しなければならないであろ う。英語版の年次事業報告書を作成する場合は別であるが,日本企業は国際的 に異質であってはならないとするあまり,アメリカ企業の年次事業報告書実務 をそのまま日本に導入するとすれば,そこには紙資源の問題にもつながりかね ない重大な問題が含まれている。  以上のアンケート調査結果は,アメリカ企業,カナダ企業,日本企業(イギ リス企業については次章で述べる)の実務の相違を明らかにするものにすぎ ず,今後それぞれの実務を正当とする理由を究明していかなければならないこ とを指摘して,むすびに代えたい。このような年次事業報告書の基本的性格を 究明した上で,その主要構成要素たる財務情報のディスクロージュアのあり方 を考えていかなければならない。

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