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情報はだれのものか -原発事故とエリート・パニック-

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム] 情報はだれのものか ―原発事故とエリート・パニック─ ▪北澤 宏一  不確かではあるが,影響力の大きい情報を入手したとき,その情報をお役所は秘匿して構 わないか? それとも,すぐに公開すべきか.また,上部組織たとえば保安院から官邸にす ぐ伝えるべきか,それとも,部署内で十分な論議を尽くしてから上に上げるべきか? 国民 に関係のあることは国民に知らせるべきか? それともパニックを起こすといけないので, 対策がとれるまでは公表しないようにするか.  情報が恐ろしい内容を含むとき,「それを伝えると国民がパニックを起こすのではないか」 と,そのインパクトにエリート層が怯えることを「エリート・パニック」と呼ぶという.  今回の原発事故でこのような状況は何度も生じた.(1)原子力発電所で起きた爆発が「水 素爆発」であったかどうかを巡る報道,(2)原子力安全保安院の中村審議官が「メルトダウ ンが起きているかもしれない」と記者会見した直後の更迭劇,(3)放射能はどの方向に漏れ たのかを知らせるはずであった SPEEDI の沈黙,(4)放射能はどれだけ大量に漏れたのか, なぜ,後になってレベル 4 から 7 へ 3 階級特進になったのか,(5)なぜ,代表地点の値だけ で,自分の家などの放射能測定値はあっても教えてもらえなかったのか,(6)特定の食品が どれだけの放射能を含むのか,具体例を教えてもらえなかったのはなぜか, (7)首都圏 3,000 万人の避難が必要になる可能性を示した「最悪のシナリオ」の報告書が官邸で回収され隠匿 されようとしていたのはなぜか,等々,「情報があるのに知らされなかった」とされる例は. 巻頭 情報処理 Vol.53 No.11 Nov. 2012.

(2) ■ 北澤 宏一 福島第一原発事故独立検証委員会 委員 長(民間事故調:日本再建イニシアテ ィブ財団). 1966 年東京大学理学部卒業,MIT 材料 学専攻博士修了,東京大学工学部物理 工学科,新領域創成科学研究科物質系 専攻,工学研究科応用化学専攻を経て 2002 年特殊法人科学技術振興事業団専 務理事,2007 年(独)科学技術振興機 構理事長,2011 年同顧問.. いくつもある.  SPEEDI のケースでは海外の Web サイトから先に放射能汚染地域地図情報が発表された. 日本がまだ「爆発的事象が…」と言葉を濁しているうちに,BBC 放送は早くも「水素爆発」 として報道していたし,メルトダウン情報も海外のインターネット情報では当たり前のこと として議論がなされていたが,日本での公表は 1 カ月以上も経ってからだった.   「後出し」にされたデータを国民は敏感に感じ,政府は「何か隠しているな」という目で 見るようになった.危機の時に信頼を獲得すべきであった日本政府は,逆に国民の信頼を失っ た.データを隠匿していて良いことは何もなかったということを肝に銘じるべきと思われる.  緊急事態における情報が「完璧である」ということはまずない.情報には常に不確かさも つきまとう.信用できるレベルに達するまでと待っていてはいつまでも公表できない.その うちに, 必要もなくなってしまう.SPEEDI などの例をとって,検証してみる必要があり,かつ, それに基づいて「情報公開の基準」などを普段から危機に備えて作っておくことが望ましい ように思われる.空気を読む日本文化の中では,どうしても情報秘匿が先行してしまうから である.. 情報処理 Vol.53 No.11 Nov. 2012. 巻頭.

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